説明

放射線検出器カード

【課題】アナログ信号へのノイズの混入を低減できる放射線検出器カードを提供する。
【解決手段】本発明に係る放射線検出器カード1は、放射線100が入射する複数のピクセル領域10bを有する半導体素子10と、放射線100が入射したピクセル領域10bの位置を示す位置情報をパラレル信号であるパラレル位置情報として取得し、パラレル位置情報をシリアル信号であるシリアル位置情報に変換する位置情報シリアル化部64と、ピクセル領域10bに入射した放射線100のエネルギー量をアナログ信号であるアナログエネルギー情報として取得し、アナログエネルギー情報をデジタル信号であるデジタルエネルギー情報に変換するアナログ/デジタル変換部66と、デジタルエネルギー情報をシリアル信号であるシリアルエネルギー情報に変換するエネルギー情報シリアル化部64とを有する集積回路部6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器カードに関する。特に、本発明は、γ線、X線等の放射線を検出する放射線検出器カードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子と、半導体素子の一方の面に取り付けられたアノード電極と、半導体素子の他方の面に取り付けられたカソード電極と、一端側がアノード電極及びカソード電極のうち少なくとも一方の電極に接続され、他端側が電極からストレートに延びて当該電極からの信号を出力する信号線とを備える半導体放射線検出器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−109269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係る半導体放射線検出器は、複数の半導体放射線検出器を実装基板上に搭載した放射線検出ユニットを構成した場合に、放射線検出器の信号を読み出す読出回路が実装基板の半導体放射線検出器が搭載される側の反対側の面に設けられる。したがって、特許文献1に係る半導体放射線検出器では、半導体から読出回路までのアナログ信号の信号経路が長く、アナログ信号にノイズが混入する場合がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、アナログ信号へのノイズの混入を低減できる放射線検出器カードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、放射線が入射する複数のピクセル領域を有する半導体素子と、放射線が入射したピクセル領域の位置を示す位置情報をパラレル信号であるパラレル位置情報として取得し、パラレル位置情報をシリアル信号であるシリアル位置情報に変換する位置情報シリアル化部と、ピクセル領域に入射した放射線のエネルギー量をアナログ信号であるアナログエネルギー情報として取得し、アナログエネルギー情報をデジタル信号であるデジタルエネルギー情報に変換するアナログ/デジタル変換部と、デジタルエネルギー情報をシリアル信号であるシリアルエネルギー情報に変換するエネルギー情報シリアル化部とを有する集積回路部とを備える放射線検出器カードが提供される。
【0007】
また、上記放射線検出器カードにおいて、集積回路部が、位置情報シリアル化部とエネルギー情報シリアル化部とを含むシリアル化部を有することもできる。
【0008】
また、上記放射線検出器カードにおいて、予め定められたシリアル信号レートより高いレートで動作し、スクランブル用データを発生する疑似ランダム符号発生器を更に備え、疑似ランダム符号発生器が、シリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報をスクランブル用のデータを用いてスクランブル化することもできる。
【0009】
また、上記放射線検出器カードにおいて、シリアル化部が、放射線を検出したピクセル領域についてのパラレル位置情報とデジタルエネルギー情報とを併せて、シリアル位置情報とシリアルエネルギー情報とに変換することもできる。
【0010】
また、上記放射線検出器カードにおいて、集積回路部が、スクランブル化されたシリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報を、スクランブル化される前のシリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報に変換する外部の集積回路に対し、スクランブル化されたシリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報をシリアル差動信号として供給することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る放射線検出器カードによれば、アナログ信号へのノイズの混入を低減できる放射線検出器カードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードの斜視図である。
【図1B】本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードの放射線が入射する方向からの部分拡大図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る複数の放射線検出器カードを備えて構成される放射線検出ユニットの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードが配列した状態の側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードの機能構成とマザーボードに搭載される外部の集積回路としてのFPGAの機能構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
図1Aは、本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードの斜視図の一例を示す。
【0014】
(放射線検出器カード1の構成の概要)
本実施の形態に係る放射線検出器カード1は、カード型の形状を呈し、γ線、X線等の放射線100を検出する放射線検出器カードである。図1Aにおいて放射線100は、紙面の上方から下方に沿って伝搬してくる。すなわち、放射線100は、放射線検出器カード1の半導体素子10からカードホルダ30及びカードホルダ31に向かう方向に沿って伝搬して放射線検出器カード1に入射する。そして、放射線検出器カード1は、半導体素子10の側面(つまり、図1Aの上方に面している面)に放射線100が入射する。したがって、半導体素子10の側面が放射線100の入射面となっている。このように、半導体素子10の側面を放射線100の入射面とする放射線検出器カードを、本実施の形態ではエッジオン型の放射線検出器カードと称する。なお、放射線検出器カード1は、特定の方向(例えば、放射線検出器カード1に向かう方向)に沿って伝搬してくる放射線100が通過する複数の開口を有するコリメータを介して放射線100を検出する複数の放射線検出器カード1が並べられて構成される放射線検出装置用の放射線検出器カード1として用いることができる。
【0015】
具体的に、放射線検出器カード1は、放射線100を検出可能な一対の半導体素子10と、複数の半導体素子10及び複数の半導体素子10それぞれからの信号を処理する集積回路部6(図1Aでは図示しない)を搭載する薄い基板20と、一対の半導体素子10の端から距離をおいた位置にて基板20を挟み込むことにより基板20を支持するカードホルダ30及びカードホルダ31とを備える。そして、一例として、一対の半導体素子10が4組、基板20を挟み込む位置において基板20に固定される。すなわち、各組の一対の半導体素子10は、基板20の一方の面と他方の面とのそれぞれに基板20を対称面として対称の位置に固定される。
【0016】
また、基板20はカードホルダ30とカードホルダ31とに挟み込まれて支持される。カードホルダ30とカードホルダ31とはそれぞれ同一形状を有して形成され、カードホルダ30が有する溝付穴34にカードホルダ31が有する突起部36が嵌め合うと共に、カードホルダ31が有する溝付穴34(図示しない)にカードホルダ30が有する突起部36(図示しない)が嵌め合うことにより基板20を支持する。
【0017】
また、弾性部材実装部32は、複数の放射線検出器カード1を支持する放射線検出器立てに放射線検出器カード1が挿入された場合に、放射線検出器カード1を放射線検出器立てに押し付けて固定する板ばね等の弾性部材が設けられる部分である。なお、放射線検出器立てはカードエッジ部29が挿入されるコネクタを有しており、放射線検出器カード1は、カードエッジ部29がコネクタに挿入され、コネクタとカードエッジ部29に設けられるパターン29aとが電気的に接続することにより外部の電子部品(例えば、Field Programmable Gate Array(FPGA))等に接続される。
【0018】
また、放射線検出器カード1は、一対の半導体素子10の基板20の反対側に、各半導体素子10が有する電極と基板20が有する複数の基板端子22とのそれぞれを電気的に接続する配線パターン(半導体素子10の基板20の反対側の素子表面の電極、及びフレキシブル基板40の半導体素子10側の配線パターン等は図示しない)を有するフレキシブル基板40を更に備える。
【0019】
フレキシブル基板40は、一対の半導体素子10の一方の半導体素子10側、及び他方の半導体素子10側の双方に設けられる(本実施の形態においては、4組の一対の半導体素子10の一方の半導体素子10側のそれぞれと、他方の半導体素子10側のそれぞれとの双方に、フレキシブル基板40がそれぞれ設けられる)。そして、フレキシブル基板40の複数の配線パターンの一端はそれぞれ基板端子22に電気的に接続する。
【0020】
(半導体素子10の詳細)
図1Bは、本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードの放射線が入射する方向からの部分拡大図の概要を示す。なお、説明の便宜上、フレキシブル基板40等の図示は省略する。
【0021】
半導体素子10は、化合物半導体から主として構成される。そして、半導体素子10は、略直方体状若しくは平板状に形成される。また、半導体素子10の放射線が入射する面に垂直な一の表面である素子表面に、複数の溝10aが設けられる。溝10aは、例えば、断面視にてV字形状を有して形成される。半導体素子10は、溝10aが設けられている面を基板20側に向け、基板20に固定される。具体的には、複数の溝10aの間の半導体素子10の表面に設けられている表面電極(図示しない)と、基板20の表面に設けられる素子接続部(図示しない)とが銀ペースト等の導電性接着材50を介して接続され、半導体素子10が基板20に固定される。
【0022】
また、放射線が入射する半導体素子10の面であって、各溝10aから、溝10aが設けられている面の反対側の面への仮想的な垂線により区切られる領域、及び当該仮想的な垂線と半導体素子10の短辺の端部とで区切られる領域をピクセル領域10bと称する。半導体素子10が、(n−1)個の溝10aを有することによりn個のピクセル領域10bが構成される。また、複数の溝10a間の平坦な領域である複数の素子表面それぞれに表面電極が設けられ、表面電極が設けられている面の反対側の素子表面に裏面電極が設けられる。なお、複数のピクセル領域10bそれぞれが、放射線を検出する1つの画素(ピクセル)に対応する。これにより、一の半導体素子10は、複数の画素を有することになる。
【0023】
一例として、1つの放射線検出器カード1が8つの半導体素子10(4組の一対の半導体素子10)を備え、1つの半導体素子10がそれぞれ8つのピクセル領域10bを有する場合、1つの放射線検出器カード1は、64ピクセルの解像度を有することになる。溝10aの数を増減させることにより、一の半導体素子10のピクセル数を増減させることができる。なお、一例として、半導体素子10の幅は1.2mm程度、長さは11.2mm程度、高さは5mm程度である。
【0024】
また、半導体素子10を構成する化合物半導体としては、例えば、CdTeを用いることができる。また、γ線等の放射線を検出できる限り、半導体素子10はCdTe素子に限られない。例えば、半導体素子10として、CdZnTe(CZT)素子、HgI素子等の化合物半導体素子を用いることもできる。
【0025】
(基板20の詳細)
基板20は、金属導体等の導電性材料からなる導電性薄膜(例えば、銅箔)が表面に形成された薄肉基板(例えば、FR4等のガラスエポキシ基板)を、ソルダーレジスト等の絶縁材料からなる絶縁層で挟んで可撓性を有して形成される。基板20は、一例として、0.2mm以下の厚さを有して形成される。また、基板20は、半導体素子10の電極に電気的に接続する素子接続部を有する。
【0026】
(放射線検出ユニット5の概要)
図2は、本発明の実施の形態に係る複数の放射線検出器カードを備えて構成される放射線検出ユニットの斜視図の一例を示す。
【0027】
放射線検出ユニット5は、複数の放射線検出器カード1が放射線検出器立てによって保持されることにより構成される。具体的には、複数の放射線検出器カード1が並べられる間隔に応じて予め定められた距離をおいて並び、複数の放射線検出器カード1が挿入される複数の溝2bが形成された複数の支持体2と、支持体2を搭載するマザーボード3と、複数の支持体2の間に設けられ、複数の放射線検出器カード1のカードエッジ部29のそれぞれが接続されて外部の集積回路としてのFPGA7等と複数の放射線検出器カード1のそれぞれとを電気的に接続する複数のコネクタ4とを備える放射線検出器立てに複数の放射線検出器カード1が保持される。支持体2の複数の溝2bのそれぞれに複数の放射線検出器カード1が挿入され、固定されることにより放射線検出ユニット5が構成される。
【0028】
複数の支持体2は、マザーボード3上に放射線検出器カード1の幅に対応する間隔を有して設けられる。そして、複数の支持体2はそれぞれ、複数の壁部2aを有しており、各壁部2aの間に溝2bが形成される。壁部2aは、一方の表面にくぼみ部2cが設けられ、他方の表面は平坦面2dである。放射線検出器カード1の弾性部材実装部32には、例えば、板金が組み込まれ、支持体2の溝2bに放射線検出器カード1が挿入された場合に、この板金により放射線検出器カード1が壁部2aの平坦面2dに押さえ付けられることにより支持体2に放射線検出器カード1が固定される。
【0029】
(集積回路部6の配置)
図3は、本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードが配列した状態の側面図の概要である。なお、説明の便宜上、フレキシブル基板40、支持体2等の図示は省略する。
【0030】
放射線検出ユニット5が保持している複数の放射線検出器カード1はそれぞれ、基板20上に集積回路部6を備える。集積回路部6は、例えば、アナログ信号をデジタル信号に変換する機能を含むApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)である。本実施の形態では集積回路部6が基板20上に搭載され、半導体素子10からの信号が集積回路部6に供給される。そして、集積回路部6は、当該信号に含まれるアナログ信号をデジタル信号に変換する等の信号処理を実行する。集積回路部6において処理が施された信号は、コネクタ4を介してマザーボード3の放射線検出器カード1を保持している面の反対側の面に設けられるFPGA7に供給される。
【0031】
(放射線検出器カード1の機能構成)
図4は、本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードの機能構成とマザーボードに搭載される外部の集積回路としてのFPGAの機能構成ブロック図の概要を示す。
【0032】
放射線検出器カード1が備える集積回路部6は、エネルギー情報シリアル化部62と、位置情報シリアル化部64と、アナログ/デジタル変換部66(以下、「A/D変換部66」と表記する)と、集積回路68とを有する。位置情報シリアル化部64は、放射線が入射したピクセル領域10bの位置を示す位置情報をパラレル信号であるパラレル位置情報として取得し、パラレル位置情報をシリアル信号であるシリアル位置情報に変換する。また、A/D変換部66は、ピクセル領域10bに入射した放射線のエネルギー量をアナログ信号であるアナログエネルギー情報として取得し、アナログエネルギー情報をデジタル信号であるデジタルエネルギー情報に変換する。更に、エネルギー情報シリアル化部62は、デジタルエネルギー情報をシリアル信号であるシリアルエネルギー情報に変換する。
【0033】
また、集積回路部6は、予め定められたシリアル信号レートより高いレートで動作し、スクランブル用データを発生する疑似ランダム符号発生器としてのPN(Pseudo Noise)ジェネレーター69と、FPGA7側から信号線210を介し、予め定められた倍率でレートが高められたクロック信号(例えば、シリアル信号レートの16倍のレートのクロック信号)を受け取り、当該クロック信号を元のレートのクロック信号(例えば、16倍のレートのクロック信号のレートを1/16倍したクロック信号)に戻すクロックディバイダ67とを更に有する。ここで、PNジェネレーター69は、FPGA7側から予め定められた倍率でレートが高められたクロック信号に応じて動作する。なお、エネルギー情報シリアル化部62と位置情報シリアル化部64とは、一つのシリアル化部60として構成することもできる。また、全てのリセットを共通にすることで、集積回路部6とFPGA7とのインターフェースの同期(すなわち、PN符号の同期)を取ることもできる。
【0034】
具体的に、半導体素子10の所定のピクセル領域10bに放射線100が入射すると、当該ピクセル領域10bで放射線100のエネルギー量に比例した電荷量のホールと電子との対が生成される。生成したホールと電子とは、当該ピクセル領域10bの表面電極又は裏面電極に到達し、表面電極及び裏面電極のそれぞれから電気信号が出力される。そして、当該ピクセル領域10bの表面電極又は裏面電極に電気的に接続された信号線110−1、信号線110−2、信号線110−3、・・・信号線110−n(ただし、nは正の整数)のいずれか2つの信号線を介して、電気信号が集積回路68に供給される。すなわち、放射線100が入射したピクセル領域10bに対応する2つの信号線を介し、エネルギー量を示す電荷量が、集積回路68に供給される。ここで、集積回路68に電気信号を供給する2つの信号線の組みが、入射位置情報に対応する。
【0035】
集積回路68は、信号回路124を介し、入射位置情報をパラレル位置情報としてパラレルに位置情報シリアル化部64に供給する。具体的に、集積回路68は、信号線110−1から信号線110−nのうち電気信号が入力された2つの信号線の組み、すなわち、入射位置情報を識別する識別値を複数の信号線からなる信号回路124からパラレルに供給する。ここで、例えば、信号回路124は8つの信号線を含み、集積回路68から位置情報シリアル化部64に供給されるパラレル位置情報は、8ビットのパラレル情報として供給される。なお、パラレル位置情報は、1 hot encodingとして、位置情報シリアル化部64及び/又はエネルギー情報シリアル化部62の書き込みStobe信号を兼ねることもできる。なお、その場合、パラレル位置情報(Stobe信号)は、エネルギー情報のA/D変換後に出力されるように遅延させる。
【0036】
また、集積回路68は、半導体素子10から受け取った電荷量を、電荷量の大きさに応じた電圧に変換する。そして、集積回路68は、信号回路120を介し、変換した電圧の電圧値をアナログ信号であるアナログエネルギー情報としてA/D変換部66に供給する。A/D変換部66は、当該アナログエネルギー情報をデジタル信号であるデジタルエネルギー情報に変換する。そして、A/D変換部66は、信号回路122を介し、デジタルエネルギー情報をエネルギー情報シリアル化部62に供給する。例えば、A/D変換部66は、デジタルエネルギー情報を12ビットの情報としてエネルギー情報シリアル化部62にパラレルに供給する。
【0037】
エネルギー情報シリアル化部62は、デジタルエネルギー情報をシリアル信号であるシリアルエネルギー情報に変換する。また、位置情報シリアル化部64は、パラレル位置情報をシリアル信号であるシリアル位置情報に変換する。そして、PNジェネレーター69は、シリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報をスクランブル用のデータを用いてスクランブル化する。スクランブル用のデータは、例えば、シリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報にXOR(排他的論理和)を施すことを目的としたデータである。これにより、シリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報が、シリアルデータレートの所定倍のレート(すなわち、クロック信号のレートに応じたレート)でエネルギー情報シリアル化部62及び位置情報シリアル化部64からFPGA7に、信号線200を介してシリアル差動信号として供給される。
【0038】
すなわち、スクランブル化によりスペクトラム拡散されたシリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報が、信号線200を介し、シリアル差動信号としてFPGA7に供給される。PNジェネレーター69によるスクランブル化により、シリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報は高周波領域までスペクトラム拡散され、低周波の信号成分が減少する。これにより、デジタルノイズの帯域が検出信号の帯域外になるので、検出信号に含まれるノイズが低減される。
【0039】
また、エネルギー情報シリアル化部62及び位置情報シリアル化部64は、放射線を検出したピクセル領域10bについてのパラレル位置情報とデジタルエネルギー情報とを併せて変換することもできる。すなわち、エネルギー情報シリアル化部62及び位置情報シリアル化部64は、パラレル位置情報とデジタルエネルギー情報とが揃った時点で、パラレル位置情報とデジタルエネルギー情報とを同時にシリアル位置情報とシリアルエネルギー情報とに変換することもできる。
【0040】
FPGA7は、例えば、放射線検出器カード1が挿入されるコネクタ4が設けられているマザーボード3の表面の反対側の表面に設けられる。FPGA7は、スクランブル化されたシリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報を、スクランブル化される前のシリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報に変換する。
【0041】
具体的に、FPGA7は、PNジェネレーター69が発生したスクランブル用データと同一のスクランブル用データを発生するPNジェネレーター79を有する。そして、FPGA7は、PNジェネレーター79が発生するスクランブル用データを用い、エネルギー情報シリアル化部62及び位置情報シリアル化部64から受け取ったスクランブル化されたシリアル位置情報及びシリアルエネルギー情報の排他的論理和をとる。これにより、デシリアル化部70は、スクランブル化されたシリアル位置情報、及びシリアルエネルギー情報から元の形式に戻ったシリアル位置情報及びシリアルエネルギー情報を取得する。
【0042】
そして、デシリアル化部70は、エネルギー情報シリアル化部62がシリアル化したシリアル位置情報と同一のシリアル位置情報と、位置情報シリアル化部64がシリアル化したシリアルエネルギー情報と同一のシリアルエネルギー情報とに集積回路部6から受け取った情報を分割する。
【0043】
なお、デシリアル化部70は、予め定められた倍率でレートが高められたクロック信号を受け取り、当該クロック信号を元のレートのクロック信号に戻すクロックディバイダ77からのクロック信号に応じて動作する。
【0044】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態に係る放射線検出器カード1は、集積回路部6がマザーボード3ではなく基板20上に搭載されているので、半導体素子10からの微小なアナログ信号が集積回路部6に伝達する距離が、集積回路部6がマザーボード3上に搭載されている場合に比べて短縮することができる。これにより、放射線検出器カード1は、微小なアナログ信号がアナログ信号として伝達する距離を低減できるので、ノイズ発生を低減できる。
【0045】
また、放射線検出器カード1は、放射線検出器カード1のそれぞれに集積回路部6が搭載されているので、放射線検出ユニット5が保持する放射線検出器カード1の枚数の増加に比例して、計数率特性を向上させることができる。なお、放射線検出ユニット5の放射線検出の方式は、マトリクス検出の方式、又はPixel by Pixel検出の方式にすることができる。
【0046】
更に、放射線検出器カード1は、放射線検出器カード1とマザーボード3との間の情報のやり取りを、高速のデジタル信号によるシリアル伝送で実施できるので、少ない信号線の本数で差動信号化できる。これにより、放射線検出器カード1は、ノイズ放射を抑制することができる。また、放射線検出器カード1は、シリアル伝送信号のスペクトルを拡散することができるので、デジタルノイズを検出信号の帯域外にすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0048】
1 放射線検出器カード
2 支持体
2a 壁部
2b 溝
2c くぼみ部
2d 平坦面
3 マザーボード
4 コネクタ
5 放射線検出ユニット
6 集積回路部
7 FPGA
10 半導体素子
10a 溝
10b ピクセル領域
20 基板
22 基板端子
29 カードエッジ部
29a パターン
30、31 カードホルダ
32 弾性部材実装部
34 溝付穴
36 突起部
40 フレキシブル基板
50 導電性接着材
60 シリアル化部
62 エネルギー情報シリアル化部
64 位置情報シリアル化部
66 アナログ/デジタル変換部(A/D変換部)
67 クロックディバイダ
68 集積回路
69 PNジェネレーター
70 デシリアル化部
77 クロックディバイダ
79 PNジェネレーター
100 放射線
110−1、110−2、110−3、110―n 信号線
120、122、124 信号回路
200、210 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が入射する複数のピクセル領域を有する半導体素子と、
放射線が入射したピクセル領域の位置を示す位置情報をパラレル信号であるパラレル位置情報として取得し、前記パラレル位置情報をシリアル信号であるシリアル位置情報に変換する位置情報シリアル化部と、前記ピクセル領域に入射した前記放射線のエネルギー量をアナログ信号であるアナログエネルギー情報として取得し、前記アナログエネルギー情報をデジタル信号であるデジタルエネルギー情報に変換するアナログ/デジタル変換部と、前記デジタルエネルギー情報をシリアル信号であるシリアルエネルギー情報に変換するエネルギー情報シリアル化部とを有する集積回路部と
を備える放射線検出器カード。
【請求項2】
前記集積回路部が、前記位置情報シリアル化部と前記エネルギー情報シリアル化部とを含むシリアル化部を有する請求項1に記載の放射線検出器カード。
【請求項3】
予め定められたシリアル信号レートより高いレートで動作し、スクランブル用データを発生する疑似ランダム符号発生器
を更に備え、
前記疑似ランダム符号発生器が、前記シリアル位置情報、及び前記シリアルエネルギー情報を前記スクランブル用のデータを用いてスクランブル化する請求項2に記載の放射線検出器カード。
【請求項4】
前記シリアル化部が、前記放射線を検出した前記ピクセル領域についての前記パラレル位置情報と前記デジタルエネルギー情報とを併せて、前記シリアル位置情報と前記シリアルエネルギー情報とに変換する請求項3に記載の放射線検出器カード。
【請求項5】
前記集積回路部が、スクランブル化された前記シリアル位置情報、及び前記シリアルエネルギー情報を、スクランブル化される前の前記シリアル位置情報、及び前記シリアルエネルギー情報に変換する外部の集積回路に対し、スクランブル化された前記シリアル位置情報、及び前記シリアルエネルギー情報をシリアル差動信号として供給する請求項4に記載の放射線検出器カード。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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