説明

放射線検出器

【課題】放射線の検出能力を損なうことなく電子回路等への外来の電磁ノイズを遮蔽する。
【解決手段】放射線を光に変換するシンチレータ1と、シンチレータ1と光学的に接続され光を電気信号に変換する光電子増倍管4と、シンチレータ1と光電子増倍管4との間に設置された格子状の電磁シールドである金属メッシュ3と、シンチレータ1、金属メッシュ3および光電子増倍管4を収納するケース7とを備え、金属メッシュ3およびケース7は接地されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等で利用される放射線検出器に係り、特に、放射線検出器のセンサ部に対する外部からの電磁ノイズを遮蔽する放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電波を発する携帯型情報端末の普及やインバーター利用の機器の増加などから、放射線検出器の利用される原子力発電所等の環境においても電磁両立性が求められつつある。
【0003】
放射線検出器については、電子回路等をケースに収納することで電子回路等への外来の電磁ノイズを遮蔽している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−343144公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した放射線検出器においては、放射線を測定するセンサ部については、電磁遮蔽が放射線の遮蔽ともなるためケースで覆うことが出来ない。そのため、電子回路等はセンサ部側からの外来の電磁ノイズを遮蔽できない、という課題があった。
【0006】
また、放射線が入射する遮光窓を導電性の表面とし、遮光窓を接地することで電磁遮蔽することも考えられるが、遮光窓の表面の導電性を十分確保するために遮光窓を厚くすることで、放射線検出器のセンサ部に入射する放射線を減衰させてしまう、という課題があった。
【0007】
本発明は、これらの課題を解決するために、放射線の検出能力を損なうことなく電子回路等への外来の電磁ノイズを遮蔽することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る放射線検出器は、放射線を光に変換するシンチレータと、前記シンチレータと光学的に接続され光を電気信号に変換する光電子変換部と、前記シンチレータと前記光電子変換部との間に設置された格子状電磁シールドと、前記シンチレータ、前記格子状電磁シールドおよび光電子変換部を収納するケースとを備え、前記格子状電磁シールドおよびケースは接地されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る放射線検出器は、放射線を電気信号に変換する放射線センサと、前記放射線センサを搭載する放射線センサ基板と、前記放射線センサ基板と電気的に接続され前記放射線センサの電気信号を変換・増幅して伝達するとともに放射線センサの動作に必要な電源を供給する電子回路と、前記放射線センサ基板を覆う格子状電磁シールドと、前記放射線センサ基板と前記電子回路との間に設けられた電磁シールド板と、放射線センサ、放射線センサ基板、電子回路、格子状電磁シールドおよび電磁シールド板を収納するケースとを備え、前記格子状電磁シールド、電磁シールドおよびケースは接地されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放射線の検出能力を損なうことなく光電子増倍管および電子回路への外来の電磁ノイズを遮蔽することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明における実施例1に係る放射線検出器を示す図。
【図2】本発明における実施例2に係る放射線検出器を示す図。
【図3】本発明における実施例3に係る放射線検出器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る放射線検出器の実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明における実施例1に係る放射線検出器を示す図である。
【0014】
実施例1の放射線検出器9は、遮光窓8から入射した放射線を光に変換するシンチレータ1と、シンチレータ1と光学的に接続され光を電気信号に変換する光電子増倍管4と、光電子増倍管4と電気的に接続された電子回路5と、電子回路5と電気的に接続されたケーブル6と、シンチレータ1と光電子増倍管4との間に設置された格子状の電磁シールドである金属メッシュ3と、シンチレータ1、金属メッシュ3、光電子増倍管4および電子回路5を収納するケース7と、ケース7に設けられシンチレータ1に放射線を入射させる遮光窓8とからなる。遮光窓8の構造は、従来のままである。
【0015】
金属メッシュ3のピッチは、通常問題となる電磁ノイズの周波数の上限である10GHzに相当する波長3cm以下のピッチ、好ましくは1cm以下とする。一方で、金属メッシュ3の太さは1mm程度、好ましくは1mm以下とする。また、金属メッシュ3はケース7と電気的に接続され、金属メッシュ3はケース7と同電位になっており、ケース7が接地されているので、金属メッシュ3も接地されている。
【0016】
放射線は、遮光窓8を通り、シンチレータ1に入射する。シンチレータ1に入射した放射線は光に変換されて金属メッシュ3にいたる。金属メッシュ3は、シンチレータ1から光電子増倍管4への入光をほとんど妨げず、かつ、シンチレータ1側から光電子増倍管4および電子回路5に進入する電磁ノイズを減衰させる。シンチレータ1の光は電子増倍管4で電気信号に変換される。光電子増倍管4の電気信号は電子回路5で増幅されて出力される。電子回路5の出力信号はケーブル6を通じて外部に出力される。
【0017】
本発明の実施例1によれば、遮光窓8の構造は従来のままとし、電磁ノイズの影響を受ける光電子増倍管4のシンチレータ1側に十分な導電性を確保することが可能な金属メッシュ3を設けることで、放射線の検出能力を損なうことなくシンチレータ1側から光電子増倍管4および電子回路5への外来の電磁ノイズを遮蔽することができる。
【0018】
金属メッシュ3には、シンチレータ1から光電子増倍管4へ入光する光を吸収しないような表面加工を施す。そうすることで、金属メッシュ3にぶつかった光子は、シンチレータ1に戻り、シンチレータ1内で反射することで、再度光電子増倍管4に入射することができる。
【0019】
また、シンチレータ1から光電子増倍管4への光子の効果的な受け渡しのために、シンチレータ1と光電子増倍管4との隙間に導光性のある可塑性の光学グリスを充填してもよい。
【実施例2】
【0020】
図2は本発明の実施例2に係る放射線検出器を示す図である。
【0021】
実施例2の放射線検出器9は、実施例1の放射線検出器9において、シンチレータ1と光電子増倍管4との間にライトガイド2を設けたものである。
【0022】
ライトガイド2は、シンチレータ1および光電子増倍管4と光学的に接続され、シンチレータ1の光を光電子増倍管4に伝達する。ライトガイド2の光は電子増倍管4で電気信号に変換される。
【0023】
金属メッシュ3は、ライトガイド2と光電子増倍管4との間に設置され、ライトガイド2から光電子増倍管4への入光をほとんど妨げず、かつ、ライトガイド2側から光電子増倍管4および電子回路5に進入する電磁ノイズを減衰させる。
【0024】
ケース7は、シンチレータ1、ライトガイド2、金属メッシュ3、光電子増倍管4および電子回路5を収納する。
【0025】
本発明の実施例2によれば、遮光窓8の構造は従来のままとし、電磁ノイズの影響を受ける光電子増倍管4のライトガイド2側に十分な導電性を確保することが可能な金属メッシュ3を設けることで、放射線の検出能力を損なうことなくライトガイド2側から光電子増倍管4および電子回路5への外来の電磁ノイズを遮蔽することができる。
【0026】
金属メッシュ3には、ライトガイド2から光電子増倍管4へ入光する光を吸収しないような表面加工を施すようにしてもよい。そうすることで、金属メッシュ3にぶつかった光子は、ライドガイド2に戻り、ライトガイド2内で反射することで、再度光電子増倍管4に入射することができる。
【0027】
また、ライトガイド2から光電子増倍管4への光子の効果的な受け渡しのために、ライトガイド2と光電子増倍管4との隙間に導光性のある可塑性の光学グリスを充填してもよい。また、ライトガイド2に金属メッシュ3に合わせた溝を掘り、その溝の中に金属メッシュ3を埋め込むようにしてもよい。
【0028】
また、ライトガイド2をシンチレータ1側と光電子増倍管4側に2分割して、2つのライトガイド間に金属メッシュ3を配置、あるいは埋め込む等の構成を取ってもよい。
【実施例3】
【0029】
図3は本発明における実施例3に係る放射線検出器を示す図である。
【0030】
実施例3の放射線検出器9は、放射線を電気信号に変換する放射線センサ11と、放射線センサ11を搭載する放射線センサ基板10と、放射線センサ基板10と電気的に接続され放射線センサ11の電気信号を変換・増幅して後段の機器(図示せず)に伝達するとともに放射線センサ11の動作に必要な電源を供給する電子回路5と、電子回路5と電気的に接続されたケーブル6と、放射線センサ基板10を覆う格子状の電磁シールドである金属メッシュ3と、放射線センサ基板10と電子回路5との間に設けられた電磁シールド板12と、放射線センサ11、放射線センサ基板10、電子回路5、金属メッシュ3および電磁シールド板12を収納するケース7と、ケース7に設けられ放射線センサ11に放射線を入射させる遮光窓(図示せず)とからなる放射線検出器9である。遮光窓8の構造は、従来のままである。
【0031】
金属メッシュ3のピッチは、通常問題となる電磁ノイズの周波数の上限である10GHzに相当する波長3cmよりも十分小さなピッチ、たとえば1cmとする。一方で、金属メッシュ3の太さは十分に小さく、たとえば1mm程度とする。また、金属メッシュ3および電磁シールド板12はケース7と電気的に接続され、金属メッシュ3および電磁シールド板12はケース7と同電位になっており、ケース7が接地されているので、金属メッシュ3および電磁シールド板12も接地されている。
【0032】
放射線は、遮光窓8を通り、金属メッシュ3の隙間から放射線センサ11に入射する。放射線センサ11に入射した放射線の検出信号は電子回路5で増幅されて出力される。電子回路5の出力信号はケーブル6を通じて外部に出力される。
【0033】
本発明の実施例3によれば、遮光窓8の構造は従来のままとし、電磁ノイズの影響を受ける放射線センサ11を搭載する放射線センサ基板10を金属メッシュ3で覆い、かつ放射線センサ基板10と電子回路5との間に電磁シールド板12を設けることで、放射線センサ基板10をすべて電磁シールドで覆う場合に比べて放射線の検出能力を損なうことなく電子回路5への外来の電磁ノイズを遮蔽することができる。
【0034】
また、通常の放射線検出器であっても、ケース7自体を十分な導電率を有しつつ接地することで同様の効果を目指すことはできるが、ケース7は放射線の減衰を可能な限り少なくする必要があること、また必要な強度を持たせることが主目的であることから、電磁遮蔽のための導電率を全体にわたって確保できない場合もある。そうした場合にも十分な電磁遮蔽を得つつ、必要な放射線検出能力を有することができる。
【0035】
なお、以上の説明は単なる例示であり、本発明は上述の実施の形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 シンチレータ
2 ライトガイド
3 金属メッシュ
4 光電子増倍管
5 電子回路
6 ケーブル
7 ケース
8 遮光窓
9 放射線検出器
10 放射線センサ基板
11 放射線センサ
12 電磁シールド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を光に変換するシンチレータと、
前記シンチレータと光学的に接続され光を電気信号に変換する光電子変換部と、
前記シンチレータと前記光電子変換部との間に設置された格子状電磁シールドと、
前記シンチレータ、前記格子状電磁シールドおよび光電子変換部を収納するケースとを備え、
前記格子状電磁シールドおよびケースは接地されたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
放射線を光に変換するシンチレータと、
前記シンチレータと光学的に接続されたライトガイドと、
前記ライトガイドと光学的に接続され光を電気信号に変換する光電子変換部と、
前記ライトガイドと前記光電子変換部との間に設置された格子状電磁シールドと、
前記シンチレータ、前記ライトガイド、前記格子状電磁シールドおよび光電子変換部を収納するケースとを備え、
前記格子状電磁シールドおよびケースは接地されたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項3】
放射線を光に変換するシンチレータと、
前記シンチレータと光学的に接続された第1のライトガイドと、
前記第1のライトガイドと光学的に接続された第2のライトガイドと、
前記第2のライトガイドと光学的に接続され光を電気信号に変換する光電子変換部と、
前記第1のライトガイドと前記第2のライトガイドとの間に設置された格子状電磁シールドと、
前記シンチレータ、前記第1のライトガイド、前記第2のライトガイド、前記格子状電磁シールドおよび光電子変換部を収納するケースとを備え、
前記格子状電磁シールドおよびケースは接地されたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項4】
放射線を電気信号に変換する放射線センサと、
前記放射線センサを搭載する放射線センサ基板と、
前記放射線センサ基板と電気的に接続され前記放射線センサの電気信号を変換・増幅して伝達するとともに放射線センサの動作に必要な電源を供給する電子回路と、
前記放射線センサ基板を覆う格子状電磁シールドと、
前記放射線センサ基板と前記電子回路との間に設けられた電磁シールド板と、
放射線センサ、放射線センサ基板、電子回路、格子状電磁シールドおよび電磁シールド板を収納するケースとを備え、
前記格子状電磁シールド、電磁シールドおよびケースは接地されたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項5】
前記格子状電磁シールドは、光を吸収しないような表面加工を施したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記シンチレータと光電子変換部との隙間に導光性のある可塑性の光学グリスを充填したことを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記ライトガイドと光電子変換部との隙間に導光性のある可塑性の光学グリスを充填したことを特徴とする請求項2記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記第1のライトガイドと第2のライトガイドとの隙間に導光性のある可塑性の光学グリスを充填したことを特徴とする請求項3記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記ライトガイドは、前記格子状電磁シールドに合わせた溝を備え、
前記格子状電磁シールドは、前記ライトガイドの溝の中に埋め込まれたことを特徴とする請求項2記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記第1のライトガイドおよび前記第2のライトガイドの一方は、前記格子状電磁シールドに合わせた溝を備え、
前記格子状電磁シールドは、前記第1のライトガイドおよび前記第2のライトガイドの一方の溝の中に埋め込まれたことを特徴とする請求項3記載の放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−271076(P2010−271076A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121218(P2009−121218)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】