説明

放射線検出器

【課題】高密度で並べることができ、組立の容易な放射線検出器を提供する。
【解決手段】放射線検出器10は、半導体素子11と、半導体素子11を固定・保持するリジッドフレキシブル基板15からなる。リジッドフレキシブル基板15の一端には第1のリジッド基板12がフレキシブル基板13−1,13−2と分離して形成されており、第1のリジッド基板12の一方の面と他方の面の両方に半導体素子11がそれぞれ固定されてある。半導体素子11の他方の面は、フレキシブル基板13−1,13−2と接続される。リジッドフレキシブル基板15の他端には複数のエッジコネクタ端子が形成されており、エッジコネクタ部を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ線、X線等の放射線を検出する半導体素子を用いる放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線検出器として、複数のコモン電極板と、複数の半導体セルと、複数の電極板とを、コモン電極板、半導体セル、電極板、半導体セル、コモン電極板・・・のように積層させた積層体を2つのフレームの間に設け、一方のフレームと他方のフレームとをピンで固定することにより構成される放射線検出器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の放射線検出器は、横方向に隣接する一対の半導体セルがコモン電極板を共有するので、放射線を検出できない領域を減少させることができ、放射線の検出効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6236051号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る放射線検出器は、コモン電極板、半導体セル等の複数の構成部材を積層させて放射線検出装置が構成されることから、構成部材を積み重ねるごとに各構成部材が有する寸法誤差が加算されるので、半導体セル間の間隔を予め定められた間隔に厳密に制御しつつ、複数の半導体セルを高密度で並べることが困難である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、高密度で並べることができ、組み立ての容易な放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、放射線を検出するための半導体素子と、第1のリジッド基板と、前記第1のリジッド基板を間に挟んで配置された2つのフレキシブル基板と、前記2つのフレキシブル基板を間に挟んで配置された2つの第2のリジッド基板とが一体化されたリジッドフレキシブル基板と、を備え、前記リジッドフレキシブル基板の一端は、前記第1のリジッド基板と前記2つのフレキシブル基板とからなり、前記第1のリジッド基板と前記フレキシブル基板が分離され、前記第1のリジッド基板の一端側の両表面に前記半導体素子の一方の面が固定されるとともに、前記フレキシブル基板の一端側に前記半導体素子の他方の面が固定された放射線検出器である。
【0008】
前記第1のリジッド基板は、前記半導体素子の幅の1/6以下の厚さを備えてもよい。
【0009】
前記第1のリジッド基板は、前記半導体素子の放射線に対する入射面側に装着されるコリメータの複数の開口を隔てる壁部の厚さ以下の厚さを備え、前記第2のリジッド基板は、前記第1のリジッド基板が撓まないようにその形状を保てる程度の強度を与えることができる厚さを備えることもできる。
【0010】
前記リジッドフレキシブル基板の他端にエッジコネクタ部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る放射線検出器によれば、高密度で並べることができ、組立の容易な放射線検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る放射線検出器の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る放射線検出器の図である。
【0014】
本実施の形態に係る放射線検出器10は、γ線、X線等の放射線を検出する放射線検出器である。図1において放射線100は、紙面の上方から下方に沿って伝搬してくる。すなわち、放射線100は、放射線検出器10の半導体素子11からエッジコネクタ端子16に向かう方向に沿って伝搬して放射線検出器10に到達し、半導体素子11の側面(つまり、図1の上方に面している面)に入射する。このように半導体素子11の側面が放射線100の入射面となっており、放射線検出器10は半導体素子の側面を放射線100の入射面とするエッジオン型の放射線検出器である。
【0015】
また、放射線検出器10を図1に示すx方向及び/またはy方向に複数並べて、放射線検出装置を構成することができる。放射線検出器10を用いた放射線検出装置は、例えば、PETやSPECT等の核医学イメージングの装置に適用できる。
【0016】
更に、本実施の形態に係る放射線検出器10は、コリメータを装着することもできる。複数の開口を有するコリメータを半導体素子11の放射線100が入射する側面側に装着することにより、特定の方向(例えば、被検体から放射線検出器10に向かう方向)にそって伝搬してくる放射線100のみを通過させることができる。コリメータは、多孔平行コリメータ、ピンホールコリメータ等を用いることができる。
【0017】
図1に示す通り、放射線検出器10は、半導体素子11と、半導体素子11を固定・保持するリジッドフレキシブル基板15からなる。具体的に、リジッドフレキシブル基板15の一端(図1の上方)では、第1のリジッド基板12がフレキシブル基板13−1,13−2と分離して形成されている。第1のリジッド基板の一端では、第1のリジッド基板12の一方の面と他方の面の両方に半導体素子11がそれぞれ4個固定されてある。また、リジッドフレキシブル基板15の他端(図1の下方)には複数のエッジコネクタ端子16が形成されており、エッジコネクタ部17を構成している。
【0018】
リジッドフレキシブル基板15は、リジッド基板とフレキシブル基板を一体としたものである。具体的に、本実施の形態に係るリジッドフレキシブル基板15は、第1のリジッド基板12と、第1のリジッド基板12を間に挟んで配置される2つのフレキシブル基板13−1,13−2と、2つのフレキシブル基板13−1,13−2を間に挟んで配置される2つの第2のリジッド基板14−1,14−2とを備える。
【0019】
リジッドフレキシブル基板15は、一端側(図1の上方)において、第1のリジッド基板12とフレキシブル基板13−1,13−2とから構成され、第1のリジッド基板12とフレキシブル基板13−1,13−2は互いに分離された構成となっている。また、リジッドフレキシブル基板15は、他端側(図1の下方)において、第1のリジッド基板12、フレキシブル基板13−1,13−2、第2のリジッド基板14−1,14−2とから構成され、それらが一体となっている。
【0020】
第1のリジッド基板12は、その一端(図1の上方)の両面に半導体素子11が固定される。寸法としては、半導体素子11の幅W(x方向)は1.2mm、第1のリジッド基板12の幅L(y方向)は10mmとなっている。具体的に、第1のリジッド基板12の一端の両面には、電極パターンが形成されている。第1のリジッド基板12の電極パターンと半導体素子11の一方の面の電極パターンとが導電性接着剤、例えば、Agペースト等により電気的に接続されて、半導体素子11は第1のリジッド基板12に固定される。第1のリジッド基板は一端から他端(図1の下方)に配線された配線パターンを備える。配線パターンの一端は、第1のリジッド基板12の電極パターンを介して、半導体素子11の一方の面の電極パターンと電気的に接続される。配線パターンの他端は、リジッドフレキシブル基板の他端の表面に形成されたエッジコネクタ端子16と電気的に接続される。エッジコネクタ端子16との電気的な接続は、第2のリジッド基板14−1,14−2に形成されたビアホール(図示せず)を介して行われる。
【0021】
第1のリジッド基板12は、コリメータの複数の開口を隔てる壁部と同程度又は壁部の厚さ以下の厚さとなるような薄肉基板を用いる。例として、コリメータの壁部の厚さが0.2mmの場合、第1のリジッド基板12の厚さを0.2mm以下とする。以上より、第1のリジッド基板12の厚さは半導体素子11の厚さの1/6以下となる。第1のリジッド基板12はこのように薄肉基板を用いるため、半導体素子11が実装された第1のリジッド基板12単体では、自分自身が撓まないようにその形状を保つことは困難である。そこで、下記するように、第2のリジッド基板14−1,14−2に補強されて、第1のリジッド基板12の形状が保たれる構造となっている。
【0022】
フレキシブル基板13−1,13−2は、その一端(図1の上方)に向けて途中から第1のリジッド基板12から分離されている。第1のリジッド基板12から分離されたフレキシブル基板13−1,13−2の一端は半導体素子11の他方の面に接着固定される。また、フレキシブル基板13−1,13−2は、他端(図1の下方)側で第1のリジッド基板12及び第2のリジッド基板14−1,14−2と接着剤により接着されて一体化されている。
【0023】
フレキシブル基板13−1,13−2は一端から他端に配線される配線パターンを備え、配線パターンの一端は半導体素子11の他方の面の電極パターンと、導電性接着剤、例えば、Agペースト等により電気的に接続される。また、配線パターンの他端は、リジッドフレキシブル基板15の他端の表面に形成されたエッジコネクタ端子16と電気的に接続される。エッジコネクタ端子16との電気的な接続は、第2のリジッド基板14−1,14−2に形成されたビアホール(図示せず)を介して行われる。
【0024】
第2のリジッド基板14−1,14−2は、第1のリジッド基板12とフレキシブル基板13−1,13−2を間に挟んで配置され、接着剤により接着されて一体化されている。第2のリジッド基板14−1,14−2は、半導体素子11が固定されている第1のリジッド基板12に、第1のリジッド基板が撓まないようにその形状を保てる程度の強度を与えることができる厚さ(一例として、1〜2mm)を備える。
【0025】
第2のリジッド基板14−1,14−2のそれぞれの他端(図1の下方)の表面には、複数のエッジコネクタ端子16が形成されている。これら複数のエッジコネクタ端子16が形成されたリジッドフレキシブル基板15の端部により、エッジコネクタ部17が構成されている。エッジコネクタ部17は、他の回路基板のエッジコネクタソケットに着脱可能に接続される。このように、放射線検出器10は、他の回路基板と着脱可能なモジュール構成となっている。
【0026】
なお、第2のリジッド基板14−1,14−2の表面に、抵抗、コンデンサ、Aplication Specific Integrated Circuit(ASIC)、Field Programmable Gate Array(FPGA)等の電子部品を搭載することもできる。この場合、第1のリジッド基板12の配線パターンの一端は、ビアホールを介して、第2のリジッド基板14−1,14−2の表面の電子部品と電気的に接続し、当該電子部品の出力側を第2のリジッド基板14−1,14−2の配線パターンによりエッジコネクタ端子16と電気的に接続するようにする。フレキシブル基板13−1,13−2についても同様である。
【0027】
第1のリジッド基板及び第2のリジッド基板は、例えば、FR4等のガラスエポキシ基板からなる。
【0028】
半導体素子11は、略直方体状に形成され、第1のリジッド基板12の電極パターンと接続する側の一方の面と、この一方の面の反対面である他方の面とのそれぞれに電極パターンが設けられる(図示しない)。この他方の面の電極パターンは、フレキシブル基板13−1,13−2の電極パターンと電気的に接続される。放射線100は半導体素子11の端部から入射して、エッジコネクタ端子16側に向かって半導体素子11中を伝搬する。半導体素子11は放射線100が入射されると、放射線100の強度に応じた電気パルスを発生する。この電気パルスは第1のリジッド基板12又はフレキシブル基板13−1,13−2の配線パターンを通して第2のリジッド基板14−1、14−2に形成されたエッジコネクタ端子16を介して外部に伝送される。本実施の形態において、放射線を検出する半導体素子として、CdTe素子11を用いる。なお、γ線等の放射線を検出できる限り、半導体素子はCdTe素子11に限られない。例えば、半導体素子として、CdZnTe(CZT)素子、HgI2素子等の化合物半導体素子を用いることもできる。
【0029】
本発明の実施の形態に係る放射線検出器10は、第1のリジッド基板12、第1のリジッド基板12を間に挟んで配置された2つのフレキシブル基板13−1,13−2、フレキシブル基板13−1,13−2を間に挟んで配置された2つの第2のリジッド基板14−1,14−2を一体化したリジッドフレキシブル基板15を用い、半導体素子11を固定する側において、第2のリジッド基板14−1,14−2をなくすとともに第1のリジッド基板12とフレキシブル基板13−1,13−2を分離し、第1のリジッド基板12に半導体素子11の一方の面を接着固定するともに、フレキシブル基板13−1,13−2を半導体素子11の他方の面に接着固定している。第1のリジッド基板12の配線パターン、フレキシブル基板13−1,13−2の配線パターン及び第2のリジッド基板14−1,14−2の配線パターンは、リジッドフレキシブル基板15に一体化したときに互いの接続などの配線が行われている。よって、第1のリジッド基板12に半導体素子11の一方の面を接着固定するともに、フレキシブル基板13−1,13−2を半導体素子11の他方の面に接着固定することにより、その他の接続作業を行うことなく、放射線検出器10を組立が完了する。したがって、放射線検出器10の組立が容易となる。
【0030】
また、本発明の実施の形態に係る放射線検出器10は、コリメータの開口を隔てる壁部の厚さ以下の厚さを有する第1のリジッド基板12に半導体素子11を固定したので、放射線が入射しない部分を第1のリジッド基板12の部分だけにすることができると共に、薄い第1のリジッド基板12を用いたことにより複数の放射線検出器10を極めて狭い間隔で並べることができ、複数の放射線検出器10を放射線検出器立てに高密度に高い精度で実装できる。
【0031】
また、本実施の形態に係る放射線検出器10は、第1のリジッド基板12単体では複数の半導体素子10を機械的に保持することが困難であるものの、第2のリジッド基板14−1,14−2により第1のリジッド基板12を支持しているので、取り扱いに十分な強度を有した放射線検出器10を提供できる。これにより、複数の放射線検出器10を放射線検出器立てに挿入する場合の組み立て性が向上する。
【0032】
また、本実施の形態に係る放射線検出器10は、第2のリジッド基板14−1,14−2によって第1のリジッド基板12を支持するので、第1のリジッド基板12が撓むことを抑制できる。これにより、第1のリジッド基板12の撓みにより半導体素子11のピクセルの位置がコリメータの開口の位置からずれることを抑制でき、複数の放射線検出器10を密に並べた場合に、一の放射線検出器10に対する他の放射線検出器10の位置の厳密な制御に資することができる。
【0033】
更に、本実施の形態に係る放射線検出器10は、半導体素子11が固定されたリジッドフレキシブル基板15に予め形成されたエッジコネクタ端子16を備えるので、放射線検出器立てのエッジコネクタソケットに放射線検出器10を差し込むだけで放射線検出器立てに実装することができる。これにより、複雑な形状のコネクタを準備することを要せず、簡潔な実装を実現できる。
【符号の説明】
【0034】
10 放射線検出器
11 半導体素子
12 第1のリジッド基板
13−1,13−2 フレキシブル基板
14−1,14−2 第2のリジッド基板
15 リジッドフレキシブル基板
16 エッジコネクタ端子
17 エッジコネクタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出するための半導体素子と、
第1のリジッド基板と、前記第1のリジッド基板を間に挟んで配置された2つのフレキシブル基板と、前記2つのフレキシブル基板を間に挟んで配置された2つの第2のリジッド基板とが一体化されたリジッドフレキシブル基板と、
を備え、
前記リジッドフレキシブル基板の一端は、前記第1のリジッド基板と前記2つのフレキシブル基板とからなり、前記第1のリジッド基板と前記フレキシブル基板が分離され、
前記第1のリジッド基板の一端側の両表面に前記半導体素子の一方の面が固定されるとともに、前記フレキシブル基板の一端側に前記半導体素子の他方の面が固定された放射線検出器。
【請求項2】
前記第1のリジッド基板は、前記半導体素子の幅の1/6以下の厚さを備える請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記第1のリジッド基板は、前記半導体素子の放射線に対する入射面側に装着されるコリメータの複数の開口を隔てる壁部の厚さ以下の厚さを備え、
前記第2のリジッド基板は、前記第1のリジッド基板が撓まないようにその形状を保てる程度の強度を与えることができる厚さを備える、
請求項1記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記リジッドフレキシブル基板の他端にエッジコネクタ部が形成されている請求項2又は3記載の放射線検出器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−209210(P2011−209210A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79010(P2010−79010)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】