説明

放射線治療装置用の照射検証デバイスおよびその操作方法

本発明は、細胞支持体(3)の位置に固定された生細胞物質を含む照射検証装置(1)に関する。細胞支持体(3)は細胞支持体ホルダー(5、6)の間に配置される。照射検証のために、照射検証装置(1)のz座標は光線軸Zの方向に調節され、これにより、照射後に、死滅させられた細胞物質を有する領域を、照射検証装置(1)のまだ活性である細胞物質を有する領域から、照射のコンセプトを参照して空間座標内で区別することができる。細胞支持体(3)用のインサート(4)および細胞支持体ホルダー(5、6)を有する容器(2)は、放射線に透過性の材料を含む。細胞支持体ホルダー(5、6)は、ベースプレート(5)およびカバープレート(6)を有し、これらの間に細胞支持体(3)が保持プレート(5、6)に直角に配置される。保持プレート(5、6)は、互いに揃えられた止まり穴(8、9)を有し、ここに細胞支持体の端部(10、11)が配置され、細胞支持体(3)は固体のロッド(12)であり、これの外表面(13)に細胞物質が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線治療システムのための照射検証装置であって、該照射検証装置は、インサートを有する容器内のx、yおよびz3次元空間座標の位置において、インサートの細胞支持体上に固定された生細胞物質を含む。かかる種類の照射検証装置は、A. Mitaroffらによる「Biological Verification of Heavy Ion Treatment Planning」Radiat Environ Biophys (1998) 37, pp. 27-52から知られている。照射検証装置は、放射線スキームの有効性を、光線治療システムをヒトの処置用に公開するのに先立ちチェックするために用いられる。
【背景技術】
【0002】
上記刊行物に記載の照射検証装置の場合、生細胞物質は、幅9mm、長さ53mmおよび厚さ1mmのプラスチックスライド上に載せる。細胞物質で被覆されたこれらのスライドを、2枚の溝付きプレート(slotted plate)の間にスライドさせて入れ、ここでこのプレートの溝はプラスチックスライドの幅と厚さに対応し、細胞による被覆のための余裕があるため、これらは互いに水平方向に規定の間隔で配置され、第3の連続して溝のついたプレートを用いて固定される。
【0003】
生細胞物質で被覆されたスライドを含む、このような様式で準備されたインサートは、円筒容器に入れられ、照射位置、例えばいわゆる「ヘッドファントム」としての照射位置に配置されるが、この位置は、腫瘍の照射のため、例えばヒトの頭などの照射位置に対応する。検証のために放射プログラムが開始され、「ヘッドファントム」は対応して照射され、容器の容積中の死滅させられる細胞の位置が、スライドを用いて次に決定される。
【0004】
既知のモデルは次のような欠点、すなわち、正確な境界決定のために、幅9mmで高さ52mmのスライドは光線に垂直なx方向およびy方向に分解能を提供し、これは高分解能を除外するという欠点を有する。その結果、照射された組織と非照射組織の間の遷移領域が、境界領域または遷移領域においては比較的不正確にのみ、識別可能である。照射方向には生細胞を搭載することは不可能であるが、その理由は、この場合利用できるのがスライドの側面の1mmのみだからである。この結果、特にスライドが再分割できないために、分解能はx方向に9mm、y方向に52mmとなる。
【0005】
さらなる欠点は、スライドからなる細胞支持体が、照射の前後に支持プレートの2つの溝を介して引っ張られ、細胞物質に制御不能な損傷を生じる場合があり、これによって結果が偽りとなることである。
【0006】
W. G. Woutersの刊行物「Measurements of Relative Biological Effectiveness of the 70 MeV Proton Beam at TRIUMF using Chinese Hamster V 79 Cells and the High Precision Cell Sauter Assay」Radiation Research Vol. 146, pp. 159-170 (1996), Radiation Research Societyから、光線に対して透過性の中空管を充填するのに用いる栄養ゲル内に生細胞が含まれる、照射検証装置が知られている。照射の間、中空管内のゲル塊は4℃に冷却されて、ゲルが硬化する。照射後、ゲル塊は管から取り外して切片に分割することができ、死滅物質と比べた活性化可能な生細胞の局所的分布が、再培養により確認可能である。この照射検証装置は、多数の管を互いに隣接して積み重ねた場合には、xおよびy方向に12mmのみの分解能を提供するが、これは、細胞の発達と生存には十分なゲル塊が必要であり、中空円筒の直径はさらに減少できないからである。
【0007】
それでも、ゲルを2mmの切片に分割することにより、z方向に高い分解能が実現でき、実験を行って次のことが示された:均一な幅にカットされない切片のリスクがあり、この場合、試料位置の正確な位置決定と、関連する用量の決定が不可能となる。
W. G. Woutersによる照射検証装置はしたがって、ゲル試料が適切な精度で得られた場合には良好な深度プロファイルを提供するが、A. Mitaroffらによる照射検証装置は、xおよびy方向の分布に関連する追加の情報を、ただしより低い分解能において提供する。
【0008】
本発明の課題は、光線療法システム用の照射検証装置を提供することであって、該装置は分解能が高く、そのため計画照射スキームをより高い信頼性でチェックすることができるものである。さらに、より迅速に結果を提供するために、改善された分解能と共に操作性が促進されていなければならない。
【発明の開示】
【0009】
この課題は、独立請求項の対象により解決される。本発明の有利な発展は、従属請求項により与えられる。
本発明により照射検証装置が提供され、該装置は、インサートを有する容器内のx、yおよびz3次元空間座標内の位置において、細胞支持体上に固定された生細胞物質を有する。該細胞支持体は細胞支持体ホルダーの間に配置される。照射検証のために、照射検証装置のz座標は光線軸Zの方向に調節され、これにより、照射後に、死滅させられた細胞物質を有する領域を、照射スキームを参照して、照射検証装置のまだ活性である細胞物質を有する領域から空間座標内に区別することができる。
【0010】
細胞支持体用のインサートおよび細胞支持体ホルダーを有する容器は、光線に透過性の材料を含む。細胞支持体ホルダーは、ボトムプレートおよびトッププレートを含み、細胞支持体はこれらの間に保持プレートに直角に配置される。保持プレートは、互いに揃えられた止まり穴を有し、ここに細胞支持体の端部が配置される。細胞支持体は固体のロッドであり、これの外表面に細胞物質が固定されるかまたは増殖される。
【0011】
かかる種類の照射検証装置は、ロッド形状の細胞支持体がその外表面に生細胞物質を有したのちに、迅速かつ簡単に組み立てられるという利点を有する。さらに、組み立ての間に、すなわち固体ロッドをベースプレートの止まり穴に挿入する際に、およびトッププレートの止まり穴に細胞ロッドの自由端を挿入することによりトッププレートを細胞ロッドに載せる際に、従来のスライド溶液を用いる場合にそうであったように、細胞物質を有する暴露された外表面が損傷されることはない。最後に、固体ロッドは、保持プレートの間にそれらの止まり穴によって非常に密度高く積み重ねることができ、そのため、光線の方向またはz座標と、水平のx座標の両方において、高い分解能が実現できる。
【0012】
垂直のy座標については、固体ロッドを照射後に、端部に細胞物質を有する薄い切片に分割することにより、特に高い分解能が実現できる。細胞支持体については、特に水の約1g/cmに近い密度を有し、特に、金属と酸素より高い原子番号の元素とを含まない、細胞適合性物質を提供することができる。この目的のため、細胞支持体は好ましくはポリスチレン材料からなり、これは、正確かつ簡単に、小さな間隔と低い費用で個別の切片に分割することができるという利点を有する。
【0013】
本発明の好ましい態様において、細胞支持体を保持プレートの間に互いに中心をずらせた列に配置することにより、2つの保持プレートの高い充填密度が増加する。この配置において、偶数個の固体ロッドまたは細胞支持体を有する列が、奇数個の固体ロッドを有する列と交互になる。同時にロッド間の最小間隔が維持される場合は、照射方向と水平x方向の分解能が、前の照射検証装置に比べて実質的に改善され、特に、大きな試験容積については、空間の全方向についてチェックすることができる。
【0014】
ほぼヒトの頭に対応し、それゆえ「ヘッドファントム」とも呼ばれる大きな照射容積をカバーするため、25mm≦l≦75mmの間の長さlを、好ましくは約50mmの長さlを有する細胞支持体を用いるのが好ましい。生細胞により被覆されたこれらのロッドの測定長さまたは外表面はしかしながら、これより短くなり、その理由は、例えば、かかるロッドがベースプレートの止まり穴に約10mm固定され、また、トッププレート内に自由端を固定するために、長さの一部例えば5mmが、かかる種類のトッププレート内の止まり穴の中に消えるためである。
【0015】
固体ロッドの直径dは、照射方向Zの分解能に、すなわち、照射検証装置を用いた深度測定に、およびx方向における光線の水平偏向Xに、非常に重要である。直径dはmm単位で1.0mm≦d≦5mm、特に1.5mm≦d≦5mmであり、直径は好ましくは約3mmである。
光線方向の分解能および光線の水平偏向の分解能も、細胞支持体間の最小間隔aに依存し、mm単位で間隔aは0.5mm≦a≦5mmであり;間隔aはmm単位で好ましくは2.5mmである。
【0016】
ポリスチレンの固体ロッドに2つの保持プレート間の高い締付圧力が負荷されないように、または損傷されないようにするために、保持プレートの周辺側面には突起が設けられ、突起は保持プレートの間のスペーサーの上に載っており、これによって、ロッド形状の細胞支持体は、ベースプレートとトッププレートの間にすき間嵌めで有利に配置される。さらに、ベースプレートの止まり穴の深さがトッププレートの止まり穴の深さより深くできるために、すき間嵌めにも関わらず、ベースプレートに導入されたロッドはトッププレートの方向により正確に配置される。
柱状またはロッド形状の細胞支持体の、止まり穴への導入を促進するために、保持プレートの止まり穴は、その外縁がテーパー状の皿穴を有する。この皿穴のために、ロッド形状細胞支持体はいかなる損傷もなく、設けられた止まり穴にスライドして入る。照射検証装置は好ましくは、S個の固体ロッド形状の細胞支持体を有し、Sは150≦S≦900、特に400≦S≦900である。
【0017】
固体ロッドの外表面上の生細胞は、栄養素を有しこれを供給される必要があり、これに対して、1種または2種以上のガスが栄養培地に溶解でき、例えば酸素および/または二酸化炭素である。したがって、さらに好ましい態様において、2つの保持プレートのうちの1つには、止まり穴に加えて貫通穴も設けられる;本発明の好ましい態様において、例えば栄養溶液を貫流させるために、貫通穴は常に、隣接する3個の止まり穴により形成される三角形の中心に設けられる。
ロッド形状細胞支持体の位置の正確な割り当てを可能とするために、ベースプレートおよび/またはトッププレート上のロッドの位置に、マーク線または連続する位置番号を設けるのが好ましい。さらに、インサートは、保持プレート用のスペーサーの延長としての、容器のベースに向かうさらなる延長部を有し、これは直立脚として機能する。
【0018】
かかる種類の生物学的照射検証装置の場合、ロッドの栄養液は常に攪拌されていなければならず、容器は、インサートのベースプレートと容器のベースとの間のベース領域に、少なくとも1つの攪拌システムを有し、これは直立脚により作り出された中間スペースの中に配置される。容器は、インサートの設置のために上が開いており、さらに少なくとも1つの入口開口および出口開口を、栄養液および/または酸素などの培地用に有する。培地用開口により、容器の内部スペースに適切な栄養液および/または酸素が供給され、一方で上部の装着用開口は、インサートが配置された後は閉じられる。
【0019】
本発明の照射検証装置は、好ましくはX線治療システムまたは陽子線治療システムなどの光線治療システムにおいて用いられる;特に、本発明の照射検証装置は、ヘリウムイオンビーム治療システムおよび/または炭素イオンビーム治療システムのために開発された。
本発明による照射検証装置の操作方法は、以下の方法段階を含む。まず、ロッド形状細胞支持体の外表面に、活性生細胞物質を適用する。次に、照射検証装置の容器のインサートを組み立てる。このために、生細胞物質を有する細胞支持体を2つの保持プレートの間に一緒にまとめ、組み立てたインサートはスペーサーで固定する。このプロセスにおいて、ベースプレートに印をつけることは、組み立ておよび続く取り外しに有利であり、ベースプレートにさらに深い止まり穴を設けて、その中にロッド形状細胞支持体を配列し確実に直立させることも有利である。
【0020】
次に、完成したインサートを容器に導入するが、該容器はそれまで栄養液で満たされていた。さらに、入口開口を介して容器に酸素を供給し、必要に応じてさらなる新鮮な栄養液を供給する。その後、照射システムの光線方向Zに対して、照射検証装置のx、yおよびz空間座標を配置する。計画照射スキームを次に実装することができ、それと同時にまたは続いて、結果を保存するために、栄養液の温度制御、例えば冷却または暖めを行う。細胞支持体をインサートから取り外した後、これらを切片に分割する。切片の端でまだ生きている細胞物質を検出する。続いて結果を、選択された解析評価項目を参照して、照射計画と比較する。
【0021】
この操作方法は、光線治療システムの生物学的検証のための従来技術と比較した本照射検証装置の利点を、明確に示す。
本発明を、添付の図を参照してさらに詳細に説明する。
【0022】
図1は、透視図において図式的に、本発明の態様による照射検証装置1のインサート4を、この場合は組み立て位置において示す。ここに示された組み立て位置は、図4に示す照射位置とは次の点で異なる:図1ではインサート4は照射検証装置1の円筒容器(図示されず)内に180度回転して挿入されており、そのためここに示すトッププレート6は、図4では下部保持プレートとなり、図1の組み立てに示されたベースプレート5は、図4の照射位置では上部保持プレートを形成する。
【0023】
ここに示す組み立て位置におけるベースプレート5は約12mmの厚さを有し、止まり穴(blind bore)または止まり穴8の列を有し、これらは5.5mmのピッチで列14および15に互い隣接して配置されている。ベースプレート5における止まり穴8の深さは、トッププレート6における止まり穴9のそれよりも深い。本発明のこの態様において、止まり穴8および9は直径3.2mmで、一方ロッド形状細胞支持体3の直径は3mmである。目的のために、細胞支持体3の固体ロッド12はポリスチレン製で、その外表面13に生細胞コロニーを有する。本発明のこの態様におけるロッド数は587である。
【0024】
この細胞物質12は外表面13を被覆し、ロッド形状細胞支持体3の全長lに第一端部10まで広がり、ベースプレート5の止まり穴8に10mmの深さまで、遊隙嵌め(play fit)で導入されている。ロッド長lの50mmのうち、さらに3.5mmはトッププレート6の止まり穴9に配置され、したがって外表面13が細胞物質で被覆される純ロッド長36.5mmが、計画照射スキームの生物学的検証のために、光線軸の直角方向で利用可能である。トッププレートは5mmの厚さで、細胞支持体3を搭載するための止まり穴9に加えて貫通穴27も有し、これを通って酸素および栄養液が細胞培養物の領域内に流れ込むことができる。そのため、ここに示すトッププレート6は、照射位置において下部保持プレート位置を占める。
【0025】
次に図1においてトッププレート6を越えて突き出ている片は、照射検証装置1の容器(図示されず)の直立脚28として機能する。直立脚28が保持プレート6から突き出ている分量である直立脚28の高さhは、照射位置において、ベース領域内に中間スペースを作り出すのに十分大きく、この中で撹拌システムを動作させて栄養液を攪拌し続けることができる。トッププレート6の貫通穴27はしたがって撹拌システムの動作の領域内にちょうど位置し、酸素に加えて栄養液も貫通穴27を通って流れる。直立脚28は、保持プレート5および6からの突起17〜20の上に配置され、周辺側面21〜24にはスペースを維持するためのスペーサー16が配置されて、固体ロッド12が止まり穴8および9内に遊隙嵌めを維持し、細胞支持体3の端部10および11にいかなる圧力も及ぼさないようになっており、ここで細胞支持体は1.0mm〜5.0mmの直径、好ましくは約3mmの直径を有する。
【0026】
図2は、透視図において図式的に、図1によるインサート4のベースプレート5を示す。ベースプレート5は、12mm±1mmの厚さを有し、止まり穴8またはポケット穴が導入され、これは10mmの深さtに届く。直径の許容誤差を約0.2mmとすると、スペーサーが設けられてトッププレートが載せられるまでの間、細胞支持体は止まり穴の中にベースプレート5に垂直に立つことができる。
【0027】
図3は、透視図において図式的に、図1によるインサート4のトッププレート6を示す。トッププレート6の止まり穴9は、図2に示すベースプレート5の止まり穴8と整列させることができる。組み立て時に、ロッド形状細胞支持体がトッププレート5の止まり穴9にスライドして入ることができるために、トッププレート6の止まり穴9は、止まり穴9の縁29がテーパー状の皿穴25を有する。トッププレートはさらに貫通穴27を有し、これらは、トッププレート6の3個の止まり穴9の群により形成される三角形の中心に位置する。
【0028】
図4は、透視図において図式的に、照射位置にあるインサート4を示し、ロッド形状細胞支持体3、ベースプレート5、トッププレート6、スペーサー16および直立脚28を含んで組み立てられたインサート4は、180度回転され、トッププレート6は現在下部細胞支持ホルダーを構成し、そしてガス、例えば酸素および/または二酸化炭素、並びに栄養物質がトッププレート6に配置された貫通穴を取って流れることができ、ロッド形状細胞支持体3の外表面13にある生細胞に供給される。組み立てにおけるベースプレート5は、現在、容器2の上部細胞支持ホルダーを形成し、該容器の外形は破線で表され、一方直立脚28は容器2の内部ベース30の上に乗り、内部ベース30に対して中間スペースを形成し、本発明5のこの態様においてこのスペース内に撹拌システム(図示されず)が配置され、これは毎分100〜200回転で、好ましくは毎分130回転で動作する。
【0029】
ロッド形状細胞キャリア3は24列で、23個または24個の固体ロッド12の列が、外表面13に細胞物質を有して、細胞支持ホルダー5および6または保持プレート5および6の間に、互いにずらされて(offset)配置される。プレート5および6の間に、ロッド形状細胞キャリア3に負荷を与えることなく所定の間隔を維持するために、直径8mmのポケット穴および3.2mmの中心貫通穴を、4つの突起17〜20に配置し、内部ねじ山を有する中空円筒をスペーサー16として用いることができて、これにより上部細胞支持ホルダー5をナイロン製ねじ込みロッドまたはねじによってスペーサーに固定でき、下部細胞支持体6は、ねじ込みロッドにより結合し、直立脚30をねじ込みロッドにねじつけることができる。内部ねじ込みロッドとスペーサー16を用いた結果、細胞支持体を容器のベースに対して固定する正確な枠組みが提供され、直立脚を、容器2のベース30上の予め作製された要素(図示されず)内に導入することができ、細胞支持体3を、照射位置において照射システムの光線方向Zに対して、正確に調節することができる。
【0030】
図5は計画照射スキーム7を示し、これは次に本発明の照射検証装置の支援により、2つの照射検証実験を用いて試験される;この文脈において、ここに示す照射スキーム7のU字領域32は腫瘍容積を通る部分を示し、光線方向Zはz方向である;この照射計画7では、目的は以下である:z方向に約90〜110mmの深さにおいて細胞物質を最大限死滅させ、そしてz方向に110〜140mmかつ水平偏向方向に100〜140mmの幅では、この死滅が最小の損傷または損傷無しであり、さらに深い140〜160mmにおいては細胞物質は再度損傷されること。一方、約140mm〜155mmの間の水平偏向領域では、全ての細胞物質が約90mm〜160mmの間の深さで連続して損傷されるべきである。文字a〜fは、計画領域における細胞物質の生存率を表す。
【0031】
図6は、上面図において図式的に照射検証装置の容器2を示し、これと共に、内壁31の境界のみを円で示し、2つのアーム(limb)33および34と結合部35とを有する計画U字領域32を囲み線36で示す。光線方向は矢印Zで示し、数字は細胞物質の生存率を表す。第1実験の経過において既に次のことが明らかになっている:アーム33および34の領域と結合部35の領域における生存率は0.01〜0.25と非常に低く、その間の深部領域37では、細胞物質が生存する可能性は生存率0.7〜1.5と非常に高いが、しかし、照射アーム33と34の間の中間領域37も、U字照射領域32のより深い位置のアーム34にまで届かねばならないイオンがこの中間領域37を通過するために、光線の負荷を受けているのである。
【0032】
図7は、上面図において図式的に、照射検証装置の容器2と細胞支持体群についての結果の記号を示し、これにより第1実験の結果が確認された;すなわち、U字領域の細胞は0.01〜0.25のオーダーの規模の生存率で生存したが、一方U字照射領域32の外側に配置された細胞物質ははるかに損傷が少ない。
【0033】
図8は、上面図において図式的に、照射検証装置1の容器2と細胞支持体3の群の平均した結果の記号を示す。測定結果を平均化したため、より強く照射されたU字領域が、細胞物質の平均生存率の結果としてよりはっきりと示される。結果のさらに正確な解析を図9〜13に示す。
【0034】
図9は、U字照射領域32を通る検証測定線の位置の計画を示し、測定線A−AおよびB−Bは光線方向Zまたは光線軸に従い、測定線C−CおよびD−Dは光線の水平偏向方向Xに記録される。
【0035】
図10は、図9の検証測定線A−Aに沿った測定結果の平均値を示す。検証測定線A−Aは、U字領域のアーム33および34とその間の領域37を通り、検証測定線B−Bは、U字領域の結合部に位置している。図10に示す平均値は、中間領域37の生存率が、U字領域の前後の領域よりはるかに高いことをはっきりと示している。さらに、アーム領域33および34の測定値は、縦軸にプロットされている細胞物質の生存の可能性が、アーム33および34の間の中間領域37の値よりもはるかに低いことを示す。
【0036】
図11は、図9の検証測定線B−Bに沿った測定結果の平均値を示し、ここではU字領域32の結合部35をz方向について検討する;生存測定値は、この領域において、生存している細胞物質が中間部35の幅全体にわたって大きく減少していることを、はっきりと示している。
【0037】
図12は、図9の検証測定線C−Cに沿った測定結果の平均値を示し、ここでこの線は、光線の入力側の前面に位置するアーム全体を通り、水平偏向方向xでの値を示す。ブラッグのイオンブレーキング曲線(Bragg ion braking curve)を用いて理論的に計算した値を実線で示し、これはアーム領域33において測定値を大きく超えており、したがって腫瘍細胞の効果的な不活性化が増加している。
【0038】
図13は、図9の検証測定線D−Dに沿った測定結果の平均値を示し、ここでまず2つのアーム33および34の間の中間領域37が測定され、続いて結合部が光線の水平偏向方向Xのx方向に通過されて、細胞物質生存の可能性のわずかな減少が、中間領域で観察される。結合部35内でのみ、細胞物質生存の大幅な低下が示されている。実線は再度、組織においてブラッグのイオンブレーキング曲線に基づき計算した値を示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】透視図において図式的に、本発明の態様による照射検証装置の組み立て位置におけるインサートを示す図である。
【図2】透視図において図式的に、図1によるインサートのベースプレートを示す図である。
【図3】透視図において図式的に、図1によるインサートのトッププレートを示す図である。
【図4】透視図において図式的に、照射位置における図1によるインサートを示す図である。
【図5】2つの照射検証実験用の計画照射スキームを示す図である。
【図6】上面図において図式的に、照射検証装置の容器と、第1照射実験の細胞支持体群についての結果の記号を示す図である。
【図7】上面図において図式的に、照射検証装置の容器と、第2照射実験の細胞支持体群についての結果の記号を示す図である。
【図8】上面図において図式的に、照射検証装置の容器と、細胞支持体群についての平均された結果の記号を示す図である。
【図9】照射検証装置を通る検証測定線A〜Dの位置の計画を示す図である。
【図10】図9の検証測定線A−Aに沿った、実験の平均値を示す図である。
【図11】図9の検証測定線B−Bに沿った、実験の平均値を示す図である。
【図12】図9の検証測定線C−Cに沿った、実験の平均値を示す図である。
【図13】図9の検証測定線D−Dに沿った、実験の平均値を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 照射検証装置
2 容器
3 細胞支持体
4 インサート
5 ベースプレートまたは保持プレート
6トッププレートまたは保持プレート
7 照射スキーム
8 止まり穴(ベースプレート)
9 止まり穴(トッププレート)
10 細胞支持体の端部(ベースプレート)
11 細胞支持体の端部(トッププレート)
12 固体ロッド
13 外表面
14 細胞支持体の列
【0041】
15 細胞支持体の列
16 スペーサー
17 突起
18 突起
19 突起
20 突起
21 周辺側面
22 周辺側面
23 周辺側面
24 周辺側面
25 テーパー状皿穴(ベースプレート)
【0042】
26 テーパー状皿穴(トッププレート)
27 貫通穴
28 直立脚
29 止まり穴の端
30 容器の内部ベース
31 内壁
32 U字領域
33 U字領域のアーム
34 U字領域のアーム
35 U字領域の結合部
36 囲み線
37 中間領域 A−A 検証測定線
【0043】
B−B 検証測定線
C−C 検証測定線
D−D 検証測定線
t 止まり穴の深さ
h 直立脚の高さ
d ベースプレートの厚さ
Z 光線方向
X 光線の水平偏向方向
Y 光線の垂直偏向方向
xyz 空間座標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線治療システム用の照射検証装置であって、照射検証装置(1)は、インサート(4)を有する容器(2)内のx、yおよびz3次元空間座標内の位置において、インサート(4)の細胞支持体(3)上に固定された生細胞物質を有し、細胞支持体(3)は細胞支持体ホルダー(5、6)の間に配置されており、照射検証のために、照射検証装置(1)のz座標は光線軸Zの方向に調節され、これにより、照射後に、死滅させられた細胞物質を有する領域を、照射スキーム(7)を参照して、照射検証装置(1)のまだ活性である細胞物質を有する領域から空間座標内で区別することができ、ここで、
−インサート(4)および細胞支持体(3)および細胞支持体ホルダー(5、6)を有する容器(2)は、光線透過性の材料を含み、
−細胞支持体ホルダー(5、6)は、ベースプレート(5)および、ベースプレート(5)の反対側に位置するトッププレート(6)を有し、これらの間に細胞支持体(3)が保持プレート(5、6)に直角に配置され、保持プレート(5、6)は、互いに揃えられた止まり穴(8、9)を有し、ここに細胞支持体(3)の端部(10、11)が配置され、
−細胞支持体(3)は固体のロッド(12)であり、これの外表面(13)に細胞物質が固定される、
前記装置。
【請求項2】
細胞支持体(3)が、金属、酸素より大きい質量数を有する元素のいずれも含まず、水の約1g/cmに近い密度を有し、好ましくはポリスチレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の照射検証装置。
【請求項3】
細胞支持体(3)が、保持プレート(5、6)の間に互いにずらされて列(14、15)に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の照射検証装置。
【請求項4】
細胞支持体(3)の長さlが、25mm≦l≦75mm、好ましくは約50mmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項5】
細胞支持体(3)のmm単位で表す直径dが、1.0mm≦d≦5mm、特に1.5mm≦d≦5mm、好ましくは約3mmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項6】
細胞支持体(3)間のmm単位で表す最小間隔aが、0.5mm≦a≦5mm、好ましくは2.5mmであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項7】
保持プレート(5、6)の間に、少なくとも3個の、好ましくは4個のスペーサー(16)が配置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項8】
スペーサー(16)が、保持プレート(5)の周辺側面(21〜24)の突起(17〜20)の間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項9】
ベースプレート(5)が、トッププレート(6)に比べて、固体ロッド(12)の1つの端部(10)を固定するための、より深い止まり穴(8)を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項10】
保持プレート(5、6)の止まり穴(8、9)が、外縁がテーパー状の皿穴(25、26)を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項11】
保持プレート(5、6)の少なくとも1つが、上側において止まり穴(8、9)の間に分散して配置された貫通穴(27)を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項12】
保持プレート(5、6)が、細胞支持体(3)の位置を識別するためのマークを有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項13】
インサート(4)が、容器(2)のベース領域に向いた直立脚(28)を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項14】
容器(2)が、栄養液および/または1種もしくは2種以上のガス、特に酸素のための、入口開口および出口開口を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項15】
容器(2)が、円筒形の内壁と、ベース領域において、ロッド形状細胞支持体(3)の外表面(13)上の生細胞物質への栄養液分配のための、少なくとも1つの攪拌装置とを有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項16】
照射検証装置(1)が、y空間座標方向における光線のY偏向方向に対し、x空間座標方向における光線のX偏向方向に対するより高い位置分解能を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項17】
照射検証装置(1)が、z空間座標方向における光線のZ伝播方向に対し、x空間座標方向における光線のX偏向方向に対するのと同じ位置分解能を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項18】
照射検証装置(1)が、S個の細胞支持体(3)を有し、Sは150≦S≦900、特に400≦S≦900であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の照射検証装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の照射検証装置(1)の、光線治療システムにおける、例えばX線治療システムまたは陽子線治療システム、特にヘリウムイオンビーム治療システムまたは炭素イオンビーム治療システムにおける、使用。
【請求項20】
以下の方法段階を含む、請求項1〜18のいずれかに記載の照射検証装置(1)の操作方法:
−ロッド形状細胞支持体(3)の外表面(13)に、活性な生細胞物質を提供すること、
−照射検証装置(1)の容器(2)のインサート(4)を、インサート(4)の2つの保持プレート(5、6)の間に生細胞物質を有する細胞支持体(3)を配置して組み立て、組み立てたインサート(4)をスペーサー(16)で固定すること、
−インサート(4)を、一時的に栄養液で満たしていた容器(2)に導入すること、
−1種または2種以上のガス、特に酸素を、入口開口を介して容器(2)に供給すること、
−照射検証装置(1)のx、yおよびz空間座標を、光線方向に対して正しく合わせること、
−計画照射スキーム(7)を実施し、同時にまたは引き続いて、結果を保存するために栄養液の温度制御を行うこと、
−細胞支持体(3)をインサート(4)から取り外すこと、
−ロッド形状細胞支持体(3)を切片に分割し、分割した切片上の未だ生きている細胞物質を検出すること、
−結果を、選択された解析評価項目および照射計画を参照して比較すること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−529393(P2009−529393A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558700(P2008−558700)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002156
【国際公開番号】WO2007/104520
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(504343177)ゲーエスイー ヘルムホルツツェントルム フュア シュヴェアイオーネンフォルシュング ゲーエムベーハー (8)
【住所又は居所原語表記】Planckstr. 1, D−64291 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】