放射線照射デバイスにおけるエネルギー源を安定化するための方法および装置
マイクロ波エネルギー源を安定化するため放射線照射デバイスおよび方法。デバイスは、マイクロ波エネルギー源、およびエネルギー源に結合されたマイクロ波利用デバイスを備える。非相反的伝送デバイスは、エネルギー源を利用デバイスに結合し、そのデバイスからエネルギーの未利用部分を受け取る。伝送デバイスは、未利用エネルギーを調整し、調整済みのエネルギーをエネルギー源に戻す。伝送デバイスは、調節がエネルギーの他の特性に影響を及ぼさないようにエネルギーの第1の特性を調節するように動作する第1のコンポーネントを備える。戻された調整済みエネルギーは、システム内の未利用エネルギーが最小になるようにエネルギー源の周波数を調整し、これにより、エネルギー源により出力されたエネルギーの周波数を安定化する機能を果たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2006年8月15日に出願された仮特許出願第60/837,901号の優先権を主張するものである。
本発明は、放射線治療システムなどの放射線照射デバイスに関する。より具体的には、本発明は、システム内の粒子加速器からの出力を最適化するために、マグネトロン発振器などのマイクロ波エネルギー源の動作周波数を安定化するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療用の医療機器は、高エネルギー放射線を使って腫瘍性組織を治療する。放射線の線量とその位置は、腫瘍が破壊されるのに十分な放射線を受けること、ならびに周囲および隣接する非腫瘍性組織に対する損傷が最小限に抑えられることの両方が確実になされるように正確に制御されなければならない。強度変調放射線治療(IMRT)では、それぞれが強度および/またはエネルギーに関して独立して制御されうる複数の放射線を用いて患者を治療する。これらの複数の放射線は、患者を中心として異なる角度から方向付けられ、組み合わさって所望の線量パターンを形成する。外部線源放射線治療では、患者の外部にある放射線源で内部の腫瘍を治療する。通常、外部線源は、腫瘍部位に対してのみビームが当たるようにコリメートされる。典型的には、放射線源は、高エネルギーX線、電子、または高度にコリメートされた放射性同位体からのガンマ線からなる。このタイプの放射線治療を実行する放射線源は、マイクロ波電力を直線加速器(「ライナック;LINAC」)に供給する、マグネトロンとして知られるデバイスを備えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マグネトロン駆動直線加速器を使用してIMRTで患者を効果的に治療するために、ライナックから出力される放射線の線量は安定している必要がある。マグネトロンは、後述のシステムなどの、適度なサイズの回転式放射線治療用照射システムとの使用に適しているコンパクトな電源を備えている。しかし、直線加速器は、一般に、マグネトロンにより容易に得られる一定出力に対しより大きな周波数安定性を必要とする。マグネトロンの機械的振動は、連続照射IMRTシステムにおいて望ましい出力変動を超える出力変動を発生するほどの周波数変動を引き起こす可能性がある。そこで、本発明では、所望の一定出力を得られるようにマグネトロン周波数を安定化するための手段を実現する。実際、本発明は、マグネトロンなどの線源デバイスをとり、広い特性を持たせ、デバイスを共振性の高い負荷(例えば、ライナック)に結合することでデバイスをより狭い帯域幅内で動作するように制限することを対象とする。システムにおける不安定性を防止するために、マグネトロンの出力周波数は、ライナックの動作周波数と調和しているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、本発明は、放射線照射デバイスを実現する。デバイスは、マグネトロンなどのマイクロ波エネルギー源、およびエネルギー源に結合されたマイクロ波利用デバイスを備える。非相反伝送デバイスは、エネルギー源を利用デバイスに結合し、利用デバイスからエネルギーの未利用部分を受け取る。伝送デバイスは、未利用エネルギーの少なくとも一部分を調整し、調整済みのエネルギーをエネルギー源に戻す。伝送デバイスは、調節がエネルギーの他の特性に影響を及ぼさないようにエネルギーの第1の特性を調節するように動作する第1のコンポーネントを備える。戻された調整済みエネルギーは、放射線照射デバイス内の未利用エネルギーが最小になるようにエネルギー源の周波数を修正する機能を果たす。
【0005】
この場合、例示されている実施形態では粒子加速器である利用デバイスは、エネルギー発生源に固有のものと比べて狭い動作帯域幅を有する。この差は、ビームエネルギーから高周波(RF)振動への高効率の変換を行うために大電流電子ビームの熱拡散により占有される相空間の大きな部分から電子を集めるのにマグネトロンが必要であることによる。加速器の狭い帯域幅は、所定の投入電力に対する最短の実用的長さにおいて最高の放射エネルギーを発生するために最大化された内部電界を発生するという目標の結果である。本発明によるシステムを安定化させる方法は、任意のRF加速粒子/光子ベースのモダリティに応用できる。
【0006】
マグネトロンにより集められたマイクロ波エネルギーは、導波路などの非相反伝送デバイスに通されて、直線加速器に送られ、そのエネルギーを使用して高エネルギー電子および/またはX線を発生する。マグネトロンの出力周波数は、従来の自動周波数制御フィードバックループを使用して熱的変動を追跡することで、ライナックの共振動作周波数に機械的にチューニングされる。マイクロ波エネルギーは、マグネトロンからのエネルギーの周波数がライナックの共振動作周波数のエネルギーとマッチしない場合にライナックから反射される。反射されたエネルギーは、サーキュレータを通して、反射エネルギーの振幅と位相を別々に制御する導波路コンポーネントに送られる。すると、振幅および位相制御エネルギーは、マグネトロンに戻り、制御されたエネルギーが周波数プリング効果をもたらす。反射エネルギーの振幅および位相が、特定の方法で適用された場合、プリング効果は、ライナックの共振周波数からのマグネトロン周波数の小さな偏差とは反対である。この効果は、機械的チューニングシステムの数ミリ秒の応答とは対照的に、1マイクロ秒の何分の1以内に発生する。
【0007】
本発明は、さらに、マイクロ波利用デバイスに結合されているマイクロ波エネルギー源を安定化する方法も実現する。この方法は、非相反伝送デバイスをエネルギー源に結合するステップ、およびエネルギー源からエネルギーを伝送デバイスに通し、利用デバイスに送るステップを含む。利用デバイスから戻されるエネルギーの少なくとも一部分は調整され、この調整は、エネルギーの他の特性に影響を及ぼすことなくエネルギーの第1の特性を修正するステップを含む。エネルギーの調整済みの部分は、エネルギー源に戻され、エネルギー源の周波数出力を安定化する機能を果たす。
【0008】
本発明の他の態様は、詳細な説明と付属の図面を考察することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】放射線治療システムの斜視図である。
【図2】図1に例示されている放射線治療システムで使用することができる多リーフコリメータの斜視図である。
【図3】図1のシステムとともに使用するマグネトロンの正面図である。
【図4】図1のシステムとともに使用するRFサブシステムの概略図である。
【図5】回路として概略が表されている、図1のシステムの放射線モジュールのブロック図である。
【図6】回路として概略が表されている、3ポートサーキュレータを使用する、本発明の代替実施形態のブロック図である。
【図7】図4のシステムの負荷インピーダンスに対する周波数および電力出力の依存関係を例示するリーケ線図である。
【図8】ライナックの入力インピーダンス、および複素インピーダンス平面内で重ね合わされた図7のマグネトロンリーケ線図からの周波数線をグラフィックで表した図である。
【図9】マグネトロンの調整で複素インピーダンス平面内のリーケ線図周波数線がどのように移動するかを表しているグラフィックによる図である。
【図10】図4のシステムで使用する4ポートサーキュレータのポート3における反射係数の大きさとともにライナックのインピーダンス等高線がどのように変化するかを示すグラフィックによる図である。
【図11】4ポートサーキュレータのポート4における単位反射係数の位相とともにライナックのインピーダンス等高線がどのように変化するかを示すグラフィックによる図である。
【図12】4ポートサーキュレータのポート3における部分反射係数の選択により、マグネトロンに戻される反射電力の上限がどのように制約されるかを示すグラフィックによる図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を詳しく説明する前に、本発明が、その応用例において、以下の説明で述べられているか、または以下の図面に例示されている構造の詳細およびコンポーネントの配列に制限されないことは理解されるであろう。本発明は、他の実施形態を利用することができ、また各種の方法で実施されるか、または実行される。また、本明細書で使用される語法および述語は、説明を目的としたものであり、制限するものとしてみなされるべきではないことも理解されるであろう。「含む」、「備える」、または「有する」、および本明細書におけるそれらの変形は、それ以降に記載される項目および同等の項目、さらには追加項目を包含することを意味する。特に断りまたは制限のない限り、「取り付けられる」、「接続される」、「支持される」、および「結合される」、ならびにそれらの変更形態は、広義に使用され、直接的と間接的の両方の取り付け、接続、支持、および結合を包含する。さらに、「接続される」および「結合される」は、物理的または機械的接続もしくは結合に制限されない。
【0011】
上側、下側、下方、上方、後方、底、前、後などの方向参照が、図面を説明する際に本明細書に行われるが、これらの参照は、便宜上(法線方向から見た)図面に対し相対的なものである。これらの方向は、文字通り解釈されること、または本発明を制限することをいかなる形でも意図されていない。それに加えて、「第1」、「第2」、および「第3」などの用語は、本明細書では、説明することを目的として使用され、相対的重要性または有意性を示す、または暗示することを意図されていない。
【0012】
それに加えて、本発明のいくつかの実施形態は、説明することを目的として、コンポーネント大半がハードウェアでのみ実装されているかのように例示され、説明されている場合があるハードウェア、ソフトウェア、および電子コンポーネントまたはモジュールを含むことも理解されるであろう。しかし、当業者であれば、この詳細な説明を読んだ後に、少なくとも一実施形態において、本発明の電子回路に基づく態様は、ソフトウェアで実装されることを認識するであろう。そのようなものとして、ハードウェアおよびソフトウェアに基づく複数のデバイスは、複数の異なる構造的コンポーネントとともに、本発明を実装するために使用されることに留意されたい。さらに、その後の段落において説明されているように、図面に例示されている特定の機械的構成は、本発明の実施形態を例示すること、また他の代替機械的構成が可能であることを示すことを意図されている。
【0013】
図1は、放射線治療を患者14に施すことができる放射線治療システム10を例示している。後述のような放射線治療システムは、本発明により作動される放射線照射デバイスの一実施例である。放射線治療は、光子利用放射線療法、近接照射療法、電子線療法、陽子、中性子、もしくは粒子線療法、または他のタイプの治療法を含むことができる。放射線治療システム10は、ガントリー18を備える。ガントリー18は、放射線源24および放射線のビーム30を発生するように動作可能な直線加速器26を備えることができる放射線照射モジュール22を支持することができる。図面に示されているガントリー18は、リングガントリーである、つまり、完全360°弧に広がり完全なリングまたは円をなすけれども、他のタイプの取り付け配列も使用可能である。例えば、C型の部分リングガントリー、またはロボットアームも、使用可能であろう。患者14に関して各種の回転および/または軸方向位置に放射線照射モジュール22を位置決めすることができる他の任意のフレームワークも使用される。それに加えて、放射線源24は、ガントリー18の形状に従わない経路を移動することができる。例えば、放射線源24は、例示されているガントリー18が一般的に円形であるとしても非円形経路内で移動する可能性がある。放射線源24は、ライナック26(図4に例示されている)に渡されるエネルギーを発生させるマグネトロン32(図3に例示されている)などのエネルギー発生源を備えることができる。マグネトロン32およびライナック26について、以下に詳述する。
【0014】
放射線モジュール22は、放射線ビーム30を修正または変調するように動作可能な変調デバイス34を備えることもできる。変調デバイス34は、放射線ビーム30の変調を行い、放射線ビーム30を患者14に向ける。特に、放射線ビーム30は、患者の一部分に向けられる。大まかに言うと、この部分は、全身を含んでもよいが、一般的には、全身よりも小さく、二次元領域および/または三次元体積により定められる。放射線を受けることが望まれている部分または領域は、ターゲットまたはターゲット領域(38として示されている)として参照されることができ、注目する領域の一実施例である。他のタイプの注目する領域は、潜在的に危険な状態にある領域である。一部分が潜在的に危険な状態にある領域を含む場合、放射線ビームは、好ましくはその潜在的に危険な状態にある領域から迂回される。このような変調は、ときには、強度変調放射線治療(「IMRT」)として参照される。
【0015】
変調デバイス34は、図2に例示されているようなコリメーションデバイス42を含むことができる。コリメーションデバイス42は、放射線ビーム30が通過することができる開口50のサイズを定め、調節する一組のジョー46を備える。ジョー46は、上側ジョー54と下側ジョー58とを備える。上側ジョー54および下側ジョー58は、開口50のサイズを調節するように移動可能である。
【0016】
一実施形態では、図2に例示されているように、変調デバイス34は、位置から位置へ移動して強度変調を行うように動作可能な複数の織り交ざったリーフ66を含む、多リーフコリメータ62を備えることができる。また、リーフ66は、最小開位置と最大開位置との間のどこかの位置へ移動されうることに留意されたい。複数の織り交ざったリーフ66は、放射線ビーム30が患者14の領域38に到達する前に放射線ビーム30の強度、サイズ、および形状を変調する。リーフ66のそれぞれは、リーフ66が素早く開閉して放射線の通過を許可したりブロックしたりできるようにモーターまたは空気弁などのアクチュエータ70により独立して制御される。アクチュエータ70は、コンピュータ74および/またはコントローラにより制御される。
【0017】
放射線治療システム10は、図1に例示されているように、放射線ビーム30を受け取るように動作可能な、検出器78、例えば、キロボルトまたはメガボルト電圧検出器を備えることもできる。ライナック26および検出器78は、さらに、患者14のCT画像を生成するコンピュータ断層撮影(CT)システムとして動作することもできる。ライナック26は、患者14身体の領域38に向けて放射線ビーム30を放射する。領域38は、放射線の一部を吸収する。検出器78は、領域38により吸収される放射線の量を検出または測定する。検出器78は、ライナック26が患者14の周りを回転し、患者14に向けて放射線を放射しつつ、異なる角度から吸収データを収集する。収集された吸収データは、コンピュータ74に伝送され、そこで吸収データを処理し、患者の生体組織および臓器の画像を生成する。これらの画像は、骨、軟組織、および血管も示すことができる。
【0018】
放射線治療システム10は、患者14を支持する、寝椅子82(図1に例示されている)などの患者支持器も備えることができる。寝椅子82は、x、y、またはz方向に少なくとも1つの軸84に沿って移動する。本発明の他の実施形態では、患者支持器は、患者の身体の任意の部分を支持するように適合されている任意のデバイスとすることができる。患者支持器は、患者の全身を支持しなければならないというわけではない。システム10は、寝椅子82の位置を操作するように動作可能である駆動システム86を備えることもできる。駆動システム86は、コンピュータ74により制御できる。
【0019】
図3に示されているように、マグネトロン32は、ライナック26に送られるマイクロ波放射線を発生する。最高レベルで、マグネトロンはDC電力を受け取ってRF電力に変換する。電力変換は、マグネトロンが電力をマグネトロンに入力される電力と等しいが反対の向きで外へ結合するという点で相反的にある。本発明により使用することができるこのようなマグネトロンの1つは、e2v Technologies(UK)LTD社により供給されているモデル番号MG−6493である。マグネトロン32は、円筒状カソード84から放射される加速された電子のエネルギーが一連の共振空洞88内で高周波エネルギーに変換される大電力マイクロ波発振器である。共振空洞88は、ベーン92により定められる。カソード84は、同心アノード104により囲まれている。マグネトロン32は、カソード84の軸に沿って印加される磁場の中に浸けられている。
【0020】
カソード84が加熱されると、電子が発生し、外方向へ放射状に移動し、カソード84とアノード104との間の径方向電場によりアノード104の方へ引かれる。磁場は、電子をカソード88とアノード104との間の曲線軌道に偏向し、空洞88内にRF電流を誘導する。これにより、空洞88の共振周波数で空洞88内にエネルギーが蓄積される。電子の運動エネルギーは、これにより、RFエネルギーに転換され、例示されている実施形態では、電子の運動エネルギーの約60%がマイクロ波エネルギーに変換されることになる。
【0021】
例示されている実施形態のマグネトロン32は、πモードを含む、さまざまな周波数モードで発振することができる。πモード以外のモードでの発振の可能性を低減するために、マグネトロン32のベーン92は、ストラップ108により接続される。ストラップ108は、電位の等しい交互ベーン92を接続し、πモード周波数では180°位相がずれている隣接するベーン92を飛び越す。RF電力は、空洞88から外へ、結合ループ120を介して円形導波路セクションに結合される。結合は相反的であり、RF電力は、マグネトロン32により出力されるのと同じ効率でマグネトロン32に結合され戻される。強い結合は、出力電力と効率を高めるが、時間ジッターを大きくし、負荷不整合の変化に対する感度を増す。
【0022】
上では図3に関して1つの特定のマグネトロン構成が詳述されているが、他のマグネトロン構成も可能であり、本発明の範囲内にあることは理解されるであろう。マグネトロンの基本的動作およびコンポーネントは、当業者にはよく知られており、当業者であれば、上で説明されているのと異なるマグネトロン構成も可能であり、本発明の範囲内にあることを理解するであろう。
【0023】
図4は、システム10で使用されるライナック(線形加速器)26を例示している。ライナック26は、電子銃128、加速器132、およびターゲット136の3つの基本コンポーネントを備える。インジェクタ140は、電子銃128に電力を供給し、マグネトロン32からのRF電力のパルス毎にパルス電流を射出する。電子銃128は、電子を発生するように加熱されるカソードを備える。電子銃128により生成される電子は、電子銃のアノードに引かれ、例示されている実施形態では約13KVで加速器132に射出される。
【0024】
射出された電子は、次いで、加速器132により一束の電子が一体として加速されるように複数の束にグループ化される。加速器は、空洞を通過する際に電子を加速させる印加フィールドをそれぞれ含む複数の加速空洞を備える。結合された共振空洞は、多空洞加速構造を形成する。モードの数(つまり、特定の共振周波数および特徴的な電磁界パターンを有する動作条件の数)は、空洞の数(つまり、共振器の数)により決定される。例示されている実施形態で使用される加速器132は、定在波加速器であり、電磁波は空洞の両端で反射され、跳ね返って往復し、定在波を形成する。しかし、他のタイプの加速器もシステム10において使用することができ、本発明の範囲内にあることが理解される。
【0025】
次いで、加速された電子は、ターゲット136に衝突する。ターゲット136に衝突すると、制動放射効果が発生する。ターゲット136は、加速された電子の速度を落とし、電子の減速が生じるとX線の放射を引き起こす。放射されるX線のエネルギーは、衝突する原子のエネルギーとともに変化する。例えば、放射されたX線は、よりエネルギーが高くなり、衝突電子のエネルギーが増大すると高い周波数の方へシフトする。ターゲット136は、電子の衝突により発生する高熱に耐えることができる、タングステンのような原子番号の大きな金属で形成される。場合によっては、ターゲット136を冷却するのを補助するためにライナックによって冷却機構が使用される。
【0026】
ライナック26の特定の一構成が上で説明されているが、当業者であれば、他のライナック26構成も可能であり、本発明の範囲内にあることを理解するであろう。上述のライナック26構成は、本発明とともに使用する1つのライナック26実施形態の一例である。ライナックの基本的動作およびコンポーネントは、当業界で理解されており、当業者であれば、他のライナック構成も可能であることを理解するであろう。
【0027】
以下でさらに詳しく説明されるように、マグネトロン32およびライナック26は、マグネトロン32およびライナック26がシステム10で連携し動作可能なように結合される。マグネトロン32は、自動周波数制御156(AFC)としても知られる、フィードバックシステムによりライナック26の動作周波数に機械的にチューニングされるように保たれる。AFC 156は、マグネトロン空洞88のうち1つを摂動するモーター駆動プランジャ(図に示されていない)を駆動する。このプランジャは、マグネトロンチューナー158として動作する。マグネトロン32を水平軸を中心に回転させたときの周波数偏差を最小限に抑えるために、この軸はチューナー158の軸に平行でなければならない。AFC 156は、機械的チューナーとして動作し、個別のRFパルスの挙動の平均を見て、ライナック26から反射される電力を最小にするようにチューナー158を調節することにより周波数をチューニングする働きをする。AFC 156は、個別のRFパルスを補正するほどには速く動作しない。したがって、機械的振動などのせいでマグネトロン32の出力周波数が急激に変動すると、パルスの平均が動作パラメータの範囲内に収まるように個々のパルスが上下を繰り返しうるが、マグネトロン32はそれでも所望の出力周波数の範囲外で動作する。
【0028】
図4および5は、システム10の放射線照射モジュール22を一回路として例示している、ブロック図である。マグネトロン32は、非常に高い電圧および電流の短いパルスを発生させる変調器150から電力を受ける。マグネトロン32は、マイクロ波を4ポートサーキュレータ160に通してライナック26に送る。4ポートサーキュレータ160は、一連のポートの間で一方向に印加電力を送る非相反導波路デバイスである。本質的に、4ポートサーキュレータ160は、マグネトロン32をライナック26に結合し、アイソレータとして働く。4ポートサーキュレータ160を使用することで、ライナック26から反射して戻される電力の振幅および位相の独立調節を行える。当業者であれば、振幅と位相は、制御可能なモジュールにおけるエネルギーの特性のうち2つに過ぎないことを理解するであろう。他の実施形態では、周波数および波長も調節することが可能であろう。
【0029】
反射電力は、回路内の周波数不安定性により引き起こされる。以前のシステムは、3ポートサーキュレータを使用し、振幅と位相の両方に影響を及ぼす単一の調節が用いられた。本発明では、位相と振幅の調節を分離することで、両方のコンポーネントをより正確に、容易に調節することができ、延いては、システム制御が正確になり、またマグネトロン32の動作の予測性も向上する。また、振幅制御を分離することで、マグネトロン32に到達する反射電力を単に制限するだけで、反射電力がマグネトロン32の許容最大値を超えないようにできる。
【0030】
サーキュレータ160は、ライナック26から反射された電力をマグネトロン32から大電力負荷164に迂回させ、マグネトロン32の不安定性および発生する可能性のある損傷を回避するために使用されうる。図4に示されているように、この回路は、大電力負荷164を直列につないだ部分反射要素(つまり、反射トランス168)を備える。位相調節可能な、完全反射要素(つまり、移相器172)は、部分反射要素168とマグネトロン32との間の4番目のサーキュレータポート上に配置される。
【0031】
4ポートサーキュレータ160およびそれに取り付けられたコンポーネントを使用することにより、反射電力(エネルギー)の振幅および位相が、別々に、また独立して調節される。マグネトロン32が正確にライナック26の共振周波数で動作していないと、少量の反射電力がマグネトロン32に到達する。反射電力の作用は、反射電力を排除するような形でマグネトロン32の周波数を修正し、フィードバックループを形成する。チューニング補正は、それぞれのパルスの始まりに数分の1マイクロ秒以内に実行され、したがって本質的に、マグネトロン32に到達する反射電力はほとんどない。そのため、システム10は、個別のRFパルスの変動を考慮して電子的にチューニングされる。
【0032】
本発明の例示されている実施形態では4ポートサーキュレータが使用されているが、他のタイプのデバイスを例示されているサーキュレータの代わりに使用することが可能であることは理解されるであろう。例えば、図6に例示されているように、分離した位相および振幅制御を行う3ポートサーキュレータ180が使用される。例示されている3ポートサーキュレータ180では、移相器184、部分反射要素188、および大電力負荷192は、3ポートサーキュレータ180の第3のポートに直列結合する形で配置されている。ライナック26から反射された電力は、移相器184に通され、反射要素188に送られ、そこで電力の一部が反射される。電力の大半、場合によっては約98%が、反射要素188を通して、負荷192に送られ、そこで電力が消費される。反射電力は、移相器184を通して戻り、移相反射電力が、マグネトロン32に送られる。3ポートサーキュレータ180の電力循環およびポート絶縁機能は、上述の4ポートサーキュレータ160と本質的に同じであり、導波路の電気的長さは長くされ(位相をシフトするため)、位相は独立して制御されうるが、4ポートサーキュレータ160を結合機構として使用することには他の利点もある。それに加えて、システム内で反射電力の位相および振幅を独立して制御できる一方向電力伝達機能を有する非相反的導波路デバイスの他の構成も、本発明により使用されうる。例えば、他の数のポートを有し、上述の機能を実行するサーキュレータのように、5ポートサーキュレータを使用することが可能である。
【0033】
例示されている実施形態では、反射電力の2%が、負荷インピーダンス曲線がマグネトロン32のリーケ線図(図7を参照)内の等周波数曲線に垂直となり、ライナック26の共振周波数の方へマグネトロン32の出力周波数をプリングするような位相でマグネトロン32に印加される。回路が適切にチューニングされれば、実際の反射は、ほとんどゼロの2%である。実際の反射電力は、マグネトロン32の設計により許容される4%の最大値以下となるように選択され、最小反射電力は、ゼロよりも大きい。
【0034】
図8は、folに共振中心および時計回りの方向に増大する周波数を有する複素平面内のライナックインピーダンス、ならびに周波数が例示されているように増大し、マグネトロン中心周波数fomを有する複素インピーダンス平面における等周波数等高線を例示している。安定動作は、fom=folのときに生じるべきである。
【0035】
図9は、マグネトロン32の調整で複素インピーダンス平面におけるリーケ線図の周波数線がどのように移動するかを表しているグラフィック表現である。マグネトロンチューナー158は、インピーダンス平面内で等周波数曲線族をその方向に直交する形で移動する。これは、AFC 156の目的であり、インピーダンスと周波数の関係に対する第1の調節可能なパラメータである。基本的に、マグネトロン32は、ライナックインピーダンスが等周波数等高線(図8の中の*−−−*を参照)に対する接線となる点である、ライナック26の1/2の電力帯域幅の範囲内でチューニングされる必要がある。
【0036】
図10は、4ポートサーキュレータ160の第3のポートにおける反射係数の大きさとともにライナック26のインピーダンス等高線がどのように変化するかを表示するグラフである。図10にグラフで示されているように、大電力負荷164の前に加えられる反射の量を変えると、マグネトロン32から見たライナックインピーダンスの大きさが変化する。これは、インピーダンスと周波数の関係に対する第2の調節可能なパラメータである。
【0037】
図11は、4ポートサーキュレータ160の第4のポートにおける単位反射係数の位相とともにライナック26のインピーダンス等高線がどのように変化するかを例示するグラフである。通常の低電力負荷ポート(つまり、第4のポート)上の100%反射の位相を変えることで、複素インピーダンス平面内のインピーダンス曲線が回転する(図11を参照)。これは、インピーダンスと周波数の関係に対する第3の調節可能なパラメータである。
【0038】
第2の調節可能なパラメータは、大電力負荷164と直列に挿入されているλg/4の共振トランス168内のインピーダンスステップにより制御される。このようなトランスに対する電圧定在波比(VSWR)は、
VSWR=[Z0/Z1]2
である。TE10モードで動作している矩形の導波路のインピーダンスの一般的な式は、
【0039】
【数1】
【0040】
である。ただし、真空中の伝搬に対する導波路波長は
【0041】
【数2】
【0042】
である。
λgは導波路の高さ「b」に依存しないので、高さの低いセクションは、低い正規化インピーダンスで主導波路と同じ周波数依存関係を有する。
Z1=(b1/b0)Z0
【0043】
【数3】
【0044】
そのため、トランスを見るVSWRは、
VSWR=(b0/b1)2
である。また、電圧反射係数Γ=(VSWR−1)/(VSWR+1)であり、電力反射係数は、Γ2である。
【0045】
図12を参照すると、一般的に、共振の片側から他方の側へのライナック入力インピーダンスは、Smithチャートを囲む単位円に接する円を表している。図12は、4ポートサーキュレータ160の第3のポートにおける部分反射係数の選択により、マグネトロン32に戻される反射電力の上限がどのように制約されるかを示すグラフィック表現である。インピーダンスは、図12に示されているように、共振において原点に近づく。インピーダンス等高線は、反射係数Γでスケーリングされ、マグネトロン32に戻される電力の上限は、Γ2に制限される。マグネトロン32については、VSWRの指定された上限は、1.5であり、これは、4%電力反射に対応する。ライナック26の電力帯域幅内で動作する場合、この電力の1/2よりも小さい電力は実際には反射され、共振では、反射はRFチェインの他の不完全さに左右される。
【0046】
第3の調節可能なパラメータは、通常の低電力負荷の代わりに取り付けられた可動短絡172(つまり、移相器)により制御される。
マグネトロン出力の周波数は、マグネトロンへ反射される電力の量および反射電力の位相に応じて変化し、マグネトロン32の出力の不安定性は、ライナック26からの無制御の電力反射の結果生じる。サーキュレータを使用すると、マグネトロンは、ライナックにより生じる反射電力に関してライナックから本質的に絶縁される。しかし、上述の安定化方法は、機械的振動などの全く異なる原因を有する変動を安定させ、マグネトロン出力の制御を確実にするために使用される。マグネトロン32をライナック26への電源として使用するには、出力の周波数が制約される必要がある。好ましい一実施形態では、制御された量の電力が、マグネトロン32へ反射されて戻り、マグネトロン32の出力の適切な制御が行われる。
【0047】
前記の説明は、放射線治療システムにおいて使用することに関して本発明を説明しているが、マイクロ波エネルギー源を安定させることについて本明細書で説明されている方法および装置は、マイクロ波エネルギー源により出力されるエネルギーの安定を必要とする他の用途でも使用可能であることは理解されるであろう。例えば、本発明は、いくつかのマイクロ波レーダー用途に応用することが可能である。当業者であれば、本明細書で詳しく説明されている特定の放射線治療の実施例は、本発明の可能な一使用例に過ぎず、他の使用例も可能であり、本発明の範囲内にあることを理解するであろう。
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2006年8月15日に出願された仮特許出願第60/837,901号の優先権を主張するものである。
本発明は、放射線治療システムなどの放射線照射デバイスに関する。より具体的には、本発明は、システム内の粒子加速器からの出力を最適化するために、マグネトロン発振器などのマイクロ波エネルギー源の動作周波数を安定化するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療用の医療機器は、高エネルギー放射線を使って腫瘍性組織を治療する。放射線の線量とその位置は、腫瘍が破壊されるのに十分な放射線を受けること、ならびに周囲および隣接する非腫瘍性組織に対する損傷が最小限に抑えられることの両方が確実になされるように正確に制御されなければならない。強度変調放射線治療(IMRT)では、それぞれが強度および/またはエネルギーに関して独立して制御されうる複数の放射線を用いて患者を治療する。これらの複数の放射線は、患者を中心として異なる角度から方向付けられ、組み合わさって所望の線量パターンを形成する。外部線源放射線治療では、患者の外部にある放射線源で内部の腫瘍を治療する。通常、外部線源は、腫瘍部位に対してのみビームが当たるようにコリメートされる。典型的には、放射線源は、高エネルギーX線、電子、または高度にコリメートされた放射性同位体からのガンマ線からなる。このタイプの放射線治療を実行する放射線源は、マイクロ波電力を直線加速器(「ライナック;LINAC」)に供給する、マグネトロンとして知られるデバイスを備えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マグネトロン駆動直線加速器を使用してIMRTで患者を効果的に治療するために、ライナックから出力される放射線の線量は安定している必要がある。マグネトロンは、後述のシステムなどの、適度なサイズの回転式放射線治療用照射システムとの使用に適しているコンパクトな電源を備えている。しかし、直線加速器は、一般に、マグネトロンにより容易に得られる一定出力に対しより大きな周波数安定性を必要とする。マグネトロンの機械的振動は、連続照射IMRTシステムにおいて望ましい出力変動を超える出力変動を発生するほどの周波数変動を引き起こす可能性がある。そこで、本発明では、所望の一定出力を得られるようにマグネトロン周波数を安定化するための手段を実現する。実際、本発明は、マグネトロンなどの線源デバイスをとり、広い特性を持たせ、デバイスを共振性の高い負荷(例えば、ライナック)に結合することでデバイスをより狭い帯域幅内で動作するように制限することを対象とする。システムにおける不安定性を防止するために、マグネトロンの出力周波数は、ライナックの動作周波数と調和しているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、本発明は、放射線照射デバイスを実現する。デバイスは、マグネトロンなどのマイクロ波エネルギー源、およびエネルギー源に結合されたマイクロ波利用デバイスを備える。非相反伝送デバイスは、エネルギー源を利用デバイスに結合し、利用デバイスからエネルギーの未利用部分を受け取る。伝送デバイスは、未利用エネルギーの少なくとも一部分を調整し、調整済みのエネルギーをエネルギー源に戻す。伝送デバイスは、調節がエネルギーの他の特性に影響を及ぼさないようにエネルギーの第1の特性を調節するように動作する第1のコンポーネントを備える。戻された調整済みエネルギーは、放射線照射デバイス内の未利用エネルギーが最小になるようにエネルギー源の周波数を修正する機能を果たす。
【0005】
この場合、例示されている実施形態では粒子加速器である利用デバイスは、エネルギー発生源に固有のものと比べて狭い動作帯域幅を有する。この差は、ビームエネルギーから高周波(RF)振動への高効率の変換を行うために大電流電子ビームの熱拡散により占有される相空間の大きな部分から電子を集めるのにマグネトロンが必要であることによる。加速器の狭い帯域幅は、所定の投入電力に対する最短の実用的長さにおいて最高の放射エネルギーを発生するために最大化された内部電界を発生するという目標の結果である。本発明によるシステムを安定化させる方法は、任意のRF加速粒子/光子ベースのモダリティに応用できる。
【0006】
マグネトロンにより集められたマイクロ波エネルギーは、導波路などの非相反伝送デバイスに通されて、直線加速器に送られ、そのエネルギーを使用して高エネルギー電子および/またはX線を発生する。マグネトロンの出力周波数は、従来の自動周波数制御フィードバックループを使用して熱的変動を追跡することで、ライナックの共振動作周波数に機械的にチューニングされる。マイクロ波エネルギーは、マグネトロンからのエネルギーの周波数がライナックの共振動作周波数のエネルギーとマッチしない場合にライナックから反射される。反射されたエネルギーは、サーキュレータを通して、反射エネルギーの振幅と位相を別々に制御する導波路コンポーネントに送られる。すると、振幅および位相制御エネルギーは、マグネトロンに戻り、制御されたエネルギーが周波数プリング効果をもたらす。反射エネルギーの振幅および位相が、特定の方法で適用された場合、プリング効果は、ライナックの共振周波数からのマグネトロン周波数の小さな偏差とは反対である。この効果は、機械的チューニングシステムの数ミリ秒の応答とは対照的に、1マイクロ秒の何分の1以内に発生する。
【0007】
本発明は、さらに、マイクロ波利用デバイスに結合されているマイクロ波エネルギー源を安定化する方法も実現する。この方法は、非相反伝送デバイスをエネルギー源に結合するステップ、およびエネルギー源からエネルギーを伝送デバイスに通し、利用デバイスに送るステップを含む。利用デバイスから戻されるエネルギーの少なくとも一部分は調整され、この調整は、エネルギーの他の特性に影響を及ぼすことなくエネルギーの第1の特性を修正するステップを含む。エネルギーの調整済みの部分は、エネルギー源に戻され、エネルギー源の周波数出力を安定化する機能を果たす。
【0008】
本発明の他の態様は、詳細な説明と付属の図面を考察することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】放射線治療システムの斜視図である。
【図2】図1に例示されている放射線治療システムで使用することができる多リーフコリメータの斜視図である。
【図3】図1のシステムとともに使用するマグネトロンの正面図である。
【図4】図1のシステムとともに使用するRFサブシステムの概略図である。
【図5】回路として概略が表されている、図1のシステムの放射線モジュールのブロック図である。
【図6】回路として概略が表されている、3ポートサーキュレータを使用する、本発明の代替実施形態のブロック図である。
【図7】図4のシステムの負荷インピーダンスに対する周波数および電力出力の依存関係を例示するリーケ線図である。
【図8】ライナックの入力インピーダンス、および複素インピーダンス平面内で重ね合わされた図7のマグネトロンリーケ線図からの周波数線をグラフィックで表した図である。
【図9】マグネトロンの調整で複素インピーダンス平面内のリーケ線図周波数線がどのように移動するかを表しているグラフィックによる図である。
【図10】図4のシステムで使用する4ポートサーキュレータのポート3における反射係数の大きさとともにライナックのインピーダンス等高線がどのように変化するかを示すグラフィックによる図である。
【図11】4ポートサーキュレータのポート4における単位反射係数の位相とともにライナックのインピーダンス等高線がどのように変化するかを示すグラフィックによる図である。
【図12】4ポートサーキュレータのポート3における部分反射係数の選択により、マグネトロンに戻される反射電力の上限がどのように制約されるかを示すグラフィックによる図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を詳しく説明する前に、本発明が、その応用例において、以下の説明で述べられているか、または以下の図面に例示されている構造の詳細およびコンポーネントの配列に制限されないことは理解されるであろう。本発明は、他の実施形態を利用することができ、また各種の方法で実施されるか、または実行される。また、本明細書で使用される語法および述語は、説明を目的としたものであり、制限するものとしてみなされるべきではないことも理解されるであろう。「含む」、「備える」、または「有する」、および本明細書におけるそれらの変形は、それ以降に記載される項目および同等の項目、さらには追加項目を包含することを意味する。特に断りまたは制限のない限り、「取り付けられる」、「接続される」、「支持される」、および「結合される」、ならびにそれらの変更形態は、広義に使用され、直接的と間接的の両方の取り付け、接続、支持、および結合を包含する。さらに、「接続される」および「結合される」は、物理的または機械的接続もしくは結合に制限されない。
【0011】
上側、下側、下方、上方、後方、底、前、後などの方向参照が、図面を説明する際に本明細書に行われるが、これらの参照は、便宜上(法線方向から見た)図面に対し相対的なものである。これらの方向は、文字通り解釈されること、または本発明を制限することをいかなる形でも意図されていない。それに加えて、「第1」、「第2」、および「第3」などの用語は、本明細書では、説明することを目的として使用され、相対的重要性または有意性を示す、または暗示することを意図されていない。
【0012】
それに加えて、本発明のいくつかの実施形態は、説明することを目的として、コンポーネント大半がハードウェアでのみ実装されているかのように例示され、説明されている場合があるハードウェア、ソフトウェア、および電子コンポーネントまたはモジュールを含むことも理解されるであろう。しかし、当業者であれば、この詳細な説明を読んだ後に、少なくとも一実施形態において、本発明の電子回路に基づく態様は、ソフトウェアで実装されることを認識するであろう。そのようなものとして、ハードウェアおよびソフトウェアに基づく複数のデバイスは、複数の異なる構造的コンポーネントとともに、本発明を実装するために使用されることに留意されたい。さらに、その後の段落において説明されているように、図面に例示されている特定の機械的構成は、本発明の実施形態を例示すること、また他の代替機械的構成が可能であることを示すことを意図されている。
【0013】
図1は、放射線治療を患者14に施すことができる放射線治療システム10を例示している。後述のような放射線治療システムは、本発明により作動される放射線照射デバイスの一実施例である。放射線治療は、光子利用放射線療法、近接照射療法、電子線療法、陽子、中性子、もしくは粒子線療法、または他のタイプの治療法を含むことができる。放射線治療システム10は、ガントリー18を備える。ガントリー18は、放射線源24および放射線のビーム30を発生するように動作可能な直線加速器26を備えることができる放射線照射モジュール22を支持することができる。図面に示されているガントリー18は、リングガントリーである、つまり、完全360°弧に広がり完全なリングまたは円をなすけれども、他のタイプの取り付け配列も使用可能である。例えば、C型の部分リングガントリー、またはロボットアームも、使用可能であろう。患者14に関して各種の回転および/または軸方向位置に放射線照射モジュール22を位置決めすることができる他の任意のフレームワークも使用される。それに加えて、放射線源24は、ガントリー18の形状に従わない経路を移動することができる。例えば、放射線源24は、例示されているガントリー18が一般的に円形であるとしても非円形経路内で移動する可能性がある。放射線源24は、ライナック26(図4に例示されている)に渡されるエネルギーを発生させるマグネトロン32(図3に例示されている)などのエネルギー発生源を備えることができる。マグネトロン32およびライナック26について、以下に詳述する。
【0014】
放射線モジュール22は、放射線ビーム30を修正または変調するように動作可能な変調デバイス34を備えることもできる。変調デバイス34は、放射線ビーム30の変調を行い、放射線ビーム30を患者14に向ける。特に、放射線ビーム30は、患者の一部分に向けられる。大まかに言うと、この部分は、全身を含んでもよいが、一般的には、全身よりも小さく、二次元領域および/または三次元体積により定められる。放射線を受けることが望まれている部分または領域は、ターゲットまたはターゲット領域(38として示されている)として参照されることができ、注目する領域の一実施例である。他のタイプの注目する領域は、潜在的に危険な状態にある領域である。一部分が潜在的に危険な状態にある領域を含む場合、放射線ビームは、好ましくはその潜在的に危険な状態にある領域から迂回される。このような変調は、ときには、強度変調放射線治療(「IMRT」)として参照される。
【0015】
変調デバイス34は、図2に例示されているようなコリメーションデバイス42を含むことができる。コリメーションデバイス42は、放射線ビーム30が通過することができる開口50のサイズを定め、調節する一組のジョー46を備える。ジョー46は、上側ジョー54と下側ジョー58とを備える。上側ジョー54および下側ジョー58は、開口50のサイズを調節するように移動可能である。
【0016】
一実施形態では、図2に例示されているように、変調デバイス34は、位置から位置へ移動して強度変調を行うように動作可能な複数の織り交ざったリーフ66を含む、多リーフコリメータ62を備えることができる。また、リーフ66は、最小開位置と最大開位置との間のどこかの位置へ移動されうることに留意されたい。複数の織り交ざったリーフ66は、放射線ビーム30が患者14の領域38に到達する前に放射線ビーム30の強度、サイズ、および形状を変調する。リーフ66のそれぞれは、リーフ66が素早く開閉して放射線の通過を許可したりブロックしたりできるようにモーターまたは空気弁などのアクチュエータ70により独立して制御される。アクチュエータ70は、コンピュータ74および/またはコントローラにより制御される。
【0017】
放射線治療システム10は、図1に例示されているように、放射線ビーム30を受け取るように動作可能な、検出器78、例えば、キロボルトまたはメガボルト電圧検出器を備えることもできる。ライナック26および検出器78は、さらに、患者14のCT画像を生成するコンピュータ断層撮影(CT)システムとして動作することもできる。ライナック26は、患者14身体の領域38に向けて放射線ビーム30を放射する。領域38は、放射線の一部を吸収する。検出器78は、領域38により吸収される放射線の量を検出または測定する。検出器78は、ライナック26が患者14の周りを回転し、患者14に向けて放射線を放射しつつ、異なる角度から吸収データを収集する。収集された吸収データは、コンピュータ74に伝送され、そこで吸収データを処理し、患者の生体組織および臓器の画像を生成する。これらの画像は、骨、軟組織、および血管も示すことができる。
【0018】
放射線治療システム10は、患者14を支持する、寝椅子82(図1に例示されている)などの患者支持器も備えることができる。寝椅子82は、x、y、またはz方向に少なくとも1つの軸84に沿って移動する。本発明の他の実施形態では、患者支持器は、患者の身体の任意の部分を支持するように適合されている任意のデバイスとすることができる。患者支持器は、患者の全身を支持しなければならないというわけではない。システム10は、寝椅子82の位置を操作するように動作可能である駆動システム86を備えることもできる。駆動システム86は、コンピュータ74により制御できる。
【0019】
図3に示されているように、マグネトロン32は、ライナック26に送られるマイクロ波放射線を発生する。最高レベルで、マグネトロンはDC電力を受け取ってRF電力に変換する。電力変換は、マグネトロンが電力をマグネトロンに入力される電力と等しいが反対の向きで外へ結合するという点で相反的にある。本発明により使用することができるこのようなマグネトロンの1つは、e2v Technologies(UK)LTD社により供給されているモデル番号MG−6493である。マグネトロン32は、円筒状カソード84から放射される加速された電子のエネルギーが一連の共振空洞88内で高周波エネルギーに変換される大電力マイクロ波発振器である。共振空洞88は、ベーン92により定められる。カソード84は、同心アノード104により囲まれている。マグネトロン32は、カソード84の軸に沿って印加される磁場の中に浸けられている。
【0020】
カソード84が加熱されると、電子が発生し、外方向へ放射状に移動し、カソード84とアノード104との間の径方向電場によりアノード104の方へ引かれる。磁場は、電子をカソード88とアノード104との間の曲線軌道に偏向し、空洞88内にRF電流を誘導する。これにより、空洞88の共振周波数で空洞88内にエネルギーが蓄積される。電子の運動エネルギーは、これにより、RFエネルギーに転換され、例示されている実施形態では、電子の運動エネルギーの約60%がマイクロ波エネルギーに変換されることになる。
【0021】
例示されている実施形態のマグネトロン32は、πモードを含む、さまざまな周波数モードで発振することができる。πモード以外のモードでの発振の可能性を低減するために、マグネトロン32のベーン92は、ストラップ108により接続される。ストラップ108は、電位の等しい交互ベーン92を接続し、πモード周波数では180°位相がずれている隣接するベーン92を飛び越す。RF電力は、空洞88から外へ、結合ループ120を介して円形導波路セクションに結合される。結合は相反的であり、RF電力は、マグネトロン32により出力されるのと同じ効率でマグネトロン32に結合され戻される。強い結合は、出力電力と効率を高めるが、時間ジッターを大きくし、負荷不整合の変化に対する感度を増す。
【0022】
上では図3に関して1つの特定のマグネトロン構成が詳述されているが、他のマグネトロン構成も可能であり、本発明の範囲内にあることは理解されるであろう。マグネトロンの基本的動作およびコンポーネントは、当業者にはよく知られており、当業者であれば、上で説明されているのと異なるマグネトロン構成も可能であり、本発明の範囲内にあることを理解するであろう。
【0023】
図4は、システム10で使用されるライナック(線形加速器)26を例示している。ライナック26は、電子銃128、加速器132、およびターゲット136の3つの基本コンポーネントを備える。インジェクタ140は、電子銃128に電力を供給し、マグネトロン32からのRF電力のパルス毎にパルス電流を射出する。電子銃128は、電子を発生するように加熱されるカソードを備える。電子銃128により生成される電子は、電子銃のアノードに引かれ、例示されている実施形態では約13KVで加速器132に射出される。
【0024】
射出された電子は、次いで、加速器132により一束の電子が一体として加速されるように複数の束にグループ化される。加速器は、空洞を通過する際に電子を加速させる印加フィールドをそれぞれ含む複数の加速空洞を備える。結合された共振空洞は、多空洞加速構造を形成する。モードの数(つまり、特定の共振周波数および特徴的な電磁界パターンを有する動作条件の数)は、空洞の数(つまり、共振器の数)により決定される。例示されている実施形態で使用される加速器132は、定在波加速器であり、電磁波は空洞の両端で反射され、跳ね返って往復し、定在波を形成する。しかし、他のタイプの加速器もシステム10において使用することができ、本発明の範囲内にあることが理解される。
【0025】
次いで、加速された電子は、ターゲット136に衝突する。ターゲット136に衝突すると、制動放射効果が発生する。ターゲット136は、加速された電子の速度を落とし、電子の減速が生じるとX線の放射を引き起こす。放射されるX線のエネルギーは、衝突する原子のエネルギーとともに変化する。例えば、放射されたX線は、よりエネルギーが高くなり、衝突電子のエネルギーが増大すると高い周波数の方へシフトする。ターゲット136は、電子の衝突により発生する高熱に耐えることができる、タングステンのような原子番号の大きな金属で形成される。場合によっては、ターゲット136を冷却するのを補助するためにライナックによって冷却機構が使用される。
【0026】
ライナック26の特定の一構成が上で説明されているが、当業者であれば、他のライナック26構成も可能であり、本発明の範囲内にあることを理解するであろう。上述のライナック26構成は、本発明とともに使用する1つのライナック26実施形態の一例である。ライナックの基本的動作およびコンポーネントは、当業界で理解されており、当業者であれば、他のライナック構成も可能であることを理解するであろう。
【0027】
以下でさらに詳しく説明されるように、マグネトロン32およびライナック26は、マグネトロン32およびライナック26がシステム10で連携し動作可能なように結合される。マグネトロン32は、自動周波数制御156(AFC)としても知られる、フィードバックシステムによりライナック26の動作周波数に機械的にチューニングされるように保たれる。AFC 156は、マグネトロン空洞88のうち1つを摂動するモーター駆動プランジャ(図に示されていない)を駆動する。このプランジャは、マグネトロンチューナー158として動作する。マグネトロン32を水平軸を中心に回転させたときの周波数偏差を最小限に抑えるために、この軸はチューナー158の軸に平行でなければならない。AFC 156は、機械的チューナーとして動作し、個別のRFパルスの挙動の平均を見て、ライナック26から反射される電力を最小にするようにチューナー158を調節することにより周波数をチューニングする働きをする。AFC 156は、個別のRFパルスを補正するほどには速く動作しない。したがって、機械的振動などのせいでマグネトロン32の出力周波数が急激に変動すると、パルスの平均が動作パラメータの範囲内に収まるように個々のパルスが上下を繰り返しうるが、マグネトロン32はそれでも所望の出力周波数の範囲外で動作する。
【0028】
図4および5は、システム10の放射線照射モジュール22を一回路として例示している、ブロック図である。マグネトロン32は、非常に高い電圧および電流の短いパルスを発生させる変調器150から電力を受ける。マグネトロン32は、マイクロ波を4ポートサーキュレータ160に通してライナック26に送る。4ポートサーキュレータ160は、一連のポートの間で一方向に印加電力を送る非相反導波路デバイスである。本質的に、4ポートサーキュレータ160は、マグネトロン32をライナック26に結合し、アイソレータとして働く。4ポートサーキュレータ160を使用することで、ライナック26から反射して戻される電力の振幅および位相の独立調節を行える。当業者であれば、振幅と位相は、制御可能なモジュールにおけるエネルギーの特性のうち2つに過ぎないことを理解するであろう。他の実施形態では、周波数および波長も調節することが可能であろう。
【0029】
反射電力は、回路内の周波数不安定性により引き起こされる。以前のシステムは、3ポートサーキュレータを使用し、振幅と位相の両方に影響を及ぼす単一の調節が用いられた。本発明では、位相と振幅の調節を分離することで、両方のコンポーネントをより正確に、容易に調節することができ、延いては、システム制御が正確になり、またマグネトロン32の動作の予測性も向上する。また、振幅制御を分離することで、マグネトロン32に到達する反射電力を単に制限するだけで、反射電力がマグネトロン32の許容最大値を超えないようにできる。
【0030】
サーキュレータ160は、ライナック26から反射された電力をマグネトロン32から大電力負荷164に迂回させ、マグネトロン32の不安定性および発生する可能性のある損傷を回避するために使用されうる。図4に示されているように、この回路は、大電力負荷164を直列につないだ部分反射要素(つまり、反射トランス168)を備える。位相調節可能な、完全反射要素(つまり、移相器172)は、部分反射要素168とマグネトロン32との間の4番目のサーキュレータポート上に配置される。
【0031】
4ポートサーキュレータ160およびそれに取り付けられたコンポーネントを使用することにより、反射電力(エネルギー)の振幅および位相が、別々に、また独立して調節される。マグネトロン32が正確にライナック26の共振周波数で動作していないと、少量の反射電力がマグネトロン32に到達する。反射電力の作用は、反射電力を排除するような形でマグネトロン32の周波数を修正し、フィードバックループを形成する。チューニング補正は、それぞれのパルスの始まりに数分の1マイクロ秒以内に実行され、したがって本質的に、マグネトロン32に到達する反射電力はほとんどない。そのため、システム10は、個別のRFパルスの変動を考慮して電子的にチューニングされる。
【0032】
本発明の例示されている実施形態では4ポートサーキュレータが使用されているが、他のタイプのデバイスを例示されているサーキュレータの代わりに使用することが可能であることは理解されるであろう。例えば、図6に例示されているように、分離した位相および振幅制御を行う3ポートサーキュレータ180が使用される。例示されている3ポートサーキュレータ180では、移相器184、部分反射要素188、および大電力負荷192は、3ポートサーキュレータ180の第3のポートに直列結合する形で配置されている。ライナック26から反射された電力は、移相器184に通され、反射要素188に送られ、そこで電力の一部が反射される。電力の大半、場合によっては約98%が、反射要素188を通して、負荷192に送られ、そこで電力が消費される。反射電力は、移相器184を通して戻り、移相反射電力が、マグネトロン32に送られる。3ポートサーキュレータ180の電力循環およびポート絶縁機能は、上述の4ポートサーキュレータ160と本質的に同じであり、導波路の電気的長さは長くされ(位相をシフトするため)、位相は独立して制御されうるが、4ポートサーキュレータ160を結合機構として使用することには他の利点もある。それに加えて、システム内で反射電力の位相および振幅を独立して制御できる一方向電力伝達機能を有する非相反的導波路デバイスの他の構成も、本発明により使用されうる。例えば、他の数のポートを有し、上述の機能を実行するサーキュレータのように、5ポートサーキュレータを使用することが可能である。
【0033】
例示されている実施形態では、反射電力の2%が、負荷インピーダンス曲線がマグネトロン32のリーケ線図(図7を参照)内の等周波数曲線に垂直となり、ライナック26の共振周波数の方へマグネトロン32の出力周波数をプリングするような位相でマグネトロン32に印加される。回路が適切にチューニングされれば、実際の反射は、ほとんどゼロの2%である。実際の反射電力は、マグネトロン32の設計により許容される4%の最大値以下となるように選択され、最小反射電力は、ゼロよりも大きい。
【0034】
図8は、folに共振中心および時計回りの方向に増大する周波数を有する複素平面内のライナックインピーダンス、ならびに周波数が例示されているように増大し、マグネトロン中心周波数fomを有する複素インピーダンス平面における等周波数等高線を例示している。安定動作は、fom=folのときに生じるべきである。
【0035】
図9は、マグネトロン32の調整で複素インピーダンス平面におけるリーケ線図の周波数線がどのように移動するかを表しているグラフィック表現である。マグネトロンチューナー158は、インピーダンス平面内で等周波数曲線族をその方向に直交する形で移動する。これは、AFC 156の目的であり、インピーダンスと周波数の関係に対する第1の調節可能なパラメータである。基本的に、マグネトロン32は、ライナックインピーダンスが等周波数等高線(図8の中の*−−−*を参照)に対する接線となる点である、ライナック26の1/2の電力帯域幅の範囲内でチューニングされる必要がある。
【0036】
図10は、4ポートサーキュレータ160の第3のポートにおける反射係数の大きさとともにライナック26のインピーダンス等高線がどのように変化するかを表示するグラフである。図10にグラフで示されているように、大電力負荷164の前に加えられる反射の量を変えると、マグネトロン32から見たライナックインピーダンスの大きさが変化する。これは、インピーダンスと周波数の関係に対する第2の調節可能なパラメータである。
【0037】
図11は、4ポートサーキュレータ160の第4のポートにおける単位反射係数の位相とともにライナック26のインピーダンス等高線がどのように変化するかを例示するグラフである。通常の低電力負荷ポート(つまり、第4のポート)上の100%反射の位相を変えることで、複素インピーダンス平面内のインピーダンス曲線が回転する(図11を参照)。これは、インピーダンスと周波数の関係に対する第3の調節可能なパラメータである。
【0038】
第2の調節可能なパラメータは、大電力負荷164と直列に挿入されているλg/4の共振トランス168内のインピーダンスステップにより制御される。このようなトランスに対する電圧定在波比(VSWR)は、
VSWR=[Z0/Z1]2
である。TE10モードで動作している矩形の導波路のインピーダンスの一般的な式は、
【0039】
【数1】
【0040】
である。ただし、真空中の伝搬に対する導波路波長は
【0041】
【数2】
【0042】
である。
λgは導波路の高さ「b」に依存しないので、高さの低いセクションは、低い正規化インピーダンスで主導波路と同じ周波数依存関係を有する。
Z1=(b1/b0)Z0
【0043】
【数3】
【0044】
そのため、トランスを見るVSWRは、
VSWR=(b0/b1)2
である。また、電圧反射係数Γ=(VSWR−1)/(VSWR+1)であり、電力反射係数は、Γ2である。
【0045】
図12を参照すると、一般的に、共振の片側から他方の側へのライナック入力インピーダンスは、Smithチャートを囲む単位円に接する円を表している。図12は、4ポートサーキュレータ160の第3のポートにおける部分反射係数の選択により、マグネトロン32に戻される反射電力の上限がどのように制約されるかを示すグラフィック表現である。インピーダンスは、図12に示されているように、共振において原点に近づく。インピーダンス等高線は、反射係数Γでスケーリングされ、マグネトロン32に戻される電力の上限は、Γ2に制限される。マグネトロン32については、VSWRの指定された上限は、1.5であり、これは、4%電力反射に対応する。ライナック26の電力帯域幅内で動作する場合、この電力の1/2よりも小さい電力は実際には反射され、共振では、反射はRFチェインの他の不完全さに左右される。
【0046】
第3の調節可能なパラメータは、通常の低電力負荷の代わりに取り付けられた可動短絡172(つまり、移相器)により制御される。
マグネトロン出力の周波数は、マグネトロンへ反射される電力の量および反射電力の位相に応じて変化し、マグネトロン32の出力の不安定性は、ライナック26からの無制御の電力反射の結果生じる。サーキュレータを使用すると、マグネトロンは、ライナックにより生じる反射電力に関してライナックから本質的に絶縁される。しかし、上述の安定化方法は、機械的振動などの全く異なる原因を有する変動を安定させ、マグネトロン出力の制御を確実にするために使用される。マグネトロン32をライナック26への電源として使用するには、出力の周波数が制約される必要がある。好ましい一実施形態では、制御された量の電力が、マグネトロン32へ反射されて戻り、マグネトロン32の出力の適切な制御が行われる。
【0047】
前記の説明は、放射線治療システムにおいて使用することに関して本発明を説明しているが、マイクロ波エネルギー源を安定させることについて本明細書で説明されている方法および装置は、マイクロ波エネルギー源により出力されるエネルギーの安定を必要とする他の用途でも使用可能であることは理解されるであろう。例えば、本発明は、いくつかのマイクロ波レーダー用途に応用することが可能である。当業者であれば、本明細書で詳しく説明されている特定の放射線治療の実施例は、本発明の可能な一使用例に過ぎず、他の使用例も可能であり、本発明の範囲内にあることを理解するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波エネルギー源と、
前記エネルギー源に結合されたマイクロ波利用デバイスと、
前記エネルギー源を前記利用デバイスに結合し、前記利用デバイスから前記エネルギーの未利用部分を受け取り、前記未利用エネルギーの少なくとも一部分を調整し、前記調整済みのエネルギーを前記エネルギー源に戻し、前記エネルギーの第1の特性を調節して前記調節が前記エネルギーの他の特性に影響を及ぼさないように動作する第1のコンポーネントを備える、非相反的伝送デバイスとを備え、
前記戻された調整済みエネルギーは、システムにおける前記未利用エネルギーが最小になるように前記エネルギー源の前記周波数を調整する機能を有する、
放射線照射デバイス。
【請求項2】
前記マイクロ波エネルギー源はマグネトロンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記マイクロ波利用デバイスは直線加速器である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記非相反的伝送デバイスはサーキュレータを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記サーキュレータは4ポートサーキュレータである、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記伝送デバイスの前記第1のコンポーネントは部分反射要素である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記伝送デバイスは、さらに、前記エネルギーの他の特性と無関係に前記エネルギーの第2の特性を調節するように動作する第2のコンポーネントを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記伝送デバイスの前記第2のコンポーネントは移相器である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記伝送デバイスにより調節される前記エネルギーの前記第1の特性は、位相、振幅、波長、および周波数のうち1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記エネルギーの前記未利用部分は、前記エネルギー源の前記出力周波数と前記利用デバイスの前記入力周波数との間の不整合を表す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
さらに、前記エネルギー源で動作する機械的チューナーを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記機械的チューナーは、個々のエネルギーパルスの平均にわたって前記未利用エネルギーの前記周波数を調節する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記伝送デバイスは、前記エネルギー源の前記周波数をパルス毎にチューニングするように個々のエネルギーパルスを調整することができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記伝送デバイスは、前記エネルギー源に戻される前記未利用電力の前記位相および前記振幅を別々に調節することができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記利用デバイスは、前記エネルギー源よりも高い周波数安定性を有し、前記未利用エネルギーを調整することにより、前記利用デバイスの周波数帯域内で動作するように前記エネルギー源の周波数出力を安定させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
マイクロ波エネルギー源と、
前記エネルギー源からのエネルギーの一部のみが利用可能なように前記エネルギー源で規定されている以上に正確に制御される周波数帯域内で動作するように制約された、マイクロ波利用デバイスと、
前記利用デバイスから反射された前記エネルギーの未利用部分を受け取り、前記未利用エネルギーを調整してから前記調整済みのエネルギーを前記エネルギー源に戻す非相反伝送デバイスとを備え、
前記伝送デバイスは、前記エネルギーの少なくとも2つの異なる特性を別々に、独立して調節する、
放射線照射デバイス。
【請求項17】
前記マイクロ波エネルギー源は、マグネトロンである、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記マイクロ波利用デバイスは、直線加速器である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記非相反的伝送デバイスは、サーキュレータを備える、請求項16に記載のデバイス。
【請求項20】
前記サーキュレータは、4ポートサーキュレータである、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記調整済みのエネルギーは、前記エネルギー源に作用し、前記放射線照射デバイス内の前記未利用エネルギーを最小にする請求項16に記載のデバイス。
【請求項22】
前記伝送デバイスは、さらに、前記エネルギー源に戻される前記エネルギーの位相を調節するように動作可能な移相器を備える、請求項16に記載のデバイス。
【請求項23】
前記伝送デバイスは、さらに、前記エネルギー源に戻される前記エネルギーの振幅を調節するように動作可能な反射要素を備える、請求項16に記載のデバイス。
【請求項24】
前記伝送デバイスは、位相、振幅、波長、および周波数のうち1つまたは複数のエネルギー特性を独立して調節するように動作可能である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項25】
前記伝送デバイスは、前記エネルギーの位相および振幅を別々に、独立して調節する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項26】
前記伝送デバイスは、前記伝送デバイスが前記エネルギーをパルス毎にチューニングするように個々のエネルギーパルスを調整することができる、請求項16に記載のデバイス。
【請求項27】
マイクロ波エネルギー源よりも狭い周波数帯域幅内で動作するマイクロ波利用デバイスに結合されている前記マイクロ波エネルギー源を安定化する方法であって、
非相反的伝送デバイスを前記エネルギー源に結合するステップと、
前記エネルギー源からのエネルギーを前記伝送デバイスに通し、前記利用デバイスに送るステップと、
前記利用デバイスから戻される前記エネルギーの少なくとも一部分を調整するステップを含む、前記エネルギーの他の特性に影響を及ぼすことなく前記エネルギーの第1の特性を調整するステップと、
前記エネルギーの前記調整済みの部分を前記エネルギー源に戻すステップとを含み、
前記調整済みのエネルギーは、前記エネルギー源の周波数出力を安定化するよう機能する、
方法。
【請求項28】
前記エネルギーの前記戻された部分は、前記エネルギー源と前記利用デバイスとの間の周波数不整合を表し、前記エネルギーの前記調整済みの部分を前記エネルギー源に戻すステップは、前記エネルギー源の周波数を前記利用デバイスの周波数にプリングする働きをする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エネルギーの前記一部分を調整するステップは、前記エネルギーを移相器に通して前記エネルギーの位相を修正するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記エネルギーの前記一部分を調整するステップは、前記エネルギーを反射要素に通して前記エネルギーの振幅を調整するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記エネルギーの少なくとも一部分を調整するステップは、前記エネルギーの周波数をパルス毎に制御するために前記エネルギー源により出力されるエネルギーの個々のパルスを調整するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項1】
マイクロ波エネルギー源と、
前記エネルギー源に結合されたマイクロ波利用デバイスと、
前記エネルギー源を前記利用デバイスに結合し、前記利用デバイスから前記エネルギーの未利用部分を受け取り、前記未利用エネルギーの少なくとも一部分を調整し、前記調整済みのエネルギーを前記エネルギー源に戻し、前記エネルギーの第1の特性を調節して前記調節が前記エネルギーの他の特性に影響を及ぼさないように動作する第1のコンポーネントを備える、非相反的伝送デバイスとを備え、
前記戻された調整済みエネルギーは、システムにおける前記未利用エネルギーが最小になるように前記エネルギー源の前記周波数を調整する機能を有する、
放射線照射デバイス。
【請求項2】
前記マイクロ波エネルギー源はマグネトロンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記マイクロ波利用デバイスは直線加速器である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記非相反的伝送デバイスはサーキュレータを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記サーキュレータは4ポートサーキュレータである、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記伝送デバイスの前記第1のコンポーネントは部分反射要素である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記伝送デバイスは、さらに、前記エネルギーの他の特性と無関係に前記エネルギーの第2の特性を調節するように動作する第2のコンポーネントを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記伝送デバイスの前記第2のコンポーネントは移相器である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記伝送デバイスにより調節される前記エネルギーの前記第1の特性は、位相、振幅、波長、および周波数のうち1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記エネルギーの前記未利用部分は、前記エネルギー源の前記出力周波数と前記利用デバイスの前記入力周波数との間の不整合を表す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
さらに、前記エネルギー源で動作する機械的チューナーを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記機械的チューナーは、個々のエネルギーパルスの平均にわたって前記未利用エネルギーの前記周波数を調節する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記伝送デバイスは、前記エネルギー源の前記周波数をパルス毎にチューニングするように個々のエネルギーパルスを調整することができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記伝送デバイスは、前記エネルギー源に戻される前記未利用電力の前記位相および前記振幅を別々に調節することができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記利用デバイスは、前記エネルギー源よりも高い周波数安定性を有し、前記未利用エネルギーを調整することにより、前記利用デバイスの周波数帯域内で動作するように前記エネルギー源の周波数出力を安定させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
マイクロ波エネルギー源と、
前記エネルギー源からのエネルギーの一部のみが利用可能なように前記エネルギー源で規定されている以上に正確に制御される周波数帯域内で動作するように制約された、マイクロ波利用デバイスと、
前記利用デバイスから反射された前記エネルギーの未利用部分を受け取り、前記未利用エネルギーを調整してから前記調整済みのエネルギーを前記エネルギー源に戻す非相反伝送デバイスとを備え、
前記伝送デバイスは、前記エネルギーの少なくとも2つの異なる特性を別々に、独立して調節する、
放射線照射デバイス。
【請求項17】
前記マイクロ波エネルギー源は、マグネトロンである、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記マイクロ波利用デバイスは、直線加速器である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記非相反的伝送デバイスは、サーキュレータを備える、請求項16に記載のデバイス。
【請求項20】
前記サーキュレータは、4ポートサーキュレータである、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記調整済みのエネルギーは、前記エネルギー源に作用し、前記放射線照射デバイス内の前記未利用エネルギーを最小にする請求項16に記載のデバイス。
【請求項22】
前記伝送デバイスは、さらに、前記エネルギー源に戻される前記エネルギーの位相を調節するように動作可能な移相器を備える、請求項16に記載のデバイス。
【請求項23】
前記伝送デバイスは、さらに、前記エネルギー源に戻される前記エネルギーの振幅を調節するように動作可能な反射要素を備える、請求項16に記載のデバイス。
【請求項24】
前記伝送デバイスは、位相、振幅、波長、および周波数のうち1つまたは複数のエネルギー特性を独立して調節するように動作可能である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項25】
前記伝送デバイスは、前記エネルギーの位相および振幅を別々に、独立して調節する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項26】
前記伝送デバイスは、前記伝送デバイスが前記エネルギーをパルス毎にチューニングするように個々のエネルギーパルスを調整することができる、請求項16に記載のデバイス。
【請求項27】
マイクロ波エネルギー源よりも狭い周波数帯域幅内で動作するマイクロ波利用デバイスに結合されている前記マイクロ波エネルギー源を安定化する方法であって、
非相反的伝送デバイスを前記エネルギー源に結合するステップと、
前記エネルギー源からのエネルギーを前記伝送デバイスに通し、前記利用デバイスに送るステップと、
前記利用デバイスから戻される前記エネルギーの少なくとも一部分を調整するステップを含む、前記エネルギーの他の特性に影響を及ぼすことなく前記エネルギーの第1の特性を調整するステップと、
前記エネルギーの前記調整済みの部分を前記エネルギー源に戻すステップとを含み、
前記調整済みのエネルギーは、前記エネルギー源の周波数出力を安定化するよう機能する、
方法。
【請求項28】
前記エネルギーの前記戻された部分は、前記エネルギー源と前記利用デバイスとの間の周波数不整合を表し、前記エネルギーの前記調整済みの部分を前記エネルギー源に戻すステップは、前記エネルギー源の周波数を前記利用デバイスの周波数にプリングする働きをする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エネルギーの前記一部分を調整するステップは、前記エネルギーを移相器に通して前記エネルギーの位相を修正するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記エネルギーの前記一部分を調整するステップは、前記エネルギーを反射要素に通して前記エネルギーの振幅を調整するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記エネルギーの少なくとも一部分を調整するステップは、前記エネルギーの周波数をパルス毎に制御するために前記エネルギー源により出力されるエネルギーの個々のパルスを調整するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−500910(P2010−500910A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524783(P2009−524783)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/075994
【国際公開番号】WO2008/022188
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(506024320)トモセラピー・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/075994
【国際公開番号】WO2008/022188
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(506024320)トモセラピー・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
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