説明

放射線画像変換パネル

【課題】本発明の目的は、画像欠陥が少なく画質に優れる放射線画像変換パネルを提供することにある。
【解決手段】支持体上に蛍光体層を有する蛍光体プレートを有し、該蛍光体層上に保護部材を有する放射線画像変換パネルであって、該保護部材が、該蛍光体層と隣接し、弾性率が7GPa〜60GPaである第1の保護層を有し、該第1の保護層上に第2の保護層を有することを特徴とする放射線画像変換パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の放射線画像を形成する際に用いられる放射線画像変換パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線画像のような放射線画像は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−フィルム系による放射線画像は、高感度と高画質のため、長い間一般的な撮像システムとして、医療現場で用いられている。
【0003】
しかしながらこれら画像情報はいわゆるアナログ画像情報であって、近年発展を続けているデジタル画像情報のような、自由な画像処理や瞬時の電送ができない。
【0004】
そして、近年ではコンピューテッドラジオグラフィ(CR)やフラットパネル型の放射線ディテクタ(FPD)等に代表されるデジタル方式の放射線画像検出装置が登場している。
【0005】
これらの画像検出装置を用いる方法は、放射線画像をデジタルデータとして得られる、陰極管や液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能である、画像のデータが簡単に転送できる、などにより最近広く使用されるようになっている。
【0006】
そして、これらの画像検出装置を用いる方法としては、蛍光体を含有する蛍光体層を有する放射線変換パネルを使用する方法、例えば輝尽性蛍光体層を利用する放射線画像変換方法が知られている。
【0007】
この方法では、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを蓄積させて、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を、例えば、光電変換して、電気信号を得て、この信号を感光材料等の記録材料、CRT等の表示装置上に可視像として再生するものである。
【0008】
これらの画像検出装置には、蛍光体を含有する蛍光体層を有する放射線画像変換パネルが用いられる。
【0009】
蛍光体層に含有される蛍光体としては、CsBr、CsIなどのハロゲン化アルカリを母体にしてEu、Tlなどを賦活した蛍光体が、X線変換効率などの面から広く用いられている。
【0010】
ハロゲン化アルカリなどで形成される蛍光体層は空気中の水分の影響を受け変質し易いなどのために、通常その表面に、潮解などの化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護するための保護層が設けられている。
【0011】
保護層としては、特定の水分透過率を有する透明樹脂フィルム(特許文献1参照)、その表面のユニバーサル硬度が特定のものを用いた保護層(特許文献2参照)、ホットメルト樹脂からなる保護層(特許文献3参照)などが知られている。
【0012】
また、蛍光体層としては、放射線画像変換パネルに要求される性能である輝度、鮮鋭性を高めるために、特開2003−240900号公報に記載のように、蛍光体層に用いられる上記のような蛍光体を柱状結晶として、柱状結晶の先端を尖形にする技術が知られている。
【0013】
しかしながら、蛍光体層として柱状結晶を有する蛍光体を含有する層を用いる場合には輝度、鮮鋭性が高められるものの保護層の傷つき易さに起因すると思われる画像の欠陥が見られ画質が充分でないなどの問題があり、上記のような保護層を用いても不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−308583号公報
【特許文献2】特開2005−283229号公報
【特許文献3】特開2006−78472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、画像欠陥が少なく画質に優れる放射線画像変換パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記課題は、下記の手段により達成される。
【0017】
1.支持体上に蛍光体層を有する蛍光体プレートを有し、該蛍光体層上に保護部材を有する放射線画像変換パネルであって、該保護部材が、該蛍光体層と隣接し、弾性率が7GPa〜60GPaである第1の保護層を有し、該第1の保護層上に第2の保護層を有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0018】
2.前記蛍光体層が柱状結晶を有することを特徴とする前記1に記載の放射線画像変換パネル。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記手段により、画像欠陥が少なく画質に優れる放射線画像変換パネルが提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、支持体上に蛍光体層を有する蛍光体プレートを有し、該蛍光体層上に保護部材を有する放射線画像変換パネルであって、該保護部材が、該蛍光体層と隣接し、弾性率が7GPa〜60GPaである第1の保護層を有し、該第1の保護層上に第2の保護層を有することを特徴とする。
【0021】
本発明においては、蛍光体層に隣接する層として弾性率が7GPa〜60GPaである層を設けることで、画質に優れる放射線画像変換パネルが得られ、特に柱状結晶からなる蛍光体層に対して好ましく適用できるものである。
【0022】
(支持体)
本発明に用いられる支持体としては、各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられ、例えば、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス等の板ガラス、またセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の有機樹脂フィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シートまたは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが挙げられるが、特に限定はされない。
【0023】
支持体の厚さとしては、10〜500μmの範囲のものが好ましく適用できる。
【0024】
(蛍光体層)
本発明に係る蛍光体層は、ハロゲン化アルカリを母体とする蛍光体を含有することが好ましく、特に下記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする蛍光体を含有することが好ましい。
【0025】
一般式(1):MX・aMX′・bMX″:eA
〔式中、Mは、Li、Na、K、RbおよびCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、Mは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、CuおよびNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、Mは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、GaおよびInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、BrおよびIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、CuおよびMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eは、それぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0≦e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
は、Na、K、RbおよびCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子を表し、中でもRbおよびCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属原子が好ましく、さらに好ましくはCs原子である。
【0026】
は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、CuおよびNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の2価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのはBe、Mg、Ca、SrおよびBaなどの各原子から選ばれる2価の金属原子である。
【0027】
は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、GaおよびInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのはY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、GaおよびIn等の各原子から選ばれる3価の金属原子である。
【0028】
Aは、Eu、Tb、In、Ga、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、CuおよびMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子である。
【0029】
一般式(1)で表される化合物の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X′およびX″はF、Cl、BrおよびIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子を表すが、F、ClおよびBrから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子が好ましく、Br原子がさらに好ましい。
【0030】
一般式(1)で表される化合物の例を下記に挙げる。
【0031】
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBrおよびCsI。
【0032】
(b)MgF、MgCl、MgBr、MgI、CaF、CaCl、CaBr、CaI、SrF、SrCl、SrBr、SrI、BaF、BaCI、BaBr、BaBr・2HO、BaI、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnI、CdF、CdCl、CdBr、CdI、CuF、CuCl、CuBr、CuI、NiF、NiCl、NiBrおよびNiI
【0033】
(c)上記(a)、(b)の各々と、Eu、Tb、In、Ga、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、CuおよびMgを含有する化合物の各々との混合物。
【0034】
(蛍光体層の形成方法)
本発明の蛍光体層は、上記のような蛍光体を含有するが、柱状結晶を有していることが好ましく、本発明は、柱状結晶を有する蛍光体層に好適に適用できる。
【0035】
即ち、本発明においては、第一の保護層が、柱状結晶の先端部に接触している態様が特に好ましい態様である。
【0036】
柱状結晶は下記のような気相成長法により形成することができる。
【0037】
気相成長法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、その他を用いることができる。
【0038】
これらの方法のうち例えば、蒸着法、スパッタリング法については下記のような方法で蛍光体層を形成することができる。
【0039】
蒸着法については、まず基板を蒸着装置内に設置した後、装置内を排気して1.333×10−4Pa程度の真空度とする。次いで、前記蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて前記基板表面に蛍光体を所望の厚さに成長させる。この結果、結着剤を含有しない蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて蛍光体層を形成することも可能である。
【0040】
また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器、あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、基板上で目的とする蛍光体を合成すると同時に蛍光体層を形成することも可能である。
【0041】
さらに前記蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて被蒸着体を冷却あるいは加熱してもよい。
【0042】
また、蒸着終了後蛍光体層を加熱処理してもよい。また、前記蒸着法においては、必要に応じてO、H等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
【0043】
スパッタリング法については、蒸着法と同様、保護層または中間層を有する基板をスパッタリング装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.333×10−4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタリング用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスをスパッタリング装置内に導入して1.333×10−1Pa程度のガス圧とする。次に、前記蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより前記基板上に蛍光体層を所望の厚さに成長させる。前記スパッタリング工程では蒸着法と同様に各種の応用処理を用いることができる。
【0044】
また、前記気相成長における蛍光体層の成長速度は0.05〜300μm/分であることが好ましい。
【0045】
上記の気相成長法による蛍光体層の作製にあたっては、蛍光体層が形成される基板の温度は40℃以上に設定することが好ましく、さらに好ましくは80℃以上であり、特に好ましくは100〜400℃である。
【0046】
蛍光体層の厚さは、ひび割れ防止、輝度等の観点から、100μm以上1500μm以下が好ましい。より好ましくは200μm以上1000μm以下である。
【0047】
高鮮鋭性を示す放射線像変換パネルを得る観点から、本発明に係る蛍光体層の反射率は20%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。なお、上限は100%である。
【0048】
(保護部材)
本発明に係る保護部材は、該蛍光体層と隣接し、弾性率が7GPa〜60GPaである第1の保護層を有し、この第1の保護層上に第2の保護層を有する。
【0049】
蛍光体層と隣接しとは、蛍光体層と第一の保護層との間には空気層以外の層は存在しない状態で、接触していることである。
【0050】
第一の保護層上に第二の保護層を有するとは、第一の保護層の、支持体とは反対側上に直接または接着層などの他の層を介して第二の保護層が積層されていることである。
【0051】
(第一の保護層)
第一の保護層の弾性率は、7GPa〜60GPaであり、弾性率(ヤング率)は、10mm×900mmに切断した試料を23℃、55%RHの雰囲気下で引っ張り速度40mm/minで引っ張り試験を行い応力−歪み曲線を求め、この傾きから弾性率を求めた値をいう。
【0052】
弾性率が7GPa〜60GPaである第一の保護層として用いられる材料としては、例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの薄膜ガラスや、架橋剤により架橋させた樹脂が挙げられ、これらの中でも透光性がよく、シート状に形成容易なものが好ましく用いることができる。
【0053】
薄膜ガラスとしては、μmオーダーから数十μmオーダーの厚さを有する市販されている超薄膜ガラスを用いることができ、薄膜ガラスと後述する第二の保護層とを積層し保護部材とすることができる。
【0054】
架橋剤により架橋させた樹脂を用いる場合の樹脂としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ナイロン、アクリル酸またはアクリル酸エステル(メタクリル酸またはメタクリル酸エステル類も含む)、ビニルエステル類、ビニルケトン類、スチレン類、ジオレフィン類、アクリルアミド類(メタクリルアミド類も含む)、塩化ビニル類(塩化ビニリデン類も含む)、ニトロセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロース誘導体、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、等が挙げられる。これらの中でも第二の保護層または、他の層との接着性、や耐食性の観点でポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の疎水性樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
架橋剤としては、例えば、多官能イソシアネートおよびその誘導体、メラミンおよびその誘導体、アミノ樹脂およびその誘導体等を挙げることができるが、多官能イソシアネート化合物が好ましい。例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0056】
架橋剤の使用量は、5〜30質量%であることが好ましい。また、架橋させる際には、40℃〜150の温度で、架橋時間1から100時間の範囲で行うことができる。
【0057】
架橋された樹脂を用いる場合には、架橋後の樹脂は溶媒に溶けにくいため、後述の第二の保護層上で架橋させる方法が好ましく用いられる。また他の支持体上で架橋させた後、第二の保護層の上に転写する方法も好ましく用いることができる。
【0058】
第一の保護層の膜厚としては、1μmから100μmが好ましい。
【0059】
本発明において、第一の保護層の弾性率を上記特定の範囲にすることで、本発明の効果を奏する理由は明確ではないが、以下のように推測される。
【0060】
本発明においては、第一の保護層が上記弾性率を有するため、第一の保護層が多数の柱状結晶の先端部に接触して多数の点で支持されている状態になり、さらに外力が加わった場合でもこの先端部による第一の保護層の変形が少なく、全体として外力に対して安定になっている、と推測される。
【0061】
(第二の保護層)
第二の保護層は、第一の保護層を担持し得る層であり、蛍光体層の封止を可能とするための層であり、第一の保護層に直接に、または接着層などを介して積層される層である。
【0062】
第二の保護層の材料としては、例えば酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
【0063】
第二の保護層を第一の保護層上に設けるには接着剤を介して積層してもよいし、第二の保護層用塗布液を第一の保護層上に直接塗布、乾燥して形成してもよい。
【0064】
接着剤を介して積層する場合に用いられる接着剤としては、例えば各種ポリエチレン樹脂、各種ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂熱溶解接着剤、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂等のエチレン共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂熱溶融接着剤、エマルジョン、ラテックス状の接着剤であるエマルジョン型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱溶融型ゴム系接着剤等が挙げられる。
【0065】
第二の保護層の膜厚は1〜2000μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。
【0066】
本発明に係る第一の保護層と第二の保護層の間または、第二の保護層上にさらに他の層を有していてもよい。
【0067】
他の層としては、防湿性を高めるための、無機物層、支持体側を保護する保護層と接着させる場合に使用する熱溶融性樹脂フィルム層などがある。
【0068】
無機物層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、あるいは化学蒸着法等が適宜選択して用いられる。
【0069】
また、ゾルゲル法などを用いた塗布法も好ましく用いられる。塗布法の場合には、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、など各種バインダーと上記の無機物を混合させて用いることができる。
【0070】
真空蒸着法を採用する際の好ましい蒸着材料としては、アルミニウム、珪素、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛等の金属、あるいはSiOx(x=1.0〜2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア等の化合物やそれらの混合物が用いられ、加熱法としては、抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱などを用いることができる。
【0071】
また反応ガスとしては、酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を併用した反応性蒸着を用いてもよい。
【0072】
保護部材の光透過率は、光電変換効率、蛍光体の発光波長等の面から、550nmで70%以上あることが好ましい。
【0073】
保護部材の透湿度は、蛍光体層の保護性、潮解性等から、50g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、さらには10g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましい。
【0074】
保護部材を蛍光体層上に形成するには、例えば本発明に係る保護部材の第一の保護層と蛍光体層とを接触させ、支持体側を保護する第二の保護部材を用い、減圧雰囲気中でこれらの保護部材同志が接触する部分を融着して蛍光体層を封止することにより形成することができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0076】
(蛍光体層の形成)
蛍光体原料として、酸化臭化ユーロピウム(EuOBr)粉末20g、および臭化セシウム(CsBr)粉末3300gをそれぞれ秤量し、相対湿度25%の環境下で混合した。次に、このように混合した蛍光体原料を抵抗加熱ルツボに取り、蒸着装置内を真空排気して高真空度にした後、Arガスを導入して、1.0×10−2Paになるように真空度を調整した。次いで、樹脂主成分の下引き層をコートしたポリイミドフィルム(厚さ700μm)を支持体として蒸着装置内に設置した。抵抗加熱ルツボを加熱して2μm/分の速度で蛍光体原料を蒸着し、CsBr:Eu蛍光体を堆積させた。蒸着開始と共に支持体昇温速度が10℃/minにて支持体温度130℃まで加熱した。蒸着終了後、装置内を大気圧に戻し、装置から蛍光体プレート(蛍光体層を有する支持体)を取り出した。支持体上には、蛍光体の柱状結晶がほぼ垂直方向に密に林立した構造の蛍光体層(層厚:500μm)が形成されていた。
【0077】
このようにして得られた蛍光体プレートをオーブンに投入し、30℃から150℃まで90分間かけて昇温し、150℃4時間保持後、150℃から30℃まで4時間かけて降温した。その後オーブンから蛍光体プレートを取り出し、蛍光体プレート1を作製した。
【0078】
〔放射線画像変換パネル1の作製〕
(保護部材の準備)
保護部材の構成は、第1の保護層は膜厚100μmの薄膜ガラス、第2の保護層は膜厚12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとした。また、第1の保護層と第2の保護層を接着するために使用したドライラミネート用の接着剤は2液反応型のウレタン系接着剤を使用し、接着剤の厚さ1μmとしたドライライミネーションで張合した。
【0079】
上記で作製した蛍光体プレート1および、保護部材を用いて、まず保護部材をヒートシールで三方製袋した。その中に蛍光体プレートを入れ、減圧封止機にて、133Paまで減圧して、開口部をヒートシールして、保護部材にパッケージされた放射線画像変換パネル1作製した。
【0080】
〔放射線画像変換パネル2〜6の作製〕
放射線画像変換パネル1の作製において、第2の保護層を表1に記載した厚さに変更した以外は同様にして放射線画像変換パネル2〜6を得た。
【0081】
〔放射線画像変換パネル7の作製〕
(塗布液1の調製)
ポリエステル樹脂(バイロン53SS、東洋紡績(株)社製)と架橋剤として多官能イソシアネート化合物であるコロネート3041(日本ポリウレタン工業(株)製)とを、ポリエステル樹脂に対するイソシアネート化合物の質量%を10質量%で混合し、この混合物をメチルエチルケトン/トルエンの1/1混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散して塗布液1を調製した。
【0082】
(保護部材の作製)
第2の保護層として、膜厚12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、この上に上記調製した塗布液1を、乾燥膜厚が2μmとなるようナイフコーターを用いて塗布した後、150℃1時間の乾燥条件で乾燥して保護部材を作製した。この保護部材を上記と同様にして放射線画像変換パネル7を得た。
【0083】
〔放射線画像変換パネル8〜11の作製〕
放射線画像変換パネル7の作製において、第2の保護層を表1に記載した厚さに変更した以外は放射線画像変換パネル7と同様にして放射線画像変換パネル8〜11を得た。
【0084】
〔放射線画像変換パネル12、13の作製〕
放射線画像変換パネル7の作製において、第1の保護層として、膜厚2μmのシーラントフィルム:CPP(キャステングポリプロピレン)を用いた他は、放射線画像変換パネル7の作製と同様にして、放射線画像変換パネル12を作製した。また、放射線画像変換パネル12の作製において、第二の保護層として膜厚36μmのPETを用いた他は放射線画像変換パネル12と同様にして、放射線画像変換パネル13を作製した。
【0085】
〔放射線画像変換パネル14の作製〕
(塗布液2の調製)
塗布液1の調整において、ポリエステル樹脂に対するイソシアネート化合物の質量%を33質量%に変え、他は同様にして塗布液2を調整した。
【0086】
(保護部材の作製)
放射線画像変換パネル8の作製において、塗布液1に換えて塗布液2を用いた他は、放射線画像変換パネル8と同様にして放射線画像変換パネル14を得た。
【0087】
上記放射線変換パネル1〜14の弾性率と膜厚を表1に示す。
【0088】
弾性率(ヤング率)は、下記のようにして測定した。
【0089】
10mm×900mmに切断した試料を23℃、55%RHの雰囲気下で引っ張り速度40mm/minで引っ張り試験を行い応力−歪み曲線の傾きから弾性率を求めた。
【0090】
〔放射線変換パネルの性能評価〕
耐傷性および画像評価を行い、画質の評価の指標とした。
【0091】
耐傷性評価
23℃、50%RHの環境下で、放射線画像変換パネルの支持体と反対側の表面を先端が直径0.1mmφの球を有するサファイア針を加傷体とし、針の荷重を0〜100gの暫増式で60mm/minの速度で、引っ掻いた。次にこのパネルを用いて、後述の画像評価条件にてX線画像を得た。画像上で、引っ掻き傷が視認できる最低荷重(gf)を求め、耐傷性の尺度としとした。本指標が大きい値ほど、パネルの耐傷性が高いことを示す。
【0092】
画像評価
評価条件:放射線変換画像パネルに管電圧50kVpのX線(2mAs)を照射した後、半導体レーザー光で走査して、パネル表面から放射された発光光を受光器(分光感度の光電子倍増管)で受光して電気信号に変換し、これを画像再生装置によって画像に再生して表示装置上に画像を得た。この画像を目視により下記ランクに従って評価し、画像評価を行った。
ランク
○:画像上で傷は見えない、あるいは、画像上で傷は殆ど気にならない程度である
△:画像上で傷が見られるが、実用上許容できるレベル
×:画像上で傷が見られ、実用上問題が発生するレベル
結果を表1に示す。
【0093】
表1から本発明に係る保護部材を用いた放射線画像変換パネルは、画質に優れることが分かる。
【0094】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に蛍光体層を有する蛍光体プレートを有し、該蛍光体層上に保護部材を有する放射線画像変換パネルであって、該保護部材が、該蛍光体層と隣接し、弾性率が7GPa〜60GPaである第1の保護層を有し、該第1の保護層上に第2の保護層を有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
【請求項2】
前記蛍光体層が柱状結晶を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。

【公開番号】特開2011−122961(P2011−122961A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281424(P2009−281424)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】