説明

放射線画像読取装置および画像記録体

【課題】プレート状の画像記録体を均一に搬送し、画像記録体に記録された放射線画像を正確に読み取ることができ、さらに蓄像の読み取りとその後の残像の消去を一連の動作として、一体化することにより、正確性と高速性とを兼ね備えた放射線画像読取装置および画像記録体を提供する。
【解決手段】プレート状の画像記録体に記録された放射線照射画像を読み取る放射線画像読取装置であって、円筒面で画像記録体の記録面を支持する記録体支持部と、微小な吸盤138を表面に有する樹脂製の搬送ベルト133により、画像記録体の記録面を記録体支持部の円筒面に押し付けつつ、円筒面の軸方向へ画像記録体を搬送する搬送部と、を備え、搬送される画像記録体に記録された放射線照射画像の読み取りと消去を連続して行う。搬送ベルト133が微小な吸盤138を有するため、画像記録体を十分な力で搬送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート状の画像記録体に記録された放射線照射画像を読み取る放射線画像読取装置および画像を読み取られる画像記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像はフィルムに記録されていたが、フィルムでは放射線強度をデジタル値として定量的に測定し難く、また現像に時間がかかる等、取り扱いが不便であった。そこで、照射された放射線強度を蓄積し、励起光の照射により蓄積に応じた蛍光を発する蓄積性蛍光体が開発され、取り扱いや測定の精度が大幅に向上した。初期の蓄積性蛍光体の読取装置では、レーザ光を走査するものが主流だったが、位置の精度が求められるにつれて、回転式のドラムに蓄積性蛍光体を巻いてレーザ光をドラムの外から当てるものが開発された。
【0003】
その後、さらに取り扱いの容易性や読取時間の短縮が求められ、蓄積性蛍光体の蓄像面を内側にして、円筒状に曲げて支持し、円筒面の内側に、その中心線で回転するレーザ光を当てて読取りを行う装置が開発された。特許文献1記載の装置は、潜像を読み出すための励起光であるレーザを円筒面に沿って回転させている。そして、回転と同時に読取り光学系を回転の中心軸と平行な方向に移動させている(特許文献1〔0009〕段落参照)。さらに、特許文献1では、蓄積性蛍光体そのものを回転の中心軸と平行な方向に移動することも開示されている(同〔0019〕段落参照)。さらに平行な方向への移動に駆動ベルトを使用した同様な技術が特許文献2に公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−19014号公報
【特許文献2】特表2003−509711号公報
【特許文献3】特開2009−77802号公報
【特許文献4】特開2006−23718号公報
【特許文献5】特開2006−276280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2記載の装置では、蓄積性蛍光体を正確に平行移動させるための手段がなく、移送中に蓄積性蛍光体や記憶フォイルが円筒面に張り付いたり、撓んだりするおそれがある。このことは、蓄積性蛍光体に蓄積された放射線の蓄像位置が正確に再現できず精度が劣る原因ともなりうる。一方、従来の回転ドラム式の装置であれば、このような問題は生じ難いが、取り扱いが面倒であり、読取時間も長くなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、プレート状の画像記録体を均一に搬送し、画像記録体に記録された放射線画像を正確に読み取ることができ、さらに蓄像の読み取りとその後の残像の消去を一連の動作として、一体化することにより、正確性と高速性とを兼ね備えた放射線画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る放射線画像読取装置は、プレート状の画像記録体に記録された放射線照射画像を読み取る放射線画像読取装置であって、円筒面で前記画像記録体の記録面を支持する記録体支持部と、微小な吸盤を表面に有する樹脂製の搬送ベルトにより、前記画像記録体の記録面を前記記録体支持部の円筒面に押し付けつつ、前記円筒面の軸方向へ前記画像記録体を搬送する搬送部と、を備え、前記搬送される画像記録体に記録された放射線照射画像の読み取りと消去を連続して行うことを特徴としている。
【0008】
プレート状の画像記録体を円筒面の軸方向へ移動させるためには、軸方向へ移動させるための力(F)が必要である。一方、プレート状の画像記録体の外側面と樹脂製の搬送ベルトは摩擦の原理により、円筒面側に垂直に押し付けられる力(P)と記録体の外側面と搬送ベルト接触面との摩擦係数(μ)により摩擦力(F)が生じ、保持力として作用する。また、プレート状の画像記録体の内側面(放射線照射画像の記録面)と円筒状の記録体支持部も摩擦の原理により、円筒面側に垂直に押しつけられる力(P)と、記録体の内側面と記録体支持部との摩擦係数(μ)により、摩擦力(F)が生じ、抵抗力として作用する。
【0009】
実際の軸方向へ移動させるための力(F)は抵抗力を加味すると、F=F+Fの力が必要である。また、F>Fの条件を満足しないと、搬送ベルト側の接触部の保持力が小さすぎて、保持が外れて、滑ってしまうことになる。
【0010】
すなわち、F<(F−F)であり、(F−F)=(μ−μ)×Pなので、(F−F)を大きな値にするには、搬送ベルト側の接触面の摩擦係数μを大きくするか、画像記録体の内面側と記録支持体との摩擦係数μを小さくするか、あるいは円筒面側に垂直に押し付けられる力(P)を大きくするか、これらの全てを満足するかが必要である。しかし、垂直に押し付けられる力(P)を大きくすると、プレート状の画像記録体の表面変形が始まり、通常はその値が変化しないとされている。摩擦係数μが大きな値に変化してしまうことが発明者のたび重なる実験の成果として見出された。これは後述の記載では、「貼りつき」現象という文言で表現されている。そこで、垂直に押し付けられる力(P)を大きくせず、搬送ベルト接触面と記録体との保持力を増す効果のある本発明に至った。
【0011】
本発明によると、搬送ベルトがその表面に微小な吸盤を有するため、吸盤のない通常の搬送ベルトだけで搬送する場合に比べて弱い圧力で画像記録体を搬送することが可能となり、画像記録体を歪ませることなく画像記録体を十分な力で搬送することができる。その結果、貼りつきや撓みを生じさせることなく画像記録体を均一に搬送することができる。また、垂直に押し付けられる力(P)を小さくすることができるので、画像記録体と円筒面との摩擦力を低減することができる。
【0012】
微小な吸盤は、一つ一つの吸着力は弱いが、その集まり全体で一定の吸着力を発揮するので、画像記録体を搬送することができる。一方、搬送後にベルトから画像記録体がはがされる際には、微小な吸盤の集合体の端からはがされることになり、非常に小さい力で少しずつはがされる。したがって、はがすための特別な仕組みを作らなくても、画像記録体を撓ませることなくはがすことが可能である。
【0013】
(2)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、プレート状の画像記録体に記録された放射線照射画像を読み取る放射線画像読取装置であって、円筒面で前記画像記録体の記録面を支持する記録体支持部と、微小な吸盤を表面に有する樹脂シートが設けられた搬送ベルトにより、前記画像記録体の記録面を前記記録体支持部の円筒面に押し付けつつ、前記円筒面の軸方向へ前記画像記録体を搬送する搬送部と、を備え、前記搬送される画像記録体に記録された放射線照射画像の読み取りと消去を連続して行うことを特徴としている。
【0014】
このように、搬送ベルトに微小な吸盤を表面に有する樹脂シートが設けられているため、吸盤のない通常の搬送ベルトだけで搬送する場合に比べて弱い圧力で画像記録体を搬送することが可能となり、画像記録体を歪ませることなく画像記録体を十分な力で搬送することができる。その結果、貼りつきや撓みを生じさせることなく画像記録体を均一に搬送することができる。また、画像記録体と円筒面との摩擦力を低減することができる。
【0015】
(3)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記記録体支持部が、前記円筒面上に静電植毛により短繊維が起立した繊維層を有することを特徴としている。これにより、画像記録体が搬送ベルトにより円筒面に押し付けられても、画像記録体は繊維層に当接するため損傷を防止できる。
【0016】
繊維層は、画像記録体との間に生じる摩擦力を軽減することができる。たとえば金属面と画像記録体との間に生じる摩擦力に比べて繊維層と画像記録体との間に生じる摩擦力は小さい。金属面の摩擦力を軽減するために、表面にテフロン(登録商標)加工をする方法もあるが、上記の加工した表面は硬いので画像記録体の記録面を傷つける。繊維層は画像記録体に傷をつけにくく、記録された画像が荒れるのを防止できる。
【0017】
(4)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、プレート状の画像記録体に記録された放射線照射画像を読み取る放射線画像読取装置であって、円筒面上に静電植毛により短繊維が起立した繊維層を有し、前記円筒面で前記画像記録体の記録面を支持する記録体支持部と、搬送ベルトにより、前記画像記録体の記録面を前記記録体支持部の円筒面に押し付けつつ、前記円筒面の軸方向へ前記画像記録体を搬送する搬送部と、を備え、前記搬送される画像記録体に記録された放射線照射画像の読み取りと消去を連続して行うことを特徴としている。これにより、画像記録体が搬送ベルトにより円筒面に押し付けられても、画像記録体は繊維層に当接するため損傷を防止できる。
【0018】
(5)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記搬送部が、前記搬送ベルトにより前記画像記録体に所定の押圧力を与える機構を有することを特徴としている。このように、押圧力により搬送ベルトを画像記録体に吸着させるため、搬送ベルトが滑る等がなく、画像記録体を歪ませることもなく画像記録体を均一に搬送することができる。
【0019】
(6)また、本発明に係る画像記録体は、放射線画像読取装置で画像を読み取られるプレート状の画像記録体であって、放射線照射画像のデータを蓄積する一方の主面と、微小な吸盤を表面に有する樹脂シートが設けられている他方の主面とを有することを特徴としている。
【0020】
これにより、吸盤のない通常の搬送ベルトだけで搬送する場合と同様に弱い圧力で画像記録体を搬送することが可能となり、画像記録体を歪ませることなく画像記録体を搬送ベルトに吸着させて十分な力で搬送することができる。その結果、貼りつきや撓みを生じさせることなく画像記録体を均一に搬送することができる。また、画像記録体P円筒面との摩擦力を低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、弱い圧力で画像記録体を搬送することが可能となり、貼りつきや撓みを生じさせることなく画像記録体を均一に搬送することができる。また、画像記録体と円筒面との摩擦力を低減することができる。このため、画像記録体の記録面を傷つけることなく、また、ひずみの無い状態で画像記録体を読取位置に送りこむことができ、鮮明な放射線画像を読み出すことを可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る放射線画像読取装置の全体を示す斜視図である。
【図2】記録体支持部を示す斜視図である。
【図3】スリット近傍の記録体支持部の断面を示す拡大断面図である。
【図4】本発明に係る放射線画像読取装置を示す断面図である。
【図5】本発明に係る放射線画像読取装置を示す断面図である。
【図6】搬送部を示す正面断面図である。
【図7】搬送部を示す平面図である。
【図8】搬送部を示す側面図である。
【図9】搬送部を示す側面図である。
【図10】搬送ベルトの一部を拡大して示した図である。
【図11】放射線画像読取ユニットの構成を模式的に示す図
【図12】本発明に係る放射線画像読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図13】本発明に係る放射線画像読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図14】並列接続されたステッピングモータの回路構成を示す模式図である。
【図15】並列接続されたステッピングモータ全体の回路構成を示す模式図である。
【図16】並列接続されたステッピングモータの回路構成の一部を示す模式図である。
【図17】並列接続においてインダクタンス成分が1つのモータに接続されている回路の例を示す模式図である。
【図18】直列接続されたステッピングモータの回路構成を示す模式図である。
【図19】直列接続されたステッピングモータ全体の回路構成を示す模式図である。
【図20】直列接続においてインダクタンス成分が1つのモータに接続されている回路の例を示す模式図である。
【図21】記録面の裏側に樹脂シートを有する画像記録体を示す斜視図である。
【図22】記録面の裏側に樹脂シートを有する画像記録体を示す底面図である。
【図23】記録面の裏側に樹脂シートを有する画像記録体を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
[第1の実施形態]
(放射線画像読取装置の構成)
図1は、放射線画像読取装置100の全体を示す斜視図、図2は、記録体支持部110を示す斜視図である。なお、図1の搬送部120については簡略化している。また、図1に示す矢印Rは、円筒面111A〜111Dの軸方向、すなわち画像記録体Pの送り方向を示している。
【0025】
放射線画像読取装置100は、プレート状の画像記録体Pに記録された放射線照射画像を読み取るために用いられ、放射線照射画像の読み出しと消去を連続して行う。画像記録体Pは、放射線が照射された部分にその強度に応じた情報を記憶し、レーザ照射時の輝尽性により光を発生させる媒体である。画像記録体Pには、たとえばX線透過画像やX線回折画像を記録することが可能である。なお、ここでいう放射線には、X線や中性子線以外にも電子線等が含まれる。放射線画像読取装置100は、画像記録体Pを送り出し読取領域を通すことで輝尽光を検出し、画像を読み取る。画像記録体Pの送り出しの際には放射線画像読取装置100は、単一モータドライバ320で複数のステッピングモータ126を同期させて駆動する。
【0026】
電気的な同期により駆動することで、湾曲面上の配置等、同期の必要な機構部分が直線的に配置されていなくても簡単に連動が可能となる。1ドライバで複数のステッピングモータ126を同時に動かすため、異なった角度での搬送、離れた場所でのリンク動作を行う場合に正確に同期させることができる。また、機構部が電気的には連結されているが機械的には分離しているため機構がシンプルで独立しており構成要素の交換が容易である。また、最小限(1台)のモータドライバ320で複数のステッピングモータ126を動かすため安価である。なお、ステッピングモータ126の同時駆動は、必ずしも単一モータドライバ320によるものに限られず、機械的な同期により行ってもよい。
【0027】
図1および図2に示すように、放射線画像読取装置100は、記録体支持部110および搬送部120を備えている。さらに、記録体支持部110は、円筒面111A〜111Dおよび台座112を有している。円筒面111A〜111D(湾曲面)は、画像記録体Pの放射線が照射された被照射面(記録面)を支持する。円筒面111Aと円筒面111Bとの継ぎ目には、スリット118が形成されており、スリット118は励起光の照射領域かつ輝尽光の読取領域となっている。円筒面111Cには透明な材質が用いられている。円筒面111Cは、透明ガラスや透明ポリカーボン等の材質で形成されていることが好ましい。
【0028】
図3は、スリット118近傍の記録体支持部110の断面を示す拡大断面図である。搬送ベルト133は微小な吸盤を有し、図3に示すようにスリット118近傍では、プーリ132Aおよびプーリ132Bに掛けられた搬送ベルト133が、画像記録体Pを円筒面111Aに押し付けて搬送ベルト133に吸着させることで、画像記録体Pを滑らかに搬送している。搬送ベルト133が掛けられた2つのプーリ132A、132Bは、放射線照射画像の読み取り位置であるスリット118を跨いで設けられている。記録体支持部110は、基材114の表面上に静電植毛により短繊維が起立した繊維層115を有することで、円筒面111A、111Bを形成している。これにより、プーリ132Aの位置で画像記録体Pが搬送ベルト133により円筒面111A、111Bに押し付けられても、画像記録体Pは繊維層115に当接するため損傷を防止できる。
【0029】
また、基材114の表面上に繊維層115を形成することで、画像記録体Pに対する遮光効果が得られる。特に、黒い繊維により形成された繊維層115は、遮光効果が高い。繊維層115の繊維は、ナイロンや塩化ビニル、ポリエステル等の樹脂で形成され、0.5mm程度の長さ、0.3mm程度の径を有することが好ましい。なお、円筒面111A、111Bの表面をベルベット(ビロード)等の布地としてもよい。円筒面111A、111Bの表面が、静電植毛による繊維層115または布地で形成されている場合には、画像記録体Pの埃や塵を除去する効果もある。なお、基材114は、アルミニウム等の金属により形成されている。
【0030】
また、図3に示すように、円筒面111Aのスリット118に面した端部には、繊維層115に代えて銅等で形成された金属テープ117が両面テープ116を介して基材114に貼り付けられている。これにより、励起光照射部230から画像記録体Pの記録面までの距離を確定し、画像情報の正確な読み取りを可能にしている。一方、円筒面111Bのスリット118に面した端部は、繊維層115に代えて銅等で形成された金属テープ117が、一部、両面テープ116を介して基材114に貼り付けられ、緩い斜面を形成している。この斜面により、画像記録体Pの先端がスリット118に支えないようにしている。
【0031】
なお、上記の例では、記録体支持部110は、基材114の表面上に静電植毛により短繊維が起立した繊維層115を有しているが、基材114上にポリエチレンテレフタレート(PET)またはテフロン(登録商標)の層を形成してもよい。その場合には、表面を梨地表面にすることが好ましい。これにより、表面の摩擦力を低減し、滑らかに画像記録体を搬送することができる。梨地表面とは、機械的または化学的処理によって微細な凹凸が均一に形成され、無方向性のつや消し仕上げがなされた表面である。梨地表面は10μm〜100μmの平均表面粗さを有することが好ましい。
【0032】
図4は、放射線画像読取装置100の、図1の矢印方向から見た断面aを示す断面図である。図4に示すように、搬送部120は、支持フレーム125、保持板134、ならびに4つのステッピングモータ126および伝達部129を備えている。複数のモータを同じスピードで回転させることで、駆動力が分散される。なお、ステッピングモータ126および伝達部129の個数は、複数であれば特に数は限定されない。
【0033】
搬送部120は、画像記録体Pの記録面を記録体支持部110の円筒面111A〜111Dに押し付けつつ、円筒面111Aの軸方向へ画像記録体Pを搬送する。保持板134は支持フレーム125に固定されており、ステッピングモータ126および伝達部129を円筒面111Aに対して垂直な方向に移動可能にしつつ、他の方向への移動は拘束して保持している。また、保持板134は、バネによりステッピングモータ126、および伝達部129に円筒面111A〜111Dに向う押圧力を与えている。なお、押圧力を与える機構は、弾性部材であることが好ましいが、必ずしもバネでなくてもよい。
【0034】
支持フレーム125は、たとえば金属製の板材を連結して円筒面111A〜111Dを覆うアーチ状に形成されており、円筒面111A〜111Dとの間には画像記録体Pを通せる程度の隙間がある。たとえば、イメージングプレート(画像記録体)は、通常の規格で0.3mm〜0.7mmのものが使用されることがあり、ギャップを固定式にすると決まった厚さのものしか使用できなくなるが、上記の隙間は変動可能である。
【0035】
ステッピングモータ126は伝達部129に固定されている。伝達部129は、湾曲面に垂直な方向に移動可能に保持板134に保持され、湾曲面向きの押圧力により画像記録体Pを押圧するとともに、ステッピングモータ126の駆動力を画像記録体Pに伝達する。このようにしてステッピングモータ126および伝達部129を円筒面111A〜111Dに対して移動可能にすることにより、厚みの異なるイメージングプレートに対しても使用可能となり、有用性が高まる。このように厚みに応じて柔軟に伝達部129が移動するため、機械的な連結により複数の搬送ベルトを駆動することは難しくなるが、機械的に独立した複数のモータに対して電気的に同期をとることによりこのような問題は解決する。
【0036】
プーリ132Aおよび132Bは、各ステッピングモータ126の駆動が伝わることで同時に同方向に回転する。これにより、円筒面111A〜111D上に設けられた複数の駆動用搬送プーリを湾曲面上で連動させることができる。その結果、画像記録体Pを円筒面の軸方向Rに向けて均一に搬送することができる。搬送部120の詳細については後述する。
【0037】
図5は、放射線画像読取装置100の、図1の矢印方向から見た断面bを示す断面図である。図5に示すように、円筒面111Cの内部には、消去ランプ140が固定部141によりフレーム142に固定されている。消去ランプ140は、円筒面111Cの円周に沿って複数設けられており、消去ランプ140より円筒面111Cの中心軸側には、効率よく画像記録体に光を照射できるように反射面145が設けられている。画像記録体Pに残存する画像は消去ランプ140の発光により消去される。ユーザは、画像記録体Pを円筒面111Aから基準ガイド113Aに沿って導入し、搬送された画像記録体Pはスリット118の位置で記録画像を読み取られ、円筒面111C上で残像が消去される。このようにして、画像記録体Pに記録された放射線照射画像の読み出しと消去を連続して行うことができる。
【0038】
なお、消去ランプ140は、電球や蛍光灯であってもよいが、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。これにより、円筒面111Cへの発熱による影響を小さくできる。台座112は、円筒面111A〜111Dを支えるよう直方体状に形成され、円筒面111A〜111Dの円筒形の軸方向に沿った平面部113を有している。平面部113は、円筒面111A〜111Dに対しほぼ垂直に突き出している。基準ガイド113Aは、円筒面111A〜111Dと平面部113との連結部分において、円筒面111A〜111D上に設けられている。
【0039】
基準ガイド113Aは、搬送の際に画像記録体Pの辺縁を当てて用いられる基準ガイド113Aが設けられ、画像記録体Pを放射線画像読取装置100に通す際には画像記録体Pの辺縁を当てる基準となる。基準ガイド113Aは、ガイド溝113Bを有し、ガイド溝113Bは、搬送方向断面において溝幅が溝底から溝口に向かって拡大する形状を有する。これにより、容易に辺縁をガイド溝113Bに当てて画像記録体Pを搬送することができ、画像読取りの際の画像記録体Pの基準位置を安定させることができる。読み取りが行われるスリット118から画像消去が行われる円筒面111Cにわたる範囲は後述の遮光カバー等により遮光されている。
【0040】
なお、放射線画像読取装置100は、複数の搬送ベルト133の間に設けられた弾性を有する押え部材を備えていてもよい。押え部材により、搬送の際に記録体支持部110の円筒面111Aから離脱しようとする画像記録体Pを押さえることができる。また、図示しないが、放射線画像読取装置100は、遮光カバーを有している。遮光カバーを用いることで、外部の光に曝露されて画像記録体Pの記録画像を劣化させることなく画像を読みとることができる。遮光カバーは、通常は円筒面111A〜111D全体を覆う形状を有する。
【0041】
放射線画像読取ユニット200は、記録体支持部110内に設置され、励起光を回転させながら、画像記録体Pに照射し、輝尽光を検出することで画像記録体Pに記録された放射線の強度情報を読み取る。放射線画像読取ユニット200は、励起光照射部230から照射された励起光がスリット118を通って画像記録体Pに当たる位置に設けられている。放射線画像読取ユニット200は、円筒面111A〜111Dの中心軸が回転ヘッド215の回転軸となり、円筒面111Aおよび111Bの端部の位置で画像記録体Pに励起光が当たるように設置されている。読み取り時に搬送された画像記録体Pが円筒面111A〜111Dの端部から徐々に送り出される際に、円筒面111A〜111Dに沿って画像記録体Pの表面が円筒状に変形され、その円筒状の表面の画像が読み取られる。
【0042】
(搬送部の構成)
複数設けられている搬送部120の構成の一例を説明する。図6は、搬送部120を示す正面断面図、図7は、搬送部120を示す平面図、図8は、搬送部120を示す側面図、図9は、その反対側から搬送部120を見たときの側面図である。各図に示すように、搬送部120は、ステッピングモータ126、ウォームギア127、ギア128および伝達部129を備えている。
【0043】
一つのステッピングモータ126は、他のステッピングモータ126とともに同期されて同じスピードで駆動される。回転力は、シャフトを介してウォームギア127に伝達される。ウォームギア127は、ステッピングモータ126により回転され、その回転力により軸の直交するギア128を回転し、シャフト131Aとともにプーリ132Aを回転させる。プーリ132Aは、シャフト131Bに支持されたプーリ132Bと対に設けられている。これらのプーリ132Aおよび132Bには搬送ベルト133が掛けられており、上記のステッピングモータ126の回転力により搬送ベルト133が回転される。この搬送ベルト133が画像記録体Pに当接することで、画像記録体Pを搬送することができる。
【0044】
伝達部129は、シャフト131A、131B、プーリ132A、132B、搬送ベルト133により構成されている。伝達部129とステッピングモータ126とはネジ止めなどにより固定されており、伝達部129が移動する場合には、ステッピングモータ126ごと移動することになる。一方、保持板134は、伝達部129側へ突出した凸部136を2つ有している。凸部には溝(図示せず)が設けられ、この溝が伝達部129に設けられた長孔に嵌め込まれることで、伝達部129は、保持板134に保持され、動作を拘束されながらも、円筒面111Aに対して垂直な方向には移動可能となっている。なお、上記の例では溝を長孔に嵌め込むことで一方向のみの移動を可能にしつつ伝達部129を保持しているが、機構は必ずしもこのような形態に限定されない。また、上記の伝達部129の移動機構は、円筒面111Aに対して垂直な方向に移動可能にするものであればよく、たとえばLMガイド(登録商標)のようにころがりを利用して直線移動を可能にするガイド機構であってもよい。
【0045】
また、伝達部129は、上記の凸部136に対向する爪部137を2つ有しており、凸部136と爪部137との間には、バネ135が掛けられている。このバネ135の引っ張り力により伝達部129は、円筒面111A側の方向へ押圧力が掛けられている。この押圧力により、定常状態では搬送ベルト133が最も円筒面111Aに近い位置まで押圧されている。したがって、プレート状の画像記録体Pが搬送ベルト133と円筒面111Aとの間に入ったとき、画像記録体Pの厚さに応じて搬送ベルト133が伝達部129ごと位置を変える。複数のステッピングモータを一台のドライバで駆動し、ステッピングモータのウォームギアでゴムベルトがついたプーリを回転させ、複数の搬送ベルト133の回転を連動させる。
【0046】
搬送ベルト133は、一対のプーリ132Aおよび132Bに掛けられており、支持フレーム125と円筒面111Aの間から挿入された画像記録体Pの記録面を円筒面111Aに押し付けながら円筒面111Aの軸方向Rに送り出す。搬送ベルト133と円筒面111Aとのギャップは0.1mm程度となるよう設計されており、搬送ベルト133は、これより厚いものを円筒面111Aに押付けながら送り出す。プーリ132Aおよび132Bは、歯車状に形成され、搬送ベルト133は、プーリ132Aおよび132Bの歯車溝にリブが噛み合うタイミングベルトが用いられることが好ましい。
【0047】
図10は、搬送ベルト133の一部を拡大して示した図である。搬送ベルト133は樹脂製であり、図10に示すように、その表面(以下、吸盤面という。)には微小な吸盤138が形成されている。搬送ベルト133の表面は、たとえばアクリル酸エステル共重合体エマルジョン液を塗工、乾燥により成膜して得られる。微小な吸盤138は、約10個/mの密度で形成されていることが好ましい。このように、搬送ベルト133がその表面に微小な吸盤138を表面に有するため、吸盤のない通常の搬送ベルト133だけで搬送する場合に比べて弱い圧力で画像記録体Pを搬送することが可能となり、画像記録体P歪ませることなく画像記録体Pを搬送ベルト133に吸着させて搬送することができる。その結果、貼りつきや撓みを生じさせることなく画像記録体Pを均一に搬送することができる。
【0048】
また、吸盤面で画像記録体Pを吸着して移送するため、十分な搬送力が得られ、画像記録体Pと円筒面111Aおよび111Bとの摩擦力を低減することもできる。また、たとえば、搬送ベルト133の表面に凹凸を設けることで搬送力を向上させることも考えられるが、吸盤面による搬送力の方が大きい。吸盤面は物理的な吸着力を有するものであり、吸着力が低下したときでもアルコール等で表面を拭けば吸着力が回復する。したがって、副次的な効果として、被吸着面の塵や埃を吸着除去する効果も得られる。なお、微小な吸盤138を表面に有する樹脂シート(たとえば、μフィット(登録商標))を貼着した搬送ベルト133を用いてもよい。
【0049】
放射線画像読取装置100は、少なくとも画像記録体Pの搬送方向上のプーリ132Aの位置において搬送ベルト133により画像記録体Pに所定の押圧力を与えている。押圧力は、既述の伝達部129のバネ135により与えられるが、その他の機構により与えることとしてもよい。所定の押圧力は、調整可能であり、搬送ベルト133の吸着力や円筒面111Aおよび111Bの材質、表面形状等により設定することができる。たとえば、円筒面111Aおよび111Bが静電植毛による繊維層115を有する場合には、表面が柔らかい一方で摩擦係数が高いため、搬送ベルト133の押圧力を0.2N以上と大きくすることで画像記録体Pの移送力を高めることができる。
【0050】
また、円筒面111Aおよび111BがPETやテフロン(登録商標)の梨地表面を有する場合には、梨地表面の硬い一方で摩擦係数が小さいため、搬送ベルト133の押圧力を0.03N以上1.0Nに以下に小さくすることで画像記録体Pの損傷を防止できる。また、搬送方向上のプーリ132Aの位置で押圧力がかかるため、スリット118の位置では画像記録体Pが搬送ベルト133に強固に吸着され、画像記録体Pの均一な移送が可能である。
【0051】
(放射線画像読取ユニットの構成)
図4に示すように、放射線画像読取ユニット200は、記録体支持部110の内部に設けられている。放射線画像読取ユニット200は、台部205、サーボモータ210(図示せず)、回転ヘッド215、励起光照射部230および検出器(図示せず)を備えている。台部205は、各部を支持する台である。サーボモータ210は、回転ヘッド215を回転させる。サーボモータ210は、定速回転制御がなされることが好ましい。回転ヘッド215は、サーボモータ210の回転駆動力により回転する。回転ヘッド215の回転軸は、円筒面111A〜111Dの中心軸と同一である。
【0052】
励起光照射部230は、励起光を発生させて、画像記録体Pに照射する。励起光照射部230は、回転ヘッド215に固定され、回転ヘッド215とともに回転しつつ、励起光を照射する。図11は、放射線画像読取ユニット200の構成を模式的に示す図である。励起光照射部230は、レーザ光源231、コリメートレンズ232、選択ミラー234、および集光レンズ236を有している。
【0053】
レーザ光源231は、レーザ光を発生させる。回転ヘッド215に組み込むためには半導体を用いた小型のものが好ましい。選択ミラー234は、ダイクロイックミラーであり、赤色の励起光は透過させるが青色の輝尽光は反射する性質を有している。集光レンズ236は、照射光および輝尽光を通過させる。集光レンズ236は、輝尽光を集光し平行光線とする。
【0054】
検出器(図示せず)は、励起光が画像記録体Pに照射されて輝尽光を検出する。励起光が画像記録体に照射されることで放射された輝尽光を検出する検出器は、フィルタ241および光電子増倍管243(PMP)を有している。フィルタ241は、赤色光をカットし、青色光を透過する。光電子増倍管243は、フィルタ241を透過した輝尽光を検出し、輝尽光の強度に応じた電圧を発生させる。
【0055】
次に、放射線画像読取ユニット200内および画像記録体Pと放射線画像読取ユニット200との間における励起光および輝尽光の経路を説明する。レーザ光源231から照射されたレーザ光は、コリメートレンズ232により拡散ビームから平行ビームに変換される。そして、選択ミラー234、集光レンズ236を透過し、画像記録体Pに当たる。画像記録体Pは、励起光を受けると記録されたX線強度に応じた強度の輝尽光を発生する。輝尽光は集光レンズ236で集光され、平行光線とする。平行光線とされた輝尽光は選択ミラー234で反射され、フィルタ241で赤色光がカットされる。フィルタ241を透過した輝尽光は光電子増倍管243により検出される。
【0056】
(放射線画像読取装置の電気的構成)
放射線画像読取装置100は、主に内部の制御回路310による電気的な制御を行う。図12、図13は、放射線画像読取装置100の電気的構成を示すブロック図である。放射線画像読取装置100は、制御回路310、モータドライバ320、ステッピングモータ126、サーボモータドライバ330、サーボモータ210、回転ヘッド215、検出器240、プリアンプ351、A/D変換部352、消去ランプ140、電源359、USB接続部363およびメモリ370を備えている。なお、図12は、ステッピングモータ126が並列接続されている構成、図13は、ステッピングモータ126が直列接続されている構成を示している。各接続については、後述する。
【0057】
制御回路310(制御部)は、ユーザの操作に応じて各部を制御する回路である。制御回路310は、モータドライバ320へモータ駆動のためのパルスを送信する。モータドライバ320は、制御回路310から発信されるパルスを受けて、複数のステッピングモータ126を同期させて駆動させる。その結果、パルスに応じた速さで画像記録体Pを搬送することができる。このように、制御回路310は、モータドライバ320を介してステッピングモータの駆動を制御している。その一方で、制御回路310はサーボモータドライバ330を制御し、サーボモータ210を回転させることで、回転ヘッド215を回転させる。また、画像記録体Pの輝尽光を検出器240で検出し、プリアンプ351で増幅し、A/D変換部352でデジタル信号に変換する。
【0058】
プリアンプ351は、検出器240が検出した信号を増幅する。A/D変換部352は、プリアンプ351が増幅したアナログの検出信号をデジタル信号へ変換し、制御回路310に信号を伝達する。USB接続部363はPC等とのインタフェースとして機能する。メモリ370は、高速に画像データを記憶することが可能なメモリである。PC等とともにメモリ370を併用することで、USBのデータ転送能力が追いつかない場合でも一時的に画像データを記憶しておくことができる。
【0059】
(ステッピングモータの接続)
ステッピングモータ126の電気的接続には並列接続および直列接続がある。ステッピングモータ126の各コイルが独立していないもの同士の組み合わせには並列接続が可能である。並列接続の場合には、モータドライバ320には高出力(電流)が必要とされるが結線が簡単になる。各コイル間には抵抗値のバラツキがあるので、駆動力に余力がある場合には並列接続が有効である。図14は、並列接続されたステッピングモータ126の回路構成を示す模式図、図15は、その全体の回路構成を示す模式図である。
【0060】
図14に示すステッピングモータ126は、5つのコイルと5本のリードA〜Eを有しており、それらは回路P1を構成している。そして、図15に示すようにステッピングモータ126は複数設けられており、それらの複数のステッピングモータ126の回路P1〜Pnは、1つのモータドライバ320により同期させて駆動できるように電気的に並列接続されている。このような回路により同期駆動を行った場合には、ステッピングモータ126に生ずる逆起電力は、複数のそれぞれのステッピングモータ126の負荷状況により変動するので、その結果、1つのモータの回転が他のモータの動作に影響を及ぼす。たとえば、他のモータがハンチングしたり、他のモータを回転させたりする場合が生じる。このような現象は、モータごとにドライバを設けた場合には生じないが、複数のドライバを設けるとコストが嵩んでしまい現実的ではない。したがって、単一のドライバを用いつつ、上記の現象を抑止することが重要である。
【0061】
上記の現象はドライバが駆動電流を流していない場合には大きく、十分な駆動電流を流している場合には小さい。ただし、並列接続された複数のステッピングモータ126の駆動中でも、この現象で1つのモータが発振気味になると他のモータに動きが伝わる。発電機として動作するステッピングモータ126から生じる位相の異なる電圧はモータドライバ320からの供給電圧によらずモータの回転速度で決まる一定の値である。したがって、一つの防止手段として、モータドライバ320の出力設定電圧を高めておく方法が有効である。モータドライバ320のステッピングモータ126への供給電圧をE1とし、ステッピングモータ126の逆起電力の電圧をE2とするとき、1<E1/E2の関係を満たすよう供給電圧を設定することが好ましい。これにより、発振源のステッピングモータ126に駆動電流が流れ、上記の現象が緩和され他モータへの影響を無視できる程度にまで小さくすることができる。そして、複数のモータを安定して動作させることができる。
【0062】
1<E1/E2とするのが好ましいのは、実験結果に基づく。3台のステッピングモータ126を並列に接続した回路に対して、ステッピングモータ126をホールド状態に維持し、ステッピングモータの1台を手回ししたところ、2V程度の起電力による電圧が発生していることが観察された。そして、このステッピングモータ126には、2V程度に駆動電圧を設定すれば十分に起電力による影響を無視できた。したがって、そのときの設定電圧において、E1/E2=2÷2=1となり、上記の関係が導かれた。なお、実際の動作では、マージン値を加味して1.1≦E1/E2とするのが好ましい。
【0063】
一方、他の防止手段としては、供給電圧とモータの間に抵抗かチョーク(インダクタンス成分)を入れてもよい。図16は、並列接続されたステッピングモータ126の回路構成の一部を示す模式図、図17は、インダクタンス成分が1つのモータに接続されている回路の例を示す模式図である。図16、図17に示すように各ステッピングモータ126のリードあたり一つのインダクタンス成分Lを設ける。たとえば、5本リードのステッピングモータ126が5個ある構成であれば、5×5=25個のチョーク(インダクタンス成分)を入れる。このように、複数のステッピングモータ126の各コイルに直列にインダクタンス成分を接続することができる。これにより、逆起電力により他モータへ印加される電圧のピークを下げるとともに、逆起電力による電流と電圧の位相をずらして実効的な電力を下げることができる。
【0064】
また、同タイプのステッピングモータ126を用いる場合でも、コイル特性のバラツキが10%ほどあり、バラツキによる動作の低下分を補えるように駆動をする必要がある。したがって、モータドライバ320の設定供給電流を、目標電流×ステッピングモータの台数×1.1以上とすることが好ましい。その際には、ステッピングモータ126の定格電流をオーバーしないよう注意する。なお、マッチング用の抵抗を付加し調整することによって、駆動電流の異なるステッピングモータ同士126を組み合わせて放射線画像読取装置100を構成してもよい。
【0065】
上記の例では、複数のステッピングモータ126を並列接続しているが、ステッピングモータ126の各コイルが独立しているタイプのモータであればモータ同士を直列接続することもできる。図18は、直列接続されたステッピングモータ126の回路構成を示す模式図、図19は、直列接続されたステッピングモータ126全体の回路構成を示す模式図である。図19に示すように、n台のステッピングモータ126の同相に当たるコイルを直列にしたものを1つのコイルと考えてモータドライバ320に接続すると定電流駆動ができ、すべてのステッピングモータ126を同トルクで動かすことができる。図19に示す例では、コイルX1〜Xnの端子Xと端子Xxを次々に接続している(XxにはAa〜Eeがそれぞれ入る)。このような直列接続の構成は、抵抗値が増すため大きい駆動電圧を印加できるモータドライバ320が必要である。また、定電流駆動ドライバを用いる場合には同じタイプのステッピングモータ126同士の組み合わせに用いる場合に限られる。なお、上記の例では5極のステッピングモータに本発明を適用しているが、2極のステッピングモータへの適用も可能である。
【0066】
なお、直列接続の場合でも、1つのモータの回転が他のモータへ影響を及ぼす現象を防止するため、供給電圧および各モータの間に抵抗かチョーク(インダクタンス成分)を入れることができる。図20は、インダクタンス成分が1つのモータに接続されている回路の例を示す模式図である。図20に示すように、基本的には、各ステッピングモータ126のリードあたり一つのインダクタンス成分Lを設ける必要があるが、1台目のステッピングモータ126に対してはインダクタンス成分を省略できる。たとえば、5相ステッピングモータを5台直列接続する場合には、1台目のステッピングモータに対してインダクタンス成分を省略し、(5台−1)×5相=20個のインダクタンス成分を接続することができる。このように、複数のステッピングモータ126の各コイルに直列にインダクタンス成分を接続することができる。
【0067】
(放射線画像読取装置の動作)
次に、このような放射線画像読取装置100の動作を説明する。まず、設定電圧を調整し、モータの定格電圧の1.1倍の電圧となるようにしておく。そして、制御回路310へ操作指示に基づいて、放射線画像読取装置100を起動する。ユーザにより画像記録体Pが搬送部120に送られると、搬送部120は円筒面111Aに沿って画像記録体Pを送り出す。その一方で、検出器240に高電圧が供給されるとともに、サーボモータドライバ330の制御に基づいて回転ヘッド215が回転し、励起光照射部230は回転ヘッド215とともに回転しつつ、円筒面111A〜111Dに沿って送り出された画像記録体Pに励起光を照射する。
【0068】
励起光を照射された画像記録体Pは、蓄積されたX線強度情報に応じた輝尽光を放射する。検出器240は、放射された輝尽光を検出し、検出された情報は、プリアンプ351およびA/D変換部352を経て制御回路310へ送出される。そして、USB接続によりほぼリアルタイムで読取画像データが外部のPC等に記憶される。この際に、USB接続のデータ転送速度が小さすぎ十分にPC等に記憶できない場合には、制御回路310はメモリ370に画像を記憶させる。後でUSB接続のデータ転送速度が十分に大きくなったときにメモリ370に記憶したデータをPC等に移す。このようにして、放射線画像読取装置100は放射線画像データを読み取り、蓄積することができる。
【0069】
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、搬送ベルト133が微小な吸盤138を有しているが、記録面の裏側に微小な吸盤138を有する樹脂シート152を貼着した画像記録体Pを用いてもよい。その場合には搬送ベルト133側には吸盤138が設けられている必要はない。
【0070】
図21は、記録面の裏側に樹脂シート152を有する画像記録体Pを示す斜視図である。図22、23は、本体151の記録面の裏側に樹脂シート152を有する画像記録体Pを示す底面図である。図21〜23に示す画像記録体Pでは、樹脂シート152が、搬送方向Rに平行、かつ搬送部120に送り込む際に搬送ベルト133に接する位置に設けられている。
【0071】
これにより、画像記録体Pに吸盤138を有する樹脂シート152が設けられている場合に比べて弱い圧力で搬送することが可能となり、画像記録体Pを歪ませることなく、画像記録体Pを搬送ベルト133に吸着させて搬送することができる。その結果、貼りつきや撓みを生じさせることなく画像記録体Pを均一に搬送することができる。また、画像記録体Pと円筒面111Aおよび111Bとの摩擦力を低減することができる。樹脂シート152は、たとえばポリエステルフィルムにアクリル酸エステル共重合体エマルジョン液を塗工、乾燥により成膜して得られる。なお、図22は、2つの搬送ベルト133に樹脂シート152が接する大きさの画像記録体Pを示しており、図23は、3つの搬送ベルト133に樹脂シート152が接する大きさの画像記録体Pを示している。このように大きさに合せて樹脂シート152の位置を設定することができる。
【符号の説明】
【0072】
100 放射線画像読取装置
110 記録体支持部
111A〜111D 円筒面
112 台座
113 平面部
113A 基準ガイド
113B ガイド溝
114 基材
115 繊維層
116 両面テープ
117 金属テープ
118 スリット
120 搬送部
125 支持フレーム
126 ステッピングモータ
127 ウォームギア
128 ギア
129 伝達部
131A、131B シャフト
132A、132B プーリ
133 搬送ベルト
134 保持板
135 バネ
136 凸部
137 爪部
138 吸盤
140 発光体(消去ランプ)
141 固定部
142 フレーム
145 反射面
151 本体
152 樹脂シート
200 放射線画像読取ユニット
205 台部
210 サーボモータ
215 回転ヘッド
230 照射部(励起光照射部)
231 レーザ光源
232 コリメートレンズ
234 選択ミラー
236 集光レンズ
240 検出器
241 フィルタ
243 光電子増倍管
310 制御回路(制御部)
320 モータドライバ
330 サーボモータドライバ
351 プリアンプ
352 A/D変換部
359 電源
363 USB接続部
370 メモリ
A〜E リード
Aa〜Ee 端子
L インダクタンス成分
P 画像記録体
P1〜Pn ステッピングモータの回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート状の画像記録体に記録された放射線照射画像を読み取る放射線画像読取装置であって、
円筒面で前記画像記録体の記録面を支持する記録体支持部と、
微小な吸盤を表面に有する樹脂製の搬送ベルトにより、前記画像記録体の記録面を前記記録体支持部の円筒面に押し付けつつ、前記円筒面の軸方向へ前記画像記録体を搬送する搬送部と、を備え、
前記搬送される画像記録体に記録された放射線照射画像の読み取りと消去を連続して行うことを特徴とする放射線画像読取装置。
【請求項2】
プレート状の画像記録体に記録された放射線照射画像を読み取る放射線画像読取装置であって、
円筒面で前記画像記録体の記録面を支持する記録体支持部と、
微小な吸盤を表面に有する樹脂シートが設けられた搬送ベルトにより、前記画像記録体の記録面を前記記録体支持部の円筒面に押し付けつつ、前記円筒面の軸方向へ前記画像記録体を搬送する搬送部と、を備え、
前記搬送される画像記録体に記録された放射線照射画像の読み取りと消去を連続して行うことを特徴とする放射線画像読取装置。
【請求項3】
前記記録体支持部は、前記円筒面上に静電植毛により短繊維が起立した繊維層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像読取装置。
【請求項4】
プレート状の画像記録体に記録された放射線照射画像を読み取る放射線画像読取装置であって、
円筒面上に静電植毛により短繊維が起立した繊維層を有し、前記円筒面で前記画像記録体の記録面を支持する記録体支持部と、
搬送ベルトにより、前記画像記録体の記録面を前記記録体支持部の円筒面に押し付けつつ、前記円筒面の軸方向へ前記画像記録体を搬送する搬送部と、を備え、
前記搬送される画像記録体に記録された放射線照射画像の読み取りと消去を連続して行うことを特徴とする放射線画像読取装置。
【請求項5】
前記搬送部は、前記搬送ベルトにより前記画像記録体に所定の押圧力を与える機構を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の放射線画像読取装置。
【請求項6】
放射線画像読取装置で画像を読み取られるプレート状の画像記録体であって、
放射線照射画像のデータを蓄積する一方の主面と、微小な吸盤を表面に有する樹脂シートが設けられている他方の主面とを有することを特徴とする画像記録体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−227346(P2011−227346A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98050(P2010−98050)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】