説明

放射線画像読取装置

【課題】画像記録体に記録された画像を正確に、かつ画像記録体の表面に傷をつけずに読み取ることを可能にする放射線画像読取装置を提供する。
【解決手段】平面形状で放射線画像が記録された画像記録体を円筒形状に曲げて画像読取を行う放射線画像読取装置100であって、画像記録体が保持されたフィルム状ホルダの両端を支持し、画像読取時に所定方向にスライドする一対の支持部110と、フィルム状ホルダを覆い、画像記録体の表面が第1の基準曲面に至るまで画像記録体を弾性的に押圧する被覆部120と、固定位置に形成され、スライドする画像記録体の表面を第2の基準曲面に規制する一対の面規制部130と、一対の面規制部の中間に設置され、画像記録体に記録された放射線画像を読み取る読取部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面形状で放射線画像が記録された画像記録体を円筒形状に曲げて画像読取を行う放射線画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線等の放射線画像データの撮影にはIP(Imaging Plate)が用いられる。このようなIPから放射線画像を読み取る装置は、読み取りヘッドを回転させる読み取り機構を固定位置に設置し、湾曲させたIPを搬送させながら画像データを読み取る方式が取られることが多い。そのような読み取り装置では、IP自身を調整面に対してベルト駆動機構で押し付け、ベルトの摩擦力でIPを搬送する機構が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の放射線画像読取装置は、円筒面で画像記録体の記録面を支持し、複数のプーリごとに掛けられた搬送ベルトにより、円筒面の軸方向へ画像記録体を搬送し、搬送された画像記録体に記録された放射線照射画像の読み出しと消去を連続して行っている。このとき搬送ベルトは、画像記録体の記録面を円筒面に押し付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−060750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような搬送機構を有する放射線画像読取装置では、IP表面を基準面に合せながらIPを搬送するため、IPをベルトで強力に押さえつける必要がある。そのため、IP表面が円筒状の支持面に強く押され、その状態で滑りながら搬送されるため、表面に多くの傷がつくことがある。
【0006】
そのため、IPの表面には擦り傷が発生し、結果としてX線の読み取り画像にも影響を与える。すなわち、IP表面の傷が深くなると、IP自身が外部雰囲気の影響を受けX線に対する感度特性が変わったり、表面の傷の部分で読み取り用のレーザー光が散乱され、傷起因の画像が見られるようになったりする。そして、観測したい画像の誤認や誤判定に影響するため、使用が難しくなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、画像記録体に記録された画像を正確に、かつ画像記録体の表面に傷をつけずに読み取ることを可能にする放射線画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る放射線画像読取装置は、平面形状で放射線画像が記録された画像記録体を円筒形状に曲げて画像読取を行う放射線画像読取装置であって、画像記録体が保持されたフィルム状ホルダの両端を支持し、画像読取時に所定方向にスライドする一対の支持部と、前記フィルム状ホルダを覆い、前記画像記録体の表面が第1の基準曲面に至るまで前記画像記録体を弾性的に押圧する被覆部と、固定位置に形成され、スライドする前記画像記録体の表面を第2の基準曲面に規制する一対の面規制部と、前記一対の面規制部の中間に設置され、前記画像記録体に記録された放射線画像を読み取る読取部とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように本発明の放射線画像読取装置は、画像記録体の表面を第2の基準曲面に規制し、その位置で画像記録体から放射線画像の読み取りを行う。その結果、精度の高い位置合せにより正確に放射線画像を読み取ることができる。また、本発明の放射線画像読取装置は、画像記録体の表面を第1の基準曲面に至るまで画像記録体を弾性的に押圧し、固定位置に形成された一対の面規制部で第2の基準曲面に規制しているため、画像記録体にかかる圧力を調整でき、表面の損傷を防止することができる。
【0010】
(2)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記一対の面規制部は、スライドする前記画像記録体に当接したとき、前記画像記録体の表面を押し返して第2の基準曲面に規制し、前記読取部は、前記第2の基準曲面に表面を規制された前記画像記録体から記録された放射線画像を読み取ることを特徴としている。このように放射線画像読取装置が第2の基準曲面に表面を規制された画像記録体から記録された放射線画像を読み取るため、正確に放射線画像を読み取ることができる。
【0011】
(3)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記被覆部は、前記画像記録体が貼り付けられたフィルム状ホルダの両端を前記一対の支持部に押さえて挟持することを特徴としている。このようにフィルム状ホルダの両端を押さえて挟持することで、第1の基準曲面に画像記録体の表面を合せてスライドさせることが容易となる。
【0012】
(4)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記一対の面規制部は、前記画像記録体より硬度の小さい材料で形成されていることを特徴としている。これにより、画像記録体が面規制部に当接したときに画像記録体の表面の損傷を防止できる。
【0013】
(5)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記一対の面規制部は、前記画像記録体の表面の位置を規制する面の端部に丸面取りが形成されていることを特徴としている。これにより、画像記録体が面規制部に接触する際に、引っ掛かること等なく滑らかに画像記録体の表面を押し返すことができる。
【0014】
(6)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記被覆部が有する弾性材料により、前記第2の基準曲面で前記面規制部に対して前記画像記録体が1×10Pa以上1×10Pa以下で押圧されるように、前記第1の基準曲面が設定されていることを特徴としている。これにより、画像記録体にかかる圧力を調整でき、面規制部に当接したときに生じやすい画像記録体の表面の損傷を防止することができる。
【0015】
(7)また、本発明に係る放射線画像読取装置は、前記被覆部は、3次元網目構造を有する有機物の層を弾性材料として有することを特徴としている。これにより、弾性力を小さくして画像記録体にかかる圧力を低減し、画像記録体の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、画像記録体に記録された画像を正確に、かつ画像記録体の表面に傷をつけずに読み取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る放射線画像読取装置を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る放射線画像読取装置および画像記録体を示す正面図である。
【図3】本発明に係る放射線画像読取装置および画像記録体を示す正面図である。
【図4】本発明に係る放射線画像読取装置および画像記録体を示す断面図である。
【図5】固定ユニットを示す断面図である。
【図6】読取部における励起光および輝尽光の経路を示す図である。
【図7】支持部および画像記録体を示す断面図である。
【図8】支持部および画像記録体を示す断面図である。
【図9】画像記録体の位置合せの方法を示す模式図である。
【図10】本発明に係る放射線画像読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図11】本発明に係る放射線画像読取装置の動作の一場面を示す正面図である。
【図12】本発明に係る放射線画像読取装置の動作の一場面を示す正面図である。
【図13】比較例を示すグラフである。
【図14】実施例を示すグラフである。
【図15】画像記録体とその撮影用ケースを示す正面図である。
【図16】画像記録体とその撮影用ケースを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
(装置の全体構成)
図1は、放射線画像読取装置を示す斜視図、図2および図3は、放射線画像読取装置および画像記録体を示す正面図である。また、図4は、放射線画像読取装置および画像記録体を示す断面図である。図2および図3に示すように、放射線画像読取装置100は、平面形状で放射線画像が記録された画像記録体220を設置し、円筒形状に曲げて画像読取を行う。放射線画像読取装置100は、固定ユニット105および可動ユニット107を備えている。なお、放射線はX線や中性子線等であり、画像記録体220は、たとえばIP(Imaging Plate)である。
【0020】
図5は、固定ユニットを示す断面図である。固定ユニット105は、ベース部109、一対の面規制部130、読取部140、読取用駆動部150を備え、スライドする可動ユニット107に対して静止している。一方、可動ユニット107は、固定ユニット105に対してスライドすることで移動可能であり、一対の支持部110、スライド部115、被覆部120を備えている。
【0021】
一対の支持部110は、読取部140の回転ヘッドの回転中心を中心とし、一定の外径を有する円環状に形成されている。円環状の表面には僅かに段差が設けられており、外段面111と、内段面112が形成されている。一対の支持部110の一対の内段面112は、画像記録体220が保持されたフィルム状ホルダ210の送り方向の両端を支持する。そして、モータ等の駆動により画像読取時に所定方向にスライドする。外段面と内段面との詳細は後述する。
【0022】
被覆部120は、画像記録体220ごとフィルム状ホルダ210を覆い、画像記録体220の表面が第1の基準曲面に至るまで画像記録体220を弾性的に押圧する。被覆部120は、容易に円弧上に湾曲可能な押えばね板121と弾性材料の層122を有しており、フィルム状ホルダ210に当接する弾性材料の層の表面はフィルム等により形成されている。弾性材料の層は、たとえば、スポンジや繊維層のような3次元網目構造を有する有機物の層で形成されていることが好ましい。これにより、弾性力を小さくして画像記録体220にかかる圧力を低減し、一対の面規制部130に接触する画像記録体220の表面の損傷を防止することができる。それ以外にも液体の入った袋を用いて弾性材料としてもよい。
【0023】
一対の支持部110の一対の内段面112に両端を支持した、画像記録体220が貼り付けられたフィルム状ホルダ210を押さえるために、被覆部120は一対の支持部110の一対の外段面111に両端を支持して挟持するよう構成されていることが好ましい。このようにフィルム状ホルダの両端を押さえて挟持することで、第1の基準曲面に画像記録体の表面を合せてスライドさせることが容易となる。また、画像記録体220自身をフィルム状ホルダ210に貼り付けることにより、フィルム状ホルダ210の形状を事前に基準曲面と同等位置にポジショニングさせることができる。
【0024】
一対の面規制部130は、ベース部109上の固定位置に形成され、スライドする画像記録体220の表面を第2の基準曲面に規制する。したがって、読取部を覆う円環状に形成されていることが好ましい。また、画像記録体220の表面を規制する円環の外側面は、読取部の回転ヘッドの回転中心を中心とした一定の外径に形成されていることが好ましい。一対の面規制部130は、スライドする画像記録体220に当接したとき、画像記録体220の表面を押し返して第2の基準曲面に規制する。
【0025】
また、一対の面規制部130は、画像記録体220より硬度の小さい材料で形成されていることが好ましい。これにより、画像記録体220が面規制部に当接したときに画像記録体220の表面の損傷を防止できる。また、一対の面規制部130は、画像記録体220の表面の位置を規制する面の端部に丸面取りが形成されている。これにより、画像記録体220が面規制部130に接触する際に、引っ掛かること等なく滑らかに画像記録体220の表面を押し返すことができる。
【0026】
読取部140は、一対の面規制部130の中間に設置され、画像記録体220に記録された放射線画像を読み取る。これにより、一対の面規制部130の中間において第2の基準曲面に表面を規制された画像記録体220から記録された放射線画像を読み取ることが可能になる。したがって、正確に放射線画像を読み取ることができる。図5に示すように、読取部140は、一対の面規制部130の中間に設けられている。読取部140は、回転ヘッド141を有し、読取用駆動部150と接続されている。
【0027】
図5に示すように、読取用駆動部150は、読取部140を回転させる。読取用駆動部150は、定速回転制御がなされることが好ましい。読取部140は、読取用駆動部150の回転駆動力により回転する。読取部140の回転軸は、一対の面規制部130の円環面の中心軸と同一である。
【0028】
(読取部の構成)
図6は、読取部140における励起光および輝尽光の経路を示す図である。読取部140は、励起光を発生させて、回転しつつ励起光を画像記録体220に照射する。読取部140は、レーザ光源142、コリメートレンズ143、選択ミラー144、および集光レンズ145を有している。
【0029】
レーザ光源142は、レーザ光を発生させる。読取部140に組み込むためには半導体を用いた小型のものが好ましい。選択ミラー144は、ダイクロイックミラーであり、赤色の励起光は透過させるが青色の輝尽光は反射する性質を有している。集光レンズ145は、照射光および輝尽光を通過させる。集光レンズ145は、輝尽光を集光し平行光線とする。
【0030】
検出部146は、励起光が画像記録体220に照射された結果、発する輝尽光を検出する。励起光が画像記録体に照射されることで放射された輝尽光を検出する検出部146は、フィルタ147および光電子増倍管148(PMP)を有している。フィルタ147は、赤色光をカットし、青色光を透過する。光電子増倍管148は、フィルタ147を透過した輝尽光を検出し、輝尽光の強度に応じた電圧を発生させる。なお、光電子増倍管148は、検出部146の構成の一例であり、必ずしもこれに限られない。
【0031】
次に、読取部140内および画像記録体220と読取部140との間における励起光および輝尽光の経路を説明する。レーザ光源142から照射されたレーザ光は、コリメートレンズ143により拡散ビームから平行ビームに変換される。そして、選択ミラー144、集光レンズ145を透過し、画像記録体220に当たる。画像記録体220は、励起光を受けると記録されたX線強度に応じた強度の輝尽光を発生する。輝尽光は集光レンズ145で集光され、平行光線となる。平行光線となった輝尽光は選択ミラー144で反射され、フィルタ147で赤色光がカットされる。フィルタ147を透過した輝尽光は光電子増倍管148により検出される。
【0032】
(第1の基準曲面と第2の基準曲面)
図7および図8は、支持部110および画像記録体220を示す断面図である。支持部110は、外段面111および内段面112を有している。まず、図7に示すように、フィルム状ホルダ210は、内段面112に合せて設置される。そして、被覆部120の押さえばね板121を外段面111に合せ、弾性材料の層122で弾性力を与えながら被覆部120でフィルム状ホルダ210を覆う。外段面111と内段面112の径の差はL1である。
【0033】
このとき、第1の基準曲面は、内段面112の位置からさらに画像記録体220の厚さ分だけ、中心側に設定されている。そして、第2の基準曲面は、第1の基準曲面からわずかに大きな外径位置に設定されていて、内段面112の位置からさらにL2の距離だけ、中心側に設定されている。このときの第1の基準曲面と第2の基準曲面の差寸法はαである。αの長さは、100μm程度であるが、誇張して図示するために図7と図8の縦横尺度比は実際とは異ならせている。図8は、画像記録体220が面規制部130により押し返された状態を示している。このとき、弾性材料の層122が縮むことで、画像記録体220の表面が第2の基準曲面に規制される。
【0034】
図9は、画像記録体220の位置合せの方法を示す模式図である。図9に示すように、最初に被覆部120により支持部110に押圧することで画像記録体220の表面を第1の基準曲面に合せておいて、画像記録体220をスライドさせ、当接する一対の面規制部130により第2の基準曲面に合せることで画像読み取りが行われる。
【0035】
放射線画像読取装置は100、一対の面規制部130により画像記録体220の表面を、読取時に第2の基準曲面に規制する結果、精度の高い位置合せにより正確に放射線画像を読み取ることができる。また、放射線画像読取装置100は、画像記録体220の表面を第1の基準曲面に至るまでフィルム状ホルダ210および画像記録体220を弾性的に押圧し、固定位置に形成された一対の面規制部130で第2の基準曲面に規制しているため、画像記録体220にかかる圧力を調整でき、わずかな圧力で押し付ける機構を持たせ、表面の損傷を防止することができる。このように1回の調整で面を出すのではなく、2段階で画像記録体220の面出しを制御するため、画像記録体220の表面の読み取り基準面(第2の基準曲面)における接触摩擦力を小さくさせることができる。
【0036】
第1の基準曲面は、画像記録体220が一対の面規制部130により押し返され、第2の基準曲面において被覆部120が有する弾性材料により、面規制部130に対して1×10Pa以上1×10Pa以下で押圧されるように、設定されていることが好ましい。このように画像記録体220にかかる圧力を調整することで、面規制部130に当接したときに生じやすい画像記録体220の表面の損傷を防止することができる。
【0037】
(放射線画像読取装置の電気的構成)
放射線画像読取装置100は、主に内部の制御回路310による電気的な制御を行う。図10は、放射線画像読取装置100の電気的構成を示すブロック図である。放射線画像読取装置100は、制御回路310、モータドライバ331、ステッピングモータ332、サーボモータドライバ341、読取用駆動部150、読取部140、検出部146、プリアンプ322、A/D変換部321、消去ランプ342、電源343、USB接続部344およびメモリ345を備えている。
【0038】
制御回路310は、ユーザの操作に応じて各部を制御する回路である。制御回路310は、モータドライバ331へモータ駆動のためのパルスを送信する。モータドライバ331は、制御回路310から発信されるパルスを受けて、ステッピングモータ332を同期させて駆動させる。その結果、パルスに応じた速さで可動ユニット107をスライドさせ、画像記録体220を搬送することができる。このように、制御回路310は、モータドライバ331を介してステッピングモータの駆動を制御している。その一方で、制御回路310はサーボモータドライバ341を制御し、読取用駆動部150を回転させることで、読取部140を回転させる。また、画像記録体220からの輝尽光を検出部146で検出し、プリアンプ322で増幅し、A/D変換部321でデジタル信号に変換する。
【0039】
プリアンプ322は、検出部146が検出した信号を増幅する。A/D変換部321は、プリアンプ322が増幅したアナログの検出信号をデジタル信号へ変換し、制御回路310に信号を伝達する。USB接続部344はPC等とのインタフェースとして機能する。メモリ345は、高速に画像データを記憶することが可能なメモリである。PC等とともにメモリ345を併用することで、USBのデータ転送能力が追いつかない場合でも一時的に画像データを記憶しておくことができる。
【0040】
(装置の動作)
次に、放射線画像読取装置100の動作を説明する。図11および図12は、本発明に係る放射線画像読取装置の動作の一場面を示す正面図である。まず、画像記録体220をフィルム状ホルダ210に接着し、フィルム状ホルダ210を被覆部120で覆い、第1の基準曲面に一致するように保持する。このとき、読み取り面以外の部分としてフィルム状ホルダ210を円筒形の支持部110の内段面112(ガイド)に沿わせて画像記録体220を曲げ、画像記録体220をフィルム状ホルダ210とともに半円形に曲げる。
【0041】
次に、読取部140を駆動して、図11および図12に示すように、可動ユニット107を一定速度でスライドさせ、画像の読み取りを行う。このとき、一対の面規制部130に画像記録体220の表面が当接することで押し返され、読取位置において第2の基準曲面に画像記録体220の表面が一致している。このようにして、正確に放射線画像を読み取ることができ、かつ、画像記録体220の表面に損傷が生じるのを防止できる。
【0042】
(面位置の位置決め実験)
次に、放射線画像読取装置100について実験を行った。その際に、(1)IP表面と読み取りヘッド間の距離が一定であること(±50μm以内)、(2)IPの表面に有意な傷ができないことの2点を目標とした。
【0043】
まず、基準曲面へのIPの表面位置の位置決め実験を行った。上記の通り、通常、放射線画像読取において50μmが許容範囲の基準であり、本実験ではこれを目標値としている。一対の面規制部130にIPの表面が当接しない位置に第1の基準曲面を設定し、第1の基準曲面からの変位量を計測した(比較例)。次に、読取時にIPの表面が面規制部130に当接する位置に第1の基準曲面を設定し、面規制部130が作る第2の基準曲面からの変位量を計測した(実施例)。
【0044】
図13は、比較例を示すグラフである。図13に示すように、各測定位置において変位量の絶対値が50μmを超えている。このように、フィルム上ホルダ210を曲げて円筒状に押さえ込むと歪が生じ、±0.2mm程度の凹面凸面の変形が生じた。一方、図14は、実施例を示すグラフである。図14に示すように、実施例ではIP面上の変位410が見られるものの、各測定位置において変位量の絶対値が50μm以内に収まっている。
【0045】
(画像記録体の耐久試験)
また、IPの耐久試験を行った。IPには、蓄積性蛍光体をポリエチレンテレフタレートでコーティングした表面を有するものを用いた。また、面規制部130には、材料としてデルリン(登録商標)を用いた。被覆部120の弾性材料122にはポリウレタンのスポンジを用いた。このような放射線画像読取装置100およびIPを用いて、放射線画像読取を200回行った。このようにして200回用いられたIPの表面には、わずかな摺れ跡があるものの、5μm以上の有意な傷はなかった。したがって、IPに蓄積性蛍光体に至る損傷は発見できず、読取画像にもコーティングの損傷による乱反射や蓄積性蛍光体の損傷による画像への影響がないことが確認された。なお、面規制部130に用いる材料は、デルリン(登録商標)やテフロン(登録商標)等があるが、硬度の低いデルリン(登録商標)を材料として作成することが望ましい。
【0046】
(撮影用ケース)
次に、画像記録体220を撮影に用いる際の実施形態について説明する。図15および図16は、画像記録体220とその撮影用ケース500を示す正面図である。図15および図16に示すように、画像記録体220を貼り付けたフィルム状ホルダ210を撮影用ケース500に入れて、撮影することが好ましい。
【0047】
撮影用ケース500は、フィルム状ホルダ210を収納可能なサイズの箱状に形成されており、カバー、後方散乱防止シートを備えている。カバーは、たとえばプラスチック製であり、X線等の撮影用の放射線を透過する。画像記録体220を撮影用ケース500に挿入する際には、後方散乱防止シートが画像記録体220の裏面に位置する向きに挿入する。したがって、露光側と後面側の識別がしやすい構成であることが好ましい。撮影用ケース500は、スチール等を用いて、強固に形成されていることが好ましい。これにより破損を防止することができる。また、このような撮影用ケース500を用いることで、画像記録体220を平板状にした状態で撮影できる。
【符号の説明】
【0048】
100 放射線画像読取装置
105 固定ユニット
107 可動ユニット
109 ベース部
110 支持部
111 外段面
112 内段面
115 スライド部
120 被覆部
121 押えばね板
122 弾性材料の層
130 面規制部
140 読取部
141 回転ヘッド
142 レーザ光源
143 コリメートレンズ
144 選択ミラー
145 集光レンズ
146 検出部
147 フィルタ
148 光電子増倍管
150 読取用駆動部
210 フィルム状ホルダ
220 画像記録体
310 制御回路
321 変換部
322 プリアンプ
331 モータドライバ
332 ステッピングモータ
341 サーボモータドライバ
342 消去ランプ
343 電源
344 接続部
345 メモリ
410 IP面上の変位
500 撮影用ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状で放射線画像が記録された画像記録体を円筒形状に曲げて画像読取を行う放射線画像読取装置であって、
画像記録体が保持されたフィルム状ホルダの両端を支持し、画像読取時に所定方向にスライドする一対の支持部と、
前記フィルム状ホルダを覆い、前記画像記録体の表面が第1の基準曲面に至るまで前記画像記録体を弾性的に押圧する被覆部と、
固定位置に形成され、スライドする前記画像記録体の表面を第2の基準曲面に規制する一対の面規制部と、
前記一対の面規制部の中間に設置され、前記画像記録体に記録された放射線画像を読み取る読取部とを備えることを特徴とする放射線画像読取装置。
【請求項2】
前記一対の面規制部は、スライドする前記画像記録体に当接したとき、前記画像記録体の表面を押し返して第2の基準曲面に規制し、
前記読取部は、前記第2の基準曲面に表面を規制された前記画像記録体から記録された放射線画像を読み取ることを特徴とする請求項1記載の放射線画像読取装置。
【請求項3】
前記被覆部は、前記画像記録体が貼り付けられたフィルム状ホルダの両端を前記一対の支持部に押さえて挟持することを特徴とする請求項1または請求項2記載の放射線画像読取装置。
【請求項4】
前記一対の面規制部は、前記画像記録体より硬度の小さい材料で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の放射線画像読取装置。
【請求項5】
前記一対の面規制部は、前記画像記録体の表面の位置を規制する面の端部に丸面取りが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の放射線画像読取装置。
【請求項6】
前記被覆部が有する弾性材料により、前記第2の基準曲面で前記面規制部に対して前記画像記録体が1×10Pa以上1×10Pa以下で押圧されるように、前記第1の基準曲面が設定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか記載の放射線画像読取装置。
【請求項7】
前記被覆部は、3次元網目構造を有する有機物の層を弾性材料として有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか記載の放射線画像読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−227310(P2011−227310A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97361(P2010−97361)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】