説明

放射線遮蔽カバー

【課題】鉛を使用することなく、放射線を発する対象物をガタつき無く被覆することにより、放射線を遮蔽することのできる着脱自在の放射線遮蔽カバーを提供すること。
【解決手段】放射線を発する対象物を被覆する放射線遮蔽カバーであって、前記対象物を被覆するように組み合わせられ、かつ鉛無含有で高比重金属を含有する複数の被覆体を有し、前記複数の被覆体は、被覆体同士を組み合わせることにより生じる前記被覆体の合わせ面が、前記対象物を内蔵する内部から前記被覆体の外部へと放射線直進不可能に形成され、前記複数の被覆体の内面には前記対象物の位置を固定する固定部が形成され、前記内面と前記固定部とが弾性を有することを特徴とする放射線遮蔽カバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は放射線遮蔽カバーに関し、特に詳しくは鉛を使用することなく、放射線を発する対象物を全周に亘ってガタつき無く被覆することにより、放射線を遮蔽することのできる放射線遮蔽カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の熱可塑性樹脂としての共重合ポリエステルを0.3〜5.5重量%含有し、熱硬化性樹脂としてのフェノール樹脂を0.1〜1.0重量%含有し、残部がタングステン粉末またはタングステン合金粉末および不可避不純物からなる組成を有し、比重が8〜16に調製されていることを特徴とする高比重樹脂複合材料」が記載されており、「高比重樹脂複合材料」の用途の一つとして「医療機器用エックス線の遮蔽材」が記載されている(特許文献1における請求項1及び段落番号0001欄参照。)。
【0003】
また、特許文献2には、「加硫ゴムとビスマス粉末とを含んでなる、放射線遮蔽材」が記載されており、「製造作業者」のために用いる旨の記載もなされている(特許文献2の請求項1、段落番号0003欄及び0004欄参照。)
更に、特許文献3には、「粉末と加硫ゴムからなる放射線遮蔽材であって、前記粉末を80重量%以上99重量%以下含み、該粉末は・・・混合粉末であり、弾性変形能を有することを特徴とする放射線遮蔽材」が記載されており、「衛生的で、高い放射線遮蔽能力を有し、成形および加工が安価かつ簡易であり、取り扱いが容易なうえ、耐熱性および耐薬品性に優れ、可動部位にも使用可能な弾性変形能を有する」という技術的効果についても記載されている(特許文献3の請求項1及び段落番号0050欄参照。)。
【0004】
特に、原子力発電所等の放射線量が多い領域においては、放射性物質が設置される領域若しくは放射性物質が流通する配管及び機器の周辺で作業する場合に、放射線源と作業者との間に鉛含有の板体を立てて放射線を遮蔽することにより、放射線による悪影響を受けないようにして作業をしていた。
しかしながら、板状の遮蔽体では作業員が自由に動いて作業するのに十分な広さの放射線遮蔽空間を確保することができない。したがって、作業員が自由に動いて作業をするのに十分な広さの放射線遮蔽空間を確保するには前記板体を非常に大きくしなければならない。そのように非常に大きな鉛入りの板体を用意することは現実的ではない。よって鉛含有の板体を使用する限りでは、放射線に曝露されずに作業員が作業活動をする領域の大きさは、限定されていた。
【0005】
また、近年ではEUのRoHS指令等で鉛の使用制限が求められるなど、鉛の有毒性の問題が指摘され、人体への影響、環境に対する負荷等に鑑みれば、鉛を含有している遮蔽材を用いることは困難になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3952918号
【特許文献2】特開2003−130990号公報
【特許文献3】特許3557864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、鉛を使用することなく、放射線を発する対象物をガタつき無く被覆することにより、放射線を遮蔽することのできる放射線遮蔽カバーを提供することである。
【0008】
この発明が解決しようとする別の課題は、対象物を腐食させない放射線遮蔽カバーを提供することである。
【0009】
この発明が解決しようとする更に別の課題は、原子力発電所等で用いられる放射線遮蔽カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、
(1)放射線を発する対象物を被覆する放射線遮蔽カバーであって、
前記対象物を被覆するように組み合わせられ、かつ鉛無含有で高比重金属を含有する複数の被覆体を有し、
前記複数の被覆体は、
被覆体同士を組み合わせることにより生じる前記被覆体の合わせ面が、前記対象物を内蔵する内部から前記被覆体の外部へと放射線直進不可能に形成され、
前記複数の被覆体の内面には前記対象物の位置を固定する固定部が形成され、
前記内面と前記固定部とが弾性を有することを特徴とする放射線遮蔽カバー、
(2)前記被覆体が、塩素無含有のエラストマーを含む(1)に記載の放射線遮蔽カバー、並びに、
(3)前記対象物が、放射性燃料を取扱う領域に設置される、放射化した流体が流通する配管及び機器である前記(1)又は(2)に記載の放射線遮蔽カバー、
である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によると、鉛無含有であることにより、環境及び人体への鉛汚染をなくすことができる。また、被覆体の内面に固定部が形成され、かつ内面と固定部とが弾性を有することにより、対象物に当接する固定部が対象物をガタつき無く固定することができ、複数の被覆体を組み合わせることにより、対象物の全周を被覆することができ、被覆体の合わせ面が被覆体の内部から外部へと放射線直進不可能に形成されるとともに被覆体が高比重金属を含有することにより、放射線を遮蔽することができる放射線遮蔽カバーを提供することができる。
つまり、この発明によると、放射線を発する対象物に近接した位置で、ガタつき及び放射線の漏出を防止しつつ、対象物の全周に亘って放射線を遮蔽可能に被覆した放射線遮蔽カバーを提供することができる。
【0012】
また、この発明によると、被覆体がエラストマーを含むことにより、対象物をより一層ガタつき無く固定可能な弾性を被覆体が有するようになり、塩素無含有であるので、カバーと接触する対象物を腐食させることのない放射線遮蔽カバーを提供することができる。
【0013】
更に、この発明によると、放射性燃料を取扱う領域に設置される、放射化した流体が流通する配管及び/又は機器を対象物とすることにより、放射化し易い環境又は放射化した物質に近接して設置される物質から発せられる放射線を遮蔽可能な放射線遮蔽カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明に係る放射線遮蔽カバーの一態様を示す端面図である。
【図2】図2は、図1に示した放射線遮蔽カバーの他の端面を示す端面図である。
【図3】図3は、図1に示した被覆体を組み合わせて成る放射線遮蔽カバーと対象物とを示す端面図である。
【図4】図4は、この発明の放射線遮蔽カバーにおける被覆体の合わせ面の部分拡大図であり、図4(a)は被覆体における合わせ面の一態様を示し、図4(b)は被覆体における合わせ面の他の態様を示し、図4(c)は被覆体における合わせ面の別の態様を示し、図4(d)は被覆体における合わせ面の更に他の態様を示し、図4(e)は被覆体における合わせ面の更に別の態様を示し、図4(d)は被覆体における合わせ面の別の態様を示す。
【図5】図5は、この発明に係る放射線遮蔽カバーの他の態様を示す端面図である。
【図6】図6は、この発明に係る放射線遮蔽カバーの他の態様を示す端面図である。
【図7】図7は、図6に示す放射線遮蔽カバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下においては、この発明に係る放射線遮蔽カバーの一実施態様について、図面を参照しつつ説明する。なお、図1に示す放射線遮蔽カバー1は、複数設けられる被覆体2のうちの一つを示している。複数の被覆体2を組み合わせた状態の放射線遮蔽カバー1は、図3を参照しつつ後述する。
【0016】
放射線遮蔽カバー1は、この発明の一実施態様であり、対象物を被覆し、鉛無含有で高比重金属を含有する複数の被覆体2を有し、複数の被覆体2は、被覆体2の合わせ面3が被覆体2の内蔵する内部から外部へと放射線直進不可能に形成され、被覆体2の内面4には固定部5が形成され、内面4と固定部5とが弾性を有する。
【0017】
放射線遮蔽カバー1が被覆する対象物としては、放射線源に成り得ると共に、放射線を遮蔽する必要のある物質であれば特に制限は無く、例えば放射性物質が流通する配管及び機器等を挙げることができる。更に具体的には、例えば放射性物質を取り扱う医療機器及び実験装置、放射線照射を行う医療機器及び実験装置、並びに、原子力発電所に設置される配管及び機器等を挙げることができる。特に、原子力発電所等の核燃料を扱う領域では、核燃料等の放射性物質が有する放射能が高く、作業員の作業時に放射線の遮蔽を強く要求されるので、この発明に係る放射線遮蔽カバーが被覆する対象物としては、原子力発電所に設置される放射化した流体が流通する配管及び機器が好ましい。
【0018】
なお、前記対象物が発する放射線の種類としては、特に制限されず、α線、β線、γ線及び中性子線等を挙げることができる。
【0019】
放射線遮蔽カバー1における被覆体2は、図1には図示しないが複数個設けられており、各被覆体2を組み合わせると、対象物を被覆するようになっている。なお、対象物の放射線遮蔽カバー1による被覆は、少なくとも放射線遮蔽カバー1の設置領域で放射線源となる対象物と、作業員との間に放射線遮蔽カバー1が存在することが必要であり、対象物の全面を放射線遮蔽カバー1が覆うことが更に好ましい。
【0020】
図1に示す被覆体2は、円筒体を二分したうちの一方のような湾曲板形状を成している。つまり、2つの被覆体2を組み合わせることにより、1本の円筒形状の放射線遮蔽カバーが得られる。
【0021】
なお、図1と併せて、図2にも放射線遮蔽カバー1を示した。図1には内面3の輪郭が半円形状と成るように、被覆体2の軸線に直交する面を示したのに対して、図2には被覆体2の中心軸線に沿った面を示した。図1及び2から明らかなように、被覆体2は、直管型の配管又は直線状の棒状部材を対象物とする。
【0022】
図1に示すように、被覆体2は、被覆体2同士を組み合わせることにより生じる合わせ面3が、対象物を内蔵することになる被覆体2の内部から外部へと放射線直進不可能に形成されている。更に具体的には、被覆体2に形成される2つの合わせ面3に、被覆体2の内部から外部へと放射線直進不可能になるように、凸部6及び凹部7が形成されている。図1に示される方向に設置される被覆体2は、その軸線を中心に180°回転させた別の被覆体2と組み合わせることによって、一方の凸部6と他方の凹部7とが密着することになる。
【0023】
ここで、図1及び2に示した被覆体2が2つ組み合わせられて成る放射線遮蔽カバー1を、図3に示す。図3に示す放射線遮蔽カバー1はその内部に対象物8を収容しており、かつ、一方の被覆体2における凸部6と他方の被覆体2における凹部7とが係合することによって合わせ面3が閉じているので、放射線遮蔽カバー1が対象物8を被覆していることになる。
【0024】
また、図1〜3に示す被覆体2の内面4には、固定部5が形成されている。固定部5は、図3に示すような対象物8の位置を固定することができる。固定部5による対象物8の固定は、放射線遮蔽カバー1が対象物8を被覆したときに、固定部5の先端部が対象物8の表面に当接することにより、達成される。
【0025】
固定部5は、円錐台形状を成す突起部として形成されている。固定部の形状としては、この発明に係る放射線遮蔽カバーにおいては対象物が固定可能である限り特に制限されず、対象物が管状又は棒状である場合には、例えば被覆体の軸線に沿って形成される線状の突起部、及び対象物を取り囲むように形成される線状の突起部等を挙げることができる。固定部5の大きさは、放射線遮蔽カバー1が対象物8を被覆したときに、固定部5における内面4から最も突出した部位が対象物8に当接し、好ましくは対象物8から受ける応力によって固定部5が若干変形する程度であると良い。この発明に係る放射線遮蔽カバーにおいて固定部の大きさとしては、例えば放射線遮蔽カバーが対象物を被覆したときに対象物の表面に当接する程度であれば良い。なお、この発明に係る放射線遮蔽カバーにおいて、固定部の数は特に限定されず、対象物をガタつき無く固定可能である程度の数にしておけば良く、対象物を周囲から固定部が固定可能なように複数個設けるのが好ましい。更に、固定部を設ける位置としては、被覆体の内面に等間隔にかつ対象物を取り囲むように形成するのが好ましい。
【0026】
なお、放射線遮蔽カバー1の被覆体2における内面4及び固定部5は、弾性を有している。固定部5が弾性を有しておらず、かつ対象物8に固定部5が点接触する態様に比べると、固定部5が弾性を有していることにより、対象物8に固定部5が当接したときに固定部5が対象物8から受ける応力によって変形して、点接触から面接触になるので、放射線遮蔽カバー1から対象物8に作用する固定のための応力が増大する。よって、固定部5が弾性を有していると、より一層ガタつき無く対象物8を固定することができるので好ましい。
【0027】
なお、対象物8によっては、一部の外径が増大していること、又は対象物8の一部が変形していることがある。このとき、内面4が弾性を有していると、被覆体2の内面4の内径を対象物8の寸法及び形状に精密に合わせて形成しなくとも、対象物8に合わせて内面4が変形して対象物8の表面に密着し、放射線遮蔽カバー1が対象物8を被覆することになる。つまり、内面4が弾性を有していると、若干の寸法差が生じている複数の対象物8に対して、1種類の被覆体2を用いて被覆すれば良くなるので、異なる外形を有する対象物8ごとに適した内面形状を有する複数種の被覆体2を製造する必要が無くなり、結果として放射線遮蔽カバー1を形成する材料の低減を図ることができる。
【0028】
更に、放射線遮蔽カバー1の被覆体2の内径は、対象物8の外径よりも大きく設計されており、対象物8の外面と被覆体2の内面4との間には間隙が存在している。原子力発電所等の核燃料を取扱う設備において、T字型又はL字型の配管が使用されている場合、放射線を発する流体中の微小固形物が滞留して放射線源となってしまうことがないように、配管の折曲される角度又は交差する角度の90°より大きい角度、例えば100〜110°程度に設計されることが多い。前記配管の折曲される角度及び前記交差する角度が配管毎に相違していたとしても、図3に示す放射線遮蔽カバー1の実施態様のように、対象物8の外面と被覆体2の内面4との間に間隙が存在する程度に、被覆体2の内径を設定することにより、1種類の被覆体2を用いて外径の異なる配管を被覆することができる。すなわち、外径が異なる配管ごとにその配管に適した内面形状を有する被覆体2を製造する必要が無くなり、結果として放射線遮蔽カバー1の種類数を低減することができ、また放射線遮蔽カバーを形成する材料の低減を図ることができる。もっとも、この発明においては、放射線遮蔽カバーの被覆体の内径と対象物の外径と略同一に形成することによって、被覆体の内面を対象物の表面に密着するようにしても良い。
【0029】
更に、被覆体2は、鉛無含有で高比重金属を含有している。また、被覆体2は、対象物8から発せられる放射線の種類に応じて選択される高比重の金属を含有している。前記高比重金属としては、放射線の種類にもよるが、例えばタングステン、及びビスマス、並びに各金属成分の合金、炭化物、酸化物等を挙げることができる。
【0030】
この発明に係る放射線遮蔽カバーの好ましい態様として、被覆体が塩素無含有の弾性を有するエラストマーを含有する態様を挙げることができる。被覆体がエラストマーを含むことにより、被覆体全体が対象物をより一層ガタつき無く固定可能な弾性を被覆体が有するようになり、被覆体全体が弾性を有するようになるので、対象物に対する着脱作業が容易になる。対象物を腐食させる一因となる塩素が無含有であることにより、対象物が腐食することがない。
【0031】
被覆体2の大きさとして、凸部6の各寸法と凹部7の各寸法とが凹部7に凸部が嵌め合い状態になるように形成されているので、2つの被覆体2を組み合わせると、合わせ面3に間隙が生じない。これにより、ガタつき無く対象物8に放射線遮蔽カバー1を取り付けることができる。
【0032】
更に、凸部6の周側面には突出する方向にその幅が拡大するようなテーパを設けると共に、凹部7の側壁面には陥没する方向にその幅が拡大するようなテーパを設けることにより、2つの被覆体2を組み合わせたときに、凸部6と凹部7とが分離困難に係合することになるので、対象物8から放射線遮蔽カバー1が容易に脱離することがなくなって好ましい。
【0033】
被覆体2の厚み、つまり内面4から外表面までの距離としては、対象物8から発せられる放射線の量並びに被覆体に含まれる高比重金属の種類及び量等に応じて決定されるので、特に制限されない。
【0034】
被覆体2の製造方法としては、高比重金属の粉末と、エラストマー等の樹脂とを、適宜の溶媒、及び助剤等と混練した上で、従来公知の成形方法、例えば射出成形方法又は圧縮成形方法等を用いて、所望の形状に成形する方法を採用することができる。
【0035】
図3に示したように、2つの被覆体2を組み合わせた時に、仮に合わせ面3に微小な間隙が生じ、かつその間隙が直線状又は平面状であった場合には、放射線遮蔽カバー1が被覆する対象物8から発せられる放射線が、前記間隙を通過して漏洩する可能性があるので、被覆体2の内部から外部へと放射線が直進不可能となるように合わせ面3の形状を設計することができる。放射線遮蔽カバー1には、凸部6及び凹部7が設けられて成るので、放射線遮蔽カバー1の内部から外部へと直進しようとする放射線が漏洩することは無い。
【0036】
ここで、図1に示す被覆体2の合わせ面3のように凸部6及び凹部7を形成する態様以外の合わせ面の実施態様を、図4に示す。図4には、組み合わせた被覆体の合わせ面近傍のみを一部拡大して示している。
【0037】
図4(a)に示す2つの被覆体21が組み合わせられることにより生じた合わせ面31には、図3に示した態様と形状は異なるが凸部及び凹部が形成されることによって、被覆体21の内部から外部へと放射線直進不可能となっている。また、図4(b)に示す2つの被覆体22が組み合わせられることにより生じた合わせ面32は、凸状又は凹状の曲面が形成されることによって、被覆体22の内部から外部へと放射線直進不可能となっている。更に、図4(c)に示す2つの被覆体23が組み合わせられることにより生じた合わせ面33は、一方の被覆体23における山型の端部と、他方の被覆体23における谷型の端部とから形成されることによって、被覆体23の内部から外部へと放射線直進不可能となっている。図4(d)に示す2つの被覆体24が組み合わせられることにより生じた合わせ面34は、一方の被覆体24における端部の外周面の一部を、他方の被覆体24における端部が覆うように形成されることによって、被覆体24の内部から外部へと放射線直進不可能となっている。また、図4(e)に示す2つの被覆体25が組み合わせられることにより生じた合わせ面35は、2つの被覆体25の平坦な端部が当接している部位の周側面を封止部材9が封止するように形成されることによって、被覆体25の内部から外部へと放射線直進不可能となっている。なお、封止部材9としては、例えば放射線を遮蔽可能な材料で形成されて成る結束バンド等を用いることができる。更に、図4(d)に示す2つの被覆体26が組み合わせられることにより生じた合わせ面36は、被覆体26の内面46に対して傾斜するように形成されることによって、被覆体25の内面46に対して垂直な方向に直進しようとする放射線を、直進不可能にしている。なお、図4(e)に示した封止部材9等を、2つの被覆体26の端部が当接している部位の周側面を封止するように取り付けても良い。
【0038】
被覆体の数としては、図3に示すように2つであることが必須ではなく、複数個である限り3個以上でも良い。対象物の形状に応じて、取り付け作業が容易になる被覆体の数を適宜に設定することができる。
【0039】
図1〜3に示した放射線遮蔽カバー1が被覆する対象物9は、真っ直ぐに伸びる配管のように直線型を成しているが、この発明に係る放射線遮蔽カバーにおいては、対象物の形状に限定されず、対象物が配管又は棒状部材である場合は、例えば屈曲型、曲線型、L字型、T字型、Y字型、及び十字型等を挙げることができ、対象物が機器である場合は、特に制限は無い。なお、被覆体の内面の形状は、対象物の外形に合わせて形成されるのが好ましい。以下に、対象物がT字型部材である場合の被覆体の実施態様を図5に示すと共に、及びL字型部材である場合の被覆体の実施態様を図6及び7に示す。
【0040】
図5には、T字型の配管又は棒状部材を対象物(図示せず)とする放射線遮蔽カバー17を示した。被覆体27には、合わせ面37に凸部67と凹部77とが形成され、かつ内面47に固定部57が形成されている。図5に示す被覆体27は、図3に示した被覆体2と同様に、2つ組み合わせられることにより放射線遮蔽カバー17が対象物を被覆するようになっている。なお、図3に示した放射線遮蔽カバー1は、同一構造の被覆体2を組み合わせることにより対象物8を被覆していたが、図5に示す放射線遮蔽カバー17では同一構造の被覆体27を組み合わせても完全な被覆状態を達成することができない。つまり、合わせ面37の凸部67及び凹部77が相互に係合するように、被覆体27に組み合わせられるもう一つの被覆体27の凸部67及び凹部77の配置を適宜に変更する必要がある。もっとも、放射線遮蔽カバー17においては、被覆体27の内部から外部へと放射線直進不可能なように凸部67及び凹部77を形成しているが、合わせ面を例えば図4(e)に示す実施態様とするのであれば、被覆体27の設計を変更する必要が無くなる。
【0041】
図6には、L字型の配管又は棒状部材を対象物(図示せず)とする放射線遮蔽カバー18を示した。被覆体28には、合わせ面38に凸部68と凹部78とが形成され、かつ内面48に固定部58が形成されている。また、図6に示す被覆体28を2つ組み合わせて成る放射線遮蔽カバー1の斜視図を図7に示す。
【0042】
図6及び7に示す被覆体28は、図3に示した被覆体2と同様に、2つ組み合わせられることにより放射線遮蔽カバー18が対象物を被覆するようになっている。なお、図6及び7に示す放射線遮蔽カバー18は、図5に示した放射線遮蔽カバー17と同様に、同一構造の被覆体28を組み合わせても完全な被覆状態を達成することができない。つまり、合わせ面38の凸部68及び凹部78が相互に係合するように、被覆体28に組み合わせられるもう一つの被覆体28の凸部68及び凹部78の配置を適宜に変更する必要がある。もっとも、放射線遮蔽カバー18においては、前記放射線遮蔽カバー17と同様に、被覆体28の内部から外部へと放射線例えば光直進不可能なように凸部68及び凹部78を形成しているが、合わせ面を例えば図4(e)に示す実施態様とするのであれば、被覆体28の設計を変更する必要が無くなる。
【符号の説明】
【0043】
1、17、18 放射線遮蔽カバー
2、21、22、23、24、25、26、27、28 被覆体
3、31、32、33、34、35、36、37、38 合わせ面
4、41、42、43、44、45、46、47、48 内面
5、57、58 固定部
6、67、68 凸部
7、77、78 凹部
8 対象物
9 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発する対象物を被覆する放射線遮蔽カバーであって、
前記対象物を被覆するように組み合わせられ、かつ鉛無含有で高比重金属を含有する複数の被覆体を有し、
前記複数の被覆体は、
被覆体同士を組み合わせることにより生じる前記被覆体の合わせ面が、前記対象物を内蔵する内部から前記被覆体の外部へと放射線直進不可能に形成され、
前記複数の被覆体の内面には前記対象物の位置を固定する固定部が形成され、
前記内面と前記固定部とが弾性を有することを特徴とする放射線遮蔽カバー。
【請求項2】
前記被覆体が塩素無含有のエラストマーを含む請求項1に記載の放射線遮蔽カバー。
【請求項3】
前記対象物が、放射性燃料を取扱う領域に設置される、放射化した流体が流通する配管及び/又は機器である請求項1又は2に記載の放射線遮蔽カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−93264(P2012−93264A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241474(P2010−241474)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【出願人】(390028783)株式会社フジックス (3)