説明

放射線遮蔽材容器及び放射線遮蔽体

【課題】設置や、移設、増設等を機動的に行うことができる簡便な放射線遮蔽体を提供する。
【解決手段】放射線遮蔽体は、粒状の放射線遮蔽材を充填する直方体形状の放射線遮蔽材容器1と、放射線遮蔽材容器1を上下方向又は左右方向に他の放射線遮蔽材容器1に連結する連結レバー4とを備える。放射線遮蔽材容器1は、放射線遮蔽材の充填を行うために放射線遮蔽材容器1の天板UPに設けられた充填口2と、放射線遮蔽材容器1に充填された放射線遮蔽材を回収するために放射線遮蔽材容器1の下部側面に設けられた開閉可能な回収口3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線遮蔽材が充填される放射線遮蔽材容器及びこの放射線遮蔽材容器を用いて構成される放射線遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所における定期検査やメンテナンス時には、放射線被曝を極力回避するために、仮設される放射線遮蔽材として、鉛の毛を織り込んだ鉛毛マットや、鉛ブロック、鉛板等が用いられている。しかし、鉛毛マットによれば、遮蔽面積が狭く、設置に時間を要する。また、配管等を遮蔽する場合には、配管の耐荷重の関係で、十分な遮蔽効果が得られる枚数を用いることはできない。
【0003】
また、鉛ブロックによれば、1つの鉛ブロックが相当の重量を有するので、遮蔽に必要な個数を運搬するのに長時間を要する。また、鉛ブロックを1m以上の高さに積み重ねる必要がある場合には、積み重ねられた鉛ブロックは、構造的に不安定であり、危険である。また、鉛板によれば、繰り返し使用しているうちに変形し、扱い難くなる。また、1枚の鉛板が重いので、必要な枚数の鉛板を運搬するには、相当の労力と時間を要する。
【0004】
そこで、中空の壁状体を放射線の遮蔽箇所に配置し、この壁状体に鉛粒等の放射線遮蔽材を充填して遮蔽壁を仮設する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、メンテナンス時等に放射線遮蔽壁を仮設するための放射線遮蔽装置が記載されている。
【0005】
この放射線遮蔽装置では、作業員が必要箇所に単位ケーシング壁を設置し、単位ケーシング壁に対し、鉛粒貯蔵容器から配管を介して鉛粒を充填することにより、放射線遮蔽壁を仮設するようにしている。鉛粒の充填は、移送ポンプにより配管内を流れる空気流の作用により行われる。メンテナンス等が完了した場合には、移送ポンプにより単位ケーシング壁から鉛粒が回収され、単位ケーシング壁が撤去される。
【0006】
また、特許文献2には、同様にして鉛粒等の放射線遮蔽材を遮蔽体本体に供給及び回収することにより遮蔽体を移動設置できるようにした放射線遮蔽装置が記載されている。この放射線遮蔽装置においても、放射線遮蔽材の供給及び回収は、導管を介し、導管内に流れる空気流の作用により行われる。
【0007】
また、特許文献3には、鉛板又は鉄板からなる遮蔽体本体と遮蔽体本体を挿脱可能な収納ラックとからなり、収納ラックに挿入する遮蔽体本体の個数を変更することによって、放射線の遮蔽量を可変とした能力可変型放射線遮蔽体が記載されている。収納ラックは、収納ラック単位体を上下又は側方に連結して構成する組立式であって、組立又は解体が容易であり、部品の運搬も人力で容易にできるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−158596号公報
【特許文献2】実開平2−57099号公報
【特許文献3】特開2002−22886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
狭くて放射線量の高い場所においては、設置スペースや放射線量に応じ、必要な遮蔽範囲及び遮蔽能力を確保でき、簡便かつ迅速に設置できる放射線遮蔽体が望まれる。
【0010】
また、機器の移動等により放射線量が変動したり、機器の置き場を確保するために放射線遮蔽体を移動したりしなければならない場所においては、状況に応じて迅速に増設や移設を行うことができる簡便な放射線遮蔽体が望まれる。
【0011】
これに対し、特許文献1の放射線遮蔽装置は、単位ケーシング壁に対する鉛粒の移送用の配管や、鉛粒貯蔵容器、移送ポンプ等の設備を必要とする。また、単位ケーシング壁の上部及び底部に、鉛粒移送用の配管を接続するためのスペースを確保する必要もある。このため、設置スペースに余裕がない場所では、設置不能となる場合も予想される。また、放射線量や放射線発生箇所の変動に即応できないおそれもある。
【0012】
また、特許文献2の放射線遮蔽装置によれば、特許文献1の場合と同様に、放射線遮蔽材の供給及び回収用の導管や、導管内に空気流を生じさせる手段等を要するので、やはり、スペースの関係で設置不能であったり、放射線量の変動等に即応できなかったりする場合が予想される。
【0013】
また、特許文献3の能力可変型放射線遮蔽体によれば、収納ラックに挿脱される鉛板等の板状の放射線遮蔽材が重く、放射線遮蔽材の搬送や挿脱に労力を要する。したがって、より機動的な増設や移設が困難となる場合が予想される。
【0014】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、設置スペースや放射線量の変動等に応じ、放射線遮蔽体のより機動的な設置や、増設、移設等を可能とする放射線遮蔽材容器及びこれを用いた放射線遮蔽体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る放射線遮蔽材容器は、粒状の放射線遮蔽材が充填される直方体形状の放射線遮蔽材容器であって、他の放射線遮蔽材容器と相互に上下方向又は左右方向に連結させるための連結手段と、前記放射線遮蔽材の充填を行うために天板に設けられた充填口と、前記放射線遮蔽材容器に充填された放射線遮蔽材を回収するために下部側面に設けられた開閉可能な回収口とを具備することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、複数の放射線遮蔽材容器を上下左右方向に連結手段で連結しながら、各放射線遮蔽材容器に充填口から放射線遮蔽材を充填することにより、放射線遮蔽体として容易に設置することができる。また、放射線遮蔽体の各放射線遮蔽材容器から、回収口を開放して放射線遮蔽材を流出させ、放射線遮蔽材を回収しながら、各放射線遮蔽材容器の連結を解除し、各放射線遮蔽材容器を移送することにより、容易に放射線遮蔽体を撤去し、又は移設することができる。
【0017】
したがって、設置スペースや設置位置の変動、放射線源や放射線量の変動等に応じ、放射線遮蔽体を、機動的に設置、増設、移設、撤去等することができる。
【0018】
本発明の放射線遮蔽材容器は、その直方体形状の12辺を構成する12本のフレーム部材と、該直方体形状の6面を構成する6枚の板状部材とを備え、各フレーム部材及び各板状部材を嵌め込み式で組み立てることで形成されるものであってもよい。
【0019】
これによれば、放射線遮蔽材容器を構成する各フレーム部材及び各板状部材を、限られた保管スペース内に保管し、そこから容易に放射線遮蔽体の設置が必要とされる場所やその近傍に搬送し、放射線遮蔽材容器を組み立てることができる。したがって、さらに機動的に放射線遮蔽体の設置や、増設、移設、撤去を行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る放射線遮蔽体は、上述の放射線遮蔽材容器と、該放射線遮蔽材容器に充填された放射線遮蔽材とを具備することを特徴とする。これによれば、上述のように、設置スペースや設置位置の変動、放射線源や放射線量の変動等に応じ、機動的に設置、増設、移設、撤去等することができる放射線遮蔽体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る放射線遮蔽体を構成するための放射線遮蔽材容器の斜視図である。
【図2】図1の放射線遮蔽材容器を連結した様子を例示する斜視図である。
【図3】図1の放射線遮蔽材容器の底部における1つの角部の構造を示す斜視図である。
【図4】図1の放射線遮蔽材容器における高さ方向のフレーム部材の横断面図である。
【図5】図1の放射線遮蔽材容器における長さ方向及び幅方向のフレーム部材の相互に連結される端部を示す斜視図である。
【図6】図1の放射線遮蔽材容器における長さ方向及び幅方向のフレーム部材をワンタッチで連結する手順を示す図である。
【図7】図1の遮蔽容器を、ベースを用いて支持する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る放射線遮蔽体を構成する放射線遮蔽材容器の斜視図である。図1に示すように、この放射線遮蔽材容器1は、放射線遮蔽材を放射線遮蔽材容器1内に充填するための充填口2と、放射線遮蔽材容器1内に充填されている放射線遮蔽材を回収するための回収口3と、放射線遮蔽材容器1を上下方向又は左右方向に連結するための連結レバー4とを備える。
【0023】
放射線遮蔽体は、必要な数の放射線遮蔽材容器1を、それに放射線遮蔽材を充填しながら連結することにより構成される。放射線遮蔽材としては、直径が例えば数mm〜数十mmである鉛、鉄等の金属球による粒状のものが用いられる。ただし、流動性の観点からは、鉛よりも鉄球の方が好ましい。
【0024】
放射線遮蔽材容器1は、取扱いが容易な所定の幅、長さ、及び高さを有する直方体の形状を有する。放射線遮蔽材容器1の12辺を構成するフレームは、上部の長さ方向の2本のフレーム部材ULと、上部の幅方向の2本のフレーム部材UWと、下部の長さ方向の2本のフレーム部材DLと、下部の幅方向の2本のフレーム部材DWと、4本の高さ方向のフレーム部材MHとを備える。
【0025】
放射線遮蔽材容器1の6面は、幅面を構成する2枚の側板WPと、長さ面を構成する2枚の側板LPと、天板UPと、底板BP(図3)とにより構成される。充填口2は、天板UPの中央部に設けられる。回収口3は、長さ面を構成する2枚の側板LPのうちの一方の下端部中央に設けられる。
【0026】
充填口2は、長方形のスライド板を、矢印6方向にスライドさせて開閉されるスライド式のものである。回収口3は、四分の一円形のスライド板を、該円形の中心の周りに矢印7方向にスライドさせて開閉されるスライド式のものである。
【0027】
連結レバー4は、その一端を中心として回動し得るように、各長さ方向のフレーム部材ULとDL及び各高さ方向のフレーム部材MHに、それぞれ1つずつが設けられる。ただし、隣接する放射線遮蔽材容器1の回収口3や連結レバー4と干渉しないように、各フレーム部材UL、DL及びMHにおいて、その中央部から離れた位置に設けられる。
【0028】
連結レバー4には、90°回動されたときに、それが設けられたフレーム部材UL、DL又はMHを、隣接する放射線遮蔽材容器1のフレーム部材UL、DL又はMHに固定するための凹凸部が設けられている。その隣接する放射線遮蔽材容器1のフレーム部材UL、DL又はMHは、この凹凸部と嵌合してその固定を確立するための凹凸部を備える。
【0029】
図2は、4つの放射線遮蔽材容器1を連結した様子を例示する斜視図である。図2の場合、上下方向に重ねられた各2つの放射線遮蔽材容器1は、相互に隣接する長さ方向のフレーム部材UL及びDL上の各連結レバー4が、相互に相手方のフレーム部材DL及びUL側に回動され、上下方向に連結されている。
【0030】
また、左右方向に隣接して配置された各2つの放射線遮蔽材容器1は、相互に隣接する高さ方向のフレーム部材MHの各連結レバー4が、相互に相手方のフレーム部材MH側に回動され、左右方向に連結されている。
【0031】
なお、図1においては、長さ方向及び高さ方向の各フレーム部材UL、DL及びMHのそれぞれに1つずつ連結レバー4が設けられているが、連結レバー4の数や取り付け位置は、これに限定されず、必要な数を、必要な箇所に設けることができる。
【0032】
図3は、放射線遮蔽材容器1の底部における1つの角部の構造を示す斜視図である。また、図4は、高さ方向のフレーム部材MHの横断面図である。
【0033】
図3及び図4に示すように、高さ方向のフレーム部材MHは、相互に一定の間隔を置いて固定された内側のL字状部材9と、外側のL字状部材10とを備える。内側のL字状部材9及び外側のL字状部材10は、いずれも横断面がL字形状を呈しており、該L字形状の角部において相互に結合されている。そして、内側のL字状部材9は、外側のL字状部材10よりも、角部から端縁までの幅が小さい。
【0034】
これにより、内側のL字状部材9及び外側のL字状部材10は、これらの間の両側に、側板LPの長さ方向の端縁及び側板WPの幅方向の端縁がそれぞれ嵌合する長さ側嵌合溝11及び幅側嵌合溝12を形成している。L字状部材9及び10は、連結されたフレーム部材DL及びDWに対し、下端部が嵌合され、連結されている。また、フレーム部材DL及びDWには、底板BPの端縁が載置される底板載置面13と、側板LPの下端縁及び側板WPの下端縁を外側から水平方向にそれぞれ支持する支持面8とが設けられる。
【0035】
なお、上部のフレーム部材UL及びUWには、下部のフレーム部材DL及びDWの場合と同様にして、L字状部材9及び10の上端部が嵌合されている。また、同様に、各フレーム部材UL及びUWには、天板UPの端縁が載置される図示していない天板載置面と、側板LPの上端縁及び側板WPの上端縁を外側からそれぞれ支持する図示していない支持面とが設けられる。
【0036】
図5は、下部のフレーム部材DL及びDWの相互に連結される端部を示す斜視図である。図5に示すように、フレーム部材DL及びDWは、高さ方向フレーム部材MH(図3)と連結するための長さ側嵌合部14及び幅側嵌合部15をそれぞれ備える。
【0037】
フレーム部材DL及びDWが相互に連結されたとき、長さ側嵌合部14及び幅側嵌合部15は、L字状部材9及び10の下端部が嵌合するL字状の嵌合部を形成する。この嵌合部がL字状部材9及び10の各下端部の間に嵌合されることにより、フレーム部材DL及びDWと、高さ方向のフレーム部材MHとが連結する。
【0038】
上部のフレーム部材UL及びUWも、フレーム部材DL及びDWと同様の嵌合部を備えており、その嵌合部をL字状部材9及び10の上端部と嵌合させることにより、高さ方向のフレーム部材MHと連結できるようになっている。
【0039】
また、下部のフレーム部材DL及びDWの連結される各端部には、その連結をワンタッチで行うための係合ピン16及び係合溝17が設けられる。
【0040】
すなわち、フレーム部材DL及びDWは、所定の高さ方向の厚みを有するが、フレーム部材DL及びDWの各端部はそれぞれ下部及び上部が削られて半分ほどの厚みとなっている。係合ピン16は、フレーム部材DL端部の下面に突出させて設けられる。また、係合溝17は、フレーム部材DWの端部上面において、係合ピン16に対応する位置に設けられる。
【0041】
係合ピン16は、図示していないバネにより突出方向へ伸縮自在となっている。係合ピン16の先端部は、径が大きくなったフランジ部16aとなっている。係合溝17は、フランジ部16aが挿入可能な径を有する挿入部18と、挿入部18よりも深い固定部19とで構成される。
【0042】
図6は、フレーム部材DL及びDWをワンタッチで連結する手順を示す。図6(a)のように、係合溝17の固定部19は、フランジ部16aの径より幅が狭い上部19aと、挿入部18の径と同じ幅の下部19bとで構成される。ただし、上部19aの下端のレベルは、挿入部18の底のレベルよりも高い。これにより、次のようにして、フレーム部材DL及びDWをワンタッチで連結できるようになっている。
【0043】
すなわち、まず、図6(a)のように、係合ピン16が係合溝17の挿入部18に挿入されるように、フレーム部材DWに対してフレーム部材DLを矢印Y1のように移動させる。このとき、矢印Y1方向の押圧力により、係合ピン16がフレーム部材DLの方へ縮退する。
【0044】
次に、図6(b)のように、係合ピン16が係合溝17の固定部19の方へ移動するように、フレーム部材DLを矢印Y2の方向に移動させる。そして、係合ピン16が固定部19に達すると、図6(c)のように、縮退していた係合ピン16が伸張し、フランジ部16aが固定部19の底部に落ち込む。
【0045】
これにより、フレーム部材DL及びDWの端部同士が、水平方向に固定され、連結される。また、この状態において、固定部19の上部19aによりフランジ部16aの上方への移動が規制されるので、係合ピン16が係合溝17から逸脱することはない。この連結の解除は、フランジ部16aが上方へ移動し、次に挿入部18へ移動し、そして挿入部18から抜けるようにフレーム部材DLを移動させることによって行われる。
【0046】
この構成において、放射線遮蔽材容器1の組立てに際しては、まず、底板BPを支持する2本の長さ方向のフレーム部材DL及び2本の幅方向フレーム部材DWを連結する。この連結は、上述図6の手順に従い、ワンタッチで行われる。これにより、各フレーム部材DL及びDWにより形成される矩形の四隅において、高さ方向のフレーム部材MHの下端部を嵌合するための長さ側嵌合部14及び幅側嵌合部15が結合した嵌合部が形成される。
【0047】
次に、連結したフレーム部材DL及びDWの各底板載置面13で構成される面上に底板BPを載置する。次に、各側板LPの高さ方向に沿った端縁及び各側板WPの高さ方向に沿った端縁を、対応する高さ方向フレーム部材MHの長さ側嵌合溝11及び幅側嵌合溝12に嵌合させながら、4本の高さ方向フレーム部材MHを、四隅の各長さ側嵌合部14及び幅側嵌合部15に嵌合させる。
【0048】
なお、この間に、天板UPを支持する2本の長さ方向のフレーム部材UL及び2本の幅方向フレーム部材UWを、フレーム部材DL及びDWの場合と同様にして連結することができる。
【0049】
次に、連結されたフレーム部材UL及びUWを各高さ方向のフレーム部材MHに連結する。この連結は、フレーム部材DL及びDWに対して各フレーム部材MHを連結した場合と同様に、フレーム部材UL及びUWにより形成された各四隅の嵌合部に対して各フレーム部材MHの上端を嵌合することにより行われる。
【0050】
そして、連結されたフレーム部材UL及びUWにより形成された天板載置面上に天板UPを載置することにより、放射線遮蔽材容器1の組立てが完了する。
【0051】
放射線遮蔽体を設置するにあたっては、放射線遮蔽体を設置すべき設置場所の近傍の安全な所で必要な数の放射線遮蔽材容器1が、上述の手順で組み立てられる。そして、組み立てられた各放射線遮蔽材容器1が、作業者により、設置場所まで運ばれ、上述図2のようにして連結される。使用する放射線遮蔽材容器1の数は、放射線遮蔽体を設置する場所の広さや形状等に応じて適宜選択される。放射線遮蔽材容器1の向きは、長さ面を構成する側板LPが、遮蔽すべき放射線の放射方向に垂直となるように選択される。
【0052】
放射線遮蔽材容器1の連結は、必要に応じ、上下又は左右方向に行われる。連結される各放射線遮蔽材容器1には、放射線遮蔽材が充填される。ただし、上下方向に連結する場合には、下方に位置する放射線遮蔽材容器1に放射線遮蔽材を充填してから、上方の放射線遮蔽材容器1を空の状態で下方の放射線遮蔽材容器1の上に載置して下方の放射線遮蔽材容器1に連結し、その後、上方の放射線遮蔽材容器1に放射線遮蔽材を充填する必要がある。
【0053】
放射線遮蔽材容器1に対する放射線遮蔽材の充填は、放射線遮蔽材を充填口2から流入させることにより行われる。この充填は、放射線遮蔽材を満たした搬送用容器を用い、充填が完了するまで繰り返し行われる。各放射線遮蔽材容器1の連結及び放射線遮蔽材の充填が完了すると、放射線遮蔽体の設置が完了する。
【0054】
このようにして、放射線遮蔽体の設置が完了すると、設置された放射線遮蔽体により放射線が遮蔽された遮蔽領域が確保され、被曝のおそれなく、該遮蔽領域内での作業が可能となる。
【0055】
また、確保された遮蔽領域を足掛かりとして、より放射線強度の高い場所に新たな放射線遮蔽体を設置して遮蔽領域を確保することにより、順次、遮蔽領域を拡張し又は放射線源へ近接させてゆくことができる。この間、不要になった放射線遮蔽体については、その放射線遮蔽材容器1から放射線遮蔽材が回収され、放射線遮蔽材容器1が撤去される。あるいは放射線遮蔽材が回収された放射線遮蔽材容器1は、新たな遮蔽領域を確保するために移送され、再度利用される。撤去された放射線遮蔽材容器1は、容易に各パーツに分解して保管することができる。
【0056】
放射線遮蔽材容器1からの放射線遮蔽材の回収は、回収口3を開き、回収口3から流出する放射線遮蔽材を、搬送用容器で順次受け取ることにより行われる。搬送用容器内に回収された放射線遮蔽材は、搬送用容器とともに保管場所へ搬送され、あるいは次に確保すべき遮蔽領域に移送され、新たな放射線遮蔽体の設置のために再利用される。
【0057】
本実施形態によれば、連結レバー4により放射線遮蔽材容器1を容易に連結しながら放射線遮蔽材容器1に放射線遮蔽材を充填することにより、容易に放射線遮蔽体を設置することができる。また、放射線遮蔽体の各放射線遮蔽材容器1から放射線遮蔽材を回収しながら、各放射線遮蔽材容器1の連結を解除し、各放射線遮蔽材容器1を移送することにより、容易に放射線遮蔽体を撤去し、又は移設することができる。
【0058】
したがって、放射線遮蔽体の設置により確保した遮蔽領域を足掛かりとして、必要に応じ、順次新たな遮蔽領域を確保してゆくことができる。また、放射線量が高い領域や、放射線量の変動の大きな領域等のように遮蔽領域の確保に急を要するような現場において、機動的かつ速やかに遮蔽領域を確保することができる。
【0059】
また、放射線遮蔽材容器1を、各フレーム部材UL、UW、DL、DW、MH、各側板LP、WP、底板BP、及び天板UPに分割するとともに、これらのパーツを嵌め込み式で連結し、容易に組み立てることができるようにしたので、放射線遮蔽材容器1の各パーツを、限られたスペース内に保管し、直ちに利用することができる。
【0060】
また、放射線遮蔽材は、鋼球等の粒状のものであり、流動性があるので、放射線遮蔽材容器1への充填や、そこからの回収、搬送等を容易に行うことができる。
【0061】
したがって、必要時には、直ちに放射線遮蔽材容器1及び放射線遮蔽材を用意し、容易に放射線遮蔽体を設置することができる。例えば、機器の移動等により放射線量が変動する場所や、機器の置き場を確保しなければならない場所等において、状況に応じ、迅速に放射線遮蔽体の増設や移設を行うことができる。
【0062】
また、放射線遮蔽体の形や重量を、使用する放射線遮蔽材容器1の数や連結の仕方により、任意のものとすることができる。このため、設置場所の形状や、耐荷重に応じ、適切な形や重量の放射線遮蔽体を設置することができる。例えば、狭くて放射線量の高い場所においては、設置スペースや放射線量に応じ、必要な遮蔽範囲及び遮蔽能力を有する放射線遮蔽体を設置することができる。
【0063】
なお、本発明は上述実施形態に限定されない。例えば、上述においては言及しなかったが、図7に示すように、設置面20上に配置される放射線遮蔽材容器1については、設置面20上で、2つのベース21を用いて支持するようにしてもよい。
【0064】
この場合、各ベース21は、放射線遮蔽材容器1の下部の2本のフレーム部材DLを設置面20上で上下方向に支持する水平支持板22と、水平支持板22上に設けられ、2本のフレーム部材DLをそれぞれ、外側から水平方向に支持する2つの垂直支持板23とで構成することができる。
【0065】
放射線遮蔽材容器1がベース21で支持されるとき、水平支持板22は、放射線遮蔽材容器1の幅方向に平行に配置される。水平支持板22は、放射線遮蔽材容器1の幅よりも長い。これによれば、放射線遮蔽体の安定性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…放射線遮蔽材容器、2…充填口、3…回収口、4…連結レバー(連結手段)、BP…底板(板状部材)、LP、WP…側板(板状部材)、DL、DW、MH、UL、UW…フレーム部材、UP…天板(板状部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の放射線遮蔽材が充填される直方体形状の放射線遮蔽材容器であって、
他の放射線遮蔽材容器と相互に上下方向又は左右方向に連結させるための連結手段と、
前記放射線遮蔽材の充填を行うために天板に設けられた充填口と、
前記放射線遮蔽材容器に充填された放射線遮蔽材を回収するために下部側面に設けられた開閉可能な回収口とを具備することを特徴とする放射線遮蔽材容器。
【請求項2】
前記直方体形状の12辺を構成する12本のフレーム部材と、該直方体形状の6面を構成する6枚の板状部材とを備え、各フレーム部材及び各板状部材を嵌め込み式で組み立てることで形成されることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽材容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の放射線遮蔽材容器と、該放射線遮蔽材容器に充填された放射線遮蔽材とを具備することを特徴とする放射線遮蔽体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79908(P2013−79908A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221063(P2011−221063)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000142791)株式会社アトックス (25)