説明

放射線関連施設用建物

【課題】洗濯係員の作業負担を軽減するとともに、洗濯する被服の回収、洗濯した被服の配備を効率的に行う。
【解決手段】放射線管理区域の作業者が脱衣を行う脱衣エリア10、及び洗濯乾燥された被服を配備する配備エリア20を有する地上1階フロア3と、被服を洗濯乾燥する洗濯設備エリア30、及び被服を折りたたむ仕上げエリア40を有する地下1階フロア5とを備える放射線関連施設用建物1において、脱衣エリア10には、被服を投入する投入ボックス12が配置され、洗濯設備エリア30には、被服を回収する回収カゴ32と、被服を洗濯乾燥する洗濯乾燥機34と、洗濯乾燥した被服の汚染を検知し、汚染されていない被服を仕上げエリア40に送り出すランドリングモニタ装置36とが配置され、投入ボックス12と回収カゴ32との間にシュート50が設けられ、配備エリア20と仕上げエリア40とを昇降する昇降装置60が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線管理区域で使用した被服を洗濯する施設を有する放射線関連施設用建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放射線管理区域で作業した作業員は、作業終了後に、予め定められた脱衣エリアで脱衣を行い、脱衣した被服を、予め種類別に用意された運搬用カゴに入れる。被服が入れられた運搬用カゴは、洗濯係員によって、廃棄物処理建物の洗濯設備エリアに運搬され、この洗濯設備エリアに配備された洗濯乾燥機によって被服の洗濯乾燥が行われる。次に、洗濯乾燥が行われた被服に対して汚染状態の検査が行われ、この検査に通った被服が仕上げエリアで折りたたまれ、複数枚の被服の結束が行われた後に配備エリアに搬送される。配備エリアに搬送された被服は、配備エリアに備えられた被服配備棚に入れられる。そして、作業員は、放射線管理区域に入る前に、被服配備棚から必要な装備を取り出し、着衣してから作業を行う。
【0003】
また、従来、洗濯乾燥が行われた被服の汚染の有無を自動的に検査し、汚染がない被服のみを自動的に折りたたむ原子力発電所のランドリングシステムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−253400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなシステムを用いることにより、洗濯係員の作業負担を軽減することが可能になる。
【0006】
ところで、洗濯設備エリアには、大量の被服や防具が集まるため、洗濯設備エリアは、廃棄物処理建物において周囲に人がいない場所、あるいは人が少ない場所に設けることが望ましい。ここで、廃棄物処理建物が複数階からなる建物であれば、直上が屋上となる最上階に洗濯設備エリアを設けることが考えられる。
【0007】
しかし、廃棄物処理建物の最上階に洗濯設備エリアを設けることは、洗濯係員が運搬用カゴを最上階まで運ばなければならないばかりでなく、洗濯乾燥した被服を他のフロア、あるいは建物に運ばなければならないため、作業負担が大きくなる。特に、脱衣エリアや洗濯乾燥した被服を配備する配備エリアが廃棄物処理建物とは異なる建物である場合には、さらに洗濯係員の作業負担が大きくなる。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決し、洗濯係員の作業負担を軽減するとともに、洗濯する被服の回収、洗濯した被服の配備を効率的に行うことを実現した放射線関連施設用建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0010】
(1) 放射線管理区域の作業者が脱衣を行う脱衣エリア、及び洗濯乾燥された被服を配備する配備エリアを有する上階フロアと、放射線管理区域の作業者が脱衣した被服を洗濯乾燥する洗濯設備エリア、及び当該洗濯設備エリアに隣接し、当該洗濯設備エリアにおいて洗濯乾燥された被服を折りたたむ仕上げエリアを有する下階フロアと、を有する放射線関連施設用建物において、前記脱衣エリアには、放射線管理区域の作業者の被服を投入する投入部が配置され、前記洗濯設備エリアには、放射線管理区域の作業者の被服を回収する回収部と、当該回収部で回収された被服を洗濯乾燥する洗濯乾燥部と、当該洗濯乾燥部が洗濯乾燥した被服の汚染を検知し、汚染されていない被服を前記仕上げエリアに送り出す仕分け部とが配置され、前記投入部と前記回収部との間に、前記投入部から前記回収部まで被服を案内するシュート部が設けられ、前記配備エリアと前記仕上げエリアとの間に、前記仕上げエリアにおいて仕上げた被服を前記配備エリアに搬送する昇降手段が設けられたことを特徴とする放射線関連施設用建物。
【0011】
(1)によれば、上階フロアに脱衣エリアがあり、作業員はそこで脱衣して被服をシュート部に入れることにより、被服が洗濯設備エリアに移送される。また、洗濯設備エリアにおいて洗濯乾燥された被服の中で汚染されていないものは、仕上げエリアで折りたたまれ、数枚の被服がまとめて結束されて、昇降手段を介して配備エリアに搬送される。このように、放射線関連施設用建物の上階フロアと、下階フロアとの間で被服が循環するため、洗濯する被服の回収、洗濯した被服の配備を効率的に行うことが可能になるとともに、洗濯係員による被服の運搬作業を大幅に削減することが可能になる。
【0012】
(2) (1)において、前記回収部は、前記投入部の直下に位置し、前記仕上げエリアは、前記配備エリアの直下に位置することを特徴とする放射線関連施設用建物。
【0013】
(2)によれば、放射線関連施設用建物内における上階フロアと下階フロアとのにおける被服の移動において、途中で被服の移動経路が交差することがなくなり、円滑に循環させることが可能になる。これにより、洗濯する被服の回収、洗濯した被服の配備を効率的に行うことが可能になる。
【0014】
(3) (1)又は(2)において、前記上階フロアと前記下階フロアは、上下に隣接したフロアであることを特徴とする放射線関連施設用建物。
【0015】
(4) (3)において、前記上階フロア及び前記下階フロアの2つのフロアからなることを特徴とする放射線関連施設用建物。
【0016】
(3)、(4)によれば、シュート部や昇降手段の長さを短くすることが可能になり、その分コストダウンが図れる。
【0017】
(5) (4)において、前記下階フロアは、地下フロアであることを特徴とする放射線関連施設用建物。
【0018】
(5)によれば、大量の被服が集まる洗濯設備エリアが地下フロアにあるため、洗濯前の被服からの放射線による周囲への影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、洗濯係員の作業負担を軽減するとともに、洗濯する被服の回収、洗濯した被服の配備を効率的に行うことを実現した放射線関連施設用建物を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における放射線関連施設用建物の各階フロアの要部構成を示す説明図である。
【図2】地上1階フロアにおける各種設備の配置図である。
【図3】地下1階フロアにおける各種設備の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態における放射線関連施設用建物の各階フロアの要部構成を示す説明図である。
【0023】
放射線関連施設用建物1は、地上1階フロア3と地下1階フロア5とを備えた2層の建物である。
【0024】
地上1階フロア3には、放射線管理区域で作業した作業員が脱衣を行う脱衣エリア10と、放射線管理区域で作業する作業員が着用する被服が配備される配備エリア20とが設けられている。ここで、被服とは、帽子、手袋、作業服、下着、靴下等をさす。脱衣エリア10には、作業員が脱いだ被服を投入する投入ボックス12が設置されており、配備エリア20には、洗濯された被服を収納する配備棚22が設置されている。
【0025】
地下1階フロア5には、被服の洗濯、乾燥を行う洗濯設備エリア30と、洗濯、乾燥された被服を折りたたみ、複数の被服を結束する仕上げエリア40とが設けられている。洗濯設備エリア30には、投入ボックス12に投入された被服を回収する回収カゴ32と、洗濯乾燥機34と、ランドリングモニタ装置36とが設けられている。仕上げエリア40には、結束機42が設けられている。
【0026】
洗濯乾燥機34は、被服の洗濯、乾燥を行うものである。ランドリングモニタ装置36は、モニタリング部と仕分け部とを備えている。モニタリング部は、洗濯乾燥された被服の放射線量を検知し、この検知結果が、予め定められた基準値を越えているか否かによって、被服が放射能に汚染されているか否かを判別するものである。仕分け部は、モニタリング部の判別結果に基づいて、汚染されている被服と汚染されていない被服とに仕分け、汚染されていない被服を仕上げエリア40に送り出すものである。なお、汚染されていると判定された被服は、廃棄物として処理される。
【0027】
投入ボックス12の下部にはシュート50が設けられている。回収カゴ32は、投入ボックス12の直下に配置されており、シュート50の下端が、回収カゴ32に対向している。このため、投入ボックス12に投入した被服は、シュート50によって案内されながら落下して、回収カゴ32に収納される。
【0028】
配備エリア20の直下には仕上げエリア40があり、放射線関連施設用建物1には、配備エリア20とエリア40との間を昇降する昇降装置60が設けられている。仕上げエリア40で結束された被服は、昇降装置60に載せられ、上階の配備エリア20に搬送される。そして、下階の仕上げエリア40から搬送された被服は、洗濯係員によって配備エリア20の配備棚22に収納される。
【0029】
次に、放射線関連施設用建物1における被服の移動経路について説明する。図1において実線で示す矢印は、放射線関連施設用建物1における被服の移動経路を示すものである。放射線管理区域で作業した作業員は、脱衣エリア10で被服を脱いで、投入ボックス12に投入する。投入ボックス12に投入された被服は、シュート50によって案内されながら地上1階フロア3から地下1階フロア5に落下し、回収カゴ32に収納される。そして、回収カゴ32に所定量の被服が収納された場合に、洗濯係員は、回収カゴ32を洗濯乾燥機34に移動させて、被服を洗濯乾燥機34に投入する。洗濯係員は、洗濯乾燥機34によって洗濯乾燥された被服を、ランドリングモニタ装置36に運ぶ。ランドリングモニタ装置36は、被服が汚染しているか否かの判定を行い、汚染されていないと判定された被服のみを仕上げエリア40に送り出す。仕上げエリア40において、洗濯係員は、被服を折りたたみ、複数の被服を結束機42によって束ねる。そして、束ねた被服を昇降装置60に載せて、上階の配備エリア20に搬送する。配備エリア20に搬送された被服は、種類別に配備棚22に収納される。
【0030】
そして、放射線管理区域の作業員は、放射線管理区域に移動する前に配備棚22から、洗濯済みの被服を持ち出して、洗濯済みの被服に着替えてから、放射線管理区域に移動する。その後、放射線管理区域での作業が終了した作業員は、放射線関連施設用建物1の脱衣エリア10に移動する。このため、図1において一点鎖線で示す矢印のように、結果的に被服が、配備エリア20から脱衣エリア10に移動することになる。したがって、放射線管理区域での作業用の被服は、地上1階フロア3と地下1階フロア5との間を循環することになる。
【0031】
図2は、地上1階フロアにおける各種設備の配置図である。なお、図2に示すフロアにおいて、説明の便宜を図るため、図中A方向を前方向あるいは前側、図中A方向に対して反対方向のB方向を後方向あるいは後側、図中A方向に対して直角の図中C方向を左方向あるいは左側、図中C方向に対して反対方向のD方向を右方向あるいは右側と称することにする。
【0032】
図2に示すように、地上1階フロア3には、図1に示す脱衣エリア10、配備エリア20の他、靴置き場、手洗い場、応急処置室、温水器室、休憩室、シャワー室、チェックポイント及びロッカー室等が設けられている。脱衣エリア10は、地上1階フロア3における左側前部の中央寄りに配置されている。手洗い場は、脱衣エリア10の後側に隣接配置されている。ここで、脱衣エリア10の一部は、手洗い場の左側において後ろ方向に延びている。さらに、ロッカー室が、地上1階フロア3における左側後部でかつ手洗い場の後側に隣接配置されている。配備エリア20は、地上1階フロア3における右側後部でかつロッカー室の右側に設けられている。また、チェックポイントは、配備エリア20の前側でかつ手洗い場の左側に隣接配置されている。さらに、靴置き場、及び放射線管理区域に移動するための通路が、チェックポイントの前側すなわち地上1階フロア3における右側前部に設けられている。
【0033】
脱衣エリア10には、投入部に相当する投入ボックス12が、作業員の進行方向に沿って7つ設置されている。具体的には、軍手、作業服、ズボン、帽子、綿手袋、シャツ、股引の順番で投入するように投入ボックス12が配置されている。また、脱衣エリア10と手洗い場との境界には、チェンジングプレス14が設置されている。
【0034】
チェンジングプレス14は、幅が30cm程度の段差を形成する長尺の部材であり、脱衣エリア10と手洗い場との境界に設けられている。ここで、手洗い場及び手洗い場から先のエリアは、非汚染エリアとして設定されている。すなわち、チェンジングプレス14は、脱衣エリアと非汚染エリアとの境界であり、必要最小限の着衣以外のものはチェンジングプレス14を越えることができないルールになっている。
【0035】
また、チェンジングプレス14と柱とのデッドスペースに靴下専用の投入ボックス12が設けられている。すなわち、本実施形態においては、8つの投入ボックス12が脱衣エリア10に設置されている。
【0036】
チェックポイントには、作業者が放射能に汚染されているか否かを検査する検査台や、放射線管理区域に出るための入域ゲートが設けられている。また、ロッカー室には、作業員の持ち物を保管するためロッカーが複数配置されている。
【0037】
また、図2において、脱衣エリア10からは休憩室、シャワー室に直接移動することができず、必ずチェンジングプレス14を越えて手洗い場を介して移動するようなフロア構成になっている。また、ロッカー室からは脱衣エリアやチェックポイントに直接移動することができず、必ず配備エリア20を通ってチェックポイントに移動するフロア構成になっている。
【0038】
次に、地上1階フロア3における作業員の移動経路について説明する。
【0039】
放射線管理区域で作業した作業員は、図2中に二点差線で示す経路Pの順番で移動する。まず、脱衣エリア10に移動して、脱衣を行い、軍手、作業服、ズボン、帽子、綿手袋、股引を、それぞれに対応する投入ボックス12に投入し、最後に、靴下をチェンジングプレス14の近くに配置した投入ボックス12に投入する。作業員は、被服を投入ボックス12に投入した後、チェンジングプレス14を越えて、手洗い場、チェックポイント、配備エリア20を通ってロッカー室に向かうことができる。作業員は、ロッカー室で着替えてから放射線関連施設用建物1の外に出ることが可能になる。なお、ロッカー室から、シャワー室や休憩室を利用することも可能である。
【0040】
作業員が、放射線関連施設用建物1から放射線管理区域に入る場合には、図2中に二点差線で示す経路Qの順番で移動する。まず、ロッカー室に入り、被服や手荷物を保管した後、配備エリア20に移動する。作業員は、配備エリア20において配備棚22から洗濯された作業用の被服を取り出して、着衣する。作業員は、作業用の被服を着衣した後に、チェックポイントに移動し、入域ゲートを通り、靴を履いて、放射線管理区域に移動する。
【0041】
図3は、地下1階フロアにおける各種設備の配置図である。なお、図3に示すフロアにおいて、説明の便宜を図るため、図2に示す地上1階フロアと同様に、図中A方向を前方向あるいは前側、図中A方向に対して反対方向のB方向を後方向あるいは後側、図中A方向に対して直角の図中C方向を左方向あるいは左側、図中C方向に対して反対方向のD方向を右方向あるいは右側と称することにする。
【0042】
図3に示すように、地下1階フロア3には、図1に示す洗濯設備エリア30、仕上げエリア40の他、マスク除洗エリア、回収ボックス70、C装備保管エリア等が設けられており、洗濯設備エリア30の右側に仕上げエリア40及びマスク除洗エリア、回収ボックス70、除染シンク72、C装備保管エリア等が設けられている。
【0043】
回収ボックス70は、C装備(主に、C服)・タイラック(C装備の上に着用する合羽のような着衣)用の回収ボックス、Cヘルメットの回収ボックス、マスクの回収ボックス、B靴の回収ボックス、C靴・C長靴の回収ボックスの順に並べて配置されたものである。
【0044】
マスク除洗エリアは、回収ボックス70の前側に設けられ、回収ボックス70で回収されたマスクを洗浄するエリアである。除染シンク72は、回収ボックス70で回収されたC靴を洗浄するエリアである。また、C装備保管エリアは、回収ボックス70の後側に所定の間隔をあけて設けられ、洗濯乾燥されたC装備を保管するエリアであり、C装備用の保護収納ラック及び配備棚が設置されている。
【0045】
洗濯設備エリア30は、地下1階フロア5の左側の領域における、中央寄りの左側前部の一部を除いた領域に配置されている。また、仕上げエリア40は、地下1階フロア5の右側後部の領域に配置されており、洗濯設備エリア30の右側に隣接されている。さらに、マスク除洗エリア、回収ボックス70、除染シンク72、C装備保管エリア等は、仕上げエリア40の前側及び洗濯設備エリア30の右側に隣接した領域に配置されている。
【0046】
図2に示す地上1階フロア3の脱衣エリア10及びロッカー室の直下に、図3に示すように洗濯設備エリア30が配置されており、特に、洗濯設備エリア30における8つの投入ボックス12の直下の部位に、回収カゴ32が配置される。
【0047】
シュート50の開口が対向する、回収カゴ32による被服の受け入れ位置に対して後側に、6台の洗濯乾燥機34が配置されている。その中の4台が、洗濯設備エリア30内における左側中央の領域に並べて配置され、残る2台が、洗濯設備エリア30内における右側中央で、洗濯設備エリア30とC装備保管エリアとの境界付近に並べて配置されている。
【0048】
さらに、洗濯設備エリア30内における左側中央の4台の洗濯乾燥機34の後側に、1台の乾燥機が設置されている。また、乾燥機の後側すなわち地下1階フロア5の左側後部の領域にランドリングモニタ装置36が設置されている。また、洗濯設備エリア30内における右側中央の2台の洗濯乾燥機34の後側に、3台のランドリングモニタ装置36が設置されている。この3台のランドリングモニタ装置36は、洗濯設備エリア30と仕上げエリア40とにまたがって設置されている。なお、5つの洗濯乾燥機34の中の2つの洗濯乾燥機34は、C装備の洗濯乾燥専用に用いられる。また、地下1階フロア5の左側後部に設置されたランドリングモニタ装置36は、C装備の仕上げ専用に用いられる。
【0049】
C装備保管エリアは、仕上げエリア40の隣りに設置されており、さらに、C装備保管エリアに対向して回収ボックス70及び除染シンク72が設けられている。さらに、回収ボックス70の隣りにマスク除洗エリアが設置されている。また、回収ボックス70における洗濯設備エリア30側の端部でかつマスク除洗エリアの端部には、チェンジングプレス80が配置されており、C装備において、マスク除洗エリア及び除染シンク72で汚れを落としたC装備がチェンジングプレス80を越えて、洗濯設備エリア30に移動することが可能になる。
【0050】
ここで、投入ボックス12に投入される被服はB装備に属する服であり、B装備とは、汚染の程度による区分がB区域(表面汚染密度(ベクレル/cm)が4未満(α線を放出するものがない場合)、空気中の放射性物質濃度(ベクレル/cm)が1×10−4未満)の場合に着用する装備である。また、図3に示されているC装備とは、汚染の程度による区分がC区域(表面汚染密度(ベクレル/cm)が40未満(α線を放出するものがない場合)、空気中の放射性物質濃度(ベクレル/cm)が1×10−3未満)の場合に着用する装備である。
【0051】
次に、地下1階フロア5における被服の移動経路について説明する。
【0052】
投入ボックス12(図2参照)に投入した被服は、図3に二点差線で示す経路Rの順番で移動する。すなわち、洗濯係員は、回収カゴ32を洗濯乾燥機34に移動させて、被服の洗濯乾燥を行い、洗濯乾燥した被服をランドリングモニタ装置36に送り込む。ランドリングモニタ装置36は、汚染されていないと判定された被服のみを仕上げエリア40に送り出す。そして、洗濯係員は、仕上げエリア40において仕上げを行った後に被服を昇降装置60に載せて、上階の配備エリア20に搬送させる。
【0053】
なお、作業員がC装備を着用する場合には、地下1階のC装備保管エリアに行って、C装備を着用する。
【0054】
このように構成したことにより、本実施形態によれば、図1の矢印に示すように、被服が、放射線関連施設用建物1の上下階のフロアを循環することにより、被服の移動をコンパクトにすることが可能になり、洗濯乾燥に係る作業員の負担を軽減することができる。
【0055】
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、地上1階フロア3に脱衣エリア10があり、作業員はそこで脱衣して被服をシュート50に入れることにより、被服が洗濯設備エリアに移送される。また、洗濯設備エリアで洗濯乾燥された被服は、仕上げエリア40で折りたたまれ、数枚の被服がまとめて結束されて、昇降装置60を介して配備エリア20に搬送される。このように、放射線関連施設用建物1の地上1階フロア3と、地下1階フロア5との間で被服が循環するため、洗濯する被服の回収、洗濯した被服の配備を効率的に行うことが可能になり、洗濯係員による被服の運搬作業を大幅に削減することが可能になる。
【0056】
また本実施形態によれば、投入ボックス12の直下に回収カゴ32が位置するため、投入ボックス12に入れた被服は、直下の回収カゴ32に落下する。また、仕上げエリア40は、配備エリア20の直下に位置しており、昇降装置60によって被服を仕上げエリア40から配備エリア20に移送する。このため、被服を運ぶ際に、同じ通路や階段及びエレベータを利用することがなくなり、被服が放射線関連施設用建物内において途中で移動経路が交差することなく循環する。これにより、洗濯する被服の回収、洗濯した被服の配備を効率的に行うことが可能になる。
【0057】
また本実施形態によれば、放射線関連施設用建物1が、地上1階フロア3と地下1階フロア5とを備えた2層の建物であるため、シュート50や昇降装置60の長さを短くすることが可能になり、その分コストダウンが図れる。
【0058】
また本実施形態によれば、大量の被服が集まる洗濯設備エリア30が地下フロアにあるため、洗濯前の被服からの放射線による周囲への影響を低減することができる。また、脱衣エリア10が地上1階フロア3にあるため、作業員が脱衣エリア10に入りやすくなり、放射線関連施設用建物内1において作業員が脱衣エリア10に到達するまでの移動距離を短くすることが可能になる。これにより、放射線関連施設用建物内が放射能で汚染されるおそれを確実に低減させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 放射線関連施設用建物
3 地上1階フロア
5 地下1階フロア
10 脱衣エリア
12 投入ボックス
14、80 チェンジングプレス
20 配備エリア
22 配備棚
30 洗濯設備エリア
32 回収カゴ
34 洗濯乾燥機
36 ランドリングモニタ装置
40 仕上げエリア
42 結束機
50 シュート
60 昇降装置
70 回収ボックス
72 除染シンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線管理区域の作業者が脱衣を行う脱衣エリア、及び洗濯乾燥された被服を配備する配備エリアを有する上階フロアと、
放射線管理区域の作業者が脱衣した被服を洗濯乾燥する洗濯設備エリア、及び当該洗濯設備エリアに隣接し、当該洗濯設備エリアにおいて洗濯乾燥された被服を折りたたむ仕上げエリアを有する下階フロアと、を有する放射線関連施設用建物において、
前記脱衣エリアには、放射線管理区域の作業者の被服を投入する投入部が配置され、
前記洗濯設備エリアには、放射線管理区域の作業者の被服を回収する回収部と、当該回収部で回収された被服を洗濯乾燥する洗濯乾燥部と、当該洗濯乾燥部が洗濯乾燥した被服の汚染を検知し、汚染されていない被服を前記仕上げエリアに送り出す仕分け部とが配置され、
前記投入部と前記回収部との間に、前記投入部から前記回収部まで被服を案内するシュート部が設けられ、
前記配備エリアと前記仕上げエリアとの間に、前記仕上げエリアにおいて仕上げた被服を前記配備エリアに搬送する昇降手段が設けられたことを特徴とする放射線関連施設用建物。
【請求項2】
前記回収部は、前記投入部の直下に位置し、
前記仕上げエリアは、前記配備エリアの直下に位置することを特徴とする請求項1記載の放射線関連施設用建物。
【請求項3】
前記上階フロアと前記下階フロアは、上下に隣接したフロアであることを特徴とする請求項1又は2記載の放射線関連施設用建物。
【請求項4】
前記上階フロア及び前記下階フロアの2つのフロアからなることを特徴とする請求項3記載の放射線関連施設用建物。
【請求項5】
前記下階フロアは、地下フロアであることを特徴とする請求項4記載の放射線関連施設用建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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