放射能汚染水中の放射性物質の除去方法及び装置
【課題】大量の放射能汚染水を低コストで迅速に処理して、汚染水中の放射性物質を除去したり、壁や床に付着した放射性物質を、大量の汚染水を発生することなく除去する方法及び装置を提供する。
【解決手段】両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤と前記放射能汚染水とを容積比1:100〜1:10000で混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させる工程と、前記共凝集体を分離して前記放射能汚染水の放射性物質の濃度を低減した共凝集体分離水を得る工程と、を含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法及び装置。
【解決手段】両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤と前記放射能汚染水とを容積比1:100〜1:10000で混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させる工程と、前記共凝集体を分離して前記放射能汚染水の放射性物質の濃度を低減した共凝集体分離水を得る工程と、を含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法及び装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セシウム、ヨウ素あるいはストロンチウムなど、特に人工放射性核種のセシウム137、ヨウ素131、ストロンチウム90などの放射性物質によって汚染された汚染水中の前記物質、特に放射能汚染海水中の放射性物質を除去する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セシウム、ヨウ素あるいはストロンチウムなど、特にセシウム137、ヨウ素131やストロンチウム90などの放射性物質によって汚染された水を浄化する手段として、例えばこれら人工放射性核種の粒子を取り込むように設計されたゼオライトを用いる技術(特許文献1参照)、セラミクスや薄膜フィルタ、逆浸透膜などの各種フィルタを用いる技術が提案されている。また、ゼオライトよりもセシウムに対して高い結合力及び選択性を有するプルシアンブルー及びその類似化合物を用いたり、ストロンチウムに対して高い結合力及び選択性を示すアルギン酸のような高分子多糖類誘導体からなるハイドロゲルを用いることも考えられる。
【0003】
しかしながら、これらのゼオライトやフィルタを用いる方法は、大量の放射能汚染水を処理する場合に、目詰まりしたゼオライトや高温で劣化したフィルタを頻繁に交換しなければならず、コスト高になってしまい、又、交換すべきフィルタには高濃度の放射性物質(粒子)が付着しているので交換作業は容易でないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−526110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大量の放射能汚染水を低コストで迅速に処理して、汚染水中の放射性物質を除去したり、壁や床に付着した放射性物質を、大量の汚染水を発生することなく除去する方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、ナノカーボン分散物とプルシアンブルーとを含む捕集剤を用いることによって、汚染水中のセシウムを捕集した後捕集剤と共凝集させることができること、更に、壁や床に付着したセシウムを吸着して除去できることを見いだした。更に又、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤により、セシウムやストロンチウムを吸着保持できることを見出し、以下の各発明を完成した。
【0007】
(1)放射能汚染水中の放射性物質を除去する方法であって、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤と前記放射能汚染水とを容積比1:100〜1:10000で混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させる工程Aと、前記共凝集体を分離して前記放射能汚染水の放射性物質の濃度を低減した共凝集体分離水を得る工程Bと、を含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0008】
(2)前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Bによって得られる共凝集体分離水を1回または複数回流通させてセシウム濃度を低減させたセシウム低減水を得る工程Cを含む、(1)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0009】
(3)前記捕集剤が、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤である、(1)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0010】
(4)前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる前記捕集剤ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Bによって得られる共凝集体分離水を1回または複数回流通させてセシウム濃度を低減させたセシウム低減水を得る工程Hを含む、(3)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0011】
(5)前記放射性物質は少なくともヨウ素を含み、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物と珪藻土とを含むウレタン多孔質体に前記共凝集体分離水を1回又は複数回流通させてヨウ素濃度を低減させたヨウ素低減水を得る工程Dを含む、(1)又は(3)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0012】
(6)前記放射性物質は少なくともヨウ素を含み、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物と珪藻土とを含むウレタン多孔質体に前記セシウム低減水を1回又は複数回流通させてヨウ素濃度を低減させたセシウム・ヨウ素低減水を得る工程Eを含む、(2)又は(4)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0013】
(7)前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Dによって得られるヨウ素低減水を1回または複数回流通させてセシウム濃度をさらに低減させて、ヨウ素・セシウム低減水を得る工程Fを含む、(5)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0014】
(8)前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Dによって得られるヨウ素低減水を1回または複数回流通させてセシウム濃度をさらに低減させて、ヨウ素・セシウム低減水を得る工程Fを含む、(5)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0015】
(9)物体に付着したセシウムを除去する方法であって、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体を、前記物体に擦り付けて、前記水で濡れたセシウムを水とともに前記ウレタン多孔質体に吸収する工程と、前記ウレタン多孔質体から、前記複合型多機能性粒子に吸着されたセシウムを残して、水を搾り出す工程とを含む、放射性物質の除去方法。
【0016】
(10)物体に付着したセシウムを除去する方法であって、前記セシウムを水で濡らす工程と、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体を、前記物体に擦り付けて、前記水で濡れたセシウムを水とともに前記ウレタン多孔質体に吸収する工程と、前記ウレタン多孔質体から、前記複合型多機能性粒子に吸着されたセシウムを残して、水を搾り出す工程とを含む、放射性物質の除去方法。
【0017】
(11)前記ウレタン多孔質体から搾り出した水により、前記物体に付着したセシウムを濡らす工程を含む、(9)又は(10)に記載の放射性物質の除去方法。
【0018】
(12)内側空間に、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0019】
(13)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0020】
(14)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を備えた流通体を有する放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0021】
(15)放射性物質を含む溶液と、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物及びプルシアンブルーからなる捕集剤とを混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させるための手段、及び、前記共凝集体と放射性物質濃度が低減された溶液とを分離するための分離手段を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0022】
(16)前記共凝集体と放射性物質濃度が低減された溶液とを分離する手段が共凝集体の濾過装置である(15)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0023】
(17)両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた(15)又は(16)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0024】
(18)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を備えた流通体を有する(15)又は(16)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0025】
(19)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた(15)又は(16)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0026】
(20)両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物及び珪藻土を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を設けた(15)乃至(19)のいずれかに記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0027】
(21)放射性物質を含む溶液及び/又は放射性物質を含む溶液と前記捕集剤とが混合された溶液にさらに電解質を添加する手段を備えた(15)乃至(20)のいずれかに記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0028】
(22)放射性物質を含む溶液を収容するためのタンクと、このタンク内の溶液に、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤を、電解質の存在下で、容積比1:100〜1:10000で添加する捕集剤添加装置と、前記添加された捕集剤と前記放射性物質との共凝集体を分離する濾過装置と、を有してなる(15)乃至(21)のいずれかに記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0029】
(23)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含み、膨張・縮小自在のウレタン多孔質体からなる擦り部材を有し、物体に付着していて水に濡れたセシウムを擦り取り、水とともに吸収し、且つ、水を搾り出すことができる放射性物質の除去装置。
【0030】
(24)前記擦り部材をモップ状に柄部材の先端に取付けてなる(23)に記載の放射性物質の除去装置。
【0031】
(25)前記柄は、前記多孔質体が吸収した水を吸入して、排出する排出管を備えた(24)に記載の放射性物質の除去装置。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、セシウム、ストロンチウムやヨウ素、特に放射性セシウムや放射性ヨウ素によって汚染された水中のセシウムやヨウ素を分離が容易な共凝集体として約90%以上、さらには98%以上を取り除くことができ、更に、セシウム除去水管により、合計で汚染水中のセシウムの約95%以上、さらには99.99%以上を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係る装置を示すブロック図
【図2】セシウム除去のためのセシウム除去水管を示す斜視図
【図3】セシウム除去水管において、ウレタンプレポリマーに捕集剤を充填した珪藻土と活性炭粒子を添加・混合・発泡させて形成されたウレタン多孔質体を拡大して示す顕微鏡写真
【図4】ヨウ素イオン除去のためのヨウ素除去水管を示す斜視図
【図5】ヨウ素除去水管において、ウレタンプレポリマーに両性イオン粒子/ナノカーボン/珪藻土を添加・混合・発泡させて形成されたウレタン多孔質体を拡大して示す顕微鏡写真
【図6】本発明の実施例に係る放射能汚染水中の放射性物質の除去装置において、放射能汚染水から放射性物質を除去する過程を示すフローチャート
【図7】放射能汚染海水に捕集剤を添加・混合した状態を拡大して示す模式図
【図8】捕集剤が凝集する際に、セシウム粒子とヨウ素粒子を捕集する様子を示す模式図
【図9】捕集剤とセシウムとの共凝集体が自己沈殿を生じた様子を示す模式図
【図10】本発明の複合型多機能性粒子に用いる筒状珪藻土を示す電子顕微鏡写真
【図11】同複数の筒状珪藻土を示す電子顕微鏡写真
【図12】筒状珪藻土中にプルシアンブルー及びアルギン酸を合成・充填した後の状態を示す電子顕微鏡写真
【図13】同様の電子顕微鏡写真
【図14】プルシアンブルー及びアルギン酸を充填した筒状珪藻土をカーボンナノチューブネットワークで蓋をして形成した複合型多機能性粒子を示す電子顕微鏡写真
【図15】本発明の装置2)又は装置3)を模式的に示す断面図
【図16】壁や床に付着したセシウムの除去装置の実施例に係るウレタン多孔質体を示す斜視図
【図17】除染専用のスポンジを示す電子顕微鏡写真
【図18】同様の電子顕微鏡写真
【図19】壁や床に付着したセシウムの除去装置の他の実施例を示す斜視図
【図20】同除去装置により放射性汚染物質を除去する作業を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤を利用して、汚染水中の放射性物質の、特にセシウムを除去する方法及び装置に関する。他の発明は、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体を用いて、放射性物質を吸着する方法及び装置に関する。更に他の発明は、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を利用して、汚染水中のセシウムやストロンチウムを除去する方法及び装置に関する。更に又、他の発明は、壁や床等に付着した放射性セシウム、放射性ヨウ素、放射性ストロンチウムなどを除去する方法及び装置に関する。
【0035】
<捕集剤1>
本発明における捕集剤の一態様は、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤1である。
【0036】
本発明における捕集剤1に含まれるナノカーボン分散物とは、1分子中にプラス電荷とマイナス電荷を同時に有する両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩を分散剤として用いて、ナノカーボン凝集体を孤立分散処理したものである。
【0037】
本発明で利用可能なナノカーボンは、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンブラック、活性炭又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0038】
ナノカーボンを分散するための両性イオン分子としては、前記ナノカーボンを単分子状態で分散し得ることができるものであれば特に限定されないが、例えば、3−(N,N’−ジメチルステアリルアンモニオ)プロパンスルホネート、3−(N,N’−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシプロパンスルホネート、n−ドデシル−N,N’−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、n−ヘキサデシル−N,N’−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、n−オクチルホスホコリン、n−ドデシルホスホコリン、n−テトラデシルホスホコリン、n−ヘキサデシルホスホコリン、ジメチルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルベタインなどの低分子量の両性イオン界面活性剤、又は2−メタクロリルオキシホスホリルコイン(NPC)とn−ブチメタクリレート(BMA)とのコポリマーで構成されているような高分子量の両性イオン物質などを用いることができる。ナノカーボン、特にカーボンナノチューブの両性イオン分子による分散は、例えば国際公開特許公報WO2005/110594号パンフレットに開示されている技術を参照して行なうこともできる。
【0039】
また、リグニンスルホン酸塩は、亜硫酸法によるパルプ製造工程で木材中のリグニンから生成される、リグニン分解物の一部がスルホン化された化合物(リグノスルホン酸とも呼ばれる、CAS登録番号8062−15−5)の塩である。リグニンスルホン酸塩は陰イオン系界面活性剤となるので、例えば特開2005−263608号公報に開示された方法によってカーボンナノチューブの分散剤として利用することができる。
【0040】
本発明におけるナノカーボン分散物は、例えばナノカーボン1gに対して両性イオン物質を0.001〜0.01wt%、及びリグニンスルホン酸塩を0.001〜0.01gの量比でナノカーボンとともに分散媒体である水に加え、マグネティックスターラー、超音波処理、アトライター、ボールミル、サンドミル、ビーズミル等を用いて混合することによって調製することができる。なお、分散媒体は水以外の成分、例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の親水性溶媒を含んでもよい。
【0041】
本発明で利用するプルシアンブルーは、ヘキサシアノ鉄(II)塩化鉄(III)、フェロ
シアン化鉄(III)あるいはフェロシアン化鉄(II)とも呼ばれるシアノ錯体である。プ
ルシアンブルーは、ナトリウムイオンやマグネシウムイオンよりもセシウムイオンに対して数億倍高い結合定数を有し、セシウムイオンと錯体を形成することができる。本発明で使用可能なプルシアンブルーは、この様な性質を有するかぎり、錯体の特定の配位状態や配位数を持つシアノ錯体には限定されない。
【0042】
本発明における捕集剤1は、前記ナノカーボン分散物濃度が0.001〜10wt%及びプルシアンブルーの濃度が1.0mM〜0.5Mとなるように、且つ、分散前のナノカーボン1重量部に対してプルシアンブルーを0.1〜100重量部の比率で適当な媒体中、好ましくは水中で混合することで調製することができる。混合は特別な条件を必要とはせず、例えば混合物全量が10リットルのときは、15℃〜45℃で、3〜10分間の範囲で適宜調整すればよい。この様にして調製される捕集剤1は、プルシアンブルーとナノカーボンのコロイド溶液として表すこともできる。
【0043】
<捕集剤2>
本発明における捕集剤の別の態様は、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤2である。
【0044】
なお、プルシアンブルー及びアルギン酸を同時に充填した筒状珪藻土と前記2種の筒状珪藻土とを混合したものを、ナノカーボン分散物と混合してもよいし、大部分をプルシアンブルー及びアルギン酸を同時に充填した筒状珪藻土とし、残りを内部にプルシアンブルーが充填された筒状珪藻土又は内部にアルギン酸が充填された筒状珪藻土としてナノカーボン分散物とを混合してもよい。
【0045】
捕集剤2は、例えば図10、図11に示されるような内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸を同時に充填した筒状珪藻土(図12、図13参照)及び/又はプルシアンブルーとアルギン酸とを別々に充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とを混合することにより形成される(図14参照)。
【0046】
詳細には、例えばEagle-Picher Filtration & Minerals, Inc., U.S.A社から市販されている筒状珪藻土にFeCl3溶液を加えて混合、乾燥させた後、Na4Fe(CN)6溶液を加えて混合、乾燥を行なうことで、内部にプルシアンブルーが充填された筒状珪藻土を作製することができる。また、筒状珪藻土または内部にプルシアンブルーが充填された筒状珪藻土にアルギン酸溶液を加えて混合、乾燥させることで、内部にアルギン酸又はプルシアンブルーとアルギン酸とが充填された筒状珪藻土を作製することができる。こうして得られる内部にプルシアンブルー及び/又はアルギン酸が充填された筒状珪藻土とナノカーボン分散物とを混合、乾燥することにより、捕集剤2を調製することができる。
【0047】
筒状珪藻土とプルシアンブルーとの混合は、筒状珪藻土50g〜500gに対して、プルシアンブルー(FeCl3とNa4Fe(CN)6との反応によって形成されるものとしての)1.0mM〜0.5Mの100mL溶液を加える形で調整すればよい。また、上記の範囲における筒状珪藻土50g〜500gに対して加えるナノカーボン分散物は、0.01〜10重量%のCNT分散体1mL〜100mLの範囲で調整すればよい。
【0048】
捕集剤2の構成を確定的に限定するものではないが、筒状珪藻土の端部開口(一端のみが開口している場合を含む)はナノカーボン分散物によって蓋がされ、筒内部のプルシアンブルー/アルギン酸高分子の流出が抑制されて充填状態が維持される一方、筒状珪藻土の外周部にはナノサイズの微細孔が多数形成されていて、ナノカーボン分散物による蓋におけるチューブ間の隙間と筒状珪藻土の外周の微細孔が、水及び放射性物質が筒内部を通過するチャンネルとなっているものと想定される。
【0049】
<共凝集体の生成>
電解質とセシウムとを含む溶液、又はセシウム、ストロンチウムとヨウ素と電解質とを含む溶液は、典型的には放射性物質の冷却に用いられた後の放射能汚染海水である。また本発明では、電解質の存在下で共凝集物を形成させればよいが、かかる電解質は放射性物質を含む溶液中に予め含まれている電解質であっても、また放射性物質を含む溶液或いは放射性物質を含む溶液と捕集剤1及び/又は捕集剤2とが混合された溶液に別途添加される電解質であってもよい。例えば、放射性物質の冷却に純水その他の塩を含まない溶液が用いられた場合には、回収される放射能汚染水に適当量の電解質、例えば塩化ナトリウムやホウ酸等を添加することで、本発明の対象となる溶液とすることができる。本発明において溶液の電解質濃度は、天然の海水における塩濃度よりも高い範囲に、例えば溶液の重量%>3%でも使える。本発明は電解質を加えたりあるいは電解質を含まない水を加えたりして、溶液中の塩濃度を調節する工程を含んでいてもよい。
【0050】
本発明で用いられる捕集剤1は、セシウムなどの放射性物質を含む溶液と、容積比1:100〜1:10000で適当な容器(タンクや槽など)内で混合することで、溶液中のセシウムを捕捉してフロッグ状の共凝集物を形成させることができる。混合には特別の条件や手段を必要とはしないが、概ね15℃〜100℃、5分間〜1時間の範囲で適宜調整して混合すればよい。また必要に応じて攪拌を行なってもよい。
【0051】
なお、本発明はセシウムやヨウ素の除去に有効であるが、その他プルトニウムやストロンチウムなどを除去することもできる。
【0052】
捕集剤1及び/又は捕集剤2とセシウムとの共凝集物の分離は、沈降沈殿濾過による分離の他、バブルによる浮上、吸着、遠心分離又はそれらの組み合わせなどの凝集物を溶液から分離する方法によって行なうことができる。最終的に廃棄される放射能汚染物質の嵩や種類を低減するためには、沈降沈殿濾過による分離と共凝集体の廃棄が好ましい。
【0053】
廃棄された共凝集体は、放射性物質の粒子間に、ナノカーボンが介在するので、これら粒子が密着した場合よりも高温度になり難い。
【0054】
共凝集物を分離して得られる溶液は、共凝集形成前の状態からセシウム濃度が低減された溶液として回収される。本発明にいう物質を除去するとは、分離後の溶液中の物質濃度が検出限界以下となって、実質上物質が除去される場合のみならず、放射性物質の一部を除去して、共凝集物の分離前後あるいは捕集剤1及び/又は2を通した前後の溶液における物質濃度を低下させる場合も含む。
【0055】
また、本発明における捕集剤、特に捕集剤2は、ミクロンサイズの捕集剤が流出させない程度のフィルタを用いて両端を固定した筒状部材内への充填物として利用することができる。この捕集剤が充填された部材すなわち流通管は、これに放射能汚染水(海水)を流通させることにより、汚染水の放射性物質濃度を低減する、あるいは放射性物質を除去することを可能にするものである。
【0056】
<セシウム除去用ウレタン多孔質体1>
さらに本発明では、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体を用いて、共凝集物を分離した後の溶液に残存するセシウムを吸着して、溶液中のセシウム濃度をさらに低減する工程を含んでいてもよい。
【0057】
前記ウレタン多孔質体は、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土、活性炭ならびにウレタンモノポリマーを混合した後、ポリウレタンを公知の方法で発泡させることで作製することができる。例えば、フェロシアン化鉄(II)水溶液を活性炭又は珪藻土に含浸させ、更にFe(III)を加え、活性炭又は珪藻土を骨格としたプルシアンブルー:{FeIII(4)[FeIICN(6)]3}粒子を作成し、これをウレタンプレポリマーに添加、混合/発泡させて調製することができる。
【0058】
珪藻土及び活性炭はウレタンモノポリマーとの混合の前に予め粉砕処理をしておくことが好ましい。また、珪藻土、竹炭、ならびに本発明の捕集剤とウレタンモノポリマーは重量比で5〜50%で混合することが好ましい。
【0059】
なお、上記竹炭由来の活性炭は、特に優れているが、他の活性炭であっても良い。
【0060】
<セシウム除去用ウレタン多孔質体2>
さらに本発明では、捕集剤2すなわち内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体を用いて、セシウム及びストロンチウムを吸着して、溶液中のセシウム及びストロンチウム濃度をさらに低減するようにしてもよい。
【0061】
前記ウレタン多孔質体は、捕集剤2と活性炭ならびにウレタンモノポリマーを混合した後、ポリウレタンを公知の方法で発泡させることで作製することができる。
【0062】
竹炭及び本発明の捕集剤2とウレタンモノポリマーとは重量比で5〜50%で混合することが好ましい。
【0063】
なお、上記竹炭由来の活性炭は、特に優れているが、他の活性炭であっても良い。
【0064】
<ヨウ素除去とウレタン多孔質体>
本発明は、セシウム濃度を低減する工程と前後或いは並行して、本発明における捕集剤の利用だけでは濃度を低減させることが難しい溶液中のヨウ素濃度を低減させる工程を含んでいてもよい。この工程は、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物及び珪藻土を含むウレタン多孔質体にヨウ素を含む溶液を流通させることで行なうことができる。この行程は、共凝集によってセシウム濃度を低減させる前後いずれの溶液に対してもおこなうことができる。
【0065】
ヨウ素濃度を低減させるためのウレタン多孔質体は、両性イオン粒子、分散されたナノカーボン、珪藻土及びウレタンモノポリマーを混合した後、ポリウレタンを公知の方法で発泡させることで作製することができる。具体的には、珪藻土に四級アンモニウム塩基を持つ高分子ポリマーとスルホン酸感応基を持つ高分子ポリマーとを、イオン結合により、ナノカーボンと珪藻土を保護層として持つ両性イオン交換粒子を作成し、次に、ウレタンプレポリマーに両性イオン交換粒子を添加、混合/発泡させ、多孔質体系のポリウレタンを作成したものである。こうして得られるウレタン多孔質体は、ヨウ素に対して塩化物イオンや硫酸イオンよりも数千倍の結合定数を有し、ヨウ素と選択的に結合して擬似イオン対を形成する両性イオン物質を有する。又、ストロンチウムに対しても高い結合定数を有する。
【0066】
ここで用いられるナノカーボン分散物は先に説明したとおりのものである。珪藻土、両性イオン分子によって分散されたモノカーボン分散物及びウレタンモノポリマーは、重量比0.5〜50%で混合することが好ましい。
【0067】
前記の3種類のポリウレタン多孔質体は、いずれも適当な径の管、筒、棟などの液体が流通可能な適当な容器に充填して使用することが好ましい。
【0068】
<装置>
本発明はさらに、これまで説明した方法を実施するための装置、具体的には電解質と放射性物質、例えば放射性セシウムとを含む溶液、又は放射性セシウムと放射性ヨウ素と電解質とを含む溶液と、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤とを混合して、前記捕集剤と放射性セシウムとの共凝集体を形成させるための手段1)、及び前記共凝集体と放射性セシウム濃度が低減された溶液とを分離するための手段2)を備えた、放射能汚染水中の放射性物質を除去するための装置1)を提供する。
【0069】
また、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射性物質除去装置2)を提供する。
【0070】
更に、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤が充填された流通体を備えた放射性物質除去装置3)を提供する。
【0071】
更にまた、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含む、膨張・収縮自在のウレタン多孔質体または内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含む、膨張・収縮自在のウレタン多孔質体からなる擦り部材を有し、物体に付着していて水に濡れたセシウムを擦り取り、水とともに吸収し、且つ、水を搾り出すことができる放射性物質除去装置4)を提供する。
【0072】
<装置1)>
手段1)としては典型的には攪拌機及び液体を流通させる複数の配管を備えたタンクあるいは槽を、また手段2)としては典型例には共凝集物を濾過により分離する濾過装置を、それぞれ挙げることができる。この様な手段を備える本発明の装置及び装置に好適に含まれる要素の具体例を、放射能汚染された海水の処理に沿って図1〜図5に示す。
【0073】
図1〜図5に示される放射能汚染水中の放射性物質の除去装置(以下、処理装置と表す)10は、海水12を収容するタンク14と、このタンク14内の海水12中に本発明における捕集剤の添加装置16と、捕集剤が添加された海水12をタンク14から受け入れる沈殿槽18と、沈殿槽18の海水から沈殿物を濾過により分離する濾過装置20と、濾過装置20を通った海水から放射性セシウムを除去するためのセシウム除去水管22と、セシウム除去水管22を通った海水から放射性ヨウ素を除去するためのヨウ素除去水管24とを備えて構成されている。
【0074】
図1において、符号26は濾過装置20を通った海水をセシウム除去水管22に圧送するための第1ポンプ、28はセシウム除去水管22を通った海水をヨウ素除去水管24に圧送するための第2ポンプをそれぞれ示す。また、2点鎖線は、海水の電解質濃度を調節するための塩分添加装置30を示す。
【0075】
捕集剤の添加装置16は、容積比でタンク14内の海水100〜10000に対して捕集剤を1の割合で添加するように添加量を調整しながら運転される。
【0076】
沈殿槽18は、海水中の放射性セシウムと捕集剤と共凝集して沈殿を生じるようにするものである。
【0077】
濾過装置20は、沈殿槽18内における第1ポンプ26の吸入側端部に設けられたフィルタからなり、海水12が第1ポンプ26に吸い上げられる際に、沈殿物を海水から除去するものである。
【0078】
セシウム除去水管22は、図2に示されるように、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤1または捕集剤2、珪藻土ならびに竹炭を含むウレタン多孔質体22Bを管22A内に備えている。
【0079】
ヨウ素除去水管24は、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物及び珪藻土を含むウレタン多孔質体24Bを管24A内に備えたものである。なお、ヨウ素除去水管24は、ストロンチウムも除去するヨウ素/ストロンチウム除去水管にもなり得る。
【0080】
次に、上記処理装置10によって、放射能汚染海水から放射性物質を除去する過程について、図6を参照して説明する。
【0081】
ステップ101において調製された捕集剤は、ステップ102においてタンク14中の放射能汚染海水に添加装置16によって添加される。次いで、捕集剤が添加された海水はステップ103において沈殿槽18に移送される。沈殿槽18内において、図7に示される捕集剤となるナノカーボン分散物31は高濃度電解質を含む海水中で安定性を失い、図8に示されるように、放射性物質、特にセシウム137の粒子及びヨウ素粒子(ともに符号32で示す)を捕捉し、これと共凝集して、図9に示されるように、沈殿が生じる。また、沈殿を促進するためには、一般の凝集促進剤、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等を加えても良い。
【0082】
ステップ104において、沈殿槽18内の海水は第1ポンプ26によって濾過装置20を通じて吸い上げられてセシウム除去水管22に送られる際に、沈殿槽18内の沈殿物は濾過装置20によって濾過され、沈殿物を含まない海水のみがセシウム除去水管22に圧送される(ステップ105参照)。
【0083】
次のステップ106では、第1ポンプ26によって圧送された海水がセシウム除去水管22に送られ、セシウム除去水管22を通過する際に海水中のセシウム粒子が選択除去される。
【0084】
ステップ107において、セシウム粒子が除去された海水は、第2ポンプ28によってヨウ素除去水管24に圧送される。ヨウ素除去水管24においては、ヨウ素イオン認識物質が、ヨウ素と選択的に結合し、擬似イオン対を形成することによって、ヨウ素はヨウ素除去水管24内に選択的に除去されることになる(ステップ108参照)。
【0085】
ヨウ素が選択的に除去された海水は、次のステップ109において、残留放射性物質の量などを検査して一定値以下であれば、海に放水される。
【0086】
なお、上記タンク14と、添加装置16と、沈殿槽18とを、一つの処理手段としてもよい。この場合、捕集剤添加装置を備えたタンクが沈殿槽を兼ねるようにしてもよい。
【0087】
<装置2)及び装置3)>
図15に示される装置2)に係る放射性物質除去装置40は、管42と、この管42内に上端及び下端のフィルタ44A、44Bの間に保持された両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体とからなる流通管によって構成されている。装置3)はフィルタ44A、44Bの間に複合型多機能性粒子46を保持した流通管によって構成されている。
【0088】
この放射性物質除去装置40は、単独で用いてもよいし、装置1)におけるセシウム除去水管22の代わりに用いてもよい。
【0089】
<装置4)>
図16に示される放射性物質除去装置50は、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含む、膨張・収縮自在のウレタン多孔質体ならびに活性炭を含む、膨張・収縮自在ウレタン多孔質体を除染専用のスポンジとして用いるものであり、掃除などに用いる直方体のスポンジ状の擦り部材からなる。
【0090】
擦り部材は、複合型多機能性粒子を含み、膨張・収縮自在のウレタン多孔質体からなり、壁や床などの物体に付着していて、散布あるいは噴射された水に濡れたセシウムを擦り取り、水と共に吸収することができる。この場合、擦り部材を防水且つ防汚手袋によって作業者が手に持って物体に付着したセシウムを擦り取ることになる。
【0091】
この擦り部材を押せば、吸収した水を搾り出すことができる。この時、セシウムは、上記セシウム除去水管22の場合と同様に、ウレタン多孔質体により捕集されるので、搾り出された水にはセシウムは殆んど含まれていない。
【0092】
従って、壁や床に付着したセシウムを容易に擦り取って吸着することができる。又、搾り出された排水はセシウムを殆んど含まないので、いわゆる放射能汚染水を増加することはない。
【0093】
図17、図18に、この除染専用のスポンジの電子顕微鏡写真を示す。放射性物質を吸着する複合型多機能性粒子が程良くスポンジに固定化・保持され、吸着場として機能する様子が分かる。
【0094】
このような放射性物質除去装置50は、スポンジ状であるため、取扱が容易なことから、避難区域等の市民及び企業等に対して、自治体や配布することにより、建物・建築物の除染を効率的 に進めることができる。
【0095】
図19に示される放射性物質除去装置60は、前記と同様の擦り部材62と、この擦り部材62を先端にモップ状に取り付けた柄部材64とで構成されている。
【0096】
上記放射性物質除去装置60において、柄部材64を中空にして、図20に示されるように、外部に設けた吸引ポンプ66Aにより、擦り部材62の上面に負圧を印加して、擦り部材62に吸着された水を柄部材64を通ってタンク68に連続的に排出することができる。
【0097】
従って、放射性物質の除去作業を迅速に実行することができる。
【0098】
ここで、タンク68には、タンク68内の水を圧送するための圧送ポンプ66Bを設け、これをノズル70に送って、壁72や床74に付着したセシウムを濡らして、擦り部材62によって擦り取り易くすることができる。
【0099】
この場合、擦り部材62を通過してセシウムが吸着された後の水を、繰り返し用いることができるので、放射性物質除去作業に用いる水の量を少なくすることができる。
【0100】
なお、放射性物質除去装置は、ポンプ66A、66B、タンク68を用いることなく、擦り部材62と柄部材64とから構成してもよい。
【0101】
又、上記擦り部材62は、図において直方体形状であるが、これは立方体でも良く、又、円盤状あるいは楕円盤状などの種々の構成であっても良い。また擦り部材は、前記のポリウレタン多孔質体の他に、ナイロン製スポンジ、天然スポンジ、ポリビニルアルコールスポンジ等、スポンジ状の形状で本願発明における捕集剤粉末を保持できるものであれば、いずれも利用可能である。
【0102】
更に、セシウムを濡らす水は、真水のみならず海水等の、塩類を含むものであってもよい。
【実施例】
【0103】
<実施例1>
CNTを含む捕集剤を用いた方法
1)CNT捕集剤の調製
1リットルの蒸留水に、2gの3−(N,N’−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、10gのリグニンスルホン酸ナトリウムを加え、撹拌した後、50gのCNT粉末を加え、更に20分間撹拌した。ビーズミルを使い、60分間分散処理し、ナノカーボン分散液を得た。
【0104】
2)プルシアンブルー/ナノカーボン複合捕集剤の調製
ヘキサシアノ鉄(II)、塩化鉄(III)を上述のナノカーボン分散液に添加、濃度10
0mMのプルシアンブルーを含むプルシアンブルー/ナノカーボン複合捕集剤(コロイド)を作成した。
【0105】
3)プルシアンブルー/ナノカーボン/珪藻土複合捕集剤の調製
上述2)で作成したプルシアンブルー/ナノカーボン複合コロイド1000mLに、珪素土乾燥粉末100gを加えて、凍結乾燥し、プルシアンブルー/ナノカーボン/珪藻土複合捕集剤「粉末」を調製した。
【0106】
4)セシウムの除去
セシウムイオン2.0ppmを含む容積2リットルの人工海水(塩濃度約3wt%)に、容積比で1/1000の上記2)または3)で作成した捕集剤を添加して25℃で10分間連続撹拌した、沈殿槽18内で共凝集体を沈殿させた。濾過装置20によって沈殿物を濾過した後の海水中のセシウム濃度は検出限界以下であった。
【0107】
5)セシウム除去水管の作製
両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーと珪藻土を用いて調製した複合型捕集剤の粉末を50g、竹炭由来活性炭10g、トルエンジイソシアンネート100g、ポリオール80g、発泡剤、触媒、整泡剤各5mLと混合し、プラスチック管中で発泡し、セシウム除去水管22を用意した。濾過装置20を経たセシウムイオン100ppbを含む容積20リットルの人工海水(塩濃度約3wt%)をこのセシウム除去水管22に通水したところ、最終的に人工海水中のセシウムの約99.99%が除去された。
【0108】
6)ヨウ素とストロンチウム除去水管の作製
実施例では、ヨウ素に加えてストロンチウムも選択的に除去するヨウ素/ストロンチウム除去水管を作成した。
【0109】
高分子陽イオン性ポリマーとして日東紡績(株)製のダンシェード−185(商品名);ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・N−(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル)ジアリルアミン共重合物を、高分子陰イオン性ポリマーとしてアルギン酸高分子とを1M:1Mの割合で、5wt%ナノカーボンと2wt%珪藻土を含むコロイドに添加し、撹拌・凍結乾燥した後、100gの粉末を得た。この粉末50g、竹炭由来活性炭10g、トルエンジイソシアンネート100g、ポリオール80g、発泡剤、触媒、整泡剤5mLと混合し、プラスチック管中で発泡し、ヨウ素除去水管24を用意した。濾過装置20を経たヨウ化物イオン100ppbとストロンチウムイオン200ppbを含む容積20リットルの人工海水(塩濃度約3wt%)をこのヨウ素イオン/ストロンチウムイオン除去水管24に通水したところ、最終的に人工海水中のヨウ素イオンの99.7%が除去され、ストロンチウムイオンの98.6%が除去された。
【0110】
<実施例2>
1)プルシアンブルーが充填された筒状珪藻土の調製
筒状珪藻土(Eagle-Picher Filtration & Minerals, Inc., U.S.A社から購入、図10,図11)100gに 960mMのFeCl3溶液300mLを加え、25℃で30分間混合した後、80℃で通風乾燥を行なった。乾燥後の粉末250gに720mMのNa4Fe(CN)6溶液300mLを加え、25℃で5分間混合した後、80℃で通風乾燥を行なって、内部に プルシアンブルーが充填された筒状珪藻土Aを得た(図12、図13)。
【0111】
この筒状珪藻土A100gに実施例1の1)で調製したCNT分散液250mLを加え、さらに5分間混合後、80℃で通風乾燥を行なって、筒状珪藻土AにCNT分散物が付着した捕集剤を得た(図14)。
【0112】
上記の捕集剤100g、竹炭由来活性炭粉末10g、トルエンジイソシアンネート200g、ポリオール100g、発泡剤、触媒、製泡剤各5mLを混合し、プラスチック管中で発泡してスポンジ体を作製した。このスポンジ体の空隙の一部には前記捕集剤が組み込まれている。
【0113】
2)セシウム/ストロンチウム吸着用捕集剤の調製
筒状珪藻土(Eagle-Picher Filtration & Minerals, Inc., U.S.A社から購入)100gに3wt%アルギン酸ナトリウム水溶液300mLを加え、25℃で30分間混合した後、80℃で通風乾燥を行なった。乾燥後の粉末100gに10wt%塩化カルシウム水溶液1000mLをゆっくり加え、25℃で60分間混合した後、80℃で通風乾燥を行なって、内部にアルギン酸が充填された筒状珪藻土Bを得た。
【0114】
1)で調製した筒状珪藻土Aと上記筒状珪藻土Bそれぞれ100gを混合後、実施例1の1)で調製したCNT分散液500mLを加え、さらに5分間混合後、80℃で通風乾燥を行なって、セシウム/ストロンチウム吸着用の捕集剤(粉末)を得た。
【0115】
3)セシウム/ストロンチウム吸着用捕集剤を担持したスポンジ体の調製
2)で調製したセシウム/ストロンチウム吸着用捕集剤100g、竹炭由来活性炭10g、トルエンジイソシアンネート200g、ポリオール100g、発泡剤、触媒、製泡剤各5mLを混 合し、プラスチック管中で発泡してスポンジ体を作製した。このスポンジ体の空隙の一部には、前記セシウム/ストロンチウム吸着用捕集剤が組み込まれている。
【0116】
この放射性物質除去装置50によって床に付着したセシウムを擦り取って水と共に吸収し、且つ、これを搾って水を排出したところ、排出水の中のセシウムが、99.99%が除去された状態であった。セシウム除去率は、セシウム量/吸着剤の割合で変動するが、1.5wt%のプルシアンブルーを含むウレタン多孔質体1グラムは、2.87mgのセシウムを吸着することを、再現性の良い実験結果で確認していて、プルシアンブルーの添加量を増やせば、99.99%を越える除去率を得られると予想する。又、条件や、測定装置によっても変化するが、少なくとも95%を除去できることを確認できた。アルギン酸高分子の存在により、ストロンチウムも吸着して、95%以上の除去率を確認することができた。
【0117】
更にセシウム除去用ウレタン多孔質体2)に代えてセシウム除去用ウレタン多孔質体1)によりセシウム除去水管を構成した場合でも、セシウムについては同様の除去効果を確認できた。なお、セシウム除去用ウレタン多孔質体1)について、ナノカーボンを用いない場合は、セシウム除去率が約10%低下することが確認された。
【符号の説明】
【0118】
10、40、50、60…放射性物質の除去装置
12…海水
14…タンク
16…添加装置
18…沈殿槽
20…濾過装置
22…セシウム除去水管
22A…管
22B…ウレタン多孔質体
24…ヨウ素除去水管
24A…管
24B…ウレタン多孔質体
26…第1ポンプ
28…第2ポンプ
30…塩分添加装置
31…ナノカーボン分散物
32…放射性物質の粒子
44A、44B…フィルタ
46…複合型多機能性粒子
62…擦り部材
64…柄部材
66A、66B…ポンプ
68…タンク
70…ノズル
72…壁
74…床
【技術分野】
【0001】
この発明は、セシウム、ヨウ素あるいはストロンチウムなど、特に人工放射性核種のセシウム137、ヨウ素131、ストロンチウム90などの放射性物質によって汚染された汚染水中の前記物質、特に放射能汚染海水中の放射性物質を除去する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セシウム、ヨウ素あるいはストロンチウムなど、特にセシウム137、ヨウ素131やストロンチウム90などの放射性物質によって汚染された水を浄化する手段として、例えばこれら人工放射性核種の粒子を取り込むように設計されたゼオライトを用いる技術(特許文献1参照)、セラミクスや薄膜フィルタ、逆浸透膜などの各種フィルタを用いる技術が提案されている。また、ゼオライトよりもセシウムに対して高い結合力及び選択性を有するプルシアンブルー及びその類似化合物を用いたり、ストロンチウムに対して高い結合力及び選択性を示すアルギン酸のような高分子多糖類誘導体からなるハイドロゲルを用いることも考えられる。
【0003】
しかしながら、これらのゼオライトやフィルタを用いる方法は、大量の放射能汚染水を処理する場合に、目詰まりしたゼオライトや高温で劣化したフィルタを頻繁に交換しなければならず、コスト高になってしまい、又、交換すべきフィルタには高濃度の放射性物質(粒子)が付着しているので交換作業は容易でないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−526110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大量の放射能汚染水を低コストで迅速に処理して、汚染水中の放射性物質を除去したり、壁や床に付着した放射性物質を、大量の汚染水を発生することなく除去する方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、ナノカーボン分散物とプルシアンブルーとを含む捕集剤を用いることによって、汚染水中のセシウムを捕集した後捕集剤と共凝集させることができること、更に、壁や床に付着したセシウムを吸着して除去できることを見いだした。更に又、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤により、セシウムやストロンチウムを吸着保持できることを見出し、以下の各発明を完成した。
【0007】
(1)放射能汚染水中の放射性物質を除去する方法であって、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤と前記放射能汚染水とを容積比1:100〜1:10000で混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させる工程Aと、前記共凝集体を分離して前記放射能汚染水の放射性物質の濃度を低減した共凝集体分離水を得る工程Bと、を含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0008】
(2)前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Bによって得られる共凝集体分離水を1回または複数回流通させてセシウム濃度を低減させたセシウム低減水を得る工程Cを含む、(1)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0009】
(3)前記捕集剤が、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤である、(1)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0010】
(4)前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる前記捕集剤ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Bによって得られる共凝集体分離水を1回または複数回流通させてセシウム濃度を低減させたセシウム低減水を得る工程Hを含む、(3)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0011】
(5)前記放射性物質は少なくともヨウ素を含み、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物と珪藻土とを含むウレタン多孔質体に前記共凝集体分離水を1回又は複数回流通させてヨウ素濃度を低減させたヨウ素低減水を得る工程Dを含む、(1)又は(3)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0012】
(6)前記放射性物質は少なくともヨウ素を含み、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物と珪藻土とを含むウレタン多孔質体に前記セシウム低減水を1回又は複数回流通させてヨウ素濃度を低減させたセシウム・ヨウ素低減水を得る工程Eを含む、(2)又は(4)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0013】
(7)前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Dによって得られるヨウ素低減水を1回または複数回流通させてセシウム濃度をさらに低減させて、ヨウ素・セシウム低減水を得る工程Fを含む、(5)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0014】
(8)前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Dによって得られるヨウ素低減水を1回または複数回流通させてセシウム濃度をさらに低減させて、ヨウ素・セシウム低減水を得る工程Fを含む、(5)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【0015】
(9)物体に付着したセシウムを除去する方法であって、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体を、前記物体に擦り付けて、前記水で濡れたセシウムを水とともに前記ウレタン多孔質体に吸収する工程と、前記ウレタン多孔質体から、前記複合型多機能性粒子に吸着されたセシウムを残して、水を搾り出す工程とを含む、放射性物質の除去方法。
【0016】
(10)物体に付着したセシウムを除去する方法であって、前記セシウムを水で濡らす工程と、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体を、前記物体に擦り付けて、前記水で濡れたセシウムを水とともに前記ウレタン多孔質体に吸収する工程と、前記ウレタン多孔質体から、前記複合型多機能性粒子に吸着されたセシウムを残して、水を搾り出す工程とを含む、放射性物質の除去方法。
【0017】
(11)前記ウレタン多孔質体から搾り出した水により、前記物体に付着したセシウムを濡らす工程を含む、(9)又は(10)に記載の放射性物質の除去方法。
【0018】
(12)内側空間に、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0019】
(13)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0020】
(14)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を備えた流通体を有する放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0021】
(15)放射性物質を含む溶液と、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物及びプルシアンブルーからなる捕集剤とを混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させるための手段、及び、前記共凝集体と放射性物質濃度が低減された溶液とを分離するための分離手段を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0022】
(16)前記共凝集体と放射性物質濃度が低減された溶液とを分離する手段が共凝集体の濾過装置である(15)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0023】
(17)両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた(15)又は(16)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0024】
(18)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を備えた流通体を有する(15)又は(16)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0025】
(19)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた(15)又は(16)に記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0026】
(20)両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物及び珪藻土を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を設けた(15)乃至(19)のいずれかに記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0027】
(21)放射性物質を含む溶液及び/又は放射性物質を含む溶液と前記捕集剤とが混合された溶液にさらに電解質を添加する手段を備えた(15)乃至(20)のいずれかに記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0028】
(22)放射性物質を含む溶液を収容するためのタンクと、このタンク内の溶液に、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤を、電解質の存在下で、容積比1:100〜1:10000で添加する捕集剤添加装置と、前記添加された捕集剤と前記放射性物質との共凝集体を分離する濾過装置と、を有してなる(15)乃至(21)のいずれかに記載の放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【0029】
(23)内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含み、膨張・縮小自在のウレタン多孔質体からなる擦り部材を有し、物体に付着していて水に濡れたセシウムを擦り取り、水とともに吸収し、且つ、水を搾り出すことができる放射性物質の除去装置。
【0030】
(24)前記擦り部材をモップ状に柄部材の先端に取付けてなる(23)に記載の放射性物質の除去装置。
【0031】
(25)前記柄は、前記多孔質体が吸収した水を吸入して、排出する排出管を備えた(24)に記載の放射性物質の除去装置。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、セシウム、ストロンチウムやヨウ素、特に放射性セシウムや放射性ヨウ素によって汚染された水中のセシウムやヨウ素を分離が容易な共凝集体として約90%以上、さらには98%以上を取り除くことができ、更に、セシウム除去水管により、合計で汚染水中のセシウムの約95%以上、さらには99.99%以上を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係る装置を示すブロック図
【図2】セシウム除去のためのセシウム除去水管を示す斜視図
【図3】セシウム除去水管において、ウレタンプレポリマーに捕集剤を充填した珪藻土と活性炭粒子を添加・混合・発泡させて形成されたウレタン多孔質体を拡大して示す顕微鏡写真
【図4】ヨウ素イオン除去のためのヨウ素除去水管を示す斜視図
【図5】ヨウ素除去水管において、ウレタンプレポリマーに両性イオン粒子/ナノカーボン/珪藻土を添加・混合・発泡させて形成されたウレタン多孔質体を拡大して示す顕微鏡写真
【図6】本発明の実施例に係る放射能汚染水中の放射性物質の除去装置において、放射能汚染水から放射性物質を除去する過程を示すフローチャート
【図7】放射能汚染海水に捕集剤を添加・混合した状態を拡大して示す模式図
【図8】捕集剤が凝集する際に、セシウム粒子とヨウ素粒子を捕集する様子を示す模式図
【図9】捕集剤とセシウムとの共凝集体が自己沈殿を生じた様子を示す模式図
【図10】本発明の複合型多機能性粒子に用いる筒状珪藻土を示す電子顕微鏡写真
【図11】同複数の筒状珪藻土を示す電子顕微鏡写真
【図12】筒状珪藻土中にプルシアンブルー及びアルギン酸を合成・充填した後の状態を示す電子顕微鏡写真
【図13】同様の電子顕微鏡写真
【図14】プルシアンブルー及びアルギン酸を充填した筒状珪藻土をカーボンナノチューブネットワークで蓋をして形成した複合型多機能性粒子を示す電子顕微鏡写真
【図15】本発明の装置2)又は装置3)を模式的に示す断面図
【図16】壁や床に付着したセシウムの除去装置の実施例に係るウレタン多孔質体を示す斜視図
【図17】除染専用のスポンジを示す電子顕微鏡写真
【図18】同様の電子顕微鏡写真
【図19】壁や床に付着したセシウムの除去装置の他の実施例を示す斜視図
【図20】同除去装置により放射性汚染物質を除去する作業を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤を利用して、汚染水中の放射性物質の、特にセシウムを除去する方法及び装置に関する。他の発明は、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体を用いて、放射性物質を吸着する方法及び装置に関する。更に他の発明は、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を利用して、汚染水中のセシウムやストロンチウムを除去する方法及び装置に関する。更に又、他の発明は、壁や床等に付着した放射性セシウム、放射性ヨウ素、放射性ストロンチウムなどを除去する方法及び装置に関する。
【0035】
<捕集剤1>
本発明における捕集剤の一態様は、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤1である。
【0036】
本発明における捕集剤1に含まれるナノカーボン分散物とは、1分子中にプラス電荷とマイナス電荷を同時に有する両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩を分散剤として用いて、ナノカーボン凝集体を孤立分散処理したものである。
【0037】
本発明で利用可能なナノカーボンは、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンブラック、活性炭又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0038】
ナノカーボンを分散するための両性イオン分子としては、前記ナノカーボンを単分子状態で分散し得ることができるものであれば特に限定されないが、例えば、3−(N,N’−ジメチルステアリルアンモニオ)プロパンスルホネート、3−(N,N’−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシプロパンスルホネート、n−ドデシル−N,N’−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、n−ヘキサデシル−N,N’−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、n−オクチルホスホコリン、n−ドデシルホスホコリン、n−テトラデシルホスホコリン、n−ヘキサデシルホスホコリン、ジメチルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルベタインなどの低分子量の両性イオン界面活性剤、又は2−メタクロリルオキシホスホリルコイン(NPC)とn−ブチメタクリレート(BMA)とのコポリマーで構成されているような高分子量の両性イオン物質などを用いることができる。ナノカーボン、特にカーボンナノチューブの両性イオン分子による分散は、例えば国際公開特許公報WO2005/110594号パンフレットに開示されている技術を参照して行なうこともできる。
【0039】
また、リグニンスルホン酸塩は、亜硫酸法によるパルプ製造工程で木材中のリグニンから生成される、リグニン分解物の一部がスルホン化された化合物(リグノスルホン酸とも呼ばれる、CAS登録番号8062−15−5)の塩である。リグニンスルホン酸塩は陰イオン系界面活性剤となるので、例えば特開2005−263608号公報に開示された方法によってカーボンナノチューブの分散剤として利用することができる。
【0040】
本発明におけるナノカーボン分散物は、例えばナノカーボン1gに対して両性イオン物質を0.001〜0.01wt%、及びリグニンスルホン酸塩を0.001〜0.01gの量比でナノカーボンとともに分散媒体である水に加え、マグネティックスターラー、超音波処理、アトライター、ボールミル、サンドミル、ビーズミル等を用いて混合することによって調製することができる。なお、分散媒体は水以外の成分、例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の親水性溶媒を含んでもよい。
【0041】
本発明で利用するプルシアンブルーは、ヘキサシアノ鉄(II)塩化鉄(III)、フェロ
シアン化鉄(III)あるいはフェロシアン化鉄(II)とも呼ばれるシアノ錯体である。プ
ルシアンブルーは、ナトリウムイオンやマグネシウムイオンよりもセシウムイオンに対して数億倍高い結合定数を有し、セシウムイオンと錯体を形成することができる。本発明で使用可能なプルシアンブルーは、この様な性質を有するかぎり、錯体の特定の配位状態や配位数を持つシアノ錯体には限定されない。
【0042】
本発明における捕集剤1は、前記ナノカーボン分散物濃度が0.001〜10wt%及びプルシアンブルーの濃度が1.0mM〜0.5Mとなるように、且つ、分散前のナノカーボン1重量部に対してプルシアンブルーを0.1〜100重量部の比率で適当な媒体中、好ましくは水中で混合することで調製することができる。混合は特別な条件を必要とはせず、例えば混合物全量が10リットルのときは、15℃〜45℃で、3〜10分間の範囲で適宜調整すればよい。この様にして調製される捕集剤1は、プルシアンブルーとナノカーボンのコロイド溶液として表すこともできる。
【0043】
<捕集剤2>
本発明における捕集剤の別の態様は、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤2である。
【0044】
なお、プルシアンブルー及びアルギン酸を同時に充填した筒状珪藻土と前記2種の筒状珪藻土とを混合したものを、ナノカーボン分散物と混合してもよいし、大部分をプルシアンブルー及びアルギン酸を同時に充填した筒状珪藻土とし、残りを内部にプルシアンブルーが充填された筒状珪藻土又は内部にアルギン酸が充填された筒状珪藻土としてナノカーボン分散物とを混合してもよい。
【0045】
捕集剤2は、例えば図10、図11に示されるような内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸を同時に充填した筒状珪藻土(図12、図13参照)及び/又はプルシアンブルーとアルギン酸とを別々に充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とを混合することにより形成される(図14参照)。
【0046】
詳細には、例えばEagle-Picher Filtration & Minerals, Inc., U.S.A社から市販されている筒状珪藻土にFeCl3溶液を加えて混合、乾燥させた後、Na4Fe(CN)6溶液を加えて混合、乾燥を行なうことで、内部にプルシアンブルーが充填された筒状珪藻土を作製することができる。また、筒状珪藻土または内部にプルシアンブルーが充填された筒状珪藻土にアルギン酸溶液を加えて混合、乾燥させることで、内部にアルギン酸又はプルシアンブルーとアルギン酸とが充填された筒状珪藻土を作製することができる。こうして得られる内部にプルシアンブルー及び/又はアルギン酸が充填された筒状珪藻土とナノカーボン分散物とを混合、乾燥することにより、捕集剤2を調製することができる。
【0047】
筒状珪藻土とプルシアンブルーとの混合は、筒状珪藻土50g〜500gに対して、プルシアンブルー(FeCl3とNa4Fe(CN)6との反応によって形成されるものとしての)1.0mM〜0.5Mの100mL溶液を加える形で調整すればよい。また、上記の範囲における筒状珪藻土50g〜500gに対して加えるナノカーボン分散物は、0.01〜10重量%のCNT分散体1mL〜100mLの範囲で調整すればよい。
【0048】
捕集剤2の構成を確定的に限定するものではないが、筒状珪藻土の端部開口(一端のみが開口している場合を含む)はナノカーボン分散物によって蓋がされ、筒内部のプルシアンブルー/アルギン酸高分子の流出が抑制されて充填状態が維持される一方、筒状珪藻土の外周部にはナノサイズの微細孔が多数形成されていて、ナノカーボン分散物による蓋におけるチューブ間の隙間と筒状珪藻土の外周の微細孔が、水及び放射性物質が筒内部を通過するチャンネルとなっているものと想定される。
【0049】
<共凝集体の生成>
電解質とセシウムとを含む溶液、又はセシウム、ストロンチウムとヨウ素と電解質とを含む溶液は、典型的には放射性物質の冷却に用いられた後の放射能汚染海水である。また本発明では、電解質の存在下で共凝集物を形成させればよいが、かかる電解質は放射性物質を含む溶液中に予め含まれている電解質であっても、また放射性物質を含む溶液或いは放射性物質を含む溶液と捕集剤1及び/又は捕集剤2とが混合された溶液に別途添加される電解質であってもよい。例えば、放射性物質の冷却に純水その他の塩を含まない溶液が用いられた場合には、回収される放射能汚染水に適当量の電解質、例えば塩化ナトリウムやホウ酸等を添加することで、本発明の対象となる溶液とすることができる。本発明において溶液の電解質濃度は、天然の海水における塩濃度よりも高い範囲に、例えば溶液の重量%>3%でも使える。本発明は電解質を加えたりあるいは電解質を含まない水を加えたりして、溶液中の塩濃度を調節する工程を含んでいてもよい。
【0050】
本発明で用いられる捕集剤1は、セシウムなどの放射性物質を含む溶液と、容積比1:100〜1:10000で適当な容器(タンクや槽など)内で混合することで、溶液中のセシウムを捕捉してフロッグ状の共凝集物を形成させることができる。混合には特別の条件や手段を必要とはしないが、概ね15℃〜100℃、5分間〜1時間の範囲で適宜調整して混合すればよい。また必要に応じて攪拌を行なってもよい。
【0051】
なお、本発明はセシウムやヨウ素の除去に有効であるが、その他プルトニウムやストロンチウムなどを除去することもできる。
【0052】
捕集剤1及び/又は捕集剤2とセシウムとの共凝集物の分離は、沈降沈殿濾過による分離の他、バブルによる浮上、吸着、遠心分離又はそれらの組み合わせなどの凝集物を溶液から分離する方法によって行なうことができる。最終的に廃棄される放射能汚染物質の嵩や種類を低減するためには、沈降沈殿濾過による分離と共凝集体の廃棄が好ましい。
【0053】
廃棄された共凝集体は、放射性物質の粒子間に、ナノカーボンが介在するので、これら粒子が密着した場合よりも高温度になり難い。
【0054】
共凝集物を分離して得られる溶液は、共凝集形成前の状態からセシウム濃度が低減された溶液として回収される。本発明にいう物質を除去するとは、分離後の溶液中の物質濃度が検出限界以下となって、実質上物質が除去される場合のみならず、放射性物質の一部を除去して、共凝集物の分離前後あるいは捕集剤1及び/又は2を通した前後の溶液における物質濃度を低下させる場合も含む。
【0055】
また、本発明における捕集剤、特に捕集剤2は、ミクロンサイズの捕集剤が流出させない程度のフィルタを用いて両端を固定した筒状部材内への充填物として利用することができる。この捕集剤が充填された部材すなわち流通管は、これに放射能汚染水(海水)を流通させることにより、汚染水の放射性物質濃度を低減する、あるいは放射性物質を除去することを可能にするものである。
【0056】
<セシウム除去用ウレタン多孔質体1>
さらに本発明では、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体を用いて、共凝集物を分離した後の溶液に残存するセシウムを吸着して、溶液中のセシウム濃度をさらに低減する工程を含んでいてもよい。
【0057】
前記ウレタン多孔質体は、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土、活性炭ならびにウレタンモノポリマーを混合した後、ポリウレタンを公知の方法で発泡させることで作製することができる。例えば、フェロシアン化鉄(II)水溶液を活性炭又は珪藻土に含浸させ、更にFe(III)を加え、活性炭又は珪藻土を骨格としたプルシアンブルー:{FeIII(4)[FeIICN(6)]3}粒子を作成し、これをウレタンプレポリマーに添加、混合/発泡させて調製することができる。
【0058】
珪藻土及び活性炭はウレタンモノポリマーとの混合の前に予め粉砕処理をしておくことが好ましい。また、珪藻土、竹炭、ならびに本発明の捕集剤とウレタンモノポリマーは重量比で5〜50%で混合することが好ましい。
【0059】
なお、上記竹炭由来の活性炭は、特に優れているが、他の活性炭であっても良い。
【0060】
<セシウム除去用ウレタン多孔質体2>
さらに本発明では、捕集剤2すなわち内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに例えば竹を炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体を用いて、セシウム及びストロンチウムを吸着して、溶液中のセシウム及びストロンチウム濃度をさらに低減するようにしてもよい。
【0061】
前記ウレタン多孔質体は、捕集剤2と活性炭ならびにウレタンモノポリマーを混合した後、ポリウレタンを公知の方法で発泡させることで作製することができる。
【0062】
竹炭及び本発明の捕集剤2とウレタンモノポリマーとは重量比で5〜50%で混合することが好ましい。
【0063】
なお、上記竹炭由来の活性炭は、特に優れているが、他の活性炭であっても良い。
【0064】
<ヨウ素除去とウレタン多孔質体>
本発明は、セシウム濃度を低減する工程と前後或いは並行して、本発明における捕集剤の利用だけでは濃度を低減させることが難しい溶液中のヨウ素濃度を低減させる工程を含んでいてもよい。この工程は、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物及び珪藻土を含むウレタン多孔質体にヨウ素を含む溶液を流通させることで行なうことができる。この行程は、共凝集によってセシウム濃度を低減させる前後いずれの溶液に対してもおこなうことができる。
【0065】
ヨウ素濃度を低減させるためのウレタン多孔質体は、両性イオン粒子、分散されたナノカーボン、珪藻土及びウレタンモノポリマーを混合した後、ポリウレタンを公知の方法で発泡させることで作製することができる。具体的には、珪藻土に四級アンモニウム塩基を持つ高分子ポリマーとスルホン酸感応基を持つ高分子ポリマーとを、イオン結合により、ナノカーボンと珪藻土を保護層として持つ両性イオン交換粒子を作成し、次に、ウレタンプレポリマーに両性イオン交換粒子を添加、混合/発泡させ、多孔質体系のポリウレタンを作成したものである。こうして得られるウレタン多孔質体は、ヨウ素に対して塩化物イオンや硫酸イオンよりも数千倍の結合定数を有し、ヨウ素と選択的に結合して擬似イオン対を形成する両性イオン物質を有する。又、ストロンチウムに対しても高い結合定数を有する。
【0066】
ここで用いられるナノカーボン分散物は先に説明したとおりのものである。珪藻土、両性イオン分子によって分散されたモノカーボン分散物及びウレタンモノポリマーは、重量比0.5〜50%で混合することが好ましい。
【0067】
前記の3種類のポリウレタン多孔質体は、いずれも適当な径の管、筒、棟などの液体が流通可能な適当な容器に充填して使用することが好ましい。
【0068】
<装置>
本発明はさらに、これまで説明した方法を実施するための装置、具体的には電解質と放射性物質、例えば放射性セシウムとを含む溶液、又は放射性セシウムと放射性ヨウ素と電解質とを含む溶液と、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤とを混合して、前記捕集剤と放射性セシウムとの共凝集体を形成させるための手段1)、及び前記共凝集体と放射性セシウム濃度が低減された溶液とを分離するための手段2)を備えた、放射能汚染水中の放射性物質を除去するための装置1)を提供する。
【0069】
また、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射性物質除去装置2)を提供する。
【0070】
更に、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤が充填された流通体を備えた放射性物質除去装置3)を提供する。
【0071】
更にまた、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含む、膨張・収縮自在のウレタン多孔質体または内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含む、膨張・収縮自在のウレタン多孔質体からなる擦り部材を有し、物体に付着していて水に濡れたセシウムを擦り取り、水とともに吸収し、且つ、水を搾り出すことができる放射性物質除去装置4)を提供する。
【0072】
<装置1)>
手段1)としては典型的には攪拌機及び液体を流通させる複数の配管を備えたタンクあるいは槽を、また手段2)としては典型例には共凝集物を濾過により分離する濾過装置を、それぞれ挙げることができる。この様な手段を備える本発明の装置及び装置に好適に含まれる要素の具体例を、放射能汚染された海水の処理に沿って図1〜図5に示す。
【0073】
図1〜図5に示される放射能汚染水中の放射性物質の除去装置(以下、処理装置と表す)10は、海水12を収容するタンク14と、このタンク14内の海水12中に本発明における捕集剤の添加装置16と、捕集剤が添加された海水12をタンク14から受け入れる沈殿槽18と、沈殿槽18の海水から沈殿物を濾過により分離する濾過装置20と、濾過装置20を通った海水から放射性セシウムを除去するためのセシウム除去水管22と、セシウム除去水管22を通った海水から放射性ヨウ素を除去するためのヨウ素除去水管24とを備えて構成されている。
【0074】
図1において、符号26は濾過装置20を通った海水をセシウム除去水管22に圧送するための第1ポンプ、28はセシウム除去水管22を通った海水をヨウ素除去水管24に圧送するための第2ポンプをそれぞれ示す。また、2点鎖線は、海水の電解質濃度を調節するための塩分添加装置30を示す。
【0075】
捕集剤の添加装置16は、容積比でタンク14内の海水100〜10000に対して捕集剤を1の割合で添加するように添加量を調整しながら運転される。
【0076】
沈殿槽18は、海水中の放射性セシウムと捕集剤と共凝集して沈殿を生じるようにするものである。
【0077】
濾過装置20は、沈殿槽18内における第1ポンプ26の吸入側端部に設けられたフィルタからなり、海水12が第1ポンプ26に吸い上げられる際に、沈殿物を海水から除去するものである。
【0078】
セシウム除去水管22は、図2に示されるように、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤1または捕集剤2、珪藻土ならびに竹炭を含むウレタン多孔質体22Bを管22A内に備えている。
【0079】
ヨウ素除去水管24は、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物及び珪藻土を含むウレタン多孔質体24Bを管24A内に備えたものである。なお、ヨウ素除去水管24は、ストロンチウムも除去するヨウ素/ストロンチウム除去水管にもなり得る。
【0080】
次に、上記処理装置10によって、放射能汚染海水から放射性物質を除去する過程について、図6を参照して説明する。
【0081】
ステップ101において調製された捕集剤は、ステップ102においてタンク14中の放射能汚染海水に添加装置16によって添加される。次いで、捕集剤が添加された海水はステップ103において沈殿槽18に移送される。沈殿槽18内において、図7に示される捕集剤となるナノカーボン分散物31は高濃度電解質を含む海水中で安定性を失い、図8に示されるように、放射性物質、特にセシウム137の粒子及びヨウ素粒子(ともに符号32で示す)を捕捉し、これと共凝集して、図9に示されるように、沈殿が生じる。また、沈殿を促進するためには、一般の凝集促進剤、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等を加えても良い。
【0082】
ステップ104において、沈殿槽18内の海水は第1ポンプ26によって濾過装置20を通じて吸い上げられてセシウム除去水管22に送られる際に、沈殿槽18内の沈殿物は濾過装置20によって濾過され、沈殿物を含まない海水のみがセシウム除去水管22に圧送される(ステップ105参照)。
【0083】
次のステップ106では、第1ポンプ26によって圧送された海水がセシウム除去水管22に送られ、セシウム除去水管22を通過する際に海水中のセシウム粒子が選択除去される。
【0084】
ステップ107において、セシウム粒子が除去された海水は、第2ポンプ28によってヨウ素除去水管24に圧送される。ヨウ素除去水管24においては、ヨウ素イオン認識物質が、ヨウ素と選択的に結合し、擬似イオン対を形成することによって、ヨウ素はヨウ素除去水管24内に選択的に除去されることになる(ステップ108参照)。
【0085】
ヨウ素が選択的に除去された海水は、次のステップ109において、残留放射性物質の量などを検査して一定値以下であれば、海に放水される。
【0086】
なお、上記タンク14と、添加装置16と、沈殿槽18とを、一つの処理手段としてもよい。この場合、捕集剤添加装置を備えたタンクが沈殿槽を兼ねるようにしてもよい。
【0087】
<装置2)及び装置3)>
図15に示される装置2)に係る放射性物質除去装置40は、管42と、この管42内に上端及び下端のフィルタ44A、44Bの間に保持された両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体とからなる流通管によって構成されている。装置3)はフィルタ44A、44Bの間に複合型多機能性粒子46を保持した流通管によって構成されている。
【0088】
この放射性物質除去装置40は、単独で用いてもよいし、装置1)におけるセシウム除去水管22の代わりに用いてもよい。
【0089】
<装置4)>
図16に示される放射性物質除去装置50は、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土及び/又は内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含む、膨張・収縮自在のウレタン多孔質体ならびに活性炭を含む、膨張・収縮自在ウレタン多孔質体を除染専用のスポンジとして用いるものであり、掃除などに用いる直方体のスポンジ状の擦り部材からなる。
【0090】
擦り部材は、複合型多機能性粒子を含み、膨張・収縮自在のウレタン多孔質体からなり、壁や床などの物体に付着していて、散布あるいは噴射された水に濡れたセシウムを擦り取り、水と共に吸収することができる。この場合、擦り部材を防水且つ防汚手袋によって作業者が手に持って物体に付着したセシウムを擦り取ることになる。
【0091】
この擦り部材を押せば、吸収した水を搾り出すことができる。この時、セシウムは、上記セシウム除去水管22の場合と同様に、ウレタン多孔質体により捕集されるので、搾り出された水にはセシウムは殆んど含まれていない。
【0092】
従って、壁や床に付着したセシウムを容易に擦り取って吸着することができる。又、搾り出された排水はセシウムを殆んど含まないので、いわゆる放射能汚染水を増加することはない。
【0093】
図17、図18に、この除染専用のスポンジの電子顕微鏡写真を示す。放射性物質を吸着する複合型多機能性粒子が程良くスポンジに固定化・保持され、吸着場として機能する様子が分かる。
【0094】
このような放射性物質除去装置50は、スポンジ状であるため、取扱が容易なことから、避難区域等の市民及び企業等に対して、自治体や配布することにより、建物・建築物の除染を効率的 に進めることができる。
【0095】
図19に示される放射性物質除去装置60は、前記と同様の擦り部材62と、この擦り部材62を先端にモップ状に取り付けた柄部材64とで構成されている。
【0096】
上記放射性物質除去装置60において、柄部材64を中空にして、図20に示されるように、外部に設けた吸引ポンプ66Aにより、擦り部材62の上面に負圧を印加して、擦り部材62に吸着された水を柄部材64を通ってタンク68に連続的に排出することができる。
【0097】
従って、放射性物質の除去作業を迅速に実行することができる。
【0098】
ここで、タンク68には、タンク68内の水を圧送するための圧送ポンプ66Bを設け、これをノズル70に送って、壁72や床74に付着したセシウムを濡らして、擦り部材62によって擦り取り易くすることができる。
【0099】
この場合、擦り部材62を通過してセシウムが吸着された後の水を、繰り返し用いることができるので、放射性物質除去作業に用いる水の量を少なくすることができる。
【0100】
なお、放射性物質除去装置は、ポンプ66A、66B、タンク68を用いることなく、擦り部材62と柄部材64とから構成してもよい。
【0101】
又、上記擦り部材62は、図において直方体形状であるが、これは立方体でも良く、又、円盤状あるいは楕円盤状などの種々の構成であっても良い。また擦り部材は、前記のポリウレタン多孔質体の他に、ナイロン製スポンジ、天然スポンジ、ポリビニルアルコールスポンジ等、スポンジ状の形状で本願発明における捕集剤粉末を保持できるものであれば、いずれも利用可能である。
【0102】
更に、セシウムを濡らす水は、真水のみならず海水等の、塩類を含むものであってもよい。
【実施例】
【0103】
<実施例1>
CNTを含む捕集剤を用いた方法
1)CNT捕集剤の調製
1リットルの蒸留水に、2gの3−(N,N’−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、10gのリグニンスルホン酸ナトリウムを加え、撹拌した後、50gのCNT粉末を加え、更に20分間撹拌した。ビーズミルを使い、60分間分散処理し、ナノカーボン分散液を得た。
【0104】
2)プルシアンブルー/ナノカーボン複合捕集剤の調製
ヘキサシアノ鉄(II)、塩化鉄(III)を上述のナノカーボン分散液に添加、濃度10
0mMのプルシアンブルーを含むプルシアンブルー/ナノカーボン複合捕集剤(コロイド)を作成した。
【0105】
3)プルシアンブルー/ナノカーボン/珪藻土複合捕集剤の調製
上述2)で作成したプルシアンブルー/ナノカーボン複合コロイド1000mLに、珪素土乾燥粉末100gを加えて、凍結乾燥し、プルシアンブルー/ナノカーボン/珪藻土複合捕集剤「粉末」を調製した。
【0106】
4)セシウムの除去
セシウムイオン2.0ppmを含む容積2リットルの人工海水(塩濃度約3wt%)に、容積比で1/1000の上記2)または3)で作成した捕集剤を添加して25℃で10分間連続撹拌した、沈殿槽18内で共凝集体を沈殿させた。濾過装置20によって沈殿物を濾過した後の海水中のセシウム濃度は検出限界以下であった。
【0107】
5)セシウム除去水管の作製
両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーと珪藻土を用いて調製した複合型捕集剤の粉末を50g、竹炭由来活性炭10g、トルエンジイソシアンネート100g、ポリオール80g、発泡剤、触媒、整泡剤各5mLと混合し、プラスチック管中で発泡し、セシウム除去水管22を用意した。濾過装置20を経たセシウムイオン100ppbを含む容積20リットルの人工海水(塩濃度約3wt%)をこのセシウム除去水管22に通水したところ、最終的に人工海水中のセシウムの約99.99%が除去された。
【0108】
6)ヨウ素とストロンチウム除去水管の作製
実施例では、ヨウ素に加えてストロンチウムも選択的に除去するヨウ素/ストロンチウム除去水管を作成した。
【0109】
高分子陽イオン性ポリマーとして日東紡績(株)製のダンシェード−185(商品名);ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・N−(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル)ジアリルアミン共重合物を、高分子陰イオン性ポリマーとしてアルギン酸高分子とを1M:1Mの割合で、5wt%ナノカーボンと2wt%珪藻土を含むコロイドに添加し、撹拌・凍結乾燥した後、100gの粉末を得た。この粉末50g、竹炭由来活性炭10g、トルエンジイソシアンネート100g、ポリオール80g、発泡剤、触媒、整泡剤5mLと混合し、プラスチック管中で発泡し、ヨウ素除去水管24を用意した。濾過装置20を経たヨウ化物イオン100ppbとストロンチウムイオン200ppbを含む容積20リットルの人工海水(塩濃度約3wt%)をこのヨウ素イオン/ストロンチウムイオン除去水管24に通水したところ、最終的に人工海水中のヨウ素イオンの99.7%が除去され、ストロンチウムイオンの98.6%が除去された。
【0110】
<実施例2>
1)プルシアンブルーが充填された筒状珪藻土の調製
筒状珪藻土(Eagle-Picher Filtration & Minerals, Inc., U.S.A社から購入、図10,図11)100gに 960mMのFeCl3溶液300mLを加え、25℃で30分間混合した後、80℃で通風乾燥を行なった。乾燥後の粉末250gに720mMのNa4Fe(CN)6溶液300mLを加え、25℃で5分間混合した後、80℃で通風乾燥を行なって、内部に プルシアンブルーが充填された筒状珪藻土Aを得た(図12、図13)。
【0111】
この筒状珪藻土A100gに実施例1の1)で調製したCNT分散液250mLを加え、さらに5分間混合後、80℃で通風乾燥を行なって、筒状珪藻土AにCNT分散物が付着した捕集剤を得た(図14)。
【0112】
上記の捕集剤100g、竹炭由来活性炭粉末10g、トルエンジイソシアンネート200g、ポリオール100g、発泡剤、触媒、製泡剤各5mLを混合し、プラスチック管中で発泡してスポンジ体を作製した。このスポンジ体の空隙の一部には前記捕集剤が組み込まれている。
【0113】
2)セシウム/ストロンチウム吸着用捕集剤の調製
筒状珪藻土(Eagle-Picher Filtration & Minerals, Inc., U.S.A社から購入)100gに3wt%アルギン酸ナトリウム水溶液300mLを加え、25℃で30分間混合した後、80℃で通風乾燥を行なった。乾燥後の粉末100gに10wt%塩化カルシウム水溶液1000mLをゆっくり加え、25℃で60分間混合した後、80℃で通風乾燥を行なって、内部にアルギン酸が充填された筒状珪藻土Bを得た。
【0114】
1)で調製した筒状珪藻土Aと上記筒状珪藻土Bそれぞれ100gを混合後、実施例1の1)で調製したCNT分散液500mLを加え、さらに5分間混合後、80℃で通風乾燥を行なって、セシウム/ストロンチウム吸着用の捕集剤(粉末)を得た。
【0115】
3)セシウム/ストロンチウム吸着用捕集剤を担持したスポンジ体の調製
2)で調製したセシウム/ストロンチウム吸着用捕集剤100g、竹炭由来活性炭10g、トルエンジイソシアンネート200g、ポリオール100g、発泡剤、触媒、製泡剤各5mLを混 合し、プラスチック管中で発泡してスポンジ体を作製した。このスポンジ体の空隙の一部には、前記セシウム/ストロンチウム吸着用捕集剤が組み込まれている。
【0116】
この放射性物質除去装置50によって床に付着したセシウムを擦り取って水と共に吸収し、且つ、これを搾って水を排出したところ、排出水の中のセシウムが、99.99%が除去された状態であった。セシウム除去率は、セシウム量/吸着剤の割合で変動するが、1.5wt%のプルシアンブルーを含むウレタン多孔質体1グラムは、2.87mgのセシウムを吸着することを、再現性の良い実験結果で確認していて、プルシアンブルーの添加量を増やせば、99.99%を越える除去率を得られると予想する。又、条件や、測定装置によっても変化するが、少なくとも95%を除去できることを確認できた。アルギン酸高分子の存在により、ストロンチウムも吸着して、95%以上の除去率を確認することができた。
【0117】
更にセシウム除去用ウレタン多孔質体2)に代えてセシウム除去用ウレタン多孔質体1)によりセシウム除去水管を構成した場合でも、セシウムについては同様の除去効果を確認できた。なお、セシウム除去用ウレタン多孔質体1)について、ナノカーボンを用いない場合は、セシウム除去率が約10%低下することが確認された。
【符号の説明】
【0118】
10、40、50、60…放射性物質の除去装置
12…海水
14…タンク
16…添加装置
18…沈殿槽
20…濾過装置
22…セシウム除去水管
22A…管
22B…ウレタン多孔質体
24…ヨウ素除去水管
24A…管
24B…ウレタン多孔質体
26…第1ポンプ
28…第2ポンプ
30…塩分添加装置
31…ナノカーボン分散物
32…放射性物質の粒子
44A、44B…フィルタ
46…複合型多機能性粒子
62…擦り部材
64…柄部材
66A、66B…ポンプ
68…タンク
70…ノズル
72…壁
74…床
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射能汚染水中の放射性物質を除去する方法であって、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤と前記放射能汚染水とを容積比1:100〜1:10000で混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させる工程Aと、前記共凝集体を分離して前記放射能汚染水の放射性物質の濃度を低減した共凝集体分離水を得る工程Bと、を含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Bによって得られる共凝集体分離水を1回または複数回流通させてセシウム濃度を低減させたセシウム低減水を得る工程Cを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記捕集剤が、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤である、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる前記捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Bによって得られる共凝集体分離水を1回または複数回流通させてセシウム濃度を低減させたセシウム低減水を得る工程Hを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項5】
請求項1又は3において、
前記放射性物質は少なくともヨウ素を含み、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物と珪藻土とを含むウレタン多孔質体に前記共凝集体分離水を1回又は複数回流通させてヨウ素濃度を低減させたヨウ素低減水を得る工程Dを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項6】
請求項2又は4において、
前記放射性物質は少なくともヨウ素を含み、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物と珪藻土とを含むウレタン多孔質体に前記セシウム低減水を1回又は複数回流通させてヨウ素濃度を低減させたセシウム・ヨウ素低減水を得る工程Eを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項7】
請求項5において、
前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Dによって得られるヨウ素低減水を1回または複数回流通させてセシウム濃度をさらに低減させて、ヨウ素・セシウム低減水を得る工程Fを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項8】
請求項5において、
前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Dによって得られるヨウ素低減水を1回または複数回流通させてセシウム濃度をさらに低減させて、ヨウ素・セシウム低減水を得る工程Fを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項9】
物体に付着したセシウムを除去する方法であって、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体を、前記物体に擦り付けて、前記水で濡れたセシウムを水とともに前記ウレタン多孔質体に吸収する工程と、前記ウレタン多孔質体から、前記複合型多機能性粒子に吸着されたセシウムを残して、水を搾り出す工程とを含む、放射性物質の除去方法。
【請求項10】
物体に付着したセシウムを除去する方法であって、前記セシウムを水で濡らす工程と、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体を、前記物体に擦り付けて、前記水で濡れたセシウムを水とともに前記ウレタン多孔質体に吸収する工程と、前記ウレタン多孔質体から、前記複合型多機能性粒子に吸着されたセシウムを残して、水を搾り出す工程とを含む、放射性物質の除去方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記ウレタン多孔質体から搾り出した水により、前記物体に付着したセシウムを濡らす工程を含む、放射性物質の除去方法。
【請求項12】
内側空間に、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項13】
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項14】
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を備えた流通体を有する放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項15】
放射性物質を含む溶液と、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物及びプルシアンブルーからなる捕集剤とを混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させるための手段、及び、前記共凝集体と放射性物質濃度が低減された溶液とを分離するための分離手段を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項16】
請求項15において、
前記共凝集体と放射性物質濃度が低減された溶液とを分離する手段が共凝集体の濾過装置である放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項17】
請求項15又は16において、
両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項18】
請求項15又は16において、
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を備えた流通体を有する放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項19】
請求項15又は16において、
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項20】
請求項15乃至19のいずれかにおいて、
両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物及び珪藻土を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を設けた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項21】
請求項15乃至20のいずれかにおいて、
放射性物質を含む溶液及び/又は放射性物質を含む溶液と前記捕集剤とが混合された溶液にさらに電解質を添加する手段を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項22】
請求項15乃至21のいずれかにおいて、
放射性物質を含む溶液を収容するためのタンクと、このタンク内の溶液に、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤を、電解質の存在下で、容積比1:100〜1:10000で添加する捕集剤添加装置と、
前記添加された捕集剤と前記放射性物質との共凝集体を分離する濾過装置と、
を有してなる放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項23】
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含み、膨張・縮小自在のウレタン多孔質体からなる擦り部材を有し、物体に付着していて水に濡れたセシウムを擦り取り、水とともに吸収し、且つ、水を搾り出すことができる放射性物質の除去装置。
【請求項24】
請求項23において、
前記擦り部材をモップ状に柄部材の先端に取付けてなる放射性物質の除去装置。
【請求項25】
請求項24において、
前記柄は、前記多孔質体が吸収した水を吸入して、排出する排出管を備えた放射性物質の除去装置。
【請求項1】
放射能汚染水中の放射性物質を除去する方法であって、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤と前記放射能汚染水とを容積比1:100〜1:10000で混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させる工程Aと、前記共凝集体を分離して前記放射能汚染水の放射性物質の濃度を低減した共凝集体分離水を得る工程Bと、を含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Bによって得られる共凝集体分離水を1回または複数回流通させてセシウム濃度を低減させたセシウム低減水を得る工程Cを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記捕集剤が、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤である、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる前記捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Bによって得られる共凝集体分離水を1回または複数回流通させてセシウム濃度を低減させたセシウム低減水を得る工程Hを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項5】
請求項1又は3において、
前記放射性物質は少なくともヨウ素を含み、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物と珪藻土とを含むウレタン多孔質体に前記共凝集体分離水を1回又は複数回流通させてヨウ素濃度を低減させたヨウ素低減水を得る工程Dを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項6】
請求項2又は4において、
前記放射性物質は少なくともヨウ素を含み、両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物と珪藻土とを含むウレタン多孔質体に前記セシウム低減水を1回又は複数回流通させてヨウ素濃度を低減させたセシウム・ヨウ素低減水を得る工程Eを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項7】
請求項5において、
前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Dによって得られるヨウ素低減水を1回または複数回流通させてセシウム濃度をさらに低減させて、ヨウ素・セシウム低減水を得る工程Fを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項8】
請求項5において、
前記放射性物質は少なくともセシウムを含み、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体に、前記工程Dによって得られるヨウ素低減水を1回または複数回流通させてセシウム濃度をさらに低減させて、ヨウ素・セシウム低減水を得る工程Fを含む、放射能汚染水中の放射性物質の除去方法。
【請求項9】
物体に付着したセシウムを除去する方法であって、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体を、前記物体に擦り付けて、前記水で濡れたセシウムを水とともに前記ウレタン多孔質体に吸収する工程と、前記ウレタン多孔質体から、前記複合型多機能性粒子に吸着されたセシウムを残して、水を搾り出す工程とを含む、放射性物質の除去方法。
【請求項10】
物体に付着したセシウムを除去する方法であって、前記セシウムを水で濡らす工程と、内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体を、前記物体に擦り付けて、前記水で濡れたセシウムを水とともに前記ウレタン多孔質体に吸収する工程と、前記ウレタン多孔質体から、前記複合型多機能性粒子に吸着されたセシウムを残して、水を搾り出す工程とを含む、放射性物質の除去方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記ウレタン多孔質体から搾り出した水により、前記物体に付着したセシウムを濡らす工程を含む、放射性物質の除去方法。
【請求項12】
内側空間に、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項13】
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項14】
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を備えた流通体を有する放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項15】
放射性物質を含む溶液と、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物及びプルシアンブルーからなる捕集剤とを混合して、電解質の存在下で、前記捕集剤と放射性物質との共凝集体を形成させるための手段、及び、前記共凝集体と放射性物質濃度が低減された溶液とを分離するための分離手段を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項16】
請求項15において、
前記共凝集体と放射性物質濃度が低減された溶液とを分離する手段が共凝集体の濾過装置である放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項17】
請求項15又は16において、
両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤、珪藻土ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項18】
請求項15又は16において、
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤を備えた流通体を有する放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項19】
請求項15又は16において、
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項20】
請求項15乃至19のいずれかにおいて、
両性イオン分子によって分散されたナノカーボン分散物及び珪藻土を含むウレタン多孔質体が充填された流通体を設けた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項21】
請求項15乃至20のいずれかにおいて、
放射性物質を含む溶液及び/又は放射性物質を含む溶液と前記捕集剤とが混合された溶液にさらに電解質を添加する手段を備えた放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項22】
請求項15乃至21のいずれかにおいて、
放射性物質を含む溶液を収容するためのタンクと、このタンク内の溶液に、両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩によって分散されたナノカーボン分散物とプルシアンブルーとからなる捕集剤を、電解質の存在下で、容積比1:100〜1:10000で添加する捕集剤添加装置と、
前記添加された捕集剤と前記放射性物質との共凝集体を分離する濾過装置と、
を有してなる放射能汚染水中の放射性物質の除去装置。
【請求項23】
内側空間にナノサイズのプルシアンブルー及びアルギン酸高分子を充填した筒状珪藻土、及び、内側空間にナノサイズのプルシアンブルーとアルギン酸高分子をそれぞれ充填した2種の筒状珪藻土の少なくとも一方と、ナノカーボン分散物とからなる捕集剤ならびに活性炭を含み、膨張・縮小自在のウレタン多孔質体からなる擦り部材を有し、物体に付着していて水に濡れたセシウムを擦り取り、水とともに吸収し、且つ、水を搾り出すことができる放射性物質の除去装置。
【請求項24】
請求項23において、
前記擦り部材をモップ状に柄部材の先端に取付けてなる放射性物質の除去装置。
【請求項25】
請求項24において、
前記柄は、前記多孔質体が吸収した水を吸入して、排出する排出管を備えた放射性物質の除去装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−33019(P2013−33019A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267370(P2011−267370)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(511163735)ナノサミット株式会社 (3)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(511163735)ナノサミット株式会社 (3)
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