説明

放熱機能が備えられたトランスフォーマー

【課題】コイルから発生される熱を効率よく放出できるようにした放熱機能が備えられたトランスフォーマーを提供する。
【解決手段】E形状からなり、互いに向かい合って接して中心柱と外周部を形成している一対のコア;前記一対のコアの中心柱に巻回されており、電圧を降下する変圧コイル部;及び前記変圧コイル部の内側に位置しており、筒状からなり、前記変圧コイル部から発生する熱を放熱する放熱管を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱機能が備えられたトランスフォーマーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にトランスフォーマーは、一つの回路から交流電力の供給を受けて電子誘導作用によって他の回路に電力を供給する装置であり、変圧機または変成機とも呼ばれる。
トランスフォーマーにおいて、電圧は1次コイル及び2次コイルに巻かれる券線(Winding)比に比例し、電流は券線比に反比例する(V1:V2=N1:N2=1/I1:1/I2)。
【0003】
理想的なトランスフォーマーの場合は入力電力と出力電力が同一である100%のエネルギー変換効率が可能であるが、実質的にはトランスフォーマーで様々な損失が発生して、変換効率の低下が発生する。
このような損失はコアの厚さ及び材質によって発生され、ヒステリシス損と渦電流損がある。
【0004】
これをより詳細に説明すると、ヒステリシス損はコアの磁化特性による磁界を方向が相異なる磁界に変換させる時発生する損失であり、コアの材質によって変化し、使用周波数に比例し、コアに通過する磁力線密度の1.6乗に比例する。
【0005】
また、渦電流損は、トランスフォーマーのコアに交番磁束が流れるとコア自体に誘導電圧が誘起され、これによって交番磁束と直角方向に磁束の周りに回る渦電流が流れるようになり(フレミング右手の法則)、このような渦電流の大きさの二乗及びコアの電気抵抗に比例するジュール(Joule)熱の損失が発生される。
このようなトランスフォーマーで発生される損失によって熱が発生され、このように発生された熱によってトランスフォーマーが破損するという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述のような問題点を解決するために導き出されたものであり、コイルに隣接するように放熱管を設けて、発生される熱を放出できるようにした放熱機能が備えられたトランスフォーマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述のような目的を果たすための本発明は、E形状からなり、互いに向かい合って接して中心柱と外周部を形成している一対のコア;前記一対のコアの中心柱に巻回されており、電圧を降下する変圧コイル部;及び前記変圧コイル部の内側に位置しており、筒状からなり、前記変圧コイル部から発生する熱を放熱する放熱管を含む。
【0008】
また、本発明は、前記変圧コイル部に挿入されており、前記放熱管に熱を誘導する熱誘導管をさらに含む。
また、本発明は、前記放熱管にコーティングされており、前記変圧コイル部から発生された熱を前記放熱管に伝達する熱インターフェース物質層をさらに含む。
【0009】
また、本発明の前記放熱管は、前記一対のコアの中心柱を貫通することを特徴とする。
また、本発明の前記放熱管は、前記コアの中心柱と前記コイル部との間に位置することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の前記変圧コイル部は、前記一対のコアの中心柱に巻回されており、電圧を降下する第1コイル部;及び前記第1コイル部に巻回されており、電圧を降下する第2コイル部を含む。
また、本発明は、筒状からなり、前記第1コイル部と前記第2コイル部との間に位置し、前記第1コイル部と第2コイル部から発生する熱を外部に放出する第2放熱管をさらに含む。
【0011】
また、本発明は、前記第2放熱管にコーティングされており、前記変圧コイル部から発生された熱を前記第2放熱管に伝達する第2熱インターフェース物質層をさらに含む。
また、本発明の前記第1コイル部は、前記一対のコアの中心柱に巻回されており、電圧を降下する第1コイル;及び前記第1コイルをくるんでおり、絶縁物質からなった第1絶縁フィルムを含み、前記第2コイル部は、前記第1コイル部に巻回されており、電圧を降下する第2コイル;及び前記第2コイルをくるんでおり、絶縁物質からなった第2絶縁フィルムをさらに含む。
【0012】
また、本発明は、前記一対のコアの中心柱と前記第1コイルの間に位置して筒状に形成されており、絶縁材質で形成されている内側ボビン;及び前記第1絶縁フィルムと第2コアとの間に位置して筒状に形成されており、絶縁材質で形成されている外側ボビンを含む。
本発明の特徴及び利点は添付図面に基づいた以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【0013】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び請求範囲に用いられた用語や単語は通常的かつ辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に従って本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0014】
上述のような本発明によると、コイルから発生される熱を効果的に放出することができることにより、コアの温度を一定温度に低めることができる。
これにより、所望の特性を得ることができるため、トランスフォーマーの製品信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は添付図面に係わる以下の詳細な説明および好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、本発明の説明において、係わる公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にぼかす可能性があると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0016】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
図1は本発明の好ましい第1実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図であり、図2は本発明の好ましい第1実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図であり、図3は本発明の好ましい第1実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの断面図である。
【0017】
図1から図3を参照すると、本発明の好ましい第1実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーは、放熱管10、変圧コイル部11及び一対のコア18、18’からなっている。
そして、前記変圧コイル部11は、内側ボビン12、1次コイル13及び1次絶縁フィルム14からなった第1コイル部11−1と、外側ボビン15、2次コイル16及び2次絶縁フィルム17からなった第2コイル部11−2からなっている。
【0018】
ここで、放熱管10は内部が空いている円筒状に形成されており、一対のコア18、18’の中心柱18−1、18−1’を貫通するように形成され、1次コイル13と2次コイル16から発生する熱を外部に放出する。
前記放熱管10は円筒状に形成したが、他の実施例として四角形、五角形などの様々な形態が可能であり、1次コイル13と2次コイル16から発生される熱を効率よく放出することができるように金属材料で形成することが好ましい。
【0019】
このような放熱管10には、図3に図示されているように、1次コイル13と2次コイル16から発生された熱が効率よく伝達されることができるように熱インターフェース物質層(TIM;Thermal Interface Material)10−1がコーティングされている。
【0020】
前記熱インターフェース物質層10−1は、好ましくはシリコーンやエポキシなどであることができる。
次に、内側ボビン12は円筒状に形成されており、絶縁材質で形成されて電気的絶縁を提供する。
【0021】
そして、1次コイル13は前記内側ボビン12の外周面に巻回されており、2次コイル16と相互作用して入力される電圧を変化させる。
そして、1次絶縁フィルム14は、前記内側ボビン12に巻回された1次コイル13の外部に巻かれており、1次コイル13と2次コイル16の電気的絶縁を提供する。
次に、外側ボビン15は円筒状に形成されており、絶縁材質で形成されて電気的絶縁を提供する。
【0022】
そして、2次コイル16は前記外側ボビン15の外周面に巻回されており、1次コイル13と相互作用して入力される電圧を変化させる。
前記2次絶縁フィルム17は、前記外側ボビン15に巻回された2次コイル16の外部に巻かれており、1次コイル13と2次コイル16の電気的絶縁を提供する。
一方、一対のコア18、18’はE形状からなり、内側ボビン12に上下に挿入されて構成されることにより、内側ボビン12の内側にかつ中心に形成された中心柱18−1、18−1’と外側ボビン15の外側にかつ外部に形成された外周部18−2、18−2’を形成する。
【0023】
このような構成において1次コイル13と2次コイル16の絶縁は、1次絶縁フィルム14が1次絶縁させ、2次コイル16が巻かれる外側ボビン15が2次絶縁させ、2次コイル16の外部は2次絶縁フィルム17が二重絶縁させる。
そして、上述のような本発明によると、1次コイル13と2次コイル16から発生される熱は熱インターフェース物質層10−1を介して放熱管10に伝達され、放熱管10に伝達された熱が外部に放出されることにより、トランスフォーマーの温度を低めることができる。
【0024】
このように1次及び2次コイル13、16から発生される熱を効果的に放出することにより、コアの温度を一定温度に低めることができ、これによって所望の特性を得ることができて、トランスフォーマーの製品信頼性を向上させることができる。
図4は本発明の好ましい第2実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの断面図である。
【0025】
図4に図示されたように、本発明の好ましい第2実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーは、1次コイル13と2次コイル16から発生された熱を放熱管10に容易に伝達するために、前記放熱管から分枝されて1次コイル13と2次コイル16に挿入されている多数の熱誘導管10−2を備えている。
【0026】
前記熱誘導管10−2は、放熱管10と同様に金属材質で形成され、1次コイル13と2次コイル16から発生された熱を放熱管10に誘導して、容易に放出されることができるようにする。
その他の構成要素は本発明の第1実施例と同一であるため、具体的な説明は省略する。
【0027】
図5は本発明の好ましい第3実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図であり、図6は本発明の好ましい第3実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図である。
図5及び図6を参照すると、本発明の好ましい第3実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーは、放熱管10が一対のコア18、18’の中心柱と変圧コイル部11との間に位置している点において第1実施例と差異があり、その他の点においては同一である。また、本発明の好ましい第3実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーは、図4に図示されたように、変圧コイル部11から発生された熱を誘導する熱誘導管をさらに含むことができる。その他の点においては第1実施例と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0028】
図7は本発明の好ましい第4実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図であり、図8は本発明の好ましい第4実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図である。
図7と図8を参照すると、本発明の好ましい第4実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーは、放熱管10が内側ボビンの役割を兼ねている点において差異があり、その他の点においては第3実施例と同一である。第3実施例と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0029】
このように放熱管10が内側ボビンの役割を兼ねるようにすると、スリムなトランスフォーマーを具現することができる。
図9は本発明の好ましい第5実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図であり、図10は本発明の好ましい第5実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図である。
【0030】
図9及び図10を参照すると、本発明の好ましい第5実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーは、第1コイル部と第2コイル部との間に第2放熱管10’をさらに含み、前記第2放熱管10’にコーティングされており、前記第2コイル部から発生された熱を前記第2放熱管に伝達する第2熱インターフェース物質層(未図示)をさらに含む点において、第3実施例と差異があり、その他の点においては同一である。
このように第1コイル部11−1と第2コイル部11−2との間に第2放熱管10’をさらに備えると、第1コイル部11−1と第2コイル部11−2から発生される熱をさらに効率よく放出することができる。
【0031】
図11は本発明の好ましい第6実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図であり、図12は本発明の好ましい第6実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図である。
図11と図12を参照すると、本発明の好ましい第6実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーは、放熱管10が内側ボビンの役割を兼ねており、第2放熱管10’が外側ボビンの役割を兼ねている点において差異があり、その他の点においては第5実施例と同一である。第5実施例と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
このように放熱管10が内側ボビンの役割を兼ねて、第2放熱管10’が外側ボビンの役割を兼ねるようにすると、スリムなトランスフォーマーを具現することができる。
以上、本発明の好ましい実施例に対して図示及び説明したが、本発明は上述の特定実施例に限定されず、請求範囲にて請求する本発明の旨を外れずに、当該発明が属する技術分野にて通常の知識を有する者により多様な変形実施が可能であることは勿論、このような変形実施は本発明の技術的思想から個別的に理解されてはならないであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の好ましい第1実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図である。
【図2】本発明の好ましい第1実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図である。
【図3】本発明の好ましい第1実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの断面図である。
【図4】本発明の好ましい第2実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの断面図である。
【図5】本発明の好ましい第3実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図である。
【図6】本発明の好ましい第3実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図である。
【図7】本発明の好ましい第4実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図である。
【図8】本発明の好ましい第4実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図である。
【図9】本発明の好ましい第5実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図である。
【図10】本発明の好ましい第5実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図である。
【図11】本発明の好ましい第6実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの斜視図である。
【図12】本発明の好ましい第6実施例による放熱機能が備えられたトランスフォーマーの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
10、10' 放熱管
10−1 熱インターフェース物質層
10−2 熱誘導管
11 変圧コイル部
12、15 ボビン
13、16 コイル
14、17 絶縁フィルム
18、18' コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
E形状からなり、互いに向かい合って接して中心柱と外周部を形成している一対のコア;
前記一対のコアの中心柱に巻回されており、電圧を降下する変圧コイル部;及び
前記変圧コイル部の内側に位置しており、筒状からなり、前記変圧コイル部から発生する熱を放熱する放熱管を含む放熱機能が備えられたトランスフォーマー。
【請求項2】
前記変圧コイル部に挿入されており、前記放熱管に熱を誘導する熱誘導管をさらに含む請求項1に記載の放熱機能が備えられたトランスフォーマー。
【請求項3】
前記放熱管にコーティングされており、前記変圧コイル部から発生された熱を前記放熱管に伝達する熱インターフェース物質層をさらに含む請求項1に記載の放熱機能が備えられたトランスフォーマー。
【請求項4】
前記放熱管は、前記一対のコアの中心柱を貫通することを特徴とする請求項1に記載の放熱機能が備えられたトランスフォーマー。
【請求項5】
前記放熱管は、前記コアの中心柱と前記コイル部との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の放熱機能が備えられたトランスフォーマー。
【請求項6】
前記変圧コイル部は、前記一対のコアの中心柱に巻回されており、電圧を降下する第1コイル部;及び
前記第1コイル部に巻回されており、電圧を降下する第2コイル部を含む請求項1に記載の放熱機能が備えられたトランスフォーマー。
【請求項7】
筒状からなり、前記第1コイル部と前記第2コイル部との間に位置し、前記第1コイル部と第2コイル部から発生する熱を外部に放出する第2放熱管をさらに含む請求項6に記載の放熱機能が備えられたトランスフォーマー。
【請求項8】
前記第2放熱管にコーティングされており、前記変圧コイル部から発生された熱を前記第2放熱管に伝達する第2熱インターフェース物質層をさらに含む請求項7に記載の放熱機能が備えられたトランスフォーマー。
【請求項9】
前記第1コイル部は、前記一対のコアの中心柱に巻回されており、電圧を降下する第1コイル;及び
前記第1コイルをくるんでおり、絶縁物質からなった第1絶縁フィルムを含み、
前記第2コイル部は、前記第1コイル部に巻回されており、電圧を降下する第2コイル;及び
前記第2コイルをくるんでおり、絶縁物質からなった第2絶縁フィルムをさらに含む請求項6に記載の放熱機能が備えられたトランスフォーマー。
【請求項10】
前記一対のコアの中心柱と前記第1コイルの間に位置して筒状に形成されており、絶縁材質で形成されている内側ボビン;及び
前記第1絶縁フィルムと第2コアとの間に位置して筒状に形成されており、絶縁材質で形成されている外側ボビンを含む請求項9に記載の放熱機能が備えられたトランスフォーマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−99778(P2012−99778A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287825(P2010−287825)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】