説明

放電ランプ

【課題】
融着部を形成するセラミックスが小径筒部内の奥部に露出しても、当該部位が遊離ハロゲンと反応することによって光束低下や光色変化が効果的に抑制されるように改良された放電ランプを提供する。
【解決手段】
放電ランプMHLは、包囲部1aおよび小径筒状部1bを備え、小径筒状部の端部に封止部SPを形成した透光性気密容器1と、封止部を気密に貫通して内部に導入された電流導入導体2と、電極3と、放電媒体とを具備し、前記の封止部SPは、小径筒部の端部のセラミックスと実質的に同質のセラミックスを主成分として形成され内部に電流導入導体が貫通したセラミックスリーブ4が小径筒部の端部に配設され、かつセラミックスリーブ、透光性気密容器の小径筒部の端部および電流導入導体が融着することで形成されているとともに、少なくとも透光性気密容器の小径筒部の内部に露出する部位には希土類金属酸化物が含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス気密容器に好適な透光性気密容器の封止構造を備えた放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の透光性セラミックス気密容器を備えた高圧放電ランプにおいては、電流導入導体を介して上記気密容器を封止するために、種々の態様が提案されたり、試みられたりしてきた。その中でも最も普及しているのは、ガラスフリットを用いる態様である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平06−196131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載されているようなガラスフリットを用いて透光性セラミックス放電容器を封止する場合、ガラスフリットの耐熱性が充分に高いとはいえないことから、ランプの寿命特性を得るためには封止部の温度を所要に抑制しなければならず、そのために以下の構成を採用する必要がある。
(1)放電空間を画成する包囲部の両端から小径筒部を管軸方向に延在させる、いわゆるキャピラリー構造を形成する。
(2)管壁負荷を小さくする。
【0005】
上記構成の採用により以下の問題が生じる。
【0006】
上記(1)の結果、ランプの全長が大きくなってしまう。これに伴って、さらに次の問題が派生する。
・キャピラリー部分が折損しやすくなる。
・封入するハロゲン化物などの放電媒体の封入量がキャピラリーを形成しない場合に比較して数倍以上、場合によっては10倍以上必要になる。その結果、コストアップ、放電媒体の安定性、放電媒体から放出される不純ガス増加に起因する始動性低下、白濁、黒化および電極損耗などの不具合が発生しやすくなる。
【0007】
上記(2)の実施によって温度が低下するので、ハロゲン化物の蒸発が充分に行われなくなり、蒸気圧を高めることができない。その結果、発光効率を所期の程度まで高くすることができない。また、発光特性は良好であるが反応性が高いハロゲン化物を用いることができない。
【0008】
本発明者らは、フリットガラスを用いないで透光性セラミックス放電容器を封着する研究を行った結果、フリットガラスレスの構成を見出した。このフリットガラスレスの構成は、種々の材料および構造を用いる幾つかの態様を含んでいる。
【0009】
上記フリットガラスレスの構成において、透光性セラミックス気密容器が透光性多結晶アルミナセラミックスからなる場合、電流導入導体の封止部に埋設される部位にニオブまたはサーメットを用いるとセラミックスとの熱膨張係数の差が小さくなるので、都合がよい。
【0010】
しかしながら、ニオブは、金属ハロゲン化物やランプ働程中に金属ハロゲン化物の金属が消失して発生した遊離ハロゲンと反応するので、透光性セラミックス気密容器の内部に露出しないようにしなければならない。また、サーメットも比較的遊離ハロゲンと反応して劣化しやすいので、透光性セラミックス気密容器の内部に露出しないのが望ましい。そこで、透光性セラミックス気密容器と同材質のセラミックスを融着する際に電流導入導体のニオブやサーメットの内部表面を融着したセラミックスで被覆すれば、ニオブやサーメットが金属ハロゲン化物や遊離ハロゲンに触れなくなるので、ニオブやサーメットのハロゲンとの反応を防止することができる。
【0011】
ところが、融着して封止部を形成するセラミックス、例えばアルミナセラミックスが小径筒部内に露出すると、相対的に温度が低くなる小径筒部内の奥部に位置する上記露出部には金属ハロゲン化物に加えて遊離ハロゲンが凝集する。その結果、このセラミックスが遊離ハロゲンと反応して光束低下や光色変化が生じやすくなるという問題のあることが分かった。
【0012】
本発明は、融着部を形成するセラミックスが小径筒部内の奥部に露出しても、当該部位が遊離ハロゲンと反応することによって光束低下や光色変化が効果的に抑制されるように改良された放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の放電ランプは、内部に放電空間が形成される包囲部および包囲部の内部に連通しセラミックスを主体として形成された小径筒状部を備え、小径筒状部の端部に封止部を形成した透光性気密容器と;透光性気密容器の封止部を気密に貫通して内部に導入された電流導入導体と;電流導入導体の先端部に配設されて透光性気密容器の放電空間部に臨む電極と;透光性気密容器の包囲部の内部に封入された放電媒体と;を具備し、前記透光性気密容器の封止部は、小径筒部の端部のセラミックスと実質的に同質のセラミックスを主成分として形成され内部に電流導入導体が貫通したセラミックスリーブが小径筒部の端部に配設され、かつセラミックスリーブ、透光性気密容器の小径筒部の端部および電流導入導体が融着することで形成されているとともに、少なくとも透光性気密容器の小径筒部の内部に露出する部位には希土類金属酸化物が含有されていることを特徴としている。
【0014】
本発明は、以下の各態様を含む。
【0015】
〔透光性気密容器について〕 透光性気密容器は、包囲部および小径筒部を備える。本発明において、少なくとも小径筒部は、包囲部に連通するとともに、セラミックスを主体として形成されている。なお、セラミックスを主体とするとは、少なくとも封止の際に融着する部位すなわち封止予定部がセラミックスによって形成されていることを意味している。しかし、透光性気密容器は、好適には、包囲部および小径筒部がともに透光性セラミックスで形成されている。セラミックスとしては、単結晶の金属酸化物例えばサファイヤと、多結晶の金属酸化物例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物すなわち透光性多結晶アルミナセラミックス、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物例えばアルミニウム窒化物(AlN)のような光透過性および耐熱性を備えたセラミック材料からなり、内部に放電空間が外部に対して気密に形成される容器である。しかし、上記材料の中でも透光性多結晶アルミナセラミックスは、工業的に量産できて比較的容易に入手できるため、透光性気密容器の構成材料として好適である。
【0016】
従来では思いもよらないことであったが、本発明者は、透光性セラミックスを比較的容易に溶融できることを見出した。本発明は、この発見に基づいてなされたものである。
【0017】
また、透光性多結晶アルミナセラミックスで一般的に使用されているものは、その結晶平均粒径が70μm程度であるが、本発明においては、少なくとも後述する小径筒部の封着予定部に接近した位置、換言すれば封止のために溶融する以前の結晶平均粒径が30μm以下であるとクラックが生じにくくて好ましい融着を行うことができる。すなわち、上記部位の結晶平均粒径が30μm以下であると、小径筒部のセラミックスを溶融させて封止を行う際に、導入導体との馴染みが良好で、かつ溶融により小径筒部と電流導入導体とが接合した後の冷却時に、接合部やその近傍にクラックが発生しにくい。また、結晶平均粒径が1μm以下になると、接合によるクラック発生が極めて少なくなるので、より一層好適である。さらに、結晶平均粒径が0.5μm以下になると、接合によるクラック発生が全く発生しなくなる。したがって、一般的には0.1〜30μmであるのが望ましい。また、0.5〜20μmであればより一層好ましい。さらに、1〜10μmであれば最適である。
【0018】
上述した透光性気密容器の少なくとも小径筒部の結晶平均粒径が30μm以下である部位は、少なくとも小径筒部の封止予定部であれば好ましいが、所望により透光性気密容器の全体としてもよい。
【0019】
なお、透光性気密容器における透光性とは、放電によって発生した光を透過して外部に導出できる程度に光透過性であることをいい、透明ばかりでなく、光拡散性であってもよい。そして、少なくとも放電空間を包囲する部分の主要部が透光性を備えていればよく、要すれば上記主要部以外の付帯的構造を備えているときには、当該部分は遮光性であってもよい。
【0020】
透光性気密容器は、放電空間を包囲するために、包囲部を備えている。包囲部の内部すなわち放電空間が適当な形状、例えば球状、楕円球状、ほぼ円柱状などの形状をなしていることを許容する。放電空間の容積は、高圧放電ランプの定格ランプ電力、電極間距離などに応じてさまざまな値が選択され得る。例えば、液晶プロジェクタ用ランプの場合、0.5cc以下にすることができる。自動車前照灯用ランプの場合、0.05cc以下にすることができる。また、一般照明用ランプの場合、定格ランプ電力に応じて1cc以上および以下のいずれにすることもできる。
【0021】
また、透光性気密容器は、包囲部に連通する小径筒部を備えている。小径筒部は、少なくとも後述する電流導入導体をそこに支持し、かつその封止予定部をセラミックスリーブと一緒に加熱溶融したときに、電流導入導体と協働して封止部を形成することによって透光性気密容器を封止するために機能する。
【0022】
小径筒部の数は、一般的な一対の電極を封装する構成のためには2つであるが、配設する電流導入導体の数に応じて1つないし3つ以上の複数であることを許容する。一対の電極を封装するために2つの小径筒部を配設する場合、各小径筒部は、それぞれ離間した位置に配設されるが、好適には管軸に沿って包囲部の両端に離間対向している。なお、小径筒部を構成するセラミックスは遮光性であってもよい。
【0023】
本発明において、小径筒部は、その内部にキャピラリー構造を形成してもよいし、形成しなくてもよい。したがって、小径筒部の長さは本発明において特段限定されない。要するに、少なくとも小径筒部のセラミックスの溶融によるセラミックスリーブおよび電流導入導体との封着部を形成しやすい長さであればよい。上述の小径筒部の長さは、従来のフリットガラスを用いて封止する場合の小径筒部の長さより明らかに短くすることができる。
【0024】
また、小径筒部の開口端には、後述するセラミックスリーブを所定位置に支持するために、所望により係止段部を形成することができる。係止段部は、小径筒部の内周面全体にわたり形成してもよいし、内周面の一部に突起を形成するなどにより部分的に形成してもよい。そうして、小径筒部の開口端にセラミックスリーブを挿入したときに、セラミックスリーブの支持位置が係止段部により規制され、その結果セラミックスリーブが小径筒部に対して所定位置に係止される。係止段部を形成する態様によれば、小径筒部の内部に形成するキャピラリー(わずかな隙間)と無関係にセラミックスリーブの外径を設定することができる。なお、所望により形成段部に対応する部分の小径筒部の外径をその他の部分のそれより大きくすることも許容される。
【0025】
さらに、小径筒部の開口端に係止段部を配設しない場合には、管軸を垂直方向にした状態で、小径筒部の開口端で後述するセラミックスリーブを支持して、封止することも許容される。この態様においては、主として小径筒部とセラミックスリーブとが融着し、かつセラミックスリーブと電流導入導体とが融着して封止部が形成される。なお、小径筒部とセラミックスリーブを一体的に形成してもよい。
【0026】
〔セラミックスリーブについて〕 セラミックスリーブは、小径筒部と電流導入導体との間に介在してセラミックスの融着による封止部を形成するように寄与する。そして、その主成分が小径筒部のセラミックスと同質であり、内部に電流導入導体が貫通する。また、封止部が形成された状態において、小径筒部の内部に露出する部位に希土類金属酸化物が含有されているようにするために、セラミックスリーブの一部に希土類金属酸化物が添加されていたり、セラミックスリーブの全体に希土類金属酸化物が添加されて形成されていたりするように構成される。
【0027】
セラミックスリーブの一部が希土類金属酸化物を添加している構成においては、セラミックスリーブがその軸方向に少なくとも2つの領域に区分され、その一方の領域は希土類金属酸化物が添加されており、他方の領域は希土類金属酸化物が添加されていない。上記2つの領域は、一体化されている態様でもよいし、分離した態様であってもよい。
【0028】
希土類金属酸化物としては、好ましくはランタン(La)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Ga)、ジスプロシウム(Dy)およびホルニウム(Ho)のグループから選択された一種または複数種を用いることができる。セラミックスリーブ中に上記希土類金属酸化物を添加すると、セラミックスが融着して形成された封止部の透光性気密容器の小径筒部内部の奥部に露出するセラミックスの部位に希土類金属酸化物を含有させることができる。セラミックスリーブ中の希土類金属酸化物の含有量は、本発明においては特段限定されないが、好ましくは1〜50体積%の範囲、好適には20〜30体積%である。
【0029】
また、セラミックスリーブは、そのセラミックス粒子の結晶平均粒径が30μm以下、好ましくは20μm以下、最適には10μm以下であると、セラミックスリーブおよび小径筒部が溶融して形成される封止部がクラックしにくくなる。この場合、透光性気密容器の小径筒部における封止予定部のセラミックス粒子の平均粒径が30μm以下、好ましくは20μm以下、最適には10μm以下であると、さらにクラック発生が顕著に低減するが、セラミックスリーブのセラミックス粒子の平均粒径だけを上述のように選択するだけでも実用上かなりの効果を奏することができる。
【0030】
さらに、セラミックスリーブは、前述のように小径筒部の開口端内に少なくとも一部を挿入して支持してもよいし、小径筒部の端部に載置または接合して支持してもよい。後者の場合、透光性気密容器を垂直状態に支持してセラミックスリーブを単に小径筒部の端部に載置して支持することができる。あるいは、小径筒部の端面に接着剤を用いて、またはそれぞれを仮焼結後に接合してセラミックスリーブを支持してもよい。また、予めセラミックスリーブと小径筒部とを一体的に形成してもよい。
【0031】
〔電流導入導体について〕 電流導入導体は、後述する電極に電圧を印加して、電極に電流を供給するとともに、小径筒部およびセラミックスリーブと協働してセラミックス融着部を形成することで透光性気密容器を封止するために機能する導体である。そのために、透光性気密容器の小径筒部の内部に挿入されている先端側の部分が電極に接続し、基端側が透光性気密容器の外部に露出している。なお、上記において、透光性気密容器の外部に露出しているとは、透光性気密容器から外部へ突出していてもよいし、また突出していなくてもよいが、外部から給電できる程度に外部に臨んでいればよいという意味である。
【0032】
また、電流導入導体は、そのセラミックス融着部を形成する封止予定部を封着性金属またはサーメットを用いて構成できる。
【0033】
封着性金属としては、その熱膨張係数が透光性気密容器の小径筒部を構成しているセラミックスおよびセラミックスリーブのそれと近似している導電性金属であるニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)などの金属やサーメットなどを用いることができる。また、透光性気密電容器の少なくとも小径筒部の構成材料に透光性多結晶アルミナセラミックスなどのアルミニウム酸化物を用いる場合、ニオブおよびタンタルは、平均熱膨張係数がアルミニウム酸化物とほぼ同一であるから最適であり、またモリブデンはその平均熱膨張係数が上記酸化物のそれと接近しているから、所望により封止予定部に用いることができる。イットリウム酸化物およびYAGの場合も差が少ない。窒化アルミニウムを透光性気密電容器に用いる場合には、電流導入導体にジルコニウムを用いるとよい。また、電流導入導体を複数の材料部分を接合して形成することもできる。
【0034】
電流導入導体の構成態様としては、例えば長手方向の基端部を上記のグループから選択した封着性金属の部分またはサーメットとし、先端部をモリブデンなどの耐ハロゲン性金属とすることができる。また、基端部を上記封着性金属の部分、中間部をサーメットの部分、先端部を耐ハロゲン性金属とすることができる。なお、前者の態様において、基端部は、その一部が封止部のセラミックスで包囲される。また、後者の態様において、中間部は、その一部が封止予定部分を構成する。さらに、電流導入導体の封止予定部がサーメットであると、小径筒部およびセラミックスリーブのセラミックスの溶融による封止時にセラミックスの温度上昇が後述する理由により容易になるので、良好な封着部を形成しやすくなる。
【0035】
上記サーメットは、セラミックスと金属の混合焼結体であり、例えばその材料成分のセラミックスがアルミナセラミックスで、金属が上記グループから選択された一種または複数種の金属、例えばモリブデンまたはタングステンからなるものを用いることができる。また、電流導入導体の透光性セラミックス放電容器に封着される部分のサーメットは、少なくともニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)およびタングステンなどの金属成分と、アルミナ、YAGおよびイットリアなどのセラミックス成分とを含み、金属成分の含有比率が5〜60体積%であることを許容する。
【0036】
そうして、サーメットが上記のような構成であると、加熱手段による封着予定部を加熱した際に、加熱の仕方にもよるが、一般的には透光性気密容器では熱吸収が生じにくい。これに対して、サーメット表面では熱吸収が大きくなり、その結果サーメットの表面が加熱されて温度上昇し、さらに透光性気密容器の小径筒部に伝熱されることで封着予定部が溶融する。
【0037】
また、金属成分の含有量が60体積%以下であれば、透光性気密容器の熱膨張率に大きな差がなく、透光性気密電容器が直接モリブデンに接触した場合と比較して、高圧放電ランプを点灯した際のヒートショックによる破損およびリークが生じにくい。
【0038】
上記サーメットは、上記とは異なる以下の観点からすれば、金属成分の含有比率が50〜80体積%であるのが好ましい。
【0039】
すなわち、主としてサーメットの導電性を重視する観点からすれば、金属成分の含有比率を上記の範囲内にあるようにすれば、十分な導電性を得ることができる。そして、サーメットが上記のような構成であれば、所要の導電性を有するサーメットであっても、その直径を小さくすることができるので、本発明による封着がより一層容易になる。
【0040】
しかし、金属成分の含有量が80体積%を超えると、透光性気密電容器との間の熱膨張率が大きくなりすぎるので、所望の封着を得るのが困難になる。また、金属成分の含有量が50体積%になると、所望の導電性を得るのが困難になる。
【0041】
さらに、所望により少なくとも封着予定部におけるサーメットを、主として封着性を良好に構成した第1のサーメットが外周側に位置し、主として導電性を良好にした第2のサーメットを中心側に位置する同心傾斜構造とすることもできる。なお、この場合、第1および第2のサーメットを段階傾斜構造または無段階傾斜構造とすることができる。
【0042】
さらにまた、電流導入導体には、主として透光性気密容器の小径筒部にセラミックスリーブを介して封着する部分と、主として電極を支持する部分との機能がある。そこで、各部分をそれぞれの機能に対して最適化するために、各部分を、それぞれ別の材料を用いて形成したり、別のサイズや構造にして形成し、かつそれらを軸方向に接続して電流導入導体を構成したりすることがきる。例えば、主として透光性気密容器の小径筒部に封着する部分をサーメットとし、主として電極を支持する部分を耐ハロゲン性金属、例えばモリブデンにより形成することがフリットガラスにより封止する構造において既知である。本発明においても主たる機能に応じた材料、サイズおよび形状などの仕様を異ならせて、これらを軸方向に接続して電流導入導体を構成することを許容する。しかし、本発明においては、所望により電流導入導体を、そのほぼ全長を通じて同一材質の導電性部材を用いて構成することもできる。
【0043】
〔封止工程について〕 小径筒部、セラミックスリーブおよび電流導入導体の封止予定部をセラミックスの溶融により融着させて透光性気密容器を封止するために行う加熱工程は、例えば以下の態様で行うことができる。
透光性気密容器を封止するために、小径筒部のセラミックスおよびセラミックスリーブを溶融させる手段は、本発明において特段限定されない。例えば、小径筒部およびセラミックスリーブのセラミックスを加熱して、その溶融温度以上に温度を上昇させれば、それらのセラミックスが溶融し、小径筒部に配設されているセラミックスリーブの内部に貫通して配設されている電流導入導体に融着させることができる。そうしたら、加熱を止めて馴染んだ個所を冷却すれば、セラミックスが固化して、電流導入導体が融着部に封着され、その結果小径筒部が封止されて透光性気密容器が封止される。小径筒部のセラミックスを加熱する手段は、例えばレーザーや反射鏡付ハロゲン電球などの熱線投射形の局部加熱手段、誘導加熱手段および電気ヒータなどを用いることができる。なお、レーザーとしては、例えばYAGレーザー、COレーザーなどを用いることができる。
【0044】
熱線投射形の上記局部加熱手段を用いて小径筒部の封着予定部の全周を加熱する場合、局部加熱手段を上記予定部に対して所定の離間位置、例えば予定部の側方に固定し、局部加熱手段を作動させながら透光性気密容器の小径筒部および局部加熱手段のいずれか一方または双方を回転させれば、小径筒部およびセラミックスリーブの全周を均一に加熱することができる。しかし、所望により、小径筒部の延在方向、例えば管軸方向からレーザーを照射したり、固定的に配置された小径筒部の周囲に複数の局部加熱手段を配置したり、局部加熱手段を小径筒部の周囲に回転させたり、あるいは小径筒部の全周を包囲する加熱手段を配設したりすれば、透光性セラミック放電容器を静止状態で加熱することもできる。
【0045】
そうして、封止予定部が加熱されて主として小径筒部のセラミックスが溶融し、電流導入導体に融着することにより、封着部が形成される。この封着部は、電流導入導体の成分が固溶して固溶体となっていることが多い。そして、好ましい封着部は、その外表面におけるアルミナの平均結晶粒径が非封着部の外表面におけるアルミナの平均結晶粒径より大きくなっている。封着部が上記のような態様をなしている場合、溶融部の全体または一部で結晶成長が行われ、その結果結晶方向がランダムとなるために、耐熱性および機械的強度が高くなる。このため、ランプ点灯によるヒートショックによる破損やリークが発生にしにくくなる。
【0046】
次に、透光性セラミックス放電容器を製作するには、包囲部を一体的に成形して形成してもよいし、複数の構成部材を接合させたり、嵌合させたりして形成してもよい。例えば、包囲部の他に小径の筒部などの付帯的構造を備えている場合、包囲部の両端または一端に付帯的構造を最初から一体に成形することができる。しかし、例えば包囲部と、付帯的構造とを、それぞれ別に仮焼結してから所要に接合させて、全体を焼結することにより、一体の透光性セラミックス放電容器を形成することもできる。また、筒状部分と端板部分とをそれぞれ別に仮焼結してから接合して、全体を焼結することにより、一体化された包囲部を形成することもできる。
【0047】
〔電極について〕 電極は、透光性セラミックス放電容器の内部に後述する放電媒体の放電を生起させる手段である。電極は、一般的にその一対が透光性気密容器の内部において電極間でアーク放電が生起されるように離間対向して配設される。なお、本発明においては、少なくとも1個の電極が上記導入導体に接続して透光性気密容器内に封装されている。
【0048】
また、電極は、電流導入導体に接続して透光性気密容器内の所定位置に支持されている。例えば、電極の基端が電流導入導体の透光性気密容器の内部側に位置する先端部に接続される。
【0049】
さらに、電極を電極主部または/および電極軸部により構成することができる。電極主部は、放電の起点となる部分で、したがって主として陰極およびまたは陽極として作用する部分であり、所望により電極軸部を介さないで直接電流導入導体に接続することができる。また、電極主部の表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じてタングステンのコイルを巻装したり、電極軸部より径大にしたりすることができる。電極が電極軸部を備えている場合、電極軸部は、電極主部と一体に、または溶接されて、電極主部の背面から後方へ突出して電極主部を支持し、かつ電流導入導体に接続する。なお、所望により電極軸部と電流導入導体の先端部を単一のタングステンにより一体化させることができる。
【0050】
さらにまた、電極の材料には、タングステン、ドープドタングステン、トリエーテッドタングステン、レニウムまたはタングステン−レニウム合金などを用いることができる。
【0051】
さらにまた、一対の電極を用いる場合、交流点灯形の場合にはそれらを対称構造とするが、直流点灯形の場合には、非対称構造にすることができる。
【0052】
〔放電媒体について〕 放電媒体は、その放電により所望の発光を得るための手段であるが、本発明においてその構成が特段限定されない。例えば、下記に列挙する態様であることを許容する。しかし、好ましくは発光金属のハロゲン化物、ランプ電圧形成媒体および希ガスにより構成される。なお、本発明は、高圧放電ランプに適用して特に好適であるが、低圧放電ランプに適用することもできる。なお、「高圧放電」とは、イオン化媒体の点灯中の圧力が大気圧以上になる放電をいい、いわゆる超高圧放電を含む概念である。
【0053】
発光金属のハロゲン化物は、主として可視光を発光する発光金属のハロゲン化物であり、既知の各種金属ハロゲン化物を採用することができる。すなわち、発光金属の金属ハロゲン化物は、発光色、平均演色評価数Raおよび発光効率などについて所望の発光特性を備えた可視光の放射を得るため、さらには透光性セラミックス放電容器のサイズおよび入力電力に応じて、既知の金属ハロゲン化物の中から任意所望に選択することができる。例えば、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)、希土類金属(ジスプロシウム(Dy)、ツリウム(Tm)、ホルミウム(Ho)、プラセオジム(Pr)、ランタン(La)およびセリウム(Ce)など)、タリウム(Tl)、インジウム(In)およびリチウム(Li)からなるグループの中から選択された一種または複数種のハロゲン化物を用いることができる。
【0054】
ランプ電圧形成媒体は、ランプ電圧を形成するのに効果的な媒体であり、例えば水銀または下記の金属のハロゲン化物を用いることができる。すなわち、ランプ電圧形成媒体としてのハロゲン化物は、点灯中の蒸気圧が相対的に大きくて、かつ、可視域の発光量が上記発光金属による可視域の発光量に比較して少ない金属、例えばアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)などのハロゲン化物が好適である。
【0055】
希ガスは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用し、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)などを単体でまたは混合して用いることができる。
【0056】
1.発光金属のハロゲン化物+水銀+希ガス:いわゆる水銀入りのメタルハライドランプの構成である。
【0057】
2.発光金属のハロゲン化物+ランプ電圧形成媒体としてのハロゲン化物+希ガス:環境負荷の大きな水銀を用いないいわゆる水銀フリーのメタルハライドランプの構成である。
【0058】
3.水銀+希ガス:いわゆる高圧水銀ランプの構成である。
【0059】
4.希ガス:希ガスとしてXeを用いると、いわゆるキセノンランプの構成である。
【0060】
次に、発光金属のハロゲン化物は、ハロゲンとしてよう素、臭素、塩素またはフッ素のいずれか一種または複数種を用いることができる。
【0061】
〔本発明のその他の構成について〕 本発明の必須構成要件ではないが、所望により以下の構成の一部または全部を具備することにより、高圧放電ランプの機能が付加されたり、性能が向上したりする。
【0062】
(1)(外管について) 本発明の高圧放電ランプは、透光性セラミックス放電容器が大気中に露出した状態で点灯するように構成することができる。しかし、要すれば、透光性セラミックス放電容器を外管内に収納することができる。なお、外管内は、真空、ガス入り、または大気に連通した雰囲気にすることもできる。
【0063】
(2)(反射鏡について) 本発明の高圧放電ランプは、反射鏡を一体化して具備することができる。
【0064】
次に、本発明において、放電ランプを点灯する場合、点灯回路は、どのような構成であってもよい。また、交流点灯および直流点灯のいずれの点灯方式であってもよい。交流点灯の場合、例えばインバータを主体とする電子化点灯回路を構成することができる。所望により、インバータの入力端子間に接続する直流電源に昇圧チョッパまたは降圧チョッパなどの直流−直流間変換回路を付加することができる。直流点灯の場合、例えば上記直流−直流間変換回路を主体とする電子化点灯回路を構成することができる。
【0065】
本発明において、放電ランプを照明装置に適用する場合、照明装置は、照明装置本体と、照明装置本体に配設された本発明の高圧放電ランプと、高圧放電ランプを点灯する点灯回路とで構成することができる。
【0066】
なお、照明装置は、高圧放電ランプを光源とする全ての装置を含む概念である。例えば、屋外用および屋内用の各種照明器具、自動車前照灯、画像または映像投射装置、標識灯、信号灯、表示灯、化学反応装置および検査装置などである。
【0067】
照明装置本体は、照明装置から高圧放電ランプおよび点灯回路を除いた残余の部分をいう。
【0068】
点灯回路は、照明装置本体から離間した位置に配置されるのであってもよい。
【発明の効果】
【0069】
本発明によれば、透光性気密容器の封止部が、その小径筒部の端部のセラミックスと同質のセラミックスを主成分として形成され内部に電流導入導体が貫通したセラミックスリーブが小径筒部の端部に配設され、かつ小径筒部、セラミックスリーブおよび電流導入導体がセラミックスの溶融によって融着することで形成されているとともに、少なくとも透光性気密容器の小径筒部の内部に露出する封止部のセラミックスの部位に希土類金属酸化物が含有されていることにより、透光性気密容器内に封入した金属ハロゲン化物から生じた遊離ハロゲンと小径筒部の内部に露出する封止部のセラミックスの部位との反応が抑制されるので、寿命末期までの光色の変化および寿命が改善される放電ランプを提供することができる。
【0070】
また、封止部の溶融したセラミックスによって被覆されるために、電流導入導体の基端側のサーメットまたは封着性金属の部分が透光性気密容器の内部に露出しなくなるので、上記サーメットまたは封着性金属の部分と金属ハロゲン化物および遊離ハロゲンとの反応が防止され、その結果電流導入導体が劣化することに伴う放電ランプの寿命短縮が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0072】
図1および図2は、本発明の放電ランプを実施するための第1の形態としてのメタルハライド形の高圧放電ランプを示し、図1はランプ全体の断面図、図2は封止工程の説明図である。
【0073】
本形態の放電ランプMHLは、図1に示すように、透光性気密容器1、電流導入導体2、電極3、セラミックスリーブ4および放電媒体からなり、封止部SPを有していて、これにより構成される部分を発光管として、この発光管を外管の所定位置に封装することができる。
【0074】
透光性気密容器1は、本形態において図1に示すように、外表面における平均結晶粒径が30μm以下の透光性多結晶アルミナセラミックスを主材料として一体成形により形成されており、包囲部1aおよび一対の小径筒部1b、1bを具備している。なお、セラミックスの平均結晶粒径は、小径筒部1bの外表面を放電子顕微鏡で拡大すれば容易に視認することができ、基準直線を透光性気密容器1の外表面の適当な部位に設定して、当該基準線と交わる多数の結晶粒子の直径の平均値とする。
【0075】
包囲部1aは、肉厚がほぼ球形の形状に成形され、内部に同様形状の放電空間1cが形成されている。
【0076】
一対の小径筒部1b、1bは、それぞれが包囲部1aの管軸方向の両端から一体に延長された短くて包囲部1aに比較して細い筒状部分によって形成されている。そして、小径筒部1bの開口端の内周面に径大にした係止段部1b1が形成されている。小径筒部1bの端部側の部位が封止予定部であり、後述するセラミックスリーブ4と協働してセラミックスが溶融して封止部SPを形成している。なお、上記封止部SPを形成する封止工程については後述する。
【0077】
セラミックスリーブ4は、セラミックスの結晶平均粒径が30μm以下のセラミックスからなり、内部に後述する電流導入導体2が貫通している。また、セラミックスリーブ4は、小径筒部1bの形成段部1b1内に挿入されて係止された状態で加熱溶融され、セラミックスの溶融により、小径筒部1bの封止予定部、セラミックスリーブ4および後述する電流導入導体2が融着した封止部SPが小径筒部1bの端部に形成されている。
【0078】
また、セラミックスリーブ4は、図2に示すように、その軸方向に沿って2つの領域4a、4bに区分されているが、接合されて一体化されている。そして、一方の領域4aは、希土類金属酸化物が添加されている。また、他方の領域4bは、希土類金属酸化物が添加されていない。
【0079】
電流導入導体2は、図2に示すように、外部に露出する基端側2aがニオブからなり、透光性セラミックス気密容器の内部に挿入される先端側2aがモリブデン2bからなり、これらは溶接により接合されて1本の棒状をなしている。一対の電流導入導体2、2が透光性気密容器1のそれぞれの小径筒部1bにセラミックスリーブ4を介して挿入される。
【0080】
したがって、電流導入導体2の先端部は、小径筒部1b内に位置し、基端部は透光性気密容器1の外部へ露出している。なお、小径筒部1bは、電流導入導体2を封着する際に、セラミックスリーブ4と一緒に加熱されてそれらが十分に溶融すると、電流導入導体2の第1および第2の領域2a、2bの接合面を内包してセラミックスの溶着による封止部SPが形成される。
【0081】
封止部SPは、セラミックスリーブ4が主体的になって形成されるが、セラミックスの溶融時に表面張力により軸方向に凝縮しながら径方向に小径筒部1bの表面から外側へ膨出して楕円球状ないし涙滴状に変形する傾向があるが、加熱時間や温度などの加工要因により多様な形状となる。そして、ニオブの第1の領域1b1および第2の領域1b2の接合部がセラミックスリーブ4の第2の領域4bで包囲されるので、透光性気密容器1の内部に露出しない。また、封止部SPの透光性気密容器1の内部に露出する部位は、セラミックスリーブ4の第1の領域4aによって形成されるので、希土類金属酸化物が含有している。
【0082】
電極3は、タングステン線からなり、軸方向の先端部、中間部および基端部にわたり軸部の直径が同じで、かつ先端部および中間部の一部が放電空間1c内に露出している。また、電極3は、その基端部が電流導入導体2の先端部に溶接により接続していることによって、透光性セラミックス放電容器1の管軸方向に沿って支持されている。なお、電極3の中間部または電流導入導体2の先端側と小径筒部1bの内面との間に管軸方向に短いわずかな隙間gすなわちキャピラリーが形成されている。しかし、このキャピラリーは、フリットガラスを用いて透光性セラミックス放電容器を封止する従来の高圧放電ランプにおけるそれに比較すると、明らかに短くすることができる。
【0083】
放電媒体は、発光金属のハロゲン化物、ランプ電圧形成用媒体および希ガスからなる。ランプ電圧形成用媒体は、水銀またはランプ電圧計形容用ハロゲン化物からなる。なお、ランプ電圧形成用ハロゲン化物は、蒸気圧が高くて発光金属のハロゲン化物との共存下で可視域の発光量が発光金属の発光量に比較して少ない金属のハロゲン化物である。
【0084】
次に、図2(1)〜(5)を参照して放電ランプMDLの封止工程について説明する。
【0085】
最初に、図2(1)において、電流導入導体2の先端に電極3が接続された電流導入導体・電極接合体を用意し、次にセラミックスリーブ4を点線で示す矢印方向に電流導入導体・電極接合体MAに嵌合させる。そして、セラミックスリーブ4を電流導入導体2の基端側(サーメット)および先端側(モリブデン)の接合面がセラミックスリーブ4の他方の領域4bの中に位置するまで挿入して、図2(2)に示す電極マウントDMを組み立てる。
【0086】
次に、図2(3)において、予め用意した透光性気密容器1を垂直位置に支持してから、上部に位置する小径筒部1bの係止段部1b1内に電極マウントEMのセラミックスリーブ4を点線の矢印方向に挿入して支持し、図2(4)に示すように封止位置を決める。
【0087】
最後に、図2(5)において、太実線の矢印方向から例えばレーザー照射して、セラミックスリーブ4、小径筒部1bの封止予定部(開口端部近傍)および電流導入導体2を加熱する。その結果、セラミックスリーブ4および小径筒部1bの封止予定部のセラミックスがやがて溶融して、セラミックスリーブ4、小径筒部1bの封止予定部(開口端部近傍)および電流導入導体2が気密に融着して封止部SPが形成され、透光性気密容器1が封止される。なお、図示を省略している下部の小径筒部が予め封止されている場合には、上部の封止部SPを形成する前に放電媒体が上部の小径筒部1bの開口端から透光性気密容器1の内部に封入され、液体窒素などの冷媒によって放電媒体を冷却しながら点線による引き出し線で示すようにセラミックスリーブ4が主体的となった封止部SPを形成することができる。
【実施例1】
【0088】
実施例1は、図1に示す高圧放電ランプである。
透光性気密容器 :一体成形の透光性多結晶アルミナセラミックス製、
包囲部;管軸方向の長さ6mm、最大内径5mm、球状内面形状(直線部なし)、
肉厚0.8mm
小径筒部;内径0.7mm、肉厚0.5mm、長さ6mm、
開口端の係止段部内径1.25mm
深さ3mm
セラミックスリーブ:アルミナ粒径10μmのアルミナセラミックス、外径1.2mm、
内径0.7mm、長さ4mm
一方の領域;La酸化物25体積%添加
他方の領域;希土類金属酸化物非添加
電流導入導体 :Ni棒、直径0.65mm
電極 :W棒、直径0.65mm、電極間距離3mm
放電媒体 :DyI3-NdI3-CsI=3mg、Xe1Mpa
【0089】
透光性気密容器の封止部はクラック発生なく良好であった。

[比較例1]
透光性気密容器 :一体成形の透光性多結晶アルミナセラミックス製、
包囲部;管軸方向の長さ6mm、最大内径5mm、球状内面形状(直線部なし)、
肉厚0.8mm
小径筒部;内径0.7mm、肉厚0.5mm、長さ12mm
放電媒体 :DyI3-NdI3-CsI=3mg、Xe0.3Mpa
封止剤 :Al2O3−SiO2系フリットガラス
【0090】
その他は、実施例1と同じ仕様である。
【0091】
透光性気密容器の封止部にはクラックが発生した。

【0092】
図3は、本発明の放電ランプを実施するための第2の形態を示す気密容器の封止工程の説明図である。
【0093】
本形態は、セラミックスリーブ4の全体が希土類金属酸化物を含有していて、かつ封止部SPの形成に先立ち小径筒部1bの開口端に接合して支持されている。セラミックスリーブ4を小径筒部1bに支持するには、例えば透光性気密容器1は別にセラミックスリーブ4を形成してから、小径筒部1bの開口端に接合することができる。
【0094】
また、小径筒部1bの開口端部を形成する部分のセラミックス中に希土類金属酸化物を予め添加しておき、焼結して透光性気密容器1を形成することで、セラミックスリーブ4が小径筒部1bとセラミックスリーブ4とが一体化された状態で接合した構造であってもよい。
【0095】
次に、図3(1)〜(4)を参照して第2の形態における封止工程を説明する。
最初に、図3(1)において、電流導入導体2および電極3を接合して電極マウントEMを形成する。
【0096】
また、図3(2)において、全体に希土類金属酸化物を含有しているセラミックスリーブ4を小径筒部1bの開口端に接合した透光性気密容器1を用意する。
【0097】
次に、図3(3)において、電極マウントEMを透光性気密容器1の小径筒部1bの先端に接合したセラミックスリーブ4および小径筒部1bの内部に挿入し、電流導入導体2の基端側2aと先端側2bの接合部がセラミックスリーブ4の内部に位置する位置に定置する。
【0098】
最後に、セラミックスリーブ4、小径筒部1bの開口端および電流導入導体2を加熱して、セラミックスリーブ4および小径筒部1bのセラミックスを溶融すると、セラミックスリーブ4、小径筒部1bの開口端および電流導入導体2が溶融したセラミックスで気密に融着して点線の引き出し線で示すようにセラミックスリーブ4が主体的となった封止部SPが形成されるので、透光性気密容器1が封止される。
【実施例2】
【0099】
透光性気密容器 :一体成形の透光性多結晶アルミナセラミックス製、
包囲部;管軸方向の長さ6mm、最大内径5mm、球状内面形状(直線部なし)、
肉厚0.8mm
小径筒部;内径0.7mm、肉厚0.5mm、長さ6mm
セラミックスリーブ:アルミナ粒径10μmのアルミナセラミックス、La酸化物25体積%、
内径0.7mm、肉厚0.5mm、長さ2.5mm、小径筒部の開口端に一体化
【0100】
その他は、実施例1と同じ仕様である。
【0101】
透光性気密容器の封止部はクラック発生なく良好であった。

【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の放電ランプを実施するための第1の形態としてのメタルハライド形の高圧放電ランプを示すランプ全体の断面図
【図2】同じく封止工程の説明図
【図3】本発明の放電ランプを実施するための第2の形態を示す気密容器の封止工程の説明図
【符号の説明】
【0103】
1…透光性気密容器、1a…包囲部、1b…小径筒部、1b1…係止段部、2…電流導入導体、2a…基端側、2b…先端側、3…電極、4…セラミックスリーブ、4a…第1の領域、4b…第2の領域、SP…封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電空間が形成される包囲部および包囲部の内部に連通しセラミックスを主体として形成された小径筒状部を備え、小径筒状部の端部に封止部を形成した透光性気密容器と;
透光性気密容器の封止部を気密に貫通して内部に導入された電流導入導体と;
電流導入導体の先端部に配設されて透光性気密容器の放電空間部に臨む電極と;
透光性気密容器の包囲部の内部に封入された放電媒体と;
を具備し、
前記透光性気密容器の封止部は、小径筒部の端部のセラミックスと実質的に同質のセラミックスを主成分として形成され内部に電流導入導体が貫通したセラミックスリーブが小径筒部の端部に配設され、かつセラミックスリーブ、透光性気密容器の小径筒部の端部および電流導入導体が融着することで形成されているとともに、少なくとも透光性気密容器の小径筒部の内部に露出する部位には希土類金属酸化物が含有されている;
ことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
セラミックスリーブは、希土類金属酸化物を含有するセラミックスを用いて形成されていることを特徴とする請求項1記載の放電ランプ。
【請求項3】
セラミックスリーブは、電極側に位置する部分が、希土類金属酸化物を含有するセラミックスからなり、電極と反対側に位置する部分が、希土類金属酸化物を含有しないセラミックスからなり、かつ透光性気密容器の小径筒部の端部と融着することを特徴とする請求項1記載の放電ランプ。
【請求項4】
透光性気密容器は、その小径筒部の端部が、内面に係止段部が形成された開口を有しており;
セラミックスリーブは、小径筒部の端部の係止段部に係止された状態で封止部を形成している;
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−288043(P2008−288043A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132074(P2007−132074)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】