説明

放電ランプ

【課題】 製造が容易で、かつ封止部の耐久性を向上可能な放電ランプを提供する。
【解決手段】
本発明の放電ランプは、内部に放電空間22を有する球体部11および球体部11に連設された封止部12を備えたガラスバルブ1と、放電空間22に封入された放電媒体と、封止部12に封着されたマウント3とを具備する放電ランプであって、マウント3は、封着部411および通電部412を有する第1の傾斜機能部材41と、貫通穴51を有するガラスビーズ(電極支持部材)5と、少なくとも一部がガラスビーズ5の貫通穴51に配置された状態で、第1の傾斜機能部材41の通電部412と接続された電極6とを備えており、第1の傾斜機能部材41の封着部411およびガラスビーズ5が封止部12に溶着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶や半導体の露光用や液晶プロジェクタ用などに使用される放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶や半導体の露光や液晶プロジェクタなどに使用される放電ランプとしては、特開2006−236756号公報(以下、特許文献1)などがある。従来、一般的に高圧放電ランプと呼ばれるこの種のランプの気密封着には、特許文献1のように金属箔を使用するのが一般的である。
【0003】
しかし、封着材として金属箔を使用した放電ランプは、封止部の耐圧が低いという問題がある。そこで、傾斜機能材料(Functionally Graded Materials。以下、FGM)を封着材として使用した放電ランプが開発されている。FGMとは、組成が異なる複数の素材が傾斜し、一体的に組み合わされてなる材料のことであり、このFGMを使用した放電ランプとしては、特開2002−343304号公報(以下、特許文献2)、特開2003−236756号公報(以下、特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−236756号公報
【特許文献2】特開2002−343304号公報
【特許文献3】特開2003−263971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このFGMを用いた放電ランプは、入力が500W以下であるような、比較的小型の放電ランプでしか使用されていないのが現状である。これは大型の放電ランプの大きさに適合した大型のFGMの製造や、FGMを使用する場合の気密性の保持が困難であることに起因する。一方で、FGMを使用した大型の放電ランプを実現できたとしても、大型放電ランプの電極、特に陽極の重量は従来の電極の重量の倍以上となるため、製造時やランプの運搬時等に、封止部が破損するなどの問題が懸念されている。
【0006】
本発明の目的は、製造が容易で、かつ封止部の耐久性を向上可能な放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の放電ランプは、内部に放電空間を有する球体部および前記球体部に連設された封止部を備えた発光管と、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記封止部に封着されたマウントとを具備する放電ランプであって、前記マウントは、封着部および通電部を有する傾斜機能部材と、貫通穴を有する電極支持部材と、少なくとも一部が前記電極支持部材の前記貫通穴に配置された状態で、前記傾斜機能部材の前記通電部と接続された電極とを備えており、前記傾斜機能部材の前記封着部および前記電極支持部材が前記封止部に溶着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造が容易で、かつ封止部の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放電ランプについて説明するための図。
【図2】図1の放電ランプの断面について説明するための図。
【図3】図2において一点鎖線で囲んだZの範囲について説明するための図。
【図4】傾斜機能部材について説明するための図。
【図5】本実施の形態の放電ランプの一製造方法について説明するための図。
【図6】実施例2の放電ランプについて説明するための図。
【図7】各放電ランプの封止後の不良について試験した結果について説明するための図。
【図8】各放電ランプの破壊圧力について試験した結果について試験について説明するための図。
【図9】各放電ランプを点灯させたときの残存率について試験について説明するための図。
【図10】図7〜図9の試験をまとめた結果について説明するための図。
【図11】放電ランプの他の例について説明するための図。
【図12】図11の放電ランプの断面について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の放電ランプについて、図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の放電ランプについて説明するための図、図2は図1の放電ランプの断面について説明するための図、図3は図2において一点鎖線で囲んだZの範囲について説明するための図である。
【0011】
図1に示す放電ランプは、点灯時の内圧が1.0MPa(約10気圧)以上となる、いわゆる超高圧型に分類される放電ランプであり、発光管として、石英ガラスからなるガラスバルブ1を備えている。ガラスバルブ1は細長い形状であり、その中央付近には楕円状の球体部11が形成されている。球体部11の両端には、円柱状の一対の封止部12が球体部11と連続的に形成されている。
【0012】
この球体部11の内部には、楕円状の放電空間21が形成されている。この放電空間21には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、水銀と希ガスとで構成されている。希ガスには、キセノンが使用されている。その封入圧力は、目的によって調整することができる。本実施の形態ではバッファガスとして作用させるため、20℃において0.05MPa〜0.5MPaの圧力としている。なお、希ガスには、アルゴンやクリプトンなどのガスを用いたり、それらの混合ガスを使用することもできる。また、水銀を封入しない放電媒体の構成であってもよい。
【0013】
封止部12には、マウント3が封着されている。マウント3は、傾斜機能部材4、ガラスビーズ5、電極6およびアウターリード7によって構成されている。
【0014】
傾斜機能部材4はFGMである。本実施の形態では、図4に示すように円柱状を呈する第1、第2の傾斜機能部材41、42を組み合わせて使用している。第1、第2の傾斜機能部材41、42は、一端側に封着部411、421、他端側に通電部412、422、その間に緩衝部413、423を備えており、それらが軸方向に段階的に変化してなる。
【0015】
封着部411、421は、発光管を構成する材料の割合を高くしたことにより、ガラスバルブ1との封着に適するように構成した部分である。一般的には、シリカやセラミックスなどの割合が100%〜95%程度であるのが望ましい。通電部412、422は、金属材料の割合を高くしたことにより、電極6やアウターリード7との通電や接続に適するように構成した部分である。一般的には、タングステンやモリブデンなどの割合が20%〜30%程度(=シリカの割合が80%〜70%程度)であるのが望ましい。緩衝部413、423は、封着部411、421と通電部412、422の間の組成により構成された部分である。
【0016】
なお、傾斜機能部材4は上述したように第1、第2の傾斜機能部材41、42を組み合わせて使用している。具体的には、傾斜機能部材4は通電部412、422の端面同士を、例えばシリカとモリブデンからなる導電性のペースト、いわゆるサーメットにより接着することによって、軸方向に封着部〜通電部〜封着部と変化する一つの傾斜機能材料であるかのように構成されている。また、この第1、第2の傾斜機能部材41、42には、封着部411、421から緩衝部413、423を通って、通電部412、422の途中まで、その中心軸に沿うように穴414、424が形成されている。このような穴414、424は、例えばドリルで切削することにより形成することができる。
【0017】
ガラスビーズ5は、電極支持部材として構成された石英ガラスからなる円柱状のガラス部材であり、第1の傾斜機能部材41の封着部411側に、封着部411と接触するように配置されている。ガラスビーズ5には、貫通穴51が軸方向に貫通するように形成されている。
【0018】
電極6は、タングステンを主体とした材料からなり、先端部61と第1の軸部62と第2の軸部63とで構成されている。先端部61は放電空間21内に位置し、外観上、3mm〜10mmの電極間隔を保って、互いの先端同士が対向するように配置されている。第1の軸部62は先端部61に連設された直径がr1(mm)の軸であり、少なくとも一部がガラスビーズ5の貫通穴51内に配置されている。第2の軸部63は、第1の軸部62に連設された直径がr2(mm)の軸であり、その大部分が第1の傾斜機能部材41の穴414内に配置され、通電層412と接続されている。通電層412との接続には、サーメットからなる接着剤31を第2の軸部63の外表面と穴414の内表面の間に形成することで機械的かつ電気的な接続を可能にしている。
【0019】
なお、本実施の形態は、直流で点灯するタイプの放電ランプであるので、互いの電極設計が異なるものとなっている。具体的には、先端部61の容積が大きく異なり、一方(陽極)は容積が大きく、他方(陰極)は容積が小さく構成されている。また、電極6の放電空間22への突出長さも異なり、陰極の方が長くなっているため、電極先端間の中心は陽極側にずれ、陰極の先端は放電空間22の中心付近に配置された態様となっている。
【0020】
アウターリード7は、例えば、モリブデンからなる金属線である。その一端は、第2の傾斜機能部材42の穴424に配置され、通電層422と接続されされ、他端は管軸に沿ってガラスバルブ1の外部に延出されている。この通電部422との接続は、接着剤32をアウターリード7の外表面と穴424の内表面の間に形成することで行っている。
【0021】
ここで、傾斜機能部材4付近の構成について詳しく説明する。
図3に示されているように、マウント3は、その両端部分、すなわち封着部411とビーズ体5がバルブ中央側溶着部121に、封着部421がバルブ端側溶着部122に溶着されることで、封止部12に気密に封着されている。このように傾斜機能部材4の封着部411のバルブ中央側にガラスビーズ5を配置する構造としたことで、溶着可能な範囲が広くなるため、中間部413にバルブ中央側溶着部121がかかってしまうような設計の回避が可能となるとともに、封止工程時やランプの搬送時などに電極軸を介して封止部に曲げ応力が作用しても、封止部が破壊されることを抑制可能となる。また、ガラスビーズ5と封着部411とが接触する端面同士の直径を同等(=差が±1.0mm以内、望ましくは0.5mm以内)としてあるので、ガラスビーズ5と封着部411の境界付近における封着形状の不具合を抑制可能である。なお、封着により形成される空間22および空間23には、アルゴンなどの希ガスを封入してもよい。
【0022】
また、電極6は、第2の軸部63の直径r2よりも、第1の軸部62の直径r1の方が大きい構造となっている。第2の軸部63の直径r2が小さいと、第1の傾斜機能体41に形成する穴414の大きさも小さくて済むため、製造面でのメリットが大きくなる。一方、第1の軸部62の直径r1が大きいと、搬送時などによってランプが大きく振動しても、封止部12やガラスビーズ5にかかる負担が軽減される。ランプが大型であったり、直流点灯用であるために電極(陽極)の重量が重い場合に特に有利である。すなわち、このような電極の構造により、製造を容易にしつつ、封止部の耐久性を高めることが可能となる。なお、本実施の形態のように、電極支持部材としてガラスビーズを用いる場合には、貫通穴51内に位置する第1の軸部41にクッション材として金属箔33を巻きつけ、第1の軸部62を金属箔33を介して貫通穴51と接触させる構造にするのが望ましい。
【0023】
上記のように構成された放電ランプは、陽極が高圧側、陰極が低圧側になるように直流点灯回路(図示なし)と接続され、管軸が略水平の状態で1kW以上の電力で点灯される。
【0024】
放電ランプの一製造方法について、図5を参照しながら説明する。なお、図5では、管軸を縦にした図を表示しているが、実際には管軸を横、すなわち略水平にして各工程を行っている。
まず、(a)のように、球体部11が形成されたガラスバルブ1を専用の旋盤(図示なし)に配置固定し、ガラスバルブ1の開口端からマウント3を挿入する。マウント3のガラスビーズ7を球体部11近傍の封止部形成予定部12’内に配置したら、(b)のように、ガラスバルブ1を軸周りに回転させながら、ガラスビーズ7が配置されている封止部形成予定部12’を加熱装置HAにより加熱する。この工程では、ガラスバルブ1の内部には0.05MPa程度のアルゴンが封入された負圧の雰囲気であるため、加熱によってガラスが軟化点にまで達すると封止部形成予定部12’が内径方向にシュリンクして、自然にガラスビーズ7に溶着することになる。さらに、(c)のように、第1の傾斜機能部材41の封着部411が位置する封止部形成予定部12’も加熱装置HAにより加熱溶着する。このようにして、球体部11付近の封止部12にバルブ中央側溶着部121を形成するわけであるが、ガラスビーズ5と封着部411とが隣接配置された本構造では溶着可能な範囲が広いので、封止工程を容易かつ確実に行うことができる。なお、加熱装置HAとしては、酸水素バーナーやCOレーザーなどを使用することができる。
【0025】
次に、形成された直後のバルブ中央側溶着部121を、(d)のように、冷却装置CAにより冷却する。冷却装置CAとしては、例えば液体窒素を使用できる。バルブ中央側溶着部121が室温程度にまで冷却されたら、(e)のように、第2の傾斜機能部材42の封着部421が位置する封止部形成予定部12’を加熱装置HAにより加熱溶着させて、バルブ端側溶着部122を形成する。このように、バルブ中央側溶着部121を十分に冷却したのちにバルブ端側溶着部122を形成することで、封止後のランプの破損を少なくすることが可能となる。つまり、FGMの通電部などの金属濃度が高い部分は線膨張係数が大であり、バルブ中央側溶着部121の形成直後は管軸方向に相対的に膨張しているから、その状態でバルブ端側溶着部122を形成したことによって封止後にFGMやガラスに応力が加わってしまうことを防止することができる。ちなみに、バルブ中央側溶着部121とバルブ端側溶着部122を同時に形成する方法、バルブ端側溶着部122を先に形成し、冷却後バルブ中央側溶着部121を形成する方法によりランプを作成したところ、前者は封止後に傾斜機能部材が破損して、点灯しないランプが発生し、後者は電極位置不良や偏芯が発生したため、図5のような製造方法は実験的に有効であるといえる。
【0026】
最後に、アウターリード7付近の封止部形成予定部12’も加熱溶着させたのち、(f)のように不要な部分を除くことで一方の封止部12が完成する。同様に、他方の封止部形成予定部12’についても図5のような工程を経ることで、図1に示す本実施の形態の放電ランプを作成することができる。
【0027】
本発明の放電ランプの実施例の一仕様を下記に示す。
(実施例1)
ガラスバルブ1;石英ガラス製、球体部11の最大内径=25mm、最大外径=30mm、長手方向の球体長=47mm、放電空間21の内容積=12000mm、封止部12の外径=16mm、バルブ中央側溶着部121、バルブ端側溶着部122の外径=15mm、
水銀=40mg/cc、希ガス;キセノン、ガス圧=0.1MPa、
傾斜機能部材4;シリカとモリブデンのFGM、封着層411、421=シリカ100%、通電層412、422=シリカ75%、外径=7mm、穴414、424の径R1=3.1mm、
ガラスビーズ5;石英ガラス製、長さ=8.0mm、外径=8.0mm、貫通穴51の径R2=3.5mm、
電極6;ドープタングステン製、陽極先端部61の径=9mm、陰極先端部61の径=3mm、第1の軸部62の径r1=3mm、第2の軸部63の径r2=2.5mm、電極間距離(外観上)=3mm、
リード線7;モリブデン製、直径=3mm、
空間22;約0.05MPaのアルゴン。
(実施例2)
図6のように、端部に封着部411と接触する部分の外径と同等にする縮径部52を形成したガラスビーズ5を使用した放電ランプ。縮径部52は、実施例1のガラスビーズ5の端部を0.5mm分だけC面取りすることで形成。その他の仕様は、実施例1と同じ。
【0028】
実施例1、実施例2と、ガラスバルブの寸法などは同じだが、特許文献1のようにガラスビーズと金属箔を封着した放電ランプ(以下、従来例1)、特許文献2のようにFGMを封着した放電ランプ(以下、従来例2)について、様々な試験を行った。なお、各試験の試験本数はそれぞれ10本である。
【0029】
まず、各放電ランプの封止後の状態について試験した。その結果を図7に示す。
結果からわかるように、従来例2、従来例1、実施例1、実施例2の順で封止後の不良が多くなっている。不良の内容を詳しく見ると、従来例2では、封止部の割れ、電極の偏芯、電極間隔、封止部形状について不良が発生していることから、マウントの封着位置の精度が悪いといえる。中には、機能傾斜部材においてシリカの割合が100〜98%以外の部分にガラスが溶着したことで、熱応力によって破壊に至ったランプもあった。従来例1では、溶着不良や封止後の割れが発生していることから、金属箔部分の封止に難があるといえる。
【0030】
これに対して、実施例1では、第一にガラスビーズと傾斜機能部材の封着部を連設し、ガラスを溶着可能な領域を広く確保したこと、第二に直径の大きなガラスビーズによって封止部形成予定部とのガラスの距離を近くし、封止工程における難易度を低下させたことにより、封止後の不良の発生を抑制できたと考えられる。また、実施例2では、縮径部により封着部と接触する部分のガラスビーズの外径と傾斜機能部材の外径とを互いに等しくしたために、実施例1で発生した傾斜機能部材とガラスビーズ間のわずかな封着部の不具合も抑制されたと考えられる。以上のとおり、実施例1や実施例2のように電極支持部材を採用することで、FGMを用いた場合でも封止工程の難易度が低下し、不良発生率を抑制できることができる。
【0031】
次に、各放電ランプの破壊圧力について試験した。その結果を図8に示す。図中の破壊圧力は、一端にそれぞれのマウントを封着したランプの他端側からガラスバルブ内にシリコンオイルを充填したのち、その他端に加圧機器を接続して、ランプ内の圧力を徐々に上昇させていったときにランプが破壊される圧力の数値を示したものである。
【0032】
結果からわかるように、破壊圧力は、実施例1、実施例2が高く、従来例2も比較的高いが、従来例1は顕著に低くなっている。従来例1の破壊圧力が他に比べて顕著に低いのは、このランプだけ金属箔による封着であることに関係している。また、破壊圧力の偏差に着目すると、実施例2は極めて小さくなっている。これは、実施例2は、他のランプと比べて製作後の封止部の形状が安定しており、封止部の破壊の原因となるマイクロクラックなどが発生しにくいためと考えられる。
【0033】
次に、安定時に1kWとなる電力(電圧=50V、電流=20A)を投入したときのランプの諸特性について試験した。明るさ、電気特性、分光分布などの点灯初期のランプの特性は、何れのランプもほぼ同等であった。また、1000時間の連続点灯後の照度維持率も、何れのランプもほぼ同等であった。この結果から、マウントの構成を変えてもランプの諸特性は変動しないと結論される。
【0034】
次に、各放電ランプを点灯させたときの残存率について試験した。その結果を図9に示す。試験は、1時間点灯したのち、10分消灯するサイクルを繰り返す点滅点灯試験としている。なお、この試験においては、投入電力を通常よりも2倍負荷が高い2kWに設定している。
【0035】
結果からわかるように、実施例1、実施例2は、1500時間が経過しても残存率は100%であるが、従来例1、従来例2は試験時間の経過とともに残存率が低下し、1500時間になると従来例1は50%、従来例2は90%に残存率が低下している。従来例1は、金属箔封止部分においてガラスが剥離し、それによって発生したクラックにより、ランプ内部のガスがリークしたことが残存率低下の原因である。従来例2は、傾斜機能部材の封着部のみならず、緩衝部にもわずかにガラスが封着されていたことで熱応力によって割れ、ガスがリークしたことが残存率低下の原因である。これに対し、実施例1、実施例2は上記のような問題は生じないため、1500時間が経過しても寿命が良好であったと考えられる。また、実施例のランプでは、ガラスビーズ5が放電空間21と傾斜機能部材4の間に配置されており、高温化での使用に弱いFGMを熱源から遠ざける構造になっているため、FGMの熱劣化が抑制されたことも長寿命に影響していると考えられる。
【0036】
図7〜図9の結果をまとめると図10のようになる。◎は特に優れる、○は優れる、△は現行同等、×は劣ることを意味しており、この図10から、実施例1であれば製造面、耐破裂性能面どちらにおいても現行よりも優れたランプを実現でき、実施例2であればさらに優れたランプを実現できることが明白である。
【0037】
したがって、本実施の形態では、電極6をその一部がガラスビーズ5の貫通穴51に挿入された状態で、第1の傾斜機能部材41の通電部412に接続されるようにし、ガラスビーズ5および第1の傾斜機能部材41の封着部411を封止部12に溶着するようにしたことにより、封止工程時にガラスを溶着可能な領域が広くなり、ガラスと熱膨張率が近い部分のみに確実に溶着することができるとともに、封止工程時やランプの搬送時などに電極軸を介して封止部に曲げ応力が作用しても、その応力に対して十分な強度を維持できるため、製造が容易で、かつ封止部の耐久性を向上させることができる。
【0038】
また、実施例1のように、第1の傾斜機能部材41およびガラスビーズ5を円柱状とし、封着部411とガラスビーズ5とが接触するように配置するとともに、その互いに接触する封着部411の端面とガラスビーズ5の端面の外径を同等にしたことにより、第1の傾斜機能部材41とガラスビーズ5の境界付近における封着部の不具合を抑制することができる。なお、封着部411の端面とガラスビーズ5の端面は必ずしも接触している必要はなく、近接していれば同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、実施例2のように、封着部411と接触するガラスビーズ5の端部に縮径部51を形成したことにより、製造時において封止部形成予定部12’との距離を短くすることが可能な直径の大きなガラスビーズ5を採用しつつ、互いに接触する封着部411の端面とガラスビーズ5の端面の外径を同等にすることができるので、封止工程を容易にしつつ、封着部の不具合も抑制することができる。この実施例2のようなC面取りの場合、角度αが45度以下であるのが望ましい。なお、縮径部51は、R面取りすることにより、上記に類する円弧形状であってもよい。
【0040】
また、第1の軸部62の直径をr1、第2の軸部63の直径をr2としたとき、r1>r2を満たすようにしたことで、第1の傾斜機能部材41に形成する穴414の大きさを小さくしながらも、電極6のガラスビーズ5の貫通穴51に配置される軸の直径は大きくすることができるので、FGMは製造上、有利となるとともに、電極6の重量、搬送時の振動などによって生じるガラスビーズ5などへの負担を軽減することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0042】
発光管は、セラミックスなどの耐熱性と透光性を具備した材料で構成してもよい。その場合は、FGMや電極支持部材などの材料もそれに適した材料に変更すべきである。
【0043】
空間22は、目的によりその設計を変更してもよい。例えば、点灯中の傾斜機能部材4の温度を好適にするために、封入するガスの熱伝導率や、空間22の体積、特に傾斜機能部材4の外面と封止部12の内面の距離を調整してもよい。
【0044】
マウント3は、例えば、図11、図12のように、傾斜機能部材4、ガラスビーズ5、電極6、アウターリード7、金属箔8およびインナーリード9で構成されたようなものであってもよい。つまり、マウント3はガラス部材や金属部材などを一体的に組み立てたものであれば、その定義に含まれる。
【0045】
傾斜機能部材4は、材料が連続的に傾斜したものであってもよいし、径方向に傾斜したものであってもよい。また、使用する傾斜機能部材の数も限定されないし、それら複数の傾斜機能部材の接続は嵌合や溶着などであってもよい。
【0046】
傾斜機能部材4と電極6やアウターリード7等との接続は、通電部の一部を軸方向に突出させ、その突出部と電極6等とを金属箔などで巻きつけて固定するようにしてもよい。
【0047】
電極支持部材は、モリブデンからなる金属箔を多重巻きしたものであってもよい。要は封止や点灯時の温度によっても変形しにくく、かつ封止後のガラスとの熱応力を緩和させられる材料・構造であればよい。
【0048】
電極6は、別体形成されたものであってもよい。また、形状は直棒状などであってもよいし、一対の電極がともに同じ形状であってもよい。また、材料は、純タングステン、ドープタングステン、トリエーテッドタングステン、レニウムタングステンなどであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ガラスバルブ
11 球体部
12 封止部
21 放電空間
3 マウント
4 傾斜機能部材
41、42 第1、第2の傾斜機能部材
411、421 封着部
412、422 通電部
5 ガラスビーズ
51 貫通穴
52 縮径部
6 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電空間を有する球体部および前記球体部に連設された封止部を備えた発光管と、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記封止部に封着されたマウントとを具備する放電ランプであって、
前記マウントは、封着部および通電部を有する傾斜機能部材と、貫通穴を有する電極支持部材と、少なくとも一部が前記電極支持部材の前記貫通穴に配置された状態で、前記傾斜機能部材の前記通電部と接続された電極とを備えており、
前記傾斜機能部材の前記封着部および前記電極支持部材が前記封止部に溶着されていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記傾斜機能部材および前記電極支持部材は円柱状で、前記電極支持部材は前記封着部に近接または接触するように配置されており、その互いに近接または接触する前記封着部の端面と前記電極支持部材の端面の外径が同等であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記封着部に近接または接触する前記電極支持部材の端部には、縮径部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−222121(P2011−222121A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86255(P2010−86255)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】