説明

放電灯バルブ

【課題】アークチューブを短くしてもリフレクタによる所定の反射光量が十分に維持される小型の放電灯バルブの提供。
【解決手段】
一対の電極を内側に有する発光管を内側に有する外管と、各電極に接続される一対のリード線と、耳片で接合され外管に取り付けられる金属製バンドと、を備えたアークチューブと、アークチューブを挿入する内筒部と、を有し、支持部を介して前記アークチューブを支持するアークチューブ支持プラグと、リードサポート線と、を備えた放電灯バルブであって、前記耳片を、リードサポート線に対向させ、内筒部の前端周縁部の前端面を前記フランジ部の前端面とほぼ面一にするか、それよりも後端部側に形成し、発光管の発光中心と金属製バンドの前端周縁部を通る直線及び発光管の中心軸に直交する直線によって成される角度を60°〜75°にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は所定の光量を維持しつつ小型化を図った放電灯バルブを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、特許文献1の図1〜図3に示すとおり、密閉ガラス球の内側に一対の電極を対設したアークチューブを更にシュラウドガラスの内側に一体化してなるアークチューブ本体と、金属製垂直保持部材を介してアークチューブ本体を保持する絶縁プラグによる放電灯バルブ(放電ランプ装置)が記載されている。アークチューブは、密閉ガラス球の内側に封入された発光物質と電極によって発光し、密閉ガラス球の中心から出射した光は、後方側の斜め上方に配置されたリフレクタによって前方に反射される。リフレクタによる反射光の光量は、発光管の発光中心を通り、かつ発光管の中心軸に直交する直線と、発光中心及びリフレクタの最内周縁部を通る直線によって成される角度(発光中心からリフレクタへ向かう光の最大入射角)が大きいほど光量が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−123630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年においては、更なる車両用前照灯の小型化及び軽量化が求められているため、放電灯バルブにおいても更なる小型化が求められている。放電灯バルブの小型化は、特許文献1の図2に示すアークチューブ本体の長さを短くすることによって可能である。
【0005】
しかし、アークチューブ本体の絶縁プラグからの突出長さを短くした場合、図に示すアークチューブ本体の発光中心は、特許文献1の図2のアークチューブ本体に比べて、絶縁プラグにより近く配置される。その結果、図の放電ランプ装置は、発光中心からリフレクタへの入射角が小さくなるため、リフレクタによる反射光量が特許文献1の放電灯バルブよりも少なくなる点で問題がある。
【0006】
一方、アークチューブ本体の発光中心が絶縁プラグのより近くに配置された場合、放電灯バルブにおいては、アークチューブ本体からリフレクタへ出射する光の一部が金属製垂直保持部材の耳片や絶縁プラグによって遮られるため、リフレクタによる反射光量が減少する点で問題がある。
【0007】
本願発明は、アークチューブの絶縁プラグからの突出長さを短くすることによって小型化してもリフレクタによる所定の反射光量が十分に維持される放電灯バルブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の放電灯バルブは、対向して配置される一対の電極を内側に有し、かつ両端を封止された発光管と、前記発光管を内側に有し、かつ両端を封止された外管と、前記一対の電極に接続され、前記外管の前後の両端部から外管の外側にそれぞれ伸びる一対のリード線と、両端部を接合することで前記外管の外周に取り付けられる金属製バンドと、前記金属製バンドの両端部から突出した接合部位である耳片と、を備えたアークチューブと、プラグ本体と、プラグ本体の内側に中空状に形成され、かつ前端部が開口する内筒部と、前記内筒部の前端周縁部に取り付けられ、前記金属製バンドを把持することにより前記アークチューブを支持する支持部と、リフレクタ取付用のフランジ部と、を備えた、アークチューブ支持プラグと、前記外管の外側で前後に延在し、前記一対のリード線のうち一つを前記アークチューブ支持プラグに接続するリードサポート線と、を備えた放電灯バルブであって、前記耳片が、前記リードサポート線に対向するように突設され、前記前端周縁部の前端面は、放電灯バルブの取付基準面である前記フランジ部の前端面とほぼ面一となるか、または前記フランジ部の前端面より後端部側に位置するように形成され、前記発光管の発光中心及び前記金属製バンドの前端周縁部を通る直線と、前記発光管の中心軸に直交する直線によって成される角度が60°〜75°となるように形成されるようにした。
【0009】
請求項1の放電灯バルブにおいては、アークチューブ支持プラグのアークチューブ支持部によって把持される金属製バンドの耳片(溶着部分)がアークチューブの上方で無く、リードサポート線と対向する位置(下方)に配置される。また、請求項1の放電灯バルブにおいては、従来よりリフレクタ取付用のフランジ部から前方に向けて階段状に突出して設けられていた、アークチューブ支持プラグの前端周縁部の前縁面が、放電灯バルブの取付基準面である前記フランジ部の前端面とほぼ面一となる位置か、または前記フランジ部の前端面よりも後端部側に配置されている。
【0010】
更に、前記金属製バンドの前端周縁部によって遮光されることなく後方側斜め上方のリフレクタに入射する光の最大入射角(図2に示す発光管9の発光中心Oと金属製バンド25の前端周縁部25aを通る直線L4と、発光中心Oを通りかつ発光管9の中心軸L0に直交する直線L1によって成される角度θをいう、以下同じ。)が、60°〜75°に形成されている。
【0011】
(作用)その結果、請求項1の放電灯バルブにおいては、発光管の発光中心からリフレクタに向けて出射した光が金属製バンドの耳片とアークチューブ支持プラグの前端周縁部の前端面によって遮光されることなく、かつ60°〜75°の入射角をもって後方側斜め上方に配置されたリフレクタに入射する。また、アークチューブ支持プラグの内筒部の前端周縁部が発光中心から離間するため、仮にアークチューブ支持プラグに樹脂成分が含まれたとしても、放電灯バルブの点灯時に高温になったアークチューブ支持プラグが、ガスを発生しにくくなる。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載の放電灯バルブであって、前記金属製バンドの後端周縁部が、前記内筒部の前端周縁部の前端面を含む面とほぼ面一になる面に位置するように放電灯バルブを形成した。
【0013】
(作用)請求項2の放電灯バルブによれば、アークチューブがアークチューブ支持プラグから突出する長さを短くすることによって放電灯バルブを小型化してもリフレクタによる反射光量が十分に維持される。
【0014】
また、請求項3は、請求項1または2に記載の放電灯バルブであって、前記金属製バンドの後端周縁部が前記フランジ部の前端面を含む面より後端部側に位置するように形成されるようにした。
【0015】
(作用)アークチューブ支持プラグにおける内筒部の前端周縁部及び金属製バンドの取り付け位置が、発光中心から更に遠ざかるため、放電灯バルブの点灯時アークチューブ支持プラグ及び金属製バンドが、高温になりにくく、更にガスを発生しにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び2の放電灯バルブによれば、アークチューブを短くしてもリフレクタによる反射光量が十分に維持された小型の放電灯バルブを得られるため、本願放電灯バルブを採用するランプの小型化と軽量化を図ることが出来る。また、ガスによるリフレクタの変色が防止される。
【0017】
また、請求項3の放電灯バルブによれば、ガスによるリフレクタの変色が更に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】放電灯バルブの第1実施例の側面図。
【図2】図1の放電灯バルブの縦断面図。
【図3】従来の絶縁バルブと耳片の配置においてアークチューブの長さ(図LCL長さ)を短くした放電灯バルブの縦断面図。
【図4】従来技術と本願発明とのアークチューブの光束比較データを表す表。
【図5】放電灯バルブの第2実施例の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、図1及び図2により本発明における放電灯バルブの第1実施例を説明する。第1実施例の放電灯バルブ1は、アークチューブ2、電極(3,4)、リード線(5,6)、及びアークチューブ支持プラグ7及びリードサポート線8を有する。尚、図1〜3及び後述する図5においては、紙面右側を放電灯バルブの先端部側(符号F)とし、紙面左側を後端部側(符号B)として説明する。
【0020】
アークチューブ2は、発光管9を外管10の内側に一体化することによって形成される。発光管9と外管10は、共に石英ガラスで形成されると共に同軸(中心軸L0)に配置される。尚、発光管は、多結晶アルミナ等の透光性セラミックスで形成してもよく、外管は、硬質ガラスで形成してもよい。発光管9の中央部は、中心軸L0を中心とした回転楕円形状を有し、中央部の内側には、放電発光室Sが形成される。
【0021】
リード線(5,6)は、金属箔(11,12)と、金属箔の一端に接続されるリード線本体(13,14)によって形成され、金属箔の他端には、タングステン製の電極(3,4)が接続される。電極(3,4)とリード線(5,6)は、発光管9の内側に配置され、電極(3,4)は、各先端部が放電発光室S内に対設された状態で発光管9に固定される。放電発光室Sは、内側に発光物質を封入され、かつ金属箔(11,12)の配置箇所においてピンチシールされることによって密封される。
【0022】
また、アークチューブ2は、アークチューブ支持プラグ7に支持される。アークチューブ支持プラグ7は、円筒形のプラグ本体15と本体部より外径の小さな基端部16が前後に連続した形状を有し、プラグ本体15の内側には、前端部において開口する内筒部17が設けられる。プラグ本体15の前端側外周には、フランジ部18が設けられる。内筒部17の前端周縁部の前端面19は、放電灯バルブの取付基準面となるフランジ部18の前端面20とほぼ面一になるよう形成される。
【0023】
また、前端面19には、アークチューブを支持する金属製の支持部21が一体化される。支持部21は、円筒の前端外周をフランジ形状にしてなるベースプレート22の前面に複数の爪部24を内周に形成したリング部材23を一体化することで形成される。ベースプレート22は、前端面19にインサート成形される。一方、アークチューブ2の基端部近傍の外周には、両端の耳片26をアークチューブ2の下側で溶接することによって巻き付けられた金属製バンド25が固定される。金属製バンド25は、内筒部17の前端周縁部の前端面19がフランジ部18の前端面20とほぼ面一に形成された結果、アークチューブ2のより基端部側に配置可能になる。アークチューブ2は、支持部21の爪部24にアークチューブ2の金属製バンド25が挟持されることによって、アークチューブ支持プラグ7に固定される。
【0024】
一方、アークチューブ2の下方には、中心軸L0と平行に伸びるリードサポート線8が配置される。リードサポート線8の一端は、アークチューブ支持プラグ7の前端面20に開口する挿入口28に固定され、上方に屈曲する他端は、アークチューブ2の前端から伸びるリード線12に接続される。アークチューブ2と平行に配置されるリードサポート線8の外周には、筒状の絶縁スリーブ29が配置される。金属製バンド25の耳片26は、アークチューブ2の下方においてリードサポート線8に対向して配置されるため、発光管から後方側斜め上方のリフレクタに入射する光を阻害しない。
【0025】
一方、アークチューブ支持プラグ7の基端部16の内側には、内筒部17の底部30の裏面から後方に伸びる内円筒の外周に金属端子31が設けられている。金属端子31には、アークチューブ2の基端部から伸びるリード線13が接続される。アークチューブ支持プラグ7のフランジ部18には、発光管9から後方側斜め上方に出射した光を前方に反射するリフレクタ32が取り付けられる。
【0026】
ここで、図3に示す従来技術である特許文献1の(特開2003−123630号公報)放電灯バルブ(放電ランプ装置。特許文献1の図2を参照)と本願図2に示す第1実施例の放電灯バルブ1との違いを図3を交えて順に説明する。
【0027】
まず、図3の放電灯バルブ1’は、バルブの取付基準面であるフランジ部18’の前端面20’から放電灯バルブ1’の発光中心Oまでの長さLCL(以降は単にLCLとする。)を特許文献1のような従来型の放電灯バルブに一般的に採用される27.1mmから18mmにし、従来よりも約9mm程度短くしたものである。
【0028】
一方、図2の放電灯バルブ1は、アークチューブ支持プラグ7の形状と、金属製バンドの耳片26の配置位置が図3の放電灯バルブ1’のものと異なる他、放電灯バルブ1’と共通の構成を有する。具体的には、図2のアークチューブ支持プラグ7の前端周縁部の前端面19は、フランジ部18の前端面20とほぼ面一(0〜2mmの範囲内)になるよう形成されており、段差状に形成されることによってフランジ部18’の前端面20’よりも前方に突出して形成された図3の前端面19’と異なる。また、図2の金属製バンド25の耳片26は、アークチューブ2の下方においてリードサポート線8と対向するように配置されており、アークチューブ2の上方に配置された図3の金属製バンド25’の耳片26’と異なる。尚、図2のリフレクタ32は、図3のリフレクタ32’よりも最内周縁部がより中心軸L0の近くに配置されている。
【0029】
LCLの長さを短くした結果、図2と図3に示す発光管9の発光中心Oは、特許文献1の放電灯バルブに比べてバルブの取付基準面(フランジ部の前端面20’)までの距離が近くなる。
【0030】
図2と図3のリフレクタ(32,32’)による反射光の光量は、発光中心Oを通り、外管10の中心軸L0に直交する直線L1と、発光中心O及びリフレクタの最内周縁部(32a,32a’)を通る直線(L2,L4)によって成される角度θ(発光中心からリフレクタへ向かう光の最大入射角)が大きくなるほど光量が多くなる。
【0031】
図3の放電灯バルブ1’においては、前記角度θが60°になるようにすることで最低限の光量が得られるよう、リフレクタ32’とアークチューブ2をアークチューブ支持プラグ7’に一体化した。しかし、放電灯バルブ1’においては、アークチューブ支持プラグ7’の前端面19’に発光中心Oを近づけた結果、耳片26’と前端面19’が直線L2上に干渉するため、発光中心Oからリフレクタ32に入射する光の一部が耳片26’と前端面19’によって遮られている。
【0032】
図4の表は、全て同一のリフレクタを用いた際の光束の測定値であり、図2のバルブは、θ=70°としたサンプルで測定したが、特許文献1に示すようなLCLが27.1mmと長い従来の放電灯バルブ、LCLを18mmと短くした図3と図2の放電灯バルブにおける光束や光度を比較したものである。光束と光度の比較は、消費電力を従来と同様の35Wにした場合と25Wに抑えた場合の双方で行っている。また、バルブ光束は、バルブからの出射光の光束を測定したものを示し、ランプ光束は、リフレクタによる反射光の光束を測定したものを示し、中心光度は、配光パターンの中心位置における光度を測定したものである。
【0033】
そこで、LCLが27.1mmと長い従来の放電灯バルブ(以降は、単に従来バルブとする)と、従来の放電灯バルブからLCLを18mmに短くした図3の放電灯バルブ(以降は単に図3のバルブとする)との比較を図4によって行うと、図3のバルブのバルブ光束は、35Wの場合において従来バルブの光束と比べて3200(lm)から2970(lm)に減少し、25Wの場合において従来バルブの光束と比べて2150(lm)から1990(lm)に減少し、いずれにおいてもバルブ光束が約7%減少している。一方、図3のバルブのランプ光束は、35Wの場合において従来バルブのランプ光束と比べて1100(lm)から900(lm)に約18%減少し、25Wの場合において従来バルブの光束と比べて740(lm)から600(lm)に約19%減少している。更に、図3の中心光度は、35Wの場合において従来バルブの中心光度と比べて69000(cd)から50000(cd)に減少し、25Wの場合において従来バルブの中心光度と比べて44160(cd)から31900(cd)に減少し、いずれにおいても中心光度が約28%減少している。これらの減少は、発光中心Oからリフレクタ32に入射する光、リフレクタ32による反射光が耳片26’と前端面19’に遮られた結果によるものと考えられる。
【0034】
このような光束及び光度の減少を低減するため、第1実施例における図2の放電灯バルブ1においては、アークチューブ支持プラグ7の内筒部17における前端周縁部の前端面19をフランジ部18の前端面20とほぼ面一となる位置まで後退させると共に金属製バンド25の耳片26をアークチューブ2の下方に配置することにより、前端面19と耳片26が入射角θ=60°の光に干渉しないようにしている。また、第1実施例においては、耳片26をリフレクタ32の上側に位置する有効反射面から遠ざけることによって放電沿面距離を拡大し、耐電圧性の向上を図ることが出来る。
【0035】
尚、図2の直線L3は、金属製バンド25を図3と前後方向同じ位置に配置した上で耳片26を下方に向けたと仮定した場合(仮想線参照)において、発光中心Oと金属製バンド25の前端周縁部25a’’を通る直線であり、直線L1とL3の角度は60°である。入射角θ=60°の光は、金属製バンド25が図3と同じ位置で耳片26を下方に向けて配置された場合、前端周縁部25a’’に遮光されることなくリフレクタ32に入射する。
【0036】
尚、第1実施例においては、アークチューブ支持プラグ7の前端面19と前端面20がほぼ面一であるため、金属製バンド25が図3よりも後方に配置され、後端周縁部25bがフランジ部18の前端面20を含む面とほぼ面一になるように配置されている。図2の直線L4は、発光中心Oと金属製バンド25の前端周縁部25aを通る直線であり、第1実施例の放電灯バルブ1においては、直線L1とL4の角度は70°になるよう、金属製バンド25がアークチューブ2に取付けられている。また、第1実施例の放電灯バルブ1においては、図3の前端面19’と異なり図2の前端面19が前方に突出しないため、図2のリフレクタ32の最内周縁部32aを図3のリフレクタ32’の最内周縁部32a’よりも中心軸L0寄りに配置することが出来る。その結果、図2の放電灯バルブ1においては、入射角θ=70°の光が前端周縁部25aに遮光されることなくリフレクタ32に入射する。つまり第1実施例においては、リフレクタ32に向かう光の最大入射角θを60°〜70°としても光が遮光されにくくなる。
【0037】
ここで、LCLが27.1mmと長い従来の放電灯バルブ(以降は、単に従来バルブとする)と、LCLを18mmに短くした図2の放電灯バルブ(以降は単に図2のバルブとする)との比較を図4によって行うと、図2のバルブのバルブ光束は、35Wの場合において従来バルブの光束と比べて3200(lm)から3120(lm)にしか減少しておらず、25Wの場合において従来バルブの光束と比べて2150(lm)から2100(lm)にしか減少しておらず、いずれにおいてもバルブ光束が約2%しか減少していない。一方、図2のバルブのランプ光束は、35Wの場合において従来バルブのランプ光束と比べて1100(lm)から1080(lm)に約2%しか減少しておらず、25Wの場合において従来バルブの光束と比べて740(lm)から730(lm)に約1%しか減少していない。更に、図3の中心光度は、35Wの場合において従来バルブの中心光度と比べて69000(cd)から68800(cd)に約0.3%しか減少しておらず、25Wの場合において従来バルブの中心光度と比べて44160(cd)から44000(cd)に約0.4%しか減少していない。このように図2の放電灯バルブ1においては、耳片26と前端面19による光の遮光を防止し、リフレクタ32に向かう光の最大入射角θを60°〜70°にした結果、光束と光度の減少が図3の放電灯バルブ1’にくらべて大幅に低減されたものと考えられる。
【0038】
尚、海外には、所定値以上の光束を発生する車両用前照灯にヘッドランプクリーナーの装着を法規で義務づける国がある。消費電力を25Wに抑えた図2の放電灯バルブ1によれば、放電灯バルブの光束が所定値以下に抑制されることにより、ヘッドランプクリーナーを装着する義務が無くなるため、放電灯バルブを採用したランプのコストダウンを図ることが出来る。
【0039】
次に図5により、放電灯バルブの第2実施例を説明する。第2実施例の放電灯バルブ40は、アークチューブ支持プラグ41の形状と、金属製バンド25の取付位置が図2に示す放電灯バルブ1と異なる他、第1実施例の放電灯バルブ1と共通の構成を有する。
【0040】
アークチューブ支持プラグ41において、内筒部42の前端周縁部の前端面43は、アークチューブ支持プラグ7と異なり、フランジ部44の前端面45よりも後端部側(0〜0.5mmの範囲内)に段差状に形成される。フランジ部44の内側には、内筒部42よりも断面形状の大きな大開口部46が内筒部42に連通して形成されている。
【0041】
アークチューブを支持する金属製の支持部21は、内筒部42の前端周縁部の前端面43に取り付けられる。また、金属製バンド25と、アークチューブ2の下方に配置される耳片26は、大開口部46に挿入されることにより、第1実施例と比べてアークチューブ2の更に基端部側に取り付けられる。その際、金属製バンド25の後端周縁部25bは、内筒部42の前端面43を含む面とほぼ面一になるように配置される。
【0042】
第2実施例の放電灯バルブ40においては、内筒部42の前端面43がフランジ部44の前端面45よりも後端部側に位置する。その結果、アークチューブ支持プラグ41の前端面43は、第1実施例の前端面19よりも発光中心Oから遠くに形成され、また、金属製バンド25も発光中心Oからアークチューブ支持プラグ41の後端部側へ更に遠ざかる位置に取り付けることができ、発光時の熱を受けにくくなるため、ガスを発生しにくい。
【0043】
また、図5の直線L5は、発光中心Oと金属製バンド25の前端周縁部25aを通る直線であり、第2実施例の放電灯バルブ40においては、直線L1とL5の角度が75°になるよう、金属製バンド25がアークチューブ2に取付けられている。その結果、放電灯バルブ40においては、入射角θ=75°の光が前端周縁部25aによって遮光されなくなる。従って、放電灯バルブ40においては、最内周縁部32a’’を図2に比べて更に中心軸L0に近づけたリフレクタ32’’を採用した場合、更に多くの反射光(ランプ光束と中心光度)を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0044】
1 放電灯バルブ
2 アークチューブ
3,4 電極
5,6 リード線
7,41 アークチューブ支持プラグ
8 リードサポート線
9 発光管
10 外管
15 プラグ本体
17,42 内筒部
18,44 フランジ部
19,43 内筒部の前端周縁部の前端面
20,45 フランジ部の前端面
21 支持部
25 金属製バンド
25a 金属製バンドの前端周縁部
25b 金属製バンドの後端周縁部
26 耳片
O 発光中心
L0 発光管の中心軸
L1 発光管の中心軸に直交する直線
L4,L5 発光中心と金属製バンドの前端周縁部を通る直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置される一対の電極を内側に有し、かつ両端を封止された発光管と、前記発光管を内側に有し、かつ両端を封止された外管と、前記一対の電極に接続され、前記外管の前後の両端部から外管の外側にそれぞれ伸びる一対のリード線と、両端部を接合することで前記外管の外周に取り付けられる金属製バンドと、前記金属製バンドの両端部から突出した接合部位である耳片と、を備えたアークチューブと、
プラグ本体と、プラグ本体の内側に中空状に形成され、かつ前端部が開口する内筒部と、前記内筒部の前端周縁部に取り付けられ、前記金属製バンドを把持することにより前記アークチューブを支持する支持部と、リフレクタ取付用のフランジ部と、を備えた、アークチューブ支持プラグと、
前記外管の外側で前後に延在し、前記一対のリード線のうち一つを前記アークチューブ支持プラグに接続するリードサポート線と、
を備えた放電灯バルブであって、
前記耳片は、前記リードサポート線に対向するように突設され、
前記前端周縁部の前端面は、放電灯バルブの取付基準面である前記フランジ部の前端面とほぼ面一となるか、または前記フランジ部の前端面より後端部側に位置するように形成され、
前記発光管の発光中心及び前記金属製バンドの前端周縁部を通る直線と、前記発光管の中心軸に直交する直線によって成される角度が60°〜75°となるように形成されたことを特徴とする放電灯バルブ。
【請求項2】
前記金属製バンドの後端周縁部が、前記内筒部の前端周縁部の前端面を含む面とほぼ面一になる面に位置するように形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の放電灯バルブ。
【請求項3】
前記金属製バンドの後端周縁部が、前記フランジ部の前端面を含む面より後端部側に位置するように形成されたことを特徴とする、請求項1または2に記載の放電灯バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−195062(P2012−195062A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56241(P2011−56241)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】