説明

放電管の製造方法

【課題】 一対の電極装置が対向配置されたガラス管内の非発光領域を小さくして有効発光領域の長さを拡大させる。
【解決手段】 インナーリード3の所定位置に前記電極装置4A,ガラスビーズ6および水銀供給体7を取り付けて電極組立体8を形成した後、この電極組立体8をガラス管1の開口端から挿入し、排気した後、少なくともアルゴンガスを封入し、ガラス管1の開口端を気密封止した後、水銀供給体7からガラス管1内に水銀を供給し、しかる後にガラス管1のガラスビーズ6と対応する外部から加熱し溶融し、ガラス管1とガラスビーズ6とを封着した後、チップオフすることにより、非発光領域の距離が短縮される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば液晶パネル用バックライトに適用される放電管に係わり、特にガラス管内に希ガスと水銀とを封入して構成され両端部にインナーリードに接続された第1の電極部とこの第1の電極部の外周を取り囲む第2の電極部とで構成される電極装置が対向配置されて構成される放電管の製造方法に関し、詳細にはその電極装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の液晶技術の進歩により、各種表示装置に液晶表示パネルが多く用いられるようになってきた。この液晶表示パネルを用いた液晶表示装置は、最近、特に小型化,軽量化が強く要請され、このような液晶表示装置に係わる要求を満足するために液晶表示パネルのバックライトとして放電管が広く採用されている。このため、小型化した液晶表示装置を製作するには、液晶表示パネルの改善とともにバックライトの小型化が特に要求されるようになってきた。同時に表示品質を向上させるために高輝度化を図り、長寿命化が要求されている。
【0003】図2は、この種の放電管の構成を説明する図であり、図2(a)は断面図,図2(b)はその電極装置の拡大側面図,図2(c)は拡大横断面図である。図2(a)において、1は放電管本体を形成する透明なガラス管、2はこのガラス管1の内壁面に塗布された蛍光体膜、3はガラス管1の長手方向両端部にこのガラス管1の封止により保持されたインナーリード、4は各インナーリード3の先端部に互いに対向してガラス管1の長手方向の同軸上に配置された一対の電極装置である。
【0004】また、電極装置4は、図2(b),(c)に示すようにインナーリード3の先端部に鉄板の表面にニッケルメッキが施されて形成されたゲッター板材41 の表面の一部に水銀ゲッターとしてのTi3 Hg合金材42 が塗布して形成され、表面にTi3 Hg合金材42 が形成されたゲッター板材41 の2枚をインナーリード3の先端部に対向させてかしめ固定させている。なお、このガラス管1内には放電のためのアルゴンガスと前述したTi3 Hg合金材42 から放出された水銀との混合ガスが封入されて放電管5が構成されている。
【0005】このように構成された放電管5において、ガラス管1の両端部に対向配置された一対の電極装置4は、アーク放電電極およびグロー放電電極として働き、両者の相乗効果により超高輝度の放電が安定して得られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように構成される放電管5は、図3に示すようにガラス管1の主要部に形成される発光領域Lに対して両端部にインナーリード3および電極装置4を含む比較的寸法の長い非発光領域lを有しているので、図3に示すように導光方式の発光パネル装置の光源として用いた場合には、導光板11の光導入端面11aに配設されてその発光を導光板11の内部に導入すると、導光板11の表面に非発光領域lに起因する暗部(斜線部分で示す)12が生じ、これによって表示パターンに輝度斑が発生し、表示品位を低下させるという問題があった。また、導光板の真下に放電管を配設する直下方式の発光パネル装置についても同様の問題があった。
【0007】したがって本発明は、前述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、一対の電極装置が対向配置されたガラス管内の非発光領域を小さくし、有効発光領域の長さを拡大させることができる放電管の製造方法を提供することにある。また、他の目的は、ガラス管の非発光領域に起因する導光板の暗部発生による輝度斑を解消し、発光パネル装置の表示品位を向上させることができる放電管の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために本発明による放電管の製造方法は、インナーリードの先端部から順に電極装置,ガラスビーズおよび水銀供給体を取り付けた後、ガラス管の開口端から挿入し、排気した後、少なくとも希ガスを封入し、ガラス管の開口端を気密封止した後、ガラス管内に水銀供給体から水銀を供給し、しかる後にガラス管のガラスビーズと対応する外部から加熱し溶融し、ガラス管とガラスビーズとを封着することにより、非発光領域の長さが短縮される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1(a)〜(e)は、本発明による放電管の製造方法の一実施の形態を説明する各工程における要部断面図であり、前述の図と同一部分には同一符号を付してある。まず、図1(a)に示すようにインナーリード3の所定位置にそれぞれ電極装置4A,ガラスビーズ6および水銀供給体7を固定配置して電極組立体8を形成する。
【0010】なお、この電極装置4Aは、インナーリード3の先端部側に一部に設けられた焼結金属体からなる第1の電極としての円柱状電極4aと、この円柱状状電極4aを取り囲む金属成形体からなる第2の電極としてのカップ状電極4bとから構成されている。
【0011】また、円柱状電極4aは、基体金属となる耐熱性金属としての例えばW粉末を圧縮してほぼ円柱状に成形し、約1100℃以上のN2/H2雰囲気中で焼成することによって焼結金属体が形成され、この焼結金属体に熱電子放射物質として例えばCs,BaまたはLaB6 などのエミッタ材を含浸または表面に塗布させて形成されている。
【0012】また、カップ状電極4bは、例えばW,Mo,SUS,TiまたはAl材などを熱間プレス成型加工により全体の外観形状がほぼカップ状に形成され、インナーリード3の先端部に取り付け固定された円柱状電極4aの外周部分にこの円柱状電極4aを囲み、その開口部分をガラス管1の中央部に向けてその底部分でかしめ固定され、インナーリード3と同芯軸上に固定配置されている。
【0013】また、ガラスビーズ5は、貫通孔にインナーリード3が挿通され、所定位置に仮固定されて配置されている。また、水銀供給体7は、鉄板の表面にニッケルメッキが施されて形成された熱電子を放出用のゲッター板材71 の表面の一部に水銀ゲッターとしてのTi3 Hg合金材72 が塗布して形成され、表面にTi3 Hg合金材72 が形成されたゲッター板材71 の2枚をインナーリード3を挟持するように対向させて例えばスポット溶接などにより固定させている。
【0014】次に図1(b)に示すように電極組立体8を内壁面に蛍光体膜2が形成されたガラス管1の開口端から内部に挿入し、排気を行った後、放電のためのアルゴンガスを封入し、公知の方法によりガラス管1の開口端部を封止する。次に図1(c)に示すようにガラス管1の内部に封入された水銀供給体7に外部から高周波加熱装置9による高周波加熱を行い、水銀供給体7から封止されたガラス管1の内部に水銀を蒸発させる。これによってガラス管1内にはアルゴンガスと水銀ガスとの混合ガスが封入されることになる。
【0015】次に図1(d)に示すようにガラス管1のガラスビーズ6と対応する部分に外面からヒータ加熱装置10によるヒータ加熱を行い、ガラス管1とガラスビーズ6とを溶融し、ガラス管1とガラスビーズ6との封着を行う。これによって水銀供給体7が封入されたガラス管1aは、ガラス管1の本体側から完全に分離され、チップオフされて除去し、図1(e)に示すようにガラス管1内に水銀供給体7がない放電管が形成される。
【0016】このような方法により形成された放電管は、図1(e)に示すようにガラス管1内にはアルゴンガスおよび水銀ガスとの混合ガスが封入され、ガラス管1の端部には電極装置4Aのみが存在する構成となるので、ガラス管1の両端部の非発光領域lを大幅に小さくすることができる。具体的には、管径6mm、長さ300mmの放電管では、非発光領域lの長さを従来構成の約18mmに対して約8mmに短縮することができた。
【0017】また、このように形成された放電管は、電極装置4Aが円柱状電極4aがカップ状電極4bに内包されて構成されることにより、円柱状電極4aが熱電子を放出するのに適当な温度に上昇させられることによって高輝度発光させることができる。さらにこの円柱状電極4aを囲うカップ状電極4bは、円柱状電極4aからの電子放射物質および電極部材のガラス管1の管壁への飛散付着を防止させながら、カップ状電極4bの内面に付着した電子放射物質を円柱状電極4aの表面に再付着することを繰り返すことで電子放射物質の再生効果が利用でき、長寿命化を達成することができるとともに十分な放電電流が得られ、光量が増大することになり、高輝度発光が得られる。
【0018】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、一対の電極装置が対向配置されたガラス管の両端部に生じる非発光領域の長さを大幅に短縮できるので、有効発光領域が大きい放電管が得られるという極めて優れた効果を有する。
【0019】また、本発明により製造された放電管を導光方式または直下方式の発光パネル装置の光源として用いた場合には、ガラス管の非発光領域に起因する導光板の暗部発生による輝度班が解消され、表示品位の高い発光パネル装置が得られるという極めて優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による放電管の製造方法の一実施の形態を説明する各工程の断面図である。
【図2】 (a)は従来の放電管の構成を示す断面図、(b)は電極装置の構成を示す拡大側面図、(c)は電極装置の構成を示す拡大横断面図である。
【図3】 従来の放電管を導光方式の発光パネル装置の光源として用いた場合に生じる問題点を説明する平面図である。
【符号の説明】
1…ガラス管、2…蛍光体膜、3…インナーリード、4A…電極装置、4a…円柱状電極、4b…カップ状電極、5…放電管、6…ガラスビーズ、7…水銀供給体、71 …ゲッター板材、72 …Ti3 Hg合金材、8…電極組立体、9…高周波加熱装置、10…ヒータ加熱装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 両端部が気密封止されたガラス管内に少なくとも希ガスおよび水銀が封入された放電空間に対向配置された一対の電極装置がインナーリードに接続された第1の電極と、この第1の電極の外周を取り囲む第2の電極とから構成された放電管において、前記インナーリードの所定位置に前記電極装置,ガラスビーズおよび水銀供給体を取り付けて電極組立体を形成した後、前記電極組立体を前記ガラス管の開口端から挿入し、排気した後、少なくとも希ガスを封入し、前記ガラス管の開口端を気密封止した後、前記水銀供給体から前記ガラス管内に水銀を供給し、しかる後、前記ガラス管の前記ガラスビーズと対応する外部から加熱し溶融し、前記ガラス管とガラスビーズとを封着した後、チップオフすることを特徴とする放電管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平9−259762
【公開日】平成9年(1997)10月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−60723
【出願日】平成8年(1996)3月18日
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)