説明

放電管

【課題】内部に入り込もうとする外乱光を遮光すると共に、仮に内部に外乱光が入り込んでもこれを吸収してクロストークの発生を防止することで、出力特性が低下しないようにした放電管を提供する。
【解決手段】正電極板141及び負電極板142と、正電極板及び負電極板を対向配置させた状態で備えた台座ガラスと、所望の波長域の光を透過させる光線透過部111と、正電極板及び負電極板の周縁を囲むように台座ガラスの外周縁部に接合される側面ガラス112とを有した放電管であって、台座ガラスは、所定の粉ガラスを成形後、焼き固めたタブレット成形体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UVチューブ等の放電管に関する。
【背景技術】
【0002】
放電管の一つであるUVチューブ(紫外線検出器:UVセンサ)は、所定のガスを充填封止した密閉容器内に電極を配置し、電極と対向するUVガラスを透過して入光した所定波長域のUV(紫外線)を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
係るUVチューブは火炎検出を目的としており、天板であるUVガラスを介して、特定の波長域(185〜310nm)の紫外線を検出している。
【0004】
このUVチューブを製造するにあたって、電極が対向配置された台座ガラスと、UVガラスを備えるガラスエンベロープ(以下、「エンベロープ」とする)との接合は、バーナーの火炎をあてて台座ガラスとバルブガラスを溶融させることで行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−37094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り現在のUVチューブの製造工程は、購入したバルブガラスをバーナープレス工法により製作した台座ガラスとエンベロープを型に入れ、バーナーによる加熱を伴うプレス成型技術を用いて製造している。そのため、設計寸法通りに製造することが難しい。
【0007】
また、本来、このUV感度波長域を外れる蛍光灯などの外乱光は取り入れたくない光であるが、従来の構造では、エンベロープの側面や台座ガラスの下面からも、検出対象である所定波長域を外れる蛍光灯などの外乱光を少なからず取り込んでしまうため、擬似放電による性能低下が問題となっている。
【0008】
本発明の目的は、外乱光の影響によるクロストークの発生を防止することで、出力特性が低下しないようにした放電管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る放電管は、
正電極板及び負電極板と、前記正電極板及び負電極板を対向配置させた状態で備えた台座ガラスと、所望の波長域の光を透過させる光線透過部と、前記正電極板及び負電極板の周縁を囲むように前記台座ガラスの外周縁部に接合される側面ガラスとを有した放電管であって、
前記台座ガラスは、所定の粉ガラスを成形後に焼き固めたタブレット成形体からなることを特徴としている。
【0010】
台座ガラスが、所定の粉ガラスを成形後に焼き固めたタブレット成形体からなるので、外乱光が台座ガラス側から放電管内に入り込むのを遮光できると共に、側面ガラスから放電管内に透過した外乱光も台座ガラスで反射しないようにすることで、クロストーク(放電管の外部から内部に入光した外乱光が放電管内において反射して電極に達し、ノイズの原因となること)の影響を抑えることができる。
【0011】
また、台座ガラス用として、焼結するだけで変色(例えば、白色(不透明色))する粉ガラスを用いれば、わざわざ別工程で台座ガラスを着色して遮光性をもたせる必要が無くなり、遮光性を有する台座ガラスの生産性を格段に向上させる。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る放電管は、請求項1に記載の放電管において、
前記台座ガラスは、特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収することを特徴としている。
【0013】
台座ガラスを特定の波長域の光に対応する補色で着色することで、外乱光が台座ガラスから放電管に入り込むのを遮光すると共に、放電管に悪影響を及ぼす可能性の高い特定の波長の光であって台座ガラス以外の部分から放電管内に入り込んだ光を台座ガラスで効率的に吸収して電極板に到達するのを確実に阻止する。これによって、クロストークの発生をより確実に阻止する。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る放電管は、請求項1又は2に記載の放電管において、
前記台座ガラスと側面ガラスとの接合部に接合用ガラス成形体を介在させ、
前記接合用ガラス成形体は、特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収することを特徴としている。
【0015】
台座ガラスと側面ガラスとの接合部に介在した接合用ガラス成形体をこのような特定の波長域の光に対応する補色で着色することで、外乱光がこの接合用ガラス成形体の部分から放電管内に入り込むのを遮光すると共に、この接合用ガラス成形体以外の部分から放電管に入り込んだ放電管に悪影響を及ぼす特定の波長域の光をこの接合用ガラスの部分で即座に吸収し、クロストークが生じるのを防止する。
【0016】
また、本発明の請求項4に係る放電管は、請求項1乃至3の何れかに記載の放電管において、
前記光線透過部と側面ガラスとの接合部に接合用ガラス成形体を介在させ、
前記接合用ガラス成形体は特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収することを特徴としている。
【0017】
光線透過部と側面ガラスとの接合部に介在した接合用ガラス成形体をこのような特定の波長域の光に対応する補色で着色することで、外乱光がこの接合用ガラス成形体の部分から放電管内に入り込むのを遮光すると共に、この接合用ガラス成形体以外の部分から放電管に入り込んだ放電管に悪影響を及ぼす特定の波長域の光をこの接合用ガラスの部分で即座に吸収し、クロストークが生じるのを防止する。
【0018】
また、本発明の請求項5に係る放電管は、請求項1乃至4の何れかに記載の放電管において、
前記側面ガラスは特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収することを特徴としている。
【0019】
側面ガラスをこのような特定の波長域の光に対応する補色で着色することで、外乱光が側面ガラスの部分から放電管内に入り込むのを遮光すると共に、側面ガラス以外の部分から放電管内に入り込んだ放電管に悪影響を及ぼす特定の波長域の光を側面ガラスで即座に吸収し、クロストークが生じるのを防止する。
【0020】
また、本発明の請求項6に係る放電管は、請求項1乃至5の何れかに記載の放電管において、
前記特定の波長域の光は蛍光灯の光であり、前記補色は緑色であることを特徴としている。
【0021】
放電管に悪影響を及ぼす可能性の高い外部からの外乱光の一つに蛍光灯の光が挙げられるが、蛍光灯の光の補色である緑色で台座ガラスや接合用ガラス成形体を着色することで、このような蛍光灯の光が放電管の内部に入り込んで放電管の特性を低下させるのを確実に防止する。
【0022】
また、請求項7に記載の放電管は、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の放電管において、
前記放電管はUVセンサ(UVチューブ)であることを特徴としている。
【0023】
UVチューブがこのような構成を有することで、外乱光の影響による擬似火炎を通常の火炎として誤検出するのを防止し、本来検出すべき紫外線のみから火炎検出を正しく行う。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、内部に入り込もうとする外乱光を遮光すると共に、仮に内部に外乱光が入り込んでもこれを吸収してクロストークの発生を防止することで、出力特性が低下しないようにした放電管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の放電管の一実施形態としてのUVチューブを示す説明図であって、当該UVチューブを長手方向に沿って切断した断面図である。
【図2】図1に対応する図であり、図1に示したUVチューブの第1変形例を示す断面図である。
【図3】図1に対応する図であり、図1に示したUVチューブの第2変形例を示す断面図である。
【図4】光の波長と補色との関係を示す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る放電管の一実施形態としてのUVチューブについて図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態としてのUVチューブを示す説明図であって、当該UVチューブを長手方向に沿って切断した断面図である。
【0027】
本発明の一実施形態に係るUVチューブ100は、エンベロープ110と、エンベロープ110に接合用ガラス成形体170を介して接合された台座ガラス120と、台座ガラス120を貫通する6本の電極支持ピン130と、6本の電極支持ピン130(図1では4本のみ図示)を介して台座ガラス120に支持された電極板140と、台座ガラス120からエンベロープ110と反対側に突出した排気管150とを有している。
【0028】
エンベロープ110は、本実施形態ではホウ珪酸ガラスでできており、UVチューブ100の組立て前の状態で一方の端部が天板(光線透過部)111として塞がれた円筒形状を有している。そして、天板111の部分は、ガラス内からFe成分を除去して紫外線を透過させるようになっており、UVチューブ100を設置した状態で、天板111が例えばボイラの火炎等に向けられ、火炎の発する紫外線をエンベロープ内に入光するようになっている。また、エンベロープ110の側面ガラス(周側壁)112は、通常のホウ珪酸ガラスでできており、この部分からエンベロープ内に紫外線が入光し難くなっている。
【0029】
接合用ガラス成形体170は、UVチューブ100の製造前の状態でリング状をなし、エンベロープ110及び台座ガラス120の材質であるホウ珪酸ガラスよりも軟化温度が低いガラスでできている。
【0030】
台座ガラス120は、エンベロープ110と同様にホウ珪酸ガラスでできており、粉ガラスを焼成させて全体的に白色となるように形成されている。即ち、台座ガラス120は、粉ガラスをプレス成型し、仮焼成してバインダを除去し、ハーメチックによりコバールピンからなる電極支持ピン130と一体化する。このような台座ガラス120の白色化によって、台座ガラス120からエンベロープ内に外乱光や検出すべき火炎以外の紫外線が入光してこれを疑似火炎として検出するのを阻止している。即ち、台座ガラス120は、これらの外乱光や検出すべき火炎以外の紫外線を遮光する役目も果たしている。
【0031】
なお、台座ガラス120は、後述するように特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収するようになっていても良い。
【0032】
台座ガラス120の形状は全周に亘って複数の段部が形成された厚さの厚い略円板状をなしており、台座ガラス120の周縁近傍に周方向等間隔をなして6本の電極支持ピン130が貫通している。なお、6本の電極支持ピン130の軸線と台座ガラス120の中心軸線は平行となっている。
【0033】
また、台座ガラス120の中央部分には貫通孔121が形成され、この貫通孔121の図中下部が拡径されて排気管端部付き当て用凹み部122を形成し、排気管150の端部151が当接している。なお、排気管150の端部151は炉内での焼成等で台座ガラス120に接合されている。
【0034】
また、台座ガラス120の外周の段部のうち図中下側の段部にはリング状の接合用ガラス成形体170がUVチューブ100の組立て前に載せられ、その接合用ガラス成形体170の上にエンベロープ110が載せられている。なお、接合用ガラス成形体170も、台座ガラス120と同様に粉ガラスを焼成してできており、台座ガラス120とエンベロープ110を接合する前は全体的に白色となっている。そして、台座ガラス120とエンベロープ110は、接合用ガラス成形体170を介して後述する接合方法で接合され、この部分は封着されている。
【0035】
電極支持ピン130は、台座ガラス120の周縁近傍に円周方向に亘って等間隔隔てた6本の電極支持ピンからなり、上述したように台座ガラス120を貫通した状態で設けられている。そして、6本の電極支持ピン130のうち3本の電極支持ピン131(図中2本のみ図示)が周方向互いに等間隔隔てて台座ガラス120に設けられ、かつ一方の電極(アノード電極141)の支持体及び出力取り出し用端子としての役目を果たしている。また、残りの3本の電極支持ピン132(図中2本のみ図示)はアノード電極支持用の電極支持ピン131の周方向入れ違いの位置に等間隔をなして台座ガラス120に設けられており、他方の電極(カソード電極142)の支持体及び出力取り出し用端子としての役目も果たしている。そして、アノード電極支持用の電極支持ピン131は、カソード電極支持用の電極支持ピン132よりも図1中若干上方に突出しており、このアノード電極支持用の電極支持ピン131を介して網状の円板からなるアノード電極141がレーザー溶接等により固定されている。また、カソード電極支持用の電極支持ピン132の端部には円板状のカソード電極142がレーザー溶接等によって固定されている。なお、カソード電極142には、ここでは図示しないがアノード電極支持用の電極支持ピン131と干渉しないように切欠きが設けられている。
【0036】
以上の構成によって、アノード電極141とカソード電極142とは互いに所定間隔隔てた状態で対向配置されている。なお、電極支持ピン130は、電極固定部をなす端部の位置が設計寸法通りになるように台座ガラス120に所定の温度で焼成されている。これによって、アノード電極141とカソード電極142との間隔は電極支持ピン130を台座ガラス120に焼成してアノード電極141とカソード電極142をレーザー溶接等により固定した台座ガラスアッシー120Aの状態においては電極間の間隔が厳密に管理されている。
【0037】
排気管150は、エンベロープ110及び台座ガラス120と同様にホウ珪酸ガラスでできており、細長の筒体からなり、一方の端部151が台座ガラス120に上述したようなバーナーの火炎であぶって接合されると共に、他方の端部152が閉塞されている。このように他方の端部152が閉塞されることで、エンベロープ110、接合用ガラス成形体170、台座ガラス120、及び排気管150によって内部に空間100Cが画成され、この空間内にネオン(Ne)及び水素(H)からなるペニングガスが封入されている。なお、UVチューブ100の製造前では、排気管150の他方の端部152は開口され、製造中にこの空間内の空気をそのペニングガスで置換するようになっている。
【0038】
続いて、上述したUVチューブ100の製造工程について説明する。最初に台座ガラス120を製造する。この台座ガラス120の製造にあたっては、ホウ珪酸ガラスからなる粉ガラスを台座ガラス成形型に入れてプレス成型後に仮焼成する。そして、6本の仮焼成した電極支持ピン130を仮焼成した台座ガラス120に挿入し、台座ガラス120及び電極支持ピン130を加熱して焼成し、台座ガラス120及び電極支持ピン130を一体化させる。この工程において、台座ガラス120の部分は白色に形成され、この部分を紫外線及び他の波長の外乱光が透過できないようなる。即ち、ボタンステム120の全体に遮光特性をもたせる。
【0039】
この際、電極支持ピン130のアノード電極支持用の電極支持ピン131がカソード電極支持用の電極支持ピン132よりも電極間の間隔に対応する所定の突き出し量だけ突出させるようにして一体化させる。
【0040】
次いで、電極支持ピン130の電極取り付け側端部は、カソード電極142をそのアノード電極干渉防止用の切欠き部を介してアノード電極支持用の電極支持ピン131と干渉しないようにカソード電極142に取り付け、レーザー溶接等で固定する。
【0041】
次いで、アノード電極支持用の電極支持ピン131にアノード電極141をレーザー溶接等で取り付ける。これによってアノード電極141とカソード電極142との間は設計通りの間隔が維持されるようになっている。この段階で台座ガラスアッシー120Aが製造される。
【0042】
そして、台座ガラス120に排気管150の一方の端部151を嵌め込む。続いて、台座ガラス120の排気管150を嵌め込んだ部分を後述するように図示しない治具で固定して炉内で焼成して、両者を接合する。
【0043】
続いて、ここでは図示しない治具にエンベロープ110を図1とは上下逆の方向で組み付ける。即ち、最初に天板111を下に向けた状態のエンベロープ110を治具のUVチューブ組立て収容部に収容する。そして、エンベロープ110の上側に位置する開口部112aに接合用ガラス成形体170を載せ、更に台座ガラス120を図1とは上下逆の方向で接合用ガラス成形体170に載せる。
【0044】
治具にはこのようなUVチューブ組立て収容部が多数形成されており、それぞれのUVチューブ組立て収容部に上述の手順でUVチューブ100の各部品を組み込む。そして、UVチューブ100の部品をこの治具に組み込みを終えた後、加熱炉に治具ごと入れて治具ごと加熱する。この加熱に際して、加熱炉の温度は接合用ガラス成形体170が溶融して台座ガラス120とエンベロープ110との間を封着する温度まで加熱する。本実施形態では、例えば650℃まで加熱炉内の温度を高める。
【0045】
650℃まで加熱すると、本実施形態では接合用ガラス成形体170は軟化するが、台座ガラス120やエンベロープ110の軟化温度である750℃には達していないので、これら台座ガラス120やエンベロープ110には熱的な悪影響を与えずに済む。これによって台座ガラス120のエンベロープ110との接合部近傍を貫通する電極支持ピン近傍の部分が軟化することなく、エンベロープ110と台座ガラス120との接合時に電極支持ピン130と台座ガラス120との寸法関係にも悪影響を与えることがない。なお、接合用ガラス成形体170も粉ガラスを焼成した白色ガラスとしてできているので、加熱して軟化させても白色のままとなり、外乱光や検出すべき火炎以外の紫外線をこの部分で遮光するようになっている。
【0046】
その結果、電極支持ピン130の端部に取り付けられたアノード電極141及びカソード電極142の間隔も設計寸法通りに維持され、UVチューブ100の感度特性を低下させることがない。
【0047】
続いて、窒素雰囲気中の加熱炉においてエンベロープ110と台座ガラス120を接合したUVチューブ100を外部に取り出し、後工程で排気管150の端部開口部からUVチューブ内の空間の空気を抜いてガスを封入する。このガスは、上述した通りのペニングガスである。そして、排気管150の、電極支持ピンより突き出た部分で排気管150をバーナーの火炎であぶる。UVチューブ内は外部雰囲気より負圧になっているので、バーナーで加熱した部分の溶けたガラスが収束してこの部分が閉塞される。これによって、UVチューブ100の製造を完了する。
【0048】
以上の通り、本実施形態では、台座ガラス120が所定の粉ガラスを成形後に焼き固めたタブレット成形体からなるので、台座ガラス側から進入する外乱光を確実に吸収できると共に、側面ガラス112から透過する外乱光も台座ガラス120で吸収することで、クロストーク(放電管の外部から内部に入光した外乱光が電極に達してノイズの原因となること)の影響を抑えることができる。
【0049】
また、台座ガラス120の電極支持ピン130が貫通した部分を台座ガラス120とエンベロープ110との接合時に熱で変形させることがない。その結果、アノード電極141とカソード電極142との間隔を台座ガラスアッシー120Aとして組み立てたままの状態に維持することができ、UVチューブ製造後においてもこれら電極間の設計寸法通りの間隔を維持することができる。
【0050】
ここで、本実施形態の修正例として、UVチューブが擬似火炎として誤検出する可能性の最も高い蛍光灯の光からなる外乱光であってUVチューブ内に入り込んだ外乱光によるクロストークの発生を防止するために、台座ガラス120をタブレット化し、蛍光灯の波長域の光を吸収するように着色しても良い。この際、着色したタブレットは、粉ガラスに着色を与える金属とバインダーを添加してプレス成形後、750℃で仮焼成(バインダー除去)して製造する。その後、このタブレットに電極支持ピン130を配置し、1000℃で焼成することで電極支持ピン130を固定して台座ガラス120と電極支持ピン130を一体化させる。添加する金属は、透過させたい波長域の光の補色あるいは吸収させたい波長域の光の補色となるように適時選定する。特に、本修正例のように外乱光としてUVチューブに最も悪影響を与え易い蛍光灯の光(380〜435nm)を積極的に吸収したい場合は、緑色となるようにV(バナジウム)金属を添加する。
【0051】
なお、後述するように必要に応じて補色によりTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Pt、Uなどを添加すれば良い。
【0052】
また、エンベロープ110と台座ガラス120を接合する際に介在させる接合用ガラス成形体170にも同様に緑色の着色をすることで、UVチューブ内に入り込んだ蛍光灯の光をこの部分で吸収させ、クロストークの発生をより確実に阻止することができる。
【0053】
続いて、上述した実施形態の他の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。この変形例は第1変形例及び第2変形例からなる。
【0054】
図2は、図1に対応する図であり、図1に示したUVチューブの第1変形例を示す断面図である。第1変形例は、上述した実施形態のようにエンベロープ210と台座ガラス220との間に接合用ガラス成形体270が介在していることに加えて、排気管250と台座ガラス220との間にも接合用ガラス成形体280が介在している。後者の接合用ガラス成形体280は、内径が排気管250の内径と同等で外径が台座ガラス220の排気管取り付け用凹み部222の内径と合致した円環状成形体281と、この円環状成形体281に一端が当接し、排気管250の外径と同一の外径を有する円筒状成形体282からなっている。接合用ガラス成形体280を構成する円環状成形体281と円筒状成形体282はそれぞれ粉ガラスを焼成してできているので、全体が白色となり、紫外線や外乱光を遮光するようになっている。
【0055】
なお、この第1変形例に係るUVチューブ200を製造するにあたって、上述の実施形態と異なる製造プロセスとしては、電極支持ピン230を台座ガラス220に固定しかつ電極支持ピン230の端部にアノード電極241とカソード電極242を取り付けてなる台座ガラスアッシー220Aと、エンベロープ210と、台座ガラス220との接合工程において、排気管250を台座ガラス220に接合するようになっていることにある。
【0056】
即ち、このUVチューブ200の具体的製造方法としては、台座ガラス220に電極支持ピン230を挿入して台座ガラス220の電極支持ピン挿入部をバーナーの火炎であぶって両者を一体化させ、電極支持ピン230の先端にアノード電極241とカソード電極242をレーザー溶接等で取り付けた段階で台座ガラスアッシー220Aを構成する点が上述の実施形態と異なっている。
【0057】
UVチューブ200を製造するにあたって、UVチューブ製造用治具のUVチューブ収容用凹み部に、図2とは上下逆の方向でエンベロープ210を収容し、エンベロープ210の開口部に接合用ガラス成形体270を載せ、この接合用ガラス成形体270の上に図2とは上下逆の方向で台座ガラスアッシー220Aを載せ、台座ガラス220の排気管取り付け用凹み部222に円環状成形体281を載せると共に、一端部に円筒状成形体282を嵌めた排気管250を付き当てる。
【0058】
UVチューブ製造用治具に設けられた複数のUVチューブ収容凹み部の全てにこのようなUVチューブ200を構成する各部品を配置した後、UVチューブ製造用治具を加熱炉に入れ、上述の実施形態と同様に約650℃で所定時間加熱する。これによって、エンベロープ210と台座ガラス220との間の接合用ガラス成形体270が軟化してエンベロープ210と台座ガラス220との間が封着されると共に、台座ガラス220と排気管250との間の接合用ガラス成形体280が軟化して台座ガラス220と排気管250との間が封着される。
【0059】
なお、台座ガラス220と排気管250との間の接合用ガラス成形体280は円環状成形体281と円筒状成形体282の2つの成形体でできていたが、これらを一体化した接合用ガラス成形体としても良い。しかしながら、加熱によりこの部分溶融して一体化するので、前者の方が成形コスト上有利である。
【0060】
ここで、接合用ガラス成形体280は、上述したように台座ガラス220と排気管250を接合する前の段階で粉ガラスを焼成して白色となっている。これによって、UVチューブの外部から台座ガラス220と排気管250との間を通ってUVチューブの内部に外乱光が入り込むのを阻止する。なお、台座ガラス220が、所定の粉ガラスを成形後に焼き固めたタブレット成形体からなるので、外乱光が台座ガラス220を介してUVチューブ内に入り込むのを確実に防止できると共に、側面ガラス212を透過して入り込んだ外乱光も台座ガラス220及び接合用ガラス成形体280で吸収することで、クロストーク(放電管の外部から内部に入光した外乱光が反射して電極に達し、ノイズの原因となること)の影響を抑えることができる。
【0061】
なお、本変形例の修正例として、台座ガラス220及び接合用ガラス成形体280をUVチューブ内に入り込んだ特定の波長の外乱光を吸収する補色で着色しているのがより好ましい。この場合、外乱光が蛍光灯の光とすると、一般に波長領域が400nm〜650nmであり、補色として緑色で着色されている。外乱光が蛍光灯の光の場合、このような補色とする理由は上述の実施形態と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0062】
続いて、上述の実施形態の第2変形例について説明する。図3は、図1に対応する図であり、図1に示したUVチューブの第2変形例を示す断面図である。第2変形例は、上述した第1変形例のようにエンベロープ310と台座ガラス320との間に接合用ガラス成形体370が介在すると共に、排気管350と台座ガラス320との間にも接合用ガラス成形体380が介在していることに加えて、エンベロープ310が円板状の天板311と円筒状の側方周壁312からなり、この天板311と側方周壁の間にリング状の接合用ガラス成形体390が介在されている点で上述の実施形態及びその第1変形例と構成が異なっている。
【0063】
そして、本変形例において特定の波長域の光をなす外乱光を蛍光灯の光とすると、蛍光灯の光は、一般に波長領域が400nm〜650nmの光であり、側面ガラス312は、補色として緑色で着色されている。
【0064】
なお、リング状の接合用ガラス成形体390は、粉ガラスを焼成して白色となっている。これによって、UVチューブ300の外部から台座ガラス320と排気管350との間を通ってUVチューブ内に外乱光や紫外線が入り込むのを遮光する。また、側面ガラス312は、特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収するようになっている。
【0065】
そして、この第2変形例に係るUVチューブ300を製造するにあたって、上述の実施形態及び第1変形例と異なる工程としては、UVチューブ製造用治具のUVチューブ収容用凹み部に、図3とは上下逆の方向でエンベロープ310の天板(光線透過部)311を収容し、この天板上にリング状の接合用ガラス成形体390を載せ、この接合用ガラス成形体390の上に緑色に着色した側面ガラス(側方周壁)312を載せ、粉ガラスからなり、焼成後に白色化する接合用ガラス成形体370を側面ガラス312に載せ、この接合用ガラス成形体370の上に上述した第1変形例と同等の台座ガラスアッシー320Aを載せ、焼成後に白色化するリング状の接合用ガラス成形体381を台座ガラス320の排気管取り付け用凹み部に載せると共に、焼成後に白色化する円筒状の接合用ガラス成形体382を嵌めた排気管350を付き当てる。
【0066】
UVチューブ製造用治具の各治具構成要素にこのようなUVチューブ300を構成する各部品をそれぞれ配置した後、UVチューブ製造用治具を加熱炉に入れ、上述の実施形態と同様に約650℃で所定時間加熱する。これによって、側方周壁312と台座ガラス320との間の接合用ガラス成形体370が軟化して側方周壁312と台座ガラス320との間が封着され、台座ガラス320と排気管350との間の接合用ガラス成形体380(381,382)が軟化して台座ガラス320と排気管350との間が封着され、天板311と側方周壁312との間の接合用ガラス成形体390が軟化して天板311と側方周壁312との間が封着される。
【0067】
一方、上述の第2変形例において天板311と側面ガラス312との接合部に介在された接合用ガラス成形体390は、例えば蛍光灯の波長の補色とされる緑色等、特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収するようになっていると、UVチューブ内に入り込んだ特定の波長の外乱光をこの補色で着色した接合用ガラス成形体390の部分で吸収でき、クロストークの発生をより確実に防止する。
【0068】
なお、以上の説明において、台座ガラス、側面ガラス、及び接合用ガラス成形体が上述のように構成されていることで、外乱光がUVチューブの外側から内部に入り込まないようになっており、仮に外乱光がUVチューブの内部に入り込んだとしてもこれら台座ガラス、側面ガラス、及び接合用ガラス成形体が外乱光をすぐに吸収してクロストークが生じるのを阻止するように外乱光と補色の関係なるようにこれら台座ガラス、側面ガラス、及び接合用ガラス成形体が着色されている利点を説明した。以下にこの外乱光の補色と波長との関係について説明する。
【0069】
上述の実施形態及びその各変形例においては、特定の波長域の光は、波長領域が400nm〜650nmの蛍光灯の光であり、補色として緑色で着色されていたが、外乱光としては蛍光灯の光の他に太陽光や白熱電球の光も考えられるので、補色によって対応すべき外乱光は、必ずしもこの波長域に限定されない。
【0070】
ここで、光の波長と補色との関係は図4に示すようになっている。具体的には、波長域380〜435nm(光の色が紫)の場合の補色は緑となっており、波長域435〜480nm(光の色が青)の場合の補色は黄となっており、波長域480〜490nm(光の色が緑青)の場合の補色は橙となっている。また、波長域490〜500nm(光の色が青緑)の場合の補色は赤となっており、波長域500〜560nm(光の色が緑)の場合の補色は赤紫となっており、波長域560〜580nm(光の色が黄緑)の場合の補色は紫となっている。また、波長域580〜595nm(光の色が黄)の場合の補色は青となっており、波長域595〜650nm(光の色が橙)の場合の補色は緑青となっており、波長域650〜780nm(光の色が赤)の場合の補色は青緑となっている。
【0071】
従って、放電管が設置されている場所を考慮して、太陽光が外乱光として入光し易い場合、白熱電球の光が外乱光として入光し易い場合、蛍光灯のうち比較的明るく点灯する光が外乱光として入光し易い場合、蛍光灯のうち比較的暗めに点灯する光が外乱光として入光し易い場合に応じて、台座ガラス、側面ガラス、及び接合用ガラスを着色する色を決めれば良い。
【0072】
以上説明した本発明の効果に加えて、本発明の更なる派生効果について以下に説明する。台座ガラスとエンベロープとの接合では、従来においてはガスバーナーによる火炎での接合が一般的であった。このガスバーナーの火炎による加熱の際には、接合部とガスバーナーの火炎とが周方向に相対的に移動しなくてはならず、接合用設備の複雑化や大型化を招いていた。これに加えて、接合部が周方向全体にわたって均一に加熱溶融されるための技量が作業者に求められると同時に、火炎を使用することで設備設置場所(作業場所)の環境制限が大きくなっていた。
【0073】
しかしながら、本発明においては、台座ガラスやエンベロープよりも軟化温度の低い接合用ガラス成形体を用いているので、このようなガスバーナーの火炎によるUVチューブ一つずつの製造プロセスを加熱炉を利用したバッチ処理やリフロー加熱処理に置き換えることができ、UVチューブの生産効率を飛躍的に向上させることができる。
【0074】
ここで、UVチューブの量産化を行うにあたって、現工程は各部品の接合にバーナー工程を用いているが、工程の安定化は困難を極めており、技術者のライン離れが難しいのが現実である。更に、量産化に向けたライン拡大を考慮すると、莫大な設備投資とスペース確保、生産の安定など数々の懸念点が残る。しかしながら、本発明は、バーナー工程を省略することができ、上述したメリットがかなり大きいと言える。
【0075】
以上説明したように本発明では、粉ガラスを焼成したタブレットガラスを用いたハーメチック工法で台座ガラスを製造する。具体的には、粉ガラスをプレス成型し、仮焼成してバインダを除去し、ハーメチックによりコバールピンと一体化する。これによって、台座ガラスからの光をUVチューブ内に透過させることなく、さらにはクロストークを削減できるため、擬似放電による性能低下の心配がなくなる。
【0076】
また、本発明においては、タブレットガラスの形態をなす白色の台座ガラスを更に着色させることにより、UVセンサの更なる性能向上が見込める。これは、分子(物質)固有の色は全て吸収波長に依存しているため、使用環境に合わせた色のタブレットガラスを用いることにより、高性能なUVセンサを実現できるからである。
【0077】
なお、台座ガラスをなすタブレットガラスの製造工程は、粉ガラスとバインダを混合し、プレス成型することからなる。そして、粉ガラスとバインダとの混合工程の段階で充填材を加えることにより、様々な色のタブレットガラスを製造することが可能となる。
【0078】
このようなタブレット工法を用いた粉ガラスを原料とした台座ガラスの白色化、及びこれに更なる着色工程を加えることで、UVセンサの製造に関するコストダウンを達成できる。具体的には、タブレット工法の場合、加熱炉を用いた大量バッチ生産や連続炉を用いた連続生産が可能となる。これにより、設備投資、スペースの縮小などの効果が見込める。
【0079】
また、電極支持ピンと台座ガラスの接合強度が格段に向上することで、品質向上が図れる。本発明の発明者が実際に成分分析を行なった結果、現行品と比較して10倍程度の元素拡散領域を確認でき、この接合強度向上の裏付けとなった。
【符号の説明】
【0080】
100 UVチューブ
100C 空間
110 エンベロープ
111 天板(光線透過部)
112 側面ガラス(周側壁)
112a 開口部
120 台座ガラス
120A 台座ガラスアッシー
121 貫通孔
122 排気管端部付き当て用凹み部
130(131,132) 電極支持ピン
140 電極板
141 アノード電極
142 カソード電極
150 排気管
151 端部
152 端部
170 接合用ガラス成形体
200 UVチューブ
210 エンベロープ
212 側面ガラス
220 台座ガラス
220A 台座ガラスアッシー
222 排気管取り付け用凹み部
230 電極支持ピン
241 アノード電極
242 カソード電極
250 排気管
270 接合用ガラス成形体
280 接合用ガラス成形体
281 円環状成形体
282 円筒状成形体
300 UVチューブ
310 エンベロープ
311 天板
312 側面ガラス(側方周壁)
320 台座ガラス
320A 台座ガラスアッシー
350 排気管
370 接合用ガラス成形体
380(381,382) 接合用ガラス成形体
390 接合用ガラス成形体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電極板及び負電極板と、前記正電極板及び負電極板を対向配置させた状態で備えた台座ガラスと、所望の波長域の光を透過させる光線透過部と、前記正電極板及び負電極板の周縁を囲むように前記台座ガラスの外周縁部に接合される側面ガラスとを有した放電管であって、
前記台座ガラスは、所定の粉ガラスを成形後、焼き固めたタブレット成形体からなることを特徴とする放電管。
【請求項2】
前記台座ガラスは、特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収することを特徴とする、請求項1に記載の放電管。
【請求項3】
前記台座ガラスと側面ガラスとの接合部に接合用ガラス成形体を介在させ、
前記接合用ガラス成形体は、特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収することを特徴とする、請求項1又は2に記載の放電管。
【請求項4】
前記光線透過部と側面ガラスとの接合部に接合用ガラス成形体を介在させ、
前記接合用ガラス成形体は特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収することを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の放電管。
【請求項5】
前記側面ガラスは特定の波長域の光に対応する補色で着色されており、特定の波長域の光を吸収することを特徴とする、請求項1乃至4の何れかに記載の放電管。
【請求項6】
前記特定の波長域の光は蛍光灯の光であり、前記補色は緑色であることを特徴とする、請求項1乃至5の何れかに記載の放電管。
【請求項7】
前記放電管はUVセンサであることを特徴とする、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の放電管。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−14330(P2011−14330A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156393(P2009−156393)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)