説明

放音システム、放音装置、音信号供給装置、放音方法及びプログラム

【課題】スピーカの種類に応じて音響特性をより適切に補正する。
【解決手段】会議端末のスピーカ装置は、放音を行うための音信号を受け取ると(S3;YES)、所定のタイミングにおいて、この音信号に対し、属性情報を重畳して(S5)、放音する(S6)。会議端末はマイクロホンによって放音された音を収音し(S7)、この音を表す音信号から属性情報を抽出する(S8)。会議端末は、各々の属性情報と補正量とが対応付けられた音響特性補正テーブルにおいて、抽出した属性情報に対応付けられている補正量を特定する(S10)。そして、会議端末は、スピーカ装置に供給する音データを、特定した補正量で補正してから音信号をスピーカ装置に供給する(S11)。スピーカ装置は補正後の音信号に応じた音を放音する(S12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放音の音響特性を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電話会議システムやオーディオ装置等を利用するユーザは、これらの装置に接続されたスピーカによって放音された音を聴取することになる。ところが、スピーカの種類によってその構造や各設計パラメータが異なっており、これにより、放音される音の周波数特性等の音響特性も異なるため、スピーカに供給される音信号が同じであっても、スピーカの種類によって聴取者の音の聴こえ方はそれぞれ異なってしまう。例えば特許文献1には、スピーカへ接続された接続線に流れる電流を計測し、その電流の大きさによってスピーカの種類を特定し、その種類に応じた補正量で音響特性を補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−117361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、引用文献1に記載の技術では、スピーカの種類が異なっていても、そのインピーダンスが近似していれば接続線に流れる電流も近似してしまい、その種類を正確に識別することが難しいことがある。特に、劇場やコンサート会場等のように、使用するスピーカの数が多い場合には、特性が類似するスピーカが含まれてしまい、音響特性を理想どおりに補正することができない場合がある。
そこで、本発明は、放音装置の種類に応じて音響特性をより適切に補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明に係る放音システムの第1の構成は、放音装置と、音信号供給装置とを備え、前記放音装置は、前記音信号供給装置から供給されてくる音信号に対し、自放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する重畳手段と、前記重畳手段によって前記環境情報が重畳された音信号に応じて放音を行う放音手段とを有し、前記音信号供給装置は、音を表す音信号を前記放音装置に供給する供給手段と、前記供給手段が供給した音信号に応じて前記放音装置の前記放音手段によって放音され、収音手段によって収音された音を表す音信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した音信号から前記環境情報を抽出する抽出手段と、前記供給手段によって供給する音信号を、前記抽出手段により抽出された前記環境情報に応じた補正量で補正する補正手段と
を有することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る放音システムの第2の構成は、上述の第1の構成において、前記音信号供給装置は、前記環境情報の重畳の態様を前記放音装置に指示する指示手段を備え、前記重畳手段は、前記指示手段によって指示された前記重畳の態様に従って前記環境情報を前記音信号に対し重畳することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る放音システムの第3の構成は、音信号供給装置と、前記音信号供給装置から供給された音信号に応じて放音を行う放音装置とを備え、前記音信号供給装置は、音を表す音信号を前記放音装置に供給する供給手段と、前記供給手段により前記放音装置に供給される音信号に対し、当該放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する重畳手段と、前記供給手段が供給した音信号に応じて前記放音装置によって放音され、収音手段によって収音された音を表す音信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した音信号から前記環境情報を抽出する抽出手段と、前記供給手段によって供給する音信号を、前記抽出手段により抽出された前記環境情報に応じた補正量で補正する補正手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る放音システムの第4の構成は、上述の第1から第3のいずれか1の構成において、前記環境情報は、前記放音装置が設置される空間に関する環境を表すことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る放音装置の第5の構成は、音を表す音信号に対し、自放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する重畳手段と、前記重畳手段によって前記環境情報が重畳された音信号に応じて放音を行う放音手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る音信号供給装置の第6の構成は、音を表す音信号を放音装置に供給する供給手段と、前記供給手段が供給した音信号に応じて前記放音装置によって放音され、収音手段によって収音された音を表す音信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記音信号から、当該音信号に応じた放音を行った前記放音装置の周囲の環境を表す環境情報を抽出する抽出手段と、前記供給手段によって供給される音信号を、前記抽出手段により抽出された環境情報に応じた補正量で補正する補正手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る放音方法の第7の構成は、音を表す音信号に対し、放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する第1ステップと、前記第1ステップで前記環境情報が重畳された音信号に応じて、前記放音装置により放音する第2ステップと、前記第2ステップで前記放音装置により放音されて、収音された音を表す音信号を取得する第3ステップと、前記第3ステップで取得した音信号から前記環境情報を抽出する第4ステップと、前記第4ステップで抽出された前記環境情報に応じた補正量で、音を表す音信号を補正する第5ステップと、前記第5ステップで補正された音信号に応じて前記放音装置により放音する第6ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るプログラムの第8の構成は、放音装置のコンピュータを、音を表す音信号に対し、前記放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する重畳手段と、前記重畳手段によって前記環境情報が重畳された音信号に応じて放音手段に放音を行わせる放音制御手段として機能させるためのプログラムである。
【0013】
また、本発明に係るプログラムの第9の構成は、コンピュータを、音を表す音信号を放音装置に供給する供給手段と、前記供給手段が供給した音信号に応じて前記放音装置によって放音され、収音手段によって収音された音を表す音信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記音信号から、当該音信号に応じた放音を行った前記放音装置の周囲の環境を表す環境情報を抽出する抽出手段と、前記供給手段によって供給される音信号を、前記抽出手段により抽出された環境情報に応じた補正量で補正する補正手段して機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スピーカの種類に応じて音響特性をより適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る電話会議システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】会議端末のハードウェア構成を示した図である。
【図3】音響特性補正テーブルの一例を示した図である。
【図4】音響特性の補正処理を説明する図である。
【図5】スピーカ装置の詳細な構成を示した図である。
【図6】重畳部が行う音声処理を説明する図である。
【図7】重畳部が行う音声処理を説明する図である。
【図8】制御部及び音声処理部の機能構成を示す図である。
【図9】会議端末が実行する放音処理の流れを示すシーケンス図である。
【図10】変形例に係るスピーカ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。以下に説明する実施形態においては、遠隔にいる者どうしが会議を行うための電話会議システムに、本発明の一実施形態に係る放音システムを用いる場合について説明する。
【0017】
(1)実施形態の構成
まず、実施形態の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る電話会議システム1の全体構成を示すブロック図である。
電話会議システム1は、会議端末10Aと会議端末10Bと通信網20とからなり、会議端末10Aおよび会議端末10Bは通信網20にそれぞれ有線接続されている。会議端末10A,10Bは、お互いのユーザの声と画像を、この会議端末10A,10Bによって相互に遣り取りすることができ、これにより会議が進行する。会議端末10Aおよび会議端末10Bは互いに同じ構成からなり、以下では会議端末10Aおよび会議端末10Bを区別する必要が無いときには、両者を「会議端末10」と総称する。
なお、ここでは2台の会議端末が通信網20に接続されている場合について例示されているが、3台以上の会議端末が接続されているとしてもよい。
【0018】
次に、会議端末10のハードウェア構成について図2を参照して説明する。
同図に示すように、会議端末10は、制御部101、通信インタフェース(IF)部102、操作部103、記憶部104、表示部105、Webカメラ106、音声処理部107を備える。
制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)やメモリを備え、後述する記憶部104に格納されている各種制御プログラムを実行することにより、会議端末10の各部の動作を制御する。通信IF部102は、例えばNIC(Network Interface Card)であり、図示せぬ通信線により通信網20に接続されている。制御部101は、通信IF部102をよって、通信網20を介して相手方の会議端末10(自装置が会議端末10Aの場合、会議端末10B)とのデータの遣り取りを行う。操作部103は、例えばキーボードやマウスなどであり、会議端末10の操作者によって操作が行われると、その操作内容に応じた操作信号を制御部101へ供給する。
記憶部104は、例えばハードディスク装置やフラッシュメモリなどの記憶手段であり、制御部101によって使用される制御プログラムのほかに、音響特性補正テーブル1041を記憶している。会議端末10は、音響特性補正テーブル1041に基づいて、スピーカ装置109から放音される音に対する補正を行う。
【0019】
Webカメラ106は、会議端末10を使用するユーザを撮像する撮像素子であり、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサからの入力をMotion−JPEG方式の動画として出力する。表示部105はモニタである。相手側の会議端末10からは、その会議端末10のWebカメラ106によって撮影された画像を表す画像データが送られてくるから、通信IF部102はそれを受信し、表示部105は、通信IF部102によって受信した画像データに基づいて画像を表示する。音声処理部107は、アナログ形式の音信号に対し増幅及びA/D(アナログ/デジタル)変換を施してデジタル形式の音データに変換したり、デジタル形式の音データにD/A(デジタル/アナログ)変換及び増幅を施してアナログ形式の音信号に変換したり、種々の音声処理を行ったりする。
【0020】
また、マイクロホン108は、音声処理部107に対して着脱自在であり、自身のプラグが接続端子t1に差し込まれることにより、外部装置として音声処理部107に接続されている。マイクロホン108は、音声会議に参加するユーザの声などの音を収音して、収音した音を表す音信号を出力する収音手段である。制御部101は、マイクロホン108から音声処理部107を経由して供給されてくる音信号に基づいて音データを生成し、これをWebカメラ106によって撮像された映像データとともに通信IF部102によって相手側の会議端末10に送信する。
また、スピーカ装置109は、音声処理部107に対して着脱自在であり、自身のプラグPが接続端子t2に差し込まれることにより、外部装置として音声処理部107に接続されている。スピーカ装置109は、この音信号に応じた音を放音する放音装置である。制御部101は、通信IF部102によって受信した音声データを音声処理部107に供給し、アナログ形式の音信号としてスピーカ装置109に供給する。なお、音声処理部107に対しては、様々な種類のスピーカ装置が接続され得る。
【0021】
ここで、図3は、前述した音響特性補正テーブル1041の一例を示した図である。
図3に示すように、この音響特性補正テーブル1041には、「属性情報」と、「補正量」とが対応付けられて記述されている。「属性情報」は、会議端末10に接続されたスピーカ装置の属性を表す情報のことであり、ここでは、接続され得るスピーカ装置を識別するための識別情報としてシリアル番号を用いる。「補正量」は、各スピーカ装置に対する周波数特性の補正量が書き込まれている。この音響特性補正テーブル1041において、第1行に示すように属性情報「SP1」には補正量「A」が対応付けられており、第2行においては、属性情報「SP2」には補正量「B」が対応付けられている。なお、ここでは、会議端末10Aのスピーカ装置109には、属性情報「SP1」が割り当てられているものとする。
【0022】
例えば、属性情報「SP1」のスピーカ装置109が、図4(a)の実線で示すような周波数特性FCを持っているとする。同図(a)に示すように、スピーカ装置109の周波数特性FCは、低周波数帯域における出力音圧が比較的小さく、それに比して高周波数帯域における出力音圧が高い傾向にある。この属性情報「SP1」のスピーカ装置109に対する補正量「A」は、図4(b)に示すように、低周波数帯域におけるオーディオ信号の出力レベルを高周波数帯域におけるそれよりも相対的に増加させるようなパラメータとなっている。つまり、音響特性補正テーブル1041には、図4(b)に示すような各周波数と各補正量との関係が補正量「A」として記述されている。このような補正量Aで上述した周波数特性FCを補正すると、図4(c)に示すような周波数特性FC’となる。つまり、出力音圧が周波数依存性を持たなくなり、各周波数で出力音圧がほぼ一定となる。
【0023】
また、音響特性補正テーブル1041において、属性情報「SP2」には、そのスピーカ装置の周波数特性を、図4(c)に示した周波数特性FC’に補正する補正量「B」が対応付けられている。例えば、属性情報「SP2」のスピーカ装置の周波数特性が、低周波数帯域の出力音圧が高周波数帯域のそれに比して高いとすると、補正量Bは、高周波数帯域における音信号の出力レベルを相対的に増加させるような補正量となる。属性情報「SP3」のスピーカ装置の周波数特性の補正量も同様である。このように、音響特性補正テーブル1041においては、各スピーカ装置の周波数特性を図4(c)に示した周波数特性FC’に補正するための補正量が、各スピーカ装置の属性情報に対応付けて記述されている。これを利用することにより、会議端末10は、自装置に接続されるスピーカ装置の周波数特性を、所望の周波数特性である周波数特性FC’に補正することができる。
【0024】
次に、スピーカ装置109の詳細な構成について、図5を参照しつつ説明する。
スピーカ装置109は、重畳部1091と、属性情報記憶部1092と、スピーカ1093と、電源部1094とを備える。重畳部1091は、CPUやメモリを有しており、接続端子t2及びプラグPを介して音声処理部107から供給された音信号に基づいて、放音手段であるスピーカ1093に放音させる。また、重畳部1091は、属性情報記憶部1092に記憶された属性情報を読み出し、音信号に対し、この属性情報を重畳する重畳手段である。電源部1094は、図示せぬ電源コードを介して外部の商用電源から供給される電力を重畳部1091に供給する。この電力を用いて重畳部1091は駆動する。
【0025】
ここで、重畳部1091が行う音声処理について、図6,7を参照しつつ説明する。
重畳部1091は、音声処理部107から音信号が供給されると、属性情報記憶部1092から読み出した属性情報を例えばASK(Amplitude Shift Keying)方式で変調した信号(以下、「属性変調信号」という)を生成し、音信号をこの属性変調信号に基づいて変調させてから、スピーカ1093に放音させる。
【0026】
図6において、属性信号a1は、属性情報「SP1」を表す属性変調信号であり、同図で「01101・・・」という値で表され、同図に示す搬送波bは、特定の周波数及び振幅を有する正弦波を表している。この搬送波bの周波数帯域は、スピーカ装置109が放音する音とは重ならないように設定されており、その振幅は、音データの振幅と比較して小さくなっている。この搬送波bの周波数帯域や振幅は、重畳部1091のメモリに予め記憶されている。すなわち、この例では、まず、重畳部1091は、属性情報を表す属性信号a1と搬送波bとを乗算させて属性変調信号a2を生成する。このとき、属性変調信号a2において、属性情報の値が「1」である時間帯の波形は搬送波bと同じとなり、属性情報の値が「0」である時間帯においてはその振幅は「0」となっている。
【0027】
続いて、重畳部1091は、音声処理部107から供給された音信号に、前述したようにして生成した属性変調信号a2を重畳する。図7において、音信号c1は、音声処理部107から供給されてくる音信号の波形を表している。重畳部1091は、この音信号c1に、同図に示す属性変調信号a2を乗算して音信号を変調することによって、属性情報を重畳した音信号c2を生成する。そして、重畳部1091は、この音信号c2に応じてスピーカ1093に放音させる。図7においては、重畳部1091による音声処理の過程を分かりやすく説明するため、音信号c1の振幅と属性変調信号a2の振幅とをほぼ等しく図示しているが、実際には、上述したように搬送波bの振幅、及び属性信号a1の振幅は、音信号c1のそれに対して十分に小さいから、音信号c2に応じた放音がなされても、元の音信号c1に対する音質劣化はほとんどない。
【0028】
図8は、制御部101及び音声処理部107の機能構成を示す図である。図に示した各機能は、制御部101及び音声処理部107のハードウェア又はソフトウェアによって実現される。
同図に示す音信号取得部1011は、スピーカ装置109によって放音され、マイクロホン108によって収音された音を表す音信号SAを取得し、取得した音信号SAをデジタル形式の音データSDに変換して抽出部1012及びエコーキャンセラ1014に供給する。
抽出部1012は、音信号取得部1011から取得した音データSDからスピーカ装置109の属性を表す属性情報を抽出し、これを補正部1013に供給する。ここでは、抽出部1012は、スピーカ装置109の属性情報「SP1」を抽出する。補正部1013は、抽出部1012から属性情報SP1を取得するとともに、通信IF部102から音データD(補正前)を取得し、属性情報SP1に応じた補正量で音データを補正する。具体的には、補正部1013は、記憶部104から音響特性補正テーブル1041を取得し、音響特性補正テーブル1041において属性情報SP1に対応付けられた補正量Aで、音データDを補正する。そして、補正部1013は、放音させるための音データとして、補正後の音データDを音信号に変換してスピーカ装置109に供給する。このようにして補正された音データDに応じて、スピーカ装置109による放音が行われる。エコーキャンセラ1014は、補正部1013によって出力される補正後の音データDを取得し、この音データDを用いて、音信号取得部1011から取得した音データSDから、スピーカ装置109からの放音がマイクロホン108によって収音されたことによる音声結合によって生じるエコー成分を除去する。エコーキャンセラ1014は、エコー成分を除去した音データを通信IF部102に供給し、通信IF部102によってこの音データは相手方の会議端末10に送信される。
【0029】
(2)動作
次に、会議端末10の動作について説明する。
会議端末10Aが相手側の会議端末10Bに映像データ及び音データを送信するときには、制御部101は、マイクロホン108に収音させた音の音データからエコー成分を除去する等の処理を施した音データを、Webカメラ106によって生成された映像データとともに、通信IF部102によって会議端末10Bに送信させる。
【0030】
続いて、会議端末10Aが会議端末10Bから送信されてきた音データに基づいて放音するときの動作について説明する。図9は、会議端末10Aが実行する放音処理の流れを示すシーケンス図である。なお、映像を放映するに際しては、制御部101は、通信IF部102によって受信した映像データに応じた映像を表示部105に表示させる。
まず、会議端末10Aの制御部101は、通信IF部102によって会議端末10Bからの音データを受信すると(ステップS1;YES)、音データに音声処理部107によってD/A変換および増幅処理を施してアナログ形式の音信号を生成させ、これをスピーカ装置109に供給する(ステップS2)。
【0031】
続いて、スピーカ装置109の重畳部1091は、音信号を受け取ったと判断すると(ステップS3;YES)、この音信号に対し、自放音装置の属性を表す属性情報を重畳するか否かを判断する(ステップS4)。ここでは、重畳部1091が所定時間(例えば5秒)毎に属性情報を重畳する音声処理を行うものとする。従って、前回の重畳処理を行った時期から5秒経過している場合には、ステップS4において、重畳部1091は、属性情報を重畳するタイミングになったと判定することになる(ステップS4;YES)。そして、重畳部1091は、属性情報記憶部1092から属性情報「SP1」を読み出して自身のメモリに格納し、この属性情報「SP1」を用いて、上述したように音信号を属性変調信号に基づいて変調させて、音信号に対し属性情報を重畳する(ステップS5)。そして、重畳部1091は、この音信号に応じた音をスピーカ1093に放音させる(ステップS6)。
【0032】
一方、ステップS4の判定結果が「NO」、つまり、重畳部1091が属性情報を重畳しないと判定した場合には、ステップS6に進み、受信した音信号に応じた音をそのままスピーカ1093に放音させることになる。
【0033】
続いて、会議端末10Aの制御部101は、マイクロホン108によって、ステップS6においてスピーカ装置109によって放音された音を収音すると(ステップS7)、この音を表す音信号から属性情報を抽出する(ステップS8)。このステップS8において、まず、制御部101は、受信した音信号に対し、音声処理部107内に設けられた図示せぬバンドパスフィルタを作用させて、これを通過した信号を抽出する。このバンドパスフィルタは、搬送波bに用いられた周波数を中心とする所定幅の通過帯域を有している。制御部101は、属性変調信号a2を抽出すると、抽出した属性変調信号a2を復調して属性信号a1を得て、この属性信号a1に基づいて属性情報「SP1」を抽出する。
【0034】
次いで、制御部101は、ステップS8において、音信号から属性情報を抽出したか否かを判定する(ステップS9)。ここでは、制御部101は、属性情報SP1を抽出したと判定するため、ステップS9の判定結果は「YES」となり、ステップS10に進む。そして、制御部101は、属性情報「SP1」に対応付けて音響特性補正テーブル1041に記憶されている補正量を特定する(ステップS10)。図3に示すように、音響特性補正テーブル1041の第1行において属性情報「SP1」に補正量「A」が対応付けられている。これによって、制御部101は、スピーカ装置109の属性情報が「SP1」であるとともに、以降に放音させる音の音信号を補正量「A」で補正すると特定する。
【0035】
次いで、制御部101は、通信IF部102によって会議端末10Bからの音データを受信すると、補正量「A」でこの音データを補正してから、スピーカ装置109に音信号を供給する(ステップS11)。これにより、図4(a)に示した周波数特性FCから、同図(c)に示す周波数特性FC’に周波数特性が補正された音データに応じた音信号が、スピーカ装置109に供給されることになる。そして、スピーカ装置109は、この音信号に応じた音を放音する(ステップS12)。以降において、会議端末10Aの制御部101やスピーカ装置109は、補正した音信号について処理ステップS3〜S12と同じ処理を行うことになる。
以上の処理により、会議端末10Aに接続されるスピーカ装置の周波数特性がいかなるものであっても、会議端末10Aは、この周波数特性を、意図する周波数特性FC’に補正して放音することができる。
【0036】
以上説明した実施形態によれば、スピーカ装置109は自放音装置に割り当てられた属性情報を音声号に対し重畳して放音し、会議端末10は、そのスピーカ装置109によって放音された音の音信号を取得して、その音信号から抽出した属性情報に応じた補正量で音信号を補正する。これにより、会議端末10は、放音させるスピーカの種類を特定し、その種類に応じて音響特性をより適切に補正することができる。これを利用すれば、例えば特定の周波数域の音圧が低いスピーカ装置を用いた場合であっても、その周波数域の音圧を高くするよう音信号を補正してから放音することになるから、音圧が低くてユーザが聴き取りにくい周波数域があってもこれを改善することができるし、また、補正後の周波数特性を図4(c)のFC’のように一致させることで、スピーカ毎の周波数特性のばらつきがなくなるようにすることができる。
【0037】
(3)変形例
なお、上記実施形態を次のように変形してもよい。具体的には、例えば以下のような変形が挙げられる。これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
(3−1)変形例1
上述した実施形態では、スピーカ装置109は、電源部1094に外部の商用電源から供給された電力を利用して駆動していたが、電力の取得の態様を以下のようにしてもよい。
例えば、スピーカ装置が音信号から電力を抽出するようにしてもよい。この態様について具体的に説明する。
【0038】
図10は、本変形例のスピーカ装置109aの構成を示すブロック図である。
同図に示すように、このスピーカ装置109aは、重畳部1091、属性情報記憶部1092、スピーカ1093の他に、電源部1096を備える。電源部1096は、電力抽出部1097、整流回路1098、過充電保護回路1099、蓄電部1100、電源制御部1101を有する。
電源部1096の電力抽出部1097は、送電用コイルTCと受電用コイルRCとを有する。送電用コイルTCは、重畳部1091と音声処理部107とを接続する接続線の一部を構成する。会議端末10からスピーカ装置109の重畳部1091に音信号が供給されたとき、その音信号により送電用コイルTCのコイル端どうしの間には、音信号の信号レベルに応じた電位差が発生する。このとき、送電用コイルTCと、受電用コイルRCとの間で生じる電磁誘導により、送電用コイルTCから受電用コイルRCに対し、上記電位差の大きさに応じた電力が供給される。すなわち、電力抽出部1097は電磁誘導を利用して音信号から電力を抽出する。
【0039】
整流回路1098は、整流により、受電用コイルRCから供給された交流電圧を直流電圧に変換する。過充電保護回路1099は、レギュレータ等を備え、過充電から保護するために、整流回路1098から供給された電圧を調整して蓄電部1100に供給する。蓄電部1100は、例えばニッケル・カドミウム電池であり、過充電保護回路1099から供給された電力を蓄電する。電源制御部1101は、蓄電部1100に蓄電された電力を用いて駆動し、図示せぬスイッチング回路を切り替えることによって、蓄電した電力を重畳部1091に供給したり、遮断したりする。具体的には、電源制御部1101は、蓄電時にはスイッチング回路をオフ状態としておき、重畳部1091への給電を遮断する。一方、スピーカ装置109が放音するときには、重畳部1091を駆動させるべく、スイッチング回路をオン状態となるよう制御する。このオン状態に供給される電力を用いて、重畳部1091は音信号に対して属性情報を重畳する。
【0040】
なお、以上説明した電源部1096の構成は一例に過ぎず、電源部は、音信号から電磁誘導によって電力を抽出する構成であれば、その構成は前述したものに限らない。例えば、電源制御部がタイマ及び立ち上がり検出回路を備えるようにし、立ち上がり検出回路によって蓄電部1100へ供給される電力の電圧の立ち上がり(すなわち、給電の開始)が検出されると、電源制御部はタイマによって計時を開始し、所定時間が経過するまでは蓄電部1100に蓄電し、所定時間が経過したら蓄電を停止させるといった構成でもよい。この所定時間は、重畳部1091が駆動するために必要な十分な電力を蓄電できる時間である。
なお、スピーカ装置109aにおいては、重畳部1091が音信号に対して属性情報を重畳するための処理を行うのに十分な電力が蓄電されていればよいから、大きな電力は要求されない。よって、スピーカ装置109aは音信号からでも駆動に必要な十分な電力を取得することができる。この構成を採ることにより、商用電源を使用しなくて済むから、その設置位置の自由度が増えるというメリットがあるし、わざわざユーザが電源コードをコンセントに差し込むといった煩雑な作業が不要となる。また、電磁誘導方式を採ることで、既存のスピーカに対しても、比較的容易に電力抽出用の回路を組み込むことができる。
【0041】
また、この態様において、会議端末10は、蓄電を行うための音信号をスピーカ装置109aに供給してもよい。例えば、会議端末10は、相手方の会議端末10から受信した音声会議に関する音信号を供給する前に、例えば数秒間に亘って、蓄電用の音信号を供給する。このとき、制御部101は、可聴周波数域の音圧が十分に低く、それに対して非可聴周波数域の音圧が可聴周波数域(ここでは、20Hz〜20000Hzとする)の音圧よりも十分に高い音信号を蓄電用としてスピーカ装置109aに供給する。スピーカ装置109aは、この不可聴周波数域の音信号から上記の手法で電力を抽出し、これを利用して蓄電する。なお、ここでは、不可聴域は、上記可聴周波数域よりも高いか又は低い周波数域を指すものとし、この周波数域の音は多くの人間には聴き取ることができない。このようにすれば、電源部1096は十分な量の電力を蓄電することができるし、ユーザは蓄電を目的として放音された音を聴かずに済むので、音声会議とは無関係の音を耳障りに感じることもない。
また、非可聴周波数域の高周波数の音信号の音圧が高すぎると、会議端末10や周囲に置いてある装置の動作に影響を与える可能性もあるので、必要以上に高い音圧とすることは好ましくないといえる。そこで、スピーカ装置109aの重畳部1091がLPF(Low Pass Filter)を備え、放音時においては、重畳部1091がこのLPFを介して高域の非可聴周波数域の音信号を或る程度のレベルまで減衰させてから放音するようにしてもよい。また、非可聴周波数域の低周波数の音信号も放音において必要としない。よって、スピーカ装置109aの重畳部1091がHPF(High Pass Filter)を備え、放音時において、重畳部1091が、このHPFを介して低域の非可聴周波数域の音信号を減衰させてから放音するようにしてもよい。もちろん、これらLPF及びHPFに代えて、可聴周波数域のみの音信号を通過させるBPF(Band Pass Filter)を用いてもよい。
【0042】
また、音信号から電力を抽出する構成として、電磁誘導以外の構成の方式を用いてもよい。例えば、スピーカ装置に供給される音信号のそのものが電源部に供給されるようにして、電源部が電力を抽出するようにしてもよい。具体的には、上記電源部1096において、電力抽出部1097に代えて、プラグPと重畳部1091との間に直流成分(DCオフセット)を遮断するためのコンデンサを設ける。さらに、プラグPとコンデンサとの間の接続線と、整流回路1098とを給電線によって接続し、音信号が直接、整流回路1098に供給されるようにする。この構成であっても、電源部は音信号から電力を抽出する電力抽出手段として機能する。また、この構成によれば、電磁誘導方式を採用する場合と比べて、電力抽出用の回路構成が簡素化されるし、放音へ与える影響をさらに小さくすることができる。
【0043】
また、スピーカ装置109が、USB(Universal Serial Bus)接続で会議端末10と接続されるのであれば、スピーカ装置109はUSBケーブルを介して、会議端末10から電力を取得することもできる。また、スピーカ装置109は、乾電池等から供給される電力で駆動するようにしてもよい。
【0044】
(3−2)変形例2
上述した実施形態では、所定タイミング毎に、音信号に対して属性情報を重畳していたが、例えば、放音の開始から或る決められた時間だけとしてもよい。会議端末10は、一度、音信号から属性情報を抽出して適切な補正量を特定すれば、この補正量で音信号を補正すればよいから、以降においては属性情報を特定する必要がないのである。このようにすれば、スピーカ装置109が要する電力は小さくてよいし、属性情報の重畳に関する処理量を減らすことができる。また、スピーカ装置109は、上記と同様の理由で、或る決められた回数(例えば3回)だけ、音信号に対して属性情報を重畳するようにしてもよい。要するに、重畳部1091は、スピーカ装置による放音の開始から決められた期間又は決められた回数だけ音信号に属性情報を重畳する。
【0045】
(3−3)変形例3
上述した実施形態において、属性情報の種別は、スピーカ装置109のシリアル番号等の識別情報であってもよいし、メーカー名や型番等であってもよい。
また、スピーカ装置109が放音を行った累積期間(すなわち、スピーカ装置109の使用期間)が長いと、その構成部品の経時劣化や特性変化等を原因として出力音圧が変化することがあるから、会議端末10は、属性情報としてスピーカ装置109による放音が行われた累積期間を特定するための情報を用い、この累積期間に応じた音響特性の変化の傾向に基づいて設定された補正量で音信号を補正するようにしてもよい。この場合、累積期間を特定するための属性情報として、例えばスピーカ装置109の製造年月日を用いるとすると、音響特性補正テーブルにおいては、スピーカ装置109が放音を行った累積期間と、補正量とが対応付けておく。会議端末10は属性情報を抽出すると、タイマ等の計時手段によって計測された現在の年月日と属性情報に含まれる製造年月日とに基づいて特定される放音を行った累積期間と、音響特性補正テーブルとに基づいて、その累積期間に応じた補正量で音信号を補正する。
また、同様の目的により、累積期間そのものを属性情報としてもよい。この態様においては、スピーカ装置109は放音を行った累積期間として、例えば音信号が供給された期間を測定する測定手段を有し、音信号に対し属性情報を重畳する際には、この測定手段が測定した期間を表す属性情報を音信号に対して重畳する。
【0046】
また、属性情報の種別として、スピーカ装置109の周囲の環境を表す情報を用いてもよい。環境を表す情報には、例えば温度や湿度、気圧などがある。放音を行う場所が同じであっても、音の伝送媒体となる空気の温度や湿度或いは気圧などが異なる場合には、聴取者の耳に到達する音に差異が生じる。よって、属性情報を温度や湿度、気圧等の環境情報とすることにより、会議端末10は聴取者の耳に到達する音が同じになるように、音信号を補正することができる。この場合、スピーカ装置109に、上記のような環境情報を検出するセンサを設け、これに応じた属性情報として温度情報、湿度情報、気圧情報等の種別の属性情報を音信号に対し重畳する。また、コンサートホール等においては、スピーカ装置109が設置される空間の大きさや構造、観客の人数等に起因して音響特性が変化するから、これらの環境情報を属性情報としてもよい。
【0047】
(3−4)変形例4
スピーカ装置109が音データに対して重畳する属性情報の種別や、属性情報を重畳する期間を、会議端末100が制御するようにしてもよい。具体的には、制御部101は、スピーカ装置109に対して、例えば変形例3で説明したような、様々な種別の属性情報のうちのどれを用いるかを指示したり、変形例2で説明したような、属性情報を重畳する期間をどの程度にするかを指示したりする指示手段として機能する。以下、この構成について具体的に説明する。
制御部101は、放音を行うに際しては、音信号をスピーカ装置109に供給するに先立って、まず属性情報の重畳の態様を指示する指示信号を出力する。この指示のために、制御部101は、指示信号としてDTMF(Dual Tone Multi Frequency)信号を用いる。DTMF信号を用いた通信においては、例えば16種類(例えば0〜9、*、#、A〜D)の符号が低群・高群の2つの周波数帯域の音信号の組み合わせによって表現される。制御部101は、音声処理部107によってDTMF信号を音信号に対し重畳して、これをスピーカ装置109に供給する。この重畳の原理は、重畳部1091が音信号に対し属性情報を重畳する原理と同じでよい。
スピーカ装置109の重畳部1091においては、例えば、DTMF信号「1」に制御内容として「属性情報の重畳開始」を記憶し、DTMF信号「2」に制御内容「属性情報の重畳停止」、DTMF信号「3」に制御内容「シリアル番号を重畳」、DTMF信号「4」に制御内容「温度情報を重畳」・・・等という具合に、DTMF信号と制御内容とをそれぞれ対応付けて自身のメモリに記憶する。
【0048】
続いて、本変形例の動作の一例について説明する。
例えば、会議端末10の使用前において、ユーザによって属性情報としてシリアル番号を用いること、及び放音開始時から「10秒間」に亘って属性情報を重畳することが設定されたとする。この場合、制御部101は音信号を供給する前に、まず重畳部1091に重畳させる属性情報の種別をスピーカ装置109に指示するべく、音声処理部107によりDTMF信号「3」を音信号に重畳して出力する。重畳部1091は、この音信号を復調してDTMF信号「3」を認識すると、それに対応付けて記憶している制御内容に基づいて、音信号に対してシリアル番号を重畳することを認識する。続いて、制御部101は属性情報の重畳を開始することを指示する、DTMF信号「1」を重畳した音信号を出力する。重畳部1091はDTMF信号「1」を認識すると、この指示に従って属性情報としてシリアル番号を音信号に重畳し、その音信号に応じて放音する。そして、制御部101は放音開始から10秒間が経過すると、制御部101は属性情報の重畳停止を意味するDTMF信号「2」を重畳した音信号を出力し、重畳部1091はこれを認識すると、この指示に従って属性情報の重畳を停止する。すなわち、ここではDTMF信号「1」及び「2」を送信することにより、制御部101は重畳部1091に属性情報を重畳させる期間をスピーカ装置109に指示したことになる。
一方、ユーザによって属性情報として温度情報を用いることが設定された場合には、制御部101はDTMF信号「3」に代えて「4」を供給することにより、属性情報の種別を「温度情報」とすることを指示する。また、制御部101は、DTMF信号「1」及び「2」を用いて属性情報を重畳する期間を指示していたが、例えば、“属性情報を重畳する期間を10秒間とする”という旨を指示するDTMF信号を用いれば、この信号のみで属性情報を重畳する期間を指示することもできる。
【0049】
また、ユーザにより属性情報を重畳する期間が設定される構成に限らず、制御部101が、音信号の特性に基づいて、音信号に対し属性情報を重畳する期間を特定するようにしてもよい。
例えば、制御部101は、スピーカ装置109に供給する音信号を解析し、音信号が表す音の音量(音信号の振幅)が所定値以上の大きさの期間を特定して、その期間の音信号に対し、属性情報を重畳するよう指示する。また、制御部101は、音信号の周波数成分を解析し、所定の周波数帯域の音圧が所定値以上の区間に属性情報を重畳するようにしてもよい。このようにすれば、音声波形に対する属性情報による波形の変化の度合いが小さくなるので、放音に与える影響をより小さくすることができる。また、音圧がゼロ乃至ゼロに近いような低い音圧の周波数帯域の音信号に属性情報を重畳しようとしても、正常に属性情報が重畳されずに、会議端末10が属性情報を抽出することができないことがある。これでは、会議端末10の動作において、不具合の原因となってしまう。したがって、制御部101が、音量や音圧に基づいて属性情報を重畳する期間を特定することは、会議端末10の正常な動作を実現するためにも効果的である。
また、制御部101は、音信号が表す音が会話を表す音声か、音楽を表す音声であるかといった音声の種類(内容)を特定して、例えば音楽を表す音信号のみに属性情報を重畳するよう指示する。この場合において、制御部101は、会話を表す音声の音信号に属性情報を重畳するよう指示してもよい。制御部101が、音声が会話と音楽とのどちらであるかを判断するには、例えば音声波形を参照すればよい。音楽においては断続的に音声が放音されるのに対し、会話においては、話者が変わるとき等に一時的に音が途絶えるし、また、人間の声音特有の音声波形をなすことがある。よって、制御部101は、音声波形の特徴から、音信号が表す音声が音楽か又は会話であるかを特定するとよい。また、この構成において、会議端末10は、会話や音楽以外の音声の種類を特定して、特定した種類に応じて属性情報を重畳する期間を特定してもよい。また、制御部101が属性情報を重畳する期間を特定するための音信号の条件は、前掲したものに限らない。つまり、制御部101が、音信号の特性が或る条件を満たす期間を属性情報を重畳する期間として特定し、スピーカ装置109に対して、特定した期間の音信号に対して、属性情報を重畳するよう指示する構成とすることができる。
【0050】
以上説明した構成によれば、制御部101は、属性情報の種別や、属性情報を重畳する期間を指示し、スピーカ装置109はその指示に従って音信号に対し属性情報を重畳する。また、DTMF信号を重畳するための音信号を用いるようにし、この音信号の周波数成分が非可聴域周波数域のみに分布するようにすれば、スピーカ装置109によって放音される音の聴取性に悪影響を与えずに済む。また、制御部101はDTMF信号そのものをスピーカ装置に供給してもよく、この場合、会議端末側に設けられたスピーカがDTMF信号に応じた音を放音し、スピーカ装置に設けられたマイクロホンがこれを収音して、この音を解析することにより制御内容を認識する、という構成とすることもできる。
また、ここでは制御信号としてDTMF信号を用いたが、これ以外の規格の信号を用いてもよく、要するに、制御部101が音信号に対して重畳する属性情報の種別や、属性情報を重畳する期間をスピーカ装置109に指示し、スピーカ装置109がこの指示に従って音信号に対して属性情報を重畳して放音する構成であればよい。
【0051】
(3−5)変形例5
上述した実施形態では、補正量が音響特性補正テーブル1041において予め決められていたが、会議端末10が収音した音信号に基づいて、補正量を調整するようにしてもよい。この場合、会議端末10の制御部101は、補正量の調整用の音をスピーカ装置109に放音させて、この調整用の音を表す音信号と、調整用の音を収音した音信号とに基づいて、スピーカ装置109によって放音された音の周波数特性を検出する。具体的には、制御部101は、スピーカ装置109に、所定の音圧で低周波数帯域から高周波数帯域へと連続的に変化するような調整用の音を放音させて、マイクロホン108によってこれを収音させる。そして、制御部101は、収音した音の周波数毎の音圧と、スピーカ装置109に放音させた調整用の音の音圧とに基づいて、スピーカ装置109によって放音された音の周波数特性が意図するものとなるよう、音響特性補正テーブル1041に記述された補正量を調整して書き換える。この構成によれば、実際に放音された音をも参照して補正量を調整するので、会議端末10はさらに精度良く意図する周波数特性となるよう音信号を補正することができる。例えば、図4(c)に示すように、周波数依存性のない特性にしたい場合には、会議端末10はマイクロホンに108によって収音された音にも周波数依存性がなくなるように補正量を調整し、音響特性補正テーブル1041の補正量を書き換える。
【0052】
(3−6)変形例6
また、属性情報は、補正量や周波数特性そのものを表すものとしても良い。例えば、属性情報が補正量であれば、会議端末10は音信号から抽出した補正量で音信号を補正すればよいから、音響特性補正テーブル1041を備えなくて良い。また、属性情報が周波数特性を表す場合にも、例えば、図4(c)に示すように周波数依存性をなくすといったような、補正後の周波数特性が決まっていれば、会議端末10は、音響特性補正テーブル1041を備えなくても、周波数特性に基づいて音信号を補正することができる。
【0053】
(3−7)変形例7
上述した実施形態では、スピーカ装置109が音信号に対して属性情報を重畳していたが、会議端末10の制御部101等の、スピーカ装置109以外でこの処理を行うようにしてもよい。この態様において、制御部101が属性情報を重畳する場合、制御部101がどの属性情報を用いるかを特定するために、例えばユーザがスピーカ装置109の種別や識別情報等の属性情報を操作部103によって入力し、制御部101がこの操作内容に基づいて属性情報を特定するようにすればよい。そして、制御部101は、入力された属性情報をメモリ又は記憶部104に記憶しておき、これを音信号に対して重畳する。また、この場合においては、スピーカ装置109は供給された音信号に応じた音を放音するだけでよいので、スピーカ装置109に代えて市販の放音のみを行うスピーカを用いることができる。
【0054】
(3−8)変形例8
上述した実施形態では、会議端末10は音響特性として周波数特性を補正していたが、これ以外にも、音響特性として、音圧や残響特性を補正するようにしてもよい。特に、音圧を補正するのであれば、本発明の音信号供給装置を、オーディオアンプ等の増幅器にも利用することができる。また、会議端末10に代えて、音信号供給装置として、テレビやCD(Compact Disc)プレーヤ、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤ等のAV(Audio Visual)機器を用いてもよく、音信号をスピーカ装置に供給する装置であれば、その態様は前掲したものに限らない。
また、実施形態では、補正後において周波数依存性のないような音となるよう、会議端末10は音信号を補正していたが、目的や用途に応じて補正量は適宜決められるものである。例えば、マルチチャネルフォーマットの音信号を再生する場合には、音信号供給装置には複数のスピーカ装置が接続され、それぞれについて理想的な周波数特性は異なるから、会議端末10は、意図する周波数特性で放音が行われるよう、用途に応じた補正量で音信号を補正するとよい。
上述した実施形態における会議端末10の制御部101、スピーカ装置109の重畳部1091によって実行される制御プログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスク(CD、DVD)など)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録した状態で提供し得る。また、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。また、重畳部は、CPUがソフトウェアによって実現する態様に代えて、音声処理回路等のハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…電話会議システム、10,10A,10B…会議端末、101…制御部、1011…音信号取得部、1012…抽出部、1013…補正部、1014…エコーキャンセラ、102…通信IF部、103…操作部、104…記憶部、1041…音響特性補正テーブル、105…表示部、106…Webカメラ、107…音声処理部、108…マイクロホン、109,109a…スピーカ装置、1091…重畳部、1092…属性情報記憶部、1093…スピーカ、1094,1096…電源部、1097…電力抽出部、1098…整流回路、1099…過充電保護回路、1100…蓄電部、1101…電源制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放音装置と、音信号供給装置とを備え、
前記放音装置は、
前記音信号供給装置から供給されてくる音信号に対し、自放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する重畳手段と、
前記重畳手段によって前記環境情報が重畳された音信号に応じて放音を行う放音手段と
を有し、
前記音信号供給装置は、
音を表す音信号を前記放音装置に供給する供給手段と、
前記供給手段が供給した音信号に応じて前記放音装置の前記放音手段によって放音され、収音手段によって収音された音を表す音信号を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した音信号から前記環境情報を抽出する抽出手段と、
前記供給手段によって供給する音信号を、前記抽出手段により抽出された前記環境情報に応じた補正量で補正する補正手段と
を有することを特徴とする放音システム。
【請求項2】
前記音信号供給装置は、
前記環境情報の重畳の態様を前記放音装置に指示する指示手段を備え、
前記重畳手段は、
前記指示手段によって指示された前記重畳の態様に従って前記環境情報を前記音信号に対し重畳する
ことを特徴とする請求項1に記載の放音システム。
【請求項3】
音信号供給装置と、前記音信号供給装置から供給された音信号に応じて放音を行う放音装置とを備え、
前記音信号供給装置は、
音を表す音信号を前記放音装置に供給する供給手段と、
前記供給手段により前記放音装置に供給される音信号に対し、当該放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する重畳手段と、
前記供給手段が供給した音信号に応じて前記放音装置によって放音され、収音手段によって収音された音を表す音信号を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した音信号から前記環境情報を抽出する抽出手段と、
前記供給手段によって供給する音信号を、前記抽出手段により抽出された前記環境情報に応じた補正量で補正する補正手段と
を有することを特徴とする放音システム。
【請求項4】
前記環境情報は、
前記放音装置が設置される空間に関する環境を表す
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の放音システム。
【請求項5】
音を表す音信号に対し、自放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する重畳手段と、
前記重畳手段によって前記環境情報が重畳された音信号に応じて放音を行う放音手段と
を備えることを特徴とする放音装置。
【請求項6】
音を表す音信号を放音装置に供給する供給手段と、
前記供給手段が供給した音信号に応じて前記放音装置によって放音され、収音手段によって収音された音を表す音信号を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記音信号から、当該音信号に応じた放音を行った前記放音装置の周囲の環境を表す環境情報を抽出する抽出手段と、
前記供給手段によって供給される音信号を、前記抽出手段により抽出された環境情報に応じた補正量で補正する補正手段と
を備えることを特徴とする音信号供給装置。
【請求項7】
音を表す音信号に対し、放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する第1ステップと、
前記第1ステップで前記環境情報が重畳された音信号に応じて、前記放音装置により放音する第2ステップと、
前記第2ステップで前記放音装置により放音されて、収音された音を表す音信号を取得する第3ステップと、
前記第3ステップで取得した音信号から前記環境情報を抽出する第4ステップと、
前記第4ステップで抽出された前記環境情報に応じた補正量で、音を表す音信号を補正する第5ステップと、
前記第5ステップで補正された音信号に応じて前記放音装置により放音する第6ステップと
を有することを特徴とする放音方法。
【請求項8】
放音装置のコンピュータを、
音を表す音信号に対し、前記放音装置の周囲の環境を表す環境情報を重畳する重畳手段と、
前記重畳手段によって前記環境情報が重畳された音信号に応じて放音手段に放音を行わせる放音制御手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
音を表す音信号を放音装置に供給する供給手段と、
前記供給手段が供給した音信号に応じて前記放音装置によって放音され、収音手段によって収音された音を表す音信号を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記音信号から、当該音信号に応じた放音を行った前記放音装置の周囲の環境を表す環境情報を抽出する抽出手段と、
前記供給手段によって供給される音信号を、前記抽出手段により抽出された環境情報に応じた補正量で補正する補正手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−239220(P2012−239220A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175975(P2012−175975)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2008−113799(P2008−113799)の分割
【原出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】