説明

教育支援装置、教育支援方法、プログラム

【課題】教育コンテンツを改修するか、実技教育を行うかの判断を容易に行うことができる教育支援装置を提供する。
【解決手段】抽出部108が抽出した修理実績データに含まれる作業実績値の平均値を算出し、この算出した平均値に応じた修理ランクをランク記憶部104から読み出し、この修理ランクと基準記憶部103に記憶された基準実績値を比較し、修理ランクが基準ランク以上である場合には、抽出部108によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、修理ランクが基準ランク未満である場合には、教育コンテンツの改修を行うものとして判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教育方法について支援することができる教育支援装置、教育支援方法、プログラム処理に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターに故障が発生すると、修理や保守を行う担当者は、プリンターが設置された現場に出向き、あるいは作業場に持ち込まれたプリンターの修理を行う。また、プリンターには、保守を行う対象機器もあるため、担当者は、定期的に保守対象のプリンターの保守作業を行う。このような修理や保守作業を行う場合には、プリンターの修理・保守を行うための知識や技術が必要となる。そのため、担当者に対し、修理・保守に関する教育が行われている。
【0003】
近年、このような教育を行う方法として、1つの場所に受講者を集合させ、講師が説明等を行ったり、実技指導をしたりする方法や、教育コンテンツの動画等をインターネットを介してサーバから端末へ配信し、このような教育コンテンツを視聴することによる教育する方法もある。後者の方法の場合は、前者の方法に比べて、1つの場所に集合する必要がないので、移動にかかる交通費や時間的なコストを削減することができ、受講者も場所や時間を選ばずに、教育を受けることができる。
【0004】
上述のような教育を行うシステムとしては、例えば、学習コンテンツのアクセスログと、質問情報(Q&A)へのアクセスログと、学習エリア単位でのアクセスログのプロセスを管理し、学習状況を的確に把握するものがある(例えば、引用文献1)。また、あるスキルを有する作業員の数を把握し、そのスキルを有した作業員でしか作業できない受注が発生した場合、その受注に必要な作業員の数を算出し、作業員の数が不足していれば、そのスキルを満たすための教育コースを促すシステムがある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−010541号公報
【特許文献2】特開2005−339030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した技術においては、教育を実施した後であっても、実際の修理・保守の場面において、作業が円滑に行われず作業時間が長引いてしまったり、故障原因の特定の精度が向上しない場合もある。このような場合、教育コンテンツそのものが実際の修理・保守に活かせるような内容になっていない場合や、あるいは、教育を受けた受講者(作業者)が、教育コンテンツの視聴だけでは教育内容を十分に習得できていない場合が考えられる。そうすると、教育コンテンツの改修を行った方がよいのか、あるいは、作業者に教育コンテンツではなく、実技教育を行った方がよいのかの判断がしにくいため、結果的に、作業者のスキルアップをすることが難しい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、教育コンテンツを改修するか、実技教育を行うかの判断を容易に行うことができる教育支援装置、教育支援方法、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、機器のメンテナンスを行う作業者に受講させる教育コンテンツの教育対象である機器の機種を表す教育対象機種を記憶する教育対象機種記憶部と、前記教育コンテンツを受講した作業者が機器に対して行った修理実績を表す作業実績値と修理対象の機器の機種と修理内容と前記作業者を識別する作業者識別情報とが対応付けられた修理実績データを記憶する修理実績記憶部と、前記教育対象機種記憶部に記憶された教育対象機種に対応する機種を対象として行われた修理実績データを前記修理実績記憶部から抽出する抽出部と、前記教育対象機器毎に基準ランクを記憶する基準記憶部と、前記作業実績値と修理ランクとを対応付けて記憶するランク記憶部と、前記抽出部が抽出した修理実績データに含まれる作業実績値の平均値を算出し、この算出した平均値に応じた修理ランクを前記ランク記憶部から読み出し、この修理ランクと前記基準記憶部に記憶された基準実績値を比較し、前記修理ランクが前記基準ランク以上である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、前記修理ランクが前記基準ランク未満である場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述の教育支援装置において、前記作業者が前記実技教育を行う教育場所へ移動して実技教育を受けるために必要な金額を表す集合コストを作業者識別情報に対応付けて記憶する集合コスト記憶部と、前記修理ランク毎に集合コストの上限を表す集合コスト基準値を記憶する集合コスト基準値記憶部とを有し、前記判定部は、前記修理ランクが前記基準ランク以上である場合に、前記修理実績データに含まれる作業者識別情報に対応する集合コストを前記集合コスト記憶部から読み出し、読み出した集合コストの合計値を算出し、前記修理ランクに対応する集合コスト基準値を前記集合コスト基準値記憶部から読み出し、読み出した集合コスト基準値と前記集合コストの合計値とを比較し、前記集合コストの合計値が前記集合コスト基準値以内である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、前記集合コストの合計値が前記集合コスト基準値を越える場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定する絞り込み処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述の教育支援装置において、前記基準記憶部は、前記基準ランクである第1の基準ランクと、当該第1の基準ランクよりも高いランクである第2の修理ランクとを記憶しており、前記判定部は、前記修理ランクが前記第1の基準ランク未満である場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定し、前記修理ランクが前記第2の基準ランク以上である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、前記修理ランクが前記第1の基準ランク以上かつ前記第2の基準ランク未満である場合には、前記絞り込み処理を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述の教育支援装置において、前記修理実績値に基づいて前記基準ランクを変更する変更部を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、機器のメンテナンスを行う作業者に受講させる教育コンテンツの教育対象である機器の機種を表す教育対象機種を記憶する教育対象機種記憶部と、前記教育コンテンツを受講した作業者が機器に対して行った修理実績を表す作業実績値と修理対象の機器の機種と修理内容と前記作業者を識別する作業者識別情報とが対応付けられた修理実績データを記憶する修理実績記憶部と、前記教育対象機器毎に基準ランクを記憶する基準記憶部と、前記作業実績値と修理ランクとを対応付けて記憶するランク記憶部と、を有する教育支援装置における教育支援方法であって、前記教育支援装置の抽出部が、前記教育対象機種記憶部に記憶された教育対象機種に対応する機種を対象として行われた修理実績データを前記修理実績記憶部から抽出し、前記教育支援装置の判定部が、前記抽出部が抽出した修理実績データに含まれる作業実績値の平均値を算出し、この算出した平均値に応じた修理ランクを前記ランク記憶部から読み出し、この修理ランクと前記基準記憶部に記憶された基準実績値を比較し、前記修理ランクが前記基準ランク以上である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、前記修理ランクが前記基準ランク未満である場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述の教育支援装置において、機器のメンテナンスを行う作業者に受講させる教育コンテンツの教育対象である機器の機種を表す教育対象機種を記憶する教育対象機種記憶部と、前記教育コンテンツを受講した作業者が機器に対して行った修理実績を表す作業実績値と修理対象の機器の機種と修理内容と前記作業者を識別する作業者識別情報とが対応付けられた修理実績データを記憶する修理実績記憶部と、前記教育対象機器毎に基準ランクを記憶する基準記憶部と、前記作業実績値と修理ランクとを対応付けて記憶するランク記憶部と、を有する教育支援装置であるコンピュータに、前記教育対象機種記憶部に記憶された教育対象機種に対応する機種を対象として行われた修理実績データを前記修理実績記憶部から抽出する抽出手段、前記抽出手段が抽出した修理実績データに含まれる作業実績値の平均値を算出し、この算出した平均値に応じた修理ランクを前記ランク記憶部から読み出し、この修理ランクと前記基準記憶部に記憶された基準実績値を比較し、前記修理ランクが前記基準ランク以上である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、前記修理ランクが前記基準ランク未満である場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定する判定手段、として機能させるためのプログラムである。
【0014】
以上説明したように、この発明によれば、教育コンテンツを改修するか、実技教育を行うかの判断を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態による教育支援装置10を有する教育支援システム1の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】教育対象機種記憶部101に記憶される情報の一例を表す図である。
【図3】修理実績記憶部102に記憶された情報の一例を表す図である。
【図4】基準記憶部103に記憶される情報の一例を表す図である。
【図5】ランク記憶部104に記憶された情報の一例を表す図である。
【図6】集合コスト記憶部105に記憶される情報の一例を表す図である。
【図7】集合コスト基準値記憶部106に記憶される情報の一例を示す図である。
【図8】図1における教育支援装置10の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態による教育支援装置について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による教育支援装置10を有する教育支援システム1の構成を示す概略ブロック図である。
教育支援装置10は、ネットワーク20を介して、受講端末30、修理実績管理装置40、受講履歴管理装置50と通信可能に接続されている。
【0017】
教育対象機種記憶部101は、機器のメンテナンスを行う作業者に受講させる教育コンテンツの教育対象である機器の機種を表す教育対象機種を記憶する。
図2は、教育対象機種記憶部101に記憶される情報の一例を表す図である。
【0018】
修理実績記憶部102は、教育コンテンツを受講した作業者が機器に対して行った修理実績を表す作業実績値と修理対象の機器の機種と修理内容と作業者を識別する作業者識別情報とが対応付けられた修理実績データを記憶する。
図3は、修理実績記憶部102に記憶された情報の一例を表す図である。作業実績値は、再修理率、修理時間、部品コストが含まれる。再修理率は、一定期間内に同じ原因に起因して発生した修理に対し同じ部品を交換した場合の修理が発生した件数を、同じ作業者が行った全体の修理件数に対する割合である。修理時間とは、修理内容によって表される修理を行った場合にかかった時間である。部品コストは、修理内容によって表される一度の修理を行った際に用いた部品の費用の総額である。修理内容は、行った修理の内容を表す情報であり、不具合内容や、部品交換を行った場合にはその部品名が含まれる情報である。
【0019】
基準記憶部103は、教育対象機器毎に基準ランクを記憶する。
図4は、基準記憶部103に記憶される情報の一例を表す図である。ここでは、基準ランクとして、A、B、・・・・、Fが記憶されている。
また、基準記憶部103は、基準ランクである第1の基準ランクと、第1の基準ランクよりも高いランクである第2の修理ランクとを記憶している。ここでは、第1の基準ランクと第2の基準ランクが同じである場合には、基準ランク(第1の基準ランク)のみが記憶される。この場合、図4においては、第2の基準ランクが「−」として表されている。
【0020】
ランク記憶部104は、作業実績値と修理ランクとを対応付けて記憶する。
図5は、ランク記憶部104に記憶された情報の一例を表す図である。
作業実績値は、ある範囲毎に分けられており、その分けられた範囲のそれぞれに、修理ランクが対応づけされている。ここで、作業実績値が多い範囲のものから順に、高い修理ランクが対応づけされている。ここでは、作業実績値として作業時間が用いられる場合について説明するが、再修理率であってもよいし、部品コストであってもよい。
【0021】
集合コスト記憶部105は、作業者が実技教育を行う教育場所へ移動して実技教育を受けるために必要な金額を表す集合コストを作業者識別情報に対応付けて記憶する。
図6は、集合コスト記憶部105に記憶される情報の一例を表す図である。
ここでは、作業者識別情報が10010001である作業者が、実技教育を行う教育場所へ移動するための往復の交通費がa円であることが記憶されている。教育スケジュールの開始時刻や終了時刻によっては、宿泊が必要となる場合もある。この場合、日帰りできる場合には交通費が集合コストとして記憶され、宿泊が必要である場合の集合コストとして交通費と宿泊費との合計金額が集合コストとして記憶される。また、例えば、東京に教育場所が1カ所あり、大阪に教育場所が1カ所ある場合には、例えば東日本エリアに所属する作業者については、東京の教育場所への集合コストが記憶され、西日本エリアに所属する作業者については、大阪の教育場所への集合コストが記憶される。交通費は、自宅や勤務先を起点とし、教育場所までの移動にかかる費用である。作業者がどの教育場所に所属するかについては、作業者の自宅の住所または勤務先と、教育場所とを対応づけた情報を記憶しておくことで把握可能である。
【0022】
集合コスト基準値記憶部106は、修理ランク毎に集合コストの上限を表す集合コスト基準値を記憶する。
図7は、集合コスト基準値記憶部106に記憶される情報の一例を示す図である。ここでは、修理ランクAに対しては、「aaa円まで」が記憶され、修理ランクBに対しては、「bbb円まで」が記憶されている。集合コスト基準値は、修理ランクが高いほど大きな金額が記憶され、修理ランクが低いほど小さな金額が記憶される。
【0023】
受講履歴記憶部107は、機器のメンテナンスを行う作業者が受講した教育コンテンツの受講履歴を表す受講履歴データと、作業者を識別する作業者識別情報と、作業者の属性を表す属性情報とが対応付けられた受講管理データを記憶する。受講履歴データは、受講した教育コンテンツを識別するコンテンツ識別情報、受講日、どの機種を対象とした教育コンテンツであるかを表す対象機種、の情報が含まれる。
【0024】
抽出部108は、教育対象機種記憶部101に記憶された教育対象機種に対応する機種を対象として行われた修理実績データを修理実績記憶部102から抽出する。
【0025】
判定部109は、抽出部108が抽出した修理実績データに含まれる作業実績値の平均値を算出し、この算出した平均値に応じた修理ランクをランク記憶部104から読み出し、この修理ランクと基準記憶部103に記憶された基準実績値を比較し、修理ランクが基準ランク以上である場合には、抽出部108によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、修理ランクが基準ランク未満である場合には、教育コンテンツの改修を行うものとして判定する。
【0026】
また、判定部109は、修理ランクが基準ランク以上である場合に、修理実績データに含まれる作業者識別情報に対応する集合コストを集合コスト記憶部105から読み出し、読み出した集合コストの合計値を算出し、修理ランクに対応する集合コスト基準値を集合コスト基準値記憶部106から読み出し、読み出した集合コスト基準値と集合コストの合計値とを比較し、集合コストの合計値が集合コスト基準値以内である場合には、抽出部108によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、集合コストの合計値が集合コスト基準値を越える場合には、教育コンテンツの改修を行うものとして判定する絞り込み処理を行う。
【0027】
また、判定部109は、修理ランクが第1の基準ランク未満である場合には、教育コンテンツの改修を行うものとして判定し、修理ランクが第2の基準ランク以上である場合には、抽出部108によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、修理ランクが第1の基準ランク以上かつ第2の基準ランク未満である場合には、絞り込み処理を行う。また、判定部109は、判定結果を出力部111によって出力する。
【0028】
変更部110は、修理実績値に基づいて基準ランクを変更する。この変更部110は、キーボードやマウス等の入力デバイスが設けられており、教育支援装置10の利用者によって入力操作される内容に従って変更を行う。これにより、利用者によって基準ランクを任意に変更することができる。
【0029】
出力部111は、例えばディスプレイ装置やスピーカー等であり、各種情報を出力する。通信部112は、ネットワーク20を介して各種端末装置と通信を行う。制御部113は、教育支援装置10内のデータの転送の制御や、ネットワーク20を介して各種端末装置と行う通信の制御を行う。
【0030】
受講端末30は、作業者によって操作され、教育コンテンツを画面上に出力したり音声として出力をすることにより、作業者に対し、教育コンテンツを視聴させる。この受講端末30は、例えばパソコンであり、Webブラウザによって教育コンテンツが記憶されたサーバにアクセスし、当該サーバから配信される教育コンテンツを出力する。
【0031】
修理実績管理装置40は、修理が実施される毎にオペレータによって入力される修理実績データを記憶するとともに、ネットワーク20を介して教育支援装置10へ送信して修理実績記憶部102に書き込む。
【0032】
受講履歴管理装置50は、受講端末30によって受講された教育コンテンツの識別情報と受講者から入力される作業者識別情報と、受講日とを、受講される毎に記憶する。受講履歴管理装置50は、記憶した情報を一定期間毎にネットワーク20を介して教育支援管理装置10に送信し、受講履歴記憶部101に書き込む。
【0033】
図8は、図1における教育支援装置10の動作を説明するフローチャートである。
先ず、作業者は、通常の教育スケジュールに従って、受講端末30を利用して教育コンテンツを視聴し、所定の期間内に受講する。ここでは、教育スケジュールに連動し、教育コンテンツを受講可能な期間が決まっており、受講者は、この期間内において任意にタイミングで受講する。このとき、受講端末30からは、受講した履歴として、作業者識別情報と、視聴したコンテンツのコンテンツ識別情報と、対象機種と、受講日とを受講履歴管理装置50へ送信する。受講履歴管理装置50は、受講対象者の作業者識別情報と属性情報とを予め記憶しており、受講端末30から送信されるこれらの情報を受信すると、作業者識別情報毎に受講履歴データとして記憶する。修理実績管理装置40は、修理が行われる毎に修理結果の報告が入力され、これを修理実績データとして記憶する。
【0034】
教育支援装置10の制御部113は、各種データを受信し(ステップS10)、自身の記憶部に記憶する(ステップS11)。具体的には、教育支援装置10の制御部113は、受講履歴管理装置50に受講履歴データの送信要求を行って受講履歴データを受信して受講履歴記憶部11に記憶し、修理実績管理装置40に修理実績データの送信要求を行って修理実績データを受信して修理実績記憶部12に記憶する。ここで、教育対象機種記憶部101、基準記憶部103、ランク記憶部104、集合コスト記憶部105、集合コスト基準値記憶部106、受講履歴記憶部107には、予め各種データが記憶されている。
【0035】
次に、教育支援装置10の制御部113は、実技教育を行うかコンテンツ改修を行うかの判定対象となる機種を特定する(ステップS12)。この特定は、教育支援装置10の利用者によって指定されてもよいし、受講履歴記憶部107を参照し教育が行われてから一定期間(例えば半年)が経過したものを対象として抽出することにより特定してもよい。
【0036】
抽出部108は、対象機器が特定されると、特定された機種の修理実績データを修理実績記憶部102から読み出す(ステップS13)。修理実績データが読み出されると、判定部109は、読み出した修理実績データに含まれる作業実績値の平均値を算出する。ここでは、作業実績値として、再修理率、修理時間、部品コストの項目があるが、いずれか1つの項目について平均値を算出する。例えば、修理時間の平均値を算出する。
【0037】
判定部109は、平均値が算出されると、平均値に対応する修理ランクを読み出し(ステップS14)、読み出した修理ランクと基準ランクとを比較する(ステップS15)。ここで判定部109は、ステップS12で特定された機種に対応する基準ランク(第1の基準ランクと第2の基準ランク)を基準記憶部103から読み出す。
【0038】
判定部109は、修理ランクと第2の基準ランクとを比較し、修理ランクが第2の基準ランク以上であるか否かを判定する(ステップS16)。修理ランクが第2の基準ランク以上である場合、実技教育を行うものとして判断する(ステップS17)。ここでは、例えば、対象の機器において、修理時間の平均値が、基準(第2の基準ランクに相当する修理時間)よりも高い場合には、各作業者全体として修理時間がかかっているため、集合コストがどの程度であるには関わらずに、実技教育が必要であるものとして判定される。言い換えると、集合コストがある程度発生したとしても、実技教育を行うことが必要であるものとして判定される。実技教育の内容として、どのような教育を行うかについては、修理実績データの再修理率、修理時間、部品コストの他に、どのような部品を交換したか、修理内容はどのようなものが多かったのか、作業者の経験年数や、対象機種が発売されてからの年数等を考慮して検討し、決めることができる。
【0039】
修理ランクが第2の基準ランク未満である場合、判定部109は、修理ランクと第1の基準ランクを比較し、修理ランクが第1の修理ランク以上であるか否かを判定する(ステップS18)。判定部109は、修理ランクが第1の修理ランク未満である場合には、コンテンツ改修を行うものとして判断する(ステップS23)。ここでは、例えば、対象の機器において、修理時間の平均値が、基準(第1の基準ランクに相当する修理時間)未満である場合には、各作業者全体として修理時間がかかっていないため、集合コストを使ってまで実技教育を行う必要はないため、コンテンツ改修を行うものとして判定される。コンテンツをどのように改修するかについては、修理実績データの再修理率、修理時間、部品コストの他に、どのような部品を交換したか、修理内容はどのようなものが多かったのか、作業者の経験年数や、対象機種が発売されてからの年数等を考慮して検討し、決めることができる。
【0040】
修理ランクが第1の基準ランク以上である場合、判定部109は、絞り込み処理を行う。すなわち、判定部109は、教育場所毎に、当該教育場所に所属する作業者を特定する(ステップS19)。例えば、「東京」の教育場所に所属する東日本エリアに所属する各作業者を特定する。教育場所が複数ある場合には、教育場所毎に作業者が特定される。
【0041】
判定部109は、教育場所に所属する作業者が特定されると、特定された作業者の集合コストの合計値を算出する(ステップS20)。そして判定部109は、集合コスト基準値106を参照し、作業実績値の平均値に応じた修理ランクに対応する集合コスト基準値を読み出す。そして、読み出した集合コスト基準値と集合コストの合計値とを比較する(ステップS21)。
【0042】
判定部109は、集合コストの合計値が集合コスト基準値の条件を満たさない場合、すなわち、集合コストの合計値が集合コスト基準値を超える場合には(ステップS22−YES)、コンテンツ改修を行うものとして判定する(ステップS23)。
【0043】
一方、判定部109は、集合コストの合計値が集合コスト基準値の条件を満たす場合、すなわち、集合コストの合計値が集合コスト基準値以内である場合には(ステップS22−NO)、実技教育を行うものとして判定する(ステップS17)。
【0044】
例えば、作業実績値の平均値に応じた修理ランクがBであり、第2の基準ランクがBである場合には、実技教育を行うものとして判定される。作業実績値の平均値に応じた修理ランクがBであり、第2の基準ランクがAである場合には、第1の基準ランクとの比較を行う。第1の基準ランクがCである場合には、ステップS19〜ステップS22の処理を行う。第1の基準ランクがBである場合には、修理ランクCが、第1の基準ランクBよりも下であるため、コンテンツ改修を行うものとして判定される。
【0045】
ここで、判定部109が行う絞り込み処理は、上述のステップS19〜ステップS22の処理が該当する。
この絞り込み処理を行うと、第1の基準ランクと第2の基準ランクの間に、作業実績値の平均値に応じた修理ランクが存在する場合には、作業実績値を考慮して実技教育を行うかコンテンツ改修を行うのかの判定を直ちに行うのではなく、集合コストも考慮して判定することができる。これにより、作業実績値が明らかに少ない、あるいは多い等がはっきりしていない状態であっても、集合コストを考慮することで、判定がしやすくなる。
例えば、平均の作業実績値が、基準となる作業実績値よりも多少多かった場合に、ただちに実技教育を行うとそれなりの費用がかかってしまうため、その費用に見合った教育結果が得られることが望ましい。そこで、基準となる作業実績値よりも多少多かったとしても、集合コストをかけてまで実技教育を行うほどの作業実績値の多さでなければ、コンテンツ改修を行うようにすることができる。また、基準となる作業実績値よりも多少多い程度である場合において、対象の機器が重要な機器であったり、設置されている台数が非常に多い機種であったりする場合には、修理技術を向上させておく必要があるものとして、実技教育を行うように判定することもできる。
【0046】
集合コスト基準値記憶部106には、集合コスト基準値として、修理ランクが高いほど大きな金額が記憶され、修理ランクが低いほど小さな金額が記憶されているため、修理ランクが高いものほど、集合コストとして許容される金額が大きい。
【0047】
このように絞り込み処理を行うことで、修理実績データや市場の修理の発生具合等を考慮し、実技教育を行うか、コンテンツ改修を行うかを柔軟に判断することができる。
【0048】
以上説明した実施形態においては、第1の基準ランクと第2の基準ランクとの2つの基準ランクを用いる場合について説明したが、作業実績値の平均値を算出し、この平均値に応じた修理ランクに対応する基準実績値と作業実績値の平均値とを比較し、修理ランクが基準ランク以上である場合には、修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、修理ランクが基準ランク未満である場合には、教育コンテンツの改修を行うものとして判定するようにしてもよい。これにより、判定処理の負荷を軽減することができる。
【0049】
また、上述した実施形態において、第1の基準ランクと第2の基準ランクとの2つの基準ランクを用いる場合について説明したが、1つの基準ランクを用いるようにしてもよい。例えば、判定部109は、修理ランクが基準ランク以上である場合に、修理実績データに含まれる作業者識別情報に対応する集合コストの合計値を算出し、修理ランクに対応する集合コスト基準値と集合コストの合計値とを比較し、集合コストの合計値が集合コスト基準値以内である場合には、抽出部108によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、集合コストの合計値が集合コスト基準値を越える場合には、教育コンテンツの改修を行うものとして判定するようにしてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態において、コンテンツ改修を行った場合には、改修前の教育コンテンツを一度受講した作業者であっても、一定の修理・保守技術が一定レベルまで到達していない作業者については、フォロー教育として、改修後の教育コンテンツを受講するようにしてもよい。これにより、改修されて新たな内容が盛り込まれた教育コンテンツを視聴することで、修理・保守技術を向上させることができる。なお、改修後の教育コンテンツを受講しても、修理・保守技術が一定レベルまで到達しないのであれば、上述した処理を行うことにより、実技教育を行うようにしてもよい。
【0051】
また、図1における教育支援装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより教育支援を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0052】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0053】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 教育支援システム
10 教育支援装置
101 教育対象機種記憶部
102 修理実績記憶部
103 基準記憶部
104 ランク記憶部
105 集合コスト記憶部
106 集合コスト基準値記憶部
107 受講履歴記憶部
108 抽出部
109 判定部
110 変更部
111 出力部
112 通信部
113 制御部
20 ネットワーク
30 受講端末
40 修理実績管理装置
50 受講履歴記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器のメンテナンスを行う作業者に受講させる教育コンテンツの教育対象である機器の機種を表す教育対象機種を記憶する教育対象機種記憶部と、
前記教育コンテンツを受講した作業者が機器に対して行った修理実績を表す作業実績値と修理対象の機器の機種と修理内容と前記作業者を識別する作業者識別情報とが対応付けられた修理実績データを記憶する修理実績記憶部と、
前記教育対象機種記憶部に記憶された教育対象機種に対応する機種を対象として行われた修理実績データを前記修理実績記憶部から抽出する抽出部と、
前記教育対象機器毎に基準ランクを記憶する基準記憶部と、
前記作業実績値と修理ランクとを対応付けて記憶するランク記憶部と、
前記抽出部が抽出した修理実績データに含まれる作業実績値の平均値を算出し、この算出した平均値に応じた修理ランクを前記ランク記憶部から読み出し、この修理ランクと前記基準記憶部に記憶された基準実績値を比較し、前記修理ランクが前記基準ランク以上である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、前記修理ランクが前記基準ランク未満である場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定する判定部と、
を有することを特徴とする教育支援装置。
【請求項2】
前記作業者が前記実技教育を行う教育場所へ移動して実技教育を受けるために必要な金額を表す集合コストを作業者識別情報に対応付けて記憶する集合コスト記憶部と、
前記修理ランク毎に集合コストの上限を表す集合コスト基準値を記憶する集合コスト基準値記憶部とを有し、
前記判定部は、前記修理ランクが前記基準ランク以上である場合に、前記修理実績データに含まれる作業者識別情報に対応する集合コストを前記集合コスト記憶部から読み出し、読み出した集合コストの合計値を算出し、前記修理ランクに対応する集合コスト基準値を前記集合コスト基準値記憶部から読み出し、読み出した集合コスト基準値と前記集合コストの合計値とを比較し、前記集合コストの合計値が前記集合コスト基準値以内である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、前記集合コストの合計値が前記集合コスト基準値を越える場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定する絞り込み処理を行う
ことを特徴とする請求項1記載の教育支援装置。
【請求項3】
前記基準記憶部は、
前記基準ランクである第1の基準ランクと、当該第1の基準ランクよりも高いランクである第2の修理ランクとを記憶しており、
前記判定部は、前記修理ランクが前記第1の基準ランク未満である場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定し、前記修理ランクが前記第2の基準ランク以上である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、
前記修理ランクが前記第1の基準ランク以上かつ前記第2の基準ランク未満である場合には、前記絞り込み処理を行う
ことを特徴とする請求項2記載の教育支援装置。
【請求項4】
前記修理実績値に基づいて前記基準ランクを変更する変更部
を有することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の教育支援装置。
【請求項5】
機器のメンテナンスを行う作業者に受講させる教育コンテンツの教育対象である機器の機種を表す教育対象機種を記憶する教育対象機種記憶部と、
前記教育コンテンツを受講した作業者が機器に対して行った修理実績を表す作業実績値と修理対象の機器の機種と修理内容と前記作業者を識別する作業者識別情報とが対応付けられた修理実績データを記憶する修理実績記憶部と、
前記教育対象機器毎に基準ランクを記憶する基準記憶部と、
前記作業実績値と修理ランクとを対応付けて記憶するランク記憶部と、
を有する教育支援装置における教育支援方法であって、
前記教育支援装置の抽出部が、
前記教育対象機種記憶部に記憶された教育対象機種に対応する機種を対象として行われた修理実績データを前記修理実績記憶部から抽出し、
前記教育支援装置の判定部が、
前記抽出部が抽出した修理実績データに含まれる作業実績値の平均値を算出し、この算出した平均値に応じた修理ランクを前記ランク記憶部から読み出し、この修理ランクと前記基準記憶部に記憶された基準実績値を比較し、前記修理ランクが前記基準ランク以上である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、前記修理ランクが前記基準ランク未満である場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定する
ことを特徴とする教育支援方法。
【請求項6】
機器のメンテナンスを行う作業者に受講させる教育コンテンツの教育対象である機器の機種を表す教育対象機種を記憶する教育対象機種記憶部と、
前記教育コンテンツを受講した作業者が機器に対して行った修理実績を表す作業実績値と修理対象の機器の機種と修理内容と前記作業者を識別する作業者識別情報とが対応付けられた修理実績データを記憶する修理実績記憶部と、
前記教育対象機器毎に基準ランクを記憶する基準記憶部と、
前記作業実績値と修理ランクとを対応付けて記憶するランク記憶部と、
を有する教育支援装置であるコンピュータに、
前記教育対象機種記憶部に記憶された教育対象機種に対応する機種を対象として行われた修理実績データを前記修理実績記憶部から抽出する抽出手段、
前記抽出手段が抽出した修理実績データに含まれる作業実績値の平均値を算出し、この算出した平均値に応じた修理ランクを前記ランク記憶部から読み出し、この修理ランクと前記基準記憶部に記憶された基準実績値を比較し、前記修理ランクが前記基準ランク以上である場合には、前記抽出部によって抽出された修理実績データに含まれる作業者識別情報の作業者に対して実技教育を行うものとして判定し、前記修理ランクが前記基準ランク未満である場合には、前記教育コンテンツの改修を行うものとして判定する判定手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−189684(P2012−189684A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51580(P2011−51580)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)