説明

散在性ガンの治療法

本発明は、転移を排液する1又はそれより多い転移排液リンパ節(メチネル節)から取得し得る、拡大した腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を投与することにより散在性ガンに罹患している患者を治療する免疫療法を開示する。この方法は、患者における1又はそれより多いメチネルリンパ節の同定、該1又はそれより多い節と、任意に転移の全て又は一部との切除、該リンパ節からの転移反応性Tリンパ球の単離、該転移反応性Tリンパ球のインビトロ拡大、こうして取得されたTリンパ球の該患者への投与を含んでなり、ここで、該Tリンパ球はCD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、転移を排液する(draining)1又はそれより多いメチネルリンパ節から得られる、拡大された(expanded)腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を投与することによる、散在性ガンに罹患している患者を治療するための免疫療法上の方法に関する。ここで、前記Tリンパ球はCD4+CD25+Hiリンパ球ではない。すなわち、本発明は調節性Tリンパ球を対象としない。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
リンパ系は、間質液を起源とする無色の水状液であるリンパを運搬する脈管のネットワークである。この脈管は、リンパ液の逆流を防止しつつ、身体組織中の間質腔から離れるように過剰の液を輸送し、血流に戻す。リンパ系脈管(lymphatic vessel)の主要な3つのタイプは、毛細リンパ管(lymph capillary)、リンパ管(lymphatic)及びリンパ本管(lymph duct)である。毛細リンパ管は結合して、リンパ管又はリンパ静脈(lymph vein)と呼ばれるより大きな脈管を形成する。これらは血液を導く静脈に似ているが、より薄い壁及び比較的大きな管腔を有し、より多くの弁を有している。皮膚では、リンパ管は皮下組織に位置し、静脈と同じ経路を辿る。内蔵では、リンパ管は一般的には動脈と同行し、その周りに叢を形成する(ネットワーク)。或る場所で、リンパ管はリンパ節に入る。これらは、リンパ系組織からなる小さな特化した器官である。リンパは、静脈循環に入る前に、少なくとも1つのリンパ節で濾過される(Moore)。リンパ節は、例えば細菌及びウイルスを集めて破壊するリンパ球で満たされた内部ハニカム状の結合組織を有するフィルターとして作用する。節では、リンパは血液循環と接しており、液が遠心性のリンパ系脈管を経て節を出て行く前に液の約半分が血液中に排出される(Renkin)。上皮腫瘍からの悪性細胞の実質的に全ての拡散が、リンパ節中のリンパ-静脈結合を介して全身血液循環に入る前に、最初に、(白血球も使用する能動的機序により)薄い有窓リンパ脈管(lymph vessel)を通じて起こるというのは、益々受け入れられている考えである。リンパ節のクラスターは、腋窩、鼠径部、頸部、胸部及び腹部に見出される。
【0003】
原発腫瘍又は原発腫瘍領域は、1又はそれより多い所謂センチネルリンパ節に排液する(drain)。ここで、センチネル節は、腫瘍からのリンパ排液(lymphatic drainage)を受ける最初のリンパ節として定義され、また「センチネル節概念」としても知られている。これは、転移の最初の部位でもあり、幾つかの充実性腫瘍タイプでは、センチネル節に腫瘍細胞がない場合にはリンパ節転移の危険はほとんど無視できることが示されている。センチネル節は、手術の間に、腫瘍の周りへのトレーサー物質又は色素物質の注射により同定することができる。これら物質は、毛細リンパ管内を輸送され、センチネル節でマクロファージによるファゴサイトーシスを通じて蓄積するので、腫瘍排液リンパ節を同定する。本発明者らは、原発腫瘍を排液するセンチネルリンパ節が、リンパ節で腫瘍抗原に対して感作されインビボ拡大(expansion)を受けているTリンパ球を相当量含有し得るので、インビトロ拡大用の天然の腫瘍反応性Tリンパ球の豊富な供給源である可能性を最近示した(Maritsら,原稿;Karlssonら,Eur J Urol, 採用)。
【0004】
しかし、今日まで、特定の個々のリンパ節が関与する逐次リンパ排液(sequential lymph drainage)が転移にも当てはまること、すなわち、転移について、転移領域を排液する1又はそれより多いリンパ節が検出可能であることは知られていなかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
原発腫瘍の転移は、原発腫瘍の拡散に起因するガンとして定義される。転移は、ガン細胞が獲得する2つの別個の能力−増大した自動運動性及び侵襲性に依存する。転移する細胞は、基本的に、元の腫瘍中の細胞と同じ種類である。ガンが例えば結腸で発生し、例えば肝臓に転移する場合、肝臓中のガン細胞は結腸ガン細胞である。しかし、その細胞は、増大した自動運動性及び別の器官を侵襲する能力を獲得している。
【0006】
理論的には、原発腫瘍は、腫瘍が発現する器官又は組織に存在する細胞を起源とする。そのような器官又は組織中の細胞は、既に、既存のリンパ排液系に接続しているので、リンパは、既存のリンパ脈管を通じて原発腫瘍から排液される。今日まで、原発腫瘍の「センチネル節概念」が転移にも当てはまること、すなわち転移からの排液を受ける最初の1又はそれより多いリンパ節が転移について同定可能であることは誰も示していなかった。転移がリンパ管形成を誘導することは示されていないし、更に転移がリンパ系への接続を開くことは自明ではなかった。
【0007】
本発明者らは、例えばリンパ節又は例えば肝臓のような器官若しくは例えば腸間膜脂肪組織のような組織における転移が、リンパ系への接続及びリンパ節への排液を開くこと、及び1又はそれより多い所謂「メチネル」リンパ節、すなわち転移からのリンパ排液を受ける最初のリンパ節が同定可能であることを見出した。
【0008】
理論的には、転移からの腫瘍細胞の拡散は、腫瘍がトリガーする血管形成活性により形成される血管を介して起こり得る。リンパ系は胚発生以来むしろよく保存され、血管系とは独立して発達すると考えられている。したがって、本発明者らは、種々の充実性原発腫瘍についてリンパ排液をマッピングするために開発された技法と同様な技法を用いて、充実性上皮腫瘍からの転移を研究できることを見出せるとは予測できなかった。皮下組織、リンパ系組織、腹部内及び内部器官に位置する異なるタイプの転移からのリンパ排液を研究する間に、本発明者らは転移排液リンパ節(メチネル節)を同定した。メチネル節は個別に位置し、メチネル節(すなわち、転移からのリンパ排液を受ける最初の節)が、転移から解剖学的最短距離の節でないこともしばしばある
【0009】
本発明者らによるこのようなメチネルリンパ節の更なる分析により、メチネルリンパ節が、対応する転移中の腫瘍細胞に対して特異活性を有するTリンパ球を含有することが示された。本発明者らは更に、メチネルリンパ節から得られたTリンパ球が拡大可能であり、散在性ガン疾患の治療に使用可能であることを示した。
【0010】
したがって、本発明は、散在性ガンに罹患している患者の治療法に関し、該方法は、
i)患者において、1又はそれより多いメチネルリンパ節を同定し、
ii)該1又はそれより多い節と、任意に転移の全て又は一部とを切除し、
iii)該リンパ節から転移反応性Tリンパ球を単離し、
iv)該転移反応性Tリンパ球をインビトロ拡大し、
v)そうして得られたTリンパ球を患者に投与する
ことを含んでなり、前記Tリンパ球はCD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球であり、CD4+CD25+Hiリンパ球ではない。すなわち、本発明は調節性Tリンパ球を対象としない。
【0011】
本発明の方法の工程を更に詳述する前に、以下の用語を定義する:
用語「腫瘍反応性Tリンパ球」は、腫瘍抗原に特異的でありこれを認識するT細胞レセプター(TCR)を有するTリンパ球を意味すると意図される。ここで、用語 腫瘍反応性Tリンパ球はまた、転移抗原に特異的でありこれを認識するTCRを有するTリンパ球も含むと意図される。すなわち、用語 腫瘍反応性Tリンパ球 及び 転移反応性Tリンパ球は、互換可能に使用される。
【0012】
用語「Tヘルパー細胞」は、活性化されると適応性の免疫応答を促進するTリンパ球を意味すると意図される。
用語「Th1細胞」は、IFN-γのようなサイトカインを使用して活性化されると、細胞媒介性免疫応答を促進するTヘルパー細胞を意味すると意図される。
用語「Th2細胞」は、IL-4のようなサイトカインを使用して活性化されると、体液性免疫応答を促進するTヘルパー細胞を意味すると意図される。
【0013】
用語「CD4+ヘルパーTリンパ球」は、CD4を発現するが転写因子FoxP3を発現しないTリンパ球を意味すると意図される。
用語「CD8+Tリンパ球」は、CD8を発現するTリンパ球を意味すると意図される。
用語「調節性Tリンパ球」は、転写因子FoxP3を発現し、適応性免疫応答を抑制するTリンパ球を意味すると意図される。
【0014】
用語 Tリンパ球の「特異的活性化」は、抗原特異的でMHC拘束性のT細胞レセプター媒介性活性化を意味すると意図される。これに対し、用語 Tリンパ球の「非特異的活性化」は、T細胞レセプターの特異性にかかわらず、全てのT細胞の全般的な活性化を意味すると意図される。
【0015】
用語「腫瘍由来抗原」は、腫瘍細胞、腫瘍のホモジネート(これは変性されていてもよい)、又は例えば精製、天然、合成及び/若しくは組換えのタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチドの形態の、腫瘍タンパク質、ポリペプチド若しくはペプチドを含むと意図される。用語 腫瘍は、本明細書中で、原発腫瘍の転移をも包含すると意図されていることに留意すべきである。腫瘍由来抗原は、インタクトな分子、そのフラグメント又はインタクトな分子及び/若しくはフラグメントの多量体若しくは凝集体であり得る。適切なポリペプチド及びペプチドの例は、約5〜約30アミノ酸、例えば約10〜25アミノ酸、約10〜20アミノ酸又は約12〜18アミノ酸を含んでなるポリペプチド及びペプチドである。ペプチドが使用される場合、培養中で約0.1〜約5.0μM、例えば約0.1〜約4.0μM、約0.2〜約3.0μM、約0.3〜約2.0μM又は約0.3〜約1.0μMの最終モル濃度が使用され得る。腫瘍由来抗原は自己由来であっても異種であってもよい。すなわち、腫瘍由来抗原は、治療すべき患者から生じていてもよいし、ガンに罹患している別の対象から取得してもよい。本明細書の実施例では、本発明者らは、自己由来の変性腫瘍抽出物を使用するが、上記のように、腫瘍由来抗原の他の供給源もまた、本発明による方法において使用可能であり得る。
【0016】
用語「第1フェーズの1日目」又は例えば「第2フェーズの5日目」は、以下のように理解すべきである:リンパ球を採集した日を0日目と呼ぶ。第1のフェーズの1日目は、IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質と、おそらくは培養培地及び/又は腫瘍由来抗原との添加により拡大が開始された日として定義される。拡大フェーズi)は、0日目に開始されてもよいし、リンパ球の採集の2日後までに開始されてもよい。第2のフェーズが腫瘍由来抗原の添加により開始される日は、本明細書を通して、「第2フェーズの1日目」と記述される。
【0017】
用語「センチネルリンパ節」は、腫瘍からのリンパ排液を受ける最初のリンパ節を意味すると意図される。原発腫瘍又は原発腫瘍領域は、1又はそれより多い所謂センチネルリンパ節に排液する。センチネル節はまた、転移の最初の部位でもあり、幾つかの充実性腫瘍タイプでは、センチネル節に腫瘍細胞がない場合にはリンパ節転移の危険はほとんど無視できることが示されている。用語「メチネル(metinel)リンパ節」とは、転移又は転移領域からのリンパ排液を受ける最初のリンパ節をいう。
【0018】
本方法の第1工程は、転移を排液する1又はそれより多いメチネルリンパ節の同定である。上記のように、メチネルリンパ節の位置決めは、必ずしも容易な課題ではない。なぜならば、転移からの排液を受ける最初のものが、解剖学的最短距離のリンパ節でないこともしばしばあるからである。しかし、本発明者らは、メチネル節が、転移からリンパ系を更に下行したリンパ節又は無関係のリンパ節(ここでは、腫瘍反応性Tリンパ球の含量は実質的に0である)より高い量の腫瘍反応性Tリンパ球を含有することを見出したので、1又はそれより多いメチネル節を同定する工程i)は、本発明による方法に関して非常に重要である。
【0019】
メチネルリンパ節を同定する1つの方法は、患者に1又はそれより多いリンパ節探知体(すなわち、リンパ節を位置決めするに適切な任意の物質)を注射することによる。このような探知体は、好ましくは、医薬的に受容可能であり及び/又は生体適合性である。探知体は、親和性ベースであるか又は非親和性ベースであるかのいずれかであり得る。親和性ベースのリンパ節探知体の例は、抗体(全体又はフラグメント)、ナノボディ(nanobody)、核酸(例えば、RNA、DNA)及びPNAである(これらは全て、次いで、種々の検出様式を用いて標識することができる)。親和性ベースのリンパ節探知体の検出は、トレーサー及び色素(例えば、下記のもの)で標識することにより行うことができる。次いで、可視化は、i)造影物質(contrast generating substance)(例えば、ヨウ素含有物質)又は放射性物質(例えば、テクネチウム-99m)での標識後のX線、コンピュータ断層撮影法、シンチグラフィー、陽電子放射技法のような放射線学的方法、ii)磁性又は常磁性物質(例えば、ガドリニウム、磁性デンドリマー(magnetodendromers)又は酸化鉄含有粒子)での標識後の磁気共鳴画像化;iii)裸眼又は光子検出デバイス(例えば、CCD又はCMOSセンサ)による検出用の色素、蛍光色素又は発光色素での標識によりIR-可視-UVスペクトルの光によってなされる。
【0020】
非親和性ベースのリンパ節探知体の例には、トレーサー及び色素が包含される。これら物質は、毛細リンパ管内を輸送され、センチネル節又はメチネル節でマクロファージによるファゴサイトーシスを通じて蓄積するので、腫瘍又は転移を排液するリンパ節を同定する。
【0021】
トレーサーの例は、光子感受性フィルム又はセンサ(例えばPET検出器)を用いる放射性崩壊ベースの検出用の放射性物質、例えばテクネチウム-99である。更に、磁性、常磁性又は超常磁性物質については、例えば、磁気共鳴ベースの検出用のガドリニウム含有造影剤、酸化鉄粒子、磁性酸化物粒子、磁性デンドリマーを、放射線学ベースの検出(例えば、コンピュータ断層撮影法又は通常のX線)用の造影剤、例えばヨウ素を使用し得る。
【0022】
色素の例には、例えば、発光光、近赤外光、蛍光、UV光及び可視光による可視化には、アゾ色素、ビスアゾ色素、トリアゾ色素、ジアリールメタン色素、トリアリールメタン色素、アントラキノン(anthrachino)色素、多環式芳香族カルボニル色素、インディゴ色素が包含される。更に、色素については、発光ベースの検出用の発光物質及び蛍光ベースの検出用の蛍光物質、例えばピコグリーン(pico green)、サイバーグリーン(sybr green)、レッド0オイル(red O oil)、テキサスレッドもまた包含される。検出は、選択した波長に依存して、裸眼又は光子検出デバイス(例えば、CCD又はCMOSセンサ)のいずれかにより行うことができる。
【0023】
1つの実施形態では、色素は、通常光(normal light)で裸眼による可視化を可能にする発光極大を有する。別の実施形態では、色素は、UV光で裸眼による可視化を可能にする発光極大を有する。
適切な色素又はトレーサーの他の例は、WO 04/045650(参照により本明細書に組み込まれる)に見られる。
【0024】
メチネル節を同定する別の方法ではあるが遥かに時間のかかるものは、推定の転移排液領域において選択したリンパ節を取り出して調べることである。次いで、実際の患者の転移からの腫瘍抽出物を使用して、増殖アッセイにより腫瘍反応性Tリンパ球を含有するリンパ節を同定し得る。
【0025】
リンパ節探知体は、患者に、転移の中、上、周り、近く及び/又は下に注射する。次いで、探知体はリンパ系脈管を通って拡散し、メチネルリンパ節に至り、1又はそれより多い節が、探知体物質の注射後の或る期間内(例えば、5分〜30分以内、例えば5分〜15分以内)に染まり始める。そこで、探知体物質が造影される。上記のように、探知体の造影は、もちろん、使用する探知体物質に依存する。
【0026】
通常光で裸眼による可視化を可能にする発光極大を有する色素(例えばパテントブルー(Patent Blue))を使用する場合、1又はそれより多いメチネル節は、単純に、着色色素が最初に蓄積する節として同定される。すなわち、パテントブルーを使用する場合、外科医は、青色が最初に蓄積するリンパ節を探す。
【0027】
探知体は、単回注射又は多回注射(例えば、2回又はそれより多い注射、3回又はそれより多い注射、4回又はそれより多い注射、5回又はそれより多い注射、或いは6回又はそれより多い注射)により注射され得る。
【0028】
リンパ節探知体の注射を実施する方法は、転移の位置に依存する。リンパ節探知体は、非外科的手順より、すなわち外科的工程を含まない手順により注射され得る。ここで、外科的工程は、外科手術手順を含むもの、すなわち器具を用いる切開を含む工程と定義される。本発明に関しては、注射、すなわち注射針による皮膚の穿孔は、外科的工程と考えない。したがって、リンパ節探知体が非外科的手順により注射され得るとの言及は、リンパ節探知体が、皮膚に又は皮膚を通して直接、転移の中、上、周り、近辺及び/又は下に注射され得ることを意味すると意図される。
【0029】
リンパ節探知体が皮膚内に又は皮膚を通して注射され得る状況の例は、例えば、転移が患者の皮膚に位置する症例である。このような状況では、リンパ節探知体は、優先的には、転移の上の皮膚中に、又は皮膚を通して転移の中、周り、近辺及び/又は下に注射すべきである。転移が患者の皮下組織に位置する場合、リンパ節探知体は、優先的には、転移の上の皮膚中に、又は皮膚を通して転移の中、周り、近辺及び/又は下に注射すべきである。
【0030】
上記のように、メチネルリンパ節は、必ずしも、転移から解剖学的最短距離又は最も論理的な解剖学的距離に位置しないことがある。この例としては、本明細書中の実施例に記載されるような、本発明者らによる鼠径部リンパ節転移から遠位で内側のメチネル節の驚くべき同定がある。リンパ系の解剖学に基づいて、鼠径部におけるリンパ節転移に対するメチネルリンパ節が疑われる位置は、皮膚若しくは皮下脂肪中の近位又は骨盤中の腸骨血管に沿って深部のいずれかである。
【0031】
したがって、メチネルリンパ節は転移から遠位に位置し得るので、幾つかの症例では、手術の必要がないリンパ節探知体の注射が非常に有益であり得る。なぜならば、そのようなメチネルリンパ節の位置を予測することは非常に困難であり得るからである。理論では、鼠径部中の転移は腋窩にメチネルリンパ節を有し得る。すなわち、メチネル節除去手術を行う身体内の場所を予測することは非常に困難なことがある。本発明の具体的実施形態では、リンパ節探知体は、放射性物質、例えばテクネチウム-99mである。これは非外科的手順により注射され得、その後リンパシンチグラフィーを実行することにより造影される。
【0032】
センチネル節は原発腫瘍を排液する。これは、通常、先天的に、そのリンパ排液がその特定の個体に関して胎発生以来組織された器官に由来する。排液パターンは個体間で異なり得る。本発明者らは、種々の場所(肝臓、腸間膜脂肪、リンパ節、皮下組織、筋肉など)に位置する転移もまた、最初の排液リンパ節を有するリンパ排液を有することを見出した。本発明者らはこれら節を「メチネル節」と呼ぶ。これらは、リンパ管生成因子(例えばVEGF-C)を産生する転移自体の能力によりリンパ管に接続している可能性が高い。本発明者らは、(転移に対するクローン拡大を経験した)これらメチネル節において腫瘍反応性リンパ球を同定し、それらを免疫学的特徴を保持したまま拡大させ、細胞性免疫療法に使用できることを示した。
【0033】
リンパ節探知体はまた、外科的手順、すなわち切開を含む手順を含んで注射し得る。外科的手順を含み得る状況の例としては、注射針が皮膚を通して到達できない場所に転移が位置する場合又は皮膚及び組織を通しての探知体の造影が不可能である場合である。
【0034】
このような場合、外科医は、転移の領域で切開を実施し、その後、1又はそれより多いメチネルリンパ節を同定するために、リンパ節探知体を転移の中、上、周り、近辺及び/又は下に直接注射し得る。リンパ節探知体の注射が外科的手順を含み得る状況の例は、例えば、転移が患者の腹部内の領域中、柔組織器官中又はより深部に位置するリンパ節中に位置する場合である。
【0035】
時に、メチネルリンパ節の同定には、非外科的工程と外科的工程との組合せによるリンパ節探知体の注射が含まれ得る。この例としては、放射活性リンパ節探知体、例えばテクネチウム-99mを、注射針を用いて、すなわち手術用の針を用いずに注射し得る。探知体の蓄積、すなわちメチネル節の同定は、γ検出器を用いて行い得る。このことにより、外科医は、メチネル節が位置する場所に対する示唆が得られる。その後、メチネルリンパ節及び転移の少なくとも一部を除去する手術を患者が受けているときに、着色色素(例えばパテントブルー色素)を注射し得る。更に、最初の注射後約18〜24時間より長く経過する場合には、手術の間にメチネル節を同定するために、放射活性トレーサーを(該放射活性トレーサーの半減期(通常約6時間)に依存して)1又はそれより多く余分に注射することが有益であり得る。
【0036】
1つの方法又は他の方法により1又はそれより多いメチネルリンパ節を位置決めした後に、外科医は、メチネルリンパ節が腫瘍細胞を含有しているかどうかを調べるため、及び転移反応性Tリンパ球の培養物を取得するために、メチネルリンパ節を取り出す。
【0037】
1又はそれより多いメチネルリンパ節からのリンパ球の採集は、リンパ球の単一細胞懸濁物を取得するために、メチネルリンパ節材料をホモジネートすることにより行われ得る。次いで、単一細胞懸濁物は、転移反応性Tリンパ球を取得するために、インビトロ拡大に付す。
【0038】
インビトロ拡大
本発明に従う方法のインビトロ拡大工程iii)は、
i) 腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を、腫瘍由来抗原とIL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質とで刺激して、腫瘍反応性Tリンパ球の生存を促進する第1のフェーズ;及び
ii) 腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の成長を活性化し促進する第2のフェーズ
を含んでなり、第2のフェーズii)は、Tリンパ球上でCD25細胞表面マーカー(IL-2Rマーカー)がダウンレギュレートされたときに開始される。
【0039】
フェーズi)
第1のフェーズi)の目的は、実質的に高い比率の腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を含んでなる培養物を取得することである。第1のフェーズは、腫瘍反応性Tリンパ球を生存させ分裂させる「養育フェーズ」と考えられる。Tリンパ球の供給源(インビトロ拡大法用の出発材料)に依存して、Tリンパ球は、比較的過酷な条件、例えばガン細胞によって分泌される因子による抑制及び阻害を漸次導入され得る。
【0040】
拡大法における使用のための出発材料は、転移を排液するリンパ節から得られるリンパ球の混合物であり得る。
【0041】
培養物中で拡大させるべきTリンパ球は、治療すべき対象から取得することができる。すなわち、投与用に得られる特異的腫瘍反応性Tリンパ球は自己由来であり得る。しかし、Tリンパ球はまた、治療すべき対象以外の供給源から、例えばガンに罹患している別の対象から取得することも可能である。この場合、レシピエント及び拡大された腫瘍反応性Tリンパ球は、好ましくは、免疫学的に適合性である(或いは、そうでなければ、レシピエントが、拡大された腫瘍反応性Tリンパ球に免疫寛容にされる)。
【0042】
出発材料は、ほとんどの場合、種々のリンパ球、例えばTリンパ球、Bリンパ球、抗原提示細胞、腫瘍反応性Tリンパ球及び非活性化/非反応性Tリンパ球の混合物を含んでなる。腫瘍反応性Tリンパ球の生存を特異的に促進するために、腫瘍由来抗原とIL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する1又はそれより多い物質とが添加される。
【0043】
上記のように、第1のフェーズi)は、IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質を添加することにより開始される。その物質の機能は、IL-2レセプターを介してTリンパ球を刺激し、Tリンパ球の細胞分裂を促進することであり、そのことにより細胞死を防止する。
【0044】
Tリンパ球の抗原特異的MHC拘束性活性化は、腫瘍細胞の認識に特異的な有用なTリンパ球集団のクローン拡大を促進する。対照的に、Tリンパ球の非特異的活性化は、腫瘍細胞の認識との関係なく無関係のペプチドを認識するTリンパ球クローンの拡大を導き、よって非特異的に拡大されたTリンパ球の大部分は当該腫瘍を認識しない。
【0045】
本発明は、腫瘍反応性CD4+ヘルパー及びCD8+Tリンパ球の特異的活性化及び成長を促進することを目的とする。或る腫瘍抗原に対する特異的活性化により、Tリンパ球は、該Tリンパ球が活性化されている腫瘍タイプと同じ腫瘍タイプのガン患者に投与されたときに治療効果を有することが可能になる。
【0046】
本発明の1つの実施形態では、IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質は、アゴニストである。このような物質の例としては、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、アフィボディ、及びそれらのフラグメント、融合タンパク質、合成及び/又は有機分子、例えば、小分子、及び天然リガンドが挙げられる。好ましい実施形態では、この物質は、IL-2レセプターの天然リガンド、すなわちIL-2である。
【0047】
IL-2は、使用される場合、リンパ球のアポトーシスを減少させるため及びCD4陽性腫瘍反応性Tリンパ球の集団を増大させるために、優先的には、低用量で添加される。本発明の具体的実施形態では、IL-2の低用量は、約100 IU/ml培養培地〜約700 IU/ml培養培地、例えば、約100 IU/ml培養培地〜約600 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約500 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約400 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約300 IU/ml培養培地及び約100 IU/ml培養培地〜約200 IU/ml培養培地である。具体的実施形態では、添加するIL-2の量は240 IU/mlである。
【0048】
IL-2レセプターに対してアゴニスト活性を有する、IL-2以外の物質を使用する場合、それらの具体的用量は、上記用量のIL-2により得られる効果に相当する効果を導くような用量であるべきである。
【0049】
細胞分裂を促進する最適条件を維持するために、更なる量のIL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質が、フェーズi)を通して定期的に、例えばフェーズi)の2日毎、3日毎又は4日毎に添加されてもよい。用語 2日毎、3日毎又は4日毎は、IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質が、IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質の最初の添加後(すなわちフェーズi)の開始後)2日目、3日目又は4日目に開始され、フェーズi)を通して2日毎、3日毎又は4日毎に添加されることを意味すると意図される。
【0050】
1つの実施形態では、フェーズi)を通して定期的に添加されるべき物質は、IL-2のアゴニストである。好ましい実施形態では、この物質はIL-2である。
定期的、例えば2日毎、3日毎又は4日毎に添加されるべき、IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質(例えば、IL-2)の更なる用量は、上記範囲内である。
【0051】
第1のフェーズi)の拡大における更なる重要な工程は、腫瘍抗原を認識するTリンパ球レセプターを発現するTリンパ球、すなわち腫瘍反応性Tリンパ球の細胞分裂を促進するための腫瘍由来抗原の添加である。
【0052】
腫瘍抗原を添加する最適な時点は、リンパ球の供給源に依存する。リンパ球がリンパ節起源である場合、リンパ球は、腫瘍抗原提示に際して増殖で応答するTリンパ球の能力を促進するために、腫瘍細胞の近傍で腫瘍細胞による免疫抑制に供されてもよく、IL-12レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質(例えば、IL-2)との何日間かのインキュベーションを必要とし得る。したがって、そのような場合、腫瘍由来抗原は、優先的には、第1のフェーズi)の2日目から5日目まで(5日目を含む)、例えば2日目、3日目、4日目又は5日目に添加される。
【0053】
腫瘍由来抗原(例えば、腫瘍ホモジネート)は、出発材料中に存在する抗原提示細胞による、例えばBリンパ球、樹状細胞及びマクロファージによる、エンドサイトーシス及びプロセッシングを受ける可能性が高い。ほとんどの場合、腫瘍由来抗原は、クラスII MCH分子により提示され、CD4+腫瘍反応性Tリンパ球の細胞分裂を導く。しかし、交差提示により、エンドサイトーシスにより取り込まれた抗原は、プロセッシングを受け、クラスIポケットで提示され、CD8+Tリンパ球の活性化を生じる。上記のように、この拡大法の目的の1つは、或る観点では、患者自身の免疫系の天然経路を模倣することであり、或る意味では、抗原がMCHIにより提示されるか又はMCHIIにより提示されるかに依存して、患者免疫系の成分に、CD4+リンパ球を生成するか又はCD8+リンパ球を生成するかを決定させることである。ほとんどの場合、抗原はクラスII MCH分子により提示されてCD4+Tリンパ球の生成を導くが、CD8+Tリンパ球が生成する場合もある。
【0054】
フェーズii)
第2のフェーズii)の目的は、フェーズi)により得られた腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を活性化及び拡大すること、並びに腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を所望の経路に方向付けることによりこれらTリンパ球の特異的亜集団を取得することである。
【0055】
本発明者らは、フェーズii)を開始する最適な時点を決定する1つの方法は、Tリンパ球が再刺激に感受性であるときを特異的に決定するために、Tリンパ球上のCD25細胞表面マーカーの発現をモニターすることによることを見出した。本発明者らは、第2のフェーズii)が、好ましくは、Tリンパ球上のCD25の発現がダウンレギュレートされたときに開始されるべきであることを見出した。CD25は活性化マーカーであり、リンパ球が活性化シグナルを受けたことを示す。Tリンパ球上のCD25の発現が高い(リンパ球が既にシグナルを受けたことを意味する)ときに第2のフェーズを開始すると、細胞死が起こる。
【0056】
CD25のダウンレギュレーションは、Tリンパ球集団の相当部分がCD25マーカーを本質的に全く発現しないか又は非常に少ししか発現しないこととして定義される。好ましい実施形態では、CD25のダウンレギュレーションは、Tリンパ球集団の5%未満がCD25を発現すること、すなわち培養物中の95%又はそれより多いTリンパ球はCD25を全く発現しないこととして定義される。CD25を発現する5%又はそれ未満のTリンパ球は、CD25を永続的に高度に発現する調節性CD4+Tリンパ球である可能性が最も高い。加えて、Tリンパ球集団は、好ましくは、調節性Tリンパ球の特異マーカーであるFoxP3マーカーを本質的に全く発現すべきでないか又は非常に少数にしか発現すべきでない。好ましい実施形態では、FoxP3のダウンレギュレーションは、Tリンパ球集団の5%未満がFoxP3を発現すること、すなわち培養物中の95%又はそれより多いTリンパ球はFoxP3を全く発現しないこととして定義される。
【0057】
CD25の他にも、その発現が第2フェーズを開始する最適な時点を決定するためのモニターに関連する他のマーカーが存在する。そのようなマーカーの例は、初期活性化マーカーCD69、及びTリンパ球の活性化マーカーであるMCHIIである。CD69及びMCHIIの発現は、Tリンパ球の「活性化プログラム」が既に始まっていることを示す(このことは、細胞が追加の刺激に応答できないことを意味する)ので、これら両マーカーは、好ましくは、第2のフェーズが開始される前にダウンレギュレートされるべきである。用語 ダウンレギュレーションは、Tリンパ球集団の5〜10%未満がCD69及び/又はMCHIIを発現することとして定義され得る。
【0058】
本発明の別の実施形態では、本拡大法のフェーズii)の拡大中に、抗CD4抗体を使用して、Tヘルパー細胞を培養物中の腫瘍細胞である可能性がある細胞から分離する。
【0059】
本発明の更なる又はなお別の実施形態では、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を有するDynabeads(登録商標)のような製品を使用して、本拡大法のフェーズii)の拡大を促進する。Dynabeads(登録商標) CD3/CD28の使用は、活性化シグナルを有するリンパ球を提供し、培養物中の腫瘍細胞である可能性のある細胞からの分離に使用することもできる。Dynabeads(登録商標) CD3/CD28は、フェーズi)の間に抗原特異的に拡大されたTリンパ球に結合する。こうして、これら細胞は磁気的に富化することが可能となる。最初の抗原特異的活性化が開始され、Tリンパ球のクローン拡大が導かれているので、Dynabeads(登録商標) CD3/CD28再刺激は、クローン拡大を更に促進する。なぜならば、フェーズi)は非特異的Tリンパ球クローンの活性化を支持しないからである。
【0060】
たとえ、フェーズii)の正確な開始点はリンパ球が特異マーカーの好ましい発現を獲得したときに依存して変化しても、第2のフェーズii)は、ほとんどの場合、第1のフェーズi)の17日目から23日目まで(23日目を含む)(例えば17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目又は23日目)に開始される。換言すれば、リンパ球が好ましい量及び組合せのマーカーを発現する時点は、ほとんどの場合、第1のフェーズi)の17日目から23日目までのようである。
【0061】
Tリンパ球の拡大、すなわちフェーズi)及びii)は、ほとんどの場合、適切な培養培地で起こる。好ましくは、患者への疾患の伝染の危険を回避するために、無血清培地又は自己由来血清が使用される。適切な標準培地の例としては、AIMV培地、RPMI 1640、DMEM及びMEMが挙げられる。しかし、アミノ酸、ステロイド、ビタミン、成長因子、サイトカイン及びミネラルの適切なブレンドを含んでなる他の培地も使用し得る。
【0062】
培養物中の適切な細胞密度を維持するために、2つの拡大フェーズ中、細胞は、幾つかの培養容器に分割されてもよい。拡大フェーズにおけるTリンパ球の密度は、好ましくは、約3〜約6百万細胞/ml培養培地であるべきである。
【0063】
拡大の間、培地の条件付けと呼ばれる工程である、新鮮な培地との培養培地の交換もまた必要とされ得る。培養物を分割する時点及び培地を条件付けする時点は、細胞の形態及び細胞培養物密度(これは約6百万細胞/mlを超えるべきでない)に基づいて決定され得るか、又は培地は、適切な指示薬(例えばフェノール指示薬)を含み得る。指示薬が培地に含まれる場合、培養物を分割する時点又は培地を条件付けする時点は、培地の色に基づいて決定してもよい。フェノールレッド指示薬を使用する場合、細胞は、培地が黄色になった(培養物のpHが酸性になっていることを示す)ときに分割又は条件付けすべきである。本発明に使用される培地を条件付けるために適切なスケジュールは、培地の1/4〜1/2(例えば1/3)を3〜9日毎(例えば週1回)交換するというものであり得る。
【0064】
本明細書に記載の具体的条件を除き、他のパラメータについては、リンパ球培養物の成長用の標準条件(例えば、温度37℃及び5%CO2)が使用される。
上記のように、第2のフェーズii)は、腫瘍反応性Tリンパ球のクローン拡大を促進するために、腫瘍反応性CD25陰性Tリンパ球の活性化について上記のようにTリンパ球に腫瘍由来抗原を添加することにより開始される。
【0065】
本発明の具体的実施形態では、抗原提示細胞(APC)は、腫瘍由来抗原と共にTリンパ球に添加される。抗原提示細胞(APC)としては、白血球、例えば単球、マクロファージ及びリンパ球(例えばB細胞)が挙げられる。これら多様な細胞タイプは、特異的Tリンパ球レセプターにより認識される形態で抗原を提示する能力を共通して有する。白血球調製物は、治療すべき患者から得られる、例えば血液、リンパ液、骨髄、リンパ器官組織又は組織培養液から単離される。好ましい実施形態では、APC細胞は、抗原提示B細胞及び/又は単球を含有する照射末梢血白血球である。添加するAPCの量は、約0.5百万APC/mlリンパ球培養物〜約5百万APC/mlリンパ球培養物の範囲、例えば、約1百万APC/mlリンパ球培養物〜約4百万APC/mlリンパ球培養物の範囲、約1百万APC/mlリンパ球培養物〜約3百万APC/mlリンパ球培養物の範囲又は約1百万APC/mlリンパ球培養物〜約2百万APC/mlリンパ球培養物の範囲にある。
【0066】
腫瘍反応性Tリンパ球のクローン拡大を促進するためのTリンパ球への腫瘍由来抗原の添加の他に、第2のフェーズii)は、その機能が所望の亜集団に対して腫瘍反応性Tリンパ球の拡大を導くことである特定成分の添加を含んでなる。
【0067】
上記のように、本発明は、腫瘍反応性CD4+ヘルパーTリンパ球の生成法を提供する。CD4+ヘルパーTリンパ球は、抗原が主要組織適合性複合体クラスII分子と組み合わさったとき、腫瘍抗原を認識し結合する。活性化CD4+ヘルパーTリンパ球は、免疫系の他の細胞(例えば他のリンパ球)を刺激するサイトカイン、タンパク質及び/又はペプチドを分泌する。分泌される最も一般的なサイトカインは、インターロイキン-2(IL-2)である。これは、強力なTリンパ球成長因子である。活性化され増殖中のCD4+ヘルパーTリンパ球は、産生する特異的サイトカインに基づいて定義される2つの主要なサブタイプの細胞であるTh1細胞及びTh2細胞に分化することができる。Th1細胞は、インターフェロン-γ及びインターロイキン12(IL-12)を産生する一方、Th2細胞は、インターロイキン-4、インターロイキン-5及びインターロイキン-13を産生する。Th1Tリンパ球は、細胞傷害性Tリンパ球(Tc)、NK細胞、マクロファージ及び単球(これらは全て、ガン細胞を攻撃することができ、一般的には腫瘍に対して防御することができる)の活性化を促進すると考えられている。
【0068】
タイプTh1及びTh2のTヘルパー(CD4+)リンパ球は、メモリー細胞及びエフェクター細胞に分化することができる。メモリーTヘルパー(CD4+)リンパ球は、それらが最初に遭遇した抗原に特異的であり、二次免疫応答の間に召集されて、当該腫瘍抗原に対するより迅速で規模の大きな応答を引き起こすことができる。ヒトにおいて、リンパ球が少なくとも20年(おそらく生涯)生存するという証拠が存在する。エフェクターCD4+Tリンパ球は、サイトカイン及びINF-γを産生する活性な細胞である。
【0069】
ガンの有効な治療のために、Th1タイプの腫瘍反応性Tリンパ球の投与は、このタイプが細胞傷害性Tリンパ球(Tc)、NK細胞、マクロファージ及び単球(これらは全てガン細胞を攻撃し、一般的には腫瘍に対して防御することができる)の活性化を促進すると考えられているので、特に有益である。すなわち、具体的実施形態において、本発明は、腫瘍反応性CD4+ヘルパーTリンパ球を生成する方法に関し、更なる実施形態では、本方法により生成されるTh2タイプのTリンパ球の割合は、30%又はそれ未満、例えば25%又はそれ未満、20%又はそれ未満、15%又はそれ未満、10%又はそれ未満、5%又はそれ未満、或いは0%である。すなわち、腫瘍反応性CD4+Tリンパ球の少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%が、Th1タイプである。
【0070】
したがって、第2のフェーズは、Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質の添加を含んでなり得る。IL-12Rのアップレギュレーションは、T細胞が迅速にIL-12サイトカイン活性化を受容し最適化する態勢を増大させ、その結果、最大のSTAT-4シグナル伝達を生じ、そうしてリンパ球をTh1細胞及びIFN-γ産生に傾斜させる(skew)。
【0071】
Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質は、インターフェロンレセプターに対するアゴニスト活性を有する物質であり得る。本発明の1つの実施形態では、インターフェロンレセプターに対するアゴニスト活性を有する物質は、アゴニストである。このような物質の例としては、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、アフィボディ、及びそれらのフラグメント、融合タンパク質、合成及び/又は有機分子(例えば小分子)、及び天然リガンドが挙げられる。具体的実施形態では、この物質は、インターフェロンレセプターの天然リガンド、すなわちインターフェロン(例えば、インターフェロン-α)である。
【0072】
Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質(例えば、インターフェロンレセプターに対するアゴニスト活性を有する物質)を添加する最適な時点は、培養培地中のIL-12レベルを測定することにより決定してもよい。この物質は、好ましくは、IL-12レベルが、フェーズii)の1日目のIL-12レベルと比較して、少なくとも1倍増加したとき、例えば少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍増加したときに添加すべきである。ほとんどの場合、このようなIL-12レベルの増加は、第2のフェーズii)の開始後2日目から4日目まで(4日目を含む)(例えば2日目、3日目又は4日目)に見られる。
【0073】
Th2タイプの腫瘍反応性Tリンパ球の生成を実質的に回避するために、第2のフェーズは、Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質の添加を更に含んでなってもよい。そのような物質の例は、インターロイキンIL-4、IL-5、IL-10及び/又はTGF-β(後者はインターロイキンではない)(これら4つは全て、Th2サイトカインプロフィールの確立及びTh1サイトカイン産生のダウンレギュレーションに必要とされる)を中和し得る物質である。
【0074】
このような物質の例としては、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、可溶性レセプター、抗体、アフィボディ、及びそれらのフラグメント、融合タンパク質、合成及び/又は有機分子(例えば小分子)、及び天然リガンドが挙げられる。具体的実施形態では、この物質は、インターロイキンに結合し、そのことによりインターロイキンを中和する抗体(例えば抗IL-4抗体、抗IL-5抗体及び/又は抗IL-10抗体)並びに可溶性レセプター(例えばTGF-βレセプターI及びII)及びTGF-βに関する結合性タンパク質(例えばLAP及び/又はLTBP)から選択される。
【0075】
Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質(例えば、IL-4、IL-5、IL-10及び/又はTGF-βを中和し得る1又はそれより多い物質)は、第2のフェーズii)の1日目に添加してもよい。しかし、抗体は高価であるので、抗体の添加は、Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質の添加後の後工程において、例えば、Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質の添加の1日後、2日後又は3日後に実施することも可能である。
【0076】
この中和物質は、インターロイキンを中和するに十分な量で、例えば、中和すべきインターロイキン量の10〜100倍(モル)過剰で添加すべきである。抗体を使用する場合、通常、約2〜約4ng/ml培養培地の最終濃度が必要である。他のタイプの中和物質に関しては、抗体について言及した濃度と同じ効果を与える最終濃度を使用すべきである。
【0077】
Th2タイプTリンパ球の発達の抑制を維持するために、更なる量のTh2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質(例えば、IL-4、IL-5、IL-10及び/又はTGF-βを中和し得る1又はそれより多い物質)が、フェーズii)を通して定期的に、例えばフェーズii)の2日毎、3日毎又は4日毎に添加されてもよい。用語 2日毎、3日毎又は4日毎は、Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る少なくとも1つの物質が、該Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る少なくとも1つの物質の最初の添加の2日後、3日後又は4日後に開始され、フェーズi)を通して2日毎、3日毎又は4日毎に添加されることを意味するように意図されると理解されるべきである。
【0078】
更に、フェーズi)と同様に、更なる量のIL-12レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質(例えば、アゴニスト)が、細胞分裂を促進する最適条件を維持するために、フェーズii)を通して定期的に、例えばフェーズii)の2日〜4日毎(すなわち、2日目、3日目又は4日目)に添加されてもよい。定期的に添加すべき物質の用量は、IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質(例えば、IL-2)の添加についてフェーズi)で言及した最適範囲内にある。
【0079】
Th1タイプ腫瘍反応性Tリンパ球の生成に有利にするために、第2のフェーズii)は、Th1タイプTリンパ球の発達を促進する1又はそれより多い物質を添加することを含んでなってもよい。このような物質の例は、IL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質である。より具体的には、この物質は、IL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターのアゴニストであり得る。このようなアゴニストの例としては、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、アフィボディ、及びそれらのフラグメント、融合タンパク質、合成及び/又は有機分子(例えば、小分子)並びに天然リガンドが挙げられる。具体的実施形態では、この物質は、IL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターの天然リガンド(例えば、それぞれIL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21)である。
【0080】
IL-12の効果は、IL-12Rを刺激し、そのことによりTh1リンパ球の活性化を促進することによってIFN-γ誘導性STAT経路を活性化することである。IL-21の機能は、Tリンパ球の増殖、活性化及びTh1タイプへの発達を増強することである。
IL-7及びIL-15は共に、Tリンパ球の恒常的拡大を促進し、活性化されTh1プログラムされたTリンパ球の列挙(enumeration)を増強することにより働く。
【0081】
Th1タイプTリンパ球の発達を促進する1又はそれより多い物質を添加するに最適な時点は、Tリンパ球が改変に対して感受性であるときである。Tリンパ球が改変に対して感受性でないときにこの物質が添加されると、そのような添加は効果を有さない。すなわち、Th1タイプTリンパ球の発達に有利とならない。Th1タイプTリンパ球の発達を促進する物質(例えば、IL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質)を添加する最適な時点を決定するため、Tリンパ球によるINF-γの産生をモニターし得る。好ましい実施形態では、Th1タイプTリンパ球の発達を促進する1又はそれより多い物質(例えば、IL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質)は、IFN-γレベルが第2のフェーズii)の開始時のIFN-γレベルと比較して増加しているときに添加すべきである。
【0082】
具体的実施形態では、IFN-γレベルの増加は、第2のフェーズii)の開始時のIFN-γレベルと比較して、IFN-γレベルの少なくとも1倍増加、例えば少なくとも2倍増加、少なくとも3倍増加、少なくとも4倍増加として決定され得る。しばしば、このような増加は、培養培地中のIFN-γ含量が少なくとも100ピコグラム/ml培養培地、例えば少なくとも150ピコグラム/ml培養培地、少なくとも200ピコグラム/ml培養培地又は少なくとも250ピコグラム/ml培養培地であるべきであることに相関させることができる。
【0083】
Th1タイプTリンパ球の発達を促進する物質(例えば、IL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質)を添加する最適時点を決定する際、更に、CD4+Tリンパ球上での活性化マーカーCD25及びCD69(これらマーカーは優先的にアップレギュレートされるべきである)の発現を観察してもよい。アップレギュレーションにより、フェーズii)の1日目のTリンパ球上でのCD25及びCD69の発現と比較して、少なくとも約40%〜約60%又はそれより多くのCD4+Tリンパ球が、CD25及びCD69を発現すべきであることが理解される。CD25及びCD69の発現は、Tリンパ球が活性化シグナルを受けたことを示している。
【0084】
通常、Th1タイプTリンパ球の発達を促進する物質を添加する最適な時点は、Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質及びTh2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る物質を添加する工程の後になる。より具体的には、Th1タイプTリンパ球の発達を促進する物質を添加する最適時点は、第2のフェーズii)の開始後5日目〜8日目の間、例えば5日目、6日目、7日目又は8日目になる。
【0085】
IL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21が添加される場合、培養培地におけるこれら物質の各々の濃度は、約150 IU/ml培養培地〜約300 IU/ml培養培地の範囲内、例えば250 IU/ml培養培地であるべきである。記載の具体的物質以外のものを使用する場合、それらは、言及した具体的範囲内でのIL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21の添加により得られる効果と同じ効果を導く最終濃度で、培養物に添加されるべきである。
【0086】
上記のように、本方法は、優先的には、Th1タイプのCD4+腫瘍反応性Tリンパ球を達成するためのTリンパ球の拡大に使用される。本発明の1つの更なる観点は、本明細書に記載した腫瘍反応性Tリンパ球の拡大法を使用することにより、比較的高量のメモリータイプのTリンパ球を取得することである。ガンの治療において、治療されるべき患者が高量のエフェクター腫瘍反応性CD4+Tリンパ球を受容することは、当然のことながら重要である。なぜなら、これらは、上記のように、細胞傷害性Tリンパ球(Tc)、NK細胞、マクロファージ及び単球(これらは全てガン細胞を攻撃し、一般的には腫瘍に対して防御することができる)の活性化を促進するからである。
【0087】
しかし、同時に相当量のメモリー腫瘍反応性CD4+Tリンパ球を投与することにより、患者は、腫瘍又は原発腫瘍の転移の再発に対する生涯にわたる保護までも達成する。
【0088】
したがって、本発明は、メモリーTリンパ球の作製方法に関する。通常、腫瘍反応性Tリンパ球の培養物が本発明に従って拡大される場合、約35%〜約90%、例えば約40%〜約90%、約50%〜約80%又は約60%〜約70%のメモリータイプの腫瘍反応性Tリンパ球が得られる。本発明者らは、フェーズi)のリンパ球が、腫瘍抗原の添加前に再生されるという事実は、比較的緩慢な拡大フェーズと併せて、メモリーリンパ球 対 エフェクターリンパ球の高い比の形成を導くと推測する。
【0089】
上記のように、Tリンパ球上での細胞表面活性化マーカーCD25及びCD69の発現は、本方法の重要な工程を開始する時、例えば、第2のフェーズii)を開始する時を決定するために使用し得る。したがって、フェーズi)及びフェーズii)を通して、例えば2日毎、3日毎又は4日毎に、CD25及びCD69の発現を継続的にモニターすることは有益であり得る。
【0090】
本方法の目的の1つは、多数の(患者への投与に使用し得る)特異的CD4+腫瘍反応性Tリンパ球を取得することであるので、腫瘍反応性Tリンパ球は、或る時点で採取され得、拡大工程の終結に至る。腫瘍反応性Tリンパ球を採取する最適時点は、Tリンパ球上でのCD25の発現がダウンレギュレートされた時である。ここで、ダウンレギュレーションは、CD4+Tリンパ球集団の5%又はそれ未満がCD25を発現することとして定義される。採取する最適時点はまた、産生されるIFN-γの量の測定に基づいて決定してもよい。IFN-γ産生は、最初のIFN-γ産生(通常、少なくとも100pg/ml培養培地のIFN-γレベルに相当する)と比較して、少なくとも2倍増加すべきであり、例えば少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍増加すべきである。
【0091】
通常、この事象は、第2のフェーズii)の開始後10日目から14日目まで(14日目を含む)に生じる。すなわち、通常、細胞は、第2のフェーズii)の開始後10日目から14日目まで(14日目を含む)に採取される。
【0092】
したがって、本発明に従う腫瘍反応性Tリンパ球の拡大のための全体プロセスは、一般に、約25日から約45日まで(45日を含む)、例えば約26日から約44日まで(44日を含む)、約27日から43日まで(43日を含む)、約27日から42日まで(42日を含む)、約27日から41日まで(41日を含む)、及び約27日から約40日まで(40日を含む)かかる。
【0093】
CD25マーカーがダウンレギュレートされた時に腫瘍反応性Tリンパ球を採取することに代えて、腫瘍反応性Tリンパ球を1又はそれより多い回数の追加のフェーズii)に供してもよい。これは、発現法により取得される腫瘍反応性Tリンパ球の量がガンに罹患している患者に投与すべき有効量と考えられない場合、又は患者が化学療法治療レジメンにある場合(この場合、化学療法治療が終了するまでTリンパ球の投与を延期することが有益と考えられ得る)に行うことが有益であり得る。腫瘍反応性Tリンパ球を1又はそれより多い回数の追加のフェーズii)に供すべきかどうかを決定するために、産生されるIFN-γのレベル及び/又は取得される腫瘍反応性Tリンパ球の総数及び/又はCD25の発現を観察し得る。IFN-γレベルが30pg/ml培養培地又はそれ未満、例えば20pg/ml培養培地又はそれ未満である場合、及び/又はT細胞の総数が不満足である場合、追加の回のフェーズii)は、T細胞の多数がCD25陰性であり(すなわち、Tリンパ球集団の5%未満がCD25を発現する)、そのことにより再刺激に感受性であるときに開始され得る。
【0094】
採取の後、腫瘍反応性Tリンパ球は、任意の従来手段により、例えば密度勾配、例えばフィコール培地の使用により精製されてもよい。腫瘍反応性Tリンパ球の採取及び精製の後、一部の腫瘍反応性Tリンパ球を、適切な凍結培地中で凍結することにより保存してもよい。
【0095】
治療方法
改良拡大法により取得された腫瘍反応性Tリンパ球は、散在性ガンを患っている患者を治療するために使用される。
【0096】
投与すべき腫瘍反応性Tリンパ球の有効量の定義は、リンパ球の具体的タイプ、メモリーTリンパ球 対 エフェクターTリンパ球の比及び疾患の重篤度に依存する。しかし、平均で、最低限少なくとも10百万、例えば少なくとも20百万、少なくとも30百万、少なくとも40百万、少なくとも50百万、少なくとも60百万、少なくとも70百万又は少なくとも80百万の腫瘍反応性Tリンパ球が投与され得る。単回用量で投与すべき腫瘍反応性Tリンパ球の量に関して、上限は何ら特定されない。
【0097】
好ましい実施形態では、投与用の腫瘍反応性Tリンパ球は、エフェクターTリンパ球とメモリーTリンパ球との組合せを含んでなる。より具体的には、メモリータイプの腫瘍反応性Tリンパ球の量は、約35%〜約90%、例えば約40%〜約90%、約50%〜約80%又は約60%〜約70%であり得、エフェクターTリンパ球の割合は、約10%〜約65%、例えば約20%〜約50%又は約30%〜約40%であり得る。
【0098】
腫瘍反応性Tリンパ球は、患者への非経口投与、例えば、静脈内、動脈内、鞘内又は腹腔内投与に適切な医薬組成物として製剤化され得る。
【0099】
腫瘍反応性Tリンパ球が非経口投与される場合、それらは、等張性媒体中で、すなわち血液と同じ張度を有し、細胞の凝集を防ぐ1又はそれより多い物質を含んでなる媒体中で製剤化されてもよい。適切な媒体の具体例は、3%までのヒト血清アルブミン(例えば2%までのヒト血清アルブミン又は1%までのヒト血清アルブミン)を含んでなる0.9%NaCl溶液である。静脈内投与のためには、投与すべき組成物中の腫瘍反応性Tリンパ球の濃度は、通常、約0.5百万リンパ球/ml媒体から約4百万リンパ球/ml媒体までの範囲、例えば、約0.5百万リンパ球/ml媒体から約3百万リンパ球/ml媒体までの範囲、約0.5百万リンパ球/ml媒体から約2百万リンパ球/ml媒体までの範囲又は約1百万リンパ球/ml媒体から約2百万リンパ球/ml媒体までの範囲にある。
【0100】
腫瘍反応性Tリンパ球を含んでなる組成物は、単回用量又は多回用量として投与されてもよい。これは、1〜2時間にわたって注入されてもよい。
治療方法は、疾患の重篤度に依存して、1回行なわれてもよいし繰り返し行われてもよい。更に、治療は、疾患の再発に際して繰り返されてもよい。
【0101】
本発明に従う治療は、散在性ガンのための任意の他の関連治療で補充してもよい。そのような補充治療は、リンパ球の投与前、投与と同時又は投与後に行い得、その治療について通常使用される頻度で行われ得る。補充治療の適切な例は、化学療法などである。
【0102】
キット
本発明は更に、本発明に従う方法で使用するためのキットに関し、このキットは、Tリンパ球の培養用培地を含んでなる。この培地は、任意の適切な無血清培地、例えばAIMV、RPMI 1640、DMEM又はMEMであり得る。
【0103】
キットは更に、腫瘍反応性Tリンパ球の刺激、活性化及び方向付けのための1又はそれより多い物質を含んでなり得る。このような物質の例は、腫瘍由来抗原、IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質、Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質、Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る物質及び/又はTh1タイプTリンパ球の発達を促進する物質であり得る。
【0104】
より具体的には、そのような物質は、IL-2、インターフェロン-α、抗IL-4抗体、抗IL-5抗体、抗IL-10抗体、IL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21であり得る。
キットはまた、静脈内投与に適切な医薬組成物を含んでなり得る。医薬組成物は、投与前に腫瘍反応性Tリンパ球の集団と混合されてもよい。
【0105】
キットはまた、1又はそれより多いシリンジとリンパ節探知体とを含んでなり得る。1つの実施形態では、シリンジにはリンパ節探知体が予め充填されている。
キットはまた、使用のための指示書(例えばコンピュータソフトウェアの形態の指示書)を含んでなり得る。
【0106】
図面の説明
図1は、鼠径部リンパ節転移に対して遠位で内側のメチネル節を示すリンパシンチグラフィーである。
図2は、頸部リンパ節転移に対して遠位で内側のメチネル節を示すリンパシンチグラフィーである。
【0107】
図3は、腫瘍を排液するリンパ節の同定を説明する。図3Aは、青色素が腫瘍の周りに注射される方法及び当該色素がどのように毛細リンパ管内を輸送されてリンパ排液(白矢印で示す)を示すのかを示す。図3Bは、腫瘍排液リンパ節がどのようにして該色素注射の数分後に青色になるかを示す。白色矢印が腫瘍排液リンパ節を示す。
【0108】
図4は、初めに、センチネル節リンパ球が腫瘍抗原と低用量のIL-2とで活性化され、その結果として活性化及び活性化マーカーCD25の発現を生じることを示す(上パネル)。フェーズI活性化フェーズの終わりは、CD25を発現するCD4+T細胞の数の減少により定義される(下パネル)。5%未満のCD4+T細胞がCD25を発現したときに、フェーズIIが抗原での再刺激により開始される。
【0109】
図5は、フェーズI及びフェーズIIの活性化により、CD4+Tヘルパー細胞の拡大及び富化が生じることを説明する。
図6は、フェーズIにおいて、細胞の多数がナイーブCD62L+細胞又は活性化CD69+CD62L+細胞であることを説明する。フェーズII後、細胞の多数はCD62L-であり、メモリー及びエフェクターCD4+Tヘルパー細胞から構成される。CD62L-T細胞は、好ましいリンパ節ホーミング分子を発現しておらず、よってそれらは、非リンパ系器官の炎症領域を探し求める。
【0110】
図7は、フェーズIで刺激された、腫瘍(腫瘍浸潤性リンパ球)、センチネル節(SN)及び無関係のリンパ節(LN)に由来する初代細胞は、IFN-γ産生をほとんど生じないことを示す。
図8は、フェーズii)後の拡大後、抗原依存性IFN-γ産生の用量依存的な増加が存在することを説明する。
図9は、TCR Vβ発現の選択的富化により研究されたように、拡大及び活性化プロトコールが抗原特異的T細胞クローンの拡大を促進することを説明する。
【実施例】
【0111】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図し、如何なる様式でも本発明を制限するものではない。
実施例
実施例1
転移のメチネルリンパ節の同定
8人の患者(女性4人及び男性4人)が本研究に参加した(表1を参照);平均年齢は61.4歳であった。このうち1人は2回の手術を受け、両方の処置でメチネル節が位置決めされた。メチネル節は、3つの原理的に異なる方法で位置決めされた。リンパ節探知体を、腹部の再発部、実質性肝臓転移、又は鼠径部リンパ節転移の周囲近傍に注射した。
【0112】
【表1】

【0113】
1人目の患者は、以前に盲腸ガンのために右側結腸半切除の手術を受けた48歳男性であった。1年後、彼は、腸間膜脂肪で吻合領域に沿って5cm大の腹腔内再発を発症した。吻合領域及び再発部の切除を一括して行った。転移の周りにパテントブルー色素を注射し、内側結腸動脈に沿って3つのメチネル節(腸間膜の根元の上リンパ節を含む)を同定した。
【0114】
2人目の患者は、直腸ガンのために腹会陰式直腸切断術の手術を受けた54歳男性であった。手術前の検査では遠位転移はなかったにもかかわらず、本発明者らは、肝臓左葉に肝臓転移を見出した。腹部CTスキャンを手術後に行った。転移は、外径3cmであり、肝臓の第2区域と第3区域との間に位置していた。2ヵ月後、彼は、部分的な左側肝臓切除の手術を受けた。パテントブルー色素を肝臓実質部で転移の周囲近傍に注射した。約5分後、肝十二指腸間膜に2つのメチネル節を見出した。手術中の超音波検査では、肝臓内に更なる転移は証明できなかった。メチネル節には腫瘍細胞は存在しなかった;しかし、メチネル節中のリンパ球は、転移に対して特異的な活性を示した。
【0115】
腫瘍反応性リンパ球での最初の治療及び良好な全身状態にもかかわらず、彼は肝臓右葉に新たな肝臓転移を発症し、2回目の肝臓切除を行った。この手術で、2cm大の転移の周囲へパテントブルー色素を注射することにより、肝臓の門に位置する2つのメチネル節を同定した。
【0116】
3人目の患者は、2年前にS状結腸ガンのためにS状結腸切除の手術を受けた77歳女性であった。フォローアップで、CEAの亢進が見出され、PETスキャン及びCTスキャンによる更なる検査により、肝臓右葉でVI区域とVII区域との間に4cmの転移が示された。部分的右側肝切除を行い、パテントブルー色素の注射後、3つのメチネル節を肝臓の門に見出した。
【0117】
患者番号4は、S状結腸の腫瘍のためにS状結腸切除の手術を受けた73歳男性であった。1年以上後に、彼は、2cm大の孤立性肝臓転移を発症し、V区域及びVI区域の部分的切除の手術を受けた。転移の周囲近傍の4つの異なる位置での計1.0mlのパテントブルー色素の注射後、肝臓門に1つのメチネル節を同定した。この節の分析により、転移性疾患の徴候はないが、腫瘍反応性リンパ球を含有していることが判った。
【0118】
患者番号5は、以前に上行結腸のガンのために右側結腸半切除の手術を受けた66歳男性であった。結腸ガン手術後のルーチンのフォローアップでのCTスキャンにより、肝臓右葉でVII区域に2.5cmの孤立性転移が示された。手術時に、1.0mlのパテントブルー色素を肝臓組織中の転移の周囲に注射した。肝十二指腸間膜に2つ及び肝臓門に2つのメチネル節が位置していた。VI区域〜VIII区域の切除を、メチネル節の摘出と共に行った。
【0119】
第6の症例は、6年前に卵巣ガンのために子宮摘出及び両側卵管卵巣摘出の手術を受けた51歳女性であった。その後、ガンは腹部及び腹膜に広がり、待期療法のみが続けられた。彼女は、大きな部分的壊死性の肝臓転移を有していた。手術時に、肝臓転移の隣接部へのパテントブルー色素の注射後、腹部中央に3つのメチネル節を同定した。メチネル節は全て腫瘍細胞及び腫瘍反応性リンパ球を含有していた。
【0120】
患者番号7は、卵巣ガンのために、両側卵巣摘出の手術を受けた63歳女性であった。手術時、彼女は、網への散在性ガン疾患を有しており、この後、数回の腫瘍削減手術(転移に起因する右結腸の切除を含む)を受けた。更に1年後、彼女は、左鼠径部に発症し、細針生検により、卵巣ガンからの転移と判明した。トレーサーたるテクネチウム-99を皮下に触知可能な転移の周りの4箇所で注射後(4×0.25ml,50MBeq/ml)、驚くべきことに、リンパシンチグラフィーにより、鼠径部リンパ節転移に対して遠位で内側に共に接近した2つのメチネル節が証明された(図1を参照)。この節は、更に、リンパシンチグラフィーの数時間後の外科的手順の間にトレーサーと同じ場所にパテントブルー色素を注射することにより、青色に着色した転移を排液するメチネル節と同定された。
【0121】
8人目の患者は、膵臓ガンのためにホウィップル手術を受けた59歳女性であった。2年後、局所的な再発が診断され、彼女は、腫瘍削減手術を受けた。手術中、当該局所再発の隣接部でかつ上部にパテントブルー色素を注射後、4つのメチネル節を見出した。
【0122】
サイトケラチン抗体を使用して、悪性細胞を検出した。転移を有しない節中のリンパ球は、増殖アッセイにおいて、腫瘍ホモジネートによる刺激に際してインターフェロン-γを分泌する能力により示されるように、自発的に活性化された。転移性メチネル節からのリンパ球は、最初、この刺激に対して乏しい反応を示した。このことは、これらが転移により免疫抑制されたことを示唆する。しかし、非転移性節及び転移性節からの細胞は共に、実施例2に記載のように、インビトロで多数に拡大させることができた。
【0123】
実施例2
腫瘍反応性Tリンパ球の拡大
本明細書に記載の方法を用いてメチネル節の同定を行った。
メチネルリンパ節及び非メチネルリンパ節を半分に切断し、節の一部を、ルーチンの手順に従う組織学的検査に送った。転移の一部(侵襲マージン(invasive margin)のサンプルを含む)を取り出して、更なる手順の間の抗原供給源として使用した。
【0124】
細胞培養
フェーズI、最初の活性化
メチネル節材料を氷上に維持し、毎回直ぐにAIM V(登録商標)培地(Invitrogen)を用いて処理した。ルーズフィットのガラスホモジネーター中での穏やかなホモジネーションによりメチネル節リンパ球の単一細胞懸濁物を取得し、ホモジネーション後、細胞を培地中で2回洗浄した。メチネル節リンパ球を4百万細胞/mlで細胞培養フラスコに入れ、インターロイキン-2(IL-2)(Proleukin(登録商標)、Chiron)を240 IU/ml培地の濃度まで添加した。
【0125】
5容量(w/v)の2×PBS中でのUltra Turraxを用いたホモジネーション、続いて97℃で5分間の変性により、自己由来転移抽出物を調製した。細胞培養の開始3〜4日後、自己由来腫瘍抽出物を1/100の濃度で添加した。長期培養には、細胞を細胞インキュベーター中で37℃で5%CO2に維持し、240 IU IL-2/mL培地を3〜4日毎に添加した。
【0126】
フェーズII、活性化及び拡大
18〜22日後、細胞培養物をCD25の発現に関してモニターした。CD25発現細胞の数が5%を下回って減少したとき、フェーズII(図4)において、濃度1/100の自己由来転移抽出物の添加により細胞を再刺激した。効率的な抗原提示のためには、自己由来PBMCを、Ficoll-Paque PLUS(Amersham Biosciences、GE Healthcare)を使用して集め、2500ラドで照射し、細胞培養物に添加した。再刺激の3日後、インターフェロン-α(Introna)を濃度100〜500 IU/mlで、抗IL-4抗体を2μg/mlの濃度で添加した。5〜8日後、IFN-γ産生Th1細胞の誘導を促進するために、IL-12(4ng/ml)を添加して拡大させた。
【0127】
患者への輸注(transfusion)の前日に、培養物中の生存細胞を取り出すために、細胞培養物を、Ficoll-Paque PLUS(Amersham Biosciences、GE Healthcare)を使用する精製に付した。輸注当日、細胞を生理食塩水溶液(Natriumklorid Baxter Viaflo 9 mg/ml、Baxter)中で2回洗浄し、次いで100〜200mlの生理食塩水溶液及び1%ヒト血清アルブミン(Baxter)を含有する輸送バッグに移した。輸注の前に、微生物の存在についての検査を行った。細胞の注入(infusion)は、医学専門家の監督の下で1〜2時間の間行った。
【0128】
免疫学的評価
トリチウム標識チミジン取込み増殖アッセイを用いて更なる免疫学的評価を行った。メチネル節リンパ球のアリコートをこの目的に取り置き、ルーズフィットガラスホモジネーターにおける穏やかな押付けにより非メチネル節リンパ球の単一細胞懸濁物を取得し、Ficoll-Paque PLUS(Amersham Biosciences、GE Healthcare)により末梢血白血球を精製した。
【0129】
細胞を再懸濁し、2.5%ウシ胎仔血清(FCS)(Life technologies)を含有するRPMI 1640(Life technologies)中で2回洗浄した。最後に、細胞を、10%ヒトAB血清(Sigma)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma)及び1%グルタミン(Sigma)を含有するRPMI 1640増殖培地中に再懸濁した。リンパ節細胞及び精製したPBLを96-ウェルプレート中3×105細胞/ウェルで使用し、3連で(in triplicates)1/100、1/10に希釈した転移ホモジネート又はCon A 10μg/ml(Sigma)で刺激した。5日目、6日目及び7日目に、採取の18時間前に、1μCiの3H-チミジン/ウェル(Amersham)を添加することにより増殖を測定した。サンプルをシンチレーションカウンティングに付した。
【0130】
細胞培養の開始時、IFN-γ分泌測定のためのリンパ節細胞及びPBLの刺激を、1/10及び1/100に希釈した腫瘍ホモジネート又はCon A 10μg/ml(Sigma)を用い、96-ウェルプレート中3×105細胞/ウェルで3連で行った。プールした3連のサンプル中の培養上清について、分泌IFN-γの量をELISA(Human IFN-γ Duoset、R&D Systems)で測定した(図7)。細胞培養の終わりに、上清のサンプルを取出し、3連でIFN-γ及びIL-4分泌をELISA(human IFN-γ Duoset及びhuman IL-4 Duoset、R&D Systems)で測定した(図8A及び8B)。
【0131】
フローサイトメトリー分析
初めにメチネル節、非メチネル節、PBMCからの細胞及び転移からの細胞について、フローサイトメトリーを使用して細胞の特徴づけを行った。培養中のメチネル節で獲得したリンパ球から、フローサイトメトリー分析のために、サンプルを2〜3週間毎に採取した。細胞を、2%FCS及び0.05%NaN3を補充したPBS(FACS緩衝液)中で、免疫細胞亜集団のマーカー及びリンパ球活性化のマーカーに対する抗体と共に30分間インキュベートした(図5、6及び7)。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)に接合した、以下のマーカーに対する抗体:CD69、HLA-DR、CD45RA、CD25;フィコエリトリン(PE)に接合した、以下のマーカーに対する抗体:CD62L、CD19、CD45RO、CD56;ペリニジン-クロロフィル-タンパク質(PerCP)に接合した、以下のマーカーに対する抗体:CD8、CD3;アロフィコシアニン(APC)に接合した、以下のマーカーに対する抗体:CD4、CD14、CD8を使用した。
【0132】
Beta mark kit(Beckman Coulter)を使用してVβ-レパートリーを検査し、5×105細胞/試験管を、FITCとPEと二色FITC-PE接合TCR Vβ抗体との混合物を含む10μlの8つの異なるバイアル中で、各試験管にCD8 PerCP及びCD4 APCを添加して染色した(図9)。
【0133】
実施例3
拡大した転移反応性Tリンパ球を投与することによる転移の治療
以下の3つの症例は、メチネルリンパ節から得られ拡大されたTリンパ球を散在性ガンの治療に使用し得ることを説明するためのものである。
【0134】
47歳男性は、以前に、盲腸における結腸ガンのために右側結腸半切除の手術を受けた。1年後、彼は、吻合領域の外側の腸間膜脂肪に5cm大の腹腔内再発を発症した。手術の間に、転移の周囲の脂肪に近接してパテントブルー色素を注射し、内側結腸動脈に沿って3つのメチネル節(腸間膜の根元の1つの上リンパ節を含む)を同定した。吻合領域及び再発の切除を一括して行った。手術後、メチネル節及び転移の侵襲部分を切り分け、本明細書に記載のように処理した。転移反応性リンパ球を多数に拡大した。手術の約4週間後、これら自己由来CD4+T細胞を患者に輸注した。通常の胸部及び腹部CTスキャンの施行により転移の徴候は見出せず、CEAレベル(腫瘍マーカー)が正常であったため、彼は完全な健康状態であった。今まで、輸注後フォローアップは36ヶ月である。
【0135】
63歳女性は、卵巣ガンのために両側卵巣摘出の手術を受けた。手術時に、彼女は、網への散在性ガン疾患を有しており、数回の腫瘍削減手術(転移に起因する右結腸の切除を含む)を受けた。1年後、彼女は、左鼠径部に発症し、細針生検により、卵巣ガンからの転移と判明した。リンパシンチグラフィーにより、鼠径部リンパ節転移に対して遠位で内側に共に接近した2つのメチネル節が証明された(図1を参照)。この節は、パテントブルー色素との組合せでのテクネチウム-99m及びγ線検出管の使用により、位置決めされた。節及び転移は上記と同じ原理に従って処理された。治療の7ヵ月後、患者は健康でフルタイムで働いている。腫瘍マーカーCA135は、多数から少数に減少している。
【0136】
第3の例は54歳男性であり、下部直腸ガンのために腹会陰式直腸切断術の手術を受けていた。手術時、(手術前の陰性肝臓スキャンにもかかわらず)左葉の肝臓転移を同定した。更に6週間後、彼は、左側肝臓切除の手術を受けた。パテントブルー色素を肝臓実質部で転移の周囲に注射した。数分後、肝十二指腸間膜で、2つのメチネル節が青色に変わった。メチネル節で転移は検出されなかったが、それらは全て腫瘍に対する活性を示した。患者は、該メチネル節に由来する拡大された腫瘍反応性リンパ球で治療された。腫瘍反応性リンパ球での最初の治療及び良好な全身状態にもかかわらず、彼は肝臓右葉に新たな肝臓転移を発症した。2回目の肝臓切除を行った。この手術で、2cm大の転移の周囲へのパテントブルー色素の注射により、肝臓の門に位置する2つのメチネル節が同定された。彼は、新たなメチネル節に由来する腫瘍反応性リンパ球の輸注で再度治療された。患者は完全に回復し、フルタイムで働いている。CT画像によれば、彼は、肝臓に幾つかの残存疾患を有し、腫瘍マーカー(CEA)が少し亢進している。最初のリンパ球輸注以来の合計のフォローアップは36ヶ月である。
【0137】
参考文献
Marits Pら.Detection of immune responses against urinary bladder cancer in sentinel lymph nodes. Eur Urol 採用
Moore KL.Clinically oriented anatomy. Baltimore: Williams and Wilkins. 1985. p42-p45.
Renkins EM.Some consequences of capillary permaebility to macromolecules: Starling's hypothesis reconsidered. Am J Physiology. 1986;250:H706-H710.
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】鼠径部リンパ節転移に対して遠位で内側のメチネル節を示すリンパシンチグラフィーである。
【図2】頸部リンパ節転移に対して遠位で内側のメチネル節を示すリンパシンチグラフィーである。
【図3A】青色素が腫瘍の周りに注射される方法及び当該色素がどのように毛細リンパ管内を輸送されてリンパ排液(白矢印で示す)を示すのかを示す。
【図3B】腫瘍排液リンパ節がどのようにして該色素注射の数分後に青色になるかを示す。
【図4】初めに、センチネル節リンパ球が腫瘍抗原と低用量のIL-2とで活性化され、その結果として活性化及び活性化マーカーCD25の発現を生じることを示す(上パネル)。フェーズI活性化フェーズの終わりは、CD25を発現するCD4+T細胞の数の減少により定義される(下パネル)。
【図5】フェーズI及びフェーズIIの活性化により、CD4+Tヘルパー細胞の拡大及び富化が生じることを説明する。
【図6】フェーズIにおいて、細胞の多数がナイーブCD62L+細胞又は活性化CD69+CD62L+細胞であることを説明する。
【図7】フェーズIで刺激された、腫瘍(腫瘍浸潤性リンパ球)、センチネル節(SN)及び無関係のリンパ節(LN)に由来する初代細胞は、IFN-γ産生をほとんど生じないことを示す。
【図8】フェーズii)後の拡大後、抗原依存性IFN-γ産生の用量依存的な増加が存在することを説明する。
【図9】TCR Vβ発現の選択的富化により研究されたように、拡大及び活性化プロトコールが抗原特異的T細胞クローンの拡大を促進することを説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)患者において、1又はそれより多いメチネルリンパ節を同定し、
ii)該1又はそれより多い節と、任意に転移の全て又は一部とを切除し、
iii)該リンパ節から転移反応性Tリンパ球を単離し、
iv)該転移反応性Tリンパ球をインビトロ拡大し、
v)こうして取得されたTリンパ球を該患者に投与する
ことを含んでなり、該Tリンパ球はCD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球である、散在性ガンに罹患している患者を治療する方法。
【請求項2】
前記ガンが、任意の解剖学的位置にある上皮性起源、間葉性起源又は胎生学的起源の任意の充実性新生物、例えば、上皮性新生物については、例えば胸部、結腸、膵臓、膀胱、小腸、前立腺、子宮頸、外陰部、卵巣のガン腫のような新生物;間葉性新生物については、例えば関節、骨、筋肉及び腱の肉腫のような新生物、並びにリンパ腫のような幾つかの血液学的新生物;胎生学的新生物については、例えば奇形腫のような新生物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メチネルリンパ節が、工程i)において、前記患者に1又はそれより多いリンパ節探知体を注射することにより同定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1又はそれより多いリンパ節探知体が親和性ベースである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1又はそれより多いリンパ節探知体が非親和性ベースである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1又はそれより多いリンパ節探知体が、転移の中、上、周り、近傍及び/又は下に注射される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1又はそれより多いリンパ節探知体が単回注射により注射される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記1又はそれより多いリンパ節探知体が多回注射により注射される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1又はそれより多いリンパ節探知体が非外科的手順により注射される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記1又はそれより多いリンパ節探知体が外科的手順の一部として注射される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記インビトロ拡大工程iv)が、
i)腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を、腫瘍由来抗原とIL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質とで刺激して、腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の生存を促進する第1のフェーズ;及び
ii)腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の成長を活性化し促進する第2のフェーズ
を含んでなり、該第2のフェーズii)は、Tリンパ球上でCD25細胞表面マーカー(すなわちIL-2Rマーカー)がダウンレギュレートされたときに開始される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ダウンレギュレーションが、前記Tリンパ球集団の5%又はそれ未満がCD25を発現することとして規定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記Tリンパ球が培養培地中に存在する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記培養培地が例えばAIMV培地のような無血清培地である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のフェーズi)が、前記IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質を添加することにより開始される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質がIL-2である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
IL-2が、例えば約100 IU/ml培養培地〜約700 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約600 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約500 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約400 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約300 IU/ml培養培地、及び約100 IU/ml培養培地〜約200 IU/ml培養培地のような低用量で添加される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質の更なる量が、例えばフェーズi)の2日毎、3日毎又は4日毎のように、フェーズi)を通して定期的に添加される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質がIL-2である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
添加されるIL-2の濃度が、約100 IU/ml培養培地〜約700 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約600 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約500 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約400 IU/ml培養培地、約100 IU/ml培養培地〜約300 IU/ml培養培地、及び約100 IU/ml培養培地〜約200 IU/ml培養培地である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍由来抗原が、例えば2日目、3日目、4日目又は5日目のように、前記第1のフェーズi)の2日目から5日目まで(5日目を含む)に添加される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍由来抗原が、フェーズi)の開始と本質的に同時又はその最大3日後までに添加される、請求項11〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍由来抗原が腫瘍の変性ホモジネートである、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記腫瘍由来抗原がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のフェーズii)が、例えば17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目又は23日目のように、前記第1のフェーズi)の17日目から23日目まで(23日目を含む)に開始される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のフェーズが、腫瘍反応性CD25陰性Tリンパ球を活性化するために、前記Tリンパ球に腫瘍由来抗原を添加することにより開始される、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記腫瘍由来抗原が腫瘍の変性ホモジネートである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記腫瘍由来抗原が腫瘍タンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
抗原提示細胞を前記腫瘍由来抗原と共に前記Tリンパ球へ添加することを更に含んでなる、請求項26〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記抗原提示細胞が、抗原提示B細胞及び/又は単球を含有する照射された末梢血白血球である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記第2のフェーズii)が、前記Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る少なくとも1つの物質を添加することを含んでなる、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質が、インターフェロンレセプターに対するアゴニスト活性を有する物質である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記インターフェロンレセプターに対するアゴニスト活性を有する物質がインターフェロンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記インターフェロンレセプターに対するアゴニスト活性を有する物質がインターフェロン-αである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
例えばインターフェロンレセプターに対するアゴニスト活性を有する物質のような前記Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質が、IL-12のレベルが、フェーズii)の1日目のIL-12のレベルと比較して、例えば少なくとも2倍増加、少なくとも3倍増加、少なくとも4倍増加、又は少なくとも5倍増加のように、少なくとも1倍増加したときに添加される、請求項31〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
例えばインターフェロンレセプターに対するアゴニスト活性を有する物質のような前記Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質が、例えば2日目、3日目又は4日目のように、前記第2のフェーズii)の開始後2日目から4日目まで(4日目を含む)に添加される、請求項31〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記第2のフェーズii)が、Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質を添加することを含んでなる、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質が、IL-4、IL-5、IL-10及び/又はTGF-βを中和し得る1又はそれより多い物質である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記IL-4、IL-5、IL-10及び/又はTGF-βを中和し得る1又はそれより多い物質が、抗IL-4抗体、抗IL-5抗体及び/又は抗IL-10抗体である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
例えばIL-4、IL-5、IL-10及び/又はTGF-βを中和し得る1又はそれより多い物質のような前記Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質が、前記第2のフェーズii)の1日目に添加される、請求項37〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
例えばIL-4、IL-5、IL-10及び/又はTGF-βを中和し得る1又はそれより多い物質のような前記Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質が、前記Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質の添加後の後続の工程で添加される、請求項37〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
例えばIL-4、IL-5、及び/又はIL-10を中和し得る1又はそれより多い物質のような前記Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質が、前記Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質の添加の1日後に添加される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
例えばIL-4、IL-5、IL-10及び/又はTGF-βを中和し得る1又はそれより多い物質のような前記Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質の更なる量が、フェーズii)を通して定期的に添加される、請求項1〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
例えばIL-4、IL-5、IL-10及び/又はTGF-βを中和し得る1又はそれより多い物質のような前記Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る1又はそれより多い物質の更なる量が、フェーズii)の2日毎、3日毎又は4日毎に添加される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
IL-12レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質の更なる量が、フェーズii)を通して定期的に添加される、請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質が、例えば3日毎のように、フェーズii)の2日毎、3日毎又は4日毎に添加される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質がIL-2である、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記第2のフェーズii)が、Th1タイプTリンパ球の発達を促進する1又はそれより多い物質を添加することを含んでなる、請求項1〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記Th1タイプTリンパ球の発達を促進する1又はそれより多い物質が、IL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記1又はそれより多い物質が、IL-7、IL-12、IL-15及びIL-21から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
例えばIL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質のようなTh1タイプTリンパ球の発達を促進する1又はそれより多い物質が、IFN-γのレベルが第2のフェーズii)の開始時のIFN-γのレベルと比較して増加したときに添加される、請求項48〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記IFN-γの増加レベルが、前記第2のフェーズii)の開始時のIFN-γのレベルと比較して、例えば少なくとも2倍増加、少なくとも3倍増加、少なくとも4倍増加のように、IFN-γレベルの少なくとも1倍増加として決定される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
例えばIL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質のような前記Th1タイプTリンパ球の発達を促進する1又はそれより多い物質が、CD25及び/又はCD69がダウンレギュレートされたときに添加される、請求項48〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
添加される、例えばIL-7、IL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質のような前記Th1タイプTリンパ球の発達を促進する1又はそれより多い物質の各々の濃度が、例えば250 IU/ml培養培地のように、約150 IU/ml培養培地〜約300 IU/ml培養培地である、請求項48〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
例えばIL-12、IL-15及び/又はIL-21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質のような前記Th1タイプTリンパ球の発達を促進する1又はそれより多い物質が、5日目、6日目、7日目又は8日目のように、前記第2のフェーズii)の開始後5日目から8日目まで(8日目を含む)に添加される、請求項48〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
CD4+ヘルパーTリンパ球の製造のための、請求項1〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
エフェクターTリンパ球の製造のための、請求項1〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
メモリーTリンパ球の製造のための、請求項1〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
Th1タイプTリンパ球の製造のための、請求項1〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記Tリンパ球上での例えばCD25及び/又はCD69のような細胞表面マーカーの発現を、前記第1のフェーズi)の間及び前記第2のフェーズii)の間に継続してモニターすることを更に含んでなる、請求項1〜59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記Tリンパ球が、前記第2のフェーズii)においてTリンパ球上のCD25がダウンレギュレートされたときに採集される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記Tリンパ球が、Tリンパ球上のCD25がダウンレギュレートされたとき、少なくとも1回の追加のフェーズii)に付される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記ダウンレギュレーションが、前記CD4陽性Tリンパ球集団の5%又はそれ未満がCD25を発現することとして規定される、請求項61又は62に記載の方法。
【請求項64】
前記腫瘍反応性Tリンパ球が、前記第2のフェーズii)の開始後10日目から14日目まで(14日目を含む)に採集される、請求項1〜63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記腫瘍反応性Tリンパ球が採集後に精製される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記第2のフェーズii)で得られた前記腫瘍反応性Tリンパ球を凍結させる工程を更に含んでなる、請求項1〜65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記Tリンパ球が、原発腫瘍及び/又は転移を排液するリンパ節に由来するか又は血液に由来する、請求項1〜66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
工程iv)の前記腫瘍反応性Tリンパ球が、静脈内、動脈内、鞘内、又は腹腔内に投与される、請求項1〜67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
投与される前記腫瘍反応性Tリンパ球の量が、例えば少なくとも20百万、少なくとも30百万、少なくとも40百万、少なくとも50百万、少なくとも60百万、少なくとも70百万又は少なくとも80百万のような少なくとも10百万である、請求項1〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
投与される前記腫瘍反応性Tリンパ球が、エフェクターTリンパ球とメモリーTリンパ球との組合せである、請求項1〜69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
エフェクターTリンパ球の割合が、例えば約20%〜約50%又は約30%〜約40%のような約10%〜約65%である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記腫瘍反応性Tリンパ球が自己由来である、請求項1〜71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記腫瘍反応性Tリンパ球が非自己由来である、請求項1〜72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
請求項1〜73のいずれか1項に記載の方法により製造される腫瘍反応性Tリンパ球。
【請求項75】
CD4+Tリンパ球である、請求項74に記載の腫瘍反応性Tリンパ球。
【請求項76】
エフェクターTリンパ球である、請求項74又は75に記載の腫瘍反応性Tリンパ球。
【請求項77】
メモリーTリンパ球である、請求項74〜76のいずれか1項に記載の腫瘍反応性Tリンパ球。
【請求項78】
Th1タイプTリンパ球である、請求項74〜77のいずれか1項に記載の腫瘍反応性Tリンパ球。
【請求項79】
散在性ガンの治療用医薬の製造のための、請求項74〜78のいずれか1項に記載の腫瘍反応性Tリンパ球の使用。
【請求項80】
Tリンパ球の培養用培地を含んでなる、請求項1〜73のいずれか1項に記載の方法で使用するキット。
【請求項81】
腫瘍反応性Tリンパ球を刺激し、活性化し及び方向付けるための1又はそれより多い物質を更に含んでなる、請求項80に記載のキット。
【請求項82】
前記培地が、例えばAIMV、RPMI 1640、DMEM又はMEMのような無血清培地である、請求項80又は81に記載のキット。
【請求項83】
前記腫瘍反応性Tリンパ球を刺激し、活性化し及び方向付けるための1又はそれより多い物質が、腫瘍由来抗原、IL-2レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質、前記Tリンパ球上のIL-12Rをアップレギュレートし得る物質、Th2タイプTリンパ球の発達に拮抗し得る物質及びTh1タイプTリンパ球の発達を促進する物質から選択される、請求項80〜82のいずれか1項に記載のキット。
【請求項84】
前記腫瘍反応性Tリンパ球を刺激し、活性化し及び方向付けるための1又はそれより多い物質が、IL-2、インターフェロン-α、抗IL-4抗体、抗IL-5抗体、抗IL-10抗体、IL-7、IL-12、IL-15及びIL-21を含んでなる群より選択される、請求項80〜83のいずれか1項に記載のキット。
【請求項85】
静脈内投与に適切な医薬組成物を含んでなる、請求項80〜84のいずれか1項に記載のキット。
【請求項86】
シリンジ及びリンパ節探知体を含んでなる、メチネルリンパ節の検出用キット。
【請求項87】
リンパ節探知体を予め充填したシリンジを含んでなる、メチネルリンパ節の検出用キット。
【請求項88】
使用指示書を更に含んでなる、請求項80〜87のいずれか1項に記載のキット。
【請求項89】
前記指示書がコンピュータソフトウェアの形態である、請求項88に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−520724(P2009−520724A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546244(P2008−546244)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012305
【国際公開番号】WO2007/071389
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508186912)セントクローネ エービー (4)
【氏名又は名称原語表記】SENTOCLONE AB
【住所又は居所原語表記】Allen 5,S−172 66 Sundbyberg,Sweden
【Fターム(参考)】