説明

散水チューブ

【課題】耐久性、耐圧性、耐熱性、柔軟性、加工性、取扱い利便性などの諸特性を保持し、低水圧条件下では全面に点滴散水、高水圧条件下では全面に微細噴霧散水となる、長手方向に均一散水性能を有する散水チューブを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂製の基材から成る散水チューブであって、針状突起物によって穿孔加工が施された面側の穿孔数平均密度が2個/cm以上であり、敷設して入口水圧0.5kg/cmの条件で測定した平均散水量が50〜1,000cc/分・mの範囲にある散水チューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水チューブに関し、詳しくは、熱可塑性樹脂製の基材から成る散水チューブであって、針状突起物(ニードル)により著しく多数の微細孔が穿孔加工され、低水圧条件下では全面に点滴散水、高水圧条件下では全面に微細噴霧散水となり、しかも、長手方向に均一散水性能を有する散水チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業用分野、土木用分野を中心に散水用または潅水用として、硬質合成樹脂管の替わりに、熱可塑性樹脂製の散水チューブが利用されている。通常、これらの散水チューブは、散水孔を穿設した長尺状熱可塑性樹脂フィルムと穿孔部を有しない同幅の長尺状熱可塑性樹脂フィルムとを重ね合わせ、幅方向の両端を長尺方向に融着することによって形成された貼合タイプのもの(例えば特許文献1)と、溶融押出法によって円筒状のスリットから熱可塑性樹脂を溶融押出して直接チューブ状に成形加工し、得られたチューブに散水孔を穿設した非貼合タイプのもの(例えば特許文献2)とが存在する。なお、フィルムは厚さ0.254mm以下のものに対する用語であるが、本発明において「フィルム」の用語はシートを含む概念として使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−63335号公報
【特許文献2】特開平2−258187号公報
【0004】
何れの散水チューブも、ポンプ等の水源に連結の送水管を接続して供給水に所定水圧(例えば散水チューブ入口に0.2〜2kg/cmの水圧を)掛け、目的とする散水量(例えば20〜4,000cc/分・mの散水量)を施すことによって、均一な散水特性を達成できる様に、精度の高い穿孔加工処理、具体的には、ポンチ打ち抜き法、熱針穿孔法、レーザー穿孔法などの方法により、多数の小孔が高精度に規則正しく配列された形態を有している。そして、一般に、穿孔径(直径)は約0.2〜1.0mm、チューブ穿孔加工面側での穿孔数平均密度は約0.01〜0.2個/cm、穿孔間隔は約20〜200mmとされる。
【0005】
しかしながら、最近の育苗栽培などの分野においては、前記の様に穿孔設計されて比較的水量に勢いがある糸状散水では達成し得ない、圃場面全体に可及的均一に、かつ、散水によって土壌表面を濡れ固めたり畝を崩したりすることなく、また、作物の葉部や果実部を物理的に傷めることのない様に、所定の圃場面やベッド(苗床)に対し、点滴状態または微細噴霧状態で均一に散水を行う、所謂、均一で柔らかい散水状態を達成する散水方法が強く要求されている。
【0006】
この様な課題を克服する方法として、穿孔径を0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下に小さくする方法が考えられるが、斯かる方法では、チューブ面での単位面積当りの穿孔個数が限られているためにチューブ全体での穿孔総面積が著しく小さくなり、散水量が大幅に低下して均一散水性に支障を来たし、また、水源に混在するゴミや無機物質の経時での凝集現象による影響で穿孔部の目詰まり現象を来たし、実際の使用上、散水チューブとしての大きな問題を呈する。
【0007】
また、最近、上記とは別に、一部の畝栽培法やポット(鉢植え)栽培法や高設栽培法に見られる、葉部や果実部を直接散水で濡らして作物の病気を引き起こすことのない様な根元潅水方法、または、施肥を効率よく作物に均一に行う液肥点滴方法においては、チューブ折径約20〜30mm、チューブ管径約12〜20mm、点滴吐出口間隔約50〜300mmの、特殊なシール構造や特殊な流路調整ドリップ部位が組み込まれた比較的高価な狭幅の散水チューブ(点滴チューブと称される)が普及し、入口水圧0.2〜1kg/cm、散水量20〜500cc/分・mの条件下使用されつつある。
【0008】
しかしながら、従来の散水チューブでは点滴吐出口間隔が広いなどの問題があり、更なる吐出口間隔が短かく且つ全体的に均一散水が達成可能な点滴チューブの出現が強く求められている。ところが、従来の点滴チューブ構造の延長として、今以上の短吐出間隔を設けることは、実際での製造上、技術的な著しい困難を伴い、かつ、大幅なコストアップへと繋がり、新たな課題を呈する。
【0009】
更に、上記とは別に、前記の一部の畝栽培法やポット(鉢植え)栽培法や高設栽培法においては、播種から生育に至る収穫前のそれぞれの栽培段階において、根元潅水や液肥点滴や作物全体への散水が必要とされている。
【0010】
しかしながら、チューブ敷設エリア制限の解消化やチューブ敷設費用負担の軽減化の観点から、1本の散水チューブで点滴散水と微細噴霧散水の使い分けが切望されているが、従来の散水チューブでは対応できないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、耐久性、耐圧性、耐熱性、柔軟性、加工性、取扱い利便性などの諸特性を保持し、低水圧条件下では全面に点滴散水、高水圧条件下では全面に微細噴霧散水となる、長手方向に均一散水性能を有する散水チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、従来の散水チューブと比較し、特殊な穿孔方法によりチューブ穿孔加工面側での穿孔数平均密度が大幅に高い微細穿孔が施された散水チューブにより、上記の課題を解決し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、熱可塑性樹脂製の基材から成る散水チューブであって、針状突起物によって穿孔加工が施された面側の穿孔数平均密度が2個/cm以上であり、敷設して入口水圧0.5kg/cmの条件で測定した平均散水量が50〜1,000cc/分・mの範囲にあることを特徴とする散水チューブに存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の散水チューブは、耐久性、耐圧性、耐熱性、柔軟性、加工性、取扱い利便性などの諸特性を保持し、低水圧条件下では全面に点滴散水、高水圧条件下では全面に微細噴霧散水となる、長手方向に均一散水性を有する性能を発現することが出来る。
【0015】
本発明の散水チューブにより、圃場面全体に可及的均一に、かつ、散水によって土壌表面を濡れ固めたり畝を崩したりすることなく、また、作物の葉部や果実部を物理的に傷めることのない様に、所定の圃場面やベッド(苗床)に対して点滴状態、または、微細噴霧状態で均一に散水を行う、所謂、均一で柔らかい散水状態が達成される。従って、本発明の散水チューブは育苗栽培において有効に作用する。
【0016】
更に、本発明の散水チューブは、チューブ敷設エリア制限の解消化やチューブ敷設費用負担の軽減化を目的とし、1本の散水チューブで点滴散水と微細噴霧散水を使い分けたいとの要請の強い畝栽培法やポット(鉢植え)栽培法や高設栽培法において有効に作用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の散水チューブは熱可塑性樹脂製の基材から成る。熱可塑性樹脂としては、屈曲自在な柔軟性を有する任意の樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用することが出来る。これらの中では、特に、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、これら樹脂の混合物などが挙げられる。ポリエチレンの密度は、通常0.90〜0.94g/cm3、好ましくは0.91〜0.93g/cm3であり、エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、通常0.90〜0.94g/cm3、好ましくは0.91〜0.93g/cm3である。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位の含有量は、通常1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%である。
【0019】
ポリエチレン及びエチレン−α−オレフィン共重合体の各密度が上記の範囲より低い場合は、穿孔チューブの機械強度が低くなり、耐久性、耐圧性、耐熱性が劣ることがあり、上記の範囲より高すぎる場合は、穿孔チューブの柔軟性が損なわれ、保管時の収納性、散水時での均一散水性、取扱い利便性などに支障を来たすことがある。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位の含有量が上記の範囲より多い場合は、穿孔チューブの機械強度が低くなり、耐久性、耐圧性、耐熱性が劣ることがある。
【0020】
上記のエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の製造に使用されるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等が挙げられ、製造方法としては、チーグラー系触媒による重合法またはメタロセン系触媒による重合法の何れであってもよい。
【0021】
また、上記のポリオレフィン系樹脂のメルトインデックス(測定法:JIS K7210に準拠、温度:190℃、荷重:2160g)は、通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.2〜20g/10分である。メルトインデックスが上記の範囲より低い場合は、押出加工の際の溶融樹脂が高粘度過ぎて押出成形加工性が劣り、得られるチューブ表面の外観不良を引き起こすことがある。一方、メルトインデックスが上記の範囲より高い場合は、低粘度過ぎて安定した成形加工性が得られ難く、また、チューブ自身の機械強度が低くなり、耐久性、耐圧性、耐熱性が劣ることがある。
【0022】
本発明で使用する熱可塑性樹脂には、穿孔チューブの耐久性、耐候性などを高める目的で、予め、カーボン、耐候安定剤、酸化防止剤などを適宜添加することが出来る。また、その他、無機フィラー、滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤などの各種添加剤を必要に応じて適宜添加することが出来る。
【0023】
チューブの成形方法としては、溶融押出法によって円筒状のスリットから熱可塑性樹脂を押出成形した後に冷却し、得られたチューブをピンチロールによって平面状に折り畳んでチューブ状に成形する方法、Tダイの直線平面状のスリットから熱可塑性樹脂を押出成形した後に冷却してフィルムを得、得られたフィルムの2枚を重ね合わせ、幅方向の両端を長尺方向に融着・貼合化してチューブ状に形成する方法が挙げられる。成形温度は通常130〜220℃程度である。
【0024】
なお、前記のチューブ成形方法として、円筒状のスリットを大型化し、得られたチューブの両端部を切断して2枚の広幅のフィルムを得、所定の幅にスリット化し、その後、2枚のテープ状フィルムを重ね合わせて融着・貼合化してチューブ状に形成する方法を採用してもよい。また、その場合、2枚のテープ状フィルムを重ね合わせる際、両者の間に、水源に混在するゴミ捕捉用のフィルター機能を有する熱可塑性樹脂シートを介在させて融着・貼合化してもよい。
【0025】
本発明の散水チューブのサイズは、特に規定されないが、厚さは、通常0.1〜0.8mm、好ましくは0.2〜0.6mm、折径は、通常10〜80mm、好ましくは15〜60mm、管径は、通常6〜50mm、好ましくは10〜40mmである。
【0026】
本発明の散水チューブを構成する穿孔部は、針状突起物による穿孔加工によって施される。図1は本発明で使用する穿孔加工装置の一例の説明図である。図示した穿孔加工装置は、機能的には、繰出部と穿孔加工部と巻取部にて構成されている。繰出部は、被加工材料が巻回された繰出ロール(1)から主として構成され、穿孔加工部は、多数の針が埋め込まれたニードルロール(2)とゴムロール又は金属ロールから成る押えロール(3)の組合せから主として構成され、巻取部は、加工材料が巻回される巻取ロール(4)から主として構成される。ニードルロール(2)は、2個配置されているが、1個であってもよい。なお、上記の様な構造の穿孔加工装置それ自体は、例えば、織布の起毛処理工程におけるニードルパンチング加工装置として公知である。
【0027】
チューブ状または平面状(非チューブ状)の非穿孔フィルム(5a)は繰出ロール(1)から送給され、穿孔加工部にて処理され、穿孔フィルム(5b)として巻取ロール(4)にて巻取られる。また、巻取ロール(4)に巻回された穿孔フィルム(5b)は、巻取ロール(4)側から繰出ロール(1)に送給して再度の穿孔加工を行うことも出来る。
【0028】
未穿孔フィルム(5a)が平面状(非チューブ状)フィルムの場合は、上記の穿孔加工装置により多数の穿孔部を有する穿孔フィルムを作成し、これと非穿孔フィルムとを重ね合わせ、幅方向の両端を長尺方向に融着・貼合化することにより、散水チューブを得ることが出来る。斯かる方法は、穿孔フィルムと非穿孔フィルムとの間に不織布を配置させてフィルター機能付の散水チューブを作製する場合に利用することが出来る。
【0029】
穿孔径の大きさの制御および挿入と反対側のチューブ面への針状突起物の想定外の貫通や表面損傷の抑制は、ニードルロール(2)と押えロール(3)との間隙や押え圧力を微調整することにより、針状突起物のチューブ外面からの挿入距離を変更して行うことが出来る。
【0030】
穿孔加工に使用する針状突起物の形状・サイズは、得られる散水チューブの穿孔部の形状・穿孔径に直接影響を与えるものであり、目的とする散水チューブが得られるものであれば特に限定されない。
【0031】
しかしながら、不織布、皮革、織物などの分野で使用される生地風合い改善加工機「ニードルプリッカー」の思想に基づく、本発明者らの検討によれば、先端部が鋭利に加工が施された棒状、円錐状また角錐状の針状突起物とは別に、側部に棘状突起を有する針状突起物が好ましい。
【0032】
図2は側部に棘状突起を有する針状突起物の説明図である。(a)に例示した針状突起物(21)は1つの棘状突起(a)を有し、(b)に例示した針状突起物(21)は同一方向に向けられた2つの棘状突起(a)、(a)を有し、(c)に例示した針状突起物(21)は反対方向に向けられた2つの棘状突起(a)、(a)を有する。なお、符号(20)はニードルロール(2)への埋込部を表す。
【0033】
上記の針状突起物(21)は基部から先端に向けて尖っており、その全体長さは、通常1〜10mm、好ましくは2〜6mmである。そして、切裂き性を有する棘状突起それ自体の長さは、通常0.01〜0.30mm、好ましくは0.03〜0.15mmであり、棘状突起の個数は複数、例えば2〜3が好ましい。棘状突起物の位置は、針状突起物(21)の先端部から通常0.3〜2.0mmの位置である。例えば、針状突起物(21)の先端部から0.3〜1.0mmの位置に1つの棘状突起を設け、針状突起物(21)の先端部から0.6〜2.0mmの位置に他の1つの棘状突起を設けることが出来る。
【0034】
穿孔加工に側部に棘状突起を有する針状突起物を使用した場合、得られる穿孔部の形状は円形ではなく、棘状の切裂き部を孔周辺側部に有する形状となりる。例えば、散水チューブの穿孔部には、0.005〜0.02mm程度の極めて微細な切裂き部が形成される。斯かる特殊形状の穿孔部を有する散水チューブは、低水圧条件下では全面に点滴散水を発現し、高水圧条件下ではより一層の細やかで柔らかな微細噴霧状の散水を全面に発現することが容易となる。
【0035】
本発明の散水チューブにおいて、針状突起物によって穿孔加工が施された面側の穿孔数平均密度は、2個/cm以上であり、好ましくは5個/cm以上である。この場合の穿孔数平均密度とは、チューブ穿孔加工面側において、顕微鏡などの拡大手段による観察方法にて貫通した穿孔部と認識され、また、実際に敷設後で水圧を掛けて点滴散水または微細噴霧状散水が認められる穿孔部の個数について、単位面積(1cm)当たりの数量として規定したものである。
【0036】
チューブ穿孔加工面側での穿孔数平均密度が2個/cmよりも小さい場合は、次の様な問題がある。すなわち、上記の様な穿孔数平均密度で、例えば、穿孔径0.10mm以下の微細穿孔形態では、チューブ面での単位面積当りの穿孔個数が限定されるため、チューブ全体での穿孔総面積が著しく小さくなり、散水量が大幅に低下して支障を来たし、また、水源に混在するゴミや無機物質の経時での凝集現象による影響で穿孔部の目詰まり現象を来たす懸念を生じる。なお、穿孔数平均密度の上限は通常500個/cmである。
【0037】
穿孔加工面側の微細穿孔の分布状態は、特に限定されず、チューブ片面側の全面に微細穿孔が均一分散していてもよく、また、均一散水性に支障を来たさない限り、長さ方向のチューブ片面側に或る一定の周期的な間隔(例えば20〜100mmの範囲での等間隔)で微細穿孔が存在して特定のエリアに微細穿孔が密集していてもよい。
【0038】
ところで、実際には、散水チューブの穿孔部の大きさや穿孔面積は、散水チューブ敷設して所定水圧を掛けた状態で議論すべきである。そして、散水量は散水チューブ入口水圧および散水チューブの単位長さ当たりの穿孔部総面積に深く関係しており、具体的には、散水量は散水チューブ入口水圧が高い程、また、散水チューブの単位長さ当たりの穿孔部総面積が大きい程、大きな値を示す。
【0039】
そこで、本発明においては、本発明の散水チューブの特徴の他の1つとして、敷設して入口水圧0.5kg/cmの条件で測定した平均散水量が50〜1,000cc/分・mの範囲にある旨、規定している。
【0040】
上記の平均散水量が50cc/分・mよりも小さい場合は、散水量が大幅に少な過ぎ、実際の使用において均一散水性に支障を来たし、一方、上記の平均散水量が1、000cc/分・mよりも大きい場合は、散水量が逆に大幅に多過ぎ、敷設した散水チューブの入口付近では或る程度の水圧が掛かるが、末端付近では大幅に水圧が低下して、その結果、長手方向での均一散水性を発現することが出来ない。上記の平均散水量の好ましい範囲は80〜800cc/分・mである。
【0041】
因みに、前述した本発明の散水チューブに関し、所定水圧を掛けず、顕微鏡などの拡大手段により、簡便的に穿孔径や形状を観察した場合、穿孔部の最小径は、通常0.10mm以下、好ましくは0.08mm以下である。穿孔径が0.10mmを超える大きな形状では、目的とする低水圧条件下では全面に点滴散水、高水圧条件下では全面に微細噴霧散水となる様な散水性能は得られず、従来の散水チューブに見られる比較的水量に勢いがある糸状散水の様な散水特性となる。また、この様な穿孔径でチューブ穿孔加工面側での穿孔数平均密度2個/cm以上の穿孔形態では、チューブ全体での穿孔総面積が著しく大きくなり、これにより散水量が大幅に多く、その結果、長手方向での均一散水性の達成が出来なくなる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1:
樹脂材料として、メルトインデックス1g/10分、密度0.92g/cmの高圧重合法ポリエチレン樹脂97重量部、カーボンブラック3重量部の組成より成るポリオレフィン系樹脂組成物(A)を使用した。そして、空冷インフレーションフィルム成形装置(溶融押出温度:160℃)を使用して溶融押出成形を行い、厚さ0.30mm、 折径25mm、管径16mmのチューブ状フィルムを作成した。
【0044】
図1に示すのと同様の穿孔加工装置(穿孔部は1本の押えゴムロールト2本のニードルロールから構成)に上記のチューブ状フィルムを連続的に通し、ロール押え圧力(針挿入圧設定)6kg/cmの条件にて穿孔加工を行って多数の穿孔部を有する散水チューブを作成した。ニードルロール表面のニードル植込み本数は32本/cmであり、針状突起物としては、図2(b)に示す形状で且つ表1に示す仕様の棘状突起を有する針状突起物を使用した。
【0045】
【表1】

【0046】
得られた散水チューブの穿孔部を顕微鏡にて観察した結果、穿孔部の周辺に微細な棘状切裂き部を有し、穿孔部の最小径0.025mm、チューブ穿孔加工面側での穿孔数平均密度は64個/cmであった。
【0047】
また、圃場に上記の散水チューブを50mの長さで敷設し、入口水圧が0.5kg/cmになる様に水圧を掛けた際の平均散水量(cc/分・m)を計測した。また、水圧を掛けて10、20、30リットル/分・50mの所定散水量時における入口部と末端部の水圧の測定、散水チューブからの散水形状(点滴散水状態、微細噴霧状態、糸状散水状態)、均一散水性の挙動の観察を行った。結果を表2に示す。
【0048】
実施例2:
樹脂材料として、メルトインデックス2g/10分、密度0.92g/cmのエチレン−(4メチルペンテン−1)共重合体樹脂47重量部、メルトインデックス1g/10分、酢酸ビニル単位の含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂50重量部、カーボンブラック3重量部の組成より成るポリオレフィン系樹脂組成物(B)を使用した。そして、空冷インフレーションフィルム成形装置(溶融押出温度:160℃)を使用して溶融押出成形を行い、得られたチューブ両端部を切断加工し、フィルム厚さ0.25mm、フィルム幅600mmのフィルム(A)を作成した。
【0049】
図1に示すのと同様の穿孔加工装置(穿孔部は1本の押えゴムロールト2本のニードルロールから構成)に上記のフィルムを連続的に通し、ロール押え圧力(針挿入圧設定)4kg/cmの条件にて穿孔加工を行って巻取後、再度、同じ工程(フィルム面への針挿入方向は同一)を繰り返し、多数の穿孔部を有する穿孔フィルム(B)を作成した。ニードルロール表面のニードル植込み本数および使用した針状突起物は実施例1と同じである。
【0050】
そして、上記のフィルム(A)と穿孔フィルム(B)と不織布(C)(材質:ポリエチレン+ポリプロピレン、厚さ:0.25mm、目付け:50g/m)とを使用し、次の要領でフィルター機能付の散水チューブを作製した。
【0051】
すなわち、上記の各フィルム(A)及び(B)を42mmの幅にスリットし、これらのフィルムのサイズに不織布のサイズを調節し、フィルム(A)と穿孔フィルム(B)との間に不織布(C)を介在させて融着・貼合化した。散水チューブのチューブ折径は36mm、チューブ管径は23mmとした。
【0052】
得られた散水チューブの穿孔部(チューブ表面から針挿入して穿孔加工)を顕微鏡にて観察した結果、穿孔部の周辺に微細な棘状切裂き部を有し、穿孔部の最小径0.020mm、チューブ穿孔加工面側での穿孔数平均密度は128個/cmであった。実施例1と同様に圃場で行った試験結果を表2に示す。
【0053】
実施例3:
実施例2におけるのと同一の樹脂材料(ポリオレフィン系樹脂組成物(B))を使用し、実施例2と同一の方法により、フィルム厚さ0.25mm、フィルム幅600mmのフィルム(A)を作成した。
【0054】
上記のフィルムを42mmの幅にスリットし、図1に示すのと同様の穿孔加工装置(穿孔部は1本の押え金属ロールと1本のニードルロールから構成)にロール間隙(針挿入設定)0.5mmの条件にて連続的に通し、多数の穿孔部を有する穿孔フィルム(D)を作成した。ニードルロール表面のニードル植込み本数は10本/cmであり、ニードル配列4列とし、針状突起物としては、棘状突起がなく長さ3mmの針状突起物を使用した。
【0055】
次いで、実施例2と同様にフィルム(A)と穿孔フィルム(D)との間に不織布(C)を介在させて融着・貼合化し、折径36mm、チューブ管径23mmのフィルター機能付の散水チューブを作製した。
【0056】
得られた散水チューブの穿孔部(チューブ表面から針挿入して穿孔加工)を顕微鏡にて観察した結果、穿孔部の周辺に棘状切裂き部が無く、穿孔部の最小径0.060mm、チューブ穿孔加工面側での穿孔数平均密度は10個/cmであった。実施例1と同様に圃場で行った試験結果を表2に示す。
【0057】
比較例1:
実施例3において、ニードルロール表面のニードル植込み本数を0.10本/cmに変更した以外は、実施例3と同様にして折径36mm、チューブ管径23mmのフィルター機能付の散水チューブを作製した。
【0058】
得られた散水チューブの穿孔部(チューブ表面から針挿入して穿孔加工)を顕微鏡にて観察した結果、穿孔部の周辺に棘状切裂き部が無く、穿孔部の最小径0.060mm、チューブ穿孔加工面側での穿孔数平均密度は0.10個/cmであった。実施例1と同様に圃場で行った試験結果を表2に示す。
【0059】
比較例2:
実施例2におけるのと同一の樹脂材料(ポリオレフィン系樹脂組成物(B))を使用し、空冷インフレーションフィルム成形装置(溶融押出温度:160℃)により押出成形を行い、チューブ両端部を切断加工を施し、フィルム厚さ0.25mm、フィルム幅600mmの平面状フィルムを作成した。
【0060】
上記の平面状フィルムを42mmの幅にスリット化し、YAG方式レーザー穿孔装置により、所定の穿孔設計(孔列配置:4列千鳥、25mm間隔)に仕上がる様に、レーザー出力・穿孔位置を調整を行って多数の穿孔部を有する穿孔フィルム(E)を作成した。
【0061】
次いで、実施例2と同様にフィルム(A)と穿孔フィルム(E)との間に不織布(C)を介在させて融着・貼合化し、折径36mm、チューブ管径23mmのフィルター機能付の散水チューブを作製した。
【0062】
得られた散水チューブの穿孔部を顕微鏡にて観察した結果、穿孔部の最小径0.20mm(真円形)、チューブ穿孔加工面側での穿孔数平均密度は0.11個/cmであった。実施例1と同様に圃場で行った試験結果を表2に示す。
【0063】
以下の表2中、所定散水量時での均一散水性の挙動の「良好」、「不良」の判定は、チューブ敷設の長さ方向での圃場の濡れ具合の均一状態を総合的に目視にて判定を実施した。また、比較例1に記載の「−」は、所定散水量を達成するには元圧を異常に高く設定する必要があり、実際の散水には不適であることを示す。
【0064】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明で使用する穿孔加工装置の一例の説明図
【図2】側部に棘状突起を有する針状突起物の説明図
【符号の説明】
【0066】
1:繰出ロール
2:ニードルロール
3:押えロール
4:巻取ロール
5a:非穿孔フィルム
5b:穿孔フィルム
20:埋込部
21:針状突起物
a:棘状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の基材から成る散水チューブであって、針状突起物によって穿孔加工が施された面側の穿孔数平均密度が2個/cm以上であり、敷設して入口水圧0.5kg/cmの条件で測定した平均散水量が50〜1,000cc/分・mの範囲にあることを特徴とする散水チューブ。
【請求項2】
針状突起物が側部に棘状突起を有する針状突起物である請求項1記載の散水チューブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−110944(P2007−110944A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304639(P2005−304639)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(504137956)MKVプラテック株式会社 (59)