説明

整髪用被膜形成樹脂

【課題】高湿度下でもべたつくことなく、ヘアスタイルを長時間保持できると共に、洗浄性にも優れ、シャンプーで容易に除去でき、かつ使用後の仕上がりの美しい整髪用被膜形成樹脂及びこれを含有する毛髪化粧料を提供すること。
【解決手段】次のモノマー成分(A)〜(D)を含むモノマー成分を共重合させて得られる整髪用被膜形成樹脂及びこれを含有する毛髪化粧料。
(A) CH=C(R)−COO−R−Si(OR:0.5〜20重量%
(B) CH=C(R)−COOR :20〜98.5重量%
(C) CH=C(R)−COO−R−OH:0.5〜60重量%、
(D) カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー:0.5〜50重量%
〔R:水素原子又はメチル基、R:C〜Cの2価飽和炭化水素基、R:C〜Cののアルキル基又はアセチル基、RはC〜C18のアルキル基、RはC〜Cのアルキレン基〕

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、整髪用被膜形成樹脂及びこれを含有する毛髪化粧料に関する。更に詳しくは、高湿度下でもべたつくことなく、ヘアスタイルを長時間保持できると共に、シャンプーで容易に除去でき、かつ使用後の仕上がりの美しい整髪用被膜形成樹脂及びこれを含有する毛髪化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、整髪性やセット保持性の付与、毛髪のハリ・コシ向上等の目的で、スプレー、ミスト、フォーム、クリーム、ゲル、ローション等の毛髪化粧料中に、被膜形成樹脂が添加されている。このような被膜形成樹脂には、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル/アクリル酸共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸エステル(ジアルキルアミノエチルメタクリレートとモノクロロ酢酸結合物)共重合体等が用いられている。
【0003】
毛髪化粧料に含有される被膜形成樹脂は、セットされたヘアスタイルを長時間保持することができ、かつ洗髪時にシャンプーあるいは水で容易に除去されなくてはならないという性能が要求される。しかしながら、従来の被膜形成樹脂のうち、水溶性が高くシャンプー洗浄性が良好なものは、高湿度下で非常に吸湿しやすいため、形成したヘアスタイルが経時により崩れてしまい、更に、吸湿によって膨潤、溶解、軟化した樹脂は粘着性を持つため、べたつき等の不快感を与えるという欠点を有していた。一方、耐湿性が高い樹脂は、吸湿によるべたつき等は低減されるものの、水溶性が低いため洗浄性が悪く、連続使用による樹脂の堆積によって、毛髪の外観、感触が悪くなる等の問題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高湿度下でもべたつくことなく、ヘアスタイルを長時間保持できると共に、シャンプー洗浄性にも優れ、シャンプーで容易に除去でき、かつ使用後の仕上がりの美しい整髪用被膜形成樹脂及びこれを含有する毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定の共重合体を整髪用被膜形成樹脂として用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D)
(A) 一般式(1)
CH=C(R)−COO−R−Si(OR       (1)
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜3の2価飽和炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基又はアセチル基を示す。〕
で表されるシロキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマー:0.5〜20重量%、
【0007】
(B) 一般式(2)
CH=C(R)−COOR                     (2)
〔式中、Rは前記と同じ意味を示し、Rは炭素数1〜18のアルキル基を示す。〕
で表される(メタ)アクリレート系モノマー:20〜98.5重量%、
【0008】
(C) 一般式(3)
CH=C(R)−COO−R−OH               (3)
〔式中、Rは前記と同じ意味を示し、Rは炭素数2〜8のアルキレン基を示す。〕
で表される水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー:0.5〜60重量%、
【0009】
(D) カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー:0.5〜50重量%
を含むモノマー成分を共重合させて得られる整髪用被膜形成樹脂を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記整髪用被膜形成樹脂を含有する毛髪化粧料を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
モノマー成分(A)の一般式(1)で表されるシロキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマーは、共重合体中のシロキシ基同士、又はシロキシ基と水酸基若しくはカルボキシ基との間に架橋を形成する機能を有する。
【0012】
モノマー成分(A)としては、例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、中でもγ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0013】
モノマー成分(A)は、2種以上を併用することもでき、また全モノマー成分のうち、0.5〜20重量%使用されるが、2〜15重量%、特に3〜10重量%使用されるのが好ましい。モノマー成分(A)の使用量が上記範囲に満たない場合には、シロキシ基による架橋部分が減少するため耐湿性が減少し、スタイリングの持続性が低下する。また、モノマー成分(A)の使用量が上記範囲を超える場合には、架橋部分の増加にともない、毛髪に塗布したときに形成される被膜が硬く、脆くなる結果、毛髪セット性が劣り、またフレーキングを起こす可能性が高くなる。
【0014】
モノマー成分(B)の一般式(2)で表される(メタ)アクリレート系モノマーは、得られる整髪用被膜形成樹脂に疎水性を付与する機能を有する。
【0015】
一般式(2)において、Rとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ペプチル基、2−ペプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられ、中でもn−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基が好ましい。
【0016】
モノマー成分(B)は、2種以上を併用することもでき、また全モノマー成分のうち、20〜98.5重量%使用されるが、35〜80重量%、特に40〜60重量%使用されるのが好ましい。モノマー成分(B)の使用量が上記範囲に満たない場合は、樹脂被膜の疎水性が低下し、耐湿性が低下する原因となる。また、モノマー成分(B)の使用量が上記範囲を超える場合は、樹脂被膜の密着性及び保持力の低下となる可能性がある。
【0017】
モノマー成分(C)の一般式(3)で表される水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーは、共重合体中のシロキシ基等との反応により樹脂被膜の安定性を向上させる機能を有する。
【0018】
モノマー成分(C)としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシペンチルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシヘプチルアクリレート、ヒドロキシオクチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシペンチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート、ヒドロキシヘプチルメタクリレート、ヒドロキシオクチルメタクリレート等が挙げられ、中でもヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートが好ましい。
【0019】
モノマー成分(C)は、2種以上を併用することもでき、また、全モノマー成分のうち、0.5〜50重量%使用され、5〜45重量%、特に20〜40重量%使用されるのが好ましい。得られる共重合体中のシロキシ基等との反応により樹脂被膜の安定性を付与するためには、モノマー成分(C)の使用量を20重量%以上にすることが好ましい。
【0020】
モノマー成分(D)のカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーは、得られる共重合体中のシロキシ基等との反応により樹脂被膜を安定させる機能を有する。
【0021】
モノマー成分(D)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の炭素数3〜5の不飽和カルボン酸等が挙げられ、中でもアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0022】
モノマー成分(D)は、2種以上を併用することもでき、また、全モノマー成分のうち0.5〜20重量%使用され、3〜15重量%、特に5〜10重量%使用されるのが好ましい。
【0023】
なお、モノマー成分(D)によりカルボキシ基が導入された本発明の整髪用被膜形成樹脂は、水溶性を付与するために、水溶性塩基物質等を用いて当該カルボキシ基を中和することが好ましい。この場合、中和率は、十分な水溶性を付与する一方、耐湿性の低下を回避する観点から、20〜100%、特に50〜85%が好ましい。
【0024】
水溶性塩基物質としては、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モルホリン、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール等が挙げられる。これらの化合物は2種以上を併用することもできる。
【0025】
また、本発明においては、モノマー成分(A)〜(D)以外に、例えばN−ビニルピロリドン、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル等のその他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを、必要に応じて、全モノマー成分の0〜20重量%、特に0.5〜20重量%の範囲内で使用してもよい。かかるその他のエチレン性不飽和モノマーの含有量が前記上限値を超える場合には、得られる共重合体の樹脂被膜の機能に大きな支障をきたすものではないが、該共重合体中のシロキシ基などとの反応部分が減少し、耐湿性が小さくなる可能性がある。
【0026】
モノマー成分(A)〜(D)及びその他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーの種類及びその配合量は、用いる毛髪化粧料の形態及び用途に応じ、適宜決定されることが望ましい。
【0027】
前記モノマーの重合方法としては、溶液重合法、断熱重合法、析出重合法、懸濁重合法などが挙げられるが、これらのうち、各種反応性の異なるモノマーの共重合性を考慮すれば、均一に反応を行うことができる溶液重合法が最も好ましい。
【0028】
前記モノマーの重合を溶液重合法などによって行う場合に使用される溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、メチルセロソルブ等が挙げられるが、重合反応に支障がない限りは一般的な溶剤を用いることができる。なお、重合に供せられるモノマーの濃度は、任意であるが、通常20〜70重量%程度である。モノマーの濃度が50重量%を超える場合には、かなりの発熱を伴なうので、モノマーの分割添加を行うことが好ましい。
【0029】
反応の際に用いられる重合触媒としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパージカーボネート、tert−ブチルパーイソブチレート、tert−ブチルパーピバレート等が挙げられる。該重合触媒の添加量は、モノマー成分の全重量に対して0.05〜5.0重量%、特に0.1〜2.0重量%が好ましい。
【0030】
また、重合反応時の温度は50〜100℃であることが好ましく、一般には揮発性溶媒の沸点で反応を行うことが好ましい。
【0031】
かくして前記モノマーを反応させて得られる本発明の整髪用被膜形成樹脂の重量平均分子量は、良好な樹脂被膜性能及び耐湿性の点から、3万〜15万、特に5万〜13万が好ましい。また、保存安定性の点からは、重量平均分子量5万〜8万の範囲が特に好ましい。
【0032】
本発明の整髪用被膜形成樹脂は、毛髪化粧料の添加成分として使用するに際し、溶剤に溶解させて使用しても、また溶剤を蒸発乾固し粉末として使用してもよいが、溶剤に溶解させるのが好ましい。本発明の整髪用被膜形成樹脂を溶剤に溶解させる場合は、溶剤として、例えば前記した重合溶媒やその他の溶媒を用い、該整髪用被膜形成樹脂の濃度が1〜30重量%程度となるように調整すればよい。
【0033】
本発明の毛髪化粧料は、前記整髪用被膜形成樹脂を含有するものであり、その形態としては、スプレー、ミスト、フォーム、クリーム、ゲル、ローション等が挙げられる。
【0034】
本発明の毛髪化粧料中の前記整髪用被膜形成樹脂の含有量は、その形態に応じ、適宜調整することができるが、例えば、セットスプレー、セットフォーム等のハードセット剤の場合には、有効分として3〜10重量%、ブロー剤、セットローション、セットジェル等のソフトセット剤の場合には、0.5〜3重量%が好ましい。
【0035】
本発明の毛髪化粧料中には、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル等のアニオン界面活性剤;イミダゾリン系、カルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系両性界面活性剤等の両性界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノエタノールアミド又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等の非イオン界面活性剤;イミダゾリン開環型第四級アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、モノ長鎖アルキル第四級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキル第四級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤などが挙げられる。
【0036】
これらの界面活性剤のアニオン性残基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)を挙げることができる。またカチオン性残基の対イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、メトサルフェートイオン、サッカリネートイオンを挙げることができる。
【0037】
これらの界面活性剤のうち、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ベタイン系両性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、モノ長鎖アルキル第四級アンモニウム塩が好ましい。
【0038】
界面活性剤は、2種以上を併用してもよく、その含有量は、本発明の毛髪化粧料中に0〜10重量%が好ましく、更には0〜8重量%、特に0〜5重量%が好ましい。
【0039】
本発明の毛髪化粧料には、前記本発明の整髪用被膜形成樹脂以外の被膜形成樹脂を含有させてもよい。このような被膜形成樹脂としては、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート(四級塩化)共重合体、ビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体等のポリビニルピロリドン系高分子化合物;メチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステル共重合体等の酸性ビニルエーテル系高分子化合物:酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体等の酸性ポリ酢酸ビニル系高分子化合物;(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体等の酸性アクリル系高分子化合物:N−メタクリロイルエチル−N,N−ジメチルアンモニウム・α−N−メチルカルボキシベタイン/メタクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体等の両性アクリル系高分子化合物;アクリルアミド・アクリルエステル系四元共重合体等の塩基性アクリル系高分子化合物;カチオン性セルロース誘導体等のセルロース誘導体:ヒドロキシプロピルキトサン、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン等のキチン・キトサン誘導体などが挙げられる。
【0040】
被膜形成樹脂は、2種以上を併用することもでき、その含有量は、本発明の毛髪化粧料中に0〜10重量%、特に0〜5重量%が好ましい。
【0041】
本発明の毛髪化粧料をエアゾールとする場合は、前記整髪用被膜形成樹脂を例えば前記重合用溶媒として用いた親水性溶媒に溶解したものを、天然ガス等の噴射剤やその他添加剤、補助剤等と共にエアゾール容器内に加圧充填し、封入すればよい。なお、この場合エアゾール容器内に充填させる各種成分の充填割合は、それぞれの目的、用途に応じて適宜調整されることが望ましい。
【0042】
本発明の毛髪化粧料には、その他、通常の毛髪化粧料に使用される各種成分、例えば、水、保湿剤、紫外線防御剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、油性成分、噴射剤等を、目的に応じて適宜含有させることができる。
【0043】
【実施例】
実施例1〜7並びに比較例1及び2
温度計、還流管、窒素導入管及び攪拌機を設置した1000mL容の四つ口フラスコ内で、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5g、メタクリル酸ブチル53g、メタクリル酸ヒドロキシエチル32g及びメタクリル酸10gの30重量%エタノール溶液を調製し、窒素気流下で1〜2時間攪拌して脱気した。
次に重合触媒として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3gをフラスコに添加し、還流下で4時間重合させた後、更に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3gを添加し、還流下で更に4時間重合を行い、反応を完結させた。次に得られたポリマーをエタノールで希釈して、無色透明の濃度20重量%のポリマー溶液を得た。
得られたポリマーの重量平均分子量をゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)により測定したところ、99000であった。
【0044】
モノマーの組成を表1に示す組成となるように変更し、実施例1に準じてそれぞれの反応を完結させ、得られたポリマーの重量平均分子量を実施例1と同様にして測定した。次に得られたポリマーをエタノールで希釈して表1に記載の濃度のポリマー溶液を得た。なお、表中のカッコ内は重量%を示す。
【0045】
【表1】



【0046】
表1中の各略号は以下のモノマーを表す。
SIM:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
SIE:γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
BMA:メタクリル酸ブチル
EHMA:メタクリル酸2−エチルヘキシル
SMA:メタクリル酸ステアリル
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
EMA:メタクリル酸エチル
【0047】
各実施例及び比較例で得られたポリマーの保存安定性(エタノール希釈)、乾燥樹脂被膜のエタノール溶解性、高湿度下での毛髪セット保持力、シャンプー洗浄性について、下記方法及び基準に従い評価を行い、その結果を表2に示す。
【0048】
(1)保存安定性
各実施例で得られたポリマーの保存安定性を調べるために、各ポリマーをエタノールで希釈し、暗所、50℃恒温下に1ヵ月静置し、GPCにより重量平均分子量を測定した。
【0049】
(保存安定性の評価基準)
◎:1ヶ月後のポリマーの平均分子量が初期分子量の1.5倍未満
○:1ヶ月後のポリマーの平均分子量が初期分子量の1.5倍以上2倍未満
×:1ヶ月後のポリマーの平均分子量が初期分子量の2倍以上に増加
【0050】
(2)乾燥樹脂被膜のエタノール溶解性
ポリマー溶液が乾燥して被膜化する際に、ポリマー分子に含まれるシロキシ基とシロキシ基がシロキシサン結合によって架橋すると分子量が極度に増加してエタノールに不溶な被膜になる。そこで、各ポリマーを被膜化させたときの架橋状態を調べるために、ポリマー被膜のエタノール溶解性を調べた。ポリマー被膜がエタノールに不溶であれば、ポリマーが自己架橋(高分子化)を起こしていることを示し、高湿度下においても高いセット持続性を示す。
【0051】
最初に、各ポリマーに水溶性を付与するため、エタノールで10重量%に希釈されたポリマーの酸性分(メタクリル酸)をアミノメチルプロパノールで85モル%中和した。中和したポリマー溶液10gを容器に取り、60℃のオーブンで6時間乾燥させて樹脂被膜を得た。得られた樹脂被膜を100gのエタノール中で2時間攪拌し、その溶解性を観察した。
【0052】
(3)高湿度下における毛髪セット保持力
最初に、各ポリマーに水溶性を付与するため、エタノールで10重量%に希釈されたポリマーの酸性分(メタクリル酸)をアミノメチルプロパノールで85モル%中和した。更に中和されたポリマー溶液をエタノールで希釈し、ポリマー濃度が5重量%となるように調整した。この溶液1gを長さ10cm、重さ3gの毛束に均一に塗布し、直径4cmの円柱に巻き付けた後、60℃の温風で10分間乾燥させた。セットされた毛束を円柱から外し、恒温高湿箱(30℃,98%RH)に吊るし、セット保持力を判定した。判定は、カールした毛束の吊るした状態における垂直方向の長さを測定し、吊るした直後の毛束の長さをセット保持力100%、カールのない元の毛束の長さ(10cm)をセット保持力0%とし、1時間後における毛束の長さの相対値(%)を求め、以下の基準で評価を行った。
【0053】
(セット保持力の評価基準)
◎:90%以上
○:60%以上90%未満
△:50%以上60%未満
×:50%未満
【0054】
(4)高湿度下におけるべたつきの評価
評価(3)と同様の方法でセットされた毛束を、恒温恒湿箱(30℃,98%RH)に30分吊るした後、専門パネラーによりべたつきの官能評価を行った。
【0055】
(べたつきの評価基準)
「あり」  :処理前と比較して明らかにべたつきがある
「ややあり」:処理前と比較して若干の変化がある
「なし」  :処理前と比較して変化がない
【0056】
(5)シャンプー洗浄性
評価(3)と同様の方法でセットされた毛束に市販のシャンプー(花王株式会社製,エッセンシャルダメージケアシャンプー)1gを塗布し、十分に泡立てた後、温水(約40℃)ですすぎ流した。
その後、毛束を自然乾燥し、専門パネラーにより目視で毛髪表面の色つや、付着物等、及び手触りでざらつき、ゴワツキ等を評価した。
【0057】
(シャンプー洗浄性の評価基準)
「残留」  :処理前と比較して明らかに変化がある
「やや残留」:処理前と比較して若干の変化がある
「良好」  :処理前と比較して変化がない
【0058】
【表2】



【0059】
実施例8
下記組成の原液に対し、噴射剤(LPG)を、原液/噴射剤混合比=50/50の比率で加え、毛髪用セットスプレー(エアゾール)を得た。



【0060】
実施例9
下記成分を配合し、毛髪用セットローションを得た。



【0061】実施例10
下記成分を配合し、毛髪用セットジェルを得た。



【0062】
実施例11
下記組成の原液に対し、噴射剤(LPG)を、原液/噴射剤混合比=50/50の比率で加え、毛髪用セットフォームを得た。



【0063】
【発明の効果】
本発明の整髪用被膜形成樹脂及びこれを含有する毛髪化粧料は、高湿度下でもべたつくことなく、ヘアスタイルを長時間保持できると共に、洗浄性にも優れ、シャンプーで容易に除去でき、かつ使用後の美しい仕上がりが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D)
(A) 一般式(1)
CH=C(R)−COO−R−Si(OR       (1)
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜3の2価飽和炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基又はアセチル基を示す。〕
で表されるシロキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマー:0.5〜20重量%、
(B) 一般式(2)
CH=C(R)−COOR                     (2)
〔式中、Rは前記と同じ意味を示し、Rは炭素数1〜18のアルキル基を示す。〕
で表される(メタ)アクリレート系モノマー:20〜98.5重量%、
(C) 一般式(3)
CH=C(R)−COO−R−OH               (3)
〔式中、Rは前記と同じ意味を示し、Rは炭素数2〜8のアルキレン基を示す。〕
で表される水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー:0.5〜60重量%、
(D) カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー:0.5〜50重量%
を含むモノマー成分を共重合させて得られる整髪用被膜形成樹脂。
【請求項2】
成分(A)〜(D)と共に、更にこれら以外のエチレン性不飽和モノマー0〜20重量%を共重合させて得られる請求項1記載の整髪用被膜形成樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2記載の整髪用被膜形成樹脂を含有する毛髪化粧料。

【公開番号】特開2004−99525(P2004−99525A)
【公開日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−263740(P2002−263740)
【出願日】平成14年9月10日(2002.9.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】