説明

敷物及び敷物の織成方法

【課題】竹製の線材を緯条として使用した敷物において、使用等に伴って竹製の線材にささくれが生じないようにして、使用感に優れるとともに、怪我をする危険がなく安全な敷物を提供する。
【解決手段】敷物(S)は、少なくとも表側に表れる竹製の線材である竹材(1,1a)の間に、これら竹材(1,1a)同士が接触しないようにするための、竹材(1,1a)よりやわらかい藺草(2)が緯条として配されて織成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷物及び敷物の織成方法に関するものである。更に詳しくは、竹製の線材を緯条として使用した敷物において、使用に伴い竹製の線材にささくれが生じるのを防止できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
材料として竹材を使用した敷物は、竹材の素材としての特性(撓み性等)を活かした独特の形態と使用感を有するものとなる。例えば、竹製の線材を緯条として使用した敷物としては、非特許文献1に掲載された「竹寝ござ」がある。この竹寝ござは、竹皮を表面側に揃えた竹製の線材を密に並べて、それらを竹皮でつないで長方形状に形成し、さらに裏張りをした構造を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ホームページ、インターネット<URL:http://www.taketora.co.jp/zakka/za0010.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記非特許文献1に掲載された竹寝ござには、次のような課題があった。すなわち、竹寝ござを構成している竹材は密に並んでいるため、互いに接触する。このような構造では、運搬時や使用時において竹材同士が繰り返し接触すると、竹繊維が切れることによる、いわゆる「ささくれ」が生じやすい。竹材にささくれが生じると、表面がザラつく等、使用感が悪くなってしまう。また、場合によっては、ささくれた竹繊維が使用者の皮膚に刺さってしまう等、怪我をする危険もあった。
【0005】
また、竹寝ござは、表面側に滑らかな竹皮が揃って露出する構造となっている。この構造によれば、竹寝ござの厚さにも左右されるが、使いやすい厚さの竹寝ござを製造するのであれば、材料として竹皮を含む竹の表面側の一部しか使用できないことになり、多くの無駄が生じていた。
【0006】
(本発明の目的)
本発明は、竹製の線材を緯条として使用した敷物において、使用等に伴って竹製の線材にささくれが生じないようにして、使用感に優れるとともに、怪我をする危険がなく安全な敷物及び敷物の織成方法を提供することを目的とする。
また、前記目的に加えて、敷物の材料となる竹材のほぼ全体を無駄なく有効に利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、竹製の線材を緯条として使用した敷物において、
少なくとも表側に表れる各竹製の線材の間に、竹製の線材よりやわらかい緯条が配されて織成されている、
敷物である。
【0008】
本発明は、竹製の線材よりやわらかい緯条が、藺草、合成樹脂製細管、紙縒の群から選ばれた一種または複数種がそれぞれ単独で、または複合して使用されたものである、
敷物である。
【0009】
本発明は、竹製の線材を緯条として使用した敷物の織成方法において、
少なくとも表側に表れる各竹製の線材の間に、竹製の線材よりやわらかい緯条を配するようにして織成する、
敷物の織成方法である。
【0010】
(作用)
本発明の敷物の作用を説明する。ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0011】
本発明の敷物は、少なくとも表側に表れる各竹製の線材(1,1a)の間に、例えば藺草、合成樹脂製細管、紙縒等の竹製の線材よりやわらかい緯条(2)が配されて織成されている。つまり、線材と線材の間に竹製の線材(1,1a)よりやわらかい緯条(2)が介在することによって、例えば、敷物を運搬したり使用する際に線材(1,1a)同士が接触することを防止することができる。
【0012】
なお、硬い竹製の線材(1,1a)とやわらかい緯条(2)が接触しても、硬い方の線材(1,1a)がささくれを生じることは防止され、やわらかい緯条(2)が多少傷んでささくれを生じたとしても、繊維自体がやわらかいため、使用者が怪我をする危険性は低い。
【0013】
さらに、前記のように竹製の線材(1,1a)にささくれが生じることを防止できるので、かならずしも滑らかな竹皮の部分を使用する必要はなく、線材(ひご等)に加工できる部分であれば材料として使用することができ、竹材のほぼ全体を無駄なく利用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、竹製の線材を緯条として使用した敷物において、使用等に伴って竹製の線材にささくれが生じることを防止しているので、表面にザラつきなどはなく、使用感に優れるとともに、使用者が切れた竹繊維で怪我をする危険がなく、安全性も高い敷物及び敷物の織成方法を提供することができる。また、敷物の材料となる竹材のほぼ全体を無駄なく有効に利用できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る敷物の組織の構造を示す一部を拡大した平面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を図面に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1、図2を参照する。
敷物Sは、竹製の線材、いわゆるひご状である竹材1、1a及び藺草2を緯条とし、経糸3と共に織成したものである。なお、藺草の代替として、適当な長さの合成樹脂製の細管(細パイプ)や紙縒(こより)を単独で、または複合して採用することもできる。
【0018】
敷物Sの織り方は、竹材1の特性である強い撓み性を考慮して、普通織りより経糸3の間隔をやや広くしてある大目織りである。使用される竹材1と竹材1aは表面を着色して色を違えてあり、藺草2は全部が同じ色である。
【0019】
敷物Sの表側には、図1に示すように、経糸方向に交互に表れた経織成部a及びbと、緯条方向に交互に表れた緯織成部c及びdが縦横に並ぶことによって、織成部領域ac、織成部領域ad、織成部領域bc、織成部領域bdの四種類の織成部領域が構成されている。これにより、敷物Sの全体には、互いに色合いが異なるいわばチェック柄様の模様が表れている。
【0020】
織成部領域acにおいては、藺草2だけが経糸方向に表れている。また、織成部領域adにおいては、竹材1と藺草2が経糸方向に交互に表れている。そして、織成部領域ac及び織成部領域adは、図1に示すように緯条方向に交互に連続して表れている。なお、織成部領域acの裏側には、織成部領域adと同様の織成部が表れ、織成部領域adの裏側には、織成部領域acと同様の織成部が表れる。
【0021】
織成部領域bcにおいては、竹材1aと藺草2が経糸方向に交互に表れている。また、織成部領域bdにおいては、藺草2だけが経糸方向に表れている。そして、織成部領域bc及び織成部領域bdは、図1に示すように緯条方向に交互に連続して表れている。なお、織成部領域bcの裏側には、織成部領域bdと同様の織成部が表れ、織成部領域bdの裏側には、織成部領域bcと同様の織成部が表れる。
【0022】
このように、前記各織成部領域ac、ad、bc、bdの各竹材1の間と各竹材1aの間及び経織成部a及びbの境界部の竹材1、1aの間には、藺草2が介在しており、竹材1、1a同士が接触しているところはない。
【0023】
(作用)
本実施例の敷物Sは、少なくとも使用側である表面に表れる各竹材1の間及び各竹材1aの間に、藺草2が緯条として介在するようにして織成されている。つまり、各竹材1の間及び各竹材1aの間に藺草2が介在することによって、竹材1、1a同士が接触することが防止できる。
【0024】
また、敷物Sを運搬したり、床等に敷いて使用する際にも、竹材1、1a同士が接触しないか、または接触しにくいので、竹材1、1aにささくれが生じることが防止される。敷物Sは、ささくれがある場合と相違して、切れた竹繊維で使用者が怪我をしてしまう危険がなく、安全性も高い。
【0025】
なお、竹材1、1aとそれよりやわらかい藺草2とが接触しても、硬い方の竹材1、1aがささくれを生じることは防止され、やわらかい緯条が多少傷んでささくれを生じたとしても、繊維自体がやわらかいので、使用者が怪我をする危険性は低い。
【0026】
これにより、敷物Sは、竹材1、1aの表面がザラついたりせず、使用感に優れている。また、敷物Sは、竹製の線材である竹材1、1a及び藺草2を緯条とした、いわゆる混織であるため、敷物S全体としては、竹材1、1aの特有の素材の硬さが藺草2のやわらかさで緩和されており、従来のように表面全面が竹材でつくられたものと比較して、独特のやわらかさや暖かみのある使用感がある。
【0027】
また、敷物Sは、前記のように竹材1、1aにささくれが生じることを防止できるので、かならずしも滑らかな竹皮の部分を使用する必要はなく、線材(ひご等)に加工できる部分であれば材料として使用することができる。これによって、竹材のほぼ全体を材料として無駄なく利用できる。
【0028】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
S 敷物
1 竹材
1a 竹材
2 藺草
3 経糸
a 経織成部
b 経織成部
c 緯織成部
d 緯織成部
ac 織成部領域
ad 織成部領域
bc 織成部領域
bd 織成部領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹製の線材を緯条として使用した敷物において、
少なくとも表側に表れる各竹製の線材(1,1a)の間に、竹製の線材(1,1a)よりやわらかい緯条(2)が配されて織成されている、
敷物。
【請求項2】
竹製の線材よりやわらかい緯条(2)が、藺草、合成樹脂製細管、紙縒の群から選ばれた一種または複数種がそれぞれ単独で、または複合して使用されたものである、
請求項1記載の敷物。
【請求項3】
竹製の線材を緯条として使用した敷物の織成方法において、
少なくとも表側に表れる各竹製の線材(1,1a)の間に、竹製の線材(1,1a)よりやわらかい緯条(2)を配するようにして織成する、
敷物の織成方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−268855(P2010−268855A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121278(P2009−121278)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(590001049)株式会社イケヒコ・コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】