説明

断線改修方法および断線改修用冶具

【課題】 高圧線側引下線および変圧器側引下線の断線改修作業に間接活線工法を適用でき、作業者の安全を確保し、且つ停電による需要家の不便に最小限に留めることを目的とする。
【解決手段】 本発明にかかる断線改修方法の構成は、筒状であって、高圧線側引下線(PDP112)および変圧器側引下線(PDC132)を挿入可能なカバー210と、先端に針状の突出部236aおよび236bを有する2つのボルト230aおよび230bと、カバー内に配置される2つのナット220aおよび220bと、2つのナットに接続される通電部材240と、を備える断線改修用冶具200を用い、ヤットコ状の遠隔操作棒150aでカバーを把持し、ヤットコ状の遠隔操作棒150bで高圧線側引下線および変圧器側引下線を把持してカバーに挿入し、フック状の遠隔操作棒150cでボルトをナットに螺合して締め付けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作棒を用いる間接活線工法によって、電柱に張架された高圧線および装柱された変圧器を接続する引下線の断線箇所を改修する断線改修方法、およびそれに用いられる断線改修用冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気事業者の発電所で発電され変電所で変電された電気は、電柱に張架されている高圧線を通じて送電され、かかる電柱に装柱された変圧器によって、送電時の電圧(例えば6600V)から、需要家で使用する電圧(例えば100Vまたは200V)に変圧され、引込み線を通じて需要家に供給される。
【0003】
上記の高圧線と変圧器とは高圧カットアウトを介して接続される。詳細には、高圧線側では、高圧線の途中に接続された引下線(高圧線側引下線)が引き下げられている。一方、変圧器側では、変圧器に接続された高圧カットアウトから引下線(変圧器側引下線)が延出している。そして、それらの引下線の端部の被覆を剥ぎ取って芯線を露出させ、かかる芯線をスリーブと呼ばれる金属製の筒状部材の末端に各々挿入する。その後、スリーブを圧着することにより、高圧線側引下線と変圧器側引下線ひいては高圧線と変圧器が接続される。
【0004】
なお、高圧線側引下線には高圧引下用エチレンプロピレンゴム絶縁電線(PDP:Plane transformer Drop wire ethylene Polyethylene rubber)が、変圧器側引下線には高圧引下用架橋ポリエチレン絶縁電線(PDC:Plane transformer Drop wire Crosslinked polyethylene)が用いられることが多い。このため、以下、高圧線側引下線をPDPと称し、変圧器側引下線をPDCと称する。
【0005】
上述したPDPとPDCの接続部には十分な強度を持たせているものの、強風等により繰り返し曲げ応力がかかると、かかる接続部において断線が発生することがある(PD線断線)。すると、需要家において停電が発生してしまうのはもちろんのこと、配電線事故を引き起こすおそれがあるため早急に断線を改修する必要がある。
【0006】
従来では、断線の改修作業は直接活線工法によって行われていた。直接活線工法では、作業箇所(充電部)に活線用防護具を装着し、作業者は、感電を防止するための絶縁加工が施された活線用保護具を着用して、通電している充電部に直接触れて作業を行う。しかしながら、活線用防護具や活線用保護具によって作業者の安全性を確保しているものの、直接活線工法は充電部に直接触れる作業である以上、作業者の感電事故等の発生を完全に回避しきれるとは言い難い。
【0007】
また直接活線工法では、作業責任者1名および柱上作業員2名の計3名の作業員で作業にあたる必要がある。しかし、通常、作業員は2名で作業現場に出向しているため、かかる作業現場において直接活線工法による改修作業が必要となった場合には、更に1名の作業員を応援要請しなくてはならない。すると、要請した作業員が到着するまでは改修作業に着手することができず、需要家における停電の長時間化を招いてしまう。
【0008】
一方、近年では直接活線工法に替えて間接活線工法が主流になりつつある。間接活線工法では、作業者は、絶縁加工が施された間接活線工法専用の遠隔操作棒を用い、作業箇所(充電部)の近接範囲外から充電部に直接触れずに作業を行う。これにより、作業者の感電災害のリスクを極めて少なくすることができ、且つ活線用保護具の着用や活線用防護具の装着が不要となるため、作業者の負担の軽減や作業時間の短縮を図ることも可能となる。また間接活線工法であれば2名の作業員で作業を行うことができるため、応援要請をすることなく改修作業に着手することが可能である。したがって、需要家の停電時間の短縮が図れる。
【0009】
上記のように多くの利点を有する間接活線工法であるが、これを直接活線工法に替えて適用するためには、間接活線工法専用の遠隔操作棒およびそれに取り付けられる先端具に加えて、各作業現場に応じた間接活線工法用の冶具が必要になる。かかる冶具の具体例として、特許文献1には、間接活線工法を用いて本線(高圧線)と引下線とを接続する引下線接続機材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−312542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の特許文献1の冶具によれば、高圧線と引下線との接続作業に間接活線工法を適用することができる。しかしながら、間接活線工法によってPDPとPDCとを接続する冶具は未だ開発されておらず、当然にして、間接活線工法によるPDPとPDCとの断線改修工法は確立されていない。したがって、PDPとPDCとの断線改修作業は直接活線工法を適用せざるを得ず、それに伴う問題は何ら解決されていないのが現状である。
【0012】
ここで、特許文献1の冶具を、PDPおよびPDCの断線改修に使用できればよいが、高圧線および引下線の接続と、PDPおよびPDCの接続とでは作業内容が異なるため使用できない。高圧線に引下線を接続する場合には、引下線が何にも接続されていない状態であるため、あらかじめ地上で引下線の先端に治具を取り付けることができる。したがって高所では高圧線に接続する作業のみとなるため、一人で作業が可能である。これに対しPDPとPDCの断線改修では、両方とも高所で垂れ下がった状態となっている。このため、高所でPDPおよびPDCの両方を治具に差し込んで固定しなくてはならず、事実上作業不可能である。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑み、高圧線側引下線および変圧器側引下線の断線改修作業に間接活線工法を適用でき、作業者の安全を確保し、且つ停電による需要家の不便に最小限に留めることが可能な断線改修方法および断線改修用冶具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかる断線改修方法の代表的な構成は、遠隔操作棒を用いる間接活線工法によって、電柱に張架された高圧線および装柱された変圧器を接続する引下線の断線箇所を改修する断線改修方法であって、絶縁材料からなり両端が開口した筒状であって、高圧線から引き下げられた高圧線側引下線を一方の開口に、変圧器に接続された高圧カットアウトから延出された変圧器側引下線を他方の開口に挿入可能なカバーと、導電材料からなり螺刻された軸部および軸部の先端に設けられた針状の突出部を有する2つのボルトと、導電材料からなりカバーの内部においてその両端近傍に各々配置されボルトを螺合される2つのナットと、導電材料からなり2つのナットに両端が接続される通電部材と、を備える断線改修用冶具を用い、ヤットコ状の先端具が取り付けられた1つめの遠隔操作棒でカバーを把持し、ヤットコ状の先端具が取り付けられた2つめの遠隔操作棒で、高圧線から引き下げられた高圧線側引下線を把持してカバーの一方の開口に挿入し、2つめの遠隔操作棒で、変圧器から出ている変圧器側引下線を把持してカバーの他方の開口に挿入し、ボルト締付用の先端具が取り付けられた遠隔操作棒で、ボルトをナットに螺合して締め付けることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、遠隔操作棒を用いて、高圧線側引下線(PDP)および変圧器側引下線(PDC)を断線改修用冶具のカバーに挿入した後にボルトを締め付けるだけで、かかるPDPおよびPDCの断線箇所を改修することができる。すなわち、間接活線工法を用いてPDPおよびPDCの断線改修作業を行うことができる。したがって、作業者のより高い安全性が得られるとともに、直接活線工法において必要であった3人目の作業者が必要なくなるため直ちに改修作業に着手することができ、停電時間を短縮し、需要家の不便を最小限に留めることが可能となる。
【0016】
また、上記の断線改修用冶具により接続されたPDPおよびPDCでは、2つのボルトの針状の突出部が接触する。そして、その2つのボルト、かかるボルトを螺合された2つのナット、および2つのナットに接続された通電部材を介してPDPおよびPDCが通電する。したがって、本発明の断線改修方法では、PDPおよびPDCの被覆の剥ぎ取りが不要である。このため、作業工程の削減、ひいては作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0017】
上記の1つめの遠隔操作棒は、電柱、または作業員が搭乗する高所作業車のバケットに固定されるとよい。これにより、作業員は1つめの遠隔操作棒を手に持つ必要がなくなるため両手を自由に使うことができ、作業性を格段に向上させることが可能となる。
【0018】
上記のボルトの頭部は環状であるとよい。かかる構成によれば、ボルトを回転させる際に、ボルトの頭部を、ヤットコ状の先端具で把持するだけでなく、フック状の先端具を引っ掛けて操作することが可能となり、作業性の向上を図れる。
【0019】
上記のカバーの外面にはゴムコーティングが施されているとよい。これにより、ゴムコーティングが滑り止めとして機能するため、遠隔操作棒によってカバーをより確実に把持可能となる。したがって、作業性の向上を図ることができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明にかかる断線改修用冶具の代表的な構成は、間接活線工法による、電柱に張架された高圧線および装柱された変圧器を接続する引下線の断線箇所の改修作業に用いられる断線改修用冶具であって、絶縁材料からなり両端が開口した筒状であって、高圧線から引き下げられた高圧線側引下線を一方の開口に、変圧器に接続された高圧カットアウトから延出された変圧器側引下線を他方の開口に挿入可能なカバーと、導電材料からなり螺刻された軸部および軸部の先端に設けられた針状の突出部を有する2つのボルトと、導電材料からなりカバーの内部においてその両端近傍に各々配置されボルトを螺合される2つのナットと、導電材料からなり2つのナットに両端が接続される通電部材と、を備えることを特徴とする。
【0021】
上述した断線改修方法の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、断線改修用冶具にも適用可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高圧線側引下線および変圧器側引下線の断線改修作業に間接活線工法を適用でき、作業者の安全を確保し、且つ停電による需要家の不便に最小限に留めることが可能な断線改修方法および断線改修用冶具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態にかかる断線改修方法および断線改修用冶具を適用する作業現場を示す図である。
【図2】本実施形態にかかる断線改修用冶具を示す図である。
【図3】ボルト締付時のカバー内部の状態を示す断面図である。
【図4】本実施形態にかかる断線改修方法について説明する図である。
【図5】本実施形態にかかる断線改修方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
(作業現場)
図1は、本実施形態にかかる断線改修方法および断線改修用冶具を適用する作業現場を示す図である。図1に示す作業現場100では、電柱102に、高圧線110が張架されていて、かかる高圧線110によって発電所(不図示)で発電され変電所(不図示)で変電された電気が送電される。高圧線110は、電柱102に装柱される変圧器120に高圧カットアウト130を介して接続されていて、高圧線110を流れる電気は、変圧器120において送電時の電圧(例えば6600V)から、需要家で使用する電圧(例えば100Vまたは200V)に変圧される。
【0026】
高圧カットアウト130とは、変圧器120を保護するための装置であり、かかる変圧器120の一次側電源側に接続されている。この高圧カットアウト130から延出している変圧器側引下線(以下、PDC132と称する。)と、高圧線110の途中に接続されてそこから引き下げられた高圧線側引下線(以下、PDP112と称する。)とを接続することにより、高圧線110と変圧器120(厳密には高圧カットアウト130)とが接続される。
【0027】
図示は省略するが、電柱102への変圧器120の新設時において、PDP112とPDC132を接続する際には、PDP112の端部の被覆112bおよびPDC132の端部の被覆132bを剥ぎ取り、各々の芯線112aおよび132aを露出させる(図3参照)。そして、それらの芯線112aおよび132aを、金属製の筒状部材からなるスリーブ(不図示)に挿入し、そのスリーブを圧着することにより接続部140が形成され、PDP112およびPDC132が接続される。
【0028】
接続部140は、スリーブの上から収縮チューブ(不図示)が被装されたり、絶縁テープ(不図示)を巻きつけられたりすること等により絶縁と防水を図っている。しかしながら、強風等により繰り返し曲げ応力がかかると、接続部140近傍において断線が発生することがある。従来では、このPDP112およびPDC132の接続部140の断線を改修する際に間接活線工法を適用することができなかったため、直接活線工法によって改修作業を行わざるを得ず、これに伴う様々な不具合が生じていた。
【0029】
そこで本実施形態では、PDP112およびPDC132の断線改修作業に間接活線工法を適用でき、作業者の安全確保、停電時間の短縮、および作業効率の向上が可能な断線改修方法および断線改修用冶具を提供することを目的としている。なお、理解を容易にするために、以下の説明では、まず断線改修用冶具について述べた後に、それを用いた断線改修方法について詳述する。
【0030】
(断線改修用冶具)
図2は、本実施形態にかかる断線改修用冶具を示す図であり、図2(a)は断線改修用冶具の斜視図であり、図2(b)は図2(a)のA−A断面図であり、図2(c)は図2(a)のB方向からの矢視図である。図2に示す断線改修用冶具(以下、冶具200と称する。)は、高圧線110および変圧器120を接続するPDP112およびPDC132の断線箇所の改修作業に間接活線工法を適用する際に用いられる冶具である。
【0031】
図2(a)に示すように、冶具200は筒状のカバー210を備える。カバー210はその両端が開口していて、高圧線110から引き下げられたPDP112を一方の開口210aに、変圧器120に接続された高圧カットアウト130から延出されたPDC132を他方の開口210bに挿入可能である(図3参照)。
【0032】
上記のカバー210は絶縁材料から構成される。これにより、充電部が露出することなく、安全に施設される。更に本実施形態では、カバー210の外面にはゴムコーティング(不図示)が施されている。これにより、ゴムコーティングが滑り止めとして機能するため、後述する遠隔操作棒150(図4参照)によってカバー210をより確実に把持可能となり、作業性の向上が図れる。またゴムコーティングは絶縁材料であるためカバー210の絶縁性を阻害することがない。
【0033】
図2(b)に示すように、カバー210の内部において、その両端(開口210aおよび210b)近傍には、導電材料からなる2つのナット220aおよび220bが各々配置されている。そして、これらのナット220aおよび220bには、導電材料からなる通電部材240の両端が接続されている。
【0034】
また上記のナット220aおよび220bには、導電材料からなるボルト230aおよび230bが各々螺合される。かかるボルト230aおよび230bは、表面に螺刻を有する軸部232aおよび232b、およびその軸部232aおよび232bの一方の先端(上端)に設けられた頭部234aおよび234bから構成される。
【0035】
本実施形態において、ボルト230aおよび230bの頭部234aおよび234bは環状である。これにより、後に詳述するように、ボルト230aおよび230bを回転させる際においてその頭部234aおよび234bを、ヤットコ状の先端具152(図4(a)参照)で把持できるだけでなく、フック状の先端具154(図4(b)参照)を引っ掛けて操作することが可能となり、作業性の向上を図れる。なお、かかる頭部234aおよび234bの形状は一例であって、これに限定するものではなく、例えば一般的なボルトの頭部と同様の形状であってもよい。
【0036】
また本実施形態の特徴として、ボルト230aおよび230bは、その他方の先端(下端)すなわち軸部軸部232aおよび232bの先端に針状の突出部236aおよび236bを有する。図3は、ボルト230aおよび230b締付時のカバー210内部の状態を示す断面図である。
【0037】
図3(a)に示すように、ボルト230aおよび230bがナット220aおよび220bに完全に螺合していない状態において、上記説明したように、カバー210の一方の開口210aにPDP112を、他方の開口210bにPDC132を挿入する。この状態からボルト230aおよび230bをナット220aおよび220bに螺合していくと、図3(b)に示すように、軸部232aおよび232bの先端に設けられた突出部236aおよび236bが、PDP112の被覆112bおよびPDC132の被覆132bに突き刺さる。
【0038】
そして、ボルト230aおよび230bをナット220aおよび220bに完全に螺合すると、突出部236aおよび236bは、図3(c)に示すように被覆112bおよび132bを貫通してPDP112の芯線112aおよびPDC132の芯線132aに至る。すなわち、突出部236aおよび236bが芯線112aおよび132aに接触する。
【0039】
上記構成により、図3(c)の破線にて示すように、導電材料からなる、PDP112の芯線112a、ボルト230a、ナット220a、通電部材240、ナット220b、ボルト230b、PDC132の芯線132aにより導電経路が形成され、PDP112およびPDC132が通電する。したがって、冶具200およびこれを用いた断線改修方法では、PDP112およびPDC132の被覆112bおよび132bの剥ぎ取りが不要となり、その作業工程の削減、ひいては作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0040】
(断線改修方法)
次に、上述した冶具200を用いた断線改修方法について説明する。既に述べたように、本実施形態にかかる断線改修方法では、遠隔操作棒を用いる間接活線工法によって、電柱102に張架された高圧線110および装柱された変圧器120を接続する引下線(PDP112およびPDC132)の断線箇所を改修する。
【0041】
図4および図5は、本実施形態にかかる断線改修方法について説明する図である。なお、接続部140の上側(PDP112側)で断線が発生した場合には、PDC132先端に接続部140(スリーブ)が残る。一方、接続部140の下側(PDC132側)で断線した場合には、PDP112の先端に接続部140(スリーブ)が残る。いずれの場合であっても同様の作業となるため、本実施形態では、PDC132先端に接続部140(スリーブ)が残った場合を例示して説明する。
【0042】
本実施形態にかかる断線改修方法では、まず図4(a)に示すように、作業員104は、遠隔操作棒150の先端に取り付けられたヤットコ状の先端具152(以下ヤットコ状の遠隔操作棒150aと称する。)によって冶具200(厳密にはカバー210)を把持する。すなわちヤットコ状の遠隔操作棒150aは1つめの遠隔操作棒である。
【0043】
本実施形態では、冶具200(カバー210)を把持したヤットコ状の遠隔操作棒150a(1つめの遠隔操作棒)を、作業員104が搭乗する高所作業車(不図示)のバケット106に固定する。これにより、作業員104は1つめの遠隔操作棒であるヤットコ状の遠隔操作棒150aを手に持つ必要がなくなるため、その後の作業において両手を自由に使うことができる。したがって、作業性を格段に向上させることが可能となる。またバケット106に固定することによりヤットコ状の遠隔操作棒150aにぐらつきが生じなくなるため、作業時における冶具200の位置を安定させることができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、ヤットコ状の遠隔操作棒150aを高所作業車のバケット106に固定する場合を例示したが、これに限定するものではない。例えば、ヤットコ状の遠隔操作棒150aは電柱102に固定されてもよい。これによっても上述した利点を得ることが可能となる。
【0045】
冶具200を把持したヤットコ状の遠隔操作棒150aをバケット106に固定したら、作業員104は、同じく図4(a)に示す2つめの遠隔操作棒150の先端に取り付けられたヤットコ状の先端具152(以下、ヤットコ状の遠隔操作棒150bと称する。)でPDP112(図1の高圧線110から引き下げられた高圧線側引下線)を把持し、それをカバー210の一方の開口210a(図2参照)に挿入する。
【0046】
続いて、作業員104は、ヤットコ状の遠隔操作棒150bからヤットコ状の先端具152を取り外し、ボルト締付用の先端具を遠隔操作棒150に取り付ける。本実施形態では、上述したようにボルト230aおよび230bの頭部234aおよび234bは環状であるため(図2参照)、この環部分に引っ掛けることが可能なフック状の先端具154(図4(b)参照)をボルト締付用の先端具として用いる。以下、このフック状の先端具154が取り付けられた遠隔操作棒150を、フック状の遠隔操作棒150cと称する。
【0047】
そして、作業員104は、図4(b)に示すように、フック状の遠隔操作棒150cを頭部234aの環部分に引っ掛けてボルト230aを回転させ、かかるボルト230aをナット220a(図2参照)に螺合して締め付ける。
【0048】
次に、作業員104は、図5(a)に示すように、上述したヤットコ状の遠隔操作棒150bでPDC132(変圧器120(厳密には高圧カットアウト130)から出ている変圧器側引下線)を把持し、それをカバー210の他方の開口210b(図2参照)に挿入する。そして、図5(b)に示すように、上述したフック状の遠隔操作棒150cを頭部234bの環部分に引っ掛けてボルト230bを回転させ、かかるボルト230bをナット220b(図2参照)に螺合して締め付ける。
【0049】
上述した作業によって、冶具200がPDP112およびPDC132に取り付けられる。これにより、かかる冶具200の内部では、突出部236aおよび236bが芯線112aおよび132aに接触することでPDP112およびPDC132間に導電経路が形成されて(図3(c)参照)、それらが通電し、改修作業が完了する。
【0050】
上記説明したように、本実施形態にかかる冶具200(断線改修用冶具)およびそれを用いた断線改修方法によれば、遠隔操作棒150を用いて、高圧線側引下線(PDP112)および変圧器側引下線(PDC132)を冶具200のカバー210に挿入した後にボルト230aおよび230bを締め付けるだけで、その断線箇所を改修することができる。すなわち、PDP112およびPDC132の断線改修作業に間接活線工法を適用することが可能となる。したがって、作業者はより安全な環境で作業ができ、且つ直接活線工法において必要であった3人目の作業者が必要がなくなるため直ちに改修作業に着手でき、停電時間ひいては需要家の不便を最小限に留めることが可能となる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、遠隔操作棒を用いる間接活線工法によって、電柱に張架された高圧線および装柱された変圧器を接続する引下線の断線箇所を改修する断線改修方法、およびそれに用いられる断線改修用冶具として利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
100…作業現場、102…電柱、104…作業員、106…バケット、110…高圧線、112…PDP、112a…芯線、112b…被覆、120…変圧器、130…高圧カットアウト、132…PDC、132a…芯線、132b…被覆、140…接続部、150…遠隔操作棒、150a…ヤットコ状の遠隔操作棒、150b…ヤットコ状の遠隔操作棒、150c…フック状の遠隔操作棒、152…ヤットコ状の先端具、154…フック状の先端具、200…冶具、210…カバー、210a…開口、210b…開口、220a…ナット、220b…ナット、230a…ボルト、230b…ボルト、232a…軸部、232b…軸部、234a…頭部、234b…頭部、236a…突出部、236b…突出部、240…通電部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作棒を用いる間接活線工法によって、電柱に張架された高圧線および装柱された変圧器を接続する引下線の断線箇所を改修する断線改修方法であって、
絶縁材料からなり両端が開口した筒状であって、前記高圧線から引き下げられた高圧線側引下線を一方の開口に、前記変圧器に接続された高圧カットアウトから延出された変圧器側引下線を他方の開口に挿入可能なカバーと、
導電材料からなり螺刻された軸部および該軸部の先端に設けられた針状の突出部を有する2つのボルトと、
導電材料からなり前記カバーの内部においてその両端近傍に各々配置され前記ボルトを螺合される2つのナットと、
導電材料からなり前記2つのナットに両端が接続される通電部材と、
を備える断線改修用冶具を用い、
ヤットコ状の先端具が取り付けられた1つめの前記遠隔操作棒で前記カバーを把持し、
ヤットコ状の先端具が取り付けられた2つめの前記遠隔操作棒で、前記高圧線から引き下げられた高圧線側引下線を把持して前記カバーの一方の開口に挿入し、
前記2つめの遠隔操作棒で、前記変圧器から出ている変圧器側引下線を把持して前記カバーの他方の開口に挿入し、
ボルト締付用の先端具が取り付けられた前記遠隔操作棒で、前記ボルトを前記ナットに螺合して締め付けることを特徴とする断線改修方法。
【請求項2】
前記1つめの遠隔操作棒は、前記電柱、または作業員が搭乗する高所作業車のバケットに固定されることを特徴とする請求項1に記載の断線改修方法。
【請求項3】
前記ボルトの頭部は環状であることを特徴とする請求項1または2に記載の断線改修方法。
【請求項4】
前記カバーの外面にはゴムコーティングが施されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の断線改修方法。
【請求項5】
間接活線工法による、電柱に張架された高圧線および装柱された変圧器を接続する引下線の断線箇所の改修作業に用いられる断線改修用冶具であって、
絶縁材料からなり両端が開口した筒状であって、前記高圧線から引き下げられた高圧線側引下線を一方の開口に、前記変圧器に接続された高圧カットアウトから延出された変圧器側引下線を他方の開口に挿入可能なカバーと、
導電材料からなり螺刻された軸部および該軸部の先端に設けられた針状の突出部を有する2つのボルトと、
導電材料からなり前記カバーの内部においてその両端近傍に各々配置され前記ボルトを螺合される2つのナットと、
導電材料からなり前記2つのナットに両端が接続される通電部材と、
を備えることを特徴とする断線改修用冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−205323(P2012−205323A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64859(P2011−64859)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)