説明

断路器可動接触部の調整装置

【課題】感電や誘導の危険を避けつつ、地上から可動接触部表面の酸化被膜を確実に落とすことができる断路器可動接触部の調整装置を提供することである。
【解決手段】
操作棒11の先端部に取り付けられた保持部14は、断路器が開いている状態で可動接触部16の通電部17を磨くための研磨部材13を保持するとともに、研磨部材13が可動接触部16の通電部17に接触して摺動するようにガイドする。可動接触部16の通電部17を研磨清掃する際には、操作棒11により、保持部14を可動接触部の通電部の近傍まで持ち上げ、保持部14の研磨部材13を可動接触部16の通電部17に接触させ、保持部14でガイドされて摩擦させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みを有した平板状の両長辺側壁に通電部が形成された可動接触部を調整する断路器可動接触部の調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
断路器は、遮断器により電力系統から切り離された電路の開閉を行うものであり、断路器の開閉接触部は可動接触部と固定接触部とからなっている。断路器が閉じた状態では可動接触部は固定接触部に接触し、断路器が開いた状態では可動接触部は固定接触部から離脱した状態となる。通常、可動接触部は厚みを有した平板状に形成され、その両長辺側壁に固定接触部と接触して通電するための通電部が形成されている。通常、通電部には銀メッキが施されている。
【0003】
断路器の可動接触部の表面に酸化被膜が生成した場合には、可動接触部を固定接触部に接触させても不応動となることがある。その際は、断路器の入切操作を数回行い、可動接触部を固定接触部に擦り合わせて可動接触部表面の酸化被膜を落としたり、断路器の通電を停止して可動接触部を磨いたりすることによって対処している。
【0004】
通電を停止して断路器開閉接触部の接触面の研磨清掃を行うことなく、長期間開閉操作を行わない断路器開閉接触部の接触面に生じる化合物を原因とする通電不良あるいは溶損を防止できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−83539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものでは、使用電力の変化による通電電流の変化によって、軸状の可動接触片を回転させて接触面を擦り合わせ、摺動して研磨することにより、接触面の化合物を除去するようにしたものであり、可動接触片が軸状のものに限られる。また、接触面を擦り合わせ摺動するだけであるので、接触面の化合物を十分に除去できない場合がある。
【0006】
接触面の化合物を十分に除去できない場合には、断路器の操作時に不応動となるので、断路器の可動接触部表面の酸化被膜を落とすことになる。また、可動接触部表面の酸化被膜を落とす対象の断路器が開いていても、その断路器の周囲には隣接充電部があるので感電や誘導の危険がある。酸化被膜を落とす作業は断路器部架台に上って行うことになるため、高所作業(約2.5m程度)となり危険である。
【0007】
本発明の目的は、感電や誘導の危険を避けつつ、地上から可動接触部表面の酸化被膜を確実に落とすことができる断路器可動接触部の調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係わる断路器可動接触部の調整装置は、断路器が閉じた状態では、厚みを有した平板状の両長辺側壁に通電部が形成された可動接触部の前記通電部を固定接触部で把持し、前記断路器が開いた状態では、前記可動接触部の通電部を前記固定接触部から離脱させるようにした断路器開閉接触部の前記可動接触部を調整する断路器可動接触部の調整装置において、前記断路器が開いている状態で前記可動接触部の通電部を磨くための研磨部材と、前記研磨部材を保持するとともに前記研磨部材が前記可動接触部の前記通電部に接触して摺動するようにガイドするための保持部と、前記保持部を前記可動接触部の通電部の近傍まで持ち上げ前記保持部の前記研磨部材を前記可動接触部の通電部に接触させ前記保持部でガイドされて摩擦させるための操作棒とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係わる断路器可動接触部の調整装置は、請求項1の発明において、前記保持部は、前記操作棒の先端部に取り付けられた断面がL字形状のL字部材であり、前記L字部材の屈曲部の内角部分に前記研磨部材を配置し、前記操作棒により、前記研磨部材を前記可動接触部の通電部に接触させるとともに前記L字部材の屈曲平坦部を前記可動接触部の平坦部に接触させ、前記操作棒により、前記L字部材の屈曲平坦部が前記可動接触部の平坦部にガイドされて摺動するように、前記L字部材を前記可動接触部の長辺方向に動かして前記研磨部材で前記通電部を研磨することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係わる断路器可動接触部の調整装置は、請求項1の発明において、前記保持部は、前記操作棒の先端部に取り付けられ前記可動接触部の平坦部と接触する本体と、前記可動接触部の両短辺方向から前記可動接触部の前記通電部に向かい合うように前記本体から突出して設けられた断面が円弧状の一対の円弧部材とを有し、一対の前記円弧部材のそれぞれの前記通電部に向かい合う円弧内側部分に前記研磨部材を配置し、一対の前記円弧部材間の間隔を調整するための間隔調整部を前記保持部の本体に設け、前記操作棒により、前記保持部を前記可動接触部の通電部の近傍まで持ち上げ、前記可動接触部の平坦部に前記保持部の本体を接触させ、前記間隔調整部により、一対の前記円弧部材の前記研磨部材がそれぞれ前記可動接触部の前記通電部に接触して前記可動接触部を挟むように一対の前記円弧部材間の間隔を調整し、前記操作棒により、前記保持部の本体が前記可動接触部の平坦部にガイドされて摺動するように、前記円弧部材を前記可動接触部の長辺方向に動かしての前記研磨部材で前記通電部を研磨することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係わる断路器可動接触部の調整装置は、請求項1の発明において、前記保持部は、前記操作棒の先端部に取り付けられ前記可動接触部の平坦部と接触する本体と、前記可動接触部の両短辺方向から前記可動接触部の前記通電部に向かい合うように前記本体から突出して設けられた一対の平板部材とを有し、一対の前記平板部材のそれぞれの前記通電部に向かい合う側に前記研磨部材を配置し、一対の前記平板部材間の間隔を調整するための間隔調整部を前記保持部の本体に設け、一対の前記平板部材を前記可動接触部の厚み方向に駆動するための駆動部を設け、前記操作棒により、前記保持部を前記可動接触部の通電部の近傍まで持ち上げ、前記可動接触部の平坦部に前記保持部の本体を接触させ、前記間隔調整部により、一対の前記平板部材の前記研磨部材がそれぞれ前記可動接触部の前記通電部に接触して前記可動接触部を挟むように一対の前記平板部材間の間隔を調整し、前記駆動部により、前記平板部材を前記可動接触部の厚み方向に動かして前記研磨部材で前記通電部を研磨することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明に係わる断路器可動接触部の調整装置は、請求項4の発明において、前記研磨部材に代えて、金属端子を一対の前記平板部材のそれぞれの前記通電部に向かい合う側に配置し、前記金属端子に接続されたリード線に電圧を印加して電流を測定し前記可動接触部の抵抗値を測定する抵抗測定器を設け、前記操作棒により、前記保持部を前記可動接触部の通電部の近傍まで持ち上げ、前記間隔調整部により、一対の前記平板部材の前記金属端子がそれぞれ前記可動接触部の前記通電部に接触して前記可動接触部を挟むように一対の前記平板部材間の間隔を調整し、前記抵抗測定器により、電圧を印加して電流を測定し前記可動接触部の抵抗値を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、操作棒の保持部は可動接触部の通電部を磨くための研磨部材を保持し、研磨部材が可動接触部の通電部に接触して摺動するようにガイドするので、研磨部材を可動接触部の通電部に適切に接触させることができ、また、地上からの操作棒の操作により、可動接触部の通電部を研磨部材で研磨でき、可動接触部表面の酸化被膜を確実に落とすことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、L字部材の屈曲部の内角部分に研磨部材を配置し、操作棒により、研磨部材を可動接触部の通電部に接触させるとともにL字部材の屈曲平坦部を可動接触部の平坦部に接触させるので、可動接触部の両長辺側壁の通電部を片方ずつ研磨できる。
【0015】
請求項3の発明によれば、一対の円弧部材のそれぞれの通電部に向かい合う円弧内側部分に研磨部材を配置し、可動接触部を挟むように一対の円弧部材間の間隔を調整して研磨部材で通電部を研磨するので、可動接触部の両長辺側壁の通電部を一度に研磨できる。
【0016】
請求項4の発明によれば、一対の平板部材のそれぞれの通電部に向かい合う側に研磨部材を配置し、可動接触部を挟むように一対の平板部材間の間隔を調整して、駆動部により平板部材を動かして研磨部材で通電部を研磨するので、研磨のための操作を自動で行える。従って、作業効率が向上する。
【0017】
請求項5の発明によれば、研磨部材に代えて、金属端子を一対の平板部材のそれぞれの通電部に向かい合う側に配置し、金属端子に接続されたリード線に電圧を印加して電流を測定し可動接触部の抵抗値を測定するので、可動接触部の通電部の研磨清掃を適切に行えたかどうかを確認することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる断路器可動接触部の調整装置の構成図である。操作棒11は絶縁材で伸縮調整可能に形成されている。操作棒11は、第1の筒体11a、第2の筒体11b、第3の筒体11cから構成され、第3の筒体11cは第2の筒体11bに収納可能に、第2の筒体11bは第1の筒体11aに収納可能になっている。例えば、第1の筒体11aから第2の筒体11bを引き出し、長さを調整して調整部12aにて第2の筒体11bの引き出し位置で固定し、同様に、第2の筒体11bから第3の筒体11cを引き出し、長さを調整して調整部12bにて第3の筒体11cの引き出し位置で固定する。これにより、操作棒11の全体の長さを調整する。操作棒11の長さは、断路器の可動接触部が地上から位置する距離(約2.5m)より多少長めの3m程度まで伸縮調整可能となっている。また、操作棒の先端部には、断路器の可動接触部の通電部を磨くための研磨部材13を保持するための保持部14がヒンジ機構15により取り付けられている。図1では保持部14として、断面がL字形状のL字部材である場合を示している。
【0019】
図2はL字形状の保持部14の側面図であり、図2(a)はL字部材の屈曲部の内角部分が下方に位置する状態の側面図、図2(b)はL字部材の屈曲部の内角部分が上方に位置する状態の側面図である。図2(a)に示すように、L字部材の屈曲部の内角部分に研磨部材13が配置される。研磨部材13は可動接触部の通電部の表面に生成した酸化被膜を研磨するものであり、可動接触部の通電部を傷つけずに酸化被膜を研磨できる材質、例えば、ナイロンパットが用いられる。
【0020】
後述するように、研磨部材13は可動接触部の通電部に接触するように、また、L字部材の屈曲平坦部14aは可動接触部の平坦部に接触するように位置決めされる。図2(a)のヒンジ機構15を矢印A方向に回動させると、図2(b)に示すように、L字部材の屈曲部の内角部分が上方に位置する状態となる。
【0021】
図3は可動接触部16の一部切り欠き斜視図である。可動接触部16の本体は電気伝導性のある金属で厚みを有した平板状に形成されている。そして、その両長辺側壁に、例えば銀メッキで通電部17が形成されている。この通電部17は断路器の固定接触部に接触して断路器の閉状態となる。図4は可動接触部16が固定接触部18に接触した状態を示す一部切り欠き側面図である。可動接触部16の通電部17が固定接触部18で把持されて接触し、この状態で断路器は閉状態となる。
【0022】
図5は、図2(b)に示したL字部材の屈曲部の内角部分が上方に位置する状態で可動接触部16の通電部17を研磨する状態の側面図である。断路器が開いている状態では、図3に示すように、平板状の可動接触部16は平坦部が上下方向に位置する。そこで、操作員は地上から操作棒11を可動接触部16の通電部17の近傍まで持ち上げ、図5に示すように保持部14の研磨部材13が可動接触部16の通電部17に接触するように位置決めする。その際に、L字部材の屈曲平坦部14aより可動接触部16の平坦部を支持する。そして、L字部材の屈曲平坦部14aが可動接触部16の平坦部にガイドされて摺動するように、L字部材を可動接触部16の長辺方向に動かす。
【0023】
図6は図5の矢印B方向から見た一部切り欠き平面図である。研磨部材13が可動接触部16の通電部17に接触し、L字部材の屈曲平坦部14aが可動接触部16の平坦部に接触した状態で、図6の矢印C方向にL字部材(保持部14)を摺動させる。これにより、L字部材の屈曲平坦部14aが可動接触部16の平坦部にガイドされて摺動し、L字部材の保持部14が可動接触部16の長辺方向に動き、研磨部材13で通電部17を研磨することになる。
【0024】
第1の実施の形態によれば、保持部14であるL字部材の屈曲部の内角部分に研磨部材13を配置し、操作棒11により、研磨部材13を可動接触部16の通電部17に接触させ、L字部材の屈曲平坦部14aを可動接触部16の平坦部にガイドされて動かすので、地上からの操作棒11の操作により、可動接触部16の通電部17を研磨部材13で研磨できる。保持部14はL字部材であるので、可動接触部16の両長辺側壁の通電部17を片方ずつ研磨できる。操作棒11は絶縁材料であるので、隣接充電部が存在する場合であっても地上から安全に作業できる。
【0025】
図7は本発明の第2の実施の形態に係わる断路器可動接触部の調整装置における保持部の構成図、図8は図7の矢印D方向から見た平面図である。この第2の実施の形態は、第1の実施の形態におけるL字部材の保持部に代えて、保持部14を、可動接触部16の平坦部と接触する保持部本体19と、保持部本体19から突出して設けられた断面が円弧状の一対の円弧部材20a、20bとで形成したものである。
【0026】
保持部本体19は操作棒11の先端部に取り付けられ、操作棒11により持ち上げられて可動接触部16の平坦部と接触するように位置決めされる。一対の円弧部材20a、20bは、保持部本体19から可動接触部16の両短辺方向に突出して設けられ、可動接触部16の通電部17に向かい合うように配置されている。そして、円弧部材20a、20bの通電部17に向かい合う円弧内側部分に研磨部材13が配置され、アーム21a、21bの伸縮により円弧部材20a、20bの位置を調整できるようになっている。
【0027】
すなわち、保持部本体19に設けられたモータ22と、モータの回転を往復運動に変換する駆動機構部と、アーム21a、21bとからなる間隔調整部により、一対の円弧部材20a、20bの研磨部材13がそれぞれ可動接触部16の通電部17に接触して、可動接触部16の両長辺側壁の通電部17を挟むように一対の円弧部材20a、20b間の間隔を調整する。
【0028】
図9は間隔調整部のモータ22の駆動機構部の一部切り欠き側面図である。図9に示すように、アーム21a、21bにはラック23が設けられ、例えば、モータ22でピニオン24を右回転させることにより、アーム21aを矢印E1方向に移動させ、アーム21bを矢印E2方向に移動させる。同様に、ピニオン24を左回転させることにより、アーム21aを矢印E1の反対方向に移動させ、アーム21bを矢印E2の反対方向に移動させる。
【0029】
図10は、一対の円弧部材20a、20bの研磨部材13で可動接触部16の両長辺側壁の通電部17を挟んだ状態の側面図である。図10に示す状態にするには、モータ22で駆動機構部を介してアーム21a、21bを伸縮させ、一対の円弧部材20a、20bの研磨部材13がそれぞれ可動接触部16の通電部17に接触するように、一対の円弧部材20a、20b間の間隔を調整する。
【0030】
この状態で、操作棒11により、保持部本体19が可動接触部16の平坦部にガイドされて摺動するように、円弧部材20a、20bを可動接触部16の長辺方向に動かす。可動接触部16の長辺方向は、図10では図面の(垂直方向)手前方向及び奥行き方向である。これにより、円弧部材20a、20bの研磨部材13により通電部17が研磨される。
【0031】
以上の説明では、一対の円弧部材20a、20bにアーム21a、21bを設け、双方のアーム21a、21bが伸縮するようにしたが、図11に示すように、一対の円弧部材20a、20bのいずれか一方にアーム21を設け、一方の円弧部材20のみを移動可能とするようにしてもよい。
【0032】
図11に示すように、一対の円弧部材20a、20bのうちの円弧部材20aにアーム21を設け、モータ22は駆動機構部を介してアーム21を伸縮させて円弧部材20aを動かし、一対の円弧部材20a、20b間の間隔を調整する。保持部本体19は操作棒11の先端部に取り付けられ、操作棒11により持ち上げられて可動接触部16の平坦部と接触するように、かつ円弧部材20bが可動接触部16の一方の通電部17に接触するように位置決めされる。そして、アーム21の伸縮により円弧部材20aの位置を調整し、一対の円弧部材20a、20bの研磨部材13がそれぞれ可動接触部16の両長辺側壁の通電部17に接触して、可動接触部16の両長辺側壁の通電部17を挟むように調整する。
【0033】
この状態で、操作棒11により、保持部本体19が可動接触部16の平坦部にガイドされて摺動するように、円弧部材20a、20bを可動接触部16の長辺方向に動かす。これにより、円弧部材20a、20bの研磨部材13により通電部17が研磨される。
【0034】
第2の実施の形態によれば、一対の円弧部材20a、20bのそれぞれの通電部17に向かい合う円弧内側部分に研磨部材13を配置し、可動接触部16を挟むように一対の円弧部材20a、20b間の間隔を調整して研磨部材13で通電部16を研磨するので、可動接触部16の両長辺側壁の通電部17を一度に研磨できる。
【0035】
図12は本発明の第3の実施の形態に係わる断路器可動接触部の調整装置における保持部の構成図、図13は図12の矢印F方向から見た平面図である。この第3の実施の形態は、第1の実施の形態におけるL字部材の保持部に代えて、保持部14を、可動接触部16の平坦部と接触する保持部本体19と、保持部本体19から突出して設けられた一対の平板部材25a、25bとで形成したものである。
【0036】
保持部本体19は操作棒11の先端部に取り付けられ、操作棒11により持ち上げられて可動接触部16の平坦部と接触するように位置決めされる。一対の平板部材25a、25bは保持部本体19から可動接触部16の両短辺方向に突出して設けられ、可動接触部16の通電部17に向かい合うように配置されている。そして、平板部材25a、25bの通電部17に向かい合う平面に研磨部材13が配置され、アーム21a、21bの伸縮により平板部材25a、25bの位置を調整できるようになっている。
【0037】
平板部材25a、25bの位置を調整するための間隔調整部は、保持部本体19に設けられたモータ22と、モータの回転を往復運動に変換する駆動機構部(ピニオン24及びラック23)と、アーム21a、21bとからなる。この間隔調整部により、一対の平板部材25a、25bの研磨部材13がそれぞれ可動接触部16の通電部17に接触して、可動接触部16の両長辺側壁の通電部17を挟むように一対の平板部材25a、25b間の間隔を調整する。
【0038】
また、一対の平板部材25a、25bを可動接触部16の厚み方向に駆動するための駆動部が設けられている。平板部材25a、25bを駆動するための駆動部は、平板部材25a、25bの側面に設けられたラック26と、アーム21a、21bに搭載されたモータ27と、モータ27で駆動され平板部材25a、25bの側面に設けられたラック26と噛合するピニオン28とから構成されている。
【0039】
図14は一対の平板部材25a、25bの研磨部材13で可動接触部16の両長辺側壁の通電部17を挟んだ状態の側面図、図15は図14の矢印G方向から見た平面図である。図14に示す状態にするには、モータ22で駆動機構部を介してアーム21a、21bを伸縮させ、一対の円弧部材20a、20bの研磨部材13がそれぞれ可動接触部16の通電部17に接触するように、一対の円弧部材20a、20b間の間隔を調整する。
【0040】
この状態で、駆動部のモータ27を駆動し、平板部材25a、25bを図14中の矢印H方向に動かす。これにより、平板部材25a、25bの研磨部材13により通電部17が自動的に研磨される。
【0041】
以上の説明では、平板部材25に研磨部材13を取り付けて可動接触部16の通電部17の研磨清掃を行う場合について説明したが、研磨部材13に代えて金属端子を平板部材25に取り付けて、研磨清掃が正常に行えたかどうかを確認することも可能である。
【0042】
図16は平板部材25への研磨部材13または金属端子の取り付けの説明図であり、図16(a)は平板部材25に研磨部材13を取り付けた場合の平面図、図16(b)は平板部材25に金属部材を取り付けた場合の平面図である。
【0043】
図16(a)に示すように、平板部材25に研磨部材13を取り付けるには、平板部材25に研磨部材13を敷き詰め、平板部材25の上下方向の辺で取付部材29により研磨部材13を挟み込んで取り付ける。また、平板部材25に金属端子30を取り付けるには、平板部材25に金属端子30を縦方向に配置し、平板部材25の上下方向の辺で取付部材29により研磨部材13を挟み込んで取り付ける。
【0044】
そして、図17に示すように、金属端子30が可動接触部16の通電部17に向かい合うように平板部材25を保持部本体19に配置して取り付ける。金属端子30にはリード線31が接続され、操作棒11内部を通って操作棒11の抵抗測定器32に接続される。
【0045】
操作棒11により、保持部本体19を可動接触部16の通電部19の近傍まで持ち上げ、間隔調整部により、一対の平板部材25a、25bの金属端子30がそれぞれ可動接触部16の通電部17に接触して可動接触部16を挟むように調整する。
【0046】
その後に、抵抗測定器32から金属端子30に電圧を印加する。抵抗測定器32は電圧の印加により流れる電流を測定し、印加電圧と測定電流とから可動接触部16の抵抗値を測定する。これにより、研磨清掃後に研磨清掃が正常に行えたかどうかを確認することができる。
【0047】
第3の実施の形態によれば、一対の平板部材25a、25bのそれぞれの通電部17に向かい合う側に研磨部材13を配置し、可動接触部16の通電部17を挟むように一対の平板部材25a、25b間の間隔を調整して、駆動部のモータ27により平板部材を動かして研磨部材13で通電部17を研磨するので、研磨のための操作を自動で行え作業効率が向上する。
【0048】
また、研磨部材13に代えて、金属端子30を一対の平板部材25のそれぞれの通電部17に向かい合うように配置し、金属端子30に接続されたリード線31に電圧を印加して電流を測定し、可動接触部16の抵抗値を測定するので、可動接触部16の通電部17の研磨清掃を適切に行えたかどうかを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる断路器可動接触部の調整装置の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるL字形状の保持部の側面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態における可動接触部の一部切り欠き斜視図。
【図4】本発明の第1の実施の形態における可動接触部が固定接触部に接触した状態を示す一部切り欠き側面図。
【図5】図2(b)に示したL字部材の屈曲部の内角部分が上方に位置する状態で可動接触部の通電部を研磨する状態の側面図。
【図6】図5の矢印B方向から見た一部切り欠き平面図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係わる断路器可動接触部の調整装置における保持部の構成図。
【図8】図7の矢印D方向から見た平面図。
【図9】本発明の第2の実施の形態における間隔調整部のモータの駆動機構部の一部切り欠き側面図。
【図10】本発明の第2の実施の形態における一対の円弧部材の研磨部材で可動接触部の両長辺側壁の通電部を挟んだ状態の側面図。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係わる断路器可動接触部の調整装置における保持部の他の一例を示す構成図。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係わる断路器可動接触部の調整装置における保持部の構成図。
【図13】図12の矢印F方向から見た平面図。
【図14】本発明の第3の実施の形態における一対の平板部材の研磨部材で可動接触部の両長辺側壁の通電部を挟んだ状態の側面図。
【図15】図14の矢印G方向から見た平面図。
【図16】本発明の第3の実施の形態における平板部材への研磨部材または金属端子の取り付けの説明図。
【図17】本発明の第3の実施の形態における平板部材に金属端子を取り付けて研磨清掃後に研磨清掃が正常に行えたかどうかを確認する場合の断路器可動接触部の調整装置の構成図。
【符号の説明】
【0050】
11…操作棒、11a…第1の筒体、11b…第2の筒体、11c…第3の筒体、12…調整部、13…研磨部材、14…保持部、15…ヒンジ機構、16…可動接触部、17…通電部、18…固定接触部、19…保持部本体、20…円弧部材、21…アーム、22…モータ、23…ラック、24…ピニオン、25…平板部材、26…ラック、27…モータ、28…ピニオン、29…取付部材、30…金属端子、31…リード線、32…抵抗測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断路器が閉じた状態では、厚みを有した平板状の両長辺側壁に通電部が形成された可動接触部の前記通電部を固定接触部で把持し、前記断路器が開いた状態では、前記可動接触部の通電部を前記固定接触部から離脱させるようにした断路器開閉接触部の前記可動接触部を調整する断路器可動接触部の調整装置において、前記断路器が開いている状態で前記可動接触部の通電部を磨くための研磨部材と、前記研磨部材を保持するとともに前記研磨部材が前記可動接触部の前記通電部に接触して摺動するようにガイドするための保持部と、前記保持部を前記可動接触部の通電部の近傍まで持ち上げ前記保持部の前記研磨部材を前記可動接触部の通電部に接触させ前記保持部でガイドされて摩擦させるための操作棒とを備えたことを特徴とする断路器可動接触部の調整装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記操作棒の先端部に取り付けられた断面がL字形状のL字部材であり、前記L字部材の屈曲部の内角部分に前記研磨部材を配置し、前記操作棒により、前記研磨部材を前記可動接触部の通電部に接触させるとともに前記L字部材の屈曲平坦部を前記可動接触部の平坦部に接触させ、前記操作棒により、前記L字部材の屈曲平坦部が前記可動接触部の平坦部にガイドされて摺動するように、前記L字部材を前記可動接触部の長辺方向に動かして前記研磨部材で前記通電部を研磨することを特徴とする請求項1記載の断路器可動接触部の調整装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記操作棒の先端部に取り付けられ前記可動接触部の平坦部と接触する本体と、前記可動接触部の両短辺方向から前記可動接触部の前記通電部に向かい合うように前記本体から突出して設けられた断面が円弧状の一対の円弧部材とを有し、一対の前記円弧部材のそれぞれの前記通電部に向かい合う円弧内側部分に前記研磨部材を配置し、一対の前記円弧部材間の間隔を調整するための間隔調整部を前記保持部の本体に設け、前記操作棒により、前記保持部を前記可動接触部の通電部の近傍まで持ち上げ、前記可動接触部の平坦部に前記保持部の本体を接触させ、前記間隔調整部により、一対の前記円弧部材の前記研磨部材がそれぞれ前記可動接触部の前記通電部に接触して前記可動接触部を挟むように一対の前記円弧部材間の間隔を調整し、前記操作棒により、前記保持部の本体が前記可動接触部の平坦部にガイドされて摺動するように、前記円弧部材を前記可動接触部の長辺方向に動かしての前記研磨部材で前記通電部を研磨することを特徴とする請求項1記載の断路器可動接触部の調整装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記操作棒の先端部に取り付けられ前記可動接触部の平坦部と接触する本体と、前記可動接触部の両短辺方向から前記可動接触部の前記通電部に向かい合うように前記本体から突出して設けられた一対の平板部材とを有し、一対の前記平板部材のそれぞれの前記通電部に向かい合う側に前記研磨部材を配置し、一対の前記平板部材間の間隔を調整するための間隔調整部を前記保持部の本体に設け、一対の前記平板部材を前記可動接触部の厚み方向に駆動するための駆動部を設け、前記操作棒により、前記保持部を前記可動接触部の通電部の近傍まで持ち上げ、前記可動接触部の平坦部に前記保持部の本体を接触させ、前記間隔調整部により、一対の前記平板部材の前記研磨部材がそれぞれ前記可動接触部の前記通電部に接触して前記可動接触部を挟むように一対の前記平板部材間の間隔を調整し、前記駆動部により、前記平板部材を前記可動接触部の厚み方向に動かして前記研磨部材で前記通電部を研磨することを特徴とする請求項1記載の断路器可動接触部の調整装置。
【請求項5】
前記研磨部材に代えて、金属端子を一対の前記平板部材のそれぞれの前記通電部に向かい合う側に配置し、前記金属端子に接続されたリード線に電圧を印加して電流を測定し前記可動接触部の抵抗値を測定する抵抗測定器を設け、前記操作棒により、前記保持部を前記可動接触部の通電部の近傍まで持ち上げ、前記間隔調整部により、一対の前記平板部材の前記金属端子がそれぞれ前記可動接触部の前記通電部に接触して前記可動接触部を挟むように一対の前記平板部材間の間隔を調整し、前記抵抗測定器により、電圧を印加して電流を測定し前記可動接触部の抵抗値を測定することを特徴とする請求項4記載の断路器可動接触部の調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−123278(P2010−123278A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293300(P2008−293300)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】