説明

新規なポリチオール及びそれを用いた含硫ウレタン系プラスチックレンズ

【目的】 新規なテトラチオールと該チオールを用いた含硫ウレタン系プラスチックレンズの提供。
【構成】 式(1)


から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていても良い。)で表わされるテトラチオール。該チオールとポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、及びイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物から選ばれた少なくとも1種のエステル化合物を含む組成物を加熱硬化させて得られる含硫ウレタン系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なポリチオールとその製造方法、ポリチオールを用いた含硫ウレタン系樹脂及びその樹脂よりなるレンズに関する。本発明のポリチオールは、上記含硫ウレタン系樹脂の原料以外にも、例えば、合成樹脂原料、架橋剤、エポキシ樹脂硬化剤、加硫剤、重合調整剤、金属錯体生成剤、生化学的潤滑油添加剤として広範囲な用途を有する。
【0002】
【従来の技術】従来より、上記のような用途には、例えば、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等のポリオールとメルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸等のメルカプトカルボン酸とをエステル化反応させたポリチオールが使用されている。ところで、プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。
【0003】これらの目的に従来より広く用いられている樹脂としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下、D.A.C.と称す)をラジカル重合させたものがある。この樹脂は、耐衝撃性に優れていること、軽量であること、染色性に優れていること、切削性および研磨性等の加工性が良好であることなどの、種々の特徴を有している。
【0004】しかしながら、D.A.C.レンズは屈折率が無機レンズ(nD=1.52)に比べnD=1.50と小さく、ガラスレンズと同等の光学特性を得るためには、レンズの中心厚、コバ厚、および曲率を大きくする必要があり、全体的に肉厚になることが避けられない。このため、より屈折率の高いレンズ用樹脂が望まれている。さらに、高屈折率を与えるレンズ用樹脂の一つとして、イソシアナート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応(特開昭57−136601号公報)、もしくは、テトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン原子を含有するヒドロキシ化合物との反応(特開昭58−164615号公報)やジフェニルスルフィド骨格を含有するヒドロキシ化合物との反応(特開昭60−194401号公報)により得られるポリウレタン系の樹脂等によるプラスチックレンズが知られている。
【0005】これらの公知の樹脂によるレンズは、D.A.C.を用いたレンズよりも屈折率は向上するものの、まだ屈折率の点で不充分であったり、また屈折率を向上させるべく、分子内に多数のハロゲン原子或いは芳香族環を有する化合物を用いている為に、耐候性、耐衝撃性が悪い、あるいは比重が大きいといった欠点を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】また、本発明者らは先に、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)(以下、PETGと略す)とキシリレンジイソシアナート(以下、XDiと略す)とを反応させて得られるチオカルバミン酸S−アルキルエステル系樹脂が、高い屈折率を有し、無色透明で優れた機械特性、加工性を有している事を見い出した(特開昭60−199016号公報)。ところが、上記チオカルバミン酸S−アルキルエステル系樹脂でも強度の矯正を必要とする場合、まだ屈折率が不充分で、コバ厚が厚くなり、ファッション性が低下するという問題があった。
【0007】この為に、本発明者らはさらに検討を重ね、新規化合物である1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−プロパンチオール(以下、GSTと略す)を見い出し、これを用いた樹脂が前記PETGを用いた樹脂よりもさらに高屈率を有し、無色透明で、染色性にも優れ、プラスチックレンズ材料として、さらに優れた材料である事を見い出した(特開平2−270859号公報)。
【0008】ところが、このGSTもプラスチックレンズ材料として最も一般に用いられるXDiと反応させた樹脂はガラス転移点が98℃であり、プラスチックレンズの一般的な染色温度である90〜95℃では樹脂の耐熱温度付近となるため、レンズが変形し、復元させるための再加熱工程が必要となり、煩雑であった。そのため、本発明者らは、さらに検討を重ね、GSTを用いた樹脂と同等の光学物性を有しながら通常の染色温度(90〜95℃)でも変形しない耐熱性の優れた樹脂を与える2−メルカプトエチルチオ−1,3−プロパンジチオール(以下、GMTと略す)を見い出した(特開平5−208950号公報)。
【0009】しかしながら、GMTは3官能のチオールであり、2官能イソシアナートとの組み合わせでは、樹脂が架橋構造を形成するのが重合の最終段階になるために重合時の粘度上昇が遅く、通常、プラスチックレンズの成型に使用される樹脂製ガスケットから、可塑剤など各種の樹脂添加剤が成形物中に溶け出して、成型物の透明性を損ない易いという問題があった。この問題を解決するためには、例えば低温で長時間重合を進めた後、高い温度で重合を完結させる重合方法が採られるが、この場合、重合時間が長くなり、生産性が落ちるという問題がある。そこで、GST、GMTを使用したのと同等の光学物性を有し、かつ、通常の染色温度(90〜95℃)でも変形しない耐熱性を有する樹脂を与える4官能以上のポリチオール化合物が求められていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】この様な状況に鑑み、本発明者らは、上記要求に応えるべく検討を重ねた結果、本発明の新規なポリチオールを見い出し、本発明に到達した。即ち、本発明は、 下記式(1)
【0011】
【化11】


から選択されるが、R1,R2,R3,R4のいずれか1個がHの場合、他のいずれか1個は
【化12】


を表し、R1,R2,R3,R4のいずれか2個がHの場合、他の2個は
【化13】


から選択され、R1,R2,R3,R4の3個以上がHとなることはない。)、下記式(2)
【化14】


(mは1〜3の整数を示す。)及び下記式(3)
【化15】


(nは0〜3の整数を表す。)のいずれかにより表される官能基を4個以上有するポリチオール。該4官能以上のポリチオールを用いた含硫ウレタン系樹脂、及びその樹脂からなるレンズと、それらの製造方法である。式(1)で表される4官能以上のポリチオールは、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0012】
【化16】


【0013】
【化17】


【0014】
【化18】


【0015】
【化19】


【0016】
【化20】


【0017】
【化21】


式(2)で表されるポリチオールは、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0018】
【化22】


式(3)で表されるポリチオールは、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0019】
【化23】


【0020】本発明に係る4官能以上のポリチオールを用いた含硫ウレタン系樹脂は、前記問題点を解決し、無色透明で光学歪がなく、高屈折率低分散(高アッベ数)であり、低比重で耐衝撃性、染色性、耐熱性、加工性に優れた樹脂で、プラスチックレンズ用樹脂として満足する物性を有する。
【0021】本発明の4官能以上のポリチオールは文献[The Chemistry of the thiol group]記載の一般的なポリチオールの合成方法、のいずれの方法でも製造できるが、製品の着色の面から、式(4)〜式(6)の化合物とチオ尿素を反応させて、イソチウロニウム塩化し、これを加水分解するイソチウロニウム塩法が好ましい。この式(4)〜式(6)のポリオール、ポリハロゲン化合物及びヒドロキシ基を有するハロゲン化物は、例えば、エピハロヒドリン、ブタジエンエポキシド等の有機低分子エポキシ化合物、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、チオグリセロール、トリブロモプロパン等のグリセリン誘導体、1,2,3,4−テトラブロモブタン、1,2,3,4,5−ペンタクロロペンタン等の有機低分子ハロゲン化物と、2−メルカプトエタノール、エチレンオキサイド等のエチレン誘導体及び水硫化ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム及び硫化水素等の硫化物とを反応させて得られる。また、ポリハロゲン化物を含む式(4)〜式(6)の脱離基体は、相当する式(4)〜式(6)のポリオール及びヒドロキシ基を有するハロゲン化物のOH基と反応させ脱離基を導入することによっても得られる。
【0022】OH基と反応させ脱離基を導入する方法は、一般的なアルコールからの反応を用いる事ができる。例えば、塩酸,臭化水素酸,ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素を反応させる方法、そのハロゲン化水素と塩化亜鉛等ハロゲン化金属を用いる方法、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム等のアルカリ金属塩と硫酸、燐酸等の酸を用いる方法、ハロゲンと燐を用いる方法、塩化チオニル、三臭化燐、五塩化燐、メタンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド等を用いる方法などである。
【0023】次の工程のイソチウロニウム塩化反応は、式(4)〜式(6)の多官能化合物に、その化合物に対して4当量以上、好ましくは4〜8当量のチオ尿素を反応させる。この際、OH基がある場合、OH基に対して1当量以上、好ましくは1〜5当量の鉱酸を加えて反応を行う。鉱酸としては塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等が使用できるが、反応速度と経済性及び製品の着色の面から、塩酸又は臭化水素酸が好ましい。
【0024】引き続き行う加水分解反応は、上記反応液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基、あるいはアンモニア、トリエチルアミン、ヒドラジン等の有機塩基等を式(4)〜式(6)の多官能化合物に対して4当量以上、好ましくは4〜20当量加えて加水分解を行い、目的の4官能以上のポリチオールを得る。
【0025】この4官能以上のポリチオールを得るまでの反応温度は、選ばれる方法及び触媒等によって異なるため限定できないが、式(4)〜式(6)の化合物を得る反応、イソチウロニウム塩化反応、加水分解反応ともに例えば、0〜200℃が好ましく、20〜120℃であればさらに好ましい。
【0026】同様に反応圧力については、減圧、常圧、加圧のいずれでも構わないが、コスト及び装置、設備の軽減を計る面から常圧が好ましい。こうして得られる式(1)〜(3)の4官能以上のポリチオールはトルエン等有機溶剤によって抽出後、酸洗浄、塩基洗浄、水洗浄、濃縮、濾過等の一般的な手法により精製ができ、必要により蒸留もできる。尚、この4官能以上のポリチオールの製造は、大気下でも実施できるが、原料及び製品等の酸化及び着色の防止に万全を期すため、全体を窒素気流下で行うのが好ましい。
【0027】本発明の4官能以上のポリチオールの合成法を以下に説明する。例えば式(1)において、
【0028】
【化24】


の場合、次に示される方法によって合成する事ができる。
【0029】
【化25】


【0030】即ち、エピクロルヒドリンと2−メルカプトエタノールをトリエチルアミンの存在下で反応させ、得られたジオール体をさらに硫化ナトリウムと反応させテトラオール体を得る。これに塩酸中チオ尿素を反応させてイソチウロニウム塩体を得る。この際、転位が起こり、式(7)を含む異性体混合物テトライソチウロニウム塩を得る。最後に、この反応液にアンモニア水を加えて加水分解し、目的の式(8)を含む異性体混合物4官能以上のポリチオールを得る。又、もう一つの方法として、式(1)において、例えば、R1=R2=R3=R4=−CH2SHの場合、次式に示される方法でも合成する事ができる。
【0031】
【化26】


【0032】即ち、エピクロルヒドリンとチオグリセロールをトリエチルアミン存在下で反応させトリオールを得る。次に、この反応液に塩化チオニルを反応させ、クロル体を得る。この時、一部転位が起こり、式(9)を含む異性体混合物テトラクロライド体となる。続いて、チオ尿素を反応させてイソチウロニウム塩体とした後、抱水ヒドラジンを加えて加水分解を行い、目的の式(10)の4官能以上のポリチオールを得る。尚、イソチウロニウム塩化反応で完全に転位が終了する。
【0033】本発明の含硫ウレタン系樹脂は式(1)〜(3)の4官能以上のポリチオールとポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、及びイソシアナート基を有するイソチオシアナートから選ばれる少なくとも1種と反応させて得られる。又、樹脂の改質を目的として、ヒドロキシ化合物、式(1)〜(3)以外のメルカプト化合物及びヒドロキシ基を有するメルカプト化合物等の活性水素化合物及びモノイソシアナート化合物、モノイソチオシアナート化合物等のモノイソシアナート類を加えてもよい。
【0034】本発明に於いて含硫ウレタン系樹脂の原料として用いる、ポリイソシアナート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート、ノナメチレンジイソシアナート、2,2’−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカトリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−ω,ω’−ジイソシアナート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアナート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、メシチレントリイソシアナート、2,6−ジ(イソシアナトメチル)フラン等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアナート、2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ビス(4−イソシアナト−n−ブチリデン)ペンタエリスリトール、ダイマ酸ジイソシアナート、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ〔2,1,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン等の脂環族ポリイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピレンフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ナフタリンジイソシアナート、メチルナフタレンジイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ビベンジル−4,4’−ジイソシアナート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメリックMDI、ナフタリントリイソシアナート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアナート、3−メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアナート、4−メチル−ジフェニルメタン−3,5,2’,4’,6’−ペンタイソシアナート、フェニルイソシアナトメチルイソシアナート、フェニルイソシアナトエチルエチルイソシアナート、テトラヒドロナフチレンジイソシアナート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアナート、ヘキサヒドロジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルエーテルジイソシアナート、エチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアナート、1,3−プロピレングリコールジフェニルエーテルジイソシアナート、ベンゾフェノンジイソシアナート、ジエチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアナート、ジベンゾフランジイソシアナート、カルバゾールジイソシアナート、エチルカルバゾールジイソシアナート、ジクロロカルバゾールジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、チオジエチルジイソシアナート、チオジプロピルジイソシアナート、チオジヘキシルジイソシアナート、ジメチルスルフォンジイソシアナート、ジチオジメチルジイソシアナート、ジチオジエチルジイソシアナート、ジチオジプロピルジイソシアナート、ジシクロヘキシルスルフィド−4,4’−ジイソシアナート等の含硫脂肪族イソシアナート、ジフェニルスルフィド−2,4’−ジイソシアナート、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)スルフィド、4,4’−メトキシベンゼンチオエチレングリコール−3,3’−ジイソシアナートなどの芳香族スルフィド系イソシアナート、ジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6’−ジイソシアナート、4,4’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3’−ジイソシアナートなどの芳香族ジスルフィド系イソシアナート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、ベンジディンスルホン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルメタンスルホン−4,4’−ジイソシアナート、4−メチルジフェニルメタンスルホン−2,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナートジベンジルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−メトキシベンゼンエチレンジスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナートなどの芳香族スルホン系イソシアナート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル、4−メトキシ−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステルなどのスルホン酸エステル系イソシアナート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−3’−メチル−4’−イソシアナート、ジベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−メトキシベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−3,3’−ジイソシアナート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−4−メチル−3’−イソシアナートなどの芳香族スルホン酸アミド、チオフェン−2,5−ジイソシアナート、チオフェン−2,5−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナート等の含硫複素環化合物などが挙げられる。またこれらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等もまた使用できる。
【0035】本発明において原料として用いられるポリイソチオシアナート化合物は、一分子中に−NCS基を2つ以上含有する化合物であり、さらにイソチオシアナート基の他に硫黄原子を含有していてもよい。例えば、1,2−ジイソチオシアナトエタン、1,3−イソチオシアナトプロパン、1,4−ジイソチオシアナトブタン、1、6−ジイソチオシアナトヘキサン、p−フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアナート等の脂肪族イソチオシアナート、シクロヘキサンジイソチオシアナート等の脂環族イソチオシアナート、1,2−ジイソチオシアナトベンゼン、1,3−ジイソチオシアナトベンゼン、1,4−ジイソチオシアナトベンゼン、2,4−ジイソチオシアナトトルエン、2,5−ジイソチオシアナト−n−キシレン、4,4’−ジイソチオシアナト−1,1’−ビフェニル、1,1’−メチレンビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、1,1’−メチレンビス(4−イソチオシアナト−2−メチルベンゼン)、1,1’−メチレンビス(4−イソチオシアナト−3−メチルベンゼン)、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、4,4’−ジイソチオシアナトベンゾフェノン、4,4’−ジイソチオシアナト−3,3’−ジメチルベンゾフェノン、ベンズアニリド−3,4’−ジイソチオシアナート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソチオシアナート、ジフェニルアミン−4,4’−ジイソチオシアナート等の芳香族イソチオシアナート、2,4,6−トリイソチオシアナト−1,3,5−トリアジン等の複素環含有イソチオシアナート、さらにはヘキサンジオイルジイソチオシアナート、ノナンジオイルジイソチオシアナート、カルボニックジイソチオシアナート、1,3−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、1,4−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、(2,2’−ビピリジン)−4,4’−ジカルボニルジイソチオシアナート等のカルボニルイソチオシアナートが挙げられる。
【0036】本発明に於いて原料として用いるイソチオシアナート基の他に1つ以上の硫黄原子を有する2官能以上のポリイソチオシアナートとしては、例えば、チオビス(3−イソチオシアナトプロパン)、チオビス(2−イソチオシアナトエタン)、ジチオビス(2−イソチオシアナトエタン)等の含硫脂肪族イソチオシアナート、1−イソチオシアナト−4−{(2−イソチオシアナト)スルホニル}ベンゼン、チオビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、スルホニルビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、スルフィニルビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、ジチオビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、4−イソチオシアナト−1−{(4−イソチオシアナトフェニル)スルホニル}−2−メトキシ−ベンゼン、4−メチル−3−イソチオシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソチオシアナトフェニルエステル、4−メチル−3−イソチオシアナトベンゼンスルホニルアニリド−3’−メチル−4’−イソチオシアナートなどの含硫芳香族イソチオシアナート、チオフェノン−2,5−ジイソチオシアナート、1,4−ジチアン−2,5−ジイソチオシアナートなどの含硫複素環化合物が挙げられる。
【0037】さらに、これらのポリイソチオシアナートの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等もまた使用できる。
【0038】本発明に於いて原料として用いるイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物としては、例えば、1−イソシアナト−3−イソチオシアナトプロパン、1−イソシアナト−5−イソチオシアナトペンタン、1−イソシアナト−6−イソチオシアナトヘキサン、イソシアナトカルボニルイソチオシアナート、1−イソシアナト−4−イソチオシアナトシクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族化合物、1−イソシアナト−4−イソチオシアナトベンゼン、4−メチル−3−イソシアナト−1−イソチオシアナトベンゼンなどの芳香族化合物、2−イソシアナト−4,5−ジイソチオシアナト−1,3,5−トリアジンなどの複素環式化合物、さらには4−イソシアナト−4’−イソチオシアナトジフェニルスルフィド、2−イソシアナト−2’−イソチオシアナトジエチルジスルフィド等のイソチオシアナト基以外にも硫黄原子を含有する化合物が挙げられる。
【0039】さらに、これら化合物の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等もまた使用できる。これらエステル化合物はそれぞれ単独で用いることも、また二種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】本発明の含硫ウレタン系樹脂の改質剤として用いる活性水素化合物は、ヒドロキシ化合物、メルカプト化合物及びヒドロキシ基を有するメルカプト化合物より選ばれる。ヒドロキシ化合物としては、例えば、メタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロース、ジグリペロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトール等の脂肪族ポリオール、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ポリオール、ジブロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオール、エポキシ樹脂等の高分子ポリオールの他にシュウ酸、グルタミン酸、アジピン酸、酢酸、プロピオン酸、シクロヘキサンカルボン酸、β−オキソシクロヘキサンプロピオン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモグリコール、ジカルボキシシクロヘキサン、ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、ブロモフタル酸などの有機酸と前記ポリオールとの縮合反応生成物、前記ポリオールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドとの付加反応生成物、アルキレンポリアミンとエチレンオキサイドや、プロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドとの付加反応生成物、さらには、ビス−〔4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔4−(4−ヒドロキシシクロヘキシロキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔2−メチル−4−(ヒドロキシエトキシ)−6−ブチルフェニル〕スルフィドおよびこれらの化合物に水酸基当たり平均3分子以下のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加された化合物、ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げられる。
【0041】また、メルカプト化合物としては、例えば、メチルメルカプタン、ベンゼンチオ−ル、ベンジルチオ−ル、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、ビシクロ〔2,2,1〕ペプタ−exo−cis−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプトコハク酸(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン)等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、 1,4−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン− 2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール、また、2,5−ジクロロベンゼン−1,3−ジチオール、1,3−ジ(p−クロロフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、3,4,5−トリブロム−1,2−ジメルカプトベンゼン、2,3,4,6−テトラクロル−1,5−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン等の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換芳香族ポリチオール、また、2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−エチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−モルホリノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−フェノキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオベンゼンオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオブチルオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン等の複素環を含有したポリチオール、さらには1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルメルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルメルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルメルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、及びこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピル)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、2−メルカプトエチルチオ−1,3−プロパンジチオール、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール、3,4−チオフェンジチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物等が挙げられる。
【0042】また、ヒドロキシ基を有するメルカプト化合物としては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4’−メルカプトジフェニルスルホン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロキシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチルートリス(メルカプトエチルチオ)メタン等が挙げられる。
【0043】さらには、これら活性水素化合物の塩素置換体、臭素置換体のハロゲン置換体を使用してもよい。これらはそれぞれ単独で用いることも、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0044】本発明の含硫ウレタン樹脂の改質材として用いるモノイソシアナート類は、モノイソシアナート化合物及びモノイソチオシアナート化合物より選ばれる。モノイソシアナート化合物としては、例えばフェニルイソシアナート、ブチルイソシアナート、シクロヘキシルイソシアナートなどが挙げられる。モノイソチオシアナート化合物としては、例えばフェニルイソチオシアナート、ブチルイソチオシアナート、シクロヘキシルイソチオシアナートなどが挙げられる。さらに、これら化合物の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体等もまた使用できる。これらは、それぞれ単独で用いることも、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0045】前記のポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、及びイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物から選ばれた少なくとも1種のイソシアナート類とポリチオールとの配合比率は、(NCO+NCS)/(SH)の官能基モル比が通常0.5〜3.0の範囲内、好ましくは0.5〜1.5の範囲内である。
【0046】本発明のプラスチックレンズはチオカルバミン酸S−アルキルエステル系樹脂又はジチオウレタン系樹脂を素材とするものであり、イソシアナト基とメルカプト基によるチオカルバミン酸S−アルキルエステル結合又はイソチオシアナト基とメルカプト基によるジチオウレタン結合を主体とするが、目的によっては、それ以外にアロハネート結合、ウレヤ結合、チオウレヤ結合、ビュウレット結合等を含有しても、勿論差し支えない。例えば、チオカルバミン酸S−アルキルエステル結合に、さらにイソシアナト基を反応させたり、ジチオウレタン結合にさらにイソチオシアナト基を反応させて架橋密度を増大させることは好ましい結果を与える場合が多い。この場合には反応温度を少なくとも100℃以上に高くし、イソシアナート成分又はイソチオシアナート成分を多く使用する。あるいはまた、アミン等を一部併用し、ウレヤ結合、ビウレット結合を利用することもできる。このようにイソシアナート化合物又はイソチオシアナート化合物と反応する前記活性水素化合物以外のものを使用する場合には、特に着色の点に留意する必要がある。
【0047】また目的に応じて公知の成形法におけると同様に、内部離型剤、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤などの種々の物質を添加してもよい。所望の反応速度に調整するために、ポリウレタンの製造において用いられる公知の反応触媒を適宜に添加することもできる。
【0048】本発明のレンズは、通常、注型重合により得られる。具体的には、イソシアナート類と式(1)〜(3)で表わされる4官能以上のポリチオールとを混合し、この混合液を必要に応じ適当な方法で脱泡を行なった後、モールド中に注入し、通常、0〜30℃程度の低温から100〜180℃程度の高温に徐々に昇温しながら重合させる。この際、重合後の離型性を容易にするため、モールドに公知の離型処理を施しても差し支えない。
【0049】このようにして得られる本発明に係る含硫ウレタン系樹脂は、極めて低分散、高屈折率、耐熱性に優れ、かつ、無色透明で光学歪が無く、軽量で、耐候性、染色性、耐衝撃性、加工性等に優れた特徴を有しており、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子材料やグレージング材料、塗料、接着剤の材料として好適である。
【0050】また、本発明に係る含硫ウレタン系樹脂を素材とするレンズは、必要に応じ反射防止、高硬度付与、耐磨耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいはファッション性付与等の改良を行なうため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的あるいは化学処理を施すことができる。
【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。なお、得られたレンズの性能試験のうち、屈折率、アッベ数、耐候性、光学歪、耐衝撃性、耐熱性、染色性は以下の試験法により評価した。
【0052】屈折率、アッベ数;ブルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
耐候性;サンシャインカーボンアークランプを装填したウェザーオメータにレンズ用樹脂をセットし、200時間経たところでレンズを取り出し試験前のレンズ用樹脂の色相を比較した。評価基準は、変化なし(○)、わずかに黄変(△)、黄変(×)とした。
光学歪み;歪検査器により目視にて判定した。光学歪が見られなかったものを○、見られたものを×とした。
耐衝撃性;FDA規格に従い、127cmの高さより16.3gの鉄球を落下させ、割れなかったものを○、ひびが入ったものを△、割れたものを×とした。
耐熱性;TMA法により測定し、100℃を超えたものを○、90〜100℃のものを△、90℃未満のものを×とした。
染色性;90℃の分散染料(三井東圧染料MLP Blue−2)0.5重量%水分散液中に、分散液を攪拌しながら、樹脂試験片を水没させ、10分後に取り出し、洗浄した。染色されたものを○、されなかったものを×とした。
【0053】実施例12−メルカプトエタノール78.1g(1.0モル)とトリエチルアミン2.0gの混合液にエピクロルヒドリン92.5g(1.0モル)を内温35〜40℃に保ちながら1時間かけて滴下し、40℃で1時間熟成を行った。この反応液に、あらかじめNa2S.9H2O 125.0g(0.5モル)を純水100gに溶解した水溶液を、内温40〜45℃に保ちながら1時間かけて滴下し、さらに45℃で1時間熟成を行い、式(4)に相当する下記4官能化合物を得た。同定は、NMRにより行った。
【0054】
【化27】


次に、上記反応液に36%塩酸303.8g(3.0モル)とチオ尿素190.3g(2.5モル)を加えて、110℃で9時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、トルエン400mlを加え、25%アンモニア水306.5g(4.5モル)を徐々に加え、60℃で3時間加水分解を行った。得られた有機層を、36%塩酸100ml、水100ml、希アンモニア水100ml、水100mlで2回、順次洗浄後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去し、ゴミ等を吸引濾過にて、濾別して、無色透明の液体である下記ポリチオール(以下、FSH4と略記する)を174.6g(0.476モル、収率95.2%)得た。
【0055】
【化28】


これら異性体は、逆相クロマトグラフィーによってそれぞれを単離し、同定を行った。まず、FSH4−(A)成分の
【0056】
【化29】


の元素分析、IR及びMS、NMRの結果を示す。
【0057】
【表1】


<IRνmax(KBr)cm-1>2543 (SH)
<MS>m/z=366(M+
【0058】
【表2】


次にFSH4−(C)成分の
【0059】
【化30】


について示す。元素分析、IR及びMSは(A)と同じであった。
【0060】
【表3】


最後にFSH4−(B)成分の
【0061】
【化31】


について示す。元素分析、IR及びMSは(A)と同じであった。
【0062】
【表4】


【0063】実施例2チオグリセロール108.2g(1.0モル)とトリエチルアミン4.0gの混合液に、エピクロルヒドリン92.5g(1.0モル)を内温45〜50℃に保ちながら1時間かけて滴下し、50℃で0.5時間熟成を行い、式(4)に相当する下記4官能化合物を得た。同定は、実施例1と同様にNMRで行った。
【0064】
【化32】


【0065】次に、この反応液に、内温50℃で塩化チオニル400.0g(3.36モル)を1時間かけて滴下し、60℃で7時間熟成を行った。室温まで冷却後、これに純水100gを滴下して過剰の塩化チオニルを分解し、エチレンジクロリド(以下、EDCと略する)300gを加えて塩素化物を抽出した。このEDC層を純水100gで2回洗浄し、ロータリーエバポレーターにてEDCを減圧除去し、式(4)に相当する下記クロル体247.8g(0.968モル)を得た。同定は同様にNMRにて行った。
【0066】
【化33】


【0067】次に、このクロル体に、チオ尿素368.4g(4.84モル)と純水500gを加えて、105℃で1時間加熱攪拌した後、室温まで冷却後、トルエン1.5lを加え、抱水ヒドラジン500.0g(8.92モル)を徐々に加えて、80℃で1時間加水分解を行った。得られた有機層から、実施例1と同様に精製・取出しを行い、無色透明粘調液体の下記4官能以上のポリチオール(以下、FSH1と略記する)を225.9g(0.917モル、収率91.7%)得た。
【0068】
【化34】


元素分析、IR、MS及びNMRの結果を示す。
【0069】
【表5】


【0070】<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=246(M+
【0071】
【表6】


【0072】実施例32−メルカプトエタノール78.1g(1.0モル)とトリエチルアミン1.0gの混合液に、1,2,3,4−ブタンジエンジエポキシド43.0g(0.5モル)を内温35〜40℃で1時間かけて滴下し、40℃で1時間熟成を行い、無色透明粘調液体を得た。NMRデータから式(6)に相当する下記4官能化合物と同定した。
【0073】
【化35】


【0074】次に、上記反応液に36%塩酸303.9g(3.0モル)とチオ尿素190.3g(2.5モル)を加えて、110℃で3時間加熱攪拌反応した。室温に冷却後、トルエン300mlを加え、25%アンモニア水272.4g(4.0モル)を徐々に加えた後、55〜65℃で3時間加水分解を行った。有機層を分液後、実施例1と同様に精製・取出しを行い、無色透明の粘調液体である下記ポリチオール(以下、FSH2と略記する)145.6g(0.475モル、収率95.0%)を得た。
【0075】
【化36】


元素分析、IR、MS及びNMRの結果を示す。
【0076】
【表7】


<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=306(M+
【0077】
【表8】


【0078】実施例42−メルカプトエタノール78.1g(1.0モル)と1,2,3,4−テトラブロモブタン186.9g(0.5モル)とエタノール500mlの混合液に49%NaOH81.6g(1.0モル)を内温40〜60℃で2時間かけて滴下し、さらに50℃で2時間熟成を行った。反応終了後、室温迄冷却し、析出したNaBrを濾別後、エバポレーターにてエタノールと水を留去し無色粘調液体を得た。NMRデータから式(6)に相当する下記4官能化合物と同定した。
【0079】
【化37】


【0080】次に、上記粘調液体に、47%臭化水素酸257.9g(1.5モル)とチオ尿素190.3g(2.5モル)を加えて、実施例3と同様にイソチウロニウム塩化反応、加水分解反応、精製・取出しを行い、無色透明の粘調液体で、実施例3と同じ下記ポリチオールFSH2 131.7g(0.479モル、収率85.8%)を得た。
【0081】
【化38】


【0082】実施例52−メルカプトエタノール156.2g(2.0モル)と1,2,3,4−テトラブロモブタン186.9g(0.5モル)とジメチルホルムアミド(以下、DMFと略する)500mlの混合液に49%NaOH 163.2g(2.0モル)を内温40〜60℃で2時間かけて滴下し、さらに100℃で5時間熟成を行った。反応終了後、室温迄冷却し、析出したNaBrを濾別後、エバポレーターにてDMFを留去し無色粘調液体を得た。NMRデータから式(6)に相当する下記4官能化合物と同定した。
【0083】
【化39】


【0084】次に、上記粘調液体に、36%塩酸253.2g(2.5モル)とチオ尿素152.2g(2.0モル)を加えて、実施例3と同様にイソチウロニウム塩化反応、加水分解反応、精製・取出しを行い、無色透明の粘調液体で、実施例3と同じ下記ポリチオール(以下、FSH5と略する)205.0g(0.480モル、収率96.0%)を得た。元素分析、IR、MS及びNMRの結果を示す。
【0085】
【化40】


【0086】
【表9】


<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=426(M+
【0087】
【表10】


【0088】実施例685%KOHフレーク26.5g(0.40モル)とイソプロピルアルコール200mlを混合溶解したKOH溶液に、2−メルカプトエタノール31.6g(0.40モル)を室温で滴下して、造塩を行う。次に、この造塩マスに、あらかじめペンタエリスリトールジブロマイド{2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール}52.4g(0.20モル)とイソプロピルアルコール170mlに溶解しておいた溶解液を、内温70℃で1時間かけて滴下し、さらに70℃で3時間熟成を行った。反応終了後、室温迄冷却し、析出したNaBrを濾別後、エバポレーターにてイソプロピルアルコールと水を留去し無色粘調液体を得た。NMRデータから式(5)に相当する下記4官能化合物と同定した。
【0089】
【化41】


【0090】次に、上記粘調液体に、三臭化リン108.3g(0.40モル)を50℃で滴下した後、100℃で10時間反応を続行した。反応終了後、室温まで冷却し、純水50mlを滴下した後、トルエン200mlを加えて有機層を抽出した。得られた有機層を、1%NaHCO3水溶液100mlで1回、純水100mlで2回洗浄を行い、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去した。NMRデータから、残った残渣は式(5)に相当する下記4官能化合物と同定した。
【0091】
【化42】


【0092】次に、NaSH112.2g(2.00モル)をDMF700mlに加熱溶解し、これに49%NaOH163.2g(2.00モル)を徐々に加えた。30℃迄冷却した後に、二硫化炭素152.2g(2.00モル)を滴下して、40℃で2時間熟成を行った。その後DMF200mlに溶解された上記ブロム体を徐々に加えて、100℃で2時間反応を行った。この反応液を室温迄冷却した後、36%塩酸300.0g(2.96モル)を加えて、30℃で1時間加水分解した後、55℃に加熱して二硫化炭素を回収した。更に室温迄冷却後、クロロホルム800ml水2000mlを加えて抽出し、有機層を分取した。これを1%アンモニア水で中和し、さらに純水500mlで3回洗浄した後、クロロホルムを減圧留去した。この残渣をトルエン500mlとエタノール2000mlの混合液に加え、亜鉛粉末10gを加えた。更に内温を30℃に保ちながら36%塩酸120g(1.19モル)を滴下し、純水500gを加えて有機層を抽出した後、純水300mlで3回洗浄を行い、トルエンを減圧留去し、下記ポリチオール(以下、FSH3と略記する)57.0g(0.178モル、収率89.0%)を得た。
【0093】
【化43】


元素分析、IR、MS、及びNMRの結果を示す。
【0094】
【表11】


<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=320(M+
【0095】
【表12】


【0096】実施例7KOHフレークと2−メルカプトエタノールの使用量を実施例6の半分量にして、実施例6の方法で下記ポリチオール(以下、FSH6と略記する)を得た。
【0097】
【化44】


元素分析、IR、MS、及びNMRの結果を示す。
【0098】
【表13】


<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=260(M+
【表14】


【0099】実施例885%KOHフレーク39.8g(0.60モル)とイソプロピルアルコール300mlを混合溶解したKOH溶液に、2−メルカプトエタノール46.9g(0.60モル)を使用して実施例6と同様に造塩を行った後、ペンタエリスリトールテトラブロマイド77.5g(0.20モル)を実施例6と同様に反応させて、下記4官能化合物を得た。同定はNMRにて行った。
【0100】
【化45】


この化合物を実施例1と同様の方法でイソチウロニウム塩化法を用いてチオール化反応を行い、下記ポリチオール(以下、FSH7と略記する)を得た。
【0101】
【化46】


元素分析、IR、MS、及びNMRの結果を示す。
【0102】
【表15】


<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=380(M+
【表16】


【0103】実施例9実施例3の2−メルカプトエタノールの使用量を半分にして、下記化合物を得た。同定はNMRによって行った。
【0104】
【化47】


次に実施例6と同様の方法で臭素化、チオール化を行い、下記ポリチオール(以下、FSH8と略記する)を得た。
【0105】
【化48】


元素分析、IR、MS、及びNMRの結果を示す。
【0106】
【表17】


<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=246(M+
【表18】


【0107】実施例102−メルカプトエタノール39.1g(0.50モル)とトリエチルアミン1.0gの混合液にエピクロルヒドリン46.3g(0.50モル)を内温35〜40℃で滴下し、40℃で1時間熟成を行った。この反応液に1−チオグリセロール54.1g(0.50モル)を装入した後、49%NaOH40.8g(0.50モル)を内温35〜40℃で滴下し、40℃で2時間熟成を行い、下記4官能化合物を得た。同定はNMRにて行った。
【0108】
【化49】


次に実施例6と同様の方法で臭素化を行い、実施例2と同様の方法でチオール化を行い、下記ポリチオール(以下、FSH9と略記する)を得た。
【0109】
【化50】


【0110】元素分析、IR、MS、及びNMRの結果を示す。
【表19】


<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=306(M+
【0111】
【表20】


【0112】実施例11実施例2の下記クロル体混合物128.0g(0.50モル)
【0113】
【化51】


と2−メルカプトエタノール156.2g(2.00モル)を仕込み、その混合液に、49%NaOH163.2g(2.00モル)を35〜40℃で滴下し、50℃で2時間熟成を行い、下記ポリオールを得た。同定はNMRにて行った。
【0114】
【化52】


次にこのポリオールを、実施例1と同様の方法によってチオール化を行い、下記ポリチオール(以下、FSH10と略記する)を得た。
【0115】
【化53】


元素分析、IR、MS、及びNMRの結果を示す。
【0116】
【表21】


<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=486(M+
【表22】


【0117】実施例12実施例3と同様にして、2−メルカプトエタノール39.1g(0.50モル)に1,2,3,4−ブタンジエポキシド43.0g(0.50モル)を反応させた後に、更に1−チオグリセロール54.1g(0.50モル)を反応させて、下記ポリオールを得た。
【0118】
【化54】


このポリオールを実施例2の方法で塩素化、ポリチオール化、精製を行って、下記ポリチオール(以下、FSH11と略記する)を得た。
【0119】
【化55】


元素分析、IR、MS、及びNMRの結果を示す。
【0120】
【表23】


<IRνmax(KBr)cm-1>2544 (SH)
<MS>m/z=352(M+
【0121】
【表24】


【0122】実施例13実施例1で合成した下記異性体混合物ポリチオールFSH4
【0123】
【化56】


36.7g(0.10モル)とm−キシリレンジイソシアナート(以下XDiと略す。)37.6g(0.20モル)を混合し、均一とした後、ガラスモールドと三井石油化学製熱可塑性エラストマーで出来たガスケットよりなるモールド型に注入し、20〜120℃へ12時間で加熱硬化させた。こうして得られた含硫ウレタン系プラスチックレンズは無色透明でガスケットからの溶出による周辺部の白濁も全く無い物であった。また、得られたレンズの物性を第1表に示す。得られた樹脂のIRチャートを図1に示す。
【0124】比較例1GST{1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−プロパンチオール}41.7g(0.16モル)とXDi145.2g(0.24モル)を実施例13の条件で樹脂化を行い、含硫ウレタン系プラスチックレンズを得た。このレンズの中心部は無色透明で何ら問題が無いものであったが、周辺部にガスケットからの溶出による白濁が認められた。得られたプラスチックレンズの物性は、第2表に示す。
【0125】比較例2GMT(2−メルカプトエチルチオ−1,3−プロパンジチオール)32.1g(0.16モル)とXDi45.2g(0.24モル)を実施例13の条件で樹脂化を行い、含硫ウレタン系プラスチックレンズを得た。その結果、比較例1と同様に、周辺部にガスケットからの溶出による白濁が認められた。得られたレンズの物性は、第2表に示す。
【0126】比較例3PET{テトラキス(メルカプトメチル)メタン}34.6g(0.17モル)とXDi65.4g(0.34モル)を実施例13の条件で樹脂化を行い、含硫ウレタン系プラスチックレンズを得た。このレンズは、周辺部にもガスケットからの溶出による白濁が無く、全体が無色透明であったが、染色がほとんど出来ないレンズであった。得られたレンズの物性は、第2表に示す。
【0127】比較例4PET30.5g(0.15モル)とGST122.4g(0.47モル)とXDi188.2g(1.00モル)を実施例13の条件で樹脂化を行い、含硫ウレタン系プラスチックレンズを得た。その結果、比較例1と同様に、周辺部にガスケットからの溶出による白濁が認められた。得られたレンズの物性は、第2表に示す。
【0128】実施例14〜47、比較例5〜10実施例13と同様に含硫ウレタン系プラスチックレンズの製造を行った。結果を、第1表〜第2表に示した。尚、実施例で得られたレンズは全て、無色透明で溶出による周辺部の白濁も全く見られなかった。
【0129】
【表25】


【0130】
【表26】


【0131】
【表27】


【0132】
【表28】


【0133】
【表29】


【0134】
【表30】


【0135】
【化57】


【0136】
【化58】


【0137】
【発明の効果】本発明に係わる4官能以上のポリチオールを用いた含硫ウレタン系樹脂及びレンズは、無色透明で、高屈折率低分散で耐熱性に優れた物性を有し、なおかつ生産性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例13で作製したプラスチックレンズの赤外吸収スペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記式(1)
【化1】


から選択されるが、R1,R2,R3,R4のいずれか1個がHの場合、他のいずれか1個は
【化2】


を表し、R1,R2,R3,R4のいずれか2個がHの場合、他の2個は
【化3】


から選択され、R1,R2,R3,R4の3個以上がHとなることはない。)、下記式(2)
【化4】


(mは1〜3の整数を示す。)及び下記式(3)
【化5】


(nは0〜3の整数を表す。)のいずれかにより表される官能基を4個以上有するポリチオール。
【請求項2】 下記式(4)
【化6】


から選択されるが、A1,A2,A3,A4のいずれか1個がHの場合、他のいずれか1個は
【化7】


を表し、A1,A2,A3,A4のいずれか2個がHの場合、他の2個は
【化8】


から選択され、A1,A2,A3,A4の3個以上がHとなることはない。XはOH基、または塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基のいずれかを表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。)、下記式(5)
【化9】


(mは1〜3の整数を示し、Xは前記と同じ意味を示す。)及び下記式(6)
【化10】


(nは0〜3の整数を表し、Xは前記と同じ意味を示す。)のいずれかで表わされる化合物に、チオ尿素を反応させてイソチウロニウム塩とした後、塩基で加水分解することを特徴とする請求項1記載の官能基を4個以上有するポリチオールの製造方法。
【請求項3】 請求項1記載の官能基を4個以上有するポリチオールとポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、及びイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物から選択された少なくとも1種のイソシアナート類を含んでなる含硫ウレタン系樹脂用組成物。
【請求項4】 イソシアナート類とポリチオールの配合比率が、官能基モル比で、(NCO+NCS)/SH=0.5〜3.0である請求項3記載の組成物。
【請求項5】 請求項3記載の組成物を加熱硬化させることを特徴とする含硫ウレタン系樹脂の製造方法。
【請求項6】 請求項5記載の製造方法により得られた含硫ウレタン系樹脂。
【請求項7】 イソシアナート類とポリチオールの配合比率が、官能基モル比で、(NCO+NCS)/SH=0.5〜3.0である請求項5記載の製造方法。
【請求項8】 請求項7記載の方法により得られた含硫ウレタン系樹脂。
【請求項9】 請求項3記載の組成物をモールド内で重合させ、その後モールドから離型することを特徴とする含硫ウレタン系プラスチックレンズの製造方法。
【請求項10】 請求項9記載の方法により製造された含硫ウレタン系プラスチックレンズ。
【請求項11】 イソシアナート類とポリチオールの配合比率が、官能基モル比で、(NCO+NCS)/SH=0.5〜3.0である請求項9記載の製造方法。
【請求項12】 請求項11記載の製造方法により製造された含硫ウレタン系プラスチックレンズ。

【図1】
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