説明

新規な方法および細胞系

本発明は抗体および他の抗原結合化合物を産生する発酵操作に関する。具体的には、本発明は細胞培養にて産生される抗体の比産生能を向上させ、細胞増殖を促進し、細胞培養における細胞の生存能を向上させる方法を提供する。さらに、アデノウイルスGAM1をコードするDNAを含み、モノクローナル抗体またはそのフラグメントおよび/または変種の産生能を有する、発現が安定している生存細胞系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体および他の生物学的治療用化合物を産生するための発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種蛋白は、細菌、酵母および哺乳類の発現系を含む種々の細胞発現系において発現される。例えば、モノクローナル抗体(IgGアイソタイプ)は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、NS0、雑種細胞および骨髄腫細胞、またはその誘導体などの宿主系を含む種々の発現系を用いて産生される。細胞培養にて産生される目的とする異種蛋白の量は、その細胞培養体での他の蛋白との共同発現によることが多い。トリCELOアデノウイルスのGAM1蛋白はヒストンデアセチラーゼ1(HDAC1)の阻害を通して転写を活性化する。GAM1の一時的発現は、CHO DG44細胞の懸濁培養にてレポータ蛋白レベルを最大4倍まで増加させ、組換えCHO DG44由来の細胞系にて最大20倍まで増加させることが明らかにされた。Hackerら、Journal of Biotechnology 117 (2005) 21-29。しかしながら、Hackerらは、GAM1はCHO細胞での異種蛋白発現に対して劇的な作用を有しうるが、連続的にトランスフェクトされたCHO細胞での安定したIgG発現に対して効果がないことも示唆している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Hackerら、Journal of Biotechnology 117 (2005) 21-29
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】GAM1が抗−OSM細胞系のmAb比産生能(SPR)を増加させたことを示す。
【図2】抗−OSM GAM細胞中のGAM1のmRNAレベルを示す。
【図3】GAM1が抗−MAG細胞系のmAbSPRを増加させたことを示す。
【図4】GAM1が抗−BAM細胞系のmAbSPRを増加させたことを示す。
【図5】抗−OSM GAM1クローンが60回の継代にわたって高産生能を維持することを示す。
【図6】抗−OSM産生実験− 抗−OSMのGAM1との生存能
【図7】抗−OSM産生実験− 抗−OSMのGAM1との増殖
【図8】抗−OSM産生実験− 抗−OSMのGAM1との力価
【図9】図9および9Bは、GAM1がMR培養でのMabの増加をもたらす細胞数および生存能を増加させたことを示す。
【図10】96−ウェルBAMクローンでの抗−BAMスクリーニングを示す。
【図11】96−ウェルBAM GAM1クローンでの抗−BAMスクリーニングを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、IgGタイプの抗体等のモノクローナル抗体が種々の疾患の治療に用いられている。モノクロナール抗体を治療目的で産生するには、該抗体は十分な量で製造されなければならず、同時に純度および活性は法的な要求事項に合致する必要がある。かくして、モノクローナル抗体の細胞培養での比産生能(specific productivity)を増加させることに対する要求がある。本発明は細胞培養にて産生される抗体の比産生能を増加させる方法を開示する。さらには、本発明は細胞培養での細胞増殖および細胞生存能を増大させる方法を提供する。また、GAM1をコードするDNAを含み、モノクローナル抗体またはそのフラグメントおよび/または変種を産生する能力を有する、発現が安定し、生存能のある細胞系も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様にて、第一の細胞中の、組換え抗体またはそのフラグメントの第一の比産生能を増加させる方法であって、該抗体またはそのフラグメントをアデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種と共同して発現させること(co-expressing)を含み、ここで該第一の比産生能は、第二の細胞にて発現される同じ抗体またはそのフラグメントの第二の比産生能と比較して該抗体またはそのフラグメントについて大きく、該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は発現されないところの方法が提供される。
【0007】
本発明のもう一つ別の態様において、第一の細胞培養中の積分生存細胞(integral viable cell)を増加させる方法であって、抗体またはそのフラグメントを、第一の細胞培養の少なくとも一の細胞にてアデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種と一緒に共同して発現させることを含み、ここで該第一の細胞培養の該積分生存細胞は第二の細胞培養の積分生存細胞と比較して多く、該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は発現されないところの方法が提供される。
【0008】
本発明のさらに別の実施態様において、発現が安定し、生存能のある細胞系を製造する方法であって、少なくとも1つの哺乳動物細胞を、アデノウイルスGAM1またはその変種および/またはフラグメントをコードするDNAでトランスフェクトさせ、ここで該発現が安定し、生存能のある細胞系が少なくとも1つの哺乳動物細胞を含むところの方法が提供される。一の態様において、細胞系は少なくとも約40回の継代、少なくとも約50回の継代、あるいは少なくとも約60回の継代にわたって生存し、かつ安定して発現し続ける。
【0009】
もう一つ別の実施態様において、アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAを含む、発現が安定し、生存能があって、モノクローナル抗体あるいはそのフラグメントおよび/または変種の産生能を有する細胞系が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語集
本願明細書において使用するとき、ゲノムへの「天然の」組換え部位とは、自然に細胞のゲノムで起こる組換え部位を意味する(すなわち、その部位は、例えば、組換え手段によって、ゲノムに導入されない。)
【0011】
本願明細書において使用するとき、「エンハンサ/プロモータ」とは、(1)結合部位をRNAポリメラーゼおよび関連する特異的必須転写因子(プロモータ)に提供することによって転写の開始を引き起こし、および/または(2)それらの発現を強化するために遺伝子と相互作用する調節性DNA要素(エンハンサ)を含むDNAの領域を意味する。プロモータの例は、これに限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモータ/エンハンサ、ベータグロビンプロモータ、ニワトリ肉腫ウイルス(RSV)末端反復配列プロモータ/エンハンサおよび伸張因子αプロモータ/エンハンサを包含する。
【0012】
本願明細書において使用するとき、「哺乳動物細胞」とは、連続的な固定に従属して、または懸濁増殖能を有し、かつ組換え蛋白の発現の支持能を有する哺乳動物細胞系を意味する。哺乳動物細胞の例には、これに制限されないが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、PerC6、Her96、SP2/0、NS0、HeLa、コッカスパニエル雌犬腎臓(Madin-Darby Canine Kidney)、COS細胞、ベビーハムスター腎細胞およびNIH3T3細胞が含まれる。
【0013】
本願明細書において使用するとき、「レポータ核酸構造物」は、選択可能なマーカーを生産する核酸配列を意味する。選択可能なマーカーは、これに限定されないが、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)、ネオマイシン(neo)、ゲンチシン、ヒグロマイシンB、ピューロマイシン、ゼオシンおよびアンピシリンを含む抗生物質耐性遺伝子、β-ガラクトシダーゼ、蛍光蛋白、ヒト胎盤アルカリ性ホスファターゼの分泌形態、β‐グルクロニダーゼ、酵母で選択可能なマーカーleu2-dおよびURA3、アポトーシス耐性遺伝子およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0014】
「宿主細胞」は、これに限定されはないが、単離された、および/または異種のポリヌクレオチド配列によって導入された(例えば、形質転換された、感染された、トランスフェクトされた)、または導入(例えば、形質転換、感染、トランスフェクション)が可能な、哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、または微生物の細胞を包含する細胞である。
【0015】
「形質転換されて」または「形質転換している」は、当該分野にて知られており、単離された、および/または異種のDNA、RNA、またはDNA‐RNAハイブリッドの導入、またはそのようなDNAまたはRNAの他の安定な導入による微生物のゲノムまたはエピソームの修飾である。
【0016】
「トランスフェクトされて」または「トランスフェクトしている」は、当該分野にて知られており、単離された、および/または異種のDNA、RNA、またはDNA‐RNAハイブリッド(これに限定されないが、組換えDNAまたはRNAを含む。)の宿主細胞または微生物への導入である。
【0017】
「異種の(異種的に)」は、(a)単離によって微生物から得られて、例えば、遺伝子操作またはポリヌクレオチド移動を介して、他の微生物に導入される、および/または(b)自然の中に存在する手段以外の手段によって微生物から得られ、例えば細胞融合、誘発された交配またはトランスジェニック操作を介して、他の生物に導入される、ことを意味する。異種材料は、例えば、該材料が導入される生物または細胞のものよりも、同じ種または型あるいは異なる種または型から得られてもよい。
【0018】
「組換え発現系」は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの生産のために宿主細胞または宿主細胞溶菌液に導入される(例えば、トランスフェクト、感染または形質転換される)、本発明の発現系またはその部分あるいはポリヌクレオチドをいう。
【0019】
本明細書において使用するとき、「人工染色体」とは、細胞内で安定して複製し、同時に内部染色体を分裂しうる、核酸分子である。該染色体は、その中に含まれる異種遺伝子と適合して、発現することにより、遺伝子送達ビヒクルとして作用する能力を有する。哺乳動物の人工染色体(MAC)は活性な哺乳動物セントロメアを有する染色体をいう。植物人工染色体、昆虫人工染色体、酵母人工染色体およびトリ人工染色体は、各々、植物、昆虫、酵母およびトリセントロメアに含まれる染色体をいう。ヒト人工染色体(HAC)はヒトセントロメアを含む染色体をいう。例示としての人工染色体については、例えば、米国特許第6025155号;第6077697号;第5288625号;第5712134号;第5695967号;第5869294号;第5891691号および第5721118号;ならびに国際公開97/40183および98/08964を参照のこと。
【0020】
本明細書において使用するとき、「サテライトDNAをベースとする人工染色体(SATAC)」なる語は、「人工染色体発現系(ACes)なる語と相互変換可能である。これらの人工染色体は、外来異種の、典型的にはその中で発現するようにヘテロクロマチンの中に散剤している、遺伝子コード化核酸を除いて、実質的にはすべて天然に存在しないコード化配列である(米国特許第6025155号および第6077697号、ならびに国際公開97/40183を参照のこと)。これらの人工染色体の発現系に含まれる外来遺伝子は、限定されるものではないが、緑色、青色または赤色の蛍光蛋白(各々、GFP、BFPおよびRFP)などの蛍光蛋白のような追跡可能なマーカ蛋白をコードする核酸(レポータ遺伝子)、他のレポータ遺伝子、ベータ−ガラクトシダーゼおよび薬物耐性を付与する蛋白のようなヒグロマイシン−耐性をコードする遺伝子などを包含しうる。異種DNAの他の例として、限定されるものではないが、抗癌剤、酵素およびホルモンなどの治療上有効な物質をコードするDNA、および抗体などの別の型の蛋白をコードするDNAが挙げられる。
【0021】
本願明細書において使用するとき、「組換え抗体」は、そのすべての修飾されたおよび修飾されていない抗体および/またはそのフラグメントまたはその変異体を含み、抗体のすべての変異体および/または組換え発現系から宿主細胞において発現されるそのフラグメントを意味する、組換え抗体の化学修飾は、これに限定されないが、メチオニン酸化、グリコシル化、グルコノイル化、N末端グルタミン環化およびアミド分解、およびアスパラギンアミド分解を包含する。
【0022】
本願明細書において、「抗体」なる語は、最も幅広い意味において使われ、特にモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、マルチ特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物活性を示す範囲の抗体フラグメントを包含する。
【0023】
当該分野にて認識されているように、「野生型」なる語は、変異することなく、天然集団に生じるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列をいう。
【0024】
本願明細書において使用するとき、「モノクローナル抗体」なる語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、例えば、自然に生じる可能性のある変異(少量で存するかもしれない)を除いて、同一の集団からなる個々の抗体をいう。モノクローナル抗体は、単一の抗原性部位に向けられ、高度に特異的である。さらに、典型的には、異なるエピトープに向けられる異なる抗体を含むポリクロナール抗体調製物とは異なり、モノクローナル抗体は、各々、抗原上の単一のエピトープに向けられる。
【0025】
「抗体フラグメント」は、完全長抗体の一部、一般には、抗原結合またはその可変領域からなる。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメント;二重特異性抗体(diabody);線形抗体;単鎖抗体分子および抗体フラグメントから形成されるマルチ特異性抗体を含む。
【0026】
「抗原と結合するフラグメント」なる語は、抗原と特異的に結合する抗体の領域をいう。
【0027】
「免疫グロブリン単一可変領域」なる語は、他のV部位または領域の抗原またはエピトープと独立して特異的に結合する抗体可変領域(例えば、V、VHH、V)をいう;しかしながら、該語が本願明細書において使われるとき、免疫グロブリン単一可変領域は、他の部位または領域が単一免疫グロブリン可変領域によって抗原結合のために必要とされない可変部または可変領域と一緒の形態(例えば、ホモマルチマーまたはヘテロマルチマー)に存在しうる(すなわち、ここで、免疫グロブリン単一可変領域は、さらなる可変領域と独立して、抗原と結合する)。「免疫グロブリン単一可変領域」は、単離された抗体単一可変領域ポリペプチドだけでなく、抗体単一可変領域ポリペプチド配列の一または複数のモノマーからなるより大きいポリペプチドも含む。「抗体領域」または「dAb」は、本明細書にて用いるとき、「免疫グロブリン単一可変領域」ポリペプチドと同じである。本願明細書において使用されるとき、免疫グロブリン単一可変領域ポリペプチドは、哺乳類の免疫グロブリン単一可変領域ポリペプチド(ヒトでもよいが、齧歯動物(例えば、国際公開00/29004に開示されるように、その全体を出典明示により本明細書の一部とする)またはラクダ科の動物のVHH dAbを含む)をいう。ラクダ科の動物dAbは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダおよびグアナコを含む種から誘導される免疫グロブリン単一可変領域ポリペプチドで、軽鎖が自然に欠けている重鎖抗体:VHHからなる。VHH分子は、IgG分子より約10倍小さく、単一ポリペプチドとして、それらは非常に安定であり、極度のpHおよび温度条件に対して耐性である。
【0028】
本願明細書において使用するとき、「生産量」は、溶液中(例えば、培養液または溶菌混合液またはバッファ)の生産物(例えば、異種的に発現したポリペプチドおよび/または組換え抗体)の濃度をいい、mg/Lまたはg/Lとして表すことができる。生産量の増加は、2つの定められた条件下で、生産される生産物の濃度の絶対的または相対的な増加をいう。
【0029】
本願明細書において使用するとき、「積分生存細胞」とは、生存細胞の数を示す縦軸と、増殖日数を示す横軸とからなる成長曲線下で認められる面積をいい、細胞−日数の単位で表すことができる。
【0030】
本願明細書において使用するとき、「比産生能」とは、細胞培養にて、異種蛋白、例えばIgGを産生する細胞系の産生能をいう。比産生能は最終収量を積分生存細胞で割ることで計算でき、pg/細胞/日で表される。
【0031】
本願明細書において使用するとき、「同時共同トランスフェクション」または「同時に共同してトランスフェクトする」なる語は、細胞または共同してトランスフェクトされる細胞を少なくとも1個の第一の異種蛋白(例えば、抗体または抗体の重鎖および/または軽鎖を含むフラグメント)をコードするDNAと、少なくとも1個の第二の異種蛋白(例えば、GAM1)とで同時に共同してトランスフェクトし、選択可能な培地の存在下で培養する方法をいう。一例として、抗体の重鎖をコードするDNAは、GAM1をコードするDNAと共に細胞に同時にトランスフェクトされてもよい。本願明細書において使用する場合に、「同時共同トランスフェクション発現」とは、同時に共同してトランスフェクトされる細胞での少なくとも1個の第一の異種蛋白(例えば、抗体または抗体の重鎖および/または軽鎖を含むフラグメント)の発現をいう。
【0032】
本願明細書において使用する場合に、「連続トランスフェクション」または「連続してトランスフェクトされる」とは、細胞またはトランスフェクトされた細胞を、少なくとも1個の第一の異種蛋白(例えば、抗体または抗体の重鎖および/または軽鎖を含むフラグメント)をコードするDNAでトランスフェクトし、ついで連続して少なくとも1個の第二の異種蛋白(例えば、GAM1)をコードするDNAでトランスフェクトし、選択可能な培地の存在下で培養する方法をいう。一例として、抗体の重鎖および/または軽鎖をコードするDNAは、重鎖および/または軽鎖を発現する安定した生存細胞系を製造する細胞のゲノムにトランスフェクトされる。トランスフェクトされた細胞は選択マーカーを用いて選択されうる。ついで、GAM1をコードするDNAを安定した該生存細胞系にトランスフェクトし、それは選択可能な手段を用いて選択され得る。もう一つ別の例として、GAM1をコードするDNAはGAM1を発現する安定した細胞系を製造する細胞のゲノムにトランスフェクトされてもよい。ついで、抗体の重鎖および/または軽鎖をコードするDNAを安定した生存GAM1細胞系にトランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞は選択マーカーを用いて選択されうる。本願明細書において使用する場合に、「連続トランスフェクション発現」とは、連続してトランスフェクトされる細胞での少なくとも1個の第一異種蛋白の発現をいう。
【0033】
本願明細書において使用する場合に、「安定して組み込まれた」または「安定した組込み」なる語は、長期にわたって再生可能な発現がなされるように、目的とする異種核酸を宿主細胞の染色体DNA中に形質転換することを意味する。
【0034】
本願明細書において使用する場合に、「安定した発現」または「発現の安定した」とは、少なくとも1個の組換え蛋白の発現を維持する能力を有するいずれかの細胞からの発現をいう。発現の安定した細胞は、限定されるものではないが、同時に共同してトランスフェクトされる細胞および連続してトランスフェクトされる細胞を包含する。
【0035】
本願明細書に置いて使用する場合に、「継代」または「継代した」なる語は、細胞が培養にて新たな細胞の世代を生成し、なおも生存するのに必要な時間間隔をいう。一例として、本発明にて記載のCHO細胞は3ないし4日毎に1回の継代を受けてもよい。したがって、3ないし4日毎に1回の継代を受け、50回の継代を受ける細胞は、少なくとも175日の間生存し続ける。
【0036】
「単離された」は、その本来の周囲の状況から変化された、または、取り出されている、または、その両方の、自然の状態から「人の手によって」改変されたこと、を意味する。例えば、生体系に自然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離された」ではないが、その自然の状態の共存している材料から切り離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離された」であり、これに限定されないが、細胞がポリヌクレオチドまたはポリペプチドが分離された細胞と同じ種または型の場合であっても、そのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドがその細胞に再び導入される場合を含む。
【0037】
核酸は、それが他の核酸配列と機能的な関係にあるときに、「操作可能に連結され」ている。例えば、それがポリペプチドの分泌に関与する蛋白前駆体として発現される場合、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドのDNAに操作可能に連結され;それが配列の転写に影響を及ぼす場合、プロモータまたはエンハンサはコード配列に操作可能に連結され;または、それが翻訳を容易にするように配置される場合、リボソーム結合部位はコード配列に操作可能に連結される。一般に、「操作可能に連結される」は、連結されているDNA配列が隣接していること、そして、分泌リーダーの場合、隣接し、リーダーフェーズの中にあることを意味する。しかしながら、エンハンサは隣接する必要はない。連結は都合のよい制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合は、通常の手法にしたがって、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0038】
「ポリヌクレオチド」とは、一般に、修飾されていないRNAまたはDNAあるいは修飾されたRNAまたはDNAでもよい、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリ・デオキシリボヌクレオチドを意味する。「ポリヌクレオチド」は、限定するものではないが、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖および二本鎖の領域または一本鎖、二本鎖および三本鎖の領域の混成であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、および一本鎖および二本鎖の領域の混成であるRNA、一本鎖でもよく、典型的には二本鎖、または三本鎖、あるいは一本鎖と二本鎖の領域の混成であるDNAとRNAからなるハイブリッド分子を包含する。加えて、本願明細書において用いられる場合に、「ポリヌクレオチド」は、RNAまたはDNA、またはRNAおよびDNAの両方のからなる三重鎖の領域をもいう。そのような領域における鎖は、同一の分子または異なる分子からのものでもよい。この領域は、一つまたは複数の分子の全てを含むことができるが、より典型的には、幾つかの分子の一領域のみを含む。三重らせん領域の分子の一つはオリゴヌクレオチドであることが多い。本願明細書において用いられる場合に、「ポリヌクレオチド」なる語も、上記のように、一つまたは複数の修飾された塩基からなるDNAまたはRNAを含む。このように、安定性または他の理由のために修正される主鎖を有するDNAまたはRNAは、その用語が本願明細書において意味されるような「ポリヌクレオチド」である。さらに、通常でない塩基、例えば、2つだけ例示として挙げる、イノシンまたは修飾塩基、例えば、トリチル化塩基からなるDNAまたはRNAは、その用語が本願明細書において使用されるような「ポリヌクレオチド」である。当業者に既知の多くの有用な目的を提供するDNAおよびRNAに、非常に多くの修飾がなされていることは、明らかであろう。本願明細書において使用される場合に、「ポリヌクレオチド」なる語は、ウイルスおよび細胞(例えば、単純なおよび複雑な細胞を含む)に特有のDNAおよびRNAの化学形態と同様に、このような化学的に、酵素的に、または、代謝的に修正された形態も包含する。「ポリヌクレオチド」も、しばしばオリゴヌクレオチドとして指される短いポリヌクレオチドを包含する。
【0039】
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合または改変されたペプチド結合によってそれぞれに接続される2つ以上のアミノ酸からなるいかなるペプチドまたは蛋白をいう。「ポリペプチド」は、一般に、ペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーと称される短鎖、および一般に蛋白と称される長鎖の両方をいう。ポリペプチドは、遺伝子でコードされた20種アミノ酸とは別のアミノ酸からなることができる。「ポリペプチド」は、自然なプロセス(例えばプロセシングおよび他の翻訳後修飾)によって修飾されたものを含むが、化学的修飾技術によっても修飾されるものも含む。かかる修飾は、基本テキストおよび、より詳細な研究論文、ならびに膨大な研究文献にて詳しく記載されており、それらは当業者に周知である。いうまでもなく、同じ型の修飾は、所定のポリペプチドのいくつかの部位で、同程度または種々の程度にて存在してもよい。また、所定のポリペプチドは、多くの型の修飾を含んでいてもよい。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシ末端を包含するポリペプチドのどこでも起こり得る。修飾は、例えば、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋性、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合的架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ―カルボキシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、蛋白分解性処理、リン酸エステル化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質吸着、硫酸化、グルタミン酸酸基のγ―カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADPリボシル化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAを介したアミノ酸の蛋白への付加、例えば、アルギニン化およびユビキチン結合を含む。例えば、PROTEINS - STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York (1993) and Wold, F., Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs. 1-12 in POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York (1983); Seifter et al., Meth. Enzymol. 182:626-646 (1990) および Rattan et al., Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging, Ann. N.Y. Acad. Sci. 663: 48-62 (1992)を参照のこと。ポリペプチドは分岐していても、あるいは分岐を有しまたは有することなく環式であってもよい。環式、分岐および分岐円形のポリペプチドは、翻訳後の自然な過程から生じる場合があって、同様に、完全に合成的な方法によって製造されることができる。
【0040】
「同一性」は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドのための、場合によっては、下記の(1)および(2)において設けられているアルゴリズムを使用して算出した比較を意味する。
【0041】
(1)ポリヌクレオチドの同一性は、所定の配列のヌクレオチドの総数と100で割られるパーセント同一性を定めている整数を乗算し、その積を前記配列のヌクレオチドの前記総数から減算することによって算出される、すなわち、
【数1】

ここで、nnはヌクレオチドの変更数であり、xnは所定の配列のヌクレオチドの総数であり、yは、95%では0.95、97%では0.97または100%については1.00であり、●はある乗算演算子のための記号であり、ここで、xnおよびyのいかなる非整数結果も、それをxnから減算する前に最も近い整数まで切り捨てられる。ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列の変更は、このコード配列のナンセンス、ミスセンスまたはフレームシフト突然変異を発生させることができ、これによって、このような変更にしたがって、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを変更する。
【0042】
(2)ポリペプチドの同一性は、アミノ酸の総数と100で割ったパーセント同一性を定めている整数を乗算し、その積をアミノ酸の前記総数から減算することによって算出される、すなわち、
【数2】

ここで、naはアミノ酸の変更数であり、xaはその配列のアミノ酸の総数であり、yは、95%では0.95、97%では0.97または100%では1.00であり、●はある乗算演算子のための記号であり、ここでxaおよびyのいかなる非整数結果も、それをxaから減算する前に最も近い整数まで切り捨てられる。
【0043】
本願明細書において使われる場合の「変異体」は、それぞれ、対照となるポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、基本的特性を保持するポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。ポリヌクレオチドの典型的変異体は、ヌクレオチド配列において、もう一方の基準のポリヌクレオチドと異なる。変異体のヌクレオチド配列の変更は、基準のポリヌクレオチドによってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列を変える、または変えなくてもよい。後述するように、ヌクレオチドの変更は、基準配列によってコード化されるポリペプチドにおいて、アミノ酸の置換、付加、削除、融合タンパク質およびトランケーションに結果としてなる場合がある。典型的なポリペプチドの変異体は、もう一つの基準のポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。通常、基準のポリペプチドおよび変異体の配列が全体的に密接に類似および、多くの領域において同一であるように、違いは制限される。変異体および基準のポリペプチドは、一つまたは複数の置換、付加により、任意の組合せによって、アミノ酸配列において異なることができる。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝コードによってコード化されていても、いなくてもよい。本発明は、本発明のポリペプチドのそれぞれの変異体を含み、それは保存的なアミノ酸の置換によって基準から変化するポリペプチドであって、それによって、残基は似た特徴を有するもう一方によって置換される。典型的なそのような置換は、Ala、Val、LeuおよびIleの間;SerおよびThrの間;酸性残基AspおよびGluの間;AsnおよびGlnの間;そして、塩基性残基LysおよびArgの間;または芳香族残基PheおよびTyrである。数個、5−10、1−5、1−3、1−2または1つのアミノ酸が、任意の組合せで、置換、削除、または、付加される変異体が好ましい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は、例えば、対立遺伝子変異体のような自然に発生するものでもよく、自然に発生することが公知でない変異体でもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの自然に生じない変異体は、突然変異誘起技術によって、直接合成によって、および、当業者に知られている他の組換え方法によってなされることができる。
【0044】
無傷の抗体は、少なくとも2つの重鎖および2つの軽鎖からなるヘテロマルチマー蛋白および糖蛋白を包含する。IgMとは別に、無傷の抗体は、通常、2つの同一の軽鎖(L鎖)および2つの同一の重鎖(H鎖)からなる、約150Kdaのヘテロテトラマー糖蛋白である。典型的には、各軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結され、その一方で種々のイムノグロブリンアイソタイプの重鎖の間のジスルフィド結合の数は変化する。重鎖と軽鎖の各々はまた、内部鎖(intrachain)のジスルフィド架橋も有する。重鎖の各々は、一端で可変領域(VH)を有し、つづいて多数の定常領域を有する。軽鎖の各々は可変領域(VL)を、その他の端で定常領域を有し;軽鎖の定常領域は重鎖の第一の定常領域と配列され、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と配列される。大部分の脊椎種から由来の抗体の軽鎖は、定常領域のアミノ酸配列を基礎として、カッパおよびラムダと称される2つの型の一方に帰属させることができる。その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、ヒト抗体は5種のクラス、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに帰属させることができる。IgGおよびIgAはさらにサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4;およびIgA1およびIgA2に細分類できる。少なくともIgG2a、IgG2bを有するマウスとラットで種変異体が存在する。抗体の可変領域が相補性決定領域(CDR)と称される特有の多様性を提示する特定の領域で抗体に対する結合特異性を付与する。可変領域のさらに保存されている部分がフレームワーク領域(FR)と称される。無傷の重鎖および軽鎖の各々の可変領域は3個のCDRにより関連付けられる4個のFRを含む。各鎖中のCDRは、FR領域と密に隣接する状態にて、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する他の鎖からのCDRと一緒に折り畳まれる。定常領域は抗体の抗原との結合に直接関与する必要はないが、抗原依存性細胞媒介細胞障害性(ADCC)、Fcγレセプターとの結合を介する食作用、新生児Fcレセプター(FcRn)を介する半減期/クリアランス速度、および補体カスケードのClq成分を介する補体依存性細胞障害への関与などの種々のエフェクター機能を示す。
【0045】
ヒト抗体は当業者に知られている多くの方法により産生されうる。ヒト抗体はヒト骨髄腫またはマウス−ヒトへテロ骨髄腫細胞系を用いるハイブリドーマ方法により産生することができる(Kozbor J.Immunol 133, 3001, (1984) およびBrodeur, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp51-63 (Marcel Dekker Inc. 1987)を参照のこと)。別の方法として、ヒトV領域レパートリーを利用する、ファージライブラリーまたはトランスジェニックマウスの使用が挙げられる(Winter G. (1994), Annu. Rev. Immunol. 12, 433-455, Green LL (1999), J. Immunol. Methods 231, 11-23を参照のこと)。
【0046】
今日、マウス免疫グロブリン遺伝子座がヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントと置き換えられている、トランスジェニックマウスの数種の血統が入手可能である(Tomizuka K.
(2000) PNAS 97: 722-727; Fishwild D.M. (1996) Nature Biotechnol. 14, 845-851, Mendez MJ, 1997, Nature Genetics, 15, 146-156を参照のこと)。抗原を投与すると、かかるマウスはヒト抗原のレパートリーを産生することができ、そのレパートリーから目的とする抗体を選択することができる。ヒトリンパ球を放射線照射されたマウスに移すトリメラ(登録商標)システム(Trimera TM system)、マッシブプールドインビトロ抗体産生手段を介してヒト(または他の種)リンパ球を効果的に置き、つづいてデコンビュレート(deconvulate)し、制限希釈を行い、ついで選択操作を行う、セレクテッドリンホサイトアンチボディーシステム(Selected Lymphocyte Antibody System)(SLAM、Babcookら、PNAS(1996)93: 7843-7848)、およびXenomousse II(登録商標)(Abgenix Inc)が顕著である。もう一つの解決方法がMorphodoma(登録商標)技法を用いるMorphotek Inc
より入手可能である。
【0047】
ファージ提示法を用いてヒト抗体(およびそのフラグメント)を産生することができる(Mc Cafferty; Nature, 348, 552-553 (1990)およびGriffiths ADら(1994)EMBO 13:3245-3260を参照のこと。この方法によれば、抗体V領域の遺伝子がM13またはfdなどの線維状バクテリオファージの蛋白遺伝子のメジャーまたはマイナーなコートのいずれかにフレームにてクローンされ、ファージ粒子の表面上の機能的抗体フラグメントとして提示される(ヘルパーファージの助けを借りてもよい。抗体の機能特性に基づて選択すると、その結果として、そのような機能性を示す抗体をコードする遺伝子が選択される。ファージ提示法を用いて、上記した疾患または障害を患っている個体から採取したヒトB細胞より製造されたライブラリーから、あるいはまた免疫処理されていないヒトドナーから、抗原特異的抗体を選択することができる(Marks; J. Mol. Bio. 222: 581-597, 1991を参照のこと)。Fc領域からなる無傷のヒト抗体が望ましい場合、ファージ提示して誘導されたフラグメントを、所望の定常領域からなる哺乳類発現ベクター中にリクローン処理に付し、安定した発現細胞系を確立する必要がある。
【0048】
親和性成熟の方法(Marks, Bio/technol 10: 779-783(1992))を用いて結合親和性を改善してもよく、ここでヒト一次抗体の親和性はHおよびL鎖のV領域を自然に存在する変異体と連続して置き換え、結合親和性の改善に基づいて選択することで改善される。「エピトープ・インプリンティング」などのこの方法の変法も利用できる(WO93/06213を参照のこと)。さらにWaterhouse; Nucl. Acids Res. 21: 2265-2266(1993)も参照のこと。
【0049】
ヒト疾患または障害の治療における無傷の非ヒト抗体の使用は、今では十分に確立されている免疫原性の問題を生じさせる可能性がある;すなわち、患者の免疫系が非ヒト抗体に対する中和反応をしかける可能性がある。これらの問題を解決するのに何年にもわたって種々の技法が開発されてきた。かかる方法の一つとして、キメラ抗体が挙げられ、それは一般に非ヒト(例えば、マウスなどの囓歯動物)の可変領域をヒト定常領域に融合させることを含む。抗体の抗原結合部位は可変領域内にあるため、キメラ抗体は抗原との結合親和性を残す一方で、ヒト定常領域のエフェクター機能を獲得し、したがって上記したようにエフェクター機能を発揮することができる。キメラ抗体は、典型的には、組換えDNA法を用いて産生される。抗体をコードするDNA(例えば、cDNA)は従来の方法を用いて単離され、かつ配列決定される(例えば、本発明の抗体のHおよびL鎖をコードする遺伝子に特異的に結合する能力を有するオリゴヌクレオチドのプローブを用いることによりなされる)。かかるDNAの典型的な供給源としてハイブリドーマ細胞を供する。DNAを単離すると、そのDNAを発現ベクターの中に入れ、ついでイー・コリ、COS細胞、CHO細胞または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトし、そうしないと該宿主細胞は免疫グロブリン蛋白を生成し、抗体の合成を達成しえない。ヒトLおよびH鎖のコード配列を対応する非ヒト(例えば、ネズミ)HおよびL定常領域と置換することでDNAを修飾してもよい(例えば、Morrison、PNAS 81: 6851(1984)を参照のこと)。
【0050】
本発明の抗体は、成熟蛋白のN末端で特異的な切断部位を有する異種シグナル配列との融合蛋白として産生されてもよい。該シグナル配列は宿主細胞により認識され、プロセッシングされるであろう。原核宿主細胞の場合、シグナル配列はアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーであってもよい。酵母分泌では、シグナル配列は酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダーまたは酸ホスファターゼリーダーであってもよい(例えば、
WO90/13646を参照のこと)。哺乳動物細胞系において、単純ヘルペスgDシグナルおよび天然免疫グロブリンシグナル配列などのウイルス性分泌リーダーが利用可能である。シグナル配列はリーディングフレームにて発明の抗体をコードするDNAにライゲートされてもよい。
【0051】
複製の起源として、pBR322が大部分のグラム陰性菌に、2μプラスミドが大部分の酵母に、およびSV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPVなどの種々のウイルス起源が大部分の哺乳動物細胞に適することが当該分野にて周知である。複製の起源のコンポーネントが哺乳類の発現ベクターに必要であるかもしれないが、SV40が初期プロモータを含有するという理由でSV40を使用してもよい。
【0052】
選択遺伝子は、(a)抗生物質または他のトキシン、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートまたはテトラサイクリンに対して耐性を付与し、または(b)オキシオトロフィック(auxiotrophic)欠陥を補足し、または複雑な培地にて利用できない栄養素を供給する、蛋白をコードする。選択のスキームは宿主細胞の成長を阻止することと関連しているかもしれない。本発明の治療性抗体をコードする遺伝子でトランスフォームするのに成功した細胞は、例えば、選択マーカーにより付与される薬物耐性に起因して生き残る。もう一つの例がいわゆるDHFR選択マーカーであり、それでは形質転換体をメトトレキサートの存在下で培養する。典型的な例として、細胞を多量のメトトレキサートの存在下で培養し、目的とする外因性遺伝子のコピー数を増幅させる。DHFR選択では、CHO細胞が特に有用な細胞系である。さらなる例がグルタメートシンセターゼ発現系(Lonza Biologics)である。酵母に用いるのに適する選択遺伝子がtrpl遺伝子である(Stinchcombら、Nature 282: 38, 1979を参照のこと)。
【0053】
抗体の発現に適するプロモータを、該抗体をコードするDNA/ポリヌクレオチドに操作可能に連結させる。原核生物の宿主のためのプロモータは、限定されるものではないが、phoAプロモータ、ベータ−ラクタマーゼおよびラクトースプロモータ系、アルカリ性ホスファターゼ、トリプトファンおよびハイブリッドプロモータ、例えばTacを包含する。酵母細胞での発現に適するプロモータは、限定されるものではないが、3−ホスホグリセレートキナーゼまたは他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベート デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼおよびグルコキナーゼを包含する。誘導型酵母プロモータは、限定されるものではないが、アルコール デヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、メタロチオネインおよび窒素代謝またはマルトース/ガラクトース利用に応答可能な酵素を包含する。
【0054】
哺乳動物細胞系での発現に適するプロモータは、限定されるものではないが、ウイルスプロモータ、例えばポリオーマ、鶏頭およびアデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(特に、前初期遺伝子プロモータであって、例えば、WO02/36792に記載されるように、エクソン1を含むHCMV IE遺伝子の5’非翻訳領域が含まれており、イントロンAが部分的にまたは完全に除かれているプロモータ)、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、アクチン、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモータおよび初期もしくは後期サルウイルス40を包含する。もちろん、プロモータの選択は発現に用いるのに適する宿主細胞との適合性を基礎とする。したがって、一の実施形態において、RSVおよび/またはSV40および/またはCMVプロモータ、本発明の軽鎖V領域(V)をコードするDNA、ネオマイシンおよびアンピシリン耐性選択マーカーとのκC領域を含む第一のプラスミド、およびRSVまたはSV40プロモータ、本発明の重鎖V領域(V)をコードするDNA、γ1定常領域、DHFRおよびアンピシリン耐性マーカーをコードするDNAを含む第二のプラスミドが提供される。もう一つ別の態様にて、プロモータはpEF(伸長因子α)ではない。
【0055】
高度真核生物における発現について、ベクター中のプロモータ因子に操作可能に連結されるエンハンサー因子を含む特定の実施形態を用いてもよい。適当な哺乳動物のエンハンサー配列は、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテインおよびインスリンからのエンハンサー因子を包含する。また、真核生物細胞ウイルス、例えばSV40エンハンサー(bp100−270での)、サイトメガロウイルス初期プロモータエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、バキュロウイルスエンハンサーまたはネズミIgG2a遺伝子座からのエンハンサー因子を用いてもよい(WO04/009823を参照のこと)。該エンハンサーはプロモータの上流にある部位のベクター上にあってもよい。
【0056】
抗体をコードするベクターをクローンまたは発現するのに適する宿主細胞は原核生物、酵母または高度真核生物の細胞である。適当な原核生物の細胞として、真正細菌、例えば腸内細菌、例えばエシェリヒア、例えばイー・コリ(例えば、ATCC31446;31537;27325)、エンテロバクター、エルビニア、クレブシエラ・プロテウス、サルモネラ、例えばサルモネラ・チフィムニウム、セラチア、例えばセラチア・マルセスカンスおよびシゲラならびにバチルス・サブチリスおよびバチルス・リケニホルミスなどのバチルス(DD266710を参照のこと)、シュードモナス・アエルギノサなどのシュードモナスおよびストレプトミセスが挙げられる。酵母宿主細胞の中では、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ボンベ、クルイヴェロミセス(例えば、ATCC16045;12424;24178;56500)、ヤロビア(EP402226)、ピチア・パストリス(EP183070,pengら、J.Biotechnol. 108 (2004) 185-192も参照のこと)、カンジダ、トリコデルマ・リージア(RP244234)、ペニシリン、トリポクラジウムおよびアスペルギルス・ニデュランスおよびアスペルギルス・ニガーなどのアスペルギルス宿主もまた意図される。
【0057】
適当な高度真核生物の細胞は、限定されるものではないが、哺乳動物細胞、例えば、COS−1(ATCC番号CRL1650)、COS−7(ATCC CRL1651)、ヒト真核腎細胞系293、ベビーハムスター腎細胞(BHK)(ATCC CRL1632)、BHK570(ATCC番号:CRL10314)、293(ATCC番号CRL1573)、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO(例えば、CHO−K1、ATCC番号:CCL61、DHFR−CHO細胞系、例えばDG44(Urlaubら、(1986)Somatic Cell Mol. Genet. 12, 555-556を参照のこと)、特にこれらの懸濁培養に適するCHO細胞系、マウスセルトリ細胞、サル腎細胞、アフリカミドリサル腎細胞(ATCC CRL−1587)、HELA細胞、イヌ腎細胞(ATCC CCL34)、ヒト肺細胞(ATCC CRL75)、HepG2および骨髄腫またはリンパ腫細胞、例えばNS0(米国特許第5807715号を参照のこと)、Sp2/0、Y0を包含する。
【0058】
「微生物」は、(1)これに限定されないが、以下を含む原核生物
(a)ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、ボルデテラ、コリネバクテリウム、マイコバクテリウム、ナイセリア、ヘモフィルス、アクチノマイセス、ストレプトマイセス、ノカルジア、エンテロバクター、エルシニア、フランシセラ、パスツレラ、モラクセラ、アシネトバクター、エリシペロトリックス、ブランハメラ、アクチノバシラス、ストレプトバシラス、リステリア、カリマトバクテリウム、ブルセラ、バシラス、クロストリジウム、トレポネーマ、エシェリキア、サルモネラ、Kleibsiella、ビブリオ、プロテウス、エルウィニア、ボレリア、レプトスピラ、スピリルム、カンピロバクター、シゲラ、レジオネラ、シュードモナス、アエロモナス、リケッチア、クラミジア、ボレリアおよびミコプラズマの属メンバー、および、さらに、これに限定されないが、グループAストレプトコッカス、グループBストレプトコッカス、グループCストレプトコッカス、グループDストレプトコッカス、グループGストレプトコッカス、ストレプトコッカス ニューモニアエ、ストレプトコッカス ピオジェネス、ストレプトコッカス アガラクティエ、ストレプトコッカス フェカーリス、ストレプトコッカス フェシウム、ストレプトコッカス デュランス、ナイセリア ゴノロエエ、ナイセリア メニンジティディス、スタフィロコッカス アウレウス、スタフィロコッカス エピデルミディス、コリネバクテリウム ジフセリエ、ガードネレラ バジナリス、マイコバクテリウム ツベルクローシス、マイコバクテリウム ボビス、マイコバクテリウム ウルセランス、マイコバクテリウム レプレ、アクチノマイセス イスラエリー、リステリア モノサイトゲネス、ボルデテラ ペルタシス、ボルデテラ パラパツシス、ボルデテラ ブロンキセプチカ、エシェリシア コリ、シゲラ ディセンテリエ、ヘモフィルス インフルエンザ、ヘモフィルス エジプチウス、ヘモフィルス パラインフルエンザ、ヘモフィルス デユクレイイ、ボルデテラ、サルモネラ チフィ、シトロバクター フレウンディ、プロテウス ミラビリス、プロテウス ブルガリス、エルシニア・ペスチス、クレブシエラ ニューモニエ、セラチア マーセセンス、セラチア リクファシエンス、ビブリオ コレラ、シゲラ ディセンテリ、シゲラ フレキシネル、シュードモナス アエルギノーザ、フランシセラ ツラレンシス、ブルセラ アボーティス、バシラス アンスラシス、バシラス セレウス、クロストリジウム パーフリンゲンス、クロストリジウム テタニ、クロストリジウム ボツリナム、トレポネーマ パリヅム、リケッチア リケッチイおよびクラミジア トラコモナスの種またはグループのメンバー、
(b)これに限定されないが、アーキアバクターを含む、アーキア属、および、
(2)単細胞または糸状の真核生物、これに限定されないが、以下のものを含む;原生動物、真菌、サッカロミセス、クルイベロマイセス、または、カンジダの属メンバー、およびサッカロミセス セレビシエ、クルイベロマイセス ラクティスまたはカンジダ アルビカンスの種メンバー。
【0059】
本願明細書において使用するとき、「収獲されている」細胞とは、細胞培養からの細胞の収集をいう。細胞は、それらを培養液から分離するために、収獲の間に濃縮されることができる(例えば、遠心または濾過によって)。収獲細胞は、細胞内材料(例えば、これに限られないが、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド)を得るために細胞を溶解させる工程をさらに含むことができる。細胞形質成分(これに限定されないが、例えば、異種性に発現されたポリペプチドを含む)は、培養の間、細胞から放出されるということは、当業者によって理解されなければならない。このように、細胞が収獲された後、目的の生産物(例えば、異種性に発現されたポリペプチド)は培養液中に維持されることができる。
【0060】
治療性抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするベクターで形質転換された宿主細胞を当業者に既知の方法で培養してもよい。宿主細胞をスピナーフラスコ、ローラーボトルまたはホローファイバーシステムにて培養してもよいが、大規模に生成する場合、特に懸濁培養の場合には、攪拌式タンクリアクターを用いることが好ましい。攪拌式タンクは、例えばスパージャー、バッフルまたは低裂断インペラを用いるエアレーションに適合する。気泡塔および気泡ポンプ反応器の場合、空気または酸素の気泡を直接エアレーションするのに用いてもよい。宿主細胞を血清不含培地で培養する場合、該培地に細胞保護剤、例えばプルロニックF−68を補足し、エアレーション工程の結果としての細胞の損傷を防止する手助けをしてもよい。宿主細胞の特性に応じて、足場依存性細胞系のためのまたは細胞用の成長基質としていずれのマイクロキャリアも用いて、(典型的な)懸濁培養に適合させてもよい。宿主細胞、特に無脊椎動物の宿主細胞を培養するのに、種々の操作方法、例えばフィードバッチ式、リピートバッチ式プロセッシング(Drapeauら、(1994
)Cytotechnology 15: 103-109を参照のこと)、拡張式バッチプロセスまたは灌流培養を利用してもよい。組換え操作により形質転換された哺乳類宿主細胞は含血清培地、例えばウシ胎児血清(FCS)にて培養してもよいが、Keenら(1995)Cytotechnology 17: 153-163に開示されるような合成血清不含培地、またはProCHO−CDMまたはUltraCHO(登録商標)(Cambrex NJ, USA)などの市販されている培地にて培養してもよく、それには必要に応じてグルコースなどのエネルギー供給源および組換えインスリンなどの合成成長因子が補足されていてもよい。宿主細胞を血清不含培養するには、これらの細胞が血清不含の条件にて増殖するのに適合させる必要があるかもしれない。適合させる一の方法は、このような宿主細胞を含血清培地にて培養し、宿主細胞が血清不含条件に適合することを学習するように培地の80%を血清不含培地と繰り返し交換することである(例えば、Scharfenberg Kら(1995)in Animal Cell technology: Developments towards the 21st century(Beuvery E.C.ら編)、619−623頁、Kluwer Academic 編集者)。
【0061】
培地に分泌される抗体を回収し、種々の方法を用いて精製し、意図する使用に適するある程度の純度を得てもよい。例えば、患者を処理するための治療用抗体の使用には、典型的には、(粗培地と比較して)少なくとも95%の純度、より典型的には98%または99%より大きな純度が必要である。第一の例では、細胞の残骸を培地から典型的には遠心分離を用い、つづいてその上澄を、例えばマイクロ濾過、限外濾過および/または深層濾過を用いて浄化工程を用いて除去してもよい。透析およびゲル電気泳動、およびヒドロキシアパタイト(HA)、アフィニティクロマトグラフィー(所望によりポリヒスチジンなどのアフィニティタグ化システムを含めてもよい)および/または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC、米国特許第5429746号を参照のこと)などの種々の他の方法が利用可能である。抗体は以下の種々の浄化工程により精製されてもよく、それをプロテインAまたはGアフィニティクロマトグラフィーを用い、つづいてイオン交換および/またはHAクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換、サイズ除外クロマトグラフィーおよび硫酸アンモニウム沈降などのさらなるクロマトグラフィー操作を用いて捕獲してもよい。典型的には、種々のウイルス除去工程(例えば、DV−20フィルターを用いるナノ濾過)も利用されうる。これらの種々の工程の後で、モノクローナル抗体であってもよい、少なくとも75mg/mlまたはそれ以上、例えば100mg/mlまたはそれ以上の本発明の抗体または抗原結合フラグメントを含む、精製された調製物が提供され、したがって本発明の一の実施形態を形成する。適当には、かかる調製物は、実質的には、凝集した形態の抗体を含まない。
【0062】
かくして、一の実施形態にて、第一の細胞中の、組換え抗体またはそのフラグメントの第一の比産生能を増加させる方法であって、該抗体またはそのフラグメントをアデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種と共同して発現させることを含み、ここで該第一の比産生能は、第二の細胞にて発現される同じ抗体またはそのフラグメントの第二の比産生能と比較して該抗体またはそのフラグメントについて大きく、該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は発現されないところの方法が提供される。本発明の抗体は全抗体、モノクロナール抗体、ヒト化抗体、完全なヒト抗体、抗体フラグメントおよび/またはドメイン抗体であってもよい。第一の細胞は哺乳動物細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、PerC6、Her96、SP2/0、NS0、HeLa、コッカスパニエル雌犬腎臓、COS細胞、ベビーハムスター腎細胞およびNIH3T3細胞を包含する。この第一の細胞は人工染色体および/またはエピソームDNAからなっていてもよい。一の態様において、この第一および第二の細胞は同じ型の宿主細胞である。第一および/または第二の細胞は培養中であってもよい。
【0063】
本発明のもう一つ別の態様において、該アデノウイルスGAM1はトリウイルスである。該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は該宿主細胞のゲノムにトランスフォームされた遺伝子より発現されてもよく、および/または一のベクターより発現されてもよい。アデノウイルスGAM1は1以上のコピー中に存在してもよい。アデノウイルスGAM1は野生型であってもよく、あるいはアデノウイルスGAM1は野生型アデノウイルスの変種またはフラグメントであってもよい。もう一つ別の態様において、野生型アデノウイルスGAM1の変種またはフラグメントは、野生型アデノウイルスGAM1よりもモノクローナル抗体またはそのフラグメントの比産生能を増加させる。さらにもう一つ別の態様において、第一の細胞は安定して該抗体または抗体フラグメントをコードするDNAおよび/または該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAで安定してトランスフェクトされる。もう一つ別の態様において、該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は該第一の細胞にてベクターより発現される。アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は1以上のコピー数にて存在してもよい。アデノウイルスGAM1は野生型アデノウイルスGAM1の変種であってもよい。野生型アデノウイルスGAM1のある変種は野生型アデノウイルスGAM1よりもモノクローナル抗体またはそのフラグメントの比産生能を増加させうる。アデノウイルスGAM1の発現は当該分野にて理解されている種々の方法で測定することができる。例えば、GAM1発現は少なくとも1個の細胞でのGAM1mRNAの生成を評価することで測定されうる。GAM1発現は高発現、中発現または低発現でありうる。メッセンジャーRNAレベルを用いて対応する蛋白の生成を測定した(G.Bevilacqua、 M.E.Sobel、L.A.LiottaおよびT.S.Steeg、Cancer Res. 49, 5185-5190(1989))。
【0064】
第一の細胞は、該抗体または抗体フラグメントをコードするDNAと、該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAで連続してトランスフェクトされてもよい。別法として、該第一の細胞は該抗体または抗体フラグメントをコードするDNAと、該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAで同時に共同してトランスフェクト(co-transfect)されてもよい。
【0065】
本発明のもう一つ別の態様において、第一の細胞培養中の積分生存細胞を増加させる方法であって、抗体またはそのフラグメントを、第一の細胞培養の少なくとも一の細胞にてアデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種と一緒に共同して発現させることを含み、ここで該第一の細胞培養の該積分生存細胞は第二の細胞培養の積分生存細胞と比較して多く、該アデノウイルスまたはそのフラグメントおよび/または変種は発現されないところの方法が提供される。抗体は全抗体、モノクロナール抗体、ヒト化抗体、完全なヒト抗体、抗体フラグメントおよび/またはドメイン抗体であってもよい。第一の細胞培養は哺乳動物の細胞培養であってもよい。哺乳動物の細胞培養は、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、PerC6、Her96、SP2/0、NS0、HeLa、コッカスパニエル雌犬腎臓、COS細胞、ベビーハムスター腎細胞およびNIH3T3細胞を包含する。細胞培養中の少なくとも一つの細胞は人工染色体および/またはエピソームDNAを含んでいてもよい。一の態様において、第一および第二の細胞培養は同じ型の宿主細胞を含む。
【0066】
本発明のもう一つ別の態様において、該アデノウイルスGAM1は、イヌ、ウシ、ネズミ、ヒツジ、ブタ、トリまたはサルを起源とし、一の態様において、該該アデノウイルスGAM1はトリを起源とする。該該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は、該宿主細胞のゲノムにトランスフォームされた遺伝子より発現されてもよく、および/またはベクターより発現されてもよい。アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は1以上のコピーにて存在してもよい。アデノウイルスGAM1は野生型であってもよく、あるいはアデノウイルスGAM1は野生型アデノウイルスGAM1の変種またはフラグメントであってもよい。もう一つ別の態様において、野生型アデノウイルスGAM1の変種またはフラグメントは、野生型アデノウイルスGAM1よりも積分生存細胞を増加させる。さらにもう一つ別の態様において、組換え蛋白を産生する細胞は、該組換え抗体をコードするDNAと、GAM1をコードするDNAで安定してトランスフェクトされる。もう一つ別の実施態様において、組換え蛋白を産生する細胞は、該組換え抗体をコードするDNAと、GAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAで一過的にトランスフェクトされる。安定してトランスフェクトされる細胞は、選択的プレッシャー、例えばネオマイシン(G418)を適用することで一過的トランスフェクションより回収されうる。
【0067】
本発明のさらにもう一つ別の実施態様において、安定して発現する生存能のある細胞系を生成する方法であって、少なくとも一つの哺乳動物細胞をGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAでトランスフェクトし、ここで安定して発現する生存能のある細胞系が少なくとも一つの哺乳動物細胞を含むところの方法が提供される。一の態様において、細胞系は少なくとも約40回の継代、少なくとも約50回の継代、あるいは少なくとも約60回の継代にわたって生存し続ける。もう一つ別の態様において、少なくとも1回の継代が3ないし4日毎に起こる。細胞系は少なくとも210日間生存し続ける。少なくとも一つの哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、PerC6、Her96、SP2/0、NS0、HeLa、コッカスパニエル雌犬腎臓、COS細胞、ベビーハムスター腎細胞およびNIH3T3細胞からなる群より選択されてもよい。哺乳動物細胞は抗体またはそのフラグメントをコードするDNAで、そしてGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAで同時に共同してトランスフェクトされるか、または連続してトランスフェクトされてもよい。
【0068】
加えて、第一の細胞培養中の積分生存細胞を増加させる方法であって、抗体またはそのフラグメントを、第一の細胞培養の少なくとも一の細胞にてアデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種と一緒に共同して発現させることを含み、ここで該第一の細胞培養の該積分生存細胞が第二の細胞培養の積分生存細胞と比較して多く、該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は発現されず、積分生存細胞の量が細胞密度を理由として増加している、ところの方法が提供される。ある実施形態においては、細胞密度はアデノウイルスGAM1の発現を理由として増加している。もう一つ別の実施形態において、積分生存細胞の量は生存期間の増加を理由として増加している。
【0069】
アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAを含み、モノクローナル抗体またはそのフラグメントおよび/または変種の産生能を有する、安定して発現する生存能のある細胞系もまた提供される。
【0070】
以下の実施例は本発明の種々の態様を例示する。これらの実施例は、添付の請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限しない。
【実施例】
【0071】
実施例1: mAbを発現するCHO細胞にてGAM1をトランスフェクトすることによる、モノクローナル抗体の比産生能(SPR)の向上
CHO細胞系を予め製造しておき、抗−オンコスタチンM(OSM)モノクローナル抗体を中レベル(SPR=11pg/細胞/日)で産生した。重鎖および軽鎖の両方をRSV LTRプロモータでレギュレートした。GAM1がCHO DG44細胞にてmAb発現を向上させるかどうかを測定するために、CMVプロモータおよびゼオマイシン選択遺伝子によりレギュレートされる野生型GAM1cDNAを含有するpCDNA GAM1で細胞を連続して安定的にトランスフェクトさせた。96ウェルプレートで20日間選択させた後、ゼオ−耐性クローンを増殖させ、連続して24の6−ウェルプレートに移し、ついでT−25フラスコに移した。比産生能を測定するために、細胞を遠心器で沈降させ、新たな培地に再度培養させた。24時間後、細胞を計数し、ELISA分析を行うために上澄を集めた。比産生能を力価/細胞数/1日(pg/細胞/日)として計算した。
【0072】
図1に示されるように、約50−100%のmAb比産生能の向上が、未処理の細胞系(非トランスフェクト)およびベクターだけをトランスフェクトした細胞系(ベクター単独)と比較して、GAM1−22、24、28および50と称されるGAM1をトランスフェクトしたクローンで観察された。
【0073】
GAM1 mRNAの発現レベルを、図2に示されるように、qRT−PCRで測定した。細胞当たりのコピー数がGAM1−22、24、28および50と称される4種のGAM1クローンで変化した。GAM1の中発現(3−10コピー/細胞)は該細胞にて長期安定作用を示した。
【0074】
加えて、GAM1の、抗−MAG抗体の比産生能に対する効果も試験した。CHO細胞系を予め製造しておき、抗−MAGモノクローナル抗体を比較的高レベル(SPR=32pg/細胞/日)で産生した。この抗体の重鎖および軽鎖の両方をRSV LTRプロモータでレギュレートした。GAM1の連続して安定してトランスフェクションが、図3に示されるように、これら細胞での抗−MAGのSPRを向上させた。GAM1で連続して安定してトランスフェクトされたこれら細胞の抗−MAG抗体についての平均SPRは51.58pg/細胞/日であり、その一方でベクター単独で連続してトランスフェクトされたこれら細胞にて産生される抗−MAGについての平均SPRは32.2pg/細胞/日であった。すなわち、GAM1を連続して安定してトランスフェクトしたこれら細胞からの抗−MAGについての平均SPRは、ベクター単独で連続してトランスフェクトした細胞からのSPRよりも統計学的に有意に高かった。図4に示されるように、抗−BAMモノクローナル抗体を安定して発現する細胞系について同じような結果が得られた。
【0075】
実施例2: 細胞増殖および生存率の向上
実施例1の抗−OSM GAM1細胞からのmAb産生の累積力価を4日培養で測定した。250mLの振盪フラスコ中、0.5x10細胞/mlの濃度で150mL、該細胞を播種した。4日目に細胞を計数し、0.5x10細胞/mlまで再び播種した。各4日の培養の上澄をELISAで定量した。GAM1の発現した細胞系は図6に示されるように50回の継代にわたって高産生能を維持した。
【0076】
抗−OSM GAM1細胞系を少なくとも10世代の間継代させ、ついで振盪フラスコ中で20日間の産生試験にて試験した。生存細胞の数、生存率およびmAb力価を2−3日毎に測定した。非GAM1細胞系(OSM)と比較した場合、GAM1を発現した細胞は、11日目以後に、生存細胞が800万個/mLより多くの生存細胞数(VCC)を示し、80%より大きな生存率を示した。実施例1に示される非産生能の向上に加えて、生存細胞数の増加および細胞死の遅れもまた、図6−8に示されるように、全抗体産生能(容量收率)の増加に寄与している。同じ試験が図9に示されるようにミニバイオリアクターにて繰り返された。
【0077】
実施例3: GAM1を抗体遺伝子と共にCHO D44細胞に同時に共同してトランスフェクトさせることによる迅速な方法での高力価のMab産生系の生成
この実験にて、抗−ベータ−アミロイド(BAM)重鎖および軽鎖プラスミドをCHO DG 44中に共同してトランスフェクトさせ、96ウェルプレートにてG418により抗体産生細胞を選択した。並行して、重鎖および軽鎖プラスミドをpCDNA GAM1プラスミドと一緒に同時に共同してトランスフェクトさせた。3種すべてのプラスミドを担持する細胞をG418およびZeoにより選択した。
【0078】
20日経過後、同時にGAM1をトランスフェクトしたプレートでは、二重選択のため、コロニーはほとんどなかった。しかしながら、GAM1+クローンの中には、ほとんどすべてのクローンはmAbを発現し、該クローンの約半分は100ng/mLと同じくらい高い力価を有した。反対に、同時にGAM1を共同して発現しない約10%のクローンだけが25ng/mLの最小量の抗−BAM力価を発現した。GAM1+クローンの大部分は迅速に成長し、1.2ないし23pg/細胞/日の範囲の高SPRを有し、それは比産生能にて約10倍の増加であった。したがって、GAM1の同時共同トランスフェクションをmAb産生の迅速なターンオーバー手段として用いることができる。クローンのサマリー、Mab産生クローン、およびBAMおよびBAM+GAM1の同時共同トランスフェクションでのクローン増殖を表1ならびに図10ないし12に要約する。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例4: GAM1の安全性の評価
GAM1は、トリアデノウイルスCELOの新規な抗−アポトーシス蛋白として最初に同定された(Chioccaら、J.Virology, 71: 3168-3177)。GAM1は、最初は、抗−アポトーシス活性に基づいてE1A様蛋白と記載されたが、ヒトアデノウイルスE1Aとの間で配列相同性を共有していない。NIH3T3フォーカス形成アッセイを用いてGAM1の発癌性を試験した。
【0081】
LTRプロモータの下にCHO細胞に用いたのと同じGAM1cDNAを含有する、レトロウイルスをベースとするGAM1発現プラスミドを構築した。NIH3T3細胞をレトロウイルスベクター(pMSCV)または組換えGAM1レトロウイルスで感染させ、プロマイシン含有の培地中で48時間セレクトした。プロマイシン−耐性細胞を10%FBSおよび0.4%SeaPlaque低融点アガロース含有のDMEMに懸濁させ、6−ウェルプレートに置いた。陽性対照として、Rasまたはそのベクター(pBabe)を発現するレトロウイルスを用いた。感染していない細胞を陰性対照として用いた。GAM1の発現をRT−PCRおよびウェスタンブロットの両方で確認した。足場依存性細胞増殖は細胞性形質転換の一のホールマークである。組換えH−RasV12(Ras)レトロウイルスは軟寒天での有意な細胞増殖をもたらした。しかしながら、意外にも、GAM1の発現は細胞増殖を促進しなかった。したがって、GAM1は発癌性がなく、したがって哺乳動物のアデノウイルスE1遺伝子と比べて高い安全性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の細胞における、組換え抗体またはそのフラグメントの第一の比産生能を増加させる方法であって、該抗体またはそのフラグメントをアデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種と共同して発現させることを含み、ここで該第一の比産生能が、第二の細胞にて発現される同じ抗体またはそのフラグメントの第二の比産生能と比較して該抗体またはそのフラグメントについて大きく、該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種が発現されない、方法。
【請求項2】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗体がヒト化されている、請求項1記載の方法。
【請求項4】
抗体が完全にヒト抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
抗体が抗体フラグメントである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
抗体がドメイン抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第一の細胞が哺乳動物細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第一の細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、PerC6、Her96、SP2/0、NS0、HeLa、コッカスパニエル雌犬腎臓、COS細胞、ベビーハムスター腎細胞およびNIH3T3細胞からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第一の細胞がCHO細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
第一の細胞が人工染色体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
第一の細胞がエピソームDNAを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
第一と第二の細胞が同じである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第一と第二の細胞が培養中である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
アデノウイルスGAM1が野生型である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
アデノウイルスGAM1がトリ由来である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
第一の細胞が、抗体または抗体フラグメントをコードするDNAと、アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAとで安定してトランスフェクトされる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
第一の細胞が、抗体または抗体フラグメントをコードするDNAで安定してトランスフェクトされ、アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAが該第一の細胞にてベクターより発現される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種が1以上のコピーにて存在する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
アデノウイルスGAM1が野生型アデノウイルスGAM1の変種である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
野生型アデノウイルスGAM1の変種が、野生型アデノウイルスGAM1よりもモノクローナル抗体またはそのフラグメントの比産生能を増加させる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第一の細胞が、抗体または抗体フラグメントをコードするDNAと、アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAで連続してトランスフェクトされている、請求項1記載の方法。
【請求項22】
第一の細胞が、抗体または抗体フラグメントをコードするDNAと、アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAで同時に共同してトランスフェクトされている、請求項1記載の方法。
【請求項23】
第一の細胞培養の積分生存細胞を増加させる方法であって、抗体またはそのフラグメントを、第一の細胞培養の少なくとも一の細胞にてアデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種と一緒に共同して発現させることを含み、ここで該第一の細胞培養の該積分生存細胞は第二の細胞培養の積分生存細胞と比較して多く、該アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種は発現されない、方法。
【請求項24】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
抗体がヒト化されている、請求項23記載の方法。
【請求項26】
抗体が完全にヒト抗体である、請求項23記載の方法。
【請求項27】
抗体が抗体フラグメントである、請求項23記載の方法。
【請求項28】
抗体がドメイン抗体である、請求項23記載の方法。
【請求項29】
第一の細胞培養が哺乳動物細胞培養である、請求項23記載の方法。
【請求項30】
第一の細胞培養が、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、PerC6、Her96、SP2/0、NS0、HeLa、コッカスパニエル雌犬腎臓、COS細胞、ベビーハムスター腎細胞およびNIH3T3細胞からなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
第一の細胞培養の少なくとも一の細胞がCHO細胞である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
第一の細胞培養の少なくとも一の細胞が人工染色体を含む、請求項23記載の方法。
【請求項33】
第一の細胞培養の少なくとも一の細胞がエピソームDNAを含む、請求項23記載の方法。
【請求項34】
第一と第二の細胞培養が同じ型の宿主細胞を含む、請求項23記載の方法。
【請求項35】
アデノウイルスGAM1がトリアデノウイルスGAM1である、請求項23記載の方法。
【請求項36】
アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種が宿主細胞のゲノムにトランスフォームされている遺伝子より発現される、請求項23記載の方法。
【請求項37】
アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種がベクターより発現される、請求項23記載の方法。
【請求項38】
アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種が一より多くのコピーにて存在する、請求項23記載の方法。
【請求項39】
アデノウイルスGAM1が野生型アデノウイルスGAM1である、請求項23記載の方法。
【請求項40】
アデノウイルスGAM1が野生型アデノウイルスGAM1の変種またはフラグメントである、請求項23記載の方法。
【請求項41】
野生型アデノウイルスGAM1の変種またはフラグメントが野生型アデノウイルスGAM1よりも第一の細胞培養の積分生存細胞を増加させる、請求項40記載の方法。
【請求項42】
細胞系が、抗体または抗体フラグメントをコードするDNAと、アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAとで安定してトランスフェクトされる、少なくとも一の細胞を含む、請求項23記載の方法。
【請求項43】
発現が安定している生存細胞系を製造する方法であって、少なくとも一の哺乳動物細胞をアデノウイルスGAM1またはその変種および/またはフラグメントをコードするDNAでトランスフェクトさせることを含み、発現が安定している生存細胞系は、少なくとも一の哺乳動物細胞を含む、方法。
【請求項44】
細胞系が少なくとも約60回の継代にわたって生存および発現の安定を保持する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1回の継代が3ないし4日毎に起こる、請求項44記載の方法。
【請求項46】
細胞系が少なくとも210日間生存し、かつ発現の安定を保持する、請求項43記載の方法。
【請求項47】
少なくとも一つの哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、PerC6、Her96、SP2/0、NS0、HeLa、コッカスパニエル雌犬腎臓、COS細胞、ベビーハムスター腎細胞およびNIH3T3細胞からなる群より選択される、請求項43記載の方法。
【請求項48】
少なくとも一の哺乳動物細胞が抗体またはそのフラグメントをコードするDNAで連続してトランスフェクトされている、請求項43記載の方法。
【請求項49】
少なくとも一の哺乳動物細胞が、アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントまたは変種をコードするDNAと、抗体またはそのフラグメントをコードするDNAとで同時に共同してトランスフェクトされている、請求項43記載の方法。
【請求項50】
少なくとも一の哺乳動物細胞が、抗体または抗体フラグメントをコードするDNAと、アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAとで連続的にトランスフェクトされている、請求項43記載の方法。
【請求項51】
アデノウイルスGAM1が野生型アデノウイルスGAM1である、請求項43記載の方法。
【請求項52】
アデノウイルスGAM1が野生型アデノウイルスGAM1の変種またはフラグメントである、請求項43記載の方法。
【請求項53】
アデノウイルスGAM1またはそのフラグメントおよび/または変種をコードするDNAを含み、モノクローナル抗体またはそのフラグメントおよび/または変種の産生能を有する、発現が安定している生存細胞系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−536345(P2010−536345A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521172(P2010−521172)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/073114
【国際公開番号】WO2009/023760
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】