説明

新規な樹脂、その水素添加物、それらの製造方法、及びそれらの用途

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性、透明性、低複屈折性、耐光性、低誘電率、低誘電損失、耐薬品性等に優れた樹脂、その水素添加物、それらの製造方法、及びそれらの用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式3
【化3】


(式中、R'1〜R'7は、水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基等の極性基、またはこれらの極性基で置換された炭素数1〜4の炭化水素基を示す)で表される繰り返し構造単位を有するフェニル−ノルボルネン類の開環(共)重合体を酸性化合物で処理して得られる一般式4
【化4】


(式中、R'1〜R'7は、水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基等の極性基、またはこれらの極性基で置換された炭素数1〜4の炭化水素基を示す)で表される繰り返し構造単位を有するフェニル−ノルボルネン類の開環(共)重合体の環化物は公知であった(特開昭50−145399号公報)。
【0003】この樹脂は、ガラス転移温度(以下、Tgという)が高く、耐熱性に優れているが、技術の進歩にともない、より高いTgを有する樹脂が求められるようになった。また、この樹脂は、完全に環化すると機械的強度に問題を生じるため、完全には環化させないのが通常であるが、その場合、主鎖構造中に二重結合を有するために空気等により酸化を受け、樹脂の劣化をおこすことがあった。
【0004】この樹脂はどの程度の複屈折を有するかは知られておらず、光学材料として使用できるかどうかわからなかった。また、この樹脂の水素添加物も知られておらず、どのような性質を有するか知られていなかった。
【0005】一方、1,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロフルオレンのようなモノマーの開環重合体が環化反応を起こすかどうかは知られておらず、当然、そのような樹脂の水素添加物も知られておらず、これらの樹脂がどの程度の複屈折性、屈折性、耐熱性、透明性等を有するかは予測することができなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、低複屈折性、耐熱性、透明性等に優れた樹脂の開発を目指して鋭意努力の結果、一般式5
【化5】


(式中、R1は−O−、−NR9−、または−CR1011−を示し、R2〜R11は水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基等の極性基、またはこれらの極性基で置換された炭素数1〜4の炭化水素基を示す)で表される単量体の開環(共)重合体を環化し、必要に応じて水素添加することにより、透明性、低複屈折性、耐候性、低誘電率、低誘電損失、耐薬品性、耐熱性に優れた樹脂が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれば、一般式6
【化6】


(式中、R1は−O−、−NR9−、または−CR1011−を示し、R2〜R11は水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基等の極性基、またはこれらの極性基で置換された炭素数1〜4の炭化水素基を示す)で表される繰り返し構造単位を有する樹脂、その水素添加物、一般式5で表される単量体の開環(共)重合体を酸性化合物で処理する樹脂の製造方法、一般式5で表される単量体の開環(共)重合体を酸性化合物で処理し、さらに水素添加することを特徴とする水素添加物の製造方法が提供される。
【0008】(単量体)本発明で用いる単量体は、一般式5で表される単量体である。例えば、1,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロジベンゾフラン、1,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロカルバゾール、1,4−メタノ−1,4,4a,10b−テトラヒドロフルオランテン、1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,6,7,10b−オクタヒドロフルオランテン、1,4−メタノ−1,4−ジヒドロフェナントレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,10−ヘキサヒドロフェナントレン、そのアルキル、アルキリデン、アケニル、芳香族置換誘導体、これらのハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等の極性置換体等が挙げられる。
【0009】(コモノマー)本発明の目的を害しない範囲で、一般式5で表される単量体とともにコモノマーを用いることができる。コモノマーとしては、メタセシス重合可能な単量体であれば特に限定されないが、透明性、低複屈折性、耐熱性などの観点からは、ノルボルネン系単量体、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−オクタデシル−2−ノルボルネン等のノルボルネン、そのアルキル、アルキリデン、アルケニル置換体、、これらのハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等の極性基置換体; 1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン,6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メチル−6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等のノルボルネンに一つ以上のシクロペンタジエン(以下、CPDという)が付加した単量体、その上記と同様の誘導体や置換体; ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等のジシクロペンンタジエン、その上記と同様の誘導体や置換体; シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、1,5,9−シクロデカトリエン等のシクロアルケン、その上記と同様の誘導体や置換体; 等が挙げられる。
【0010】これらのコモノマーを用いる場合、重合体構造中の繰り返し構造単位中、コモノマーに由来する繰り返し構造単位の量は90〜0モル%、好ましくは70〜0モル%、特に好ましくは30〜0モル%になるようにする。
【0011】(開環(共)重合体)一般式5で表される単量体を重合して本発明で用いる開環(共)重合体を得る方法は、特に限定されず、特開昭60−26024号公報、特開平2−185520号公報に記載のメタセシス重合触媒を用いる公知の方法でよい。
【0012】得られる(共)重合体中では、一般式5で表される単量体は開環して一般式7
【化7】


(式中、R1は−O−、−NR9−、または−CR1011−を示し、R2〜R11は水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基等の極性基、またはこれらの極性基で置換された炭素数1〜4の炭化水素基を示す)で表される繰り返し構造単位となっている。共重合体の場合、通常、一般式7で表される繰り返し構造単位とコモノマー由来の繰り返し構造の量比は、一般式5で表される単量体とコモノマーの量比に等しい。
【0013】この開環(共)重合体は、25℃のデカリンもしくはトルエン中で測定した極限粘度〔η〕が、0.05〜20dl/g、好ましくは0.1〜10dl/g、より好ましくは0.2〜5dl/gである。極限粘度が小さすぎると得られる環化樹脂(水素添加物)の機械的強度に劣り、大きすぎると得られる環化樹脂(水素添加物)の成形性が悪くなる。
【0014】この開環(共)重合体は、Tgが100℃以上と耐熱性に優れる。
【0015】(環化反応)本発明で用いる開環(共)重合体を環化する方法も、特に限定されず、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法でよい。酸性化合物は、ルイス酸、またはブレンステッド酸であって、具体的には、AlCl3、AlBr3、BF3、BF3OEt2、BBr3、BBr3OEt2、TiCl2、TiBr4、TiI4、FeCl3、FeCl2、SnCl2、SnCl4、WCl6、MoCl5、SbCl5、TeCl2等の周期率表IIIA族からVIII族までの金属ハロゲン化合物; HCl、HF、HBr等の水素酸; H2SO4、H3BO3、HClO4、CH3COOH、H3PO4、P25、パラトルエンスルホン酸等のオキソ酸、及びこれらを構成する陰イオンを有するイオン交換樹脂等の高分子化合物; CH2ClCOOH、CHCl2COOH、CCl3COOH等のハロゲン化酢酸; 燐モリブデン酸、燐タングステン酸等のヘテロポリ酸; SiO2、Al23、SiO2−Al23、MgO−SiO2、B23−Al23、WO3−Al23、Zr23−SiO2、H+または希土類元素と交換したゼオライト、活性白土、酸性白土、γ−Al23、P25をケイソウ土と担持させた固体燐酸等の固体酸; 等が挙げられる。これらを組み合わせて用いてもよく、また、他の化合物等を添加することにより酸性化合物の活性を向上させることができる場合は、そのような化合物を添加してもよい。例えば、金属ハロゲン化合物の酸性化合物としての活性を向上させる化合物としては、MeLi、EtLi、BuLi、Me4Sn、等の金属アルキル化合物; t−ブタノール、2−フェニル−2−プロパノール等のリビングカチオン重合における重合開始剤として用いられる化合物; 等が例示される。
【0016】本発明においては、本発明に用いる開環(共)重合体100重量部に対し、酸性化合物を0.01〜1000重量部、好ましくは0.1〜100重量部を用いて変性させる。一般に、環化反応は均一系中で行う。
【0017】均一系中で環化する場合、用いる溶媒は開環(共)重合体を溶解できる溶媒であり、環化反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン芳香族炭化水素や、トルエン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン等を用いることができ、重合体の濃度は0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。濃度が濃すぎると分子間の反応が起こることがあり、濃度が薄すぎると、収量が小さすぎるなど、効率が悪い。反応温度は、0〜200℃、好ましくは10〜150℃である。温度が低すぎると反応が進まず、温度が高すぎると反応が激しすぎ、制御が困難である。反応温度、反応時間、酸性化合物の種類、量等によって、一般式7で表される繰り返し構造単位から一般式8で表される繰り返し構造単位への変換の割合(以下、環化率という)や変換速度を制御することができる。
【0018】得られる開環(共)重合体の環化物においては、環化率は10〜100%、好ましくは20〜95%、特に好ましくは25〜90%である。環化率が小さすぎると、耐熱性が不十分となる。環化率が大きすぎると、機械的強度が問題となる場合がある。環化率は、酸性化合物で処理する際の処理条件、例えば、酸性化合物の濃度や処理時間等によって制御することが可能である。例えば、処理時間を長くするほど、環化率は高くなる。また、環化率は、1H−NMRで8.0〜6.6cm-1付近のフェニル基由来のプロトンによる吸収、6.5〜4.5cm-1付近の炭素−炭素二重結合由来のプロトンによる吸収、及び4.1〜0.7cm-1付近の飽和結合由来のプロトンによる吸収の変化により測定できる。
【0019】本発明の開環(共)重合体環化物は、25℃のデカリンもしくはトルエン中で測定した極限粘度〔η〕が、0.05〜20dl/g、より好ましくは0.1〜10dl/g、0.2〜5dl/gである。極限粘度が小さすぎると機械的強度に劣り、大きすぎると成形性が悪くなる。
【0020】本発明に用いる環化前の開環(共)重合体は、Tgが100℃以上と耐熱性に優れているが、本発明の熱可塑性開環(共)重合体環化物は、さらにTgが高くなる。用いる単量体によってTgの高くなる幅は異なるが、環化率が高いほどTgが高くなり、Tgが5℃以上高くなることが好ましく、10℃以上高くなることがより好ましい。
【0021】(水素添加反応)さらに、空気による劣化防止等の目的のために、本発明の開環(共)重合体環化物を水素添加してもよい。水素添加する場合に、水素添加方法は特に限定されず、例えば、ウィルキンソン錯体、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム等の均一系触媒、ケイソウ土、マグネシア、アルミナ、シリカ、アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナ、合成ゼオライト等の担体に、ニッケル、パラジウム、白金等触媒金属を担持させた不均一系触媒等を用いた公知の方法でよい。
【0022】特に、不純物量を低下させるためには、活性アルミナ、合成ゼオライト等の吸着剤として用いられる、細孔容積0.5cm3/g以上、好ましくは0.7cm3/g以上、また好ましくは比表面積250cm2/g以上の担体に触媒金属を担持させた不均一系触媒が好ましく、中でも濾過や遠心による除去が容易な粒径0.2μm以上のもの、即ち、粒径が0.2μm未満のものを実質的に含まないものが好ましい。
【0023】水素添加する場合、空気酸化による劣化防止等のために、環化物主鎖構造中の不飽和結合の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上を水素添加する。空気酸化等に対する安定性が少しでも高いことが好ましいことから、一般には、環化物構造中の芳香族環構造も水素添加する。しかし、水素添加触媒を遷移金属化合物とアルキル金属化合物を組み合わせた不均一触媒から選択することにより、芳香族環構造を残存させたまま、他の不飽和結合のみを水素添加して飽和させることが可能である。芳香族環構造は比較的安定であり、空気酸化に対してもかなり安定であり、芳香族環構造を有する透明樹脂は一般に屈折率が高くなるので、目的によっては、芳香族環構造を残存させて水素添加してもよい。なお、1H−NMRの吸収スペクトルを解析することにより、主鎖構造の水素添加率と芳香族環構造の水素添加率は、区別して求めることができる。
【0024】(水素添加物)本発明の開環(共)重合体環化水素添加物は、25℃のデカリンもしくはトルエン中で測定した極限粘度〔η〕が、0.05〜20dl/g、より好ましくは0.1〜10dl/g、0.2〜5dl/gである。極限粘度が小さすぎると機械的強度に劣り、大きすぎると成形性が悪くなる。
【0025】本発明の開環(共)重合体環化水素添加物は、同じ単量体組成で得られた環化していない開環(共)重合体水素添加物に比べてTgが高い。用いる単量体によってTgの高くなる幅は異なるが、環化率が高いほどTgが高くなる。環化によってTgが5℃以上高くなることが好ましく、10℃以上高くなることがより好ましい。
【0026】(添加剤)本発明の開環(共)重合体環化(水素添加)物には、必要に応じて、各種添加剤を添加してもよい。用いられる添加剤としては、例えば、フェノール系やリン系等の酸化防止剤; 帯電防止剤; 紫外線吸収剤; 光安定剤; 滑剤; 難燃剤; 顔料; 染料; アンチブロッキング剤; ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー等のゴム重合体;石油樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂; ガラスファイバー、カーボンファイバー等の繊維状充填剤; シリカ、アルミナ、タルク等の微粒子状充填剤; テトラキス〔2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤; フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤等のレベリング剤; 等を添加してもよい。
【0027】本発明の開環(共)重合体環化(水素添加)物は、必要に応じて、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド等の他の樹脂とのブレンドを行うことができる。また、熱可塑性開環(共)重合体環化水素添加物に対して、相溶でも非相溶であってもよい。
【0028】本発明の開環(共)重合体環化(水素添加)物からの溶出を避けるためには、これらの添加剤や樹脂は分子量の大きいもの程好ましく、また、添加量が少ない程好ましい。
【0029】(成形)本発明の開環(共)重合体環化(水素添加)物は、周知の方法、例えば、射出成形、押し出し成形、キャスト成形、インフレーション成形、ブロー成形、真空成形、プレス成形、圧縮成形、回転成形、カレンダー成形、圧延成形、切削成形等によって成形加工することができる。
【0030】(用途)本発明の開環(共)重合体環化(水素添加)物は、光学材料を始めとして各種成形品として広範な分野において有用である。例えば、光ディスク、光学レンズ、眼鏡レンズ、プリズム、光拡散板、光カード、光ファイバー、光学ミラー、液晶表示素子基板、導光板、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学材料; 注射用の液体薬品容器、アンプル、プレフィルドシリンジ、輸液用バッグ、固体薬品容器、点眼薬容器、点眼薬容器等の液体、または粉体、固体の薬品容器、食品容器、血液検査用のサンプリング用試験管、薬品容器用キャップ、採血管、検体容器等のサンプル容器、注射器等の医療器具、メスや鉗子、ガーゼ、コンタクトレンズ等の医療器具等の滅菌容器、ビーカー、シャーレ、フラスコ、試験管、遠心管等の実験・分析器具、医療検査用プラスチックレンズ等の医療用光学部品、医療用輸液チューブ、配管、継ぎ手、バルブ等の配管材料、義歯床、人工心臓、人造歯根等の人工臓器やその部品、長期に渡り薬品、特に液体薬品を保存する薬ビン、プレフィルドシリンジ、密封された薬袋、プレス・スルー・パッケージ、点眼用容器、アンプル、バイアル、点眼薬容器等の医療用器材; タンク、トレイ、キャリア、ケース等の処理用、及び移送用容器、キャリアテープ、セパレーション・フィルム等の保護材、パイプ、チューブ、バルブ、シッパー、流量計、フィルター、ポンプ等の配管類、サンプリング容器、ボトル、アンプル、バッグ等の液用容器類等の電子部品処理用器材; 磁気ディスク基板、ハードディスク等の情報ディスク基板、電線、ケーブル用被覆材、民生用・産業用電子機器、複写機、コンピューター、プリンター、複写機用感光ドラム等のOA機器、計器類等の一般絶縁材料、硬質プリント基板、フレキシブルプリント基板多層プリント配線板等の回路基板、特に高周波特性が要求される、衛星通信機器用等の高周波回路基板、液晶基板・光メモリー・自動車や航空機のデフロスタ等の面発熱体等の透明導電性フィルムの器材、トランジスタ・IC・LSI・LED等の電気・導体封止材や部品、モーター・コンデンサー・スイッチ・センサー等の電気・電子部品の封止材料、テレビやビデオカメラ等のボディ材料、パラボラアンテナ・フラットアンテナ・レーダードームの構造部材等の電気絶縁材料; ヘッドアップディスプレイ、ルームミラー、ドアミラー、テールランプカバー等の自動車部品; 化粧品容器、食品容器、電子レンジ用容器等のパッケージ用材料; カーポート用屋根、街灯用カバー等等の建材; 化粧品用ボトル、電子レンジ用食品ケース等の梱包用材料; 硬化性樹脂成形用型枠等が挙げられる。
【0031】(光学材料)本発明の開環(共)重合体環化(水素添加)物は、厚さ1.2mmの板での400〜830nmの光線の光線透過率が70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、複屈折を表すレタデーション値が厚さ1.2mmの板で100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下にすることが可能であり、吸水率は0.1%以下、0.05%以下であり、光学材料として適した性能を有している。
【0032】(医療用器材)本発明の開環(共)重合体環化(水素添加)物は、前述の特性のほかに、厚さ2mmの板での400〜700nmの光線の光線透過率が40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上であり、アルコール類・アミン類・エステル類等の極性基を有する薬品の吸着が少なく、有機物の溶出量が少なく、また、容易に焼却できることから、使い捨てもできる等の性質を有し、医療用器材として適している。
【0033】(電気絶縁材料)本発明の開環(共)重合体環化(水素添加)物は、前述の特性のほかに、体積固有抵抗値が1016Ωcm以上、好ましくは5×1016Ωcm以上であり、誘電率が102Hz、106Hz、109Hzのいずれの周波数においても、3以下、好ましくは2.5以下であり、また誘電正接が102Hz、106Hz、109Hzのいずれの周波数においても、10-3以下、好ましくは7×10-4である等の性質を有し、電気絶縁材料として適している。
【0034】(電気部品処理用器材)本発明の開環(共)重合体環化(水素添加)物は、前述の特性のほかに、濃硫酸を除く酸や多くの有機溶媒等のウェハー製造に用いる各種薬品のほとんどに対して耐性を有するなど、電子部品処理用器材に適している。
【0035】
【実施例】以下に、参考例、実施例、比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、環化率は1H−NMRを用いてフェニル基由来のプロトン、炭素−炭素二重結合由来のプロトン、及び飽和結合由来のプロトンの吸収の変化によって(なお、以下の実施例においては、実際に吸収のピークが認められた範囲を記載した)、水素添加率は同じく水素添加前と水素添加後の不飽和結合由来のプロトンの吸収の変化によって、極限粘度〔η〕は25℃のトルエン中で(ただし、樹脂がトルエンに溶解しない場合はデカリン中で)、TgはDSC法により、レターデーション値は波長830nmのダブルパス法により、光線透過率は吸光光度計を用いて測定した。
【0036】参考例1窒素置換したガラス製反応器に、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン60重量部とトルエン200重量部を仕込み、分子量調整剤として、ヘキセン−1を1重量部添加した。溶液を40℃に加熱した後、さらに重合触媒としてトリエチルアルミニウムの15%トルエン溶液10重量部、トリエチルアミン5重量部、および四塩化チタンの20%トルエン溶液10重量部を添加して開環重合を開始した。溶液の温度を40℃に保ったまま、1時間反応させた時点でメタノール5重量部を添加して反応を停止させた。強く攪拌したアセトン500重量部とイソプロピルアルコール500重量部の混合液に反応溶液を注いで重合体を沈澱させ、濾別して回収した。さらにアセトン200重量部で洗浄した後、1mmHg以下に減圧した真空乾燥機中、100℃で24時間乾燥させ、51重量部の重合体を得た。
【0037】この重合体の極限粘度は0.42dl/g、Tgは186℃であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppmにベンゼン環に結合したプロトン、6.0〜4.5ppmに−HC=CH−基の不飽和炭素に結合したプロトン、4.1〜0.7ppmに飽和炭素に結合したプロトンに基づく吸収が4:2:8の強度比で観察され、得られた樹脂が1,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロフルオレンの開環重合体であることが確認された。
【0038】参考例21,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロフルオレン60重量部の代わりに、1,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロフルオレン45重量部と1,4−メタノ−1、4,4a,7a−テトラヒドロインデン15重量部の混合物を用いる以外は参考例1と同様にして55重量部の重合体を得た。
【0039】この重合体の極限粘度は0.40dl/g、Tgは175℃であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.5ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が約14:13:40の強度比で観察され、得られた樹脂が1,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロフルオレンと4,7−メタノ−3a,4,7,7a−テトラヒドロインデンが、重量比で約46:14で開環重合していることが確認された。
【0040】参考例31,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロフルオレンの代わりに、1,4−メタノ−1,4,4a,10b−テオトヒドロフルオランセンを用いる以外は参考例1と同様にして50重量部の重合体を得た。
【0041】この重合体の極限粘度は0.46dl/g、Tgは195℃であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.5ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が6:2:6の強度比で観察され、得られた樹脂が1,4−メタノ−1,4,4a,10b−テトラヒドロフルオランセンの開環重合体であることが確認された。
【0042】参考例41,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロフルオレンの代わりに、1,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロジベンゾフランを用いる以外は参考例1と同様にして50重量部の重合体を得た。
【0043】この重合体の極限粘度は0.41dl/g、Tgは180℃であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.5ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が2:6:6の強度比で観察され、得られた樹脂が1,4−メタノ−1,4,4a,9b−テトラヒドロジベンゾフランの開環重合体であることが確認された。
【0044】実施例1窒素置換したガラス製反応容器に、参考例1で得た重合体100重量部とトルエン900重量部を入れ、50℃に加温した。攪拌しながら塩化アルミニウム5重量部を添加し、そのまま反応温度50℃で3時間反応させた後、反応溶液を2000重量部のイソプロピルアルコールに攪拌しながら入れ、沈澱した重合体を採取し、1torr以下の減圧下で24時間乾燥して、約95重量部の無色の樹脂を得た。
【0045】この樹脂の極限粘度は0.41dl/g、Tgは194℃であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.5ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が約37:15:88の強度比で観察され、得られた樹脂の環化率は約26%であることが確認された。
【0046】実施例2実施例1で得た環化物30重量部をトルエン70重量部に溶解した溶液、アルミナ担持ニッケル触媒(触媒1重量部中ニッケル0.35重量部、酸化ニッケル0.2重量部、細孔容積0.8cm3/g、比表面積300m2/g)1重量部とイソプロピルアルコール2重量部を加え、オートクレーブ中で230℃、水素圧50kg/cm2で5時間反応させた。反応終了後、濾過によってニッケル触媒を除去し、攪拌している500重量部のイソプロピルアルコール中に反応溶液を注ぎ入れ、沈澱した重合体を採取し、1torr以下の減圧下で24時間乾燥して、約28重量部程度の無色の樹脂を得た。
【0047】この樹脂の極限粘度は0.41dl/g、Tgは151℃、吸水率は0.01%以下であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.5ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が0:0:100の強度比で観察され、樹脂構造中に不飽和結合が認められず、水素添加率は100%であることが確認された。
【0048】この樹脂を200℃でプレス成形し、厚さ1.2mm、直径12.5cmの円板を作製した。この円板の光線透過率は92%以上であり、レタデーション値は20nm以下であった。また、この円板を用いて測定したことろ、この樹脂の体積固有抵抗値は5×1016以上、また、102Hz、103Hz、109Hzの周波数のいずれにおいても、誘電率と誘電正接はそれぞれ2.42と5×10-4であった。
【0049】また、この樹脂の10重量%シクロヘキサン溶液を原子吸光分析により分析した結果、樹脂中のチタン原子量は0.01ppm(検出限界)以下、ニッケル原子量は0.01ppm(検出限界)以下であった。この樹脂100mgをドーマン燃焼装置で燃焼させ、5mlの純水に吸収させ、イオンクロマトグラフィーで分析した結果、塩素原子量は0.02ppm(検出限界)以下であった。
【0050】この樹脂17重量部に0.008重量部の老化防止剤(チバガイギー社製、イルガノックス1010)を添加し、2軸押出機(東芝機械社製TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32、スクリュー回転数250rpm、樹脂温度235℃、フィードレート10kg/時間)で押し出し、ペレットとした。
【0051】このペレットを用いて、型締め圧350t、樹脂温度240℃、金型温度70℃で射出成形し、直径200mm、高さ130mm、平均厚さ2mmの円筒状で底面を一つ有する透明な容器と100mm×50mm×2.0mmの試験片を作製した。
【0052】試験片の全光線透過率を測定したところ、400〜700nmでは90.1%以上で透明性は良好であった。また、濁度を測定したところ、0.1%であった。
【0053】LB培地(バクトトリプトン1重量%、イーストエクストラクト0.5重量%、NaCl1重量%、グルコース0.1重量%の水溶液をpH7.5に調整)に2重量%の寒天を加えて、121℃、30分のスチーム滅菌をしてゲル化させ、固化する前にその300mlを成形した成形した円筒状の容器に入れ、室温で6時間放置した後、アルミ箔でキャップし、γ線を25kGy照射して滅菌した。処理後、37℃で3日間保温したが、菌類の増殖は認められなかった。処理後の外観は良好であり、目視で白濁、割れ、変形は確認されなかった。
【0054】また、試験片を、pH9の炭酸ナトリウム水溶液、pH4の塩酸、エタノールに48時間浸漬した後、外観を観察したが変化はなく、濁度、全光線透過率にも変化はなかった。さらに試験片を、濃硫酸、30%希硫酸、70%硝酸、リン酸、フッ硝酸(フッ酸7重量%、硝酸42重量%、水51重量%)、37%塩酸、30%過酸化水素水、水酸化カリウム飽和水溶液、29%アンモニア水、アセトン、イソプロピルアルコール、トリクロロエチレン、2.38重量%TMAHO水溶液、アウミニウム用エッチング液(濃リン酸80重量%、硝酸5重量%、氷酢酸5重量%、水10重量%)に5分間浸漬した。トリクロロエチレンに溶解し、濃硫酸では表面が炭化したが、その他の薬品による影響は認められず、良好な耐薬品性が示された。
【0055】この試験片を10mm幅に切り、20gを蒸留水中で20分間超音波洗浄した後、40℃で10時間乾燥した。この20gの試験片を硬質ガラスフラスコに入れ、蒸留水200gを加えた。硬質ガラス製の蓋をして、50℃で24時間静置して、蒸留水を回収した。
【0056】対照として、硬質ガラスフラスコに蒸留水200gを入れ、硬質ガラス製の蓋をして同じく50℃で24時間静置して、蒸留水を回収した。
【0057】この2種類の蒸留水の原子吸光法やイオンクロマトグラフィー、燃焼−非分散型赤外線ガス分析法等による分析結果の差から、試験片からの溶出量を求めた結果、チタン原子量は0.01ppm(検出限界)以下、ニッケル原子量は0.01ppm(検出限界)以下、塩素原子量は0.02ppm(検出限界)以下、全有機炭素量は2ppm(検出限界)以下であった。
【0058】上記試験片を日本薬局方第12改正「輸液用プラスチック試験法」に従い、溶出物試験を行った。泡立ちは3分以内に消失し、pH差は−0.03、紫外線吸収は0.005、過マンガン酸カリウム還元性物質0.10mlであり、医療用途として適した特性を有していることがわかった。
【0059】実施例3参考例1で得た開環重合体の代わりに参考例2で得た開環重合体を用いる以外は実施例1と同様にして、96重量部の樹脂を得た。
【0060】この樹脂の極限粘度は0.40dl/g、Tgは182℃であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.5ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が約26:22:86)の強度比で観察され、得られた樹脂の環化率は約28%であることが確認された。
【0061】実施例4実施例1で得られた樹脂の代わりに実施例3で得られた樹脂を用いる以外は、実施例2と同様にして、約28重量部の無色の樹脂を得た。
【0062】この樹脂の25℃、デカリン中での極限粘度は0.40dl/gであり、Tgは138℃、吸水率は0.01%以下であった。
【0063】また、1H−(クロロホルム−d1中、30℃)において、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.3ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が0:0:100の強度比で観察され、芳香族環構造及び主鎖構造中の不飽和結合が完全に水素添加されていることがわかった。
【0064】この水素添加物を200℃でプレス成形し、厚さ1.2mm、直径12.5cmの円板を作製した。この円板の光線透過率は92%以上、レタデーション値は20nm以下であった。また、この円板を用いて測定したことろ、この樹脂の体積固有抵抗値は5×1016以上、また、102Hz、103Hz、109Hzの周波数のいずれにおいても、誘電率と誘電正接はそれぞれ2.41と5×10-4であった。
【0065】実施例5参考例1で得た開環重合体の代わりに参考例3で得た開環重合体を用いる以外は実施例1と同様にして、95重量部の樹脂を得た。
【0066】この樹脂の極限粘度は0.45dl/g、Tgは215℃であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.8〜7.2ppm、6.3〜4.5ppm、4.3〜0.7ppmの吸収が約57:14:69)の強度比で観察され、得られた樹脂の環化率は約30%であることが確認された。
【0067】実施例6実施例1で得られた樹脂の代わりに実施例5で得られた樹脂を用いる以外は、実施例2と同様にして、約28重量部の無色の樹脂を得た。
【0068】この樹脂の25℃、デカリン中での極限粘度は0.45dl/gであり、Tgは175℃、吸水率は0.01%以下であった。
【0069】また、1H−(クロロホルム−d1中、30℃)において、7.8〜7.2ppm、6.3〜4.5ppm、4.3〜0.7ppmの吸収が0:0:100の強度比で観察され、芳香族環構造及び主鎖構造中の不飽和結合が完全に水素添加されていることがわかった。
【0070】この水素添加物を200℃でプレス成形し、厚さ1.2mm、直径12.5cmの円板を作製した。この円板の光線透過率は90%以上、レタデーション値は20nm以下であった。また、この円板を用いて測定したことろ、この樹脂の体積固有抵抗値は5×1016以上、また、102Hz、103Hz、109Hzの周波数のいずれにおいても、誘電率と誘電正接はそれぞれ2.53と7×10-4であった。
【0071】また、この樹脂の10重量%シクロヘキサン溶液を原子吸光分析により分析した結果、樹脂中のチタン原子量は0.01ppm(検出限界)以下、ニッケル原子量は0.01ppm(検出限界)以下であった。この樹脂100mgをドーマン燃焼装置で燃焼させ、5mlの純水に吸収させ、イオンクロマトグラフィーで分析した結果、塩素原子量は0.02ppm(検出限界)以下であった。
【0072】この樹脂17重量部に0.008重量部の老化防止剤(イルガノックス1010)を添加し、2軸押出機(TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32、スクリュー回転数250rpm、樹脂温度260℃、フィードレート10kg/時間)で押し出し、ペレットとした。
【0073】このペレットを用いて、型締め圧350t、樹脂温度265℃、金型温度70℃で射出成形し、直径200mm、高さ130mm、平均厚さ2mmの円筒状の底面を一つ有する透明な容器と100mm×50mm×2.0mmの試験片を作製した。
【0074】試験片の全光線透過率を測定したところ、400〜700nmでは88.7%以上で透明性は良好であった。また、濁度を測定したところ、0.1%であった。
【0075】LB培地300mlに6gの寒天を加えて、成形した円筒状の容器に入れ、アルミ箔でキャップし、121℃、30分のスチーム滅菌をしてゲル化させ、室温で6時間放置して固化させた。37℃で3日間保温したが、菌類の増殖は認められなかった。処理後の外観は良好であり、目視で白濁、割れ、変形は確認されなかった。
【0076】また、試験片をpH9の炭酸ナトリウム水溶液、pH4の塩酸、エタノールに48時間浸漬した後、外観を観察したが変化はなく、濁度、全光線透過率にも変化はなかった。
【0077】この試験片を10mm幅に切り、20gを蒸留水中で20分間超音波洗浄した後、40℃で10時間乾燥した。この20gの試験片を硬質ガラスフラスコに入れ、蒸留水200gを加えた。硬質ガラス製の蓋をして、50℃で24時間静置して、蒸留水を回収した。
【0078】対照として、硬質ガラスフラスコに蒸留水200gを入れ、硬質ガラス製の蓋をして同じく50℃で24時間静置して、蒸留水を回収した。
【0079】この2種類の蒸留水の原子吸光法やイオンクロマトグラフィー、燃焼−非分散型赤外線ガス分析法等による分析結果の差から、試験片からの溶出量を求めた結果、チタン原子量は0.01ppm(検出限界)以下、ニッケル原子量は0.01ppm(検出限界)以下、塩素原子量は0.02ppm(検出限界)以下、全有機炭素量は2ppm(検出限界)以下であった。
【0080】上記試験片を日本薬局方第12改正「輸液用プラスチック試験法」に従い、溶出物試験を行った。泡立ちは3分以内に消失し、pH差は−0.03、紫外線吸収は0.006、過マンガン酸カリウム還元性物質0.11mlであり、医療用途として適した特性を有していることがわかった。
【0081】実施例7参考例1で得た開環重合体の代わりに参考例4で得た開環重合体を用いる以外は実施例1と同様にして、96重量部の樹脂を得た。
【0082】この樹脂の極限粘度は0.40dl/g、Tgは185℃であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.3〜6.8ppm、6.5〜4.5ppm、4.3〜0.7ppmの吸収が約38:16:67)の強度比で観察され、得られた樹脂の環化率は約22%であることが確認された。
【0083】実施例8実施例1で得られた樹脂の代わりに実施例7で得られた樹脂を用いる以外は、実施例2と同様にして、約28重量部の無色の樹脂を得た。
【0084】この樹脂の25℃、デカリン中での極限粘度は0.40dl/gであり、Tgは142℃、吸水率は0.05以下であった。
【0085】また、1H−(クロロホルム−d1中、30℃)において、7.3〜6.8ppm、6.5〜4.5ppm、4.3〜0.7ppmの吸収が0:0:100の強度比で観察され、芳香族環構造及び主鎖構造中の不飽和結合が完全に水素添加されていることがわかった。
【0086】この水素添加物を200℃でプレス成形し、厚さ1.2mm、直径12.5cmの円板を作製した。この円板の光線透過率は90%以上、レタデーション値は20nm以下であった。また、この円板を用いて測定したことろ、この樹脂の体積固有抵抗値は5×1016以上、また、102Hz、103Hz、109Hzの周波数のいずれにおいても、誘電率と誘電正接はそれぞれ2.43と5×10-4であった。
【0087】実施例9塩化アルミニウムの添加量を8重量部とし、反応温度を55℃、反応時間を2時間とする以外は実施例1と同様にして、無色の樹脂を94重量部を得た。
【0088】この樹脂の極限粘度は0.42dl/g、Tgは199℃であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.5ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が約37:13:91)の強度比で観察され、得られた樹脂の環化率は約35%であることが確認された。
【0089】実施例10実施例9で得られた樹脂20重量部をトルエン80重量部に溶解した溶液、およびコバルト(III)アセチルアセトナート0.2重量部を攪拌器付きオートクレーブに仕込んだ。オートクレーブ中の気体部分を水素で置換した後、トリイソブチルアルミニウムの15重量%トルエン溶液3重量部を加え、水素圧力10kg/cm2、温度80℃で1時間反応させた。反応溶液を強く攪拌したアセトン250重量部とイソプロピルアルコール250重量部から成る混合液中に注いで樹脂を沈澱させ、濾別して回収した。さらにアセトン200重量部で洗浄した後、1mmHg以下に減圧した真空乾燥機中、100℃で24時間乾燥させ、19重量部の樹脂を得た。
【0090】この樹脂の極限粘度は0.41dl/g、Tgは155℃、吸水率は0.02以下であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.5ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が約37:0:104)の強度比で観察され、得られた樹脂は、参考例1で得られた開環重合体の環化物の水素添加物であり、芳香族環構造は全く水素添加されていないが、主鎖構造中の不飽和結合が完全に水素添加されたことがわかった。
【0091】この水素添加物を200℃でプレス成形し、厚さ1.2mm、直径12.5cmの円板を作製した。この円板の光線透過率は91%以上、レタデーション値は20nm以下であった。また、この円板を用いて測定したことろ、この樹脂の体積固有抵抗値は5×1016以上、また、102Hz、103Hz、109Hzの周波数のいずれにおいても、誘電率と誘電正接はそれぞれ2.44と5×10-4であった。
【0092】実施例11塩化アルミニウムの添加量を10重量部とし、反応温度を40℃、反応時間を4時間とした以外は実施例1と同様にして、無色の樹脂94重量部を得た。
【0093】この樹脂の極限粘度は0.41dl/g、Tgは185℃、吸水率は0.03以下であった。また、1H−NMR(クロロホルム−d1中、30℃)スペクトルにおいて、7.5〜6.7ppm、6.0〜4.5ppm、4.1〜0.7ppmの吸収が約38:15:87)の強度比で観察され、得られた樹脂は、参考例1で得られた開環重合体の環化物であり、環化率は23%であることがわかった。
【0094】この水素添加物を240℃でプレス成形し、厚さ1.2mm、直径12.5cmの円板を作製した。この円板の光線透過率は81%以上であった。
【0095】
【発明の効果】本発明の樹脂は、透明性、低複屈折性、耐熱性、触媒由来の遷移金属原子の低含有性、電気特性等に優れ、光学材料をはじめ、電気絶縁材料、医療用器材、電子部品処理用器材等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式1
【化1】


(式中、Rは−O−、−NR−、または−CR1011−を示し、R〜R11は水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基等の極性基、またはこれらの極性基で置換された炭素数1〜4の炭化水素基を示す)で表される繰り返し構造単位を有する樹脂。
【請求項2】 請求項1記載の樹脂の水素添加物。
【請求項3】 一般式2
【化2】


(式中、R1は−O−、−NR9−、または−CR1011−を示し、R2〜R11は水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基等の極性基、またはこれらの極性基で置換された炭素数1〜4の炭化水素基を示す)で表される単量体の開環(共)重合体を酸性化合物で処理する請求項1記載の樹脂の製造方法。
【請求項4】 一般式2で表される単量体の開環(共)重合体を酸性化合物で処理し、さらに水素添加することを特徴とする請求項2記載の水素添加物の製造方法。

【特許番号】特許第3248310号(P3248310)
【登録日】平成13年11月9日(2001.11.9)
【発行日】平成14年1月21日(2002.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−219149
【出願日】平成5年8月11日(1993.8.11)
【公開番号】特開平7−53680
【公開日】平成7年2月28日(1995.2.28)
【審査請求日】平成12年3月29日(2000.3.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【参考文献】
【文献】特開 昭50−154399(JP,A)