説明

新規な第四級ポリマー

本発明は、新規な四級化ポリマー、特にキチン/キトサン型の四級化ポリマー、及び、四級化アンモニウム基、特にピペラジニウム基、を有する炭水化物ポリマーに関する。そのようなポリマーは、例えば、改善された溶解性の特徴によって特徴づけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な第四級ポリマー、及び、第四級アンモニウム成分を、種々の共有結合スペーサーを介して、任意の天然ポリマー、半合成ポリマーまたは合成ポリマー等、好ましくはキトサン及びキチンのような、オリゴマーまたはポリマーに付加するための方法を目的とする。前記第四級アンモニウムポリマー誘導体は、強化された水溶解性、使用適性及び活性を、多くの産業適用、例えば、製薬、化粧品、食品科学、浄水、パルプ及び製紙産業、及び繊維産業において有する。1つまたは複数の第四級成分をポリマーのモノマーユニットに挿入することができる。本発明はまた、前記ポリマーの製造において使用可能なモノ第四級ピペラジニウム酸及びジ第四級ピペラジニウム酸、並びに、それらの製造方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
キトサン(ポリ−1,4−β−D−グルコサミン)は、塩基性条件での脱アセチル化によってキチンから得られる非毒性(Journal of Biomedical Material Research 59,2002,585)かつ生分解性(Biomaterials 20,1999,175)の多糖である。キトサンという用語は、様々な脱アセチル化度及び分子量を有する、グルコサミン及びN−アセチルグルコサミンの様々なヘテロポリマーを記述するために使用される。キトサンは、潜在用途を、様々な分野、例えば、製薬及び医療(Drug Development and Industrial Pharmacy 24,1998,979;Pharmaceutical Research 15,1998,1326;S.T.P.Pharma Science 10,2000,5)、食品科学(International Dairy Journal 14,2004,273;Agro Food Industry Hi−Tech 14,2003,39)、浄水(Water Research 34,2000,1503)、パルプ及び製紙産業(Journal of Applied Polymer Science 91,2004,2642)、及び繊維産業(Journal of Macromolecular Science Polymer Reviews C43,2003,223)において有する。
【0003】
種々の適用におけるキトサンの使用に対する主な障害は、溶解特性が悪いこと、特に、水溶解性が悪いことである。キチン及びキトサンの不良な溶解性は、高度に結晶化した構造をもたらす強い分子内及び分子間の水素結合のためである。キトサンは、ポリマー内のアミノ基のプロトン化のために酸性の水溶液にだけ溶解する。キトサンはすべての一般的な有機溶媒において難溶性である。キトサンは、脱アセチル化度が約50%であるとき、立体配座による分子間の水素結合の形成が有利でないために、水に可溶性になる(Biomacromolecules 1,2000,609)。様々なキチン誘導体及びキトサン誘導体が、主としてキトサンの溶解特性を改善するために設計及び合成されている(Progress in Polymer Science 26,2001,1921;Progress in Polymer Science 29,2004,887)。アニオン性の水溶性キトサン誘導体が、カルボン酸誘導体(International Journal of Biological Macromolecules 14,1992,122;European Polymer Journal 39,2003,1629)、リン酸塩(Carbohydrate Polymers 44,2001,1)及び硫酸塩(Carbohydrate Research 302,1997,7)である。他の水溶性キトサン誘導体がポリ(エチレングリコール化)誘導体である(Carbohydrate Polymers 36,1998,49)。
【0004】
重要な水溶性キトサン誘導体が第四級アンモニウム成分を有する誘導体である。このような誘導体は、元のキトサンを上回る2つの大きな利点を有する。すなわち、(1)そのような誘導体は中性条件及び塩基性条件を含む広いpH範囲で水溶性であり、(2)そのような誘導体は永続的な正電荷をポリマー骨格に有する。ポリカチオン性の性質が一般には、キトサンの特異な特性及び活性に関わっていると見なされている。第四級キトサン誘導体は、ポリマーに既に存在するアミノ基を四級化すること、あるいは、1つまたは複数の第四級アンモニウム成分を付加することのいずれかにより調製することができる。(N,N,N)−トリメチルキトサンの合成が広範囲に研究され、報告されている(Carbohydrate Polymers 5,1985,297;International Journal of Biological Macromolecules 8,1986,105;Carbohydrate Polymers 24,1994,209;Carbohydrate Polymers 36,1998,157;Drug Development and Industrial Pharmacy 27,2001,373)。(N,N,N)−トリメチルキトサンの薬剤学的性質が広く研究されている(例えば、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 58,2004,225;Biomaterials 23,2002,153;Carbohydrate Research 333,2001,1)。しかしながら、ヒドロキシル基が保護されないならば、明確に定義された均一なキトサン誘導体構造を直接のメチル化によって得ることができない。ポリマー内のヒドロキシル基、すなわち、6位の第一級ヒドロキシル基及び3位の第二級基、もまたメチル化される。高い四級化度を、多糖の完全なO−メチル化を伴わずに得ることはできない(Carbohydrate Polymers 36,1998,157)。
【0005】
キトサンにおけるアミノ基はまた、最初にアミノ基をアルデヒドにより還元的にアルキル化して、イミンを形成させ、その後、還元して、N−アルキル誘導体を得ることによって四級化されている。このようなアルキル誘導体はさらにヨウ化アルキルにより四級化されている(Polymer Bulletin 38,1997,387;Carbohydrate Research 333,2001,1;European Polymer Journal 40,2004,1355)。Uragami及び共同研究者らは、(N,N,N)−トリメチルキトサンを、様々な架橋剤を用いて、例えば、テトラエトキシシラン(Biomacromolecules 5,2004,1567)及びジエチレングリコールジグリシジルエーテル(Macromolecular Chemistry and Physics 203,2002,1162)を用いて架橋している。Murataらはキトサンのガラクトース誘導体におけるアミノ基の一部を四級化した(Carbohydrate Polymers 29,1996,69;Carbohydrate Polymers 32,1997,105)。Ucheqbuらは、薬物送達のためのポリソープを得るために第四級アンモニウムパルミトイルキトサンを調製した(International Journal of Pharmaceutics 224,185−199)。しかしながら、これらのすべてが、(N,N,N)−トリメチルキトサンに関する問題をともに有する。すなわち、ポリマーのヒドロキシル基が合成中にメチル化されるために均一な構造を得ることができない。
【0006】
第四級アンモニウム成分を、様々なスペーサーを介してポリマー構造に挿入することができる。N−[(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウム)プロピル]キトサン塩化物は、キトサンを塩化グリシジルトリメチルアンモニウムと反応させることによって得ることができる(Biomaterials 24,2003,5015;Carbohydrate Research 339,2004,313;Coloration Technology 120,2004,108;Colloids and Surfaces A:Physicochemical Engineering Aspects 242,2004,1;Polymer Journal 32,2000,334;International Journal of Biological Macromolecules 34,2004,121−126)。このN−[(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウム)プロピル]キトサンは、例えば、化粧品(例えば、米国特許第4772690号、米国特許第4822598号、米国特許第4976952号)等において、種々の適用のために研究されている。様々な長さのアルキル鎖が第四級窒素に結合するこの誘導体は、抗菌剤(米国特許第6306835号)として、また、コレステロール降下剤(国際公開第9206136号)として記載されている。
【0007】
第四級キトサン誘導体の別の一例がN−ベタイナートキトサンである(Macromolecules 37,2004,2784;S.T.P.Pharma Sciences 8,1998,291)。Leeらは、2つの第四級成分を有するキトサン誘導体を得るために、四級化されたジアミノアルキルキトサンを調製した(Bioscience Biotechnology and Biochemistry 63,1999,833;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12,2002,2949)。Chun−Hoらは(トリエチルアミノエチル)キチンを調製し、その抗菌活性を調べた(Polymers for Advanced Technologies 8,1997,319)。SuzukiらはN−p−(N−メチルピリジニオ)メチル化キトサン及びN−4−[(3−トリメチルアンモニオ)プロポキシ]ベンジル化キトサンを調製し、これらの物質の電気抵抗を調べた(Polymer Journal 32,2000,334)。
【0008】
他の多糖もまた、第四級アンモニウム成分を挿入することによって修飾されている。例えば、セルロース(Macromolecular Materials and Engineering 286,2001,267)及びデンプン(International Journal of Biological Macromolecules 31,2003,123)。デンプン及びセルロースのこれらの水溶性第四級誘導体の商業的製造者がいくつか存在する。Tsaiらは、モノ第四級4,4−ジエチル−1−(クロロエチル)ピペラジニウムクロリド塩酸塩及びジ第四級1−グリシジル−1,4,4−トリメチルピペラジニウムジクロリドによるデンプンのアルキル化を報告した(米国特許第5349089号)。しかしながら、これらのアルキル化デンプン誘導体の物理化学的特性(例えば、水溶解性など)は何ら報告されなかった。
【特許文献1】米国特許第4772690号
【特許文献2】米国特許第4822598号
【特許文献3】米国特許第4976952号
【特許文献4】米国特許第6306835号
【特許文献5】国際公開第9206136号
【特許文献6】米国特許第5349089号
【非特許文献1】Journal of Biomedical Material Research 59,2002,585
【非特許文献2】Biomaterials 20,1999,175
【非特許文献3】Drug Development and Industrial Pharmacy 24,1998,979
【非特許文献4】Pharmaceutical Research 15,1998,1326
【非特許文献5】S.T.P.Pharma Science 10,2000,5
【非特許文献6】International Dairy Journal 14,2004,273
【非特許文献7】Agro Food Industry Hi−Tech 14,2003,39
【非特許文献8】Water Research 34,2000,1503Journal of Applied Polymer Science 91,2004,2642
【非特許文献9】Journal of Macromolecular Science Polymer Reviews C43,2003,223
【非特許文献10】Biomacromolecules 1,2000,609
【非特許文献11】Progress in Polymer Science 26,2001,1921
【非特許文献12】Progress in Polymer Science 29,2004,887
【非特許文献13】International Journal of Biological Macromolecules 14,1992,122
【非特許文献14】European Polymer Journal 39,2003,1629
【非特許文献15】Carbohydrate Polymers 44,2001,1
【非特許文献16】Carbohydrate Research 302,1997,7
【非特許文献17】Carbohydrate Polymers 36,1998,49
【非特許文献18】Carbohydrate Polymers 5,1985,297
【非特許文献19】International Journal of Biological Macromolecules 8,1986,105
【非特許文献20】Carbohydrate Polymers 24,1994,209
【非特許文献21】Carbohydrate Polymers 36,1998,157
【非特許文献22】Drug Development and Industrial Pharmacy 27,2001,373
【非特許文献23】European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 58,2004,225
【非特許文献24】Biomaterials 23,2002,153
【非特許文献25】Carbohydrate Research 333,2001,1
【非特許文献26】Carbohydrate Polymers 36,1998,157
【非特許文献27】Polymer Bulletin 38,1997,387
【非特許文献28】Carbohydrate Research 333,2001,1
【非特許文献29】European Polymer Journal 40,2004,1355
【非特許文献30】Biomacromolecules 5,2004,1567
【非特許文献31】Macromolecular Chemistry and Physics 203,2002,1162
【非特許文献32】Carbohydrate Polymers 29,1996,69
【非特許文献33】Carbohydrate Polymers 32,1997,105
【非特許文献34】International Journal of Pharmaceutics 224,185−199
【非特許文献35】Biomaterials 24,2003,5015
【非特許文献36】Carbohydrate Research 339,2004,313
【非特許文献37】Coloration Technology 120,2004,108
【非特許文献38】Colloids and Surfaces A:Physicochemical Engineering Aspects 242,2004,1
【非特許文献39】Polymer Journal 32,2000,334
【非特許文献40】International Journal of Biological Macromolecules 34,2004,121−126
【非特許文献41】Macromolecules 37,2004,2784;S.T.P.Pharma Sciences 8,1998,291
【非特許文献42】Bioscience Biotechnology and Biochemistry 63,1999,833
【非特許文献43】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12,2002,2949
【非特許文献44】Polymers for Advanced Technologies 8,1997,319
【非特許文献45】Polymer Journal 32,2000,334
【非特許文献46】Macromolecular Materials and Engineering 286,2001,267
【非特許文献47】International Journal of Biological Macromolecules 31,2003,123
【非特許文献48】Biomacromolecules 6,2005,858
【非特許文献49】Carbohydrate Polymers 36,1998,157
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、キトサンの四級化されていないN−メチルピペラジン誘導体を以前に調製したが、これらは元のキトサンよりも水において相対的に高可溶性であったにすぎなかった(Biomacromolecules 6,2005,858)。第四級ピペラジン誘導体を調製することによって、本発明者らは、広いpH範囲で高水溶性である誘導体を得ることができる。しかしながら、第四級ピペラジン誘導体は、これらの四級化されていないキトサン誘導体から直接調製することができない。第四級窒素原子を得るために、通常は大過剰のアルキル化試薬を伴う過酷な反応条件が必要である。充分に分離したキトサン誘導体を、四級化されていないキトサン誘導体をアルキル化することによって得ることは不可能である。この方法は、ジ第四級ピペラジン成分及びモノ第四級ピペラジン成分の両方をモノマーに有するヘテロポリマーをもたらすと考えられるからである。また、キトサンにおけるヒドロキシル基もアルキル化されると考えられる。キトサンのヒドロキシル基のアルキル化は、キトサンの水溶解性を低下させることが示されている。例えば、Sievalらは、高いO−メチル化度を有する第四級キトサン誘導体は、高い四級化度を用いたとしても、水に不溶であったことを報告した(Carbohydrate Polymers 36,1998,157)。このことはまた、第四級キトサン誘導体が、高い四級化度の場合でさえ、必ずしも水溶性でないことを証明している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、下記の一般式によって表されるポリマーの新規な一群に関する。
【0011】
【化1】

式中、
TはNHまたはOであり、
、X及びXは独立して、
Hまたは
【0012】
【化2】

であり、
TがNHである場合(すなわち、キチン及びキトサンの場合)、X,X及びXは、
【0013】
【化3】

であることも可能であり、さらに、Xは、
【0014】
【化4】

であることも可能であり、
式中、R及びRは独立して、H、または、1個〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状の置換アルキル鎖または非置換アルキル鎖であり、mは1〜12の整数であり、
Yは、下記の式を有するピペラジン成分から選択される第四級アンモニウム成分、
【0015】
【化5】

もしくは、下記の基から選択される第四級アンモニウム成分であり、
【0016】
【化6】

式中、R及びRは独立して、1個〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の置換アルキル鎖または非置換アルキル鎖であり、
は、負荷電の対イオン、好ましくは、Cl,Br,I,OH,RCOO,RSOからなる群から選択される負荷電の対イオンであって、式中のRが、H、または、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基、または、芳香族成分であり、
基X,X及びXの合計についての第四級置換基の置換度(ds)は少なくとも0.01であり、
nは重合度であって、2〜100000の整数が可能であり、
但し、TがOである場合には、Yは、定義された式(A),(B),(C)または(E)の基の意味のみを有することが可能である。
【0017】
本発明は、そのような新規な第四級ポリマーの製造方法、下記の式のモノ第四級ピペラジニウム酸及びジ第四級ピペラジニウム酸、その塩基塩、ならびに、それらの製造方法に関する。
【0018】
【化7】

式中、R,R,R,R,m及びZは上記で定義される通りである。
【0019】
さらなる態様によれば、本発明は、X,XまたはXについて上記で定義された第四級基により置換されたヒドロキシル基またはアミノ基を有し、Yが上記で定義された式(A),(B),(C)または(E)のモノ四級化ピペラジン基またはジ四級化ピペラジン基である、任意の炭水化物ポリマーあるいは任意の他の天然ポリマー、半合成ポリマーまたは合成ポリマーの新規な誘導体に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
第四級ポリマーのモノマーユニットは独立して、基X,X及びXによって置換され得る。従って、異なるモノマーがポリマーに存在することができる。すなわち、モノマーユニットのいくつかにおける官能基の1つまたは複数が、第四級基により置換され(すなわち、X,X及び/またはX
【0021】
【化8】

)、いくつかは非置換である(すなわち、X,X及びX=H)。TがNHである場合(すなわち、キチン及びキトサンの場合)、X,X及びXは、
【0022】
【化9】

であることも可能であり、さらに、Xは、
【0023】
【化10】

であることも可能である。
【0024】
これらの異なるモノマーはポリマー構造内に一様に分布させることができるか、または、ブロック構造もまた形成することができる。ポリマー構造における第四級置換基、
【0025】
【化11】

の置換度は、基X,X及びXのそれぞれについて独立して0〜1が可能であり、しかしながら、基X,X及びXのすべてについての全体的な置換度は、ポリマーにおける必要な第四級置換基の含有量を提供するために合計で少なくとも0.01である。最大の置換度は3であり、そのような場合、ポリマーのそれぞれのモノマーユニットにおける1つのモノマーあたり3つの第四級置換基が存在する。例えば、置換基について0.01の置換度は、ポリマーにおける100個のモノマーユニットあたり平均して1個の前記置換基が存在することを意味し、また、1の置換度は、ポリマーにおける各モノマーユニットあたり平均して1個の置換基が存在することを意味する。
【0026】
典型的には、第四級基についての置換度は0.05〜1の範囲にある。しかしながら、最適な置換度は、これらの第四級ポリマー誘導体が使用される適用に依存する。
【0027】
上記式において、R〜Rの意味におけるアルキル基は1個〜6個の炭素原子を有し、好ましくは1個〜4個の炭素原子を好ましくは直鎖状で有する。1つの好都合なアルキル基がメチル基である。上記式において、R及びRは好ましくは水素である。前記アルキル基は非置換または置換が可能であり、それにより、置換基は、低級アルコキシ(1個〜3個の炭素原子)、ヒドロキシまたはハロゲンが可能である。
【0028】
本発明に関連して、芳香族基は好都合には、フェニル基、ベンジル基またはナフチル基であり、この場合、これらは非置換であり得るか、あるいは、低級アルキルまたは低級アルコキシ(1個〜3個の炭素原子)またはハロゲンから選択される1個〜3個の置換基により置換され得る。
【0029】
上記式において、nは重合度であり、2個〜100000個の構造ユニットを有するポリマーを与える整数が可能である。すなわち、ポリマーは、2つのモノマーによる二量体から、分子量が少なくとも10000000であるポリマーにまで及び得る。
【0030】
好ましい一群のポリマーは、TがNHであり、X,X及びXが上記で定義された通りであり、Yが、式(A),(B)または(C)を有する基のいずれかであり、かつ、第四級基の置換度が0.01〜1、好ましくは0.05〜1であるポリマーである。
【0031】
ポリマー誘導体の好ましい一群が、TがNHであり、X及びXが水素であり、Xが、水素、アセチル、または、第四級アンモニウム成分を含有する基であり、特に、式(A)〜(E)を有する基のいずれかであって、とりわけ、式(A),(B)または(C)である上記の式(I)を有するポリマー誘導体によって形成される。そのような場合、第四級基の置換度は0.01〜1の範囲、好ましくは0.05〜1である。
【0032】
好ましい実施形態によれば、ポリマー骨格が、デンプン、セルロース、プルランまたはデキストランであるとき、ポリマー誘導体の一般式は、
【0033】
【化12】

である。式中、X,X,Xは、上記で示された式を有し、Yは、式(A),(B),(C)または(E)の第四級基の意味を有し、R,R,R,R,Z,m及びnは上記で定義された通りであり、かつ、ポリマーにおける第四級基の置換度が0.01〜1である。
【0034】
キチン及びキトサンの場合のように、異なるモノマーユニットが式(II)の前記ポリマーにおいて存在することができる。すなわち、任意のモノマーユニットにおいて、官能基の1つまたは複数が置換され得る(すなわち、X,X及び/またはX
【0035】
【化13】

)か、あるいは、官能基は非置換であり得る(すなわち、X、X及びX=H)。そのような異なるモノマーユニットは一様に分布させることができるか、または、ブロック構造もまたポリマー構造内に形成することができる。第四級基の置換度は、キチン構造及びキトサン構造について上記で記載された通りである。
【0036】
本発明はまた、下記に示される式VIIIa及び式VIIIbのモノ第四級ピペラジニウム酸及びジ第四級ピペラジニウム酸、ならびに、それらの製造方法に関する。これらのタイプの成分は、例えば、元の化合物の水溶解性を高めるために、プロドラッグ分子に組み込まれている(Pharmaceutical Research 13,1996,469)。報告された第四級ピペラジニウム誘導体は、最初に第二級または第三級のピペラジン成分を標的化合物に結合し、その後、ハロゲン化アルキルにより四級化することによって合成されている。残念ながら、この方法は多くの場合、特に、元の分子が数多くの官能基を有するときには、生成物の混合物をもたらし、そのため、モノ第四級ピペラジニウム塩及びジ第四級ピペラジニウム塩と、副産物との手間のかかる分離が必要となる。
【0037】
新規なモノ第四級ピペラジニウム酸及びジ第四級ピペラジニウム酸は、下記の式及びその塩を有する。
【0038】
【化14】

式中、R,R,R,R,m及びZは本明細書中の上記で定義された通りである。
【0039】
適切な塩基塩形態は、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩など)、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、エチレンジアミン)との塩、ならびに、アミノ酸(例えば、アルギニン及びリシンなど)との塩を含む。
【0040】
前記ピペラジニウム酸は、下記の式の化合物、
【0041】
【化15】

式中、R,R,R及びmは、上記で示された意味を有し、Eは水素であるか、または、例えば、対応する酸を形成させるために加水分解によって除くことができる、カルボキシル成分のため一般に使用される任意の保護基(Green TW,Wuts PGM:Protection for the carboxyl group.Protective groups in Organic Syntesis 3rd edition.Pages 369―453. John Wiley&Sons 1999)であり、好ましくはエチルである、
を基Rに対応する四級化化合物(例えば、好適なハロゲン化アルキル、フルオロスルホン酸アルキル、硫酸ジアルキル、アルキルトシラートまたはアルキルメシラート等)と反応させて、下記の式を有する化合物の混合物、
【0042】
【化16】

式中、R,R,R,R,m及びEは、上記で示された意味を有する、
を形成させ、その後、これらの化合物を分離すし、必要ならば、そのように分離された化合物をそれらの対応する酸に変換し、場合により、得られた酸を上記で定義された塩に変換することによって製造される。これら2つの化合物の分離は、化合物の一方、好ましくはジ第四級ピペラジニウム酸(すなわち、VIIIa’)を、他方の化合物が溶液中に残ったままとなる溶媒の好適な選択によって沈殿させることによって行われることが好ましい。
【0043】
使用される好適な溶媒は、例えば、アセトニトリル、ピリジン、t−ブタノール、1−ブタノール、メチルエチルケトン、2−プロパノール、1−プロパノール、アセトン、エタノール、メタノール、ニトロベンゼン、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、DMSO及び水である。当業者は、例えば、溶媒の誘電率に基づいて、例えば、ジ四級化化合物が沈殿し、かつ、モノ四級化化合物が溶液中に残ったままとなり、溶液からモノ四級化化合物を、例えば、エバポレーションによって回収することができる溶媒を容易に選択することができる。
【0044】
下記において、キトサンの用語が使用されるときには、キチン及びキトサンの両方を意味することが意図される。
【0045】
第四級アンモニウム基を、X,X及び/またはXに含有する本発明によるキチン誘導体及びキトサン誘導体は一般には、遊離のアミノ基またはヒドロキシル基を有し、残りの反応基が場合により保護されているキチン誘導体またはキトサン誘導体を、下記の式V’を有する化合物、
【0046】
【化17】

式中、Aは活性基であり、Y’は好適な脱離基または第四級アンモニウム基Yであり、R,R,m及びYは本明細書中の上記で定義された通りである、
または、下記の式IIIを有する化合物、
【0047】
【化18】

式中、Lは脱離基であり、Y’は第四級アンモニウム基Yまたは脱離基のいずれかであり、R,R,m及びYは上記で定義された通りであり、それにより、Lは、脱離基Y’と比較して同じくらい良好な脱離基、または、より良好な脱離基、または、より反応性の高い脱離基である、
と反応させ、脱離基Y’を含有する中間化合物が得られる時に、その中間体をさらに第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させて、所望の第四級ポリマーを得、すべての保護基を除去することによって製造することができる。
【0048】
式IIIにおいて、Lは、例えば、トリフラート、トシラート、メシラート、ブロミドまたはヨージドが可能であり、脱離基としてのY’は、例えば、クロリドが可能である。
【0049】
本発明によれば、X,X及び/またはXが水素の意味を有する得られた化合物は、この化合物を式IIIまたは式V’の化合物(式中、記号は、定義された意味を有する)と反応させ、脱離基Y’を有する得られた中間体を、第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させ、反応において場合により使用されたすべての保護基を除去することによって、前記X,X及び/またはXが水素と異なる化合物に変換することができる。
【0050】
本発明によれば、水素とは異なる基X及び/またはXを有し、Xが四級化基を含有する基とは異なる化合物を製造するために、アミノ基が保護され、かつ、ヒドロキシル基の1つまたは両方が保護されていないキチン誘導体またはキトサン誘導体が、式IIIまたは式V’の化合物(式中、記号は、定義された意味を有する)と反応させられ、その後、Y’が脱離基である得られた任意の中間体が、第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させられ、その後、すべての保護基が除去される。
【0051】
が、第四級アンモニウム基を含有する上記で定義された基である本発明によるキチン誘導体またはキトサン誘導体は、例えば、3位及び/または6位のヒドロキシル基が場合により保護され、かつ、遊離のアミノ基をキトサンポリマーのモノマーユニットの1つまたは複数に有するキチンポリマーまたはキトサンポリマーを、上記で定義された式IIIまたは式V’の化合物と反応させ、次いで、第2の工程において、必要ならば、第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させ、すべての保護基を除去することによって製造することができる。
【0052】
1つの実施形態によれば、Xが第四級アンモニウム基を含有する上記で定義された基であり、X及びXが水素であるポリマーは、3位及び/または6位のヒドロキシル基が場合により保護され、かつ、ポリマーのモノマーユニットの1つまたは複数におけるアミノ基が基Xに対応するアルキル基またはアルキルオキシ基を有し、基Yが好適な脱離基によって置換されるキチンポリマーまたはキトサンポリマーを、第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させ、すべての保護基を除去することによって製造することができる。
【0053】
第2の実施形態によれば、第四級アンモニウム基を含有する基Xにより置換されたアミノ基を有するポリマーを製造するために、遊離のアミノ基を有し、かつ、3位及び/または6位のヒドロキシル基が場合により保護されるキチンポリマーまたはキトサンポリマーを、上記で定義された式IIIまたは式V’の化合物と反応させ、その後、式IIIまたは式V’におけるY’が脱離基である時には、そのように得られた中間体化合物を、基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させ、その後、すべての保護基を除去する。
【0054】
そのような方法のいくつかの例が、スキームI及びスキームIIにそれぞれ示される方法Aまたは方法Bによって例示される。スキームIは、アミノ基が、脱離基Y’を有するアルキル基またはアルキルオキシ基により置換されている出発ポリマーIaにおけるモノマーユニットについての反応を例示する。
【0055】
【化19】

【0056】
従って、式VIIの第四級アンモニウムポリマーは、基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンによるポリマーIaの置換反応によって製造することができる。式において、Pは独立してHまたは保護基である。保護基は、例えば、トリフェニルメチル基(Tr)、ベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−メトキシベンジル基、t−ブチル基、アリル基またはアセチル基であり得る。本発明において使用される特に好ましい保護基はトリフェニルメチル基(Tr)である。Y’は好適な脱離基であり、例えば、塩素、トシラート、ヨウ素などであり、好ましくは、臭素または塩素である。R及びRは上記で定義された通りであり、qは0または1であり、アミノ置換基におけるケト基の非存在(q=0)または存在(q=1)を示す。
【0057】
第1の工程(a)において、保護または非保護の中間体Iaは、第四級ポリマーVIを得るために、成分Yを含有する第四級アンモニウム基に対応する任意の第三級アミンまたは芳香族アミン、好ましくは、1,4−ジメチルピペラジン、ピリジンまたは1−メチルイミダゾール、と反応させる。
【0058】
第2の工程(b)において、可能性のある保護基が、様々な反応によって、例えば、(例えば、パラジウムブラック触媒の存在下での)水素化分解による還元、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸など)による処理、または、トリフルオロ酢酸による処理などによって除去される。好ましくは、1Mの塩酸が使用される。
【0059】
【化20】

【0060】
スキームIIは、遊離のアミノ基を含有するポリマーIbにおけるモノマーユニットの反応を示す。式VII’の第四級アンモニウムポリマー(式中、X及びXは水素または第四級基であり、それ以外の記号は定義された意味を有する)は、中間体Ibのアミノ基を、上記で定義された式V’または式IIIを有する化合物(式中、Y’は第四級アンモニウム基Yである)、好ましくは、下記の式のモノ第四級ピペラジニウム酸またはジ第四級ピペラジニウム酸、と縮合することによって製造することができる。
【0061】
【化21】

式中、R,R,R,R,m及びZは本発明の上記で定義された通りである。
【0062】
式Ibにおいて、Pは独立して、H、または、本明細書中の上記で定義された保護基である。工程cにおいて、化合物VI’が形成され、この場合、P’は、保護基、水素、あるいは、XまたはXの意味を有する。化合物V’との反応は、好都合には、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等の活性化剤の存在下で行われる。反応は不活性な溶媒、例えば、脂肪族または芳香族、好ましくはハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、グリコール、アミド(例えば、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドまたはアセトアミド、N−メチルピロリドンまたはリン酸トリス(ジメチルアミド)など)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド及びテトラメチレンスルホンなどにおいて行われる。水を溶媒として使用することもできる。
【0063】
第2の工程(d)において、可能性のある保護基が、本明細書中の上記で定義されたように除去される。
【0064】
保護基(P)が使用されない場合には、キチン及びキトサンにおける官能基(X及びX)の1つまたは複数も、第四級基により置換されることが可能である。すなわち、基X及びXについての置換度が、前記で議論されたように独立して0〜1である。
【0065】
保護基は、第四級置換基を第一級ヒドロキシルまたは第二級ヒドロキシル(すなわち、それぞれX及びX)に対して位置選択的に結合させなければならない時には必要となる。キトサンのアミノ基を、例えば、フタルイミド成分により保護することができ、第一級ヒドロキシルをトリフェニルメチル成分により、また、第二級ヒドロキシルをアセチル成分により保護することができる(Macromolecules 24,1991,4745)。これらの保護基のすべてを従来的に開裂することができ、また、これらの保護基のすべてがキトサンの位置選択的な修飾を可能にする(Macromolecules 24,1991,4745)。
【0066】
デンプン、セルロース、及び、ヒドロキシル基を有する他の炭水化物ポリマーを、エステル化によって一般式(II)の第四級ポリマー誘導体に変換することができる。
【0067】
そのようなエステルは、炭水化物ポリマーを、下記の式(V’)の反応性カルボキシル誘導体と反応させること、及び、化合物が、脱離基Y’を有する中間体として得られる時には、そのような中間体をさらに、基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させて所望の第四級ポリマーを得ることによって製造することができる。
【0068】
【化22】

式中、Aは任意の活性基であり、Y’は、好適な脱離基(例えば、塩素、トシラート、ヨウ素など、好ましくは臭素または塩素)または第四級アンモニウム基Yであり、R,R,m及びYは本明細書中の上記で定義された通りである。
【0069】
式(V’)の反応性カルボキシル誘導体には、酸塩化物(A=Cl)、酸無水物(A=
【0070】
【化23】

)、活性エステル、活性アミドが含まれる。酸無水物には、対称の無水物及び混酸の無水物が含まれる。活性エステルには、p−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドのエステルなどが含まれる。活性アミドには、イミダゾールとのアミドが含まれる。カルボキシル誘導体は、活性剤としてカルボジイミド(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)またはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を使用して活性化することができる。この方法では、炭水化物ポリマー及びカルボキシル誘導体はカルボジイミド試薬とともに水性溶媒または非水性溶媒において混合される。カルボキシル誘導体がその対応するウレアに変換され、このウレアが炭水化物ポリマーの塩基性ヒドロキシル基と反応して、エステル結合をそれぞれを形成する。
【0071】
酸塩化物は、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リンまたは五塩化リンを、過剰な酸受容体(例えば、トリエチルアミンなど)の存在下、非極性溶媒(例えば、ヘキサン、ジクロロメタン、トルエンまたはベンゼンなど)を用いて製造することができる。酸塩化物は単離してもよく、または、その場で生じさせてもよい。
【0072】
あるいは、カルボキシル基は、混酸の無水物を生じさせるために、トリエチルアミンの存在下、クロロギ酸エチルにより活性化することができ、その後、混酸の無水物は、アミド結合またはエステル結合を形成させるために炭水化物ポリマーと反応させる。
【0073】
炭水化物ポリマーを式(V’)に示される反応性カルボキシル誘導体と反応させる時、脱離基Y’を含有する中間体はさらに、第四級ポリマーIIを生じさせるために、基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミン(好ましくは、1,4−ジメチルピペラジン、ピリジンまたは1−メチルイミダゾール)と反応させる。
【0074】
セルロース及びデンプンの修飾の総説については、Prog.Polym.Sci 26,2001,1689及びRobyt J:Polysaccharides II.Chemical modifications and their applications.Essential of Carbohydrate Chemistry.Pages 228−244.Springer−Verlag,New York,1998が参照される。
【0075】
下記の実施例により、本発明が、本発明を限定することなく例示される。
【実施例】
【0076】
特性評価 Hスペクトル及び13Cスペクトルを、500.13MHz及び125.76MHzでそれぞれ作動するBruker AVANCE DRX 500で記録した。化合物をDOに溶解し、3−(トリメチルシリル)プロピオン酸塩−dを内部標準物として使用した。測定は300Kまたは343Kで行った。Hスペクトル及びHデカップリング13Cスペクトルを常法により記録した。Hスペクトルについては、繰り返し時間が4.6sであり、128個の過渡信号が集められた。{H}−13Cスペクトルについては、繰り返し時間が5.2sであり、8192個の過渡信号が蓄積された。13C−Hグラジエント増強異核種単一量子相関(ge−HSQC)実験を、Echo/Antiecho−TPPIグラジエント選択を使用して位相感知モードで行った。FT−IRスペクトルをKBrペレットからNicolet 510P分光計で記録した。
【0077】
合成手順
以前に報告された方法(Macromolecules 37,2004,2784)を使用して、キトサンを、N−フタロイルキトサン及びN−フタロイル−6−O−トリフェニルメチルキトサンを経由して6−O−トリフェニルメチルキトサンに変換した。6−O−トリフェニルメチルキトサン(実施例における化合物4)またはN−クロロアシル−6−O−トリフェニルメチルキトサン(実施例における1及び17)を四級化反応のための出発物質として使用した。N−クロロアシル−6−O−トリフェニルメチルキトサンを、Biomacromolecules 6,2005,858に記載されるように調製した。
【0078】
下記の実施例では、ポリマー式のうち、反応するモノマーユニットのみが示される。
【0079】
実施例1.N−[1−カルボキシメチル−2−(1,4−ジメチルピペラジニウム)]キトサン塩化物
【0080】
【化24】

2.a)ds 0.4:1gのN−クロロアセチル−6−O−トリフェニルメチルキトサン(1)(N−クロロアセチル化度、0.4)、4.74ml(35mmol)の1,4−ジメチルピペラジン及び232mg(1.4mmol)のKIを、アルゴン下、60℃で72時間、50mlのN−メチルピロリドンにおいて撹拌した。反応混合物を氷水で冷却し、生成物をジエチルエーテルにより沈殿させ、メタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。
2.b)ds 0.46:1.4gのN−クロロアセチル−6−O−トリフェニルメチルキトサン(1)(N−クロロアセチル化度、0.46)、12.51ml(92.5mmol)の1,4−ジメチルピペラジン及び0.614g(3.7mmol)のKIを、アルゴン下、60℃で72時間、70mlのN−メチルピロリドンにおいて撹拌した。反応混合物を氷水で冷却し、生成物をジエチルエーテルにより沈殿させ、メタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。
2.c)ds 0.85:2gのN−クロロアセチル−6−O−トリフェニルメチルキトサン(1)(N−クロロアセチル化度、0.85)、24.3ml(180mmol)の1,4−ジメチルピペラジン及び1.195g(7.2mmol)のKIを、アルゴン下、60℃で72時間、100mlのN−メチルピロリドンにおいて撹拌した。反応混合物を氷水で冷却し、生成物をジエチルエーテルにより沈殿させ、メタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。
【0081】
6−O−トリフェニルメチル保護基を、化合物(2a〜2c)を1M HClとともに室温で撹拌することにより3時間の反応の期間中に除いた。反応混合物を蒸発乾固し、生成物をメタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。生成物を、室温で24時間、水に対して透析し、その後、凍結乾燥した(ThermoSavant ModulyoD−230,Savant,Holbrook,NY)。
3.a)730mgの2aにより、360mgの3aが得られた(94%)。H−NMRによって求められた置換度は0.40であった。
3.b)960mgの2bにより、387mgの3bが得られた(76%)。H−NMRによって求められた置換度は0.46であった。
3.c)1.35gの2cにより、720mgの3cが得られた(96%)。H−NMRによって求められた置換度は0.85であった。
IR(KBr):ν3600〜3100(O−H),3000〜2700(C−H),1682(アミドI),1565(アミドII),1470(C−N),1150〜950cm−1(C−O,ピラノース)。H−NMR(343K)(DO):δ2.0(CH,N−アセチル),2.4(H−11),2.8〜3.0(H−10),3.0〜3.1(H−2,アミノ基が非置換であるとき),3.3〜3.4(H−12),3.4〜3.9(H−9,H−6,H−5,H−4,H−3,H−2,置換),4.2(H−8),4.6〜4.8ppm(H−1)。13C NMR(343K)(DO):δ25.0(CH,N−アセチル),46.5(C−11),50.3(C−10),51.4(C−12),58.4(C−2,置換),59.1(C−2,非置換),63.1(C−6,置換),63.3(C−6,非置換),63.8(C−9),63.9(C−9),65.3(C−8),74.7(C−3),77.7(C−5),80.5(C−4,非置換),81.4(C−4,置換),102.9(C−1,置換),104.0(C−1,非置換),167.0(C−7),177.1ppm(C=O,N−アセチル)。
【0082】
実施例2.N−[1−カルボキシメチル−2−(4,4−ジメチルピペラジニウム)]キトサン塩化物
【0083】
【化25】

4−カルボキシメチル−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物の調製は実施例9に記載される。一般的手順。1gの6−O−トリフェニルメチルキトサン(4)(遊離のアミノ基含有量、2.074mmol)を50mLのN−メチルピロリドンに溶解した。4−カルボキシメチル−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及びN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドを20mLのN−メチルピロリドンに溶解した。これらの溶液を一緒にし、アルゴン下において室温で96時間撹拌した。生成物をジエチルエーテルにより沈殿させ、メタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。
5.a)使用された試薬量:214mg(0.713mmol)の4−カルボキシメチル−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物(0.34当量)、110mg(0.814mmol、0.39当量)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び171mg(0.829mmol、0.40当量)のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド。674mg(61%)の生成物5aが得られた。
5.b)使用された試薬量:410mg(1.366mmol,0.66当量)の4−カルボキシメチル−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物、219mg(1.620mmol,0.78当量)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び337mg(1.633mmol,0.79当量)のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド。897mg(70%)の生成物5bが得られた。
5.c)使用された試薬量:828mg(2.759mmol,1.33当量)の4−カルボキシメチル−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物、447mg(3.241mmol,1.56当量)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び677mg(3.281mmol,1.582当量)のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド。1.714g(100%)の生成物5cが得られた。
【0084】
6−O−トリフェニルメチル保護基を、化合物(5a〜5c)を1M HClとともに室温で撹拌することによる3時間の反応の期間中に除いた。反応混合物を蒸発乾固し、生成物をメタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。生成物を、室温で24時間、水に対して透析し、その後、凍結乾燥した(ThermoSavant ModulyoD−230,Savant,Holbrook,NY)。
6.a)650mgの5aにより、269mgの6aが得られた(82%)。H−NMRによって求められた置換度は0.15であった。
6.b)880mgの5bにより、329mgの6bが得られた(71%)。H−NMRによって求められた置換度は0.42であった。
6.c)1.61gの5cにより、550mgの6cが得られた(61%)。H−NMRによって求められた置換度は0.87であった。
IR(KBr):ν3600〜3100(O−H),3000〜2700(C−H),1658(アミドI),1534(アミドII),1475(C−N),1150〜950cm−1(C−O,ピラノース)。H−NMR(343K)(DO):δ2.0(CH,N−アセチル),2.9〜3.0(H−9),3.0〜3.1(H−2,アミノ基が非置換であるとき),3.1〜3.2(H−11,H−12),3.25〜3.5(H−8),3.45〜3.8(H−10),3.5〜3.7(H−5),3.6〜4.0(H−6),3.55〜3.7(H−4,置換),3.6〜3.8(H−3),3.7〜3.9(H−2,置換),3.75〜3.9(H−4,非置換),4.6〜4.8ppm(H−1)。13C−NMR(343K)(DO):δ25.0(CH,N−アセチル),49.0(C−9),54.4(C−11,C−12),58.0(C−2,置換),59.1(C−2,非置換),61.9(C−8),63.0(C−6,置換),63.3(C−6,非置換),64.3(C−10),74.3(C−3,非置換),74.7(C−3,置換),77.4(C−5,置換),77.7(C−5,非置換),80.9(C−4,非置換),81.8(C−4,置換),102.1(C−1,非置換),103.4(C−1,置換),175.2(C−7),177.2ppm(C=O,N−アセチル)。
【0085】
実施例3.N−[1−カルボキシメチル−2−(1,4,4−トリメチルピペリラジ−1,4−ジウム)]キトサン二塩化物
【0086】
【化26】

1−カルボキシメチル−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物の調製は実施例9に記載される。一般的手順。1gの6−O−トリフェニルメチルキトサン(4)(遊離アミノ基含有量、2.074mmol)を50mLのN−メチルピロリドンに溶解した。1−カルボキシメチル−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及びN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドを20mLのN−メチルピロリドンに溶解した。これらの溶液を一緒にし、アルゴン下において室温で96時間撹拌した。生成物をジエチルエーテルにより沈殿させ、メタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。
7.a)使用された試薬量:473mg(1.07mmol)の1−カルボキシメチル−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物(6−O−トリフェニルメチルキトサンにおける遊離アミノ基と比較して、0.52当量)、173mg(1.28mmol,0.62当量)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び264mg(1.28mmol,0.62当量)のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド。1.08g(87%)の生成物7aが得られた。
7.b)使用された試薬量:941mg(2.13mmol,1.03当量)の1−カルボキシメチル−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物、346mg(2.56mmol,1.23当量)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び528mg(2.56mmol,1.23当量)のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド。1.29g(93%)の生成物7bが得られた。
7.c)使用された試薬量:1.883g(4.26mmol,2.05当量)の1−カルボキシメチル−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物、691mg(5.11mmol,2.46当量)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1.054g(5.11mmol,2.46当量)のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド。1.71g(100%)の生成物7cが得られた。
【0087】
6−O−トリフェニルメチル保護基を、化合物(7a〜7c)を1M HClとともに室温で撹拌することにより3時間の反応中に除いた。反応混合物を蒸発乾固し、生成物をメタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。生成物を、室温で24時間、水に対して透析し、その後、凍結乾燥した(ThermoSavant ModulyoD−230,Savant,Holbrook,NY)。
8.a)1.08gの7aにより、460mgの8aが得られた(81%)。H−NMRによって求められた置換度は0.34であった。
8.b)1.29gの7bにより、590mgの8bが得られた(84%)。H−NMRによって求められた置換度は0.54であった。
8.c)1.71gの7cにより、640mgの8cが得られた(68%)。H−NMRによって求められた置換度は0.65であった。
IR(KBr):ν3600〜3100(O−H),3000〜2700(C−H),1682(アミドI),1563(アミドII),1481(C−N),1150〜950cm−1(C−O,ピラノース)。H NMR(343K)(DO):δ2.0(CH,N−アセチル),3.0〜3.1(H−2,アミノ基が非置換であるとき),3.4〜3.6(H−11,H−12),3.5〜3.6(H−13),3.55〜3.8(H−5),3.6〜4.0(H−6),3.6〜3.9(H−4),3.65〜3.8(H−3),3.7〜4.5(H−9,H−10),3.7〜3.8(H−2,置換),4.3〜4.4(H−8),4.6〜4.8ppm(H−1)。13C−NMR(343K)(DO):δ25.0(CH,N−アセチル),52.0(C−13),53.7(C−11),56.9(C−12),57.9及び58.1(C−9),58.4(C−10),58.9(C−2,置換),59.0(C−2,非置換),63.4(C−6),65.6(C−8),63.3,74.4(C−3),77.7(C−5),80.9(C−4),102.2(C−1,非置換),102.8(C−1,置換),166.5(C−7),177.1ppm(C=O,N−アセチル)。
【0088】
実施例4.N−(1−カルボキシメチル−2−ピリジニウム)キトサン塩化物
【0089】
【化27】

300mgのN−クロロアセチル−6−O−トリフェニルメチルキトサン(1)(N−クロロアセチル化度、0.85)を、アルゴン下、60℃で72時間、10mlのピリジンにおいて撹拌した。溶媒を蒸発し、生成物をメタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。生成物9の相対収量は176mg(51%)であった。
【0090】
6−O−トリフェニルメチル保護基を、170mgの化合物9を20mlの1M HClとともに室温で撹拌することにより3時間の反応の期間中に除いた。反応混合物を蒸発乾固し、生成物をメタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。H NMRスペクトルから計算された置換度は0.85であった。生成物(10)の収量は63mg(65%)であった。IR(KBr):ν3600〜3100(O−H),3100〜3000(C−H,ピリジル),2950〜2700(C−H),1687(アミドI),1559(アミドII),1490(C=C,ピリジル),1374(C=C,ピリジル),1150〜950(C−O,ピラノース),783(arom,ピリジル),725(arom,ピリジル),677cm−1(arom,ピリジル)。H−NMR(300K)(DO):δ2.0(CH,N−アセチル),3.5〜3.6(H−5),3.7〜4.0(H−6),3.7〜3.8(H−4),3.8〜4.0(H−3),3.85〜4.0(H−2),4.7〜4.8(H−1),5.5〜5.7(H−8),8.1〜8.2(H−10),8.65〜8.75(H−11),8.75〜8.9ppm(H−9)。13C NMR(300K)(DO):δ25.0(CH,N−アセチル),58.8(C−2),63.0(C−6),64.6(C−8),74.7(C−3),77.6(C−5),81.1(C−4),103.3(C−1),131.0(C−10),148.6(C−9),149.8(C−11),169.4ppm(C−7)。
【0091】
実施例5.N−[1−カルボキシメチル−2(1−メチルイミダゾリウム)]キトサン塩化物
【0092】
【化28】

295mgのN−クロロアセチル−6−O−トリフェニルメチルキトサン(1)(N−クロロアセチル化度、0.85)を、アルゴン下、60℃で72時間、10mlの1−メチルイミダゾールにおいて撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、生成物をメタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。生成物11の相対収量は116mg(34%)であった。
【0093】
6−O−トリフェニルメチル保護基を、105mgの化合物11を15mlの1M HClとともに室温で撹拌することによる3時間の反応の期間中に除いた。反応混合物を蒸発乾固し、生成物をメタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。H−NMRスペクトルから計算された置換度は0.85であった。生成物(12)の収量は45mg(77%)であった。IR(KBr):ν3600〜3100(O−H),3100〜3000(C−H,イミダゾール),2950〜2700(C−H),1685(アミドI),1560(アミドII),1375(C=C,イミダゾール),1150〜950。H NMR(300K)(DO):δ2.1(CH,N−アセチル),3.5〜3.6(H−5),3.6〜3.9(H−6),3.6〜3.8(H−4),3.7〜3.9(H−3),3.8〜3.9(H−2),3.9〜4.0(H−12),4.6〜4.8(H−1),5.1〜5.3(H−8),7.50(H−11),7.52(H−10),8.75〜8.85ppm(H−9)。13C NMR(300K)(DO):δ25.0(CH,N−アセチル),38.8(C−12),53.6(C−8),58.6(C−2),63.0(C−6),74.7(C−3),77.6(C−5),81.3(C−4),103.4(C−1),126.3(C−11),126.5(C−10),140.3(C−9),170.5ppm(C−7)。
【0094】
実施例6.N−(1−カルボキシブチル−4−ピリジニウム)キトサン塩化物
【0095】
【化29】

220mgのN−クロロブチリル−6−O−トリフェニルメチルキトサン(17)(N−クロロブチリル化度、0.67)を、アルゴン下、60℃で72時間、8mlのピリジンにおいて撹拌した。溶媒を蒸発し、生成物をメタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。18の相対収量は140mg(57%)であった。
6−O−トリフェニルメチル保護基を、140mgの化合物18を14mlの1M HClとともに室温で撹拌することにより3時間の反応中に除いた。反応混合物を蒸発乾固し、生成物をメタノール及びジエチルエーテルにより洗浄した。H NMRスペクトルから計算された19の置換度は0.67であった。生成物(19)の収量は44mg(56%)であった。IR(KBr):ν3600〜3100(O−H),3000〜2700(C−H),1655(アミドI),1554(アミドII),1489(C=C),1150〜950cm−1(C−O,ピラノース)。H NMR(343K)(DO):δ2.0(CH,N−アセチル),2.3〜2.4(H−9),2.4〜2.5(H−8),3.1〜3.2(H−2,アミノ基が非置換であるとき),3.4〜3.9(H−6,H−5,H−4,H−3,H−2,置換),4.5〜4.6(H−1,置換),4.6〜4.7(H−10),4.8〜4.9(H−1,非置換),8.1〜8.2(H−12),8.5〜8.6(H−13),8.8〜8.9ppm(H−11)。13C NMR(343K)(DO):δ25.1(CH,N−アセチル),29.1(C−9),34.8(C−8),58.2(C−2,置換),58.8(C−2,非置換),63.2(C−6,置換),63.4(C−6,非置換),63.7(C−10),73.5(C−3,非置換),74.9(C−3,置換),77.6(C−5,置換),78.1(C−5,非置換),80.2(C−4,非置換),82.2(C−4,置換),100.5(C−1,非置換),103.8(C−1,置換),131.3(C−12),147.0(C−13),148.8(C−11),177.3(C−7)。
【0096】
実施例7:第四級ピペラジニウム酸
【0097】
【化30】

1−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−4−メチルピペラジン(20)を、Journal of Medicinal Chemistry 43,2000,1489に記載されるように、1−メチルピペラジン及びブロモ酢酸エチルから調製した。化合物20を乾燥アセトニトリルにおいてMeIと反応させたとき、1−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物(21)が純粋な化合物として沈殿し、4−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物(22)が溶液中に留まっていた。6.96g(37.37mmol)の1−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−4−メチルピペラジン(20)及び9.3ml(149mmol,4当量)のMeIを270mlのACNにおいて48時間反応させた。沈殿物をろ過し、アセトニトリルにより洗浄した。沈殿物は2.354g(13%)の1−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物(21)をもたらした。ろ液を蒸発乾固し、4−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物(22)の収量は9.998g(82%)であった。この反応を、7.8g(41.9mmol)の1−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−4−メチルピペラジン(20)及び26.1mL(420mmol、10当量)のMeIを用いて繰り返した。反応を300mlのACNにおいて240時間進めた。沈殿物をろ過し、アセトニトリルにより洗浄した。沈殿物は11.124g(57%)の1−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物(21)をもたらした。ろ液を蒸発乾固し、4−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物(22)の収量は5.82g(42.2%)であった。
【0098】
1−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物(21):H−NMR(300K)(DO):δ1.33(2H,t,J=14Hz),3.44(3H,s),3.47(3H,s),3.59(3H,s),3.9〜4.3(8H,bm),4.37(2H,q,J=14Hz),4.67(2H,d)
13C−NMR(343K)(DO):δ16.03,51.89,53.60,57.01,57.75(2C),58.27(2C),58.49,67.08,167.03
4−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物(22):H NMR(300K)(DO):δ1.28(2H,t,J=14Hz),3.01(4H,s),3.21(6H,s),3.49(4H,s),3.51(2H,s),4.24(2H,q,J=14Hz)
13C NMR(343K)(DO):δ16.18,48.58(2C),54.50(2C),60.04(2C),64.25,64.98,174.44
エチルエステル基を、化合物21及び化合物22を水に還流することによって開裂した。
【0099】
1−カルボキシメチル−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物(23)。8.5gの1−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,4,4−トリメチルピペラジ−1,4−ジウム二ヨウ化物(21)を700mlの水において96時間還流した。反応混合物を蒸発乾固し、この手順を繰り返した。生成物をアセトンにより洗浄し、水からエタノールにより結晶化させた。白色の粉末を4.98g(62%)得た。H NMR(300K)(DO):δ3.41(3H,s),3.43(3H,s),3.49(3H,s),3.9〜4.1(6H,bm),4.35(2H,s),4.4〜4.5(2H,bm)
13C NMR(343K)(DO):δ51.79,53.45,56.85(3C),58.44(2C),66.58,169.53
4−カルボキシメチル−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物(24)。11.77gの4−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−1,1−ジメチルピペラジニウムヨウ化物(22)を600mlの水において48時間還流した。反応混合物を蒸発乾固し、生成物をエタノールからジエチルエーテルにより結晶化させた。白色の粉末5.484g(51%)を得た。H NMR(300K)(DO):δ3.30(6H,s),3.51(4H,s),3.69(2H,s),3.73(4H,bm)
13C NMR(343K)(DO):δ48.86(2C),54.84(2C),60.47,62.74(2C),173.72

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式を有する第四級ポリマー、
【化1】

式中、
TはNHまたはOであり、
,X及びXは独立して、
H、または、
【化2】

であり、
TがNHである場合(すなわち、キチン及びキトサンの場合)、X,X及びXは、
【化3】

であることも可能であり、さらに、Xは、
【化4】

であることも可能であり、
式中、R及びRは独立して、H、または、1個〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状の置換アルキル鎖または非置換アルキル鎖であり、mは1〜12の整数であり、
Yは、下記の式を有するピペラジン成分から選択される第四級アンモニウム成分、
【化5】

もしくは、下記の基から選択される第四級アンモニウム成分であり、
【化6】

式中、R及びRは独立して、1個〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状の置換アルキル鎖または非置換アルキル鎖であり、
は、負電荷の対イオン、好ましくは、Cl,Br,I,OH,RCOO,RSOからなる群から選択される負電荷の対イオンであって、式中のRが、H、または、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基、または、芳香族成分であり、
基X,X及びXの合計についての第四級置換基の置換度(ds)は少なくとも0.01であり、
nは重合度であって、2〜100000の整数が可能であり、
但し、TがOである場合には、Yは、定義された式(A),(B),(C)または(E)の基の意味のみを有することが可能である。
【請求項2】
TがNHであり、X,X及びXが請求項1において定義された通りであり、Yが、式(A),(B)または(C)を有する基のいずれかであり、前記第四級基の置換度が0.01〜1、好ましくは0.05〜1である請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
TがNHであり、X及びXが水素であり、Xが、水素、アセチル基、または、請求項1において定義された第四級アンモニウム成分を含有する基、特に、式(A)〜(E)を有する基のいずれかであって、とりわけ、式(A),(B)または(C)であり、前記第四級基の置換度が0.01〜1の範囲、好ましくは0.05〜1の範囲である請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
TがOであり、X,X及びXが、水素、または、請求項1において定義された第四級アンモニウム成分を含有する基であり、Yが、式(A),(B),(C)または(E)を有する基のいずれかであり、前記第四級基の置換度が0.01〜1、好ましくは0.05〜1である請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
請求項1に記載の式(I)を有する第四級ポリマーの製造方法であって、
I)TがNHである化合物を製造するために、
a)遊離のアミノ基またはヒドロキシル基を有し、かつ、残りの反応基が場合によって保護された形態であるキチン誘導体またはキトサン誘導体を、下記のV’を有する化合物、
【化7】

式中、Aは活性基であり、Y’は好適な脱離基または第四級アンモニウム基Yであり、R,R,m及びYは請求項1において定義された通りである、
または、下記の式IIIを有する化合物、
【化8】

式中、Lは脱離基であり、Y’は第四級アンモニウム基Yまたは好適な脱離基のいずれかであり、R,R,m及びYは上記で定義された通りであり、それにより、Lは、脱離基Y’と比較して同じくらい良好な脱離基、または、より良好な脱離基、または、より反応性の高い脱離基である、
と反応させ、
脱離基Y’を含有する中間化合物が得られる時に、その中間体をさらに第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させて、所望の第四級ポリマーを得、その後、すべての保護基を除去する、
または、
b)第四級アンモニウム基を含有する基Xにより置換されたアミノ基を有し、X及びXが水素であるキチン誘導体またはキトサン誘導体を製造するために、3位及び/または6位におけるヒドロキシル基が場合により保護され、かつ、ポリマーのモノマーユニットの1つまたは複数におけるアミノ基が、基Xに対応するアルキル基またはアルキルオキシ基を有し、基Yが好適な脱離基によって置換されるキチンポリマーまたはキトサンポリマーを、第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させ、すべての保護基を除去する、
または、
c)第四級アンモニウム基を含有する基Xにより置換されたアミノ基を有するキチン誘導体またはキトサン誘導体を製造するために、遊離アミノ基を有し、3位及び/または6位におけるヒドロキシル基が場合により保護されるキチンポリマーまたはキトサンポリマーを、上記で定義された式IIIまたは式V’を有する化合物と反応させ、式IIIまたは式V’におけるY’が脱離基である場合には、そのように得られた中間化合物を、第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させ、すべての保護基を除去する、
それにより、X,X及び/またはXが水素の意味を有する得られた化合物を、前記化合物を上記で定義された式IIIまたは式V’の化合物と反応させ、脱離基Y’を有する得られた中間体を、第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させ、反応において場合により使用されたすべての保護基を除去することによって、前記X,X及び/またはXが水素と異なる化合物に変換することができる、
あるいは、
II.TがOである化合物を製造するために、
少なくとも1つの保護されていないヒドロキシル基を有する炭水化物ポリマーを、下記の式を有する反応性のカルボキシル誘導体、
【化9】

式中、Aは活性基であり、Y’は好適な脱離基またはYであり、R,R,m及びYは請求項1において定義された通りである、
をエステル化し、
化合物が、脱離基Y’を含有する中間体として得られる時には、その中間体をさらに基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させて、所望の第四級ポリマーを得、すべての保護基を得られた化合物から除去する、
また、必要に応じて、X,X及び/またはXが水素である得られた化合物を、式V’の化合物と反応させ、脱離基を含有する化合物が中間体として得られる場合には、その中間体を第四級アンモニウム基Yに対応する第三級アミンまたは芳香族アミンと反応させ、反応において場合により使用されたすべての保護基を除去することによって、X,X及び/またはXが水素と異なる化合物に変換する、
方法。
【請求項6】
下記の式のモノ第四級ピペラジニウム酸及びジ第四級ピペラジニウム酸、
【化10】

式中、R,R,R,R,m及びZが、請求項1において定義された通りである。
【請求項7】
請求項6に記載のモノ第四級ピペラジニウム酸及びジ第四級ピペラジニウム酸の製造方法であって、
下記の式を有する化合物、
【化11】

式中、R,R,R及びmは、上記で示された意味を有し、Eは水素であるか、または、カルボキシル成分を保護するための任意の一般に使用される基、好ましくは、エチルである、
を、好適なハロゲン化アルキル、フルオロスルホン酸アルキル、硫酸ジアルキル、アルキルトシラートまたはアルキルメシラート等、基Rに対応する四級化化合物と反応させて、下記の式を有する化合物の混合物、
【化12】

式中、R,R,R,R,m,Z及びEは、上記で示された意味を有する、
を形成させ、その後、これらの化合物を分離し、必要ならば、そのように分離された化合物をその対応する酸に変換し、場合により、その酸を塩に変換する、
方法。
【請求項8】
前記2つの化合物の分離が、前記2つの化合物の一方を、他方の化合物が溶液中に残ったままとなる溶媒の好適な選択によって沈殿させることにより行われる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ジ四級化化合物VIIIa’が沈殿させられ、モノ四級化化合物VIIIb’が溶液中に残ったままとなる請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒がアセトニトリルである請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2009−509021(P2009−509021A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531727(P2008−531727)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050373
【国際公開番号】WO2007/034032
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508085730)フェンノファーマ・オイ (1)
【Fターム(参考)】