説明

新規な耐候性ポリウレタン鋳造化合物、それらを調製するための方法、及びそれらの使用

【課題】不利な点を有さず、環境に対して悪影響を及ぼさない、より耐候性の、理想的にはさらにより耐光性のポリウレタン鋳造化合物を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、−10から80部の少なくとも1種のジイソシアネート又はポリイソシアネートとを、−少なくとも1種のジアミン又は少なくとも1種の単官能ポリエーテルポリオール中に溶解させた、−0.05から5部の、鉄(III)アセチルアセトネート(Fe(III)Acac)の0.5から10%溶液の存在下に、水及び/又は少なくとも1種の連鎖延長剤の存在下又は不在下で、反応させることによって得ることが可能であるポリウレタン鋳造化合物、それらを調製するための方法、及び建設分野におけるそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な耐候性ポリウレタン鋳造化合物(casting compounds)、それらを調製するための方法、及び建設分野におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
「ポリウレタン鋳造化合物」という用語には、ポリウレタンフォーム及びコンパクトポリウレタン(compact polyurethane)物品すなわち非発泡物品が包含される。
【0003】
PU鋳造化合物は、広く使用されており、特に集成用(assembly)フォームとして、又は断熱のために、建設産業において使用されるポリウレタンフォームのために使用されている。
【0004】
しかしながら、PU鋳造化合物が風化作用に暴露されるような場合には、特別な触媒が必要となる。さらに、環境に対して有害な物質が、土壌の中に浸出するようなことがあってはならない。触媒の有害な成分又は触媒から派生する生成物は、しっかりと結合されていなくてはならない、すなわちそれらが水と共に溶出することがあってはならず、又は少なくとも無害な成分しか溶出しないようにすべきである。また、触媒がその風化作用を加速するようなこともあってはならない。
【0005】
リシノール酸Sn(II)は、たとえば自動車分野(軟質フォーム分野)において広範に使用されていることが知られており、今日まで使用されてきた。しかしながら、それを用いて得られるフォームは、風化作用の影響を受けると、著しく分解する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の不利な点を有さず、環境に対して悪影響を及ぼさない、より耐候性の、理想的にはさらにより耐光性のポリウレタン鋳造化合物を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことには、本願発明者らは、少なくとも1種のジアミン又は少なくとも1種の単官能ポリエーテルポリオールの中に溶解させた触媒としての鉄(III)アセチルアセトネートを使用して、対応するPU鋳造化合物に、より高い耐候性及び耐光性を付与することにより、この目的が達成されることを見出した。Fe(III)アセチルアセトネートは、2002/72/ECの通達において、EUによって食品が接触することを目的として材料及び物品として承認されたものであり、したがって、環境適合性の判定基準もまた満たしている。
【0008】
したがって、本発明は、
− 100部の少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
− 10から80部の少なくとも1種のジイソシアネート又はポリイソシアネートとを、
− 少なくとも1種のジアミン又は少なくとも1種の単官能ポリエーテルポリオール中に溶解させた、
− 0.05から5部の、鉄(III)アセチルアセトネート(Fe(III)Acac)の0.5から10%溶液の存在下に、
水及び/又は少なくとも1種の連鎖延長剤の存在下又は不在下で、反応させることによって得ることが可能なポリウレタン鋳造化合物を提供する。
【0009】
本発明の目的のために使用可能なポリエーテルポリオールは、20から85の範囲のOH価及び2000から10000の範囲の分子量を有する、二官能、三官能、又は多官能ポリエーテルポリオールである。
【0010】
本発明の目的のために使用可能なポリエーテルポリオールは、平均ヒドロキシル官能価が2(二官能)から3(三官能)であり、分子量範囲が2000から10000、好ましくは3000から6000の少なくとも1種のポリヒドロキシポリエーテルからなっているのが好ましい。これらの分子量に関する特質は、OH官能価及びOH含量から計算することが可能な分子量を基準にしている。
【0011】
適切なポリヒドロキシポリエーテルは、好ましくは二官能若しくは三官能のスターター分子又はそのようなスターター分子の混合物をアルコキシル化させるポリウレタン化学から自体公知の反応生成物である。適切なスターター分子は、たとえば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、又はグリセロールである。アルコキシル化のために使用されるアルキレンオキシドは、具体的にはプロピレンオキシド及びエチレンオキシドであり、これらのアルキレンオキシドは、当業者には熟知の反応条件下で、各種の順序で反応させるか、及び/又は混合物として反応させることができるが、これについてはたとえば、欧州特許第A0652 250号明細書を参照されたい。
【0012】
同様にして、Huntsman International LLC製のJeffamin(登録商標)タイプのNH−末端ポリエーテルポリオールもまた使用可能である。
【0013】
本発明の領域においては、以下のポリエーテルポリオールが好ましい:
− 20から50の間のOH価を有する二官能ポリエーテルポリオール、及びさらには三官能ポリエーテルポリオール、又はそれらの混合物、たとえば:
プロピレングリコールをプロポキシル化させ、それに続けてそのプロポキシル化反応生成物をエトキシル化させることによって得られる、分子量4000のポリエーテルジオール(PO/EO重量比=70:30)、
トリメチロールプロパンをプロポキシル化させ、それに続けてそのプロポキシル化反応生成物をエトキシル化させることによって得られる、分子量6200のポリエーテルトリオール(PO/EO重量比=80:20)、
トリメチロールプロパンをプロポキシル化させ、それに続けてそのプロポキシル化反応生成物をエトキシル化させることによって得られる、分子量4800のポリエーテルトリオール(PO/EO重量比=85:15)、及びさらに
トリメチロールプロパンをプロポキシル化させ、それに続けてそのプロポキシル化反応生成物をエトキシル化させて得られた分子量6000のポリエーテルトリオール(PO/EO重量比=85:15)に、全重量を基準にて20重量%のスチレン/アクリロニトリル(重量比=40:60)をグラフトさせたもの。
【0014】
市販されているポリオール、たとえば、Bayer MaterialScinece AGから、Arcol(登録商標)、Desmophen(登録商標)、Hyperlite(登録商標)、Baygal(登録商標)、又はUltracel(登録商標)の商品名で入手可能なポリオールもまた、使用可能である。
【0015】
公知のすべての脂肪族、さらには芳香族イソシアネートが、本発明の目的のためのジイソシアネート又はポリイソシアネートとして使用可能である。
【0016】
好ましいそれらの芳香族イソシアネートの代表としては:
トリレンジイソシアネート(TDI)、
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び/又は
ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI)が挙げられ、そして
脂肪族イソシアネートとしては:
4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)及びさらにはその誘導体、及び/又は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)をベースとするイソシアネート類たとえば、三量体化物、HMDIウレトジオン、アロファネート、イソシアヌレート、ビウレットなど(それらにおいては、HMDIの比率が好ましくは<0.15重量%(モノマーフリー)である)、並びに/又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとするイソシアネート類たとえば、三量体化物、アロファネート、IPDIウレトジオンなど(それらにおいてはIPDIの比率が好ましくは<0.15重量%(モノマーフリー)である)。
【0017】
これに関連して市販されている製品としては、たとえばBayer MaterialScinece AG製の商品名Desmodur(登録商標)及びBaymidur(登録商標)、BASF AG製の商品名Basonat(登録商標)、並びにEvonik AG製の商品名Vestanat(登録商標)などが挙げられる。
【0018】
本発明の目的のためのジイソシアネート又はポリイソシアネートとして使用される化合物は、好ましくは20℃で液状であり、10重量%から33.6重量%、好ましくは20重量%から30重量%のNCO含量を有している。
【0019】
それらにはさらに、少なくとも1種の、場合によっては化学的に変性された、ジフェニルメタン系列のポリイソシアネート又はポリイソシアネート混合物が含まれていてもよい。これは、より具体的には、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、それと2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンとの工業グレード混合物(2,2’−ジイソシアナトジフェニルメタンは、存在していても、存在していなくてもよい)、それらのジイソシアネートとそれらのより高級な同族体との混合物、たとえばアニリン−ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化において生成するか、及び/又はそのようなホスゲン化生成物に蒸留的後処理をして得られるようなもの、を意味していると理解されたい。上述のようなこれらのポリイソシアネートの化学的変性には、より詳しくは、よく知られているウレタン変性方法が含まれており、たとえば、存在しているNCO基の30当量パーセントまでを最大分子量が700のポリプロピレングリコールと反応させる方法や、存在しているNCO基の30当量パーセントまでを慣用されるカルボジイミド化反応させる方法などが含まれる。
【0020】
好ましいポリイソシアネートとしては、さらに以下のようなものが挙げられる:たとえば、23%のNCO含量を有する、トリプロピレングリコールで液化させた4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート;(i)56重量部の4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(4,4’−MDI)及び1重量部の変性4,4’−MDI(NCO基を同時カルボジイミド化させることによって得られた30%のNCO含量を有するもの)と(ii)21重量部のOH価56のポリプロピレングリコール及び6.7重量部のトリプロピレングリコールの混合物との反応によって得られた20.2%のNCO含量を有するNCOプレポリマー;
(i)24.5%のNCO含量及び500mPa・sの粘度(25℃)を有するポリイソシアネート(アニリン−ホルムアルデヒド縮合物をホスゲン化してから、そのホスゲン化反応生成物をOH価515のポリプロピレングリコールと反応させることによって得られたもの)と、(ii)31.5%のNCO含量を有し、ジイソシアナトジフェニルメタン異性体(94%が4,4−、5%が2,4−、そして1%が2,2’−異性体)を60%、多核同族体を40%で含むジフェニルメタン系列のポリイソシアネート混合物と、の等重量混合物からなる、28%のNCO含量及び130mPasの粘度(25℃)を有するポリイソシアネート混合物。
【0021】
本発明において使用される鉄(III)アセチルアセトネートには、たとえばSigma−Aldrichから市販されている物質が含まれる。鉄(III)アセチルアセトネートは、ジアミン又は単官能ポリオール中の0.05から10%溶液として使用するのが好ましい。
【0022】
本発明の目的のためのジアミンには、次式の化合物が含まれる:
NHR−R’−NHR’’
式中、R及びR’’=メチル、エチル、プロピルであるが;RとR’’とは同じであっても、異なっていてもよく;そしてR’=C〜C18−アルキレン−、C−アリーレン〜C12−アリーレン、又はC〜C13− アルキルアリーレンである。
【0023】
ここでは、N,N’−ビス(secブチルアミノ)ジフェニルメタンが特に好ましい。
【0024】
N,N’−ビス(secブチルアミノ)ジフェニルメタンもまた市販されている物質であって、たとえばAlbemarle Corp.から、Ethacure(登録商標)420として得ることができる。
【0025】
本発明の目的のための単官能ポリオールには、好ましくは、エチレンオキシドをベースとする単官能ポリオールたとえば、ポリエチレングリコールモノ−C〜C18−アルキルエーテル、たとえばモノメチルエーテル若しくはモノエチルエーテル(Clariant International Ltd.から入手可能)、又はポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノ−C〜C18−アルキルエーテルなどが含まれる。
【0026】
本発明のさらなる同様の好ましい実施態様においては、そのポリウレタン鋳造化合物にはさらに、助剤及び添加剤、たとえば安定剤又は各種のハロゲン非含有の発泡剤たとえば水(これは、場合によっては、ポリエーテルポリオールの重量を基準にして0重量%から5重量%までの量で使用される)が含まれる。
【0027】
本発明の目的のために使用される連鎖延長剤(架橋剤)は、好ましくは二官能であり、62から1999の範囲、好ましくは62から400の範囲の分子量を有している。規定された化合物の場合以外においては、分子量に関するこの表現は、この場合も同様に、OH官能価とOH含量とから計算した値を指している。
【0028】
好適な連鎖延長剤には、分子量200未満の単純な二価アルコールたとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、又はそのような単純なジオールの混合物が含まれる。同様に好適な連鎖延長剤としては、分子量に関する先の記述に適合し、先に例として挙げたタイプの二官能スターター分子をプロポキシル化及び/又はエトキシル化することによって得ることができる、エーテル基含有ジオールも挙げられる。
【0029】
同様の好適な連鎖延長剤(架橋剤)としては、立体障害アミノ基を有する芳香族アミン、特に1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン及びその1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン(DETDA)との工業グレード混合物、並びに、3,5−ジメチルチオ−2,6−トリルジアミン及び3,5−ジメチルチオ−2,4−トリルジアミン及びそれらの混合物も挙げられる。例として挙げた連鎖延長剤の各種の混合物も、同様にして使用することができる。本発明による方法においては、連鎖延長剤は、ポリエーテルポリオールの重量を基準にして0重量%から重量15%、好ましくは4重量%から12重量%の量で使用される。
【0030】
出発成分、すなわちポリエーテルポリオール、存在させる水、及び存在させる架橋剤は、80から120、好ましくは100から105のイソシアネート価に対応するような量で使用するのが好ましい。
【0031】
さらなる添加剤、たとえば物理的発泡剤及び/又はフォーム安定剤を使用するのも同様に好ましい。一般的なPU発泡剤はいずれも物理的発泡剤として使用することが可能であり、そのような例としては、たとえば、Ineos Europe Ltd.製のHFC245−fa及びHFC−365mfcが挙げられる。これらの場合においては、ポリオールを基準にして0.5重量%から15重量%の量が好ましい。同様にして、フォーム安定剤として、オルガノシリコーンたとえば、Evonik AGから入手可能なTegostab B8719を使用することも可能である。これらのフォーム安定剤は、ポリオールを基準にして0.3重量%から2重量%の量で使用することができる。
【0032】
さらに、助剤たとえば充填剤、好ましくはチョーク、石英粉、及び/又は難燃剤たとえばメラミン若しくは有機リン酸エステルを使用することもできる。関連の製品が市販されている。
【0033】
助剤として、充填剤は0から60重量%の量で、そして難燃剤は0から30重量%の量で、使用することができる。
【0034】
PU鋳造化合物は、その出発物質を以下の量比で反応させることにより調製するのが好ましい:
100部のポリエーテルポリオール、
10から80部のジイソシアネート又はポリイソシアネート、
0.05から5部の、少なくとも1種のジアミン又は少なくとも1種の単官能ポリオール中に溶解させた、鉄(III)アセチルアセトネートの0.5から10%溶液、
及びさらには、0から5部の水、及び/又は0から15部の連鎖延長剤(ここで、0.5から5部の水、及び/又は0から15部の連鎖延長剤は、PUフォームの場合に使用し、0部の水、及び0.5から15部の連鎖延長剤は、コンパクトポリウレタンの場合に使用する)。
【0035】
コンパクトポリウレタンでは、助剤として、0から60重量%の充填剤、及び/又は0から30重量%の難燃剤を使用してもよい。コンパクトポリウレタンにおいては水吸収性化合物を使用することも可能であり、たとえば物理的吸収のためにはZeolithe(Grace)を、又は化学的な吸収のためにはp−トルエン−スルホニルイソシアネート(OHG Borches GmbH)若しくはオルトフォーミエート(orthoformiate)(OHG Borchers GmbH)が挙げられる。
【0036】
ポリウレタンフォームでは、助剤として、0.3重量%から2重量%のフォーム安定剤、0.5重量%から15重量%の物理的発泡剤(添加剤)、0から60重量%の充填剤、及び/又は0から30重量%の難燃剤を使用してもよい。
【0037】
本発明のポリウレタン鋳造化合物を形成させるための反応は、好ましくは水及び/又は連鎖延長剤の存在下に、好ましくは以下の添加順序で実施するのが好ましい。
【0038】
ポリエーテルポリオールを最初に仕込む。少なくとも1種のジアミン又は少なくとも1種の単官能ポリオールの中に溶解させたFe(III)Acacを、その最初に仕込んで予熱しておいたポリエーテルポリオールの中に撹拌しながら加え、次いで、(必要であれば)水及び/又は連鎖延長剤を添加してから、ジイソシアネート又はポリイソシアネートを添加する。
【0039】
この場合、従来から使用されている測定及び計量装置を使用する。出発物質を撹拌しながら添加することも、同様に好ましい。
【0040】
さらなる添加剤及び/又は助剤を存在させる場合には、それらを添加した後にジイソシアネート又はポリイソシアネートを添加するのが好ましい。
【0041】
反応成分(ポリイソシアネート成分及びポリオール成分)の温度は一般的には、20から50℃の範囲内の温度である。
【0042】
したがって、本発明はさらに、本発明のポリウレタン鋳造化合物を調製するための方法も提供するが、ここで、好ましくは温度50℃に加熱された、最初に仕込みをされたポリエーテルポリオールに、少なくとも1種のジアミン又は少なくとも1種の単官能ポリオールの中に溶解されたFe(III)Acacを撹拌しながら混ぜ込み、水及び/又は連鎖延長剤を計量添加してから、ジイソシアネート又はポリイソシアネートを添加する。
【0043】
この場合、従来から使用されている測定及び計量装置を使用する。出発物質を撹拌しながら添加することも、同様に好ましい。
【0044】
本発明のポリウレタン鋳造化合物をフォームの形態で調製する場合には、最初に仕込みをされたポリエーテルポリオールに、少なくとも1種のジアミン又は少なくとも1種の単官能ポリオールの中に溶解されたFe(III)Acacを撹拌しながら混ぜ込み、水及び/又は連鎖延長剤を計量添加してから、ジイソシアネート又はポリイソシアネートを添加する。
【0045】
本発明のポリウレタン鋳造化合物をコンパクトポリウレタン化合物の形態で調製する場合には、最初に仕込みをされたポリエーテルポリオールに、少なくとも1種のジアミン又は少なくとも1種の単官能ポリオールの中に溶解されたFe(III)Acacを撹拌しながら混ぜ込み、連鎖延長剤を計量添加してから、ジイソシアネート又はポリイソシアネートを添加する。
【0046】
上述のいずれの方法においても、上述の添加剤及び助剤、すなわちコンパクトポリウレタンの場合においては、0から60重量%の充填剤及び/又は0から30重量%の難燃剤、そしてポリウレタンフォームの場合においては、0.3重量%から2重量%のフォーム安定剤、0.5%から15重量%の物理的発泡剤(添加剤)、0から60重量%の充填剤及び/又は0から30重量%の難燃剤を、助剤として反応の途中に添加することもできる。これは、ジイソシアネート又はポリイソシアネートを添加するよりも前に実施するのが好ましい。
【0047】
反応成分(ポリイソシアネート成分及びポリオール成分)の温度は一般的には、20から50℃の範囲内の温度である。40から50℃の温度が特に好ましい。
【0048】
本発明はさらに、ポリウレタン鋳造化合物、さらに詳しくはフォームの形態のものの、建設分野、より詳しくは道路建設分野、特に好ましくは軌道建設(track building)分野及び鉄道路床(rail bed)用途における使用を提供する。
【0049】
本発明によるポリウレタン鋳造化合物は、使用すると、耐候性の向上に加えて、屋外及び窓ガラス越し(behind window glass)でも、向上した耐光性を示す。その結果、それらは、屋外と窓ガラス越しとの両方で使用することができる。
【0050】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明にいかなる制限も加えるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例:
表1に列挙した出発物質を使用して、4種類のPU鋳造化合物を調製した。
【0052】
ポリオールAは、二官能ポリエーテルポリオールと三官能ポリエーテルポリオールとから形成される、20から50の間のOH価を有する、1:1混合物であり、さらに7重量%の1,4−ブタンジオールを含むものであった。
【0053】
【表1】

【0054】
以下の略号を用いた:
PEG M500=ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、MW=500、Clariant International Ltd製。
Ethacure(登録商標)420=N,N’−ビス(secブチルアミノ)ジフェニルメタン、Albemarle Corp製。
Kosmos(登録商標)EF=リシノール酸スズ(II)(純品)、Evonik Goldschmidt GmbH製。
Fe(III)Acac=鉄(III)アセチルアセトネート、Chemikalienhandel製。
Desmodur(登録商標)PF=変性純4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、約23%NCO。
VV=比較例、E=本発明の実施例
【0055】
4種類のPU鋳造化合物を、以下のようにして調製した:
最初にポリオールAを撹拌ビーカーの中に仕込み、加熱して50℃とした。次いで、サンプル番号に応じて、Kosmos(登録商標)EFと、PEG M500(3%Fe(III)Acac含有)又はEthacure(登録商標)420(6%Fe(III)Acac含有)とを、撹拌しながら添加してから、水を計量添加した。次いで、それらの混合物を約30秒間撹拌した。その後で、40℃に加熱したDesmodur(登録商標)PFを添加し、次いで約5秒間撹拌する。フロスが立ち上がる(frothing up to start)にはさらに5から10秒間かかる。約1分後には、フォームが最大高さに達した。そのフォームを完全に硬化させるために、サンプルを乾燥キャビネット中で80℃で約1時間保存し、老化試験(後述)のために、高さ:約80mm、幅:約60mm、厚み:約7mmの寸法になるようスライスした。
【0056】
建設用のPU材料を、自動車用途に典型的な下記の耐候老化試験にかけた(表2参照)。
【0057】
該試験において、スライス物の約半分をアルミニウムホイルで覆った。
【0058】
【表2】

【0059】
355時間の試験時間の後では、4種類の試験片のすべてが変色して、表面が粗くなっていたが、何かが剥がれるようなことにはまだなっていなかった。
【0060】
その粗くなった領域は、容易に掻き落とすことができた。掻き落とされた粗くなったフォームの量を、秤量し、関連する面積で割り算をした。
【0061】
【表3】

【0062】
風化作用(weathering)によるFe(III)Acacの場合の損失量は、リシノール酸スズの場合の損失のわずか約15%にしかならない。
【0063】
触媒効果は良好であった。このようにして調製されたフォームの風化作用試験は、驚くべきことには、スズ触媒を用いて調製された比較例フォームよりも、顕著に良好な結果を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン鋳造化合物であって、
− 100部の少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
− 10から80部の少なくとも1種のジイソシアネート又はポリイソシアネートとを、
− 式NHR−R’−NHR’’の少なくとも1種のジアミン(式中、R及びR’’=メチル、エチル、プロピルであるが;RとR’’とは同じであっても、異なっていてもよく;そしてR’=C〜C18−アルキレン−、C−アリーレン〜C12−アリーレン、又はC〜C13−アルキルアリーレンである)、又は少なくとも1種の単官能ポリエーテルポリオール
−に溶解させた、0.05から5部の鉄(III)アセチルアセトネートの0.5から10%溶液の存在下に、
水及び/又は少なくとも1種の連鎖延長剤の存在下又は不在下で、反応させることによって得られる、ポリウレタン鋳造化合物。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールが、20から85の範囲のOH価及び2000から10000の範囲の分子量を有する、二官能、三官能、又は多官能ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン鋳造化合物。
【請求項3】
ジイソシアネート又はポリイソシアネートが、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び/若しくはポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI)を含むか、並びに/又は
脂肪族イソシアネートが、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)及び/又はヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)若しくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする少なくとも1種のイソシアネートを含む
ことを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載のポリウレタン鋳造化合物。
【請求項4】
ジアミンとして、N,N’−ビス(secブチルアミノ)ジフェニルメタンが使用されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリウレタン鋳造化合物。
【請求項5】
単官能ポリオールが、ポリエチレングリコールモノ−C〜C18−アルキルエーテル、及び/又はポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノ−C〜C18−アルキルエーテルを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリウレタン鋳造化合物。
【請求項6】
少なくとも1種の物理的発泡剤及び/又はフォーム安定剤及び/又はさらなる助剤及び/又は添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリウレタン鋳造化合物。
【請求項7】
ポリエーテルポリオールを最初に仕込み、少なくとも1種のジアミン中又は少なくとも1種の単官能ポリオール中に溶解させた少なくとも1種の鉄(III)アセチルアセトネートを撹拌しながらそれに添加し、そして水及び/又は少なくとも1種の連鎖延長剤を計量添加した後に、前記ジイソシアネート又はポリイソシアネートを添加することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリウレタン鋳造化合物を調製するための方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリウレタン鋳造化合物の、建設分野における使用。

【公開番号】特開2011−190444(P2011−190444A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−54006(P2011−54006)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(509286422)ライン・ケミー・ライノー・ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】