説明

新規分離マトリックスの製造方法

【課題】吸着及び/又は脱着時の物質移動特性が改良された分離マトリックスを提供する。
【解決手段】多孔質担体の表面にリガンドが結合した分離マトリックスの製造方法に関するものであり、リガンドが担体中で1種以上のリガンド密度勾配をもたらし、リガンド密度勾配が各多孔質粒子の中心と外表面の間に存在しており、当該方法では、多孔質担体中への1種以上の試薬の溶媒制御拡散によって1種以上のリガンド密度勾配を得る。溶媒制御拡散は、上記試薬を含む第一の溶媒を、第一の溶媒とは異なる溶解性を呈する第二の溶媒がその細孔内に存在する担体と接触させることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体からタンパク質のような目標分子を単離するための新規分離マトリックスに関する。本発明は、そのようなマトリックス、並びにそのような分離マトリックスを充填したクロマトグラフィーカラムの製造方法も包含する。
【背景技術】
【0002】
生物工学的方法は、研究並びに新薬の製造を目的とした、タンパク質、ペプチド、核酸その他の生体化合物の生産に一段と広範に用いられている。これに関して、クロマトグラフィーはその汎用性及び化合物に対する感度の点で、好ましい精製法であることが多い。クロマトグラフィーという用語は、密接に関連した一群の分離法を包含するもので、いずれも互いに非混和性の2つの相を接触させるという原理に基づく。具体的には、目標化合物を移動相に導入し、これを固定相と接触させる。目標化合物は移動相によって系内を運搬される際に固定相と移動相の間で一連の相互作用を受ける。相互作用には、試料中の各種成分の物理的又は化学的性質の差が利用される。
【0003】
液体クロマトグラフィーでは、目標化合物は液体中で1種以上の夾雑物又は不要物質と共に存在している。液体をマトリックスとして知られる固定相に接触させるが、マトリックスは一般に均質な多孔質若しくは非多孔質粒子の集合体又は有機若しくは無機系モノリスのいずれかからなる。分離マトリックスの特性は、クロマトグラフィーのような分離プロセスに使用したときの効率を大きく左右する。通常、分離マトリックスは、目標物質と相互作用し得る基(リガンドとして知られる。)を担体に結合したものからなる。したがって、リガンドは、問題とする分子の分離、同定及び/又は精製を遂行できる能力を担体に与える。従来技術では、担体のリガンド密度を制御する技術が多数提案されているが、これらの技術は概して以下の4つに分類される。
【0004】
a)マトリックスを活性化(即ちリガンドを結合できる反応性基の導入)する反応条件の操作。この操作には、活性化試薬の濃度、反応時間、反応温度、pH又はこれらの変数の組合せの変更が必要とされることが多い。そのため、反応効率(即ち競合副反応と対向する所望の反応の程度)は、反応条件による強い影響を受ける。
【0005】
b)リガンドの担体への実際の結合反応時の反応条件の操作。この操作には、担体に付すリガンドの濃度及び/又は総量、結合用緩衝液のイオン強度、結合用緩衝液中の塩の種類、並びに、上述の時間、温度、pHなどの変数を変更することが必要となり得る。上述の技術と同様、反応条件の影響が強いため、この方法も実際に再現性をもって応用するのが困難となる場合がある。
【0006】
c)担体に導入される反応性基又は活性化性基の形成の差異に組成の変更による反応生起又は活性化性基の量の操作。ポリマー担体では、この操作には、重合中のモノマーの性状及び/又は量の変更が必要となり得る。当然、リガンドを結合する第二段階では、後段で上述のa及び/又はbの技術を適用すべきである。
【0007】
d)ポリマーリガンドに関して、重合性リガンドモノマーの製造及び重合時におけるモノマー原料中のモノマー濃度の変更によるポリマーへのリガンド導入量の操作。この技術の短所は、クロマトグラフィー分離に有用なリガンドの多くが、想定される重合条件下で不安定であるか或いは重合反応を妨害することなどによって、所望ポリマーの形成に必要な条件に不向きな官能基を有していることである。
【0008】
担体のリガンド密度の異なる制御法が、米国特許第5561097号(Gleason他)に提案されている。この米国特許は、ポリマー担体のリガンド密度を最適化する方法に関するもので、この方法は実用的で再現性よく得られると記載されている。これは、リガンド及び奪活剤分子をアズラクトン官能化担体の活性化部位と、該活性化部位に対する奪活剤とリガンドとの競合を促進する条件下で、反応させる段階を含む方法によって達成できる。記載された利点の一つは、この方法が単階法であり、担体の反応部位を活性化又は不活性化するための別の段階を必要としないことである。この米国特許に開示された方法は、小分子の結合に特に好適であると記載されている。この方法の短所は、リガンドを奪活剤に比してリガンドを優勢にしないために、結合の反応速度定数、リガンドの濃度、リガンド及び奪活剤の求核性などを始めとした、リガンドの反応速度論及び奪活剤の反応速度論についての理解が必要とされることである。
【0009】
さらに、タンパク質のような目標分子の生物工学的生産では、その効率的な精製ができるように、異なる種類の分離マトリックスを利用した一連の2以上のプロセス段階が往々にして必要とされることは周知である。米国特許第6426315号(Bergstrom他)には、かかる一連の段階に代えて、多官能性多孔質分離マトリックスを使用すること、つまり1種類の分離マトリックス上に種類の異なるマトリックスを提示することが提案されている。具体的には、米国特許第6426315号には、マトリックスの異なる層に異なる官能基を導入することによる、かかる多官能性多孔質分離マトリックスの製造方法に関する。簡潔に述べると、この方法は、反応性基を含む分離マトリックスを、該マトリックスに存在する全反応性基との反応には不十分な量の試薬と接触させるもので、試薬と反応性基との反応は、マトリックス内での試薬の物質移動に比して速い。反応性基は例えばヒドロキシル基、二重結合などであり、試薬はマトリックスに所望の官能基を直接又は間接的に導入する化合物であればよい。最後に述べた例では、試薬はハロゲン化剤のような活性化剤として知られる化合物であり、次いで後段で所望の官能基が導入される。最も好ましい官能基はマトリックスに所望の分離特性をもたらす基であり、一般にリガンドとして知られる。或いは、導入される官能基は、マトリックスの架橋度、密度又は多孔度である。別の層を与えるため、反応性基を別の試薬とさらに反応させてもよい。そのため、米国特許第6426315号に記載の方法は、上述のa)及びb)で述べた短所を呈しかねない。さらに、米国特許第6426315号の教示から、分離プロセスにおける結合及び拡散に関して様々な性質を与える多数の官能性をもたらす分離マトリックスを構築できたとしても、マトリックスに最適物質移動をもたらす分離マトリックスの製造法に関する指針を米国特許第6426315号にみいだすことはできない。そこで、当技術分野ではかかる性質の改良された分離マトリックスの代替製造法に対するニーズが依然存在する。
【0010】
米国特許第5945520号(Burton他)には、目標化合物を疎水性相互作用によって吸着する公知の種類のマルチモード又は混成モード式クロマトグラフィーマトリックスの問題点は、高い塩濃度を使用しない限り、疎水性の低い目標物質の結合効率が低いことであると記載されている。こうした必要な塩の添加を避けるため、米国特許第5945520号では、イオン化性官能基と該官能基を固体担体マトリックスに結合させるスペーサーアームとからなるイオン化性リガンドを呈するクロマトグラフィー用樹脂が提案されている。イオン化性官能基は、目標化合物を樹脂に吸着するpHで部分的に帯電しており、樹脂から目標化合物を脱着するpHでさらに帯電するか或いは逆の電荷をもつ。イオン化性官能基は、特定の官能基の群から選択される。一実施形態では、イオン化性官能基は、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール又は(−)フェニルプロパノールアミンから誘導され、150μmol/ml樹脂以上の密度に結合される。かかる高いリガンド密度は、液体に過剰量の塩を添加しなくても、目標化合物を吸着するのに十分な疎水性を与えると記載されている。このように、米国特許第5945520号には、多官能性リガンドが樹脂に一様に結合したものが開示されているが、これは均質分離マトリックスということができる。
【0011】
米国特許第6528322号(Carlsson他)は、薄層クロマトグラフィー(TLC)による水溶液試料中の2種以上の被分析物の定性、半定量又は定量測定のための分析法に関する。具体的には、毛管力によって流体を通過させることができるフローマトリックス、特にクロマトグラフィーメンブランのような平面状フローマトリックスで水性試料中のアイソフォームのような被分析物を分離する方法が開示されている。この発明の要旨は、分離された被分析物がフローマトリックスの分離領域から分離方向に対して実質的に横断方向に溶出されて捕捉ゾーンへと移動することであると記載されている。分離ゾーンは、適宜、分離方向に沿って異なるリガンド密度又はリガンド密度の勾配を有してもよい。したがって、かかる密度勾配は使用時の流れと平行になる。さらに、この実施形態では、各メンブラン内には単一の勾配しか存在しない。
【0012】
最後に、米国特許第5977345号は、ポリマーマトリックスを架橋する二官能性試薬に対するインサイドアウト空間的導入法に関する。具体的には、この米国特許は、ヒドロゲルビーズの外層に過剰のリガンドが固定化されるのを防止しながら、アフィニティリガンドの空間的導入に対応及び最適化できる活性化マトリックスに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5561097号明細書
【特許文献2】米国特許第6426315号明細書
【特許文献3】米国特許第5945520号明細書
【特許文献4】米国特許第6528322号明細書
【特許文献5】米国特許第5977345号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2)、393−398(1964)
【非特許文献2】「Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization」(R Arshady:Chimica e L’Industria 70(9)、70−75(1988))
【非特許文献3】Janson and Ryden in Protein Purification:Principles,High Resolution Methods,and Applications(1989 VCH Publishers,Inc)
【非特許文献4】Immobilized Affinity Ligand Techniques、Hermanson et al、Greg T.Hermanson、A.Krishna Mallia and Paul K.Smith、Academic Press,INC、1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、当技術分野では、従来技術に付随する上述の1以上の問題を解決する新規分離マトリックスに対するニーズが存在する。実用性及び経済性の面から、当技術分野では目標分子の物質移動の改善された分離マトリックスに対するニーズも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、吸着及び/又は脱着時の物質移動特性が改良された分離マトリックスを提供することである。これは請求項1記載の分離マトリックスによって達成できる。
【0017】
したがって、本発明の一態様は、目標分子の大規模分離での使用に特に好適な分離マトリックスを提供することである。
【0018】
本発明の特定の一態様は、各粒子の半径に沿って物質移動特性の異なる本質的に球形の粒子からなる分離マトリックスを提供することである。
【0019】
本発明の別の態様は、目標分子の溶出効率の向上した分離マトリックスである。
【0020】
本発明の別の態様は、リガンドの密度勾配を備えた多孔質担体からなる分離マトリックスの製造方法を提供することである。これは、担体にリガンドを結合する際のリガンドの溶媒制御拡散及び/又は反応性の制御によって達成できる。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、吸着及び/又は脱着時の物質移動性の改善された液体クロマトグラフィー法を提供することである。
【0022】
例えば、本発明の一態様は、吸着及び/又は脱着時の物質移動を制御できる液体クロマトグラフィー法を提供することである。
【0023】
本発明のその他の態様及び利点は以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】リガンド分布の均一な従来技術の分離マトリックスの相対リガンド分布プロットを示す図。
【図2】本発明による負の密度勾配のリガンド分布プロットを示す図。横方向位置に対する強度変化が明瞭にみられる。
【図3】本発明による負の密度勾配のリガンド分布プロットを示す図。リガンド分布曲線の形は図2と比較的類似しており、粒径の異なるビーズを測定に選択できることを示している。
【図4】本発明による正の密度勾配のリガンド分布プロットを示す図。図4のプロトタイプのリガンド勾配は次の図5よりも急で短い。
【図5】本発明による正の密度勾配のリガンド分布プロットを示す図。本例では、強度はビーズの外側部分で低いが、ビーズの中央に進むとかなり急激に増加し、最後は横ばいになる。
【図6】粒状分離マトリックスの中心に向かってのリガンド密度の増加によってどのように目標分子の吸着を促進できるかを示す概略図。
【図7A】本発明の本質的に球形の粒子で得ることができる様々な化学勾配の一例をを示す図。リガンド1(実線)とリガンド2(破線)の2種類のリガンドを示す。相対密度をY軸とし、無次元半径をX軸とした図に勾配を示す。
【図7B】本発明の本質的に球形の粒子で得ることができる様々な化学勾配の一例をを示す図。リガンド1(実線)とリガンド2(破線)の2種類のリガンドを示す。相対密度をY軸とし、無次元半径をX軸とした図に勾配を示す。
【図7C】本発明の本質的に球形の粒子で得ることができる様々な化学勾配の一例をを示す図。リガンド1(実線)とリガンド2(破線)の2種類のリガンドを示す。相対密度をY軸とし、無次元半径をX軸とした図に勾配を示す。
【図7D】本発明の本質的に球形の粒子で得ることができる様々な化学勾配の一例をを示す図。リガンド1(実線)とリガンド2(破線)の2種類のリガンドを示す。相対密度をY軸とし、無次元半径をX軸とした図に勾配を示す。
【図7E】本発明の本質的に球形の粒子で得ることができる様々な化学勾配の一例をを示す図。リガンド1(実線)とリガンド2(破線)の2種類のリガンドを示す。相対密度をY軸とし、無次元半径をX軸とした図に勾配を示す。
【図7F】本発明の本質的に球形の粒子で得ることができる様々な化学勾配の一例をを示す図。リガンド1(実線)とリガンド2(破線)の2種類のリガンドを示す。相対密度をY軸とし、無次元半径をX軸とした図に勾配を示す。
【図7G】本発明の本質的に球形の粒子で得ることができる様々な化学勾配の一例をを示す図。リガンド1(実線)とリガンド2(破線)の2種類のリガンドを示す。相対密度をY軸とし、無次元半径をX軸とした図に勾配を示す。
【図7H】本発明の本質的に球形の粒子で得ることができる様々な化学勾配の一例をを示す図。リガンド1(実線)とリガンド2(破線)の2種類のリガンドを示す。相対密度をY軸とし、無次元半径をX軸とした図に勾配を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
「勾配」という用語は、所与の変数の変化(特に特定の方向における単位距離当たりの変化)を伴う数量値の変化を意味する。
【0026】
「化学勾配」という用語は、本明細書では、化学的性質が体系的に変化することを意味する。
【0027】
「連続的で滑らかな」勾配という用語は、勾配が、線形又は程度の種々異なる凹凸を伴って、連続的に増減することを意味する。したがって、「連続的で滑らかな」勾配は、不連続な段を基本的に含まない。本質的に球形の粒子に関しては、「半径方向」勾配とは、勾配がビーズの中心に向かって増減することを意味する。
【0028】
「リガンド」という用語は、目標分子と相互作用し得る1以上の官能基を有する化学物質を意味する。「官能基」という用語も、本明細書では、かかる官能基に用いられる。これに関して、「リガンド」は、固体担体の表面から官能基を離隔するスペーサー要素を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「アフィニティリガンド」という用語は、本明細書では、生物学的親和性によって目標分子と相互作用し得る官能基を含むリガンド、例えば、ストレプタビジンと相互作用するビオチン、抗原と相互作用する抗体などを意味する。これに関して、本明細書で使用する「複数の官能基」という用語は、同種の複数の官能基及び異なる多数の官能基を包含する。
【0029】
「リガンド密度」という用語は、本明細書では、粒子のような担体の置換度を意味し、通常はμmol/ml樹脂単位で測定される。
【0030】
多孔質担体の「表面」は、外表面だけでなく、細孔表面もいう。
【0031】
第一の態様において、本発明は、多孔質担体表面に結合したリガンドからなる分離マトリックスであって、リガンドが担体中で1種以上の化学勾配を与え、該勾配が、その性質に応じて担体を通して方向付けされるか、又は担体中に存在してもよいマトリックスに関する。担体の例示的な形状は、例えば膜、モノリス及び粒子である。したがって、有利な一実施形態では、本発明は、1以上の多孔質粒子の表面に結合したリガンドからなる分離マトリックスであって、リガンドが各多孔質粒子の中心と外表面の間で1種以上の化学勾配を与えるマトリックスである。これに関して、化学勾配とは、任意の化学的性質、好ましくは後続の分離プロセスで利用するか、又はそれに影響を及ぼす性質の体系的反復変化を意味する。例示的な化学的性質は、濃度、密度及び引力である。本発明による粒子中に存在する化学勾配は、マトリックスをクロマトグラフィーのような分離に利用するとき、物質移動を改良するように作るのが好ましい。したがって、不均一粒子が従来技術の製造法から生成した場合でも、本発明は、分離プロセス中における吸着性及び/又は脱着性を改変し、好ましくは改良する化学勾配を導入するように、特に設計した不均一粒子を初めて提案する。例示的な吸着性及び/又は脱着性は、例えば容量、選択性、効率、粒子内物質移動、剛性などである。
【0032】
本発明による分離マトリックスは、実用的に任意の目標分子又は化合物の分離及び/又は精製において、例えばクロマトグラフィー又は膜分離において有用である。目標分子の具体例は、タンパク質、例えば抗体、ペプチド、例えばオリゴペプチド及びポリペプチド、核酸、例えばDNA、RNA及びPNA、細胞、プラスミドとウィルス、並びに大小の有機分子、例えば有機薬品候補体のような生体分子である。目標分子の別の一群は、食品添加物などとして有用なタンパク質やペプチドのような食品に有用な分子である。この種の目標分子の具体例は、例えば、牛乳又は乳清製品に由来する液体から単離した、ラクトフェリンのような分子である。本分離マトリックスを利用する液体クロマトグラフィー法を、以下により詳細に考察する。
【0033】
本分離マトリックスの最も有利な実施形態では、多孔質粒子は本質的に球形のビーズである。本発明に使用する担体は、ガラスやシリカのような無機材料、又は1種若しくは複数の有機ポリマーのような有機材料で作製してもよい。有利な一実施形態では、担体は、天然又は合成のポリマーから作製される。
【0034】
したがって、担体の第一の実施形態では、それは、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラギーナン、ゲラン、アルギン酸のような1種以上の炭水化物材料を含む。有利な一実施形態では、担体は架橋した炭水化物材料を含む。炭水化物担体は、逆懸濁ゲル化のような標準的方法に従って容易に製造される(S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2)、393−398(1964))。或いは、本発明の担体を製造するために使用する出発物質は、Sepharose(商標)FF(Amersham Biosciences AB、Uppsala、Swedenから入手可能)のような市販品である。
【0035】
担体の第二の実施形態では、それは、スチレン又はスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルアミドのような1種以上の合成ポリマーを含む。有利な一実施形態では、担体は1種以上の架橋した合成ポリマーを含む。かかるポリマーは、標準的な方法に従って容易に製造される。例えば、「Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization」(R Arshady:Chimica e L’Industria 70(9)、70−75(1988))を参照されたい。或いは、本発明によるビーズを製造するための出発物質として、Source(商標)又はSephacryl(商標)(Amersham Biosciences AB、Uppsala、Sweden)のような市販品が利用できる。
【0036】
担体の特定の実施形態では、それは、前記材料の1種から作製され、その上、1種以上の高密度充填剤も含む。かかる充填剤は、適当な密度及び担体材料との適合性を示す任意の材料、例えばステンレス鋼であってもよい。この実施形態は、分離マトリックスが下方から起こす液流によって拡張される、拡張床型分離プロセスに使用するのに適している。この実施形態では、担体は、ゲル形態の個別の実体又は粒子の凝集体として、本質的に球形の粒子を含むのが有利である。拡張床プロセス及びそこで使用する適当な分離マトリックスの特性は、クロマトグラフィー分野で周知であり、当業者であれば、本発明の教示及び普通の技術的知識に基づいて、本発明のこの実施形態を容易に準備できる。
【0037】
本分離マトリックスの有利な実施形態では、1種以上の化学勾配は、担体のリガンド密度の変化によって形成されるリガンド密度勾配である。例示的な実施形態では、分離マトリックスは、1種のリガンド密度勾配である単一勾配、以下でより詳細に考察する1種のリガンド密度勾配その他の1種の勾配、或いは、1種以上の他の勾配と適宜組み合わせた、同一又は相異なる方向の2種のリガンド密度勾配を含む。したがって、一実施形態では、2種以上の化学勾配が担体中に存在し、1種以上の勾配がリガンド密度勾配である。
【0038】
代替的実施形態では、1種以上の化学勾配は、各多孔質粒子に存在するリガンドの官能基のpKa値を変えた結果である。他の代替的実施形態では、1種以上の化学勾配は、各多孔質粒子に存在するリガンドの正味電荷を変えた結果である。かかる勾配は、リガンド密度勾配に関して記載した方法に類似し、pKa値及び正味電荷が結合したリガンドの密度の代わりに制御される方法で製造できる。
【0039】
本発明により、多孔質担体中に勾配を製造する各種方法は、以下で詳細に説明する。
【0040】
本分離マトリックスの化学勾配は、任意の方向性をもってもよい。一実施形態では、分離マトリックスは、担体の中心へ方向付けされ、それに向かって増加する正の勾配を含む。別の実施形態では、分離マトリックスは、担体の外表面へ方向付けされ、それに向かって減少し、その結果、中心向かって減少する負の勾配を含む。特定の実施形態では、本分離マトリックスは、複数の本質的に球形の粒子からなるクロマトグラフィー用マトリックスであり、各粒子がクロマトグラフィー中に起こす液流の方向と垂直な1種以上の勾配を示す。当業者であれば理解できようが、ビーズが球形又は本質的に球形であれば、勾配は全方向に生じるであろう。しかし、この実施形態は、流れの方向とそこで考察する勾配の方向とが同じである、例えば前記の米国特許第6528322号(Carlsson他)とは方向性に関して明らかに異なっている。
【0041】
さらに、当業者には自明であろうが、物質移動は担体の中心に向かうにつれ増加するので、内側部でのより多量の目標分子は、物質移動の所望の方向に反する濃度勾配を生じるであろう。しかし、大抵の場合、かかる濃度牽引力は、所望の方向へ導く牽引力よりも小さいであろう。必要なら、当業者は、担体を設計する際にそのことを考慮に入れ、官能基から得られる引力が十分となることを保証することができる。勾配が逆方向の場合は、かかる濃度勾配は、その代わりに、物質移動の牽引力と協同的に作用し得る。
【0042】
したがって、本分離マトリックスの例示的実施形態では、リガンド密度勾配は、半径の約40%に相当する最外側部で物質移動が最大となるように、本質的に球形の多孔質粒子中に設計される。このことは、リガンド密度が中心に向かうにつれ増加し、リガンド勾配の傾きが粒子の外側部で最大となり、粒子の内側部で最小となることを意味している。粒子半径の外側40%に相当する最外側部は、全粒子体積及びタンパク質容量の各々ほぼ80%を占めている。このことは、粒子の内側部で該容量を利用することが、相対的に重要でないであろうという意味を有している。したがって、前記提案した勾配は、リガンド密度勾配の傾きが粒子の外表面から半径の約40%まで増加し、次いで、リガンド密度が粒子の中心でゼロへと減少するように、設計することもできる。本分離マトリックスの特定の実施形態では、担体は本質的に球形の粒子からなり、各粒子は、前記した多孔質材料が取り囲む中実な無孔性材料からなり、1種以上の化学勾配が多孔質部分に与えられている。この実施形態は、既に説明した通り、半径の約40%のような粒子の一部だけを用いて有効な分離を得ることができると同時に、中実な内側部が粒子の剛性を改良すると思われるので、高い流速が所望の場合の応用に有利に使用できる。
【0043】
本分離マトリックスの最も有利な実施形態では、1種以上の化学勾配は連続的で滑らかな勾配である。かかる勾配は、前記にように担体の外側部だけに存在してもよい。或いは、かかる勾配は、多孔質粒子の勾配がない外殻を残すように、粒子の内側部だけに存在しなくてもよい。以下により詳細に考察するように、本分離マトリックスは、1種以上の連続的で滑らかな勾配、不連続な段階を含む1種以上の勾配のような2種以上の化学勾配を含んでいてもよい。当業者であれば、意図する各目的のために、即ち、どの分離特性を変更又は改良することが最も望ましいかに応じて、化学勾配の最も有利な程度を決定することができよう。
【0044】
本分離マトリックスの一実施形態では、各粒子のリガンドは、2種以上の官能基を与える。一実施形態では、前記官能基は、陽イオン交換リガンド、陰イオン交換リガンド、疎水相互作用クロマトグラフィー(HIC)用リガンド、逆相クロマトグラフィー(RPC)用リガンド、金属キレート固定化リガンド(IMAC)、親硫黄性リガンド及びアフィニティリガンドからなる群から選択される。かかる官能基は、当業者には周知であり、標準的な方法によって容易に製造される。例えば、Janson and Ryden in Protein Purification:Principles,High Resolution Methods,and Applications(1989 VCH Publishers,Inc)を参照されたい。
【0045】
本分離マトリックスの特定の実施形態では、2種以上の官能基は同一のリガンドに存在する。したがって、該リガンドは、静電気的に部分帯電しているか、又は、目標分子をマトリックスに結合するpHで静電気的に部分帯電しており、且つ、溶出pHでさらに帯電するか、又は逆電荷を有する基を含んでいてもよい。例示的な実施形態では、リガンドは両性イオン性の官能基を呈する。したがって、この実施形態では、リガンドは、特定のpH値で各々陽性及び陰性の2種の基を含んでいよう。その結果、吸着には第一の電荷のイオン性相互作用を利用し得る一方、溶出は、前記第一の電荷の中和、及び第一の電荷と反対の第二の電荷のイオン性相互作用による反発によって、マトリックスから目標分子を脱着するpHの変化により行うことができる。両性イオン性の例は、多数あり、通常のアミノ酸のように当業者には周知であり、例えば、N−[トリス−(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、ジメチルグリシン、グリシンアラニンなどが挙げられる。
【0046】
特定の代替的実施形態では、2種以上の官能基が異種のリガンドに存在し、かかる各種のリガンドが、多孔質粒子内に異なる化学勾配を生じる。したがって、例示的実施形態では、本分離マトリックスは、2種以上のリガンドがもたらす2種以上の化学勾配、例えば、各リガンド種が異なる化学勾配を生じる、同一方向又は反対方向の2種のリガンド密度勾配を含む。
【0047】
当業者には自明であろうが、以下の考察は、化学勾配が複数の官能基を含むリガンドから得られた実施形態にも、異種のリガンドを用いる実施形態にも、等しく良好に当てはまるであろう。したがって、2種の化学勾配、一方は陽性基、他方は陰性基の化学勾配を併用することによって、本発明は、外側部(本質的に球形粒子の半径の約40%に相当する)で帯電タンパク質のような目標分子の物質移動を増加させ、電荷反発によりタンパク質が担体の中心へ輸送されるのを防止することができる。
【0048】
陽荷電のタンパク質が目標分子であれば、陰荷電のリガンドの勾配が前記のように設けられる。陰荷電のリガンド勾配の傾きは、本質的に球形粒子の半径の約40%に相当する、ある値まで増加した後、リガンド密度は担体の中心でゼロへと減少する。このことは、リガンド密度が、本質的に球形粒子の半径の約40%に相当する、ある値で最大値となることを意味している。陽荷電のリガンド勾配は、本質的に球形粒子の半径の約40%に相当する位置から始まってもよく、担体の中心に向かって増加する。この勾配は、陽荷電のタンパク質が担体の中心へ浸透するのを電荷反発により妨げるように、設計される。
【0049】
第二の態様では、本発明は、多孔質担体の表面に結合したリガンドからなり、該リガンドが1種以上の化学勾配を担体内にもたらす分離マトリックスを充填した、クロマトグラフィーカラムに関する。
【0050】
有利な実施形態では、1種以上の化学勾配は、前記のリガンド密度勾配である。一実施形態では、本クロマトグラフィーカラムは、前記の分離材料で充填されている。本発明によるクロマトグラフィーカラムは、相対的に小さく、実験的応用のために有用なものか、又は、目標分子の大規模生産に適した、より大きなものでもよい。したがって、目標分子の大規模生産、1種以上の所望しない分子の液体試料からの除去、及び診断のような分析目的のために、該カラムを使用してもよい。カラムの材料及び設計は、標準的な材料及び技術を用いて、意図する用途に応じて適合させてもよい。
【0051】
第三の態様では、本発明は、多孔質担体の表面にリガンドが結合した分離マトリックスを提供し、1種以上のリガンド密度勾配が、1種以上の試薬の多孔質担体中への溶媒制御拡散で得られる方法に関する。この方法は、本発明による分離マトリックス製造の最良の実施形態である。これに関して、「試薬」という用語は、多孔質担体の表面に存在する基と反応できる任意の分子又は化合物を意味し、以下により詳細に考察するように、リガンドの官能基を含んでいても、含んでいなくてもよい。この態様は、pKa勾配や正味電荷勾配のような前記化学勾配のいずれの製造も包含する。溶媒制御拡散は、第二の溶媒が多孔質担体の内部に存在している間に、前記試薬を第一の溶媒から添加し、前記第一及び第二の溶媒が異なる溶解性をもたらすことによって得られる。したがって、本方法の一実施形態では、溶媒制御拡散は、第二の溶媒がその細孔内に存在する担体と、前記試薬を含む第一の溶媒を接触させ、前記第一及び第二の溶媒が異なる溶解性をもたらすことによって得られる。例示的実施形態では、第一の溶媒は水性溶媒で、第二の溶媒は有機溶媒である。代替的実施形態では、第一の溶媒は有機溶媒で、第二の溶媒は水性溶媒である。したがって、多孔質担体を有機溶媒のような適当な溶媒中に先ず浸漬し、次いで、濾過などによって液切りした後、第一の溶媒中の不溶又は難溶な試薬溶液、例えば試薬水溶液と接触させてもよい。本方法に使用するための適当な溶媒の組合せは、当業者によって容易に規定される。
【0052】
有機相と水相の間の拡散が、更なる補助、例えば本方法の速度を上げるための補助がなしに、進行するとしても、本発明は、所望の方向の拡散を補助するために、1種以上の追加の条件を調節する実施形態にも関する。当業者には自明であろうが、これは、温度、空気流、溶媒特性並びに官能基の濃度及び/又は性状の群から選択される1種以上の条件のような、いくつかの利用可能な手段のいずれかによって達成できる。したがって、本発明の一実施形態では、試薬の拡散は、リガンドの結合中の反応混合物に空気流を供給することによって補助される。一実施形態では、空気流は本質的に連続的である。
【0053】
本方法により製造される分離マトリックスは、本質的に球形の粒子、通常のビーズ、モノリス、フィルター、膜のような前記形状又は形式のいずれであってもよい。設けられる勾配は、リガンド密度勾配のような前記の化学勾配のいずれであってもよい。前記形状及び前記の勾配の組合せのいずれも、本方法で製造できる。
【0054】
本方法の一実施形態では、担体の中心に向かって減少するリガンド密度勾配が、拡散制御条件下で1種以上の官能基を含む試薬を添加することによって設けられる。この勾配方向は負の勾配とも称する。これに関して、該試薬は、表面に結合するとリガンドとして作用できるか、又は下記のように担体表面にそのような官能基を与えるのに有用である、1種以上の官能基を含む任意の化合物である。「リガンドとして作用する」とは、担体表面に固定化又は結合されると、目標分子と相互作用する能力を指す。
【0055】
本方法の一実施形態では、多孔質担体の表面に存在する試薬又は基は、活性化されている。活性化及び活性化可能な基は、以下により詳細に考察するが、以下に考察する実施形態及び実施例は、いずれもこの場合に適用できる。したがって、担体を反応性形態に活性化し、ヒドロキシル基を含有する試薬のような適当な試薬とそれとを接触させるために、周知のカップリング化学反応を使用できる。或いは、多孔質担体の表面基は本質的に非反応性であるが、試薬は、例えばエポキシ化によって活性化されてしまう。したがって、担体の表面基及び添加した試薬が相互に反応できる、この方法の任意の実施形態が包含されている。当業者には自明であろうが、所望の基を本種の担体に結合し、当業者には容易な本発明のこの実施形態を可能にする方法は多数存在する。有機化学の標準的な任意の教科書を参照することができるが、Immobilized Affinity Ligand Techniques、Hermanson et al、Greg T.Hermanson、A.Krishna Mallia and Paul K.Smith、Academic Press,INC、1992も参照されたい。
【0056】
したがって、担体は、従来の化学によって容易に活性化される活性化可能な基、又は試薬と反応できる活性化基を与える。特定の実施形態では、担体は活性化基を与える。この実施形態は、特に、担体の中央に向かって増加する勾配、即ち正の勾配を製造するために有用である。したがって、一実施形態では、担体の中心に向かって増加する密度勾配は、拡散制御条件下で不活性化基を含む第一の試薬を第一段階で添加し、第二段階で1種以上の官能基を含む第二の試薬を添加することによって、設けられる。したがって、第一段階では、不活性化した表面基を得るために不活性化基が添加される。したがって、第一段階の後、担体表面上の不活性化基は第二の試薬と反応できず、かかる部位で結合できる官能基はない。言い換えると、この実施形態では、不活性化基は官能基を含む第二の試薬に対して非反応性である。したがって、第一の試薬は「不活性化剤」とも称してもよい。拡散は、中心に向かって次第に減少するように制御され、そのため、中に入る程、官能基を結合し、リガンドを与える能力は増加するであろう。利用できる基の個数は不活性化段階によって制御済みであるので、第二段階では、試薬の量は決定的なものではなく、第二段階で拡散を制御する必要はないであろう。
【0057】
当業者には自明であろうが、1種以上の条件を変えることによって、1種以上の勾配をもたらす方法は多数存在する。例えば、官能基の量は1つの有用な変数である。さらに、1種以上の官能基の混合物も有用である。したがって、一実施形態では、試薬が所定比の2種の官能基を含むことにより、分離マトリックス中に異なるリガンドを与える。その場合、異なる官能基の異なる拡散特性は異なる化学試薬を生成し得る。
【0058】
さらに、本発明の第二の態様は、多孔質担体の表面にリガンドが結合した分離マトリックスの製造方法であって、当該方法が、
(a)多孔質担体の表面に活性化可能な基を与える段階、
(b)活性化剤で上記基を活性化する段階、
(c)段階(b)で活性化した基を、1種以上の官能基を含む化合物と反応させる段階
を含み、段階(c)における反応性の制御によって担体内に1種以上の化学勾配を生じさせる、方法も包含する。代替又は追加として、段階(c)中の拡散速度を制御することによっても、勾配が得られる。段階(c)の制御は、反応速度の制御と定義することもできる。当業者であれば、反応性と拡散との適当な関係を得るために、適切なパラメーターを調節することができる。一実施形態では、反応性は、担体中への拡散よりやや高い。
【0059】
段階(b)から生じる活性化基と比較して、官能基(リガンド)を含む化合物の限定的量を段階(c)で使用することによって、勾配を生成してもよい。リガンドの拡散及び/又は反応性を制御し、異なるリガンド置換プロファイルを有する勾配を創製するために、温度、リガンド濃度、又は溶媒種のような他のパラメーターを制御することも可能である。リガンドの異なる限定的量を用いて、異なる勾配プロファイルを生成することもできる。したがって、一実施形態では、拡散速度はリガンド濃度の調節によって制御される。
【0060】
多孔質担体は、本発明の第一の態様に関して前記したものであってもよい。有利な実施形態では、担体は、少なくとも1個の多孔質粒子、好ましくは本質的に球形の粒子からなり、1種以上の化学勾配が、各多孔質粒子の中心と外表面の間に存在する。リガンドを担持する多孔質粒子を製造する各種一般的技術が、当技術分野で周知である。容易に認識されることだが、選択すべき方法は、多孔質粒子の性質に依存するであろう。
【0061】
段階(a)で得られる活性化可能な基は、これに関して汎用される任意の基、例えばカルボキシル基(NHS/EDCで活性化可能)、アミン、アリル基などでもよい。したがって、本方法の有利な実施形態では、段階(a)の活性化可能な基は炭素−炭素二重結合である。したがって、多孔質担体は、例えば、その製造中に未反応のまま残ったビニル基のような二重結合が容易に利用できる、合成ポリマーから作製される粒子でもよい。
【0062】
一実施形態では、本方法は、少なくとも1個の多孔質粒子の表面に存在する活性化可能な基を段階(a)の前の段階で与えることも含む。アリル化は、アリルグリシジルエーテル(AGE)や臭化アリルのような適当な作用剤で、標準的な方法に従って容易に行われる。例えば、これには、多糖類、例えばアガロースのような大部分の天然高分子中で利用できる、ヒドロキシル基のような適当な基のアリル化も含まれる。しかし、他の活性化可能な基が当業者に周知であり、更なる具体例は、例えばアミン、チオール、カルボキシ基などである。したがって、一実施形態では、段階(a)の前の段階は、多孔質担体の表面に存在するヒドロキシル基のアリル化も含む。
【0063】
代替的実施形態では、前記段階(a)〜(c)は、活性化リガンドが、担体表面に存在する活性化可能な基と反応する単一の段階で代用される。これには、例えば、担体表面上の例えばヒドロキシル基との反応に利用できるエポキシドのような反応性基と、1種以上のリガンド官能基とを担持する化合物の使用が関わる。
【0064】
段階(b)は、炭素−炭素二重結合を反応性にできる汎用の任意の活性化剤を使用して、行うことができる。一実施形態では、活性化剤は遊離ラジカルである。別の実施形態では、活性化剤は、ハロゲン、例えば臭素、塩素若しくはヨウ素、又はその水酸化物のような求核剤を含む。したがって、一実施形態では、段階(b)で用いられる活性化剤はハロゲンである。炭素−炭素二重結合のハロゲン又はハロゲン化剤による活性化で、ハロヒドリンを生成することができ、それは、標準的な方法に従って反応性エポキシ基に容易に変換される。したがって、特定の実施形態では、段階(b)はハロゲン化生成物をエポキシ基に変換することも含む。
【0065】
当業者であれば容易に認識されようが、実際の官能基以外にも、段階(c)で結合する化合物は、前記官能基を担体表面から離隔する要素も含んでいてもよい。かかる要素は普通に使用され、スペーサー要素又はスペーサーとして知られる。或いは、粒子表面を活性化する前に、その表面にスペーサーを結合してもよい。周知のことではあるが、かかる任意の隔離性要素は、その導入法に関係なくスペーサーとして機能し、かかる隔離を起こす任意の基又は化合物は、原則的にスペーサーと称するであろう。上記から明らかなように、比較的繁用される活性化方式のいくつかは、アリルグリシジルエーテル(AGE)のような活性化剤を含み、その一部は、スペーサーに変換されることになろう。
【0066】
一実施形態では、本発明の第一の態様に関して既に考察した通り、1種以上の化学勾配は連続で滑らかなリガンド密度勾配である。
【0067】
本方法の最も有利な実施形態では、1種以上の化学勾配はリガンド密度勾配である。前記のように2種以上の化学勾配を得るために、本方法を反復してもよい。代替的実施形態では、それらの勾配は、単一プロセスにて多少とも同時に得られる。
【0068】
本方法の一実施形態では、段階(c)における官能基は2種以上の官能基を与える。かかる官能基は、本発明の第一の態様に関して前記したものであってもよい。一実施形態では、2種以上の官能基は、両性イオン性化合物のような同一のリガンドに存在する。
【0069】
代替的実施形態では、2種以上の官能基は異なる種のリガンドに存在し、かかる各種のリガンドに対して、担体内に異なる化学勾配が設けられる。かかる異なる化学勾配は、本発明の第一の態様に関して前記したものであってもよい。したがって、一実施形態では、担体内に2種の化学勾配が与えられ、そのうちの1種はリガンド密度勾配である。かかる勾配の作用及び利点、並びに勾配の組合せは、液体クロマトグラフィーの方法に関して以下により詳細に考察する。
【0070】
本発明は、本方法を用いて製造した分離マトリックスも包含する。
【0071】
第四の態様では、本発明は、多孔質担体の表面にリガンドが結合した分離マトリックスと、目標分子を含む液体が接触し、リガンドが担体内に化学勾配を与える、液体クロマトグラフィーの方法に関する。一実施形態では、担体は少なくとも1個の多孔質粒子からなり、化学勾配が各多孔質粒子の中心と外表面の間に存在する。したがって、勾配は放射状勾配であってもよい。分離マトリックスの性質は、本発明の第一の態様に関して前記したものであってもよい。液体クロマトグラフィーの背景をなす一般原理は、当業者に周知であり、様々な教科書に記載されている。
【0072】
最も有利な実施形態では、本方法は、マトリックスを溶出剤と接触させることにより、マトリックスから吸着目標分子を溶出する段階をさらに含む。溶出剤の性質は、当然ながら、粒子に結合したリガンドの性質に依存するであろう。例えば、イオン交換勾配溶出の場合、溶出剤は塩勾配又はpH勾配を含み得る。本方法の特定の実施形態では、リガンドの官能基は両性イオンであり、溶出は、吸着中に用いたpHと異なるpHで行う。
【0073】
一実施形態では、本方法で用いられる分離マトリックスでは、リガンド密度は担体の中心に向かって増加する。そのため、粒子が本質的に球形のビーズであれば、この実施形態は放射状勾配を含む。代替的実施形態では、勾配が逆方向を示す。本発明の第一の態様に関して前記したように、本分離マトリックスは、2種以上の化学勾配を含んでいてもよく、その内の1種は、好ましくは連続で滑らかな勾配である。
【0074】
2種のリガンドがそれぞれ異なったクロマトグラフィー特性を有する、2種のリガンド勾配を含む分離マトリックスを利用することによって、吸着及び脱着の両工程とも改良できる。例えば、リガンドの一方に目標分子を吸引するもの、他方に反発するものを選択することによって、吸着を担体の外側部に誘導することができ、目標分子が担体の内側部に侵入するのを防止する。吸引性リガンドの勾配は、担体の外側部で試料分子の物質移動を増加させるように調節する。
【0075】
2種のリガンド及び2種の勾配を使用する別の利点は、各担体、例えば各粒子中の目標分子の分離を達成し、このようにして、カラム中での分離のようなクロマトグラフィー法の選択性を高めることが可能なことである。これは、例えば、イオン交換官能基の1種の勾配と、疎水相互作用を支持する官能基、即ちHICリガンドの別の勾配とを組み合わせることによって達成できる。HICリガンドの勾配は粒子の中心に向かって減少し、イオン交換リガンドの勾配はその中心に向かって増加する。このことは、イオン交換基と反対荷電の親水性目標分子は、粒子の内側部で主に吸着し、疎水性の荷電試料分子は外側部で吸着すると予想されることを意味している。本発明によるかかる粒子をカラム液体クロマトグラフィーに用いるとき、吸着目標分子は、勾配溶出によって容易に脱着される。粒子中でのタンパク質分離を十分に利用するために、粒子の外側部に吸着したタンパク質が最初に溶出し、粒子の内側部に吸着したタンパク質が最後に溶出するように、溶媒の勾配を設計すべきである。
【0076】
前記したように、本発明は、分離マトリックスの設計法に応じて、実質的に任意の目標分子を分離するために有用である。一実施形態では、目標分子はタンパク質である。液体クロマトグラフィーの本方法は、発酵液のような溶液から1種の所望の目標分子を精製する方法、又は、ウィルスのような所望しない目標分子の除去により、液体を精製するために用いる方法のいずれであってもよい。
【0077】
図面の詳細な説明
比較のために、図1は、ビーズ中の半径方向座標に対してNd3+の強度を表すCM Sepharose BBのリガンド分布プロットを示す。ビーズの直径=190μm。その結果は、強度がビーズの全直径にわたってほぼ同じであることを示している。
【0078】
図2は、ビーズ中の半径方向座標に対してNd3+の強度を表す、本発明によるCM負勾配Sepharose BB(実施例1)のリガンド分布プロットを示す。ビーズの直径(μm)=130(菱形)、160(四角)、165(三角)、170(円)。横方向位置に対するNd3+の強度の変化が明瞭に表れている。強度は、ビーズの外側部で高いが、ビーズの中央に進むと漸減し、最終的に横ばいになるか、及び/又は低すぎて測定不能となる。
【0079】
図3は、ビーズ中の横方向位置に対してNd3+の強度を表す、本発明によるCM負勾配Sepharose BB(実施例2)のリガンド分布プロットを示す。ビーズの直径(μm)=115(菱形)、130(四角及び三角)。図3は図2と類似の結果を示すが、強度の変化が横方向位置で異なっている。両プロトタイプに対して、サイズの異なるビーズを分析した。リガンド分布曲線の形状はかなり類似しており、サイズの異なるビーズを測定のために選択できることを示した。
【0080】
図4は、ビーズ中の横方向位置に対してNd3+の強度を表す、本発明によるCM正勾配Sepharose BB(実施例3)のリガンド分布プロットを示す。ビーズの直径(μm)=130(菱形)、155(四角)、175(三角)。
【0081】
図5は、ビーズ中の横方向位置に対してNd3+の強度を表す、本発明によるCM正勾配Sepharose BB(実施例4)のリガンド分布プロットを示す。ビーズの直径(μm)=130(菱形)、150(四角)、160(三角)。
【0082】
図4及び5は、CM Sepharose BBの2種の正勾配プロトタイプから得た結果を示す。この場合、強度は、ビーズの外側部で低いが、ビーズの中央に進むとかなり速やかに増加し、最終的に横ばいになる。図4のプロトタイプの方が急峻で短いリガンド勾配を有する。前記のように、ビーズのサイズは結果に何ら効果を示さなかった。
【0083】
図6は、粒状分離マトリックスの中心に向かってリガンド密度が増加することにより、目標分子の吸着を促進できる状況を概略的に示す。図面は、リガンドの官能基が、帯電官能基を囲む場のような、ある場によって囲まれている実施形態を例示することを意図している。矢印は、増加する力が粒子中への物質移動を促進する様子を示している。
【0084】
図7A〜Hは、本発明により提供される化学勾配の具体例を示す。図7Aは、担体の中心に向かって増加する勾配であって、担体内に始まり、そのためリガンドのない粒子外側部を残す勾配を示し、図7Bは、担体の中心に向かって減少する勾配を示し、図7Cは、担体の中心に向かう途中でピーク値に達する勾配を示し、図7Dは、担体の中心に向かって減少する勾配、即ち、担体の外側部により高濃度のリガンドが存在する勾配を示し、図7Eは、担体内に反対方向の2種の勾配を示し、図7Fは、担体内に同じ方向であるが、傾斜の異なる2種の勾配を示し、図7Gは、粒子の中心に1つ、及び図7Cと同様に中心の周囲に1つからなる、2種の勾配を示し、図7Hは、一方のリガンド又は官能基が平坦な曲線を描き、他方が図7Bに描いたものと類似の勾配をなす担体を示している。図7Hに示したような勾配を有する担体は、例えば、リガンドで一定の置換度に官能化済みの担体物質から出発し、その後本発明による方法を適用して勾配を与えることによって、得られる。
【実施例】
【0085】
以下の実施例はもっぱら例示を目的としてものであって、特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。本願明細書で引用した文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0086】
A.一般事項−勾配ビーズの製造
マトリックス体積とは、沈降したベッド体積を指す。攪拌子磁気攪拌機を用いるとビーズの損傷が促進されるので、大規模反応での攪拌とは、懸架式モーター駆動攪拌機を指している。小規模反応(20ml又はゲル1gまで)は密閉バイアル中で行っており、攪拌とは、振とう台の使用を指している。ビーズ上の官能基の分析、及びアリル化度又はイオン交換基の置換度の決定には、従来法を使用した。
【0087】
活性化可能な基の多孔質担体表面への導入
この実施例で以下のようにアリルグリシジルエーテルを用いて、多孔質担体は活性化可能な基を容易に付与される。Sepharose Big Beads(BB)(Amersham Biosciences、Uppsala、Swedenから入手可能)170mlを吸引乾燥して130gとし、50%NaOH水溶液、NaBH41.7g、Na2SO421g及び水20mlと共に混合した。混合物を50℃、1時間攪拌した。アリルグリシジルエーテル(150ml)を添加し、懸濁液を激しい攪拌下、50℃でさらに16時間放置した。5M AcOHを連続的に添加して、pH7に達するまで中和した後、混合物を濾過し、ゲルをエタノール1L、蒸留水2L、0.2M酢酸400ml、蒸留水500mlで連続的に洗浄した。滴定により、0.316mmolアリル/mlゲルを得た。
【0088】
活性化可能な基の臭素化による活性化
活性化可能な基を含む多孔質担体は、この実施例で以下のように容易に活性化される。アリル活性化Sepharose(商標)BB(0.316mmolアリル基/ml液切りゲル)5ml、AcONa0.5g及び蒸留水5mlの攪拌懸濁液に臭素を添加し、最終的に持続的な黄色を得た。次いでギ酸ナトリウムを添加して、最終的に懸濁液を完全に脱色した。反応混合物を濾過し、ゲルを蒸留水50ml、次いでエタノール、最後にトルエンで洗浄した。次いで、よく液切りしたゲルを反応容器に直接移し、リガンドとさらに反応させた。
【0089】
活性化基と官能基含有化合物との反応による勾配の形成
担体中及びその外部で2種の溶媒を用いて、担体中での異なる試薬の拡散を制限することによって、勾配が都合よく得られる。例えば、官能基、ここでは陽イオン基を、3−メルカプトプロピオン酸の硫黄原子を介して直接マトリックス上に導入した。したがって、この場合3−メルカプトプロピオン酸が試薬、即ち官能基を含有する化合物である。担体の中心へ方向付けされ、したがってそれに向かって増加するリガンド勾配を、ここでは正の勾配と称し、担体の外表面へ方向付けされ、その結果、中心へ向かって減少するリガンド勾配を、負の勾配と称する。
【0090】
本実施例では、マトリックスとの結合は、アリル基の臭素化及び塩基性条件下での求核置換を経て達成した。
【0091】
B.実施例
実施例1
トルエン/水系中で設けられる負勾配(U1282072)
この実施例では、カルボキシメチル(CM)陽イオン交換リガンドの密度勾配を含む分離マトリックスを以下の通り製造した。トルエン中の臭素活性化ゲル4g量(0.316mmolアリル基/ml液切りゲル)を濾過し、2M NaOH(0.8ml)及び0.5M Na2CO3(4ml)の添加でpH11.5に調節しておいた、3−メルカプトプロピオン酸(0.07ml)の水(5ml)溶液を含んだ反応バイアルに、該ゲルを移した。反応を50℃での攪拌下、キャピラリーから混合物中に空気流を連続供給(30ml/分)しながら、16時間放置した。反応混合物の濾過後、ゲルを蒸留水3×30mlで洗浄した。滴定を用いて平均置換度を確認しておき、一方、リガンド勾配の存在は以下のように確認する。
【0092】
実施例2
ヘキサン/水系中で設けられる負勾配(U1282073)
代替の溶媒系で、カルボキシメチル(CM)陽イオン交換リガンドの密度勾配を含む分離マトリックスを以下の通り製造した。ヘキサン中の臭素活性化ゲル4g量(0.316mmolアリル基/ml液切りゲル)を濾過し、2M NaOH(0.8ml)及び0.5M Na2CO3(4ml)の添加でpH11.5に調節しておいた、3−メルカプトプロピオン酸(0.07ml)の水(5ml)溶液を含んだ反応バイアルに、該ゲルを移した。反応を40℃での攪拌下、キャピラリーから混合物中に空気流を連続供給(30ml/分)しながら、16時間放置した。反応混合物の濾過後、ゲルを蒸留水3×30mlで洗浄した。滴定を用いて平均置換度を確認しておき、一方、リガンド勾配の存在は以下のように確認する。
【0093】
実施例3
トルエン/水系中で設けられる正勾配(U1282081A)
この実施例では、カルボキシメチル(CM)陽イオン交換リガンドの密度勾配を含む分離マトリックスを以下の通り製造した。トルエン中の臭素活性化ゲル5g量(0.316mmolアリル基/ml液切りゲル)を濾過し、2M NaOH(0.4ml)及び0.5M Na2CO3(4ml)の添加でpH10.5に調節しておいた、チオグリセロール(105μl)の水(10ml)溶液を含んだ反応バイアルに、該ゲルを移した。反応を50℃での攪拌下、キャピラリーから混合物中に空気流を連続供給(23ml/分)しながら、16時間放置した。反応混合物の濾過後、ゲルを蒸留水3×30mlで洗浄し、50%NaOH水溶液の添加でpH12.5に調節しておいた、3−メルカプトプロピオン酸(1.5ml)の水(5ml)溶液を含んだ反応バイアルに、該ゲルを移した。反応を50℃での攪拌下、16時間放置した。反応混合物の濾過後、ゲルを蒸留水3×30mlで洗浄した。滴定を用いて平均置換度を確認しておき、一方、リガンド勾配の存在は以下のように確認する。
【0094】
実施例4
ヘキサン/水系中で設けられる正勾配(U1282081B)
この実施例では、カルボキシメチル(CM)陽イオン交換リガンドの密度勾配を含む分離マトリックスを以下の通り製造した。ヘキサン中の臭素活性化ゲル5g量(0.316mmolアリル基/ml液切りゲル)を濾過し、2M NaOH(0.4ml)及び0.5M Na2CO3(4ml)の添加でpH10.5に調節しておいた、チオグリセロール(105μl)の水(10ml)溶液を含んだ反応バイアルに、該ゲルを移した。反応を40℃での攪拌下、キャピラリーから混合物中に空気流を連続供給(46ml/分)しながら、16時間放置した。反応混合物の濾過後、ゲルを蒸留水3×30mlで洗浄し、50%NaOH水溶液の添加でpH12.5に調節しておいた、3−メルカプトプロピオン酸(1.5ml)の水(5ml)溶液を含んだ反応バイアルに、該ゲルを移した。反応を50℃での攪拌下、16時間放置した。反応混合物の濾過後、ゲルを蒸留水3×30mlで洗浄した。滴定を用いて平均置換度を確認しておき、一方、リガンド勾配の存在は以下のように確認する。
【0095】
C.勾配分析(実施例1〜4)
共焦点ラマン分光法(CRS)を用いて、リガンド勾配を有する新規媒体プロトタイプを評価した。新規プロトタイプは、カルボキシメチル(CM)リガンドがマトリックスに共有結合した、Sepharose Big Beads(BB)ベースのマトリックスを基にしていた。CMリガンドは、pH6.8でCMリガンドにイオン結合したネオジミウムイオン(Nd3+)の使用によって、間接的に分析した。Nd3+イオンはレーザーで励起し、その後の(強い)蛍光シグナルをラマン散乱の通常範囲内で検出した。CRSの使用によって、ビーズ形担体の共焦点平面で、即ちビーズの中央でリガンドを分析し、粒子半径全体にわたるリガンド分布をミクロンメーターの尺度(深度分解能が約5〜10μm)で引き出すことが可能であった。
【0096】
この試験で見出した結果より、本発明によるリガンド勾配クロマトグラフィー用媒体の合成が可能であることが確認される。担体の中心へ方向付けされ、したがってそれに向かってリガンド密度が増加するリガンド勾配(正の勾配)、及び、担体の外表面へ方向付けされ、その結果、中心へ向かってリガンド密度が減少するリガンド勾配(負の勾配)が、前記の通り合成された。CRSの使用によって、かかるリガンド勾配を測定し、実証することができた。
【0097】
材料
リガンド勾配を有する、下表1に示すCM Sepharose BBの様々なプロトタイプを分析した。
【0098】
【表1】

装置
共焦点ラマン顕微鏡システム(Renishaw、モデル1000)を用いた。ラマンシステム(分散格子に基づく)は、励起波長785nmの近赤外ダイオードレーザー、光学顕微鏡(Leica)及びCCD検出器を装備していた。光学顕微鏡には、いくつかの空気対物レンズ(波長補正用)及び水浸型対物レンズ1個(媒体測定用)が付属していた。
【0099】
方法
ビーズの製造
媒体約0.5〜1mLを、ガラスフィルター漏斗(Duran G3、15mL)上で、100mMビストリスプロパン緩衝液(pH6.8)の過剰量で洗浄後、10mMビストリスプロパン(BTP)緩衝液(pH6.8)の過剰量で洗浄した。吸引乾燥後、媒体をプラスチックチューブに移し、0.1M NdCl3溶液(10mM BTP緩衝液、pH6.8中で製造)の過剰量中で終夜(暗所中約16時間)インキュベーションを行った。インキュベーション後、NdCl3溶液を除去し、媒体をチューブ中にて10mM BTP緩衝液(pH6.8)の過剰量で洗浄した。30分後、溶液を除き、新たな分量を添加した。この操作をさらに2回繰り返した。次いで、後者の洗浄用緩衝液の添加によってスラリー(50:50)を作製した。少量のスラリーを顕微鏡用スライド上に付け、カバーグラスで覆った。最後に、蒸留水の小滴をカバーグラス上に付けた。
【0100】
補正
実測の前に、分光計の波長(波数)尺度を補正しなければならない。シリコンウェーハの表面を、空気対物レンズ(50×)を用いて観察可能に拡大した。レーザーモードに切り換え後、レーザースポット(ビデオカメラで確認)の焦点合わせをさらに行って、小さく明るいスポットにした。必要な場合、レーザースポットの位置を調節した。最後に、検出器のシグナル領域をチェックした。スペクトルを取り、520cm-1のバンドを補正に用いた。必要な場合、尺度を調節した。
【0101】
機器パラメーター、補正:
型式:格子(1200本/mm)、スペクトル、静止
領域:800〜300cm-1(520cm-1が中心)、ビニング=1
検出器:時間=1秒、ゲイン=高率、ピクセル(画像)領域=221〜225(y位置)×2〜578(x位置)
その他:累算=1、宇宙線除去(cos.Ray.rem)=オフ、出力=100%、対物レンズ=50、焦点=0%
レーザー:波長=785nm、平均効果=17mW
スリット:10μm
ビーズの測定
製造試料を顕微鏡中に載せ、試料台を上げることによって、水浸対物レンズ(63×)を水滴中に位置決めした。ビーズ像を拡大し、ビーズの中央に共焦点平面(焦点中)を得るために、顕微鏡で焦点に合わせた。試料台を移動してx目盛上の測定開始点を設定した(ビーズの縁部に)。レーザーモードに切り換え後、以下のパラメーターに従ってスペクトルを得た。視覚モードに切り換え後、測定点を新たな位置に垂直移動させるなどをした。粒子半径と共にいくつものスペクトルを取った後、Nd3+の蛍光シグナル強度を各スペクトルにおいて評価した。
【0102】
機器パラメーター、ビーズ測定
型式:格子(1200本/mm)、スペクトル、拡張、連続
領域:2300〜300cm-1、ビニング=1
検出器:時間=10秒、ゲイン=高率、ピクセル(画像)領域=221〜225(y位置)×2〜578(x位置)
その他:累算=1、宇宙線除去=オフ、出力=100%、対物レンズ=63(水浸)、焦点=0%
レーザー:波長=785nm、平均効果=17mW
スリット:10μm
結果及び考察
図面には、ビーズ中のリガンド分布の結果を、ビーズ中の横方向位置に対してNd3+のシグナル強度を表すプロットに示す。図1は、CM Sepharose BB(CDM)の普通プロトタイプのリガンド分布プロットを示す。その結果から、予想通り、強度がビーズの直径全体にわたりほぼ同じであることが示されている。
【0103】
欠如又はブランク効果がないことを保証するために、まったくリガンドをもたない多孔質ビーズ形状担体、即ち、ビーズ直径190μmのSepharose BB(Amersham Biosciences、Uppsala、Swedenから入手可能)について、インキュベーション及び測定を先ず行った。図1には、ビーズ中の半径方向座標に対してNd3+の強度を表す、CM Sepharose BBのリガンド分布プロットを示してある。Nd3+イオンとのインキュベーション後の洗浄操作は有効であり、ビーズ中又はビーズ周辺の溶液中にシグナルを認めなかった。
【0104】
ビーズ中の半径方向座標に対してNd3+の強度を表す、実施例1の結果を図2に示す。このリガンド分布プロットは、横方向位置に対してNd3+強度の変化を示している。強度は、ビーズの外側部で高いが、ビーズの中央に進むと漸減し、最終的に横ばいになる、及び/又は低すぎて測定不能となる。この場合(さらにその後のものも)、測定は、ビーズの約1半径だけについて行った。
【0105】
実施例2の結果を図3に示す。その結果は図2に類似であるが、強度の変化が横方向位置で異なる。両プロトタイプに対して、サイズの異なるビーズを分析した。リガンド分布曲線の形状はかなり類似しており、サイズの異なるビーズを測定のために選択できることを示している。
【0106】
実施例3及び4(正勾配)の結果を図4及び5に各々示す。この場合、強度は、ビーズの外側部で低いが、ビーズの中央に進むとかなり急速に増加し、最終的に横ばいになる。図4のプロトタイプの方が急峻で短いリガンド勾配を有する。前記のように、ビーズのサイズは結果に何ら効果を示さなかった。
【0107】
結論
この試験では、本発明によりリガンド勾配分離マトリックスを合成することが可能であることを示した。リガンド勾配の増加も減少も、成功裏に合成された。CRSの使用によって、かかるリガンド勾配を測定し、実証することができた。
【0108】
実施例5
イオン交換リガンドの負勾配
陽イオン交換媒体
チオール含有誘導体を有するマトリックス上にカルボキシル基を導入したが、他の反応性求核基を含有する誘導体も使用できる。
【0109】
固定化3−メルカプトプロピオン酸の勾配
アリル活性化Sepharose(商標)6FF(0.3mmolアリル/ml)100ml、AcONa4g及び蒸留水100mlの攪拌懸濁液に臭素を添加し、最終的に持続的な黄色を得た。次いでギ酸ナトリウムを添加して、最終的に懸濁液を完全に脱色した。
【0110】
反応混合物を濾過し、ゲルを蒸留水500mlで洗浄した。次いで、活性化ゲルを4個の別々の反応容器に直接移した。
【0111】
A)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、チオプロピオン酸366μl(アリル基に対し0.7当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0112】
反応を70℃での攪拌下、10時間放置した。反応混合物の濾過と、蒸留水100mlでの洗浄で、チオプロピオン酸Sepharose由来のゲルを得た。
【0113】
B)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、チオプロピオン酸366μl(アリル基に対し0.7当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0114】
反応を30℃での攪拌下、10時間放置した。反応混合物の濾過と、蒸留水100mlでの洗浄で、チオプロピオン酸Sepharose由来のゲルを得た。
【0115】
C)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、チオプロピオン酸262μl(アリル基に対し0.5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0116】
反応を70℃での攪拌下、10時間放置した。反応混合物の濾過と、蒸留水100mlでの洗浄で、チオプロピオン酸Sepharose由来のゲルを得た。
【0117】
D)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、チオプロピオン酸262μl(アリル基に対し0.5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0118】
反応を30℃での攪拌下、10時間放置した。反応混合物の濾過と、蒸留水100mlでの洗浄で、チオプロピオン酸Sepharose由来のゲルを得た。
【0119】
陰イオン交換媒体
典型的な操作では、三級アミンの固定化によって直接、陰イオン交換基をマトリックス上に導入したが、他の反応性求核基を含有するリガンドも、陰イオン交換基を与えるか、又はそれを生成できる限り、使用できる。
【0120】
固定化トリメチルアミンの勾配
アリル活性化Sepharose(商標)6FF(0.3mmolアリル/ml)100ml、AcONa4g及び蒸留水100mlの攪拌懸濁液に臭素を添加し、最終的に持続的な黄色を得た。次いでギ酸ナトリウムを添加して、最終的に懸濁液を完全に脱色した。
【0121】
反応混合物を濾過し、ゲルを蒸留水500mlで洗浄した。次いで、活性化ゲルを4個の別々の反応容器に直接移した。
【0122】
A)液切りした臭素化ゲル20mlを、プロペラ攪拌機を備えた100ml三口丸底フラスコ中に水8mlと共に導入した。水14.9g中NaOH14.9g及びNaBH4 0.01gから製造した、水酸化ナトリウムの50/50水溶液を滴下で加えた。次いで、塩化トリメチルアンモニウム0.4g(アリル基に対し0.7当量)の水溶液(2ml)を添加した。
【0123】
反応を50℃での攪拌下、5時間行った。
【0124】
ガラスフィルター漏斗上でゲルを水400mL、1M塩化ナトリウム80ml、さらに水400mLで洗浄することにより、反応を終了させた。
【0125】
B)液切りした臭素化ゲル20mlを、プロペラ攪拌機を備えた100ml三口丸底フラスコ中に水8mlと共に導入した。水14.9g中NaOH14.9g及びNaBH4 0.01gから製造した、水酸化ナトリウムの50/50水溶液を滴下で加えた。次いで、塩化トリメチルアンモニウム0.4g(アリル基に対し0.7当量)の水溶液(2ml)を添加した。
【0126】
反応を20℃での攪拌下、5時間行った。
【0127】
ガラスフィルター漏斗上でゲルを水400mL、1M塩化ナトリウム80ml、さらに水400mLで洗浄することにより、反応を終了させた。
【0128】
C)液切りした臭素化ゲル20mlを、プロペラ攪拌機を備えた100ml三口丸底フラスコ中に水8mlと共に導入した。水14.9g中NaOH14.9g及びNaBH4 0.01gから製造した、水酸化ナトリウムの50/50水溶液を滴下で加えた。次いで、塩化トリメチルアンモニウム0.286g(アリル基に対し0.5当量)の水溶液(2ml)を添加した。
【0129】
反応を50℃での攪拌下、5時間行った。
【0130】
ガラスフィルター漏斗上でゲルを水400mL、1M塩化ナトリウム80ml、さらに水400mLで洗浄することにより、反応を終了させた。
【0131】
D)液切りした臭素化ゲル20mlを、プロペラ攪拌機を備えた100ml三口丸底フラスコ中に水8mlと共に導入した。水14.9g中NaOH14.9g及びNaBH4 0.01gから製造した、水酸化ナトリウムの50/50水溶液を滴下で加えた。次いで、塩化トリメチルアンモニウム0.286g(アリル基に対し0.5当量)の水溶液(2ml)を添加した。
【0132】
反応を20℃での攪拌下、5時間行った。
【0133】
ガラスフィルター漏斗上でゲルを水400mL、1M塩化ナトリウム80ml、さらに水400mLで洗浄することにより、反応を終了させた。
【0134】
実施例6
イオン交換リガンドの正勾配
中性リガンドの減少勾配を先ず創製することにより、増加勾配を達成し、クロマトグラフィーに活性なリガンドによって、残存する活性基に対し、生成ゲルをさらに誘導体化した。
【0135】
陽イオン交換媒体
固定化した3−メルカプトプロピオン酸及び3−メルカプト−1,2−プロパンジオールの勾配
アリル活性化Sepharose(商標)6FF(0.3mmolアリル/ml)100ml、AcONa4g及び蒸留水100mlの攪拌懸濁液に臭素を添加し、最終的に持続的な黄色を得た。次いでギ酸ナトリウムを添加して、最終的に懸濁液を完全に脱色した。
【0136】
反応混合物を濾過し、ゲルを蒸留水500mlで洗浄した。次いで、活性化ゲルを4個の別々の反応容器に直接移した。
【0137】
A)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール251μl(アリル基に対し0.5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0138】
反応を50℃での攪拌下、1時間放置した。1時間後、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、チオプロピオン酸1.6ml(アリル基に対し3当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水5ml)で反応を処理した。次いで、反応を50℃で18時間放置した。
【0139】
反応混合物の濾過と、蒸留水100mlでの洗浄で、チオプロピオン酸Sepharose由来のゲルを得た。
【0140】
B)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール251μl(アリル基に対し0.5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0141】
反応を20℃での攪拌下、1時間放置した。1時間後、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、チオプロピオン酸1.6ml(アリル基に対し3当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水5ml)で反応を処理した。次いで、反応を50℃で18時間放置した。
【0142】
反応混合物の濾過と、蒸留水100mlでの洗浄で、チオプロピオン酸Sepharose由来のゲルを得た。
【0143】
C)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール151μl(アリル基に対し0.3当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0144】
反応を50℃での攪拌下、1時間放置した。1時間後、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、チオプロピオン酸1.6ml(アリル基に対し3当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水5ml)で反応を処理した。次いで、反応を50℃で18時間放置した。
【0145】
反応混合物の濾過と、蒸留水100mlでの洗浄で、チオプロピオン酸Sepharose由来のゲルを得た。
【0146】
D)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール151μl(アリル基に対し0.3当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0147】
反応を20℃での攪拌下、1時間放置した。1時間後、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、チオプロピオン酸1.6ml(アリル基に対し3当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水5ml)で反応を処理した。次いで、反応を50℃で18時間放置した。
【0148】
反応混合物の濾過と、蒸留水100mlでの洗浄で、チオプロピオン酸Sepharose由来のゲルを得た。
【0149】
陰イオン交換媒体
固定化したトリメチルアミン及び3−メルカプト−1,2−プロパンジオールの勾配
アリル活性化Sepharose(商標)6FF(0.3mmolアリル/ml)100ml、AcONa4g及び蒸留水100mlの攪拌懸濁液に臭素を添加し、最終的に持続的な黄色を得た。次いでギ酸ナトリウムを添加して、最終的に懸濁液を完全に脱色した。
【0150】
反応混合物を濾過し、ゲルを蒸留水500mlで洗浄した。次いで、活性化ゲルを4個の別々の反応容器に直接移した。
【0151】
A)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール251μl(アリル基に対し0.5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0152】
反応を50℃での攪拌下、1時間放置した。1時間後、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、塩化トリメチルアンモニウム2.86g(アリル基に対し5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水5ml)で反応を処理した。次いで、反応を50℃で18時間放置した。
【0153】
ガラスフィルター漏斗上でゲルを水400mL、1M塩化ナトリウム80ml、さらに水400mLで洗浄することにより、反応を終了させた。
【0154】
B)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール251μl(アリル基に対し0.5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0155】
反応を20℃での攪拌下、1時間放置した。1時間後、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、塩化トリメチルアンモニウム2.86g(アリル基に対し5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水5ml)で反応を処理した。次いで、反応を50℃で18時間放置した。
【0156】
ガラスフィルター漏斗上でゲルを水400mL、1M塩化ナトリウム80ml、さらに水400mLで洗浄することにより、反応を終了させた。
【0157】
C)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール151μl(アリル基に対し0.3当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0158】
反応を50℃での攪拌下、1時間放置した。1時間後、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、塩化トリメチルアンモニウム2.86g(アリル基に対し5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水5ml)で反応を処理した。次いで、反応を50℃で18時間放置した。
【0159】
ガラスフィルター漏斗上でゲルを水400mL、1M塩化ナトリウム80ml、さらに水400mLで洗浄することにより、反応を終了させた。
【0160】
D)活性化ゲル20mlを、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール151μl(アリル基に対し0.3当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水10ml)で処理した。
【0161】
反応を20℃での攪拌下、1時間放置した。1時間後、添加前に50%NaOH水溶液でpHを11.5に調節した、塩化トリメチルアンモニウム2.86g(アリル基に対し5当量)及びNaCl2.4gの水溶液(蒸留水5ml)で反応を処理した。次いで、反応を50℃で18時間放置した。ガラスフィルター漏斗上でゲルを水400mL、1M塩化ナトリウム80ml、さらに水400mLで洗浄することにより、反応を終了させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質担体の表面にリガンドが結合した分離マトリックスの製造方法であって、当該方法が、多孔質粒子を含む多孔質担体を準備し、該多孔質担体の表面にリガンドを結合させることを含んでいて、リガンドが担体中で1種以上のリガンド密度勾配をもたらし、リガンド密度勾配が各多孔質粒子の中心と外表面の間に存在しており、当該方法が、多孔質担体中への1種以上の試薬の溶媒制御拡散によって1種以上のリガンド密度勾配を得ることを改良点としており、上記溶媒制御拡散が、上記試薬を含む第一の溶媒を、第一の溶媒とは異なる溶解性を呈する第二の溶媒がその細孔内に存在する担体と接触させることによって得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
第一の溶媒が水性溶媒であり、第二の溶媒が有機溶媒である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一の溶媒が有機溶媒であり、第二の溶媒が水性溶媒である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
拡散速度を、温度、空気流、溶媒特性、並びに官能基の濃度及び/又は種類からなる群から選択される1種以上の条件を調節することによって制御する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
実質的に連続的な空気流を反応中の反応混合物に供給することによって前記試薬の拡散を補助する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
1種以上の官能基を含む試薬の多孔質担体への拡散制御された添加によって、担体の中心に向かって減少するリガンド密度勾配を得る、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
試薬、又は多孔質担体の表面に存在する基のいずれかを、反応前に活性化する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記担体が活性化基を呈する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
不活性化基を含む第一の試薬の多孔質担体への拡散制御添加によって担体の表面基の一部を制御下に不活性化した後、1以上の官能基を含む別の試薬を添加して、不活性化されていない表面基に上記1種以上の官能基を結合することによって、担体の中心に向かって増加するリガンド密度勾配を得る、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記試薬が、分離マトリックスに異なるリガンドを与える2種類の官能基を所定比で含んでいる、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
多孔質担体が実質的に球形の粒子を含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【公開番号】特開2012−37530(P2012−37530A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−220566(P2011−220566)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【分割の表示】特願2006−537940(P2006−537940)の分割
【原出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】