説明

新規組成物

【課題】リン酸アルミニウムと配合されたB型肝炎抗原を含有する新規ワクチン製剤を提供する。
【解決手段】本ワクチン製剤は、失活A型肝炎ウィルス、水酸化アルミニウム、及びホルモルをさらに含有することができる。併合A型肝炎及びB型肝炎ワクチン製剤は、所望により、2投薬養生法においてヒト患者に投与されることができる。好適な配合処方を説明する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
A型肝炎感染及びB型肝炎感染の診断用ワクチンは周知である。例えば、Smithkline Beecham BiologicalsからのワクチンEngerix−B(商標)がB型肝炎を予防するために使用されている。このワクチンは、B型肝炎表面抗原(特に、Harford et al. in Postgraduate Medical Journal, 1987, 63 (Suppl. 2), 65-70中に記載された226アミノ酸のS−抗原)を含み、そしてアジュバントとして水酸化アルミニウムを使用して配合されている。同じくSmithkline Beecham Biologicalsからの、ワクチンHavrix(商標)は、A型肝炎感染を予防するために使用されることができ、そしてまたアジュバントとしての水酸化アルミニウムと配合されている。このワクチンは、ホルモル(ホルムアルデヒド)で失活されたHM−175 A型肝炎ウィルスの減弱ウィルスを含む;Andre et al〔Prog Med. Virol. 1990, vol. 37 ; p 72-95 〕を参照のこと。上記A型肝炎抗原とB型肝炎抗原の組合せであるワクチンTwinrix(商標)は、A型肝炎とB型肝炎に対して同時に保護するために使用されることができる。
【0002】
ヨーロッパ特許第0 339 667号(Chemo Sero)は、併合ワクチンを作るためにA型肝炎抗原とB型肝炎抗原を併合するという一般的概念について記載している。その明細書中には、使用されるアジュバントは決定的なものでなく:それは、その免疫活性を所望の程度まで高めることができ、そしていずれの副作用も引き起こさないということのみが必要とされるということが述べられている。アルミニウム・ゲル、特に水酸化アルミニウム・ゲルとリン酸アルミニウム・ゲルが使用されることができるということが述べられている。
【0003】
PCT出願WO93/24148(Smithkline Beecham)は、リン酸アルミニウムがアジュバントとして使用されているところの、B型肝炎表面抗原を含むワクチンの調製について記載している。場合によりA型肝炎抗原を含有することができる多価併合ワクチンが記載されている。ホルモルの使用は開示されていない。
【0004】
ヨーロッパ特許第0 633 784号(Smithkline Beecham)は、リン酸アルミニウム及び3デ−O−アシル化モノホスホリル・リピドAと併合されて、B型肝炎成分、特にB型肝炎表面抗原を含む新規ワクチン製剤について記載している。
【発明の概要】
【0005】
今般、驚ろくべきことに、そのワクチンが特別のやり方で配合されるとき、B型肝炎抗原及び/又はA型肝炎抗原を含むワクチンが例外的に良好な結果を与えるということが発見された。
【0006】
本願発明に係るワクチン製剤を使用することにより、3投薬よりもむしろ2投薬の養生法において、ワクチンを投与することができる。
本願発明の第1の態様においては、アジュバントとしてリン酸アルミニウムと配合されたB型肝炎表面抗原を含む水性ワクチン製剤であって、そのリン酸アルミニウムの濃度が、B型肝炎表面抗原1μg当り0.015〜0.1mgのリン酸アルミニウムの比が存在するように、選択されている、前記ワクチン製剤が提供される。
【0007】
好ましくは、前記比は、HBsAg 1μg当り、0.02〜0.08mgのリン酸アルミニウムの範囲内にある。
本願発明のさらなる側面においては、失活A型肝炎ウィルス(HAV)が、場合により、本願発明に係る配合物に添加されることができ、2投薬スケジュールにおいて投与されることができる併合A型肝炎プラスB型肝炎ワクチンが提供される。
【0008】
A型肝炎抗原は、好ましくは、商業的製品Havrix(Smithkline Beecham Biologicals)中で使用されるHM−175株である。
本願発明に係るワクチン製剤中のA型肝炎抗原の濃度は、好ましくは、約720〜2,880EU単位/mlである。EU単位の定義については、Andre et al (1990)上記引用文中、を参照のこと。
【0009】
HAVを含む本願発明に係る組成物は、水酸化アルミニウムをさらに含み、ここで、水酸化アルミニウムの合計量は一般に0.05〜0.10mg/mlである。 0.5又1ml投与量当りのアルミニウム塩の合計量は、通常、0.4〜1.0mgの範囲内にある。
本願発明に係るワクチン製剤においては、そのホルモル濃度が10〜200μg/mlであるように、ホルモル(ホルムアルデヒド)を添加することが有利である。
【0010】
好ましくは、前記ホルモル濃度は約20〜160μg/mlである。
通常、B型肝炎抗原はB型肝炎表面抗原(HBsAg)であろう。B型肝炎表面抗原(HBsAg)の調製は、よく文書化されている。例えば、Harford et al in Develop. Biol. Standard, 54, page 125 (1983), Gregg et al in Biotechnology, 5, page 479 (1987), EP−A−0 226 846,EP−A−0 299 108、及びそれらの中の引用文献を参照のこと。
【0011】
本願明細書中に使用するとき、“B型肝炎表面抗原”又は“HBsAg”は、HBV表面抗原の抗原性を示すいずれかのHBsAg抗原又はその断片を含む。HBsAg S抗原の226アミノ酸配列(例えば、Tiollais et al, Nature, 317, 489 (1985)及びその中の引用文献を参照のこと)に加えて、本明細書中に記載するHBsAgは、所望により、上記文献及びEP−A−0 278 940中に記載されているようなプレ−S配列の全部又は一部を含むことが理解されるであろう。本明細書中に記載するときHBsAgは、変異体(variants)、例えば、WO91/14703中に記載される“エスケープ突然変異体(escape mutant)”をいうこともできる。さらなる局面においては、HBsAgは、ヨーロッパ特許出願第0 414 374号中にSL として記載されたタンパク質、すなわち、そのアミノ酸配列が、B型肝炎ウィルスのラージ(L)タンパク質(ad又はayサブタイプ)のアミノ酸配列の一部から成るタンパク質であって、そのタンパク質のアミノ酸配列が、以下の:
(a)上記Lタンパク質の、残基12〜52、それに続く残基133〜145、それに続く残基175〜400;又は
(b)上記Lタンパク質の、残基12、それに続く残基14〜52、それに続く残基133〜145、それに続く残基175〜400、
のいずれかから成ることを特徴とする、前記タンパク質を含む。
【0012】
HBsAgは、EP 0 198 474又はEP 0 304 578中に記載されているポリペプチドを指すこともできる。
通常、上記HBsAgは粒子形態であろう。それは、Sタンパク質を単独で含むこともできるし、又は複合粒子、例えば、(L ,S){ここで、L は先に定義した通りであり、そしてSはB型肝炎表面抗原のS−タンパク質を表す。}として存在することもできる。
【0013】
好ましくは、前記HBsAgは、WO93/24148中に記載されているようにリン酸アルミニウム上に吸着されるであろう。
好ましくは、前記B型肝炎抗原は、商業的製品Engerix−B(Smithkline Beecham Biologicals)中で使用されているようなHBsAg S−抗原である。
【0014】
本願発明に係るワクチン製剤は、免疫保護量の抗原を含有するであろうし、そして慣用技術により調製されることができる。ワクチンの調製は、一般に、New Trends and Developments in Vaccines, edited by Voller et al., University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A. 1978 中に記載されている。リポソーム内への封入(encapsulation)は、例えば、Fullerton, U.S. Patent 4,235,877により記載されている。巨大分子へのタンパク質の抱合は、例えば、Likhite, U.S. Patent 4,372,945及びArmor et al., U.S. Patent 4,474,757 により、開示されている。
【0015】
本願発明に係るワクチン製剤は、好ましくは、0,6ヶ月スケジュールにおいて、すなわち、0ヶ月目に第1投薬、そして6ヶ月目に第2投薬において、投与される。
本願発明に係るワクチン製剤は、一般に、成人に適しており、そしてまた、青年及び子供への投与にも適している。
【実施例】
【0016】
以下の実施例は説明のためのものであり、本願発明を限定するものではない。
実施例
実施例1:特定の配合
本願発明の範囲内の特定の配合は、以下のものを含む:
a)0.5mlの投与量中、以下の:
40μgのHBsAg
1440EUのHAV
0.85mgのアルミニウム塩(0.8mgのリン酸アルミニウム+0.05mgの 水酸化アルミニウム)
20μgのホルモル
を含む、成人への投与のためのワクチン製剤。
【0017】
b)1.0mlの投与量中、以下の:
40μg HBsAg
1440EUのHAV
0.85mgのアルミニウム塩(0.8mgのリン酸アルミニウム+0.05mgの 水酸化アルミニウム)
20μgのホルモル
を含む、成人への投与のためのワクチン製剤。
【0018】
c)1mlの投与量中、以下の:
20μgのHBsAg
720EUのHAV
0.45mgのアルミニウム塩(0.4mgのリン酸アルミニウム+0.05mgの 水酸化アルミニウム)
80μgのホルモル
を含む、青年及び/又は子供(adolescents and/or children)への投与のためのワクチン製剤。
【0019】
d)0.5mlの投与量中、以下の:
20μgのHBsAg
720EUのHAV
0.45mgのアルミニウム塩(0.4mgのリン酸アルミニウム+0.05mgの 水酸化アルミニウム)
80μgのホルモル
を含む、青年及び/又は子供への投与のためのワクチン製剤。
【0020】
実施例2:試験“HAB 054”
2.1 1群の47人の健康成人を、以下の:
1440EUのHAV抗原
40μgのHBsAg(S−抗原)
0.8mgのAlPO
0.05mgの水酸化アルミニウム
20μg/mlのホルモル
を含有するワクチン製剤(1ml容積)でワクチン接種した。
【0021】
これを、以下の表中、“1440/NF40”と略す。
2.2 1群の47人の健康成人を以下のようにワクチン接種した:
a)片腕中に、1ml投与量中、0.8mgのAlPO 、20μg/mlのホルモルと配合された40μgのHBsAgを含有するワクチン製剤(以下、この製剤を“NF40”と略す)を;そして
b)他方の腕中に、1ml投与量中、0.5mgの水酸化アルミニウム上の1440EU HAV抗原を含有し、そして20μg/mlホルモルを含有する、HAVRIX 1440を、接種した。
【0022】
HAB 054のための免疫化スケジュールは、0,6(すなわち、0ヶ月目と6ヶ月目に投薬を行う)であった。
2,6、及び7ヶ月目におけるB型肝炎の血清学的結果(抗体陽転(seroconversion (SC))、血清保護(seroprotection (SP))、及び幾何平均力価(geometric mean titre (GMT)))は、同一年齢群のボランティアが含まれるところの他の試験(HBV NF021)において得られた病歴結果に比較して予想外に高いものであった。
【0023】
試験HBV NF021(表1参照)は、以下の3群を含んでいた:
群1:ホルモルを含有しない0.5ml容量中、0.5μg AlPO 上40μgのHBsAgを含有する製剤による、スケジュール0,6月におけるワクチン接種(これを、表中、NF40μg、0,6Mと略す)。
群2:ホルモルを含有しない、0.5ml容量中、0.5μg AlPO 上20μgのHBsAgを含有する製剤による、スケジュール0,6月におけるワクチン接種(これを、表中、NF20μg、0,6Mと略す)。
【0024】
群3:0,1,6月の古典的3投薬免疫化スケジュールを使用するEngerix B製剤(20μg)によるワクチン接種(表1中の第3の行)。
結果
1)試験HBV NF021において、群1と群2における7ヶ月目におけるB型肝炎血清学的結果は、群3に比較して満足できるものではなかった(より低い、SC,SP、そしてGMP±Engerix−Bの3投薬後に得られたレベル(1500)の1/3(500〜600))。
【0025】
2)試験HAB 054において、2投薬のワクチン後に得られた力価は、Engerix−Bの3投薬後に得られるであろうものと同一オーダーの大きさをもっていた。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
【表6】

【0032】
実施例3:試験“HAB 063,HAB 071、及びHAB 075”11〜18歳の青年におけるHAB2投薬プログラム
3.1 試験HAB 063
ワクチン製剤は、0.5ml投与量中、以下の:
720 HAV EU/20μg HBsAg
0.25mg Al塩
40μg ホルモル
を含有する。
【0033】
結果を表7に示す
【0034】
【表7】

【0035】
3.2 試験HAB 071
2群を本試験において使用した。
ワクチン製剤 群1:
720 HAV EU/20μg HBsAg
0.425mg Al塩
40μg ホルモル
0.5ml投与量中、そして第0,6月のスケジュールにおけるもの。
【0036】
ワクチン製剤 群2(Twinrix(商標)Junior):
360 HAV EU/10μg HBsAg
0.225mg Al塩
40μg ホルモル
0.5ml投与量中、そして第0,1,6月のスケジュールにおけるもの。
【0037】
【表8】

【0038】
3.3 試験HAB 075
2群を本試験において使用した。
ワクチン製剤 1群(Twinrix(商標)):
720 HAV EU/20μg HBsAg
0.45mg Al塩
80μg ホルモル
1ml投与量中、そして第0,6月のスケジュールにおけるもの。
【0039】
N=67
ワクチン製剤 2群:
1440 HAV EU/40μg HBsAg
0.85mg Al塩
80μg ホルモル
1ml投与量中、そして第0,6月のスケジュールにおけるもの。
【0040】
N=55
【0041】
【表9】

【0042】
実施例4:試験“HAB 084”
12〜15歳の青年におけるHAB2投薬プログラム2群を本試験において使用した。
ワクチン製剤 1群(Twinrix(商標)):
720 HAV EU/20μg HBsAg
0.45mg Al塩
80μgのホルモル
1ml投与量中、そして第0,6月のスケジュールにおけるもの。
【0043】
ワクチン製剤 2群(Twinrix(商標)Junior):
360 HAV EU/10μg HBsAg
0.225mg Al塩
40μg ホルモル
0.5ml投与量中、そして第0,1,6月のスケジュールにおけるもの。
【0044】
【表10】

【0045】
実施例5:試験“HAB 076”
1〜11歳の子供におけるHAB2投薬プログラム
ワクチン製剤は以下の:
720 HAV EU/20μg HBsAg
0.45mg Al塩
80μg ホルモル
を含有する。
【0046】
1ml投与量中、第0,1月のスケジュールにおけるもの。
結果を表11に示す。
【0047】
【表11】

【0048】
まとめ
上記実施例中に示す臨床結果は、満足いく免疫応答が、子供、青年、及び成人において、全スケジュール後、すなわち、第7月までに、A型肝炎とB型肝炎の両者について、得られるということを、はっきりと示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2投与スケジュールで青年又は子供に投与されるための免疫保護性A型プラスB型肝炎製剤の製造のための、B型肝炎表面抗原;失活A型肝炎ウィルス(HAV);及びホルモルを含み、かつ、B型肝炎表面抗原1μg当り0.015〜0.1mgのリン酸アルミニウム、及び1ml当り0.05〜0.10mgの水酸化アルミニウムがその中に存在する水性ワクチン組成物の使用。
【請求項2】
前記ホルモル濃度が10〜200μg/mlである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
HAVの濃度が720〜2,880EU/mlである、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
1mlの投与量中、以下の:
20μgのHBsAg;
720EUのHAV;
0.4mgのリン酸アルミニウム、及び0.05mgの水酸化アルミニウムからなる0.45mgのアルミニウム塩;及び
80μgのホルモル;
を含むか又はから成る、青年及び/又は子供への投与のための、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
0.5mlの投与量中、以下の:
20μgのHBsAg;
720EUのHAV;
0.4mgのリン酸アルミニウム、及び0.05mgの水酸化アルミニウムからなる0.45mgのアルミニウム塩;及び
80μgのホルモル;
を含むか又はから成る、青年及び/又は子供への投与のための、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記B型肝炎表面抗原がS−抗原である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記A型肝炎抗原がHM−175株に由来する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記2投与が0ヶ月目と6ヶ月目に行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。

【公開番号】特開2010−209118(P2010−209118A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148061(P2010−148061)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【分割の表示】特願2000−546796(P2000−546796)の分割
【原出願日】平成11年4月27日(1999.4.27)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】