説明

施工誤差を求める方法

【課題】施工現場等において実際の面と設計面との間の施工誤差を求める。
【解決手段】設計データで規定された設計面2Vと、設計データに基づいて形成される実際の面2Rとの間の設計面2Vの法線方向の施工誤差Eを、三次元位置座標を計測可能な測量計10を用いることにより求める。測量計10から計測用光を投光し、実際の面2Rからの反射光を受光することで、当たる位置の計測位置Pkの位置座標を、設計面2V内の平面位置を規定する平面位置座標と、設計面2Vの法線方向の位置を規定する法線位置座標とで示す。計測位置Pkの平面位置座標と一致する設計面2V上の位置の位置座標を、設計データから取得する設計面位置座標取得ステップと、計測位置Pkの法線位置座標と、設計面位置座標取得ステップで取得した設計面2V上の位置の法線位置座標とに基づいて、施工誤差Eを算出する施工誤差算出ステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工現場等においてトータルステーション等の測量計を用いて施工誤差を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、施工現場では、トータルステーションによって任意位置の三次元座標の計測が行われている(例えば、特許文献1)。
この計測の際には、先ず計測準備として、トータルステーションを施工現場に据え置くとともに、位置座標が既知の二つの基準位置にプリズムや反射板等の反射部材を置く。そして、反射部材に向けて計測用光を投光し、その反射光の位相差に基づいて各基準位置までの距離を測るとともに、計測用光の投光方向の水平角度や鉛直角度を測る。
そうしたら、位置座標を計測すべき対象位置たる計測位置に、上記の反射部材を置き、トータルステーションから反射部材へ向けて計測用光を投じ、その反射光の位相差に基づいて計測位置までの距離を測るとともに、計測用光の投光方向の水平角度や鉛直角度を測る。そして、これら距離や水平・鉛直角度、上述の基準位置の距離や水平・鉛直角度、及び基準位置の位置座標(既知)などに基づいて幾何学的計算を行うことにより、計測位置の三次元座標を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−325884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、反射部材を用いないトータルステーションも使用されている。すなわち、このトータルステーションでは、計測位置に向けて計測用光を投光し、計測位置からの反射光を受光して光の往復時間を計測することで距離を求め、これに前述の水平・鉛直角度などのデータを加味することで、計測位置の三次元座標を求めるようになっている。
【0005】
ところで、施工現場に形成される構造物の施工誤差が、トータルテンションによってその場で即座に計測できれば、計測された施工誤差に基づいて直ちに手直しをすることができて便利である。例えば、コンクリート打設により形成された実際の床面が、設計図等の設計データに規定された設計床面よりも高い場合には、その施工中又は施工直後に施工誤差分だけ鏝等で実際の床面をはつれば良く、逆に、低い場合には、更にコンクリートを盛れば良く、これにより、施工精度の高い床面を短工期で形成できて便利である。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、施工現場等において実際の面と設計面との間の施工誤差を求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
三次元位置座標を計測可能な測量計を用いることにより、
設計データで規定された設計面と、前記設計データに基づいて形成される実際の面との間の前記設計面の法線方向の施工誤差を求める方法であって、
前記測量計は、任意の着目位置に向けて計測用光を投光し、前記実際の面上において前記計測用光が当たる位置からの反射光を受光することで、前記当たる位置を計測位置としてその位置座標を出力するともに、出力された前記計測位置の位置座標を、前記設計面内の平面位置を規定する平面位置座標と、前記設計面の法線方向の位置を規定する法線位置座標とで示す機能を有し、
前記計測位置の平面位置座標と一致する前記設計面上の位置の位置座標を、前記設計データから取得する設計面位置座標取得ステップと、
前記計測位置の法線位置座標と、前記設計面位置座標取得ステップで取得した前記設計面上の位置の法線位置座標とに基づいて、前記施工誤差を算出する施工誤差算出ステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
上記請求項1に示す発明によれば、実際の面上の計測位置の位置座標を計測し、当該計測位置の平面位置座標と一致する設計面上の位置の位置座標を、設計データから取得し、そして、計測位置の法線位置座標と、上記設計面上の位置の法線位置座標とに基づいて、施工誤差を算出する。ここで、計測位置は、上述の如く、実際の面上の位置である。よって、実際の面と設計面との間の法線方向の施工誤差を求めることができる。
【0009】
また、実際の面に対して非接触で施工誤差を計測することができる。よって、実際の面の施工中に、同時並行作業で施工誤差の計測を行うことができて、これにより工期短縮を図れる。
【0010】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の施工誤差を求める方法であって、
前記施工誤差算出ステップでは、前記計測位置の法線位置座標から前記設計面上の位置の法線位置座標を減算することにより、前記施工誤差を求めることを特徴とする。
上記請求項2に示す発明によれば、実際の面と設計面との間の法線方向の施工誤差を確実に求めることができる。
【0011】
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の施工誤差を求める方法であって、
前記計測用光は、可視光であることを特徴とする。
上記請求項3に示す発明によれば、求められた施工誤差を有する位置が、計測用光のスポットにより実際の面上に視認可能に指し示される。よって、知り得た施工誤差に基づいてその場で手直しを行うことができて、利便性に優れる。
【0012】
請求項4に示す発明は、請求項3に記載の施工誤差を求める方法であって、
前記施工誤差算出ステップよりも少なくとも後の時点において、前記計測用光を投光することを特徴とする。
上記請求項4に示す発明によれば、施工誤差算出ステップよりも少なくとも後の時点において、計測用光を投光するので、実際の面の手直しの際に、手直しすべき位置を計測用光のスポットで指し示すことができて、手直し作業の精度向上を図れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工現場等において実際の面と設計面との間の施工誤差を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実床面2Rの施工誤差Eを求めるべく施工現場に設置されたトータルステーション10の概略側面図である。
【図2】施工誤差算出機能に係る施工誤差Eの算出手順のフローチャートである。
【図3】実壁面4Rの施工誤差Eを求めるべく施工現場に設置されたトータルステーション10の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
===本実施形態===
図1は、施工現場に設置された測量計としてのトータルステーション10の概略側面図である。
このトータルステーション10は、施工現場にて施工誤差Eを求める目的で設置されている。施工誤差Eを求める対象は、例えばコンクリート打設で施工現場に形成される床面2Rである。すなわち、設計図等の設計データ上では、床面2Vは例えば全面に亘って水平面をなす床面2V(請求項の「設計面」に相当)として規定されている。しかし、実際の床面2Rたる実床面2Rは、施工誤差Eに起因して不陸等を有し、つまり設計データ上の床面2Vたる設計床面2V通りには形成されていないことが多い。
【0016】
そこで、本実施形態では、施工中に施工誤差Eを計測し、しかも、この計測結果たる施工誤差Eを逐次的に施工に反映させるようにしている。例えば、以下の例では、コンクリート打設後に床面2Rを左官職等が鏝均しをしている最中、又はその直後に施工誤差Eを計測し、施工誤差Eが無くなるようにその場で直ちに手直しをする。そして、これにより、施工精度を向上させると同時に工期短縮も図っている。以下、詳説する。
【0017】
<<<トータルステーション10について>>>
トータルステーション10は、任意位置の三次元座標を計測する計測機能と、携帯端末50と協働することで施工誤差Eを算出する施工誤差算出機能と、を有する。
【0018】
前者の計測機能に係る任意位置の三次元座標の計測は、次のようにして行われる。先ず、図1に示すように、トータルステーション10に対して、仮の計測位置として着目位置Pm(Xm,Ym,Zm)が入力される。そうしたら、トータルステーション10は、着目位置Pmに向けて計測用光としてレーザー光を投光するとともに、計測用光が当たった位置を計測位置Pkとして同位置Pkから反射光を受光する。そして、この計測用光の往復時間に基づいてトータルステーション10から計測位置Pkまでの距離を算出し、またこれと同時並行で、計測用光の投光方向の水平角度や鉛直角度を計測する。
【0019】
そうしたら、計測された距離、水平角度、及び鉛直角度のデータと、予め取得済みの基準位置(不図示)のデータ(トータルステーション10から基準位置までの距離、基準位置への投光方向の水平角度と鉛直角度、基準位置の位置座標(既知の三次元座標))とに基づいて幾何学的計算を行うことにより、トータルステーション10は、計測位置Pkの三次元座標(Xk,Yk,Zk)を算出する。
【0020】
なお、基準位置のデータの取得方法は、背景技術のところで説明した内容と概ね同じであるので、ここでは相違点についてのみ述べると、プリズム等の反射部材を用いずに、基準位置に位置する適宜な部材から反射光を直接受光する点、及び、距離の算出を、計測用光の位相差に基づかずに、計測用光の往復時間に基づいて行う点で相違する。
【0021】
一方、後者の施工誤差算出機能は、実床面2Rの設計床面2Vに対するZ方向の施工誤差Eを、トータルステーション10が実床面2Rから離れた非接触状態で求める機能である。よって、実床面2Rの施工工事と同時並行で施工誤差Eを計測できて、この計測された施工誤差Eを施工工事に即座に反映させることができる。この機能については後述する。
【0022】
かかる機能を奏するトータルステーション10は、例えば、計測用光を投光する不図示の投光部、計測用光の反射光を受光する不図示の受光部、計測用光の投光方向の水平角度や鉛直角度を測る測定部、及びこれら各部の動作を制御しつつ、種々の演算を行う不図示のコンピュータと、を有している。そして、コンピュータは、CPUとメモリとを有し、メモリに予め格納されたプログラムを読み出してCPUが実行することにより、上述のような計測機能や施工誤差算出機能が実現される。なお、施工誤差算出機能については、後述の携帯端末50と協働して実現される。
【0023】
一方、トータルステーション10には、図1に示すように、外部機器50としての携帯端末50が通信可能に接続されている。この携帯端末50は、例えば、タブレットPC、PDA、スマートフォン、携帯電話などであり、総じて言えば、CPUとメモリとを有したコンピュータである。そして、メモリには、施工現場に構築すべき構造体の3Dモデルが予め記録・格納されており、構造体の各部位には、それぞれ3次元の位置座標が対応付けられている。すなわち、前述の設計床面2Vもこの構造体の3Dモデルの一部であり、よって、この設計床面2Vにも位置座標が対応付けられて上記メモリに格納されている。
【0024】
ここで、位置座標は、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)からなる三次元直交座標系で表されている。そして、XY座標で、設計床面2V内の任意の平面位置(二次元位置)を規定する一方、Z座標で、設計床面2Vの法線方向の任意の位置を規定するようになっている。すなわち、前者のXY座標(X,Y)が、請求項の「平面位置座標」に相当し、後者のZ座標(Z)が、請求項の「法線位置座標」に相当する。
【0025】
また、上記メモリには、上述の施工誤差算出機能を行うためのプログラムが予め格納されており、このプログラムを上記CPUがメモリから読み出して実行することにより、トータルステーション10と協働する形で、施工誤差算出機能が実現される。
【0026】
<<<施工誤差算出機能について>>>
図2は、同機能に係る施工誤差Eの算出手順のフローチャートである。
先ず、準備ステップS10として、図1に示すように、トータルステーション10を施工現場の適宜な設置位置Psに設置する。例えば、施工中の実床面2Rの略全面が見渡せる位置Psであって、且つ実床面2Rよりも鉛直方向に所定高さだけ高い位置Psなどに、トータルステーション10を設置する。
【0027】
次に、同準備ステップS10として、トータルステーション10は、位置座標が既知の二つの基準位置(不図示)に向けて計測用光を投光し、各基準位置からの反射光を受光する。これにより、前述したようにトータルステーション10と各基準位置との距離、及び各投光方向の水平角度や鉛直角度を計測し、これらのデータを取得する。そして、以降、当該基準位置のデータを用いることにより、トータルステーション10はその周囲の任意位置の三次元座標を、XYZの直交座標系で計測可能な状態になる。つまり、計測機能を使用可能な状態になる。
【0028】
そうしたら、現場作業者は、施工中の実床面2R上に計測用光が当たるように、携帯端末50の3Dモデル上で仮の計測位置として着目位置Pmを設定する(着目位置設定ステップS15)。すると、この着目位置Pmの位置座標(Xm,Ym,Zm)のデータは、携帯端末50からトータルステーション10へと送信される。なお、この着目位置Pmの設定は、携帯端末50からではなく、トータルステーション10が備える適宜な操作スイッチ(不図示)から行っても良い。
【0029】
次に、着目位置Pmの位置座標(Xm,Ym,Zm)のデータを受信したトータルステーション10は、施工現場における着目位置Pmに向けて計測用光を投光する。そして、前述の計測機能を用いることにより、この計測用光が実床面2Rにおいて当たった位置を計測位置Pkとして、トータルステーション10は同位置Pkの位置座標(Xk,Yk,Zk)を算出する(計測位置算出ステップS20)。
【0030】
そうしたら、トータルステーション10と携帯端末50とは互いに協働して、位置座標(Xk,Yk,Zk)が算出された計測位置PkのXY座標(Xk,Yk)と一致する設計床面2V上の位置の位置座標を、3Dモデルの設計データから取得する。つまり、トータルステーション10は、携帯端末50へ計測位置PkのXY座標(Xk,Yk)を送信し、これを受信した携帯端末50は、自身のメモリ内の3Dモデルの設計床面2Vに係るデータを検索して、このXY座標(Xk,Yk)とXY座標が一致する位置Paの三次元座標(Xa,Ya,Za)、つまり三次元座標(Xk,Yk,Za)を設計床面2Vのデータから取得する(設計面位置座標取得ステップS30)。なお、この位置Paが、請求項の「計測位置の平面位置座標と一致する前記設計面上の位置」に相当する。
【0031】
そして、この取得した設計床面2V上の位置Paの三次元座標(Xk,Yk,Za)のうちのZ座標(Za)と、計測位置Pk(Xk,Yk,Zk)のZ座標(Zk)とに基づいて、携帯端末50は、施工誤差Eを算出する(施工誤差算出ステップS35)。すなわち、計測位置PkのZ座標(Zk)から設計床面2V上の位置PaのZ座標(Za)を減算することにより、設計床面2Vに対する実床面2Rの施工誤差E(=Zk−Za)を求める。
【0032】
なお、この施工誤差算出ステップS40の演算(Zk−Za)は、携帯端末50の方で行わずに、トータルステーション10の方で行っても良い。但し、その場合には、この演算に先だって、設計面位置座標取得ステップS30で携帯端末50が取得した位置Paの位置座標(Xk,Yk,Za)を携帯端末50からトータルステーション10へ送信するのは言うまでもない。
【0033】
そうしたら、この施工誤差Eを、計測位置Pkの位置座標と対応付けて、携帯端末50のメモリに記録するとともに、これと同時並行又は前後して、施工誤差Eを携帯端末50のモニターに表示するか、若しくは、この施工誤差Eをトータルステーション10に送信してトータルステーション10のメモリに記録するとともに、これと同時並行又は前後して、施工誤差Eをトータルステーション10のモニターに表示する。これにより、現場作業者は、実床面2Rの施工誤差Eを知ることができる。
【0034】
そして、現場作業者は、この施工誤差Eの値に従って施工中の実床面2Rを手直しする。例えば、施工誤差Eが正値の場合には、計測位置Pkは、設計床面2Vよりも鉛直方向に高いので、この値Eの分だけ実床面2Rの表面をはつるなどして均してその高さを低くする。一方、負値の場合には、計測位置Pkは、設計床面2Vよりも鉛直方向に低いので、この値Eの分だけ更に流動下のコンクリートを盛るなどしてその高さを高くする。
【0035】
また、ここで望ましくは、この手直し作業行う時点、つまり少なくとも上述の「施工誤差算出ステップS35」よりも後の時点においても、計測用光を実床面2Rに向けて投光し続けていると良く、更には計測用光が赤色可視光であると良い。そのようになっていれば、施工誤差Eを有する実床面2R上の位置を、計測用光のスポットで現場作業者は視認することができて、これにより、手直し精度の向上を図ることができる。
【0036】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0037】
上述の実施形態では、計測用光として可視レーザー光を用いるのが望ましい旨を前述したが、何等これに限るものではない。場合によっては、計測用光に不可視のレーザー光を用いても良い。但し、その場合には、算出された施工誤差Eを有する位置を、実床面2R上にスポットとして指し示すことができないので、上述のような可視レーザー光を用いる方が望ましい。
【0038】
上述の実施形態では、実床面2Rの施工誤差Eを求めていたが、何等これに限るものではない。例えば、図3の概略側面図に示すように、構造体の3Dモデルの鉛直な設計壁面4Vに基づき施工現場に形成される実際の壁面4R(以下、実壁面4Rと言う)について施工誤差Eを求めても良い。そして、その場合には、上述の実施形態の説明において、「床面」を「壁面」に置き換え、XY座標となっていた平面位置座標を、設計壁面4Vを規定するYZ座標に置き換え、更に、Z座標となっていた法線位置座標を、設計壁面4Vの法線方向となるX座標に置き換えて考えれば良い。詳しくは、次の通りである。
先ず、施工中又は施工直後の実壁面4R上に計測用光が当たるように、携帯端末50の3Dモデル上において、仮の計測位置として着目位置Pmを指定する。すると、トータルステーション10は、施工現場における着目位置Pmに向けて計測用光を投光し、この計測用光が実壁面4Rにおいて当たった位置を計測位置Pkとして、トータルステーション10は同位置Pkの位置座標(Xk,Yk,Zk)を算出する。
【0039】
そうしたら、トータルステーション10と携帯端末50とは互いに協働して、位置座標(Xk,Yk,Zk)が算出された計測位置PkのYZ座標(Yk,Zk)と一致する設計壁面4V上の位置の位置座標を、3Dモデルの設計データから取得する。つまり、トータルステーション10は、携帯端末50へ計測位置PkのYZ座標(Yk,Zk)を送信し、これを受信した携帯端末50は、自身のメモリ内の3Dモデルの設計壁面4Vに係るデータを検索して、このYZ座標(Yk,Zk)とYZ座標が一致する位置Paの三次元座標(Xa,Ya,Za)、つまり三次元座標(Xa,Yk,Zk)を設計壁面4Vのデータから取得する(設計面位置座標取得ステップ)。
【0040】
そして、この取得した設計壁面4V上の位置Paの三次元座標(Xa,Yk,Zk)のうちのX座標(Xa)と、計測位置Pk(Xk,Yk,Zk)のX座標(Xk)とに基づいて、携帯端末50は、実壁面4Rの施工誤差Eを算出する(施工誤差算出ステップ)。すなわち、計測位置PkのX座標(Xk)から設計壁面4V上の位置PaのX座標(Xa)を減算することにより、設計壁面4Vに対する実壁面4Rの施工誤差E(=Xk−Xa)を求める。そして、これを適宜なモニターに表示する。
【0041】
上述の実施形態では、位置座標が既知の二つの基準位置をトータルステーション10で予め計測し、この基準位置との相対位置関係に基づいて周囲の任意位置の三次元座標を計測可能としていたが、何等これに限るものではない。例えば、トータルステーション10がGPS機能を有し、このGPS機能に基づいて自身10の位置座標を取得し、この自身10の位置座標と、計測用光により計測される計測位置Pkまでの距離と、計測用光の投光方向の水平角度や鉛直角度とに基づいて、計測位置Pkの三次元座標を算出しても良い。
【0042】
上述の実施形態では、携帯端末50に格納された3Dモデル上で着目位置Pmの指定を行うことにより、トータルステーション10に、施工誤差計測の起点となる着目位置Pmの入力を実行していたが、着目位置Pmの入力は、何等これに限るものではない。例えば、トータルステーション10が一体に備える適宜な入力画面から、着目位置Pmの三次元座標(Xm,Ym,Zm)を直接入力しても良いし、それ以外の方法で入力しても良い。
【符号の説明】
【0043】
2R 実床面(実際の面)、2V 設計床面(設計面)、
4R 実壁面(実際の面)、4V 設計壁面(設計面)、
10 トータルステーション(測量計)、
50 携帯端末、
Pa 位置(計測位置の平面位置座標と一致する前記設計面上の位置)、
Pk 計測位置、Pm 着目位置、Ps 設置位置、
E 施工誤差、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元位置座標を計測可能な測量計を用いることにより、
設計データで規定された設計面と、前記設計データに基づいて形成される実際の面との間の前記設計面の法線方向の施工誤差を求める方法であって、
前記測量計は、任意の着目位置に向けて計測用光を投光し、前記実際の面上において前記計測用光が当たる位置からの反射光を受光することで、前記当たる位置を計測位置としてその位置座標を出力するともに、出力された前記計測位置の位置座標を、前記設計面内の平面位置を規定する平面位置座標と、前記設計面の法線方向の位置を規定する法線位置座標とで示す機能を有し、
前記計測位置の平面位置座標と一致する前記設計面上の位置の位置座標を、前記設計データから取得する設計面位置座標取得ステップと、
前記計測位置の法線位置座標と、前記設計面位置座標取得ステップで取得した前記設計面上の位置の法線位置座標とに基づいて、前記施工誤差を算出する施工誤差算出ステップと、を有することを特徴とする施工誤差を求める方法。
【請求項2】
請求項1に記載の施工誤差を求める方法であって、
前記施工誤差算出ステップでは、前記計測位置の法線位置座標から前記設計面上の位置の法線位置座標を減算することにより、前記施工誤差を求めることを特徴とする施工誤差を求める方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の施工誤差を求める方法であって、
前記計測用光は、可視光であることを特徴とする施工誤差を求める方法。
【請求項4】
請求項3に記載の施工誤差を求める方法であって、
前記施工誤差算出ステップよりも少なくとも後の時点において、前記計測用光を投光することを特徴とする施工誤差を求める方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−32984(P2013−32984A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169451(P2011−169451)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)