説明

旋削工具支持装置及びタービンロータ加工用旋盤

【課題】ステー自身のびびり振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制しつつ、ステーと刃物台との共振又はステーと刃物台との合成振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制する。
【解決手段】旋削工具支持装置6は、ステー22をそのステー22の厚み方向がロータ軸100aの軸方向に略平行となり、そのステー22の先端部がタービンロータ100の側方からロータ軸100a側に突出するような姿勢で支持するとともに、ステー22の長手方向においてロータ軸100aに対するステー22の相対位置を変更することが可能なようにステー22を支持する刃物台26と、タービンロータ100の加工時にステー22の先端部に生じる厚み方向への振動を低減するステー動吸振器24と、刃物台26に設けられ、タービンロータ100の加工時に刃物台26に生じるステー22の厚み方向への振動を低減する刃物台動吸振器28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋削工具支持装置及びタービンロータ加工用旋盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タービンロータを旋削加工するためのタービンロータ加工用旋盤が知られており、下記特許文献1には、このような旋盤の一例が開示されている。
【0003】
タービンロータは、ロータ軸及びその軸方向に間隔をおいて並ぶ複数枚のディスクを有している。特許文献1に開示されたタービンロータ加工用旋盤は、特定方向に延びる板状に形成され、その先端部に旋削工具が装着されるステーと、タービンロータの側方に配置され、ステーをタービンロータのロータ軸側に突出するとともにそのステーの厚み方向がロータ軸と略平行となるような姿勢で支持する刃物台と、タービンロータの加工時に刃物台を移送する移送装置とを備えている。タービンロータの加工時には、ステーの先端部がタービンロータの隣り合うディスク同士の間に挿入され、その先端部に装着された旋削工具によってディスク間の溝部が切削される。
【0004】
タービンロータの隣り合うディスク間の溝部の形状としては、その深さに比較して非常に小さい幅を有する形状が要求される。このため、前記ディスク間の溝部に挿入されるステーは、長さが大きく、かつ、その長さに比較して非常に小さい厚みを有する形状に形成される。しかしながら、ステーがそのような形状に形成される結果、ステーの先端部は、タービンロータの旋削加工時に厚み方向へのびびり振動を発生しやすくなり、当該ステーの先端部の振動発生に伴ってタービンロータの加工精度の低下が問題となる。そこで、特許文献1に記載の旋盤では、このようなステーの振動を低減するためにステーの先端部に動吸振器が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−189167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構成では、ステーと刃物台との共振もしくはステーの振動と刃物台の振動との合成振動によるタービンロータの加工精度の低下という問題を解決することが困難である。その理由は、以下の通りである。
【0007】
上記のようにステーに設けられた動吸振器によりステーの振動が低減されたとしても、ステーには僅かに振動が残り、その振動数が刃物台からのステーの突出長さがある長さに設定された場合に刃物台の固有振動数と一致する場合がある。この場合には、ステーと刃物台が共振してステーにうねりのような振動が生じ、その影響によって旋削工具によるタービンロータの加工精度が低下する。また、ステーの振動数と刃物台の固有振動数とが完全に一致しないまでも、ステーの振動数が刃物台の固有振動数にある程度以上近づくと、ステーの振動と刃物台の振動との干渉による合成振動がうねりのような振動となって生じ、この場合も前記共振の場合と同様に旋削工具によるタービンロータの加工精度が低下する。
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ステー自身のびびり振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制しつつ、ステーと刃物台との共振又はステーと刃物台との合成振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による旋削工具支持装置は、ロータ軸及びその軸方向に間隔をおいて並ぶ複数枚のディスクを有するタービンロータの当該ディスク同士の間に位置するロータ軸の外周面及び各ディスクの側面の少なくとも一方を旋削加工するための旋削工具を支持する旋削工具支持装置であって、特定方向に延びる板状をなし、その長手方向の一端部である先端部に前記旋削工具が装着されるステーと、前記ステーをそのステーの厚み方向が前記ロータ軸の軸方向に略平行となり、かつ、そのステーの前記先端部が前記タービンロータの側方から前記ロータ軸側に突出するような姿勢で支持するとともに、前記ステーの長手方向において前記ロータ軸に対する前記ステーの相対位置を変更することが可能なように前記ステーを支持し、前記タービンロータの加工時に前記ステーの前記先端部が前記ロータ軸の軸方向に隣り合う前記ディスク同士の間に挿入されるように移送装置によって移送される刃物台と、前記ステーのうち前記旋削工具が装着される部位の近傍の部位に設けられ、前記タービンロータの加工時に前記ステーの先端部に生じる厚み方向への振動を低減するためのステー動吸振器と、前記刃物台に設けられ、前記タービンロータの加工時に前記刃物台に生じる前記ステーの厚み方向への振動を低減するための刃物台動吸振器とを備えている。
【0010】
この旋削工具支持装置では、タービンロータの加工時にステー動吸振器によってステーの先端部の厚み方向への振動の振幅が低減されるため、ステー自身のびびり振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制することができる。
【0011】
また、ステー動吸振器によってステーの振動の振幅が低減されたとしてもステーには僅かに振動が残る。ステーのうち刃物台からロータ軸側へ突出する部分の長さは、タービンロータの加工形状に応じて変更されるが、その刃物台からロータ軸側へのステーの突出部分の長さによっては、前記ステーに僅かに残った振動の振動数が刃物台の固有振動数に近づいてステーと刃物台との共振又はステーの振動と刃物台の振動との干渉に起因するうねり振動が生じる虞がある。
【0012】
これに対して、この旋削工具支持装置では、前記ステーに僅かに残った振動の振動数が前記ステーの突出部分の長さに応じて刃物台の固有振動数に近づいたとしても、刃物台動吸振器により、ステーと刃物台との共振が生じない程度又はステーに僅かに残った振動と刃物台の振動との干渉による大きなうねり振動が生じない程度まで刃物台の固有振動の振幅を小さくすることができる。その結果、ステーと刃物台との共振又はステーと刃物台との合成振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制することができる。
【0013】
上記旋削工具支持装置において、前記刃物台動吸振器は、前記刃物台の重心位置よりも前記ステーの前記先端部に近い第1の位置と、前記刃物台の重心位置よりも前記ステーの前記先端部から遠い第2の位置とにそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0014】
刃物台に振動が生じる場合には、その重心位置を中心としてステーの厚み方向において当該刃物台が揺動するような振動が発生する。すなわち、この刃物台に生じる振動は、当該刃物台の重心位置に振動の節が位置し、その重心位置よりもステーの先端部に近い部位とその重心位置よりもステーの先端部から遠い部位とにそれぞれ振動の腹が位置するような振動である。これに対して、本構成によれば、前記第1の位置に設けられた刃物台動吸振器と前記第2の位置に設けられた刃物台動吸振器は、刃物台の振動の腹に近い位置にそれぞれ配置されることになるため、それらの刃物台動吸振器によって刃物台の振動を効果的に低減することができる。
【0015】
この場合において、前記刃物台の重心位置と前記第1の位置との間の距離と、前記刃物台の重心位置と前記第2の位置との間の距離と、前記第1の位置及び前記第2の位置にそれぞれ設けられた前記刃物台動吸振器の重量とは、前記第1の位置と前記第2の位置とにおける前記刃物台の重心位置回りの慣性モーメントが互いに等しくなるように設定されていることが好ましい。
【0016】
前記第1の位置と前記第2の位置とにおける刃物台の重心位置回りの慣性モーメントが異なると、刃物台の重心がずれを生じ、刃物台が移送装置によってロータ軸の軸方向(ステーの厚み方向)に移送される際に刃物台がロータ軸の軸方向に平行な面内において揺動するヨーイングと呼ばれる現象が生じやすくなる。これに対して、本構成によれば、前記第1の位置と前記第2の位置に刃物台動吸振器を設けたとしても、その第1の位置と第2の位置における刃物台の重心位置回りの慣性モーメントが互いに等しくなるため、ロータ軸の軸方向への刃物台の移送時に前記ヨーイングが生じるのを防ぐことができる。その結果、タービンロータ加工時の刃物台の移動精度の低下及びそれに起因する旋削工具の移動精度の低下を抑制することができ、その旋削工具の移動精度の低下に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制することができる。
【0017】
上記旋削工具支持装置において、前記刃物台動吸振器は、前記ステーの厚み方向において互いに離間するように前記刃物台に設けられた第1規制部及び第2規制部と、それら両規制部に対して前記ステーの厚み方向に相対変位することが可能となるようにそれら両規制部の間のスペースに配設され、前記刃物台が前記ステーの厚み方向において振れたときに前記両規制部間で前記刃物台に対してその振れと逆向きに相対変位することにより当該刃物台の振れを抑制する錘とを有していてもよい。
【0018】
この構成によれば、刃物台に生じるステーの厚み方向への振動を低減することが可能な刃物台動吸振器の具体的な構造を構成することができる。
【0019】
この場合において、前記刃物台動吸振器は、前記両規制部に固定され、それら両規制部間で前記錘を前記ステーの厚み方向に貫通するように延び、前記錘が前記ステーの厚み方向へ変位するように当該錘を案内する支持軸をさらに有することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、錘が相対変位する方向をステーの厚み方向に限定することができる。これにより、錘が刃物台の振動を低減する際に本来相対変位すべき方向であるステーの厚み方向とは異なる方向へ相対変位することによって刃物台にその異なる方向への振動が与えられるのを防ぐことができる。
【0021】
上記収容部内に錘が収容された構成において、前記錘は、前記第1規制部と対向する第1の端面と、前記第2規制部と対向する第2の端面とを有し、前記刃物台動吸振器は、前記第1規制部と前記錘の前記第1の端面との間に弾性変形状態で介装された第1弾性部材と、前記第2規制部と前記錘の前記第2の端面との間に弾性変形状態で介装された第2弾性部材と、前記第1の端面に対して前記第1弾性部材が付与する弾発力の大きさ及び前記第2の端面に対して前記第2弾性部材が付与する弾発力の大きさを変更するための弾発力変更部とをさらに有することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、弾発力変更部により前記両弾性部材が錘の対応する端面に付与する弾発力の大きさが変更されることによって、ステーの厚み方向への錘の相対変位に対する抵抗力の大きさが変更される。その結果、ステーの厚み方向への錘の相対変位しやすさが調節可能となり、刃物台動吸振器が抑制可能な刃物台の振動数域を任意に調節できるようになる。具体的には、ステーの厚み方向への錘の相対変位に対する抵抗力が大きくなって錘がその方向へ相対変位しにくくなる程、刃物台動吸振器はより高振動数の刃物台の振動を抑制することができ、ステーの厚み方向への錘の相対変位に対する抵抗力が小さくなって錘がその方向へ相対変位しやすくなる程、刃物台動吸振器はより低振動数の刃物台の振動を抑制することができる。
【0023】
また、本発明によるタービンロータ加工用旋盤は、ロータ軸及びその軸方向に並ぶ複数枚のディスクを有するタービンロータを旋削加工するためのタービンロータ加工用旋盤であって、上記いずれかの旋削工具支持装置と、タービンロータをその軸回りに回転させる回転装置と、前記ステーの先端部に装着される旋削工具と、旋削加工用の制御プログラムに従って前記旋削工具が前記ロータ軸に垂直な方向においてそのロータ軸に接離するとともに当該ロータ軸に平行な方向に移動するように前記刃物台を移送する移送装置とを備えている。
【0024】
このタービンロータ加工用旋盤では、上記旋削工具支持装置を備えているので、ステー自身のびびり振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制しつつ、ステーと刃物台との共振又はステーと刃物台との合成振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制することができるという上記旋削工具支持装置による効果と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、ステー自身のびびり振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制しつつ、ステーと刃物台との共振又はステーと刃物台との合成振動に起因するタービンロータの加工精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態によるタービンロータ加工用旋盤の全体構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1に示したタービンロータ加工用旋盤の移送装置、旋削工具支持装置及び旋削工具をタービンロータの軸方向に見た概略図である。
【図3】移送装置のサドル、第2送り機構及びクロスライドと旋削工具支持装置と旋削工具の概略的な斜視図である。
【図4】タービンロータのロータ軸の外周面及びその外周面とディスクの側面との間のコーナー部を旋削する際の旋削工具及び旋削工具支持装置の移動形態を示す図である。
【図5】タービンロータのディスクの側面を旋削する際の旋削工具及び旋削工具支持装置の移動形態を示す図である。
【図6】図2中のVI−VI線に沿ったステーの断面図である。
【図7】旋削工具支持装置及び旋削工具の斜視図である。
【図8】図7中のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の第1変形例による刃物台の上面での刃物台動吸振器の配置を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態の第2変形例による刃物台の上面での刃物台動吸振器の配置を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態の第3変形例による刃物台の上面での刃物台動吸振器の配置を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態の第4変形例による刃物台動吸振器の図8に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0028】
まず、図1〜図8を参照して、本発明の一実施形態によるタービンロータ加工用旋盤及びその旋盤に設けられた旋削工具支持装置6の構成について説明する。
【0029】
本実施形態によるタービンロータ加工用旋盤は、タービンロータ100を旋削加工するためのものである。タービンロータ100は、図1に示すように、特定方向に延びるロータ軸100aと、そのロータ軸100aの軸方向に間隔をおいて並ぶ複数枚のディスク100bとを有する。本実施形態のタービンロータ加工用旋盤は、後述する旋削工具4をこのタービンロータ100の隣り合うディスク100b同士の間に挿入してそのディスク100b同士の間に位置するロータ軸100aの外周面及び各ディスク100bの側面を旋削工具4により旋削加工する。
【0030】
具体的には、タービンロータ加工用旋盤は、回転装置2と、旋削工具4と、旋削工具支持装置6と、移送装置8とを備えている。
【0031】
回転装置2は、タービンロータ100の旋削加工用の制御プログラムに従ってタービンロータ100をその軸回り(水平軸回り)に回転させる。この回転装置2は、ベース12と、第1支持装置14と、第2支持装置16とを有する。
【0032】
ベース12は、回転装置2の基礎となる部分であり、特定方向へ延びるように設置場所に設置されている。
【0033】
第1支持装置14と第2支持装置16は、ベース12の長手方向の両端部に分かれて配設されている。第1支持装置14は、ベース12の長手方向の一端部上に設置された第1支持装置本体部14aと、その第1支持装置本体部14aにベース12の長手方向に延びる水平軸回りに回転可能に設けられた第1保持部14bと、その第1保持部14bを回転させる図略のモータとを有する。第2支持装置16は、ベース12の長手方向の他端部上に設置された第2支持装置本体部16aと、その第2支持装置本体部16aに前記第1保持部14bと同じ水平軸回りに回転可能に設けられた第2保持部16bとを有する。第1支持装置14と第2支持装置16は、第1保持部14bと第2保持部16bとの間でタービンロータ100を軸方向の両側から挟み込むようにして支持し、その状態で前記図略のモータの駆動により両保持部14b,16bとともにタービンロータ100を軸回りに回転させる。
【0034】
旋削工具4は、旋削用のバイトであり、タービンロータ100の隣り合うディスク100b同士の間に位置するロータ軸100aの外周面、各ディスク100bの側面及びそれらロータ軸100aの外周面とディスク100bの側面との間のコーナー部を旋削加工するためのものである。
【0035】
旋削工具支持装置6は、旋削工具4を支持するものである。この旋削工具支持装置6は、ステー22と、ステー動吸振器24と、刃物台26と、刃物台動吸振器28とを有する。
【0036】
ステー22は、特定方向に延びる略矩形状の平板に形成されており、その長手方向の一端部である先端部に旋削工具4が装着される。このステー22は、その厚み方向がロータ軸100aと略平行となる姿勢で配置される。このステー22の旋削工具4が装着された先端部は、タービンロータ100の加工時に軸回りに回転するタービンロータ100の隣り合うディスク100b同士の間に挿入される。ステー22は、ステー本体32と、ホルダ34とを有する。
【0037】
ステー本体32は、ステー22の基部であり、図5及び図6に示すように、特定方向に延びる略長方形の平板状をなしている。ステー本体32の先端部の上端部には、ホルダ34が装着される受部32aが形成されている。この受部32aは、ステー本体32の先端部の上端の角部が矩形状に切り欠かれることによって形成されている。
【0038】
ホルダ34は、旋削工具4を保持するものであり、ステー本体32の受部32aに嵌め込まれて固定される。すなわち、旋削工具4は、ホルダ34を介してステー本体32の先端部の上端部に装着される。
【0039】
ステー動吸振器24は、タービンロータ100の旋削加工時にステー22の先端部に生じる厚み方向への振動を低減するためのものである。タービンロータ100の加工時には、回転装置2がタービンロータ100を回転させる一方、このタービンロータ100において互いに隣り合うディスク100b同士の間のスペースに旋削工具4とともにステー22の先端部が挿入される。そして、図4に示すように、旋削工具4の先端が、隣り合うディスク100b同士の間の軸方向の中心位置においてロータ軸100aの外周面に当てられ、ロータ軸100aに平行な方向において一方のディスク100b側に移送されながらロータ軸100aの外周面を旋削する。その後、旋削工具4は、連続して前記一方のディスク100b側に送られながら、わずかにロータ軸100aから離れる方向に送られることにより、ロータ軸100aの外周面と前記一方のディスク100bの側面との間にRを持ったコーナー部を旋削加工する。さらに、図5に示すように、旋削工具4の先端部の一方の側部が前記一方のディスク100bの側面に当てられながら当該旋削工具4がロータ軸100aに接近する方向に送られることにより、当該旋削工具4は前記一方のディスク100bの側面を旋削する。このような旋削工具4による前記コーナー部の旋削及びディスク100bの側面の旋削に伴って、ステー22(ステー本体32)の先端部には厚み方向への振動が生じやすい。
【0040】
このステー動吸振器24は、ステー22に生じる前記振動の振幅を低減すべく、ステー22のうち旋削工具4が装着される部位の近傍の部位に設けられている。具体的には、ステー動吸振器24は、ステー本体32の先端部のうち受部32aの下側近傍で上下に離間する2つの位置にそれぞれ設けられている。2つのステー動吸振器24のうち一方は、ステー本体32の先端部の上下方向についての中心位置に配設され、他方は、前記中心部位から下側に離間した位置(ステー本体32の先端部の下端部近傍の位置)に配設されている。
【0041】
各ステー動吸振器24は、図6に示すように、収容部42と、ステー用錘44と、ステー用抵抗力付与部46と、ステー用抵抗力変更部48とをそれぞれ有する。
【0042】
収容部42は、その内部にステー用錘44等を収容するものであり、ステー本体32の先端部と蓋部42bとによって形成されている。詳しくは、収容部42は、ステー本体32の先端部の厚み方向における一方の面に開口した円形の凹部42aと、その凹部42aの開口部を塞ぐ円形の蓋部42bとによって形成されている。この収容部42は、ステー本体32の先端部のうち受部32aの下側の部位に配設されている。
【0043】
凹部42aは、当該凹部42aの奥側に位置する第1部分42cと、その第1部分42cの手前側に位置して当該凹部42aの開口部を形成し、第1部分42cよりも拡径された第2部分42dとを有する。
【0044】
第1部分42cの底面(ステー本体32の厚み方向における前記一方の面に平行な面)からステー本体32の厚み方向における他方の面側へ貫通するように固定穴42eが形成されている。この固定穴42eは、凹部42aの軸心と同軸となるように配設されている。また、第1部分42cの底面のうち固定穴42eの周りには、複数の第1取付溝42fが形成されている。各第1取付溝42fは、第1部分42cの底面に凹部42aの軸心(収容部42の軸心)を中心とする同心円状に形成されており、それぞれ異なった直径及び周長を有する。また、第2部分42dの底面(ステー本体32の厚み方向における前記一方の面に平行な面)には、その周方向に間隔をおいて複数の固定用螺子穴42gが設けられている。
【0045】
蓋部42bは、凹部42aの第2部分42dに嵌め込まれている。蓋部42bのうちその周縁近傍の部分には、複数の挿通穴42hが形成されている。各挿通穴42hは、前記各螺子穴42gに対応する位置に形成されている。各挿通穴42hには、固定螺子42iがそれぞれ挿通され、その固定螺子42iが前記各固定用螺子穴42gに螺合して締め込まれることによって、蓋部42bが凹部42aの第2部分42dに嵌め込まれた状態で固定される。また、蓋部42bのうちその周縁近傍の部分には、当該蓋部42bの周方向における各挿通穴42hの両側に当該蓋部42bを厚み方向に貫通する螺子穴42jがそれぞれ形成されている。
【0046】
また、蓋部42bの裏面(収容部42内に臨む面)には、複数の第2取付溝42kが形成されている。各第2取付溝42kは、蓋部42bの軸心(収容部42の軸心)を中心とした同心円状に形成されており、それぞれ異なった直径及び周長を有している。なお、第2取付溝42kは、第1取付溝42fと同じ数だけ設けられており、各第2取付溝42kは各第1取付溝42fと対応する位置及び形状に形成されている。
【0047】
また、蓋部42bの裏面には、ステー本体32の厚み方向に延びるステー用錘支持軸42nが収容部42と同軸となるように設けられている。このステー用錘支持軸42nは、後述するように円環状であるステー用錘44をステー22の厚み方向に貫通して、当該ステー用錘44をステー22の厚み方向に相対変位することが可能な状態で支持する。
【0048】
ステー用錘44は、収容部42内にこの収容部42に対してステー本体32の厚み方向に相対変位することが可能となるように収容されている。このステー用錘44は、ステー本体32の先端部がその厚み方向に振れたときに収容部42内でステー本体32の先端部に対してその振れと逆向きに相対変位することにより当該ステー本体32の先端部の振れを抑制する。
【0049】
具体的には、ステー用錘44は、全体として円環状に形成されており、ステー用錘本体44aと、ステー用リニアブッシュ44bとを有する。
【0050】
ステー用錘本体44aは、ステー用錘44の大部分を占めており、例えば鉛等の材料によって形成されている。このステー用錘本体44aは、円環状に形成されており、当該ステー用錘本体44aの軸心と同軸に当該ステー用錘本体44aを貫通する貫通穴44cを有する。ステー用錘本体44aは、その軸方向がステー本体32の厚み方向に一致するように収容部42内に収容されている。
【0051】
ステー用リニアブッシュ44bは、ステー用錘本体44aの貫通穴44cに嵌め込まれるとともに前記ステー用錘支持軸42nに外挿された円筒状の本体部44dと、その本体部44dの内周面とステー用錘支持軸42nの外周面との間に配設された複数のボール44eとによって構成されている。このステー用リニアブッシュ44bでは、ステー用錘44がステー本体32の厚み方向にステー本体32の先端部に対して相対変位する際、ボール44eが本体部44dの内周面とステー用錘支持軸42nの外周面との間で転がる。これにより、ステー用錘44が、非常に小さい摩擦抵抗でステー用錘支持軸42nに沿って相対変位可能となる。
【0052】
ステー用抵抗力付与部46は、ステー本体32の厚み方向へのステー用錘44の相対変位に対する抵抗力をステー用錘44に付与する。このステー用抵抗力付与部46は、ステー用第1弾性部材46aとステー用第2弾性部材46bとを有する。
【0053】
ステー用第1弾性部材46aは、ステー22の厚み方向におけるステー用錘本体44aの一端面と対向する凹部42aの第1部分42cの底面との間に配設されている。具体的には、このステー用第1弾性部材46aは、Oリングからなり、前記第1取付溝42fに嵌め込まれている。ステー用第1弾性部材46aの一部分は、第1取付溝42fからステー用錘44側に突出しており、ステー用錘本体44aの前記一端面に当接する。そして、ステー用錘44が第1部分42cの底面に接近するように相対変位する際には、当該ステー用第1弾性部材46aは、ステー用錘44によって押し潰されて弾性変形し、その反作用としてステー用錘44に弾発力を抵抗力として付与する。
【0054】
ステー用第2弾性部材46bは、ステー22の厚み方向におけるステー用錘本体44aの他端面と対向する蓋部42bの裏面との間に配設されている。具体的には、ステー用第2弾性部材46bは、ステー用第1弾性部材46aと同様のOリングからなり、前記第2取付溝42kに嵌め込まれている。ステー用第2弾性部材46bの一部分は、第2取付溝42kからステー用錘44側に突出しており、ステー用錘本体44aの前記他端面に当接する。このステー用第2弾性部材46bがステー用錘44に抵抗力を付与する際の作用は、前記ステー用第1弾性部材46aの場合と同様である。
【0055】
ステー用抵抗力変更部48は、ステー用抵抗力付与部46がステー用錘44に付与する前記抵抗力の大きさを変更するためのものである。このステー用抵抗力変更部48は、ステー用第1弾性部材46aからステー用錘44の前記一端面に付与される弾発力の大きさ及びステー用第2弾性部材46bからステー用錘44の前記他端面に付与される弾発力の大きさを変更するためのステー用弾発力変更部52を有する。
【0056】
ステー用弾発力変更部52は、前記蓋部42bと、前記固定螺子42iと、調整螺子52aとによって構成されている。
【0057】
調整螺子52aは、蓋部42bの各螺子穴42jにそれぞれ螺合されている。この調整螺子52aは、その先端部が蓋部42bの裏面から突出して凹部42aの第2部分42dの底面に当接する位置まで螺子穴42jにねじ込まれる。すなわち、調整螺子52aの先端部が蓋部42bの裏面から突出する分だけ、蓋部42bと凹部42aの第2部分42dの底面との間に隙間が形成される。そして、各固定螺子42iを緩めた状態で螺子穴42jに対する調整螺子52aのねじ込み量が変更されて蓋部42bの裏面から突出する調整螺子52aの突出量が変更されることにより、蓋部42bと凹部42aの第2部分42dの底面との間の隙間の大きさが変更される。そして、この隙間の大きさが変更されることによって、ステー22の厚み方向における収容部42の対向する内面間の間隔(凹部42aの第1部分42cの底面と蓋部42bの裏面との間の間隔)の大きさが変更され、それによって両弾性部材46a,46bからステー用錘44に付与される弾発力が変更される。
【0058】
ステー用錘44に付与される両弾性部材46a,46bの弾発力が変更されることによって、ステー動吸振器24により減衰可能なステー22の先端部の厚み方向への振動の振動数が変化する。すなわち、ステー用錘44に付与される両弾性部材46a,46bの弾発力が大きくなると、ステー22の厚み方向へのステー用錘44の相対変位に対する抵抗力が大きくなり、それに伴って、より高い振動数のステー22の振動がステー動吸振器24によって減衰される。一方、ステー用錘44に付与される両弾性部材46a,46bの弾発力が小さくなると、ステー22の厚み方向へのステー用錘44の相対変位に対する抵抗力が小さくなり、それに伴って、より低い振動数のステー22の振動がステー動吸振器24によって減衰される。従って、本実施形態では、作業者が、ステー22の固有振動数に応じて調整螺子52aのねじ込み量を調整し、その後、固定螺子42iを締め込んで蓋部42bの裏面と凹部42aの第1部分42cの底面との間の間隔を固定することにより、両弾性部材46a,46bがステー用錘44に付与する弾発力をステー22の厚み方向への振動を減衰させるのに適切な値に調整できる。
【0059】
刃物台26は、図1に示すように、タービンロータ100の側方に配置され、ステー22をそのステー22の厚み方向がロータ軸100aの軸方向に平行となり、かつ、そのステー22の先端部が当該刃物台26からロータ軸100a側に突出するような姿勢で支持する。また、刃物台26は、ステー22の長手方向においてロータ軸100aに対するステー22の相対位置を変更することが可能なようにステー22を支持する。換言すれば、刃物台26は、ステー22のうち当該刃物台26からロータ軸100a側に突出する部分の長さを変更することが可能なようにステー22を支持する。また、刃物台26は、タービンロータ100の加工時にステー22の先端部がロータ軸100aの軸方向に隣り合うディスク100b同士の間に挿入されるように移送装置8によって移送される。この刃物台26は、刃物台本体26aと、押え板26bと、押圧機構26cとを有する。
【0060】
刃物台本体26aは、移送装置8の後述するクロススライド92上に設けられている。この刃物台本体26aは、略直方体状に形成されており、その長手方向がロータ軸100aに垂直となるとともに短手方向がロータ軸100aに平行となるように配置されている。この刃物台本体26aの短手方向の一方の側面には、溝部26dが形成されている。この溝部26dは、刃物台本体26aの長手方向の一端面から他端面へその刃物台本体26aの長手方向に沿って延びている。ステー22は、この溝部26d内に当該ステー22の長手方向(ロータ軸100aに垂直な方向)へ移動することが可能な状態で嵌め込まれる。
【0061】
押え板26bは、溝部26d内のうちステー22に対して溝部26dの底面(ロータ軸100aに対して垂直な面)と反対側に配置されている。この押え板26bは、溝部26d内に嵌め込まれたステー22を溝部26d内の底面に対して押さえつけて刃物台26に対するステー22の相対位置を固定するためのものである。
【0062】
押圧機構26cは、溝部26d内のうち第1押え板26bに対してステー22と反対側に配置されている。この押圧機構26cは、油圧によって駆動される図略の駆動部と、その駆動部によって駆動されて押え板26bをステー22側へ押圧する図略の押圧部とを有する。この押圧機構26cの押圧部が押さ板26bをステー22側へ押圧することによって、ステー22が溝部26d内の底面に押さえ付けられる。その結果、刃物台26に対するステー22の相対位置が固定される。なお、押圧機構26cは、ステー22側への押え板26bの押圧を緩めることが可能に構成されている。これにより、作業者は、押圧機構26cによる押え板26bの押圧が緩められた状態で、刃物台26に対するステー22の長手方向における相対位置を変更してステー22のうち刃物台26からロータ軸100a側へ突出する部分の長さを変更することが可能である。
【0063】
刃物台動吸振器28は、タービンロータ100の加工時に刃物台26に生じるステー22の厚み方向への振動を低減するためのものである。具体的には、刃物台動吸振器28は、ステー22の厚み方向への刃物台26の振動の振幅を低減する。この刃物台動吸振器28は、図7に示すように、刃物台26の上面に3つ設けられている。この3つの刃物台動吸振器28は、ステー22の長手方向に並ぶように配置されている。3つの刃物台動吸振器28のうち真中の刃物台動吸振器28は、刃物台26の重心位置を通りながらステー22の厚み方向(刃物台26の短手方向)に延びる直線上に位置し、残りの2つの刃物台動吸振器28は、ステー22の長手方向(刃物台26の長手方向)において前記真中の刃物台動吸振器28の両側に分かれて配置されている。具体的には、前記残りの2つの刃物台動吸振器28は、刃物台26の重心位置よりもステー22の先端部に近い第1の位置P1と、刃物台26の重心位置よりもステー22の先端部から遠い第2の位置P2とに配設されている。
【0064】
そして、前記第1の位置P1と刃物台26の重心位置との間の距離と、前記第2の位置P2と刃物台26の重心位置との間の距離と、前記第1の位置P1及び前記第2の位置P2にそれぞれ設けられた刃物台動吸振器28の重量とは、前記第1の位置P1と前記第2の位置P2とにおける刃物台26の重心位置回りの慣性モーメントが互いに等しくなるように設定されている。なお、本実施形態では、前記第1の位置P1と刃物台26の重心位置との間の距離と前記第2の位置P2と刃物台26の重心位置との間の距離とが互いに等しい距離に設定されているとともに、第1の位置P1と第2の位置P2にそれぞれ設けられた刃物台動吸振器28の重量が互いに等しい重量に設定されている。
【0065】
次に、刃物台動吸振器28の詳細な構造について説明する。
【0066】
前記3つの刃物台動吸振器28は、互いに同じ構造を有し、各刃物台動吸振器28は、図8に示すように、刃物台用錘支持部62と、刃物台用錘64と、刃物台用抵抗力付与部66と、刃物台用抵抗力変更部68とをそれぞれ備えている。
【0067】
刃物台用錘支持部62は、刃物台用錘64が当該刃物台用錘支持部62に対してステー22の厚み方向に相対変位することが可能な状態でその刃物台用錘64を支持する。この刃物台用錘支持部62は、支持部本体部62aと、2本の刃物台用錘支持軸62bとを有する。
【0068】
支持部本体部62aは、刃物台本体26aの上面に取り付けられている。この支持部本体部62aは、底板部72と、第1規制部74と、第2規制部76と、複数のボルト80,81と、固定ナット84とを有する。
【0069】
底板部72は、刃物台本体26a上に平置きされてその刃物台本体26aに固定される平板状の部材である。この底板部72のうちステー22の厚み方向における両端部には、それぞれ、当該底板部72を厚み方向に貫通する挿通穴72a及びボルト穴72bが形成されている。挿通穴72aにボルト80が挿通されるとともに、そのボルト80が刃物台26の上面に形成された螺子穴26fに螺合されて締め込まれることによって、底板部72が刃物台本体26aに締結されている。
【0070】
第1規制部74と第2規制部76は、底板部72上にステー22の厚み方向に互いに離間して設置されるとともに、互いに向き合うように配置されている。これら両規制部74,76は、それらの間で刃物台用錘支持部62に対する刃物台用錘64のステー22の厚み方向への相対変位を規制する。
【0071】
第1規制部74は、固定部74aと、縦板部74bと、一対の側板部74cとを有する。
【0072】
固定部74aは、平板状に形成されており、底板部72に沿って底板部72上に設置される。この固定部74aには、当該固定部74aをその厚み方向に貫通するボルト穴74fが形成されている。当該固定部74aのボルト穴74fは、前記底板部72のボルト穴72bに対応する位置に設けられている。このボルト穴74f及び前記底板部72の対応するボルト穴72bにボルト81が螺合されて締め込まれることによって、固定部74aが底板部72に対して締結されている。
【0073】
縦板部74bは、固定部74aから垂直に立ち上げられた平板状の部分であり、その厚み方向がステー22の厚み方向に一致するように配置されている。縦板部74bには、その厚み方向に貫通する2つの軸挿通穴74hが設けられている。この2つの軸挿通穴74hは、ステー22の長手方向に互いに離間して配置されている。また、縦板部74bのうち第2規制部76に対向する面には、各軸挿通穴74hの周りに複数の第1装着溝74iが形成されている。各第1装着溝74iは、軸挿通穴74hの中心に対して同心円状に形成されており、それぞれ異なった直径及び周長を有する。
【0074】
一対の側板部74cは、固定部74a及び縦板部74bに対して垂直に配置された平板状にそれぞれ形成されており、固定部74aの上面と縦板部74bのうち第2規制部76に対向する面の裏側の面とにそれぞれ接合されている。この一対の側板部74cは、固定部74a及び縦板部74bのうちステー22の先端部に近い側の端部近傍とステー22の先端部から遠い側の端部近傍とに分かれて配置されている。
【0075】
第2規制部76は、固定部76a、縦板部76b及び一対の側板部76cを有する第2規制部本体76dと、2つの押さえ部材76eとを有する。
【0076】
第2規制部本体76dの固定部76a及び一対の側板部76cは、第1規制部74の固定部74a及び一対の側板部74cと同様に構成されている。すなわち、この固定部76aには、前記第1規制部74の固定部74aに形成されたボルト穴74fと同様のボルト穴76gが形成されている。そして、そのボルト穴76g及び前記底板部72の対応するボルト穴72bに螺合されたボルト81によって固定部76aが底板部72に締結されている。
【0077】
また、第2規制部本体76dの縦板部76bは、固定部76aから垂直に立ち上げられた板状の部分であり、その厚み方向がステー22の厚み方向に一致するように配置されている。この縦板部76bには、その厚み方向に貫通する2つの貫通穴76hが設けられている。この2つの貫通穴76hは、前記第1規制部74の2つの軸挿通穴74hに対応する位置に設けられている。
【0078】
2つの押さえ部材76eは、2つの貫通穴76hにそれぞれステー22の厚み方向へ変位可能に嵌め込まれている。各押さえ部材76eには、ステー22の厚み方向に貫通する軸挿通穴76kがそれぞれ設けられている。この各押さえ部材76eに設けられた軸挿通穴76kは、前記第1規制部74の2つの軸挿通穴74hに対応する位置に配置されている。また、各押さえ部材76eのうち第1規制部74に対向する面には、軸挿通穴76kの周りに複数の第2装着溝76nが形成されている。各第2装着溝76nは、軸挿通穴76kの中心に対して同心円状に形成されており、それぞれ異なった直径及び周長を有する。
【0079】
2本の刃物台用錘支持軸62bは、前記両規制部74,76に取り付けられており、それら両規制部74,76間で刃物台用錘64をステー22の厚み方向に貫通するようにそれぞれ延びている。この刃物台用錘支持軸62bは、本発明の支持軸の概念に含まれるものである。刃物台用錘支持軸62bは、刃物台用錘64を当該刃物台用錘支持軸62bに対してステー22の厚み方向に相対変位可能に支持する。換言すれば、この刃物台用錘支持軸62bは、刃物台用錘64がステー22の厚み方向において当該刃物台用錘支持軸62bに対して相対変位するようにその刃物台用錘64を案内する。
【0080】
具体的には、2本の刃物台用錘支持軸62bは、ステー22の長手方向に互いに離間して配置されている。各刃物台用錘支持軸62bは、軸本体62dと、第1螺子部62eと、第2螺子部62fとを有する。
【0081】
軸本体62dは、ステー22の厚み方向に延びる円柱状に形成されている。第1螺子部62eは、軸本体62dの軸方向の一端部に繋がっており、軸本体62dと同軸に配置されている。この第1螺子部62eは、軸本体62dよりも小径であり、その周面に形成された螺子溝を有する。第2螺子部62fは、軸本体62dの軸方向の他端部に繋がっており、軸本体62dと同軸に配置されている。この第2螺子部62fは、軸本体62dとほぼ同径であり、その周面に形成された螺子溝を有する。
【0082】
各刃物台用錘支持軸62bの第1螺子部62eは、第1規制部74の縦板部74bに設けられた2つの軸挿通穴74hのうち対応するものに挿通されて縦板部74bの外側に突出している。各第1螺子部62eには、固定ナット84が螺合している。この固定ナット84が軸本体62dの前記一端部との間で縦板部74bを挟み込むことにより、第1螺子部62eが縦板部74bに固定されている。
【0083】
また、各刃物台用錘支持軸62bの第2螺子部62fは、2つの押さえ部材76eのうち対応するものに形成された軸挿通穴76kに挿通されてその押さえ部材76eの外側に突出している。各第2螺子部62fには、調整ナット86が螺合している。この調整ナット86は、押さえ部材76eの外側面に当接している。
【0084】
刃物台用錘64は、第1規制部74と第2規制部76に対してステー22の厚み方向に相対変位することが可能となるようにそれら両規制部74,76間のスペースに配設されている。この刃物台用錘64は、本発明の錘の概念に含まれるものである。この刃物台用錘64は、その大きな慣性により、刃物台26がステー22の厚み方向において振れたときに前記両規制部74,76間で刃物台26に対してその振れと逆向きに相対変位することにより当該刃物台26の振れを低減する。
【0085】
具体的には、刃物台用錘64は、刃物台用錘本体64aと、2つの刃物台用リニアブッシュ64bと、2つのカラー64cと、2つの固定部材64dとを有する。
【0086】
刃物台用錘本体64aは、刃物台用錘64の大部分を占めており、例えば鉄等の材料によって略直方体状に形成されている。この刃物台用錘本体64aは、当該刃物台用錘本体64aをステー22の厚み方向に貫通する2つの貫通穴64gを有する。この2つの貫通穴64gは、ステー22の長手方向に互いに離間して配置されている。各貫通穴64gは、その貫通穴64gのうち第1規制部74側に位置する比較的大径の部分と、その大径の部分に対して第2規制部76側に位置し、その大径の部分に比べて小径の部分とからなる。貫通穴64g内には、前記大径の部分と前記小径の部分との間に段差部64hが形成されている。
【0087】
2つの刃物台用リニアブッシュ64bは、刃物台用錘本体64aの2つの貫通穴64gにそれぞれ嵌め込まれている。この刃物台用リニアブッシュ64bは、刃物台用錘64が刃物台用錘支持軸62bに沿ってステー22の厚み方向に相対変位する際に非常に小さい摩擦抵抗で相対変位できるようにするためのものである。
【0088】
具体的には、各刃物台用リニアブッシュ64bは、対応する貫通穴64gに嵌め込まれるとともに刃物台用錘支持軸62bの軸本体62dに外挿された略円筒状のブッシュ本体64jと、そのブッシュ本体64jの内周面と軸本体62dの外周面との間に配設された複数のボール64kとによって構成されている。この刃物台用リニアブッシュ64bでは、刃物台用錘64がステー22の厚み方向に相対変位する際、ボール64kがブッシュ本体64jの内周面と軸本体62dの外周面との間で転がる。これにより、刃物台用錘64が、非常に小さい摩擦抵抗で軸本体62dに沿って相対変位可能となる。
【0089】
2つのカラー64cは、刃物台用錘本体64aの2つの貫通穴64gにそれぞれ嵌め込まれているとともに、刃物台用リニアブッシュ64bに対して第1規制部74側に配設されている。このカラー64cは、軸本体62dの外径よりも大きい内径を有する円筒状に形成されており、軸本体62dの外面に接触することなくその軸本体62dに外挿されている。
【0090】
2つの固定部材64dは、刃物台用錘本体64aの2つの貫通穴64g内にそれぞれ設けられており、各貫通穴64g内でカラー64cを介して刃物台用リニアブッシュ64bを位置固定する。具体的には、この固定部材64dは、スナップリングからなり、カラー64cのうち第1規制部74側の端面に当接する位置において貫通穴64gの内面に周方向に延びるように形成された溝部にその外縁部が嵌め込まれることによって貫通穴64g内で固定されている。この固定部材64dと貫通穴64g内の前記段差部64hとの間で刃物台用リニアブッシュ64b及びカラー64cが挟み込まれることによって、刃物台用リニアブッシュ64bが位置固定されている。
【0091】
刃物台用抵抗力付与部66は、ステー22の厚み方向における刃物台用錘64の相対変位に対する抵抗力を刃物台用錘64に付与する。この刃物台用抵抗力付与部66は、刃物台用第1弾性部材66aと刃物台用第2弾性部材66bとを有する。なお、刃物台用第1弾性部材66aは、本発明の第1弾性部材の概念に含まれるものであり、刃物台用第2弾性部材66bは、本発明の第2弾性部材の概念に含まれるものである。
【0092】
刃物台用第1弾性部材66aは、第1規制部74の縦板部74bと刃物台用錘本体64aのうち第1規制部74の縦板部74bと対向する端面との間に弾性変形状態で介装される。なお、刃物台用錘本体64aのうち第1規制部74の縦板部74bと対向する端面は、本発明の第1の端面の概念に含まれるものである。この刃物台用第1弾性部材66aは、Oリングからなり、前記各第1装着溝74iにそれぞれ嵌め込まれている。刃物台用第1弾性部材66aの一部分は、第1装着溝74iから刃物台用錘64側に突出しており、刃物台用錘本体64aの前記端面に当接する。そして、刃物台用錘64が縦板部74bに接近するように相対変位する際には、当該刃物台用第1弾性部材66aは、刃物台用錘64によって押し潰されて弾性変形し、その反作用として刃物台用錘64に弾発力を抵抗力として付与する。
【0093】
刃物台用第2弾性部材66bは、第2規制部76の押さえ部材76eと刃物台用錘本体64aのうち押さえ部材76eと対向する端面との間に弾性変形状態で介装される。なお、刃物台用錘本体64aのうち押さえ部材76eと対向する端面は、本発明の第2の端面の概念に含まれるものである。この刃物台用第2弾性部材66bは、Oリングからなり、前記各第2装着溝76nにそれぞれ嵌め込まれている。刃物台用第2弾性部材66bの一部分は、第2装着溝76nから刃物台用錘64側に突出しており、刃物台用錘本体64aのうち前記第2規制部76側に向かう端面に当接する。この刃物台用第2弾性部材66bが刃物台用錘64に抵抗力を付与する際の作用は、前記刃物台用第1弾性部材66aの場合と同様である。
【0094】
刃物台用抵抗力変更部68は、刃物台用抵抗力付与部66が刃物台用錘64に付与する前記抵抗力の大きさを変更するためのものである。この刃物台用抵抗力変更部68は、刃物台用第1弾性部材66aが刃物台用錘64の対応する端面に対して付与する弾発力の大きさ及び刃物台用第2弾性部材66bが刃物台用錘64の対応する端面に対して付与する弾発力の大きさを変更するための刃物台用弾発力変更部88を有する。この刃物台用弾発力変更部88は、本発明の弾発力変更部の概念に含まれるものである。
【0095】
刃物台用弾発力変更部88は、2つの前記押さえ部材76eと、2つの調整ナット86とを有する。
【0096】
各調整ナット86は、押さえ部材76eから刃物台動吸振器28の外側へ向かって突出する2つの前記刃物台用錘支持軸62bの対応する第2螺子部62fにそれぞれ螺合している。第2螺子部62fに対する調整ナット86の締め込み量に応じて、第1規制部74の縦板部74bと押さえ部材76eとの間の間隔が変更される。この間隔が変更されることによって、両弾性部材66a,66bから刃物台用錘64に付与される弾発力が変更され、刃物台動吸振器28により減衰可能な刃物台26の振動の振動数が変化する。
【0097】
具体的には、調整ナット86の締め込み量が増加すると、その調整ナット86によって押さえ部材76eが第1規制部74側に押し込まれて第1規制部74の縦板部74bと押さえ部材76eとの間の間隔が小さくなる。この間隔が小さくなることに伴って、刃物台用錘64に付与される前記両弾性部材66a,66bの弾発力が大きくなるとともに、ステー22の厚み方向における刃物台用錘64の相対変位に対する抵抗力が大きくなり、その結果、より高い振動数の刃物台26の振動が刃物台動吸振器28によって減衰可能となる。一方、調整ナット86の締め込み量が減少すると、第1規制部74の縦板部74bと押さえ部材76eとの間の間隔が大きくなり、それに伴って、刃物台用錘64に付与される前記両弾性部材66a,66bの弾発力が小さくなるとともに、ステー22の厚み方向における刃物台用錘64の相対変位に対する抵抗力が小さくなる。その結果、より低い振動数の刃物台26の振動が刃物台動吸振器28によって減衰可能となる。従って、本実施形態では、刃物台26の固有振動数に応じて調整ナット86のねじ込み量を調整することにより、前記両弾性部材66a,66bが刃物台用錘64に付与する弾発力をステー22の厚み方向への刃物台26の振動を減衰させるのに適切な値に調整できる。
【0098】
移送装置8は、旋削加工用の制御プログラムに従って旋削工具4がロータ軸100aに垂直な方向においてそのロータ軸100aに接離するとともにロータ軸100aに平行な方向に移動するように刃物台26を移送するものである。
【0099】
具体的には、この移送装置8は、基部89(図1参照)と、サドル90と、図略の第1送り機構と、クロススライド92と、第2送り機構94(図3参照)とを有する。
【0100】
基部89は、回転装置2のベース12の側方でそのベース12に隣接した位置に設置されている。この基部89の上面には、ステー22の厚み方向(ロータ軸100aに平行な方向)に延びる第1ガイドレール89aが設けられている。
【0101】
サドル90は、第1ガイドレール89a上に搭載されており、図略の第1送り機構により第1ガイドレール89aに沿ってロータ軸100aに平行な方向(ステー22の厚み方向)に移送される。サドル90の上面には、ステー22の長手方向(水平方向でかつロータ軸100aに垂直な方向)に延びる第2ガイドレール90a(図3参照)が設けられている。また、サドル90上には、第2送り機構94が設置されている。
【0102】
クロススライド92は、第2ガイドレール90a上に搭載されており、第2送り機構94により第2ガイドレール90aに沿って水平方向でかつロータ軸100aに垂直な方向に移送される。このクロススライド92は、刃物台26を下から支持している。すなわち、このクロススライド92上に刃物台26が設置されている。
【0103】
そして、タービンロータ100の旋削加工用の制御プログラムに従って前記第1送り機構がサドル90をロータ軸100aに平行な方向に移送するとともに前記第2送り機構94がクロススライド92を水平方向でかつロータ軸100aに垂直な方向に移送することにより、刃物台26及びステー22とともに旋削工具4が制御プログラムで規定された加工パスに従って移送され、タービンロータ100の旋削加工が行われる。
【0104】
以上説明したように、本実施形態では、タービンロータ100の加工時にステー動吸振器24によってステー22の先端部の厚み方向への振動の振幅が低減されるため、ステー22自身のびびり振動に起因するタービンロータ100の加工精度の低下を抑制することができる。
【0105】
なお、ステー動吸振器24によってステー22の振動の振幅が低減されたとしてもステー22には僅かに振動が残る。そして、ステー22のうち刃物台26からロータ軸100a側へ突出する部分の長さは、タービンロータ100の加工形状、具体的には、隣り合うディスク100b間の溝の深さに応じて変更されるが、その刃物台26からロータ軸100a側へのステー22の突出部分の長さによっては、前記ステー22に僅かに残った振動の振動数が刃物台26の固有振動数に近づいてステー22と刃物台26との共振又はステー22の振動と刃物台26の振動との干渉に起因するうねり振動が生じる虞がある。
【0106】
これに対して、本実施形態では、前記ステー22に僅かに残った振動の振動数が刃物台26からのステー22の突出部分の長さに応じて刃物台26の固有振動数に近づいたとしても、刃物台動吸振器28により、ステー22と刃物台26との共振が生じない程度又はステー22に僅かに残った振動と刃物台26の振動との干渉による大きなうねり振動が生じない程度まで刃物台26の固有振動の振幅を小さくすることができる。
【0107】
具体的には、刃物台26の重量は大きいため、刃物台26の固有振動数は元々低い値である。一方、ステー22は、刃物台26からの当該ステー22の突出部分の長さが小さい状態では、刃物台26の固有振動数に比べてかなり高い固有振動数を有するが、隣り合うディスク100b間の溝の幅が小さく、かつ、その溝の幅に対して当該溝の深さが非常に大きいというタービンロータ100の加工形状に起因して、旋削工具4の装着されたステー22の先端部を前記溝内に挿入してタービンロータ100の加工を行えるようにするためにステー22の厚みを小さくし、かつ、刃物台26からロータ軸100a側へのステー22の突出長さを大きくする必要があり、その場合には、ステー22の固有振動数が著しく低下して刃物台26の固有振動数に非常に近づき、ステー22と刃物台26との前記共振又はステー22と刃物台26との合成振動による前記うねり振動が生じる虞がある。これに対して、本実施形態では、ステー22に僅かに残った振動の振動数が上記のように低下して刃物台26の固有振動数に近づいたとしても、刃物台動吸振器28により、ステー22と刃物台26の共振が生じない程度又はステー22の振動と刃物台26の振動との干渉による大きなうねり振動が生じない程度まで刃物台26の固有振動の振幅が低減されるため、その結果、ステー22と刃物台26との共振又はステー22と刃物台26との合成振動に起因するタービンロータ100の加工精度の低下を抑制することができる。
【0108】
また、本実施形態では、刃物台動吸振器28が、刃物台26の重心位置よりもステー22の先端部に近い第1の位置P1と、刃物台26の重心位置よりもステー22の先端部から遠い第2の位置P2とにそれぞれ設けられているため、それらの刃物台動吸振器28は、刃物台26の振動の腹に近い位置に位置する。その結果、それらの刃物台動吸振器28によって刃物台26の振動を効果的に低減することができる。
【0109】
また、本実施形態では、刃物台26の重心位置と前記第1の位置P1との間の距離と、刃物台26の重心位置と前記第2の位置P2との間の距離と、第1の位置P1及び第2の位置P2にそれぞれ設けられた刃物台動吸振器28の重量とは、前記第1の位置P1と前記第2の位置P2とにおける刃物台26の重心位置回りの慣性モーメントが互いに等しくなるように設定されているため、ロータ軸100aの軸方向への刃物台26の移送時に刃物台26がロータ軸100aの軸方向に平行な面内(水平面内)において揺動するヨーイングが生じるのを防ぐことができる。その結果、タービンロータ100の加工時における刃物台26の移動精度の低下及びそれに起因する旋削工具4の移動精度の低下を抑制することができ、その旋削工具4の移動精度の低下に起因するタービンロータ100の加工精度の低下を抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態では、刃物台動吸振器28が、前記両規制部74,76に固定され、それら両規制部74,76間で刃物台用錘64をステー22の厚み方向に貫通するように延び、刃物台用錘64がステー22の厚み方向へ相対変位するように当該刃物台用錘64を案内する刃物台用錘支持軸62bを有するため、刃物台用錘64が相対変位する方向をステー22の厚み方向に限定することができる。これにより、刃物台用錘64が刃物台26の振動を低減する際に本来相対変位すべき方向であるステー22の厚み方向とは異なる方向へ相対変位することによって刃物台26にその異なる方向への振動が与えられるのを防ぐことができる。
【0111】
また、本実施形態では、刃物台動吸振器28において、前記両弾性部材66a,66bが刃物台用錘64の対応する端面に付与する弾発力の大きさを刃物台用弾発力変更部88により変更することができるため、ステー22の厚み方向への刃物台用錘64の相対変位に対する抵抗力の大きさを変更することができる。その結果、ステー22の厚み方向への刃物台用錘64の相対変位しやすさを調節することができ、刃物台動吸振器28が抑制可能な刃物台26の振動数を任意に調節することができる。
【0112】
また、本実施形態では、旋削工具がステー22の先端部の上部に設けられていてこの旋削工具4がタービンロータ100を切削する際に振動の発生点(加振点)となるため、刃物台26のうち旋削工具4に近い部分である上部がそれよりも下側の部分に比べてステー22の厚み方向に大きく振動する。これに対して、本実施形態では、刃物台動吸振器28が刃物台26(刃物台本体26a)の上面に設置されているため、その振動が大きくなる刃物台26の上部の振動を効果的に減衰することができる。
【0113】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0114】
例えば、上記実施形態では、刃物台上に設けられる刃物台用動吸振器の数が3つ以外であってもよい。
【0115】
また、刃物台上の刃物台用動吸振器が設けられる第1の位置P1と第2の位置P2は、上記実施形態で示したような位置に限定されない。
【0116】
例えば、図9に示す第1変形例のように、刃物台26の重心位置を通ってステー22の長手方向に延びる直線上において刃物台26の重心位置からの距離が互いに等しくなる位置に第1の位置P1と第2の位置P2が設定されてもよい。この場合には、刃物台26の重心位置回りの慣性モーメントが第1の位置P1と第2の位置P2で等しくなるようにそれら両位置P1,P2に設けられた刃物台動吸振器28の重量が等しい重量に設定されることが好ましい。
【0117】
また、図10に示す第2変形例のように、刃物台26の重心位置を通ってステー22の長手方向に対して斜めに延びる直線上において刃物台26の重心位置からの距離が互いに等しくなる位置に第1の位置P1と第2の位置P2が設定されていてもよい。この場合も、前記第1変形例の場合と同様、刃物台26の重心位置回りの慣性モーメントが第1の位置P1と第2の位置P2で等しくなるようにそれら両位置P1,P2に設けられた刃物台動吸振器28の重量が等しい重量に設定されることが好ましい。
【0118】
また、図11に示す第3変形例のように、刃物台26の重心位置を通ってステー22の長手方向に延びる直線上において例えば刃物台26の重心位置から第1の位置P1までの距離に対して刃物台26の重心位置から第2の位置P2までの距離が1/2となるような位置に第1の位置P1と第2の位置P2が設定されていてもよい。この場合には、刃物台26の重心位置回りの慣性モーメントが第1の位置P1と第2の位置P2で等しくなるように、第1の位置P1に設けられた刃物台動吸振器28と同じ重量の刃物台動吸振器28が第2の位置P2に2つ設けられていてもよい。なお、この場合において、第2の位置P2に2つの刃物台動吸振器28を設ける代わりに、第1の位置P1に設けられた刃物台動吸振器28の2倍の重量を有する1つの刃物台動吸振器28を第2の位置P2に設置してもよい。
【0119】
また、これらの各変形例の構成に限らず、刃物台26上の第1の位置P1と第2の位置P2とにおける刃物台26の重心位置回りの慣性モーメントが互いに等しくなるように、刃物台26の重心位置から第1の位置P1までの距離と、刃物台26の重心位置から第2の位置P2までの距離と、それら両位置P1,P2に設けられる刃物台動吸振器28の重量とが適宜設定されていてもよい。
【0120】
また、刃物台動吸振器28は、刃物台26(刃物台本体26a)の上面以外の箇所に設けられていてもよい。
【0121】
また、図12に示す第4変形例のように、刃物台用錘支持部62が前記刃物台用錘支持軸62bを備えていないとともに、刃物台用錘64が前記刃物台用リニアブッシュ64b、前記カラー64c及び前記固定部材64dを備えておらず、刃物台用錘本体64aに前記貫通穴64gが形成されていなくてもよい。そして、この変形例では、第2規制部76の貫通穴76hには、上記第1実施形態の押さえ部材76eよりも薄い押さえ部材76pが嵌め込まれている。この押さえ部材76pには、前記軸挿通穴76kが設けられていない。そして、貫通穴76hのうち押さえ部材76pが配設された部位よりも刃物台動吸振器28の外側寄りに位置する部位の内周面には、螺子溝が形成されている。また、この変形例では、刃物台用弾発力変更部88が、前記調整ナット86の代わりに、外周面に螺子山が設けられた調整部材96を備えている。この調整部材96は、前記貫通穴76hの螺子溝が形成された部位に螺入されている。そして、この変形例では、貫通穴76hに対するこの調整部材96のねじ込み量に応じて、押さえ部材76pと第1規制部74の縦板部74bとの間の間隔が変化し、刃物台用錘64に付与される刃物台用第1弾性部材66a及び刃物台用第2弾性部材66bの弾発力の大きさが変化する。
【符号の説明】
【0122】
2 回転装置
4 旋削工具
6 旋削工具支持装置
8 移送装置
22 ステー
24 ステー動吸振器
26 刃物台
28 刃物台動吸振器
62b 刃物台用錘支持軸(支持軸)
64 刃物台用錘(錘)
66a 刃物台用第1弾性部材(第1弾性部材)
66b 刃物台用第2弾性部材(第2弾性部材)
74 第1規制部
76 第2規制部
88 刃物台用弾発力変更部(弾発力変更部)
100 タービンロータ
100a ロータ軸
100b ディスク
P1 第1の位置
P2 第2の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ軸及びその軸方向に間隔をおいて並ぶ複数枚のディスクを有するタービンロータの当該ディスク同士の間に位置するロータ軸の外周面及び各ディスクの側面の少なくとも一方を旋削加工するための旋削工具を支持する旋削工具支持装置であって、
特定方向に延びる板状をなし、その長手方向の一端部である先端部に前記旋削工具が装着されるステーと、
前記ステーをそのステーの厚み方向が前記ロータ軸の軸方向に略平行となり、かつ、そのステーの前記先端部が前記タービンロータの側方から前記ロータ軸側に突出するような姿勢で支持するとともに、前記ステーの長手方向において前記ロータ軸に対する前記ステーの相対位置を変更することが可能なように前記ステーを支持し、前記タービンロータの加工時に前記ステーの前記先端部が前記ロータ軸の軸方向に隣り合う前記ディスク同士の間に挿入されるように移送装置によって移送される刃物台と、
前記ステーのうち前記旋削工具が装着される部位の近傍の部位に設けられ、前記タービンロータの加工時に前記ステーの先端部に生じる厚み方向への振動を低減するためのステー動吸振器と、
前記刃物台に設けられ、前記タービンロータの加工時に前記刃物台に生じる前記ステーの厚み方向への振動を低減するための刃物台動吸振器とを備えた、旋削工具支持装置。
【請求項2】
前記刃物台動吸振器は、前記刃物台の重心位置よりも前記ステーの前記先端部に近い第1の位置と、前記刃物台の重心位置よりも前記ステーの前記先端部から遠い第2の位置とにそれぞれ設けられている、請求項1に記載の旋削工具支持装置。
【請求項3】
前記刃物台の重心位置と前記第1の位置との間の距離と、前記刃物台の重心位置と前記第2の位置との間の距離と、前記第1の位置及び前記第2の位置にそれぞれ設けられた前記刃物台動吸振器の重量とは、前記第1の位置と前記第2の位置とにおける前記刃物台の重心位置回りの慣性モーメントが互いに等しくなるように設定されている、請求項2に記載の旋削工具支持装置。
【請求項4】
前記刃物台動吸振器は、前記ステーの厚み方向において互いに離間するように前記刃物台に設けられた第1規制部及び第2規制部と、それら両規制部に対して前記ステーの厚み方向に相対変位することが可能となるようにそれら両規制部の間のスペースに配設され、前記刃物台が前記ステーの厚み方向において振れたときに前記両規制部間で前記刃物台に対してその振れと逆向きに相対変位することにより当該刃物台の振れを抑制する錘とを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の旋削工具支持装置。
【請求項5】
前記刃物台動吸振器は、前記両規制部に固定され、それら両規制部間で前記錘を前記ステーの厚み方向に貫通するように延び、前記錘が前記ステーの厚み方向へ変位するように当該錘を案内する支持軸をさらに有する、請求項4に記載の旋削工具支持装置。
【請求項6】
前記錘は、前記第1規制部と対向する第1の端面と、前記第2規制部と対向する第2の端面とを有し、
前記刃物台動吸振器は、前記第1規制部と前記錘の前記第1の端面との間に弾性変形状態で介装された第1弾性部材と、前記第2規制部と前記錘の前記第2の端面との間に弾性変形状態で介装された第2弾性部材と、前記第1の端面に対して前記第1弾性部材が付与する弾発力の大きさ及び前記第2の端面に対して前記第2弾性部材が付与する弾発力の大きさを変更するための弾発力変更部とをさらに有する、請求項4又は5に記載の旋削工具支持装置。
【請求項7】
ロータ軸及びその軸方向に並ぶ複数枚のディスクを有するタービンロータを旋削加工するためのタービンロータ加工用旋盤であって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の旋削工具支持装置と、
タービンロータをその軸回りに回転させる回転装置と、
前記ステーの先端部に装着される旋削工具と、
旋削加工用の制御プログラムに従って前記旋削工具が前記ロータ軸に垂直な方向においてそのロータ軸に接離するとともに当該ロータ軸に平行な方向に移動するように前記刃物台を移送する移送装置とを備えた、タービンロータ加工用旋盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−35328(P2012−35328A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174379(P2010−174379)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【Fターム(参考)】