説明

既設管更新方法と装置

【課題】簡単な工法で安全に強度の高い新設管を敷設することができる既設管更新方法と装置を提供する。
【解決手段】更新する既設管10内を進行して拡径破壊する破砕部24と、破砕部24の進行方向後端部に位置し新設管22を保持して拡径破壊された既設管10内に挿入させる新設管保持部32を有する。破砕部24と新設管保持部32の中間部に設けられ、拡径破壊された既設管10と新設管22の隙間に充填される液状の遅硬性滑剤44の吐出口28を有した遅硬性滑剤吐出部30を備える。遅硬性滑剤吐出部30は、吐出口28の破砕部24側に、遅硬性滑剤44の流入を防止する流動防止材46を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス管や水道管、下水管等を敷設するものであって、老朽化した管を新しい管に置き換える既設管更新方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス管、水道管など地中に敷設されている老朽化した既設管を新しい管に更新する際には、既設管の始点から終点まで地表から溝を掘削して管を交換する方法や、作業穴から廃止管を切断しながら引き抜いて、その後の推進孔に新設管を挿入したりする方法あった。
【0003】
また、特許文献1に開示されているように、既設管の始点位置と終点位置に作業穴を掘削して、作業穴において既設管を拡径破壊し、拡径破壊跡の推進孔に新設管を挿入する方法も行われている。この他、特許文献2に開示されているように、既設管の始点位置と終点位置に作業穴を掘削して、作業穴において既設管を拡径破壊し、拡径破壊跡の内壁に樹脂層を形成する方法も提案されている。
【0004】
さらに、特許文献3に開示されているように、既設管を破壊せず、既設管の中に新設管を挿入し、既設管と新設管の隙間にモルタル等の中込材を充填して新設管を固定する方法もある。
【特許文献1】特開昭57−120789号公報
【特許文献2】特開平5−24113号公報
【特許文献3】特開2004−218827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、既設管の始点から終点まで溝を掘削して管を交換する方法にあっては、掘削、復旧に多大の労力と費用を要し、更に管の深さや地上に建造物がある場合は作業自体が不可能である等の問題があった。
【0006】
特許文献1に開示された方法にあっては、既設管の破壊片と新設管とが一体化されずに一定の隙間が残っており、地下水の多い土質の場合に該隙間が水路となって土砂を取り込み、地盤に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、地下水位の高い地域の場合に、新設管に対する水圧による曲げ応力等がより加わりやすくなるため、新設管自体の形状又は直線性を維持することが困難であった。
【0007】
特許文献2に開示された方法にあっては、既設管の破壊片が樹脂層により一体化された新管が形成されるが、例えばコンクリート製の既設管を更新する場合にあっては、荷重に対する管の強度は更新前に比べて著しく低下するという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献3に開示された方法にあっては、新設管は、既設管の内径よりも小さな外径を有するものに限られるため、既設管の更新後のガス又は水道水等の輸送能力は、更新前に比べて低下するという問題があった。
【0009】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、簡単な工法で安全に強度の高い新設管を敷設することができる既設管更新方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、更新する既設管の一端から破砕装置を挿入し、既設管の他端まで進行して既設管全体を拡径破壊するとともに、新設管を前記既設管の拡径破壊跡の推進孔に挿入する既設管の更新方法であって、前記破砕装置から液状の遅硬性滑剤を吐出させ、拡径破壊された前記既設管と前記新設管の隙間に前記遅硬性滑剤を充填しながら前記新設管を挿入する既設管更新方法である。
【0011】
またこの発明は、更新する既設管内を進行して拡径破壊する破砕部と、前記破砕部の進行方向後端部に位置し新設管を保持して拡径破壊された前記既設管内に挿入させる新設管保持部と、前記破砕部と新設管保持部の中間部に設けられ、拡径破壊された前記既設管と新設管の隙間に充填される液状の遅硬性滑剤の吐出口を有した遅硬性滑剤吐出部とを設けた既設管更新装置である。
【0012】
前記遅硬性滑剤吐出部は、前記吐出口の破砕部側に、前記遅硬性滑剤の流入を防止する流動防止材を備えたものである。
【0013】
さらに、前記遅硬性滑剤吐出部は、前記吐出口の周回部分又は前記新設管保持部側に、前記遅硬性滑剤の流動誘導溝を設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の既設管更新方法によれば、短時間かつ低コストで既設管の更新を行うことができる。さらに、更新後は既設管の破壊片と新設管とが遅効性滑剤の硬化層により一体化されて強度が高くなり、地上における地盤沈下等のおそれもない。また、ガスや水道水等の管路の輸送能力は、既設管と同等以上の能力を確保することができる。
【0015】
またこの発明の既設管更新装置によれば、遅硬性滑剤を既設管の破壊作業と同時に充填することにより、新設管の挿入抵抗を低下させ新設管の挿入負荷が軽減され、作業時間もほとんど増加しない。さらに、樹脂吐出部に設けた流動防止材や流動誘導溝により、遅硬性滑剤を既設管と新設管の隙間全体に偏りなく充填することができ、新設管の挿入をより容易なものにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の既設管更新方法と装置の一実施形態について、図面をもとに説明する。まず、作業に用いる装置及び設備などの構成について説明する。この実施形態の既設管更新装置は、既設管10を拡径して破壊する破壊装置16と、破壊装置16をワイヤ20を介して牽引するウインチ18、及び後述する遅効性滑剤供給装置34と供給用のホース36から成る。
【0017】
破壊装置16は、既設管10の内径寸法よりも径が僅かに大きい部分を有する破砕部24と、ホース36から供給される遅硬性滑剤を吐出する遅硬性滑剤吐出部30と、新設管22の一端を保持する新設管保持部32を備える。これらは、ワイヤ20で牽引される側からみて前記の順に形成されている。
【0018】
遅硬性滑剤吐出部30は、遅硬性滑剤44をホース36を介して受け入れる受入口26と、それを吐出する吐出口28を有する。遅硬性滑剤吐出部30の基端部側には、新設管保持部32が設けられ、既設管10を更新する新設管22の先端部が連結される。
【0019】
遅硬性滑剤44は、一般には圧入推進工法等に用いられる材料であって、施工工事中は液状の流動体であって圧入時の摩擦を減少させるとともに、施工工事終了後1〜4ヶ月で硬化して裏込め材としての機能を果たす材料である。例えば、株式会社薬材開発センター社から販売されているCaO、SiO等を主成分としたセメント系の材料である商品名AHLや、高炉スラグを利用したユニオンヒューム管株式会社の遅効性滑材がこれに該当する。
【0020】
さらに、破砕装置16の遅硬性滑剤吐出部30は、吐出口28の前方部分(破砕部側部分)に遅硬性滑剤が流入するのを防御する流動防止材46と、流動防止材46を遅硬性滑材吐出部30に取り付ける固定具48と、吐出口28の周回部に設けられ遅硬性滑剤44の流れを誘導する流動誘導溝50とを備えている。
【0021】
流動防止材46は、図4に示すように、遅硬性滑材吐出部30に装着するための取付穴52を有する円筒形の取付部54と、円筒形の一端をラッパ状に広げた開口部56を有している。流動防止材46は、例えば既設管10の拡径破壊作業の途中で破砕装置16の移動を停止させたり、移動の速度を低下させたとき等に、吐出口28から吐出された遅硬性滑剤が破砕部側に流れないように防御する働きをする。なお、流動防止材45の取付部52は必ずしも円筒形である必要はなく、遅硬性滑材吐出部30の外周の形状に合わせて周回するように装着できればよい。
【0022】
流動誘導溝50は、吐出口28の位置から周回するように設けられており、吐出口28から吐出された遅硬性滑剤は流動誘導溝50に沿って周回し、新設管の外周面全体に偏りなく充填される。
【0023】
次に、既設管更新装置の動作及び既設管更新方法について説明する。まず、図3に示すように、既設管10の所定間隔でその両端位置に作業穴12と作業穴14を掘削する。一方の作業穴14側では、ウインチ18の巻き取り部から引き出したワイヤ20を既設管10内に挿通する。他方の作業穴12では、ワイヤ20の先端を破壊装置16の破砕部24の先端部に固定し、ウインチ18によりワイヤ20を巻き取り、破砕装置24を既設管10内で摺動させる。新設管22の一端は破砕装置16に保持されており、破砕装置16に追従して挿入される。
【0024】
また、地上には遅硬性滑剤供給装置34と、その供給装置から破砕装置16に接続されるホース36が設けられ、破砕装置16に遅硬性滑剤が供給される。
【0025】
ウインチ18が回転しワイヤ20により破砕装置16が牽引されると、破砕部24が既設管10の内径より大きな寸法部分有しているので、既設管10を拡径破壊する。破砕装置16の進行に伴って、破砕部24により形成された推進孔40に新設管22が追従して挿入される。同時に、遅硬性滑剤供給装置34からホース36を介して受入口26に送られた所定流量の液状の遅硬性滑剤44が、吐出口28から吐出され、推進孔40と新設管22の隙間に充填される。液状の遅硬性滑剤44は適度な流動性を有しており、図2に示すように、拡径破壊された既設管10と新設管22の隙間、及び、既設管の破壊片42の隙間の隅々まで充填される。
【0026】
さらに、既設管10全体の拡径破壊作業及び新設管22の挿入作業が完了した後、所定の期間が経過すると、遅硬性滑剤44は既設管の破壊片42及び新設管22と一体に硬化し、既設管よりも管強度が増強された更新管58が形成される。
【0027】
なお、流動誘導溝50の形状や本数は図5の実施形態に限定されるものではなく、図6に示すように放射状に流動誘導溝60が形成されたものでも良く、拡径破壊された既設管と新設管の隙間の広さ、既設管及び新設管の材質、遅硬性滑剤の流動性等の性質によって、適宜設定することができる。
【0028】
また、この発明の既設管の更新方法及び破砕装置は、一般的には塩化ビニル等の合成樹脂管やコンクリート管等の更新作業に適したものであるが、それに限定するものではない。また、本実施形態においては、遅硬性滑剤吐出部30には吐出口28が1箇所だけ設けられているが、複数箇所に設けると、新設管の外周面全体に偏りなく充填され易くなる。また、上記実施形態においては、破砕部24と他の部分(前記吐出部30及び前記保持部32)が別個のユニットであって、連結部38で連結して破砕装置16を形成する形態を例示しているが、すべて別個のユニットの各部を連結する形態であっても、各部がすべて一体に形成された形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態の既設管破砕装置を示す拡大断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】この実施形態の発明の既設管の更新方法を示す全体断面図である。
【図4】この実施形態の破砕装置の流動防止材を示す正面図及び側面図である。
【図5】この実施形態の破砕装置の遅硬性滑材吐出部を示す側面図である。
【図6】この実施形態の破砕装置の遅硬性滑材吐出部の他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 既設管
12、14 作業穴
16 破砕装置
18 ウインチ
20 ワイヤ
22 新設管
24 破砕部
26 受入口
28 吐出口
30 遅硬性滑材吐出部
32 新設管保持部
34 遅硬性滑剤供給装置
36 ホース
38 連結部
40 推進孔
42 破壊片
44 遅硬性滑剤
46 流動防止材
48 固定具
50,52 流動誘導溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
更新する既設管の一端から破砕装置を挿入し、既設管の他端まで進行して既設管全体を拡径破壊するとともに、新設管を前記既設管の拡径破壊跡の推進孔に挿入する既設管の更新方法において、
前記破砕装置から液状の遅硬性滑剤を吐出させ、拡径破壊された前記既設管と前記新設管の隙間に前記遅硬性滑剤を充填しながら前記新設管を挿入することを特徴とする既設管更新方法。
【請求項2】
更新する既設管内を進行して拡径破壊する破砕部と、前記破砕部の進行方向後端部に位置し新設管を保持して拡径破壊された前記既設管内に挿入させる新設管保持部と、前記破砕部と新設管保持部の中間部に設けられ、拡径破壊された前記既設管と新設管の隙間に充填される液状の遅硬性滑剤の吐出口を有した遅硬性滑剤吐出部とを設けたこと特徴とする既設管更新装置。
【請求項3】
前記遅硬性滑剤吐出部は、前記吐出口の破砕部側に、前記遅硬性滑剤の流入を防止する流動防止材を備えたことを特徴とする請求項2記載の既設管更新砕装置。
【請求項4】
前記遅硬性滑剤吐出部は、前記吐出口の周回部分又は前記新設管保持部側に、前記遅硬性滑剤の流動誘導溝を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の既設管更新装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−14128(P2009−14128A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177999(P2007−177999)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(500383263)北陸推進工業株式会社 (3)