日時計
【課題】時刻線を影でなく光点で示すことができる日時計を提供する。
【解決手段】太陽光Lを内部に導入して、半球レンズ4の底面に設けられたミラー5により反射して、その反射光を半球レンズ4で集光させることで、半球カバー2の表面に表示されたアナレンマ曲線8を光点Pで指示することができる。影でなく集光した光点Pで指示するため、アナレンマ曲線8を正確に且つ見やすい状態で示すことができる。
【解決手段】太陽光Lを内部に導入して、半球レンズ4の底面に設けられたミラー5により反射して、その反射光を半球レンズ4で集光させることで、半球カバー2の表面に表示されたアナレンマ曲線8を光点Pで指示することができる。影でなく集光した光点Pで指示するため、アナレンマ曲線8を正確に且つ見やすい状態で示すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の日時計は、投影棒や投影板の影を時刻線が表示された平面や球面に投影し、影が示す時刻線から時刻を知る構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−66166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、影を指針として時刻線を示すため、表示が暗く見づらい。特に投影棒等を用いて影の先端で時刻線を点状に示す場合は、影の先端が不明瞭で時刻を認識しづらい場合がある。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、時刻線を影でなく光点で示すことができる日時計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、透明で有底の半球カバーと、半球カバー内部の底面部中心に設置された透明の半球レンズと、半球体の底面に設けられた上面が鏡面のミラーと、半球カバーと半球レンズとの間の空間に充填された透明充填材と、半球カバーの表面に表示された時刻線と、から構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、透明充填剤が水であることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、透明充填剤中に散乱剤を分散させたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、時刻線がアナレンマ曲線であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、日時計に当たった太陽光を内部に導入して、半球レンズの底面に設けられたミラーにより反射して、その反射光を半球レンズで集光させることで、半球カバーの表面に表示された時刻線を光点(集光スポット)で指示することができる。影でなく集光した光点で指示するため、時刻線を正確に且つ見やすい状態で示すことができる。半球カバーと半球レンズとの間に透明充填材を設け、空気に比べて相対屈折率を小さくしているため、半球レンズの焦点距離が長くなり、集光した光点をよりシャープにして時刻の読み取り精度を向上することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、透明充填剤として水を利用したため、取り扱いが容易で、透明充填材の交換作業などが行いやすい。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、透明充填剤中に光の散乱剤を分散させたため、半球カバーの光点だけでなく、そこに至る光路も視認することができ、光点位置が更に見やすくなる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、時刻線がアナレンマ曲線であるため、直線状の時刻線に比べ、季節に応じた正確な時刻を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】日時計の全体斜視図。
【図2】日時計の断面図。
【図3】日時計の光路を示す断面図。
【図4】ガラス球の屈折を示す光路図。
【図5】アナレンマ曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図5は、本発明の好適な実施形態を示す図である。この日時計1は全体として半球形状をしている。表面は透明樹脂板製で半球ドーム状の半球カバー2にて形成されている。底面部3はフラットで非透明の樹脂板にて形成されている。底面部3の直径は10cmである。
【0016】
半球カバー2の内部には底面部3の中心に透明ガラス製の半球レンズ4が設けられている。この半球レンズ4の直径は3cmである。この半球レンズ4は底面がフィルム状のミラー5を介在した状態で半球カバー2の底面部3に対して接着されている。従って、半球レンズ4の底面は上面が鏡面となっている。
【0017】
半球カバー2と半球レンズ4との間の内部空間には透明充填材として水6が充填されている。また水6には光の散乱剤としてコロイド状の乳剤7が分散されている。従って、水6は若干白く濁った透明状態になっている。
【0018】
半球カバー2の表面には、日時計1が利用される緯度に対応し且つ日時計1を決められた方角にセットした状態で指示される時刻線としてアナレンマ曲線8が表示されている。太陽は1時間に角度15度ずつ移動するため、アナレンマ曲線8は半球レンズ4の中心からの角度が15度ごとの各時間に対応して表示されている。直線でなく8の字状のアナレンマ曲線8としたのは、地球が太陽の周りを楕円運動していることと、地球の回転軸が公転面に対して垂直でないことから、太陽の年間を通しての同時刻の位置が天球上で8の字を描くためである。アナレンマ曲線8の1つには、図5に示すように、一年間の月数が表示されており、アナレンマ曲線上の月の位置も数字により把握できるようになっている。尚、アナレンマ曲線8は上端が夏至で、下端が冬至である。
【0019】
次に作用を説明する。
【0020】
日時計1を決められた位置にセットした状態で、太陽光Lが日時計1内に入射すると、半球カバー2と水6を透過した後に半球レンズ4内に屈折しながら進入する。そして、半球レンズ4内に進入した太陽光Lは半球レンズ4の底面のミラー5で反射される。ミラー5で反射された太陽光Lは再度半球レンズ4で屈折しながらレンズ作用により水6の中を収束しながら集光する。半球カバー2と半球レンズ4との間隔は概ね半球レンズ4の焦点距離と一致し、太陽光Lは半球カバー2の表面でスポット状の光点Pとなるように集光する。光点Pの位置は太陽光Lの入射角度(時刻)により変化し、光点Pとアナレンマ曲線8との位置関係関係から時刻を知ることができる。尚、図5は3月の光点Pの移動状態を示している。
【0021】
本来ガラス製の半球レンズ4は屈折率が大きい(n=1.5)ため、焦点距離が極端に短く、収差も大きくて使いづらい。図4は、ガラス球9へ平行光が入射した時の光路を示す図である。集光点P′がガラス球9に近く利用しづらい。
【0022】
そのため、本実施形態では、ガラス製の半球レンズ4の周囲の空間を水6で満たし、屈折率を相対的に小さくして焦点距離を伸ばした。相対屈折率は屈折面の両側に接する2つの空間を満たすそれぞれの物質の屈折率の比で決まる。水6の屈折率が1.3であるので、水6の中での半球レンズ4の相対的な屈折率は1.15程度になる。屈折率が相対的に小さくなるため、焦点距離が伸び、半球レンズ4を透過した集光を利用しやすくなると共に、集光した光点がよりシャープになり、時刻の読み取り精度を向上することができる。
【0023】
また、この実施形態では、水6の中に光の散乱剤としてコロイド状の乳剤7が分散されているため、半球カバー2の表面の光点Pだけでなく、半球レンズ4から収束して光点Pに至る光路10も光輝状態となって視認することができる。従って、あたかも光の指針でアナレンマ曲線8の位置を指し示しているようになり、光点Pの位置を確認しやすいだけでなく、意匠的な効果も向上する。
【0024】
以上説明したように、この実施形態によれば、半球カバー2の表面に表示されたアナレンマ曲線8を、影でなく、光点Pで指示することができるため、時刻を正確に且つ容易に把握することができる。
【0025】
尚、以上の説明では、半球カバー2及び半球レンズ4を透明にしたが、透明は、無色透明に限定されず、光透過性を有するものであれば着色透明でも良い。
【0026】
ガラス製の半球レンズ4を例にしたが、アクリル等の樹脂製でも良い。
【0027】
透明充填剤として水6を例にしたが、シリコンオイルのような別の液体でも良いし、空間にプラスチック原液を流し込んで固化させた透明固体でも良い。
【0028】
散乱剤も乳剤7に限定されず、透明充填材中に均一に分散して、光を散乱させる機能を有するものであれば何でも良い。
【符号の説明】
【0029】
1 日時計
2 半球カバー
3 底面部
4 半球レンズ
5 ミラー
6 水(透明充填材)
7 乳剤(散乱剤)
8 アナレンマ曲線(時刻線)
9 ガラス球
10 光路
L 太陽光
P 光点
P′ 集光点
【技術分野】
【0001】
本発明は日時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の日時計は、投影棒や投影板の影を時刻線が表示された平面や球面に投影し、影が示す時刻線から時刻を知る構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−66166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、影を指針として時刻線を示すため、表示が暗く見づらい。特に投影棒等を用いて影の先端で時刻線を点状に示す場合は、影の先端が不明瞭で時刻を認識しづらい場合がある。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、時刻線を影でなく光点で示すことができる日時計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、透明で有底の半球カバーと、半球カバー内部の底面部中心に設置された透明の半球レンズと、半球体の底面に設けられた上面が鏡面のミラーと、半球カバーと半球レンズとの間の空間に充填された透明充填材と、半球カバーの表面に表示された時刻線と、から構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、透明充填剤が水であることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、透明充填剤中に散乱剤を分散させたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、時刻線がアナレンマ曲線であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、日時計に当たった太陽光を内部に導入して、半球レンズの底面に設けられたミラーにより反射して、その反射光を半球レンズで集光させることで、半球カバーの表面に表示された時刻線を光点(集光スポット)で指示することができる。影でなく集光した光点で指示するため、時刻線を正確に且つ見やすい状態で示すことができる。半球カバーと半球レンズとの間に透明充填材を設け、空気に比べて相対屈折率を小さくしているため、半球レンズの焦点距離が長くなり、集光した光点をよりシャープにして時刻の読み取り精度を向上することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、透明充填剤として水を利用したため、取り扱いが容易で、透明充填材の交換作業などが行いやすい。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、透明充填剤中に光の散乱剤を分散させたため、半球カバーの光点だけでなく、そこに至る光路も視認することができ、光点位置が更に見やすくなる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、時刻線がアナレンマ曲線であるため、直線状の時刻線に比べ、季節に応じた正確な時刻を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】日時計の全体斜視図。
【図2】日時計の断面図。
【図3】日時計の光路を示す断面図。
【図4】ガラス球の屈折を示す光路図。
【図5】アナレンマ曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図5は、本発明の好適な実施形態を示す図である。この日時計1は全体として半球形状をしている。表面は透明樹脂板製で半球ドーム状の半球カバー2にて形成されている。底面部3はフラットで非透明の樹脂板にて形成されている。底面部3の直径は10cmである。
【0016】
半球カバー2の内部には底面部3の中心に透明ガラス製の半球レンズ4が設けられている。この半球レンズ4の直径は3cmである。この半球レンズ4は底面がフィルム状のミラー5を介在した状態で半球カバー2の底面部3に対して接着されている。従って、半球レンズ4の底面は上面が鏡面となっている。
【0017】
半球カバー2と半球レンズ4との間の内部空間には透明充填材として水6が充填されている。また水6には光の散乱剤としてコロイド状の乳剤7が分散されている。従って、水6は若干白く濁った透明状態になっている。
【0018】
半球カバー2の表面には、日時計1が利用される緯度に対応し且つ日時計1を決められた方角にセットした状態で指示される時刻線としてアナレンマ曲線8が表示されている。太陽は1時間に角度15度ずつ移動するため、アナレンマ曲線8は半球レンズ4の中心からの角度が15度ごとの各時間に対応して表示されている。直線でなく8の字状のアナレンマ曲線8としたのは、地球が太陽の周りを楕円運動していることと、地球の回転軸が公転面に対して垂直でないことから、太陽の年間を通しての同時刻の位置が天球上で8の字を描くためである。アナレンマ曲線8の1つには、図5に示すように、一年間の月数が表示されており、アナレンマ曲線上の月の位置も数字により把握できるようになっている。尚、アナレンマ曲線8は上端が夏至で、下端が冬至である。
【0019】
次に作用を説明する。
【0020】
日時計1を決められた位置にセットした状態で、太陽光Lが日時計1内に入射すると、半球カバー2と水6を透過した後に半球レンズ4内に屈折しながら進入する。そして、半球レンズ4内に進入した太陽光Lは半球レンズ4の底面のミラー5で反射される。ミラー5で反射された太陽光Lは再度半球レンズ4で屈折しながらレンズ作用により水6の中を収束しながら集光する。半球カバー2と半球レンズ4との間隔は概ね半球レンズ4の焦点距離と一致し、太陽光Lは半球カバー2の表面でスポット状の光点Pとなるように集光する。光点Pの位置は太陽光Lの入射角度(時刻)により変化し、光点Pとアナレンマ曲線8との位置関係関係から時刻を知ることができる。尚、図5は3月の光点Pの移動状態を示している。
【0021】
本来ガラス製の半球レンズ4は屈折率が大きい(n=1.5)ため、焦点距離が極端に短く、収差も大きくて使いづらい。図4は、ガラス球9へ平行光が入射した時の光路を示す図である。集光点P′がガラス球9に近く利用しづらい。
【0022】
そのため、本実施形態では、ガラス製の半球レンズ4の周囲の空間を水6で満たし、屈折率を相対的に小さくして焦点距離を伸ばした。相対屈折率は屈折面の両側に接する2つの空間を満たすそれぞれの物質の屈折率の比で決まる。水6の屈折率が1.3であるので、水6の中での半球レンズ4の相対的な屈折率は1.15程度になる。屈折率が相対的に小さくなるため、焦点距離が伸び、半球レンズ4を透過した集光を利用しやすくなると共に、集光した光点がよりシャープになり、時刻の読み取り精度を向上することができる。
【0023】
また、この実施形態では、水6の中に光の散乱剤としてコロイド状の乳剤7が分散されているため、半球カバー2の表面の光点Pだけでなく、半球レンズ4から収束して光点Pに至る光路10も光輝状態となって視認することができる。従って、あたかも光の指針でアナレンマ曲線8の位置を指し示しているようになり、光点Pの位置を確認しやすいだけでなく、意匠的な効果も向上する。
【0024】
以上説明したように、この実施形態によれば、半球カバー2の表面に表示されたアナレンマ曲線8を、影でなく、光点Pで指示することができるため、時刻を正確に且つ容易に把握することができる。
【0025】
尚、以上の説明では、半球カバー2及び半球レンズ4を透明にしたが、透明は、無色透明に限定されず、光透過性を有するものであれば着色透明でも良い。
【0026】
ガラス製の半球レンズ4を例にしたが、アクリル等の樹脂製でも良い。
【0027】
透明充填剤として水6を例にしたが、シリコンオイルのような別の液体でも良いし、空間にプラスチック原液を流し込んで固化させた透明固体でも良い。
【0028】
散乱剤も乳剤7に限定されず、透明充填材中に均一に分散して、光を散乱させる機能を有するものであれば何でも良い。
【符号の説明】
【0029】
1 日時計
2 半球カバー
3 底面部
4 半球レンズ
5 ミラー
6 水(透明充填材)
7 乳剤(散乱剤)
8 アナレンマ曲線(時刻線)
9 ガラス球
10 光路
L 太陽光
P 光点
P′ 集光点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明で有底の半球カバーと、
半球カバー内部の底面部中心に設置された透明の半球レンズと、
半球体の底面に設けられた上面が鏡面のミラーと、
半球カバーと半球レンズとの間の空間に充填された透明充填材と、
半球カバーの表面に表示された時刻線と、から構成されていることを特徴とする日時計。
【請求項2】
透明充填剤が水であることを特徴とする請求項1記載の日時計。
【請求項3】
透明充填剤中に散乱剤を分散させたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の日時計。
【請求項4】
時刻線がアナレンマ曲線であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の日時計。
【請求項1】
透明で有底の半球カバーと、
半球カバー内部の底面部中心に設置された透明の半球レンズと、
半球体の底面に設けられた上面が鏡面のミラーと、
半球カバーと半球レンズとの間の空間に充填された透明充填材と、
半球カバーの表面に表示された時刻線と、から構成されていることを特徴とする日時計。
【請求項2】
透明充填剤が水であることを特徴とする請求項1記載の日時計。
【請求項3】
透明充填剤中に散乱剤を分散させたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の日時計。
【請求項4】
時刻線がアナレンマ曲線であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の日時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−2980(P2013−2980A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134858(P2011−134858)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
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