説明

日本酒と料理の相性判定方法、相性判定システム、並びに、相性判定プログラム及びそれを記録した記録媒体

【課題】専門的な知識がなくとも、多数の日本酒と多数の料理との相性を、一貫性をもって客観的に判定でき、かつ信頼度の高い判定ができる方法等を提供する。
【解決手段】日本酒に関する、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度から選択される2種以上の情報を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された情報に基づき、当該日本酒と料理との相性度を演算し、当該日本酒と料理との相性を判定する演算・判定工程と、
前記演算・判定工程により判定された判定結果を出力する出力工程と
を含むことを特徴とする日本酒と料理の相性判定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日本酒と料理の相性判定方法、相性判定システム、並びに、相性判定プログラム及びそれを記録した記録媒体に関し、特に、日本酒に関する分析値や醸造方法などに基づいて、当該日本酒と料理との相性を判定する相性判定方法、相性判定システム、並びに、相性判定プログラム及びそれを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
日本酒を販売する場合、商品情報として、日本酒度やアルコール分、酸度、アミノ酸度などの一般分析値、原料米や酵母、醸造方法などが求められるが、料理との相性が必要とされるケースも多い。
【0003】
従来、日本酒と料理の相性を判定するには、料理の専門家、酒造技術者、ソムリエなどが独自の経験則に基づいて判定していた。しかし、この方法では、個人によって判断基準や経験則も異なるので、判定結果に一貫性や客観性がないという問題がある。また、専門的な知識や経験がないと判定できないという問題もある。
【0004】
判定結果に一貫性や客観性を持たせる試みとして、酒造メーカーが独自で自社商品の相性リストを作成して公開している事例もある。しかし、この方法では、自社商品以外の日本酒については料理との相性を判定できないという問題がある。
【0005】
判定結果に一貫性や客観性を持たせ、さらに多くの日本について料理との相性を判定するために、例えば、日本酒を「香りの高い日本酒」、「コクのある日本酒」などに分類し「香りの高い日本酒は白身魚に合う」とか「コクのあるタイプはアクの強い料理に合う」などのセオリーにまとめ、そのセオリーに基づいて判定する試みもなされている。しかし、この方法では、料理との相性を判定する以前に、ある日本酒が、「香りの高い日本酒」、「コクのある日本酒」などのどの分類に属するのかを、専門的知識や経験がないと判定できないという問題がある。
【0006】
専門的な知識や経験がなくても判定できる方法として、予め専門家がその酒の特性を4種類の味と香りのレベルで評価し、その判定結果を商品のラベルに表示する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では商品のラベルで、その酒の分類を知り、その分類と合う料理を別に用意したリストから読み取って相性判定できるように工夫されている。
しかしながら、この方法では、このラベルを添付していない多くの市販の日本酒の判定はできないという問題がある。また、多様な個性を持つ日本酒を4種類に分類してしまうことに無理があるという問題がある。
【0007】
また、日本酒のアミノ酸度と、料理に使用される食材及び調味料のアミノ酸含有量とを判断要素として、日本酒と料理の相性を判別ないし検索するシステムが提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、この場合、日本酒の特徴を構成する要素としては、アミノ酸の他にも酒の甘辛、濃淡、香りなど多数あり、アミノ酸量だけでは料理との相性を判断できないため、この方法では、日本酒と料理の相性判定方法としての高い信頼度は期待できないという問題がある。
【特許文献1】特許3559339号公報
【特許文献2】特開2004−242645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、日本酒の分析値や醸造方法などを入力するだけで、専門的な知識がなくとも、多数の日本酒と多数の料理との相性を、一貫性をもって客観的に判定でき、かつ信頼度の高い判定ができる方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本発明者等がこうした事情に鑑み、前記課題の解決に向けて鋭意検討を行った結果、日本酒の分析値や醸造方法などを入力するだけで、その入力値から料理との相性を、専門家でなくても容易に判定できる方法を見出して完成したものであり、前記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
【0010】
<1> 日本酒に関する、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度から選択される2種以上の情報を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された情報に基づき、当該日本酒と料理との相性度を演算し、当該日本酒と料理との相性を判定する演算・判定工程と、
前記演算・判定工程により判定された判定結果を出力する出力工程と
を含むことを特徴とする日本酒と料理の相性判定方法である。
<2> 前記判定結果が、当該日本酒との相性度が高い料理名を含む前記<1>に記載の日本酒と料理の相性判定方法である。
【0011】
<3> 日本酒に関する、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度から選択される2種以上の情報を入力する入力手段と、
前記入力手段に入力された情報に基づき、当該日本酒と料理との相性度を演算し、当該日本酒と料理との相性を判定する演算・判定手段と、
前記演算・判定手段により判定された判定結果を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする日本酒と料理の相性判定システムである。
<4> 入力手段及び出力手段が、クライアント端末であり、演算・判定手段が、通信手段によって前記クライアント端末と通信可能に接続されたセンター・サーバーである前記<3>に記載の日本酒と料理の相性判定システムである。
【0012】
<5> 前記<1>に記載の日本酒と料理の相性判定方法をコンピュータに実行させるための日本酒と料理の相性判定プログラムである。
<6> 前記<5>に記載の日本酒と料理の相性判定プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来技術における前記諸問題を解決することができ、日本酒の分析値や醸造方法などを入力するだけで、専門的な知識がなくとも、多数の日本酒と多数の料理との相性を、一貫性をもって客観的に判定でき、かつ信頼度の高い判定ができる方法等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[1]日本酒と料理の相性判定方法及び日本酒と料理の相性判定システム
本発明の日本酒と料理の相性判定方法は、入力工程と、演算・判定工程と、出力工程と、さらに必要に応じてその他の工程とを含む。
本発明の日本酒と料理の相性判定システムは、入力手段と、演算・判定手段と、出力手段と、さらに必要に応じてその他の手段とを備える。
本発明の日本酒と料理の相性判定方法は、本発明の日本酒と料理の相性判定システムを用いて好適に実施することができる。
【0015】
<入力工程及び入力手段>
本発明の日本酒と料理の相性判定方法における入力工程は、日本酒に関する、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度から選択される2種以上の情報を入力する工程(ステップ)である。
本発明の日本酒と料理の相性判定システムにおける入力手段は、日本酒に関する、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度から選択される2種以上の情報を入力する手段である。
前記入力工程は、前記入力手段を用いて好適に実施することができる。
【0016】
前記入力工程において、又は前記入力手段により入力する前記情報の種類及び数としては、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度の5種のうちから選択された、2種以上であり、後述する演算・判定工程又は演算・判定手段において、より正確な判定結果を得る観点からは、3種が好ましく、4種がより好ましく、5種全てであることが最も好ましい。なお、5種の情報のうち、不明な情報がある場合には、市販されている日本酒の平均的数値などの代替値を利用してもよい。入力する前記情報が2種未満の場合には、正確な判定結果を得ることができない。
前記入力手段としては、前記情報を入力することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、パソコン、携帯電話機、店舗設置端末機などが挙げられる。
前記入力手段への入力方法としては、キーボードやタッチパネルから直接的に入力する方法であってもよいし、コンピュータのプログラムに入力動作を組み込み、データファイルなどからの入力を自動化して行う方法であってもよい。また、必要な情報の入力操作を行い易いようにサポートするための、埋め込み入力操作画面、メニュー画面、編集画面等を有していることが好ましい。
前記入力操作画面の一例としては、図3に示す画面などが好適に挙げられる。
【0017】
なお、前記情報のうち、醸造方法とは、純米大吟醸酒、大吟醸酒、純米吟醸酒、吟醸酒、特別純米酒、特別本醸造酒、純米酒、本醸造酒、生貯蔵酒、生酒、樽酒、熟成酒(長期貯蔵酒)、普通酒等の分類のことである。
前記アルコール分とは、日本酒全体に対するアルコールの含有量(容量%)のことである。
前記日本酒度とは、水(±0)に対する酒の比重を「日本酒度計」で計った値のことである。この比重は、糖分を中心とするエキス分が多い酒ほど重くなりマイナス(−)に傾き、エキス分が少ない酒ほど軽くなりプラス(+)に傾く。
【0018】
前記酸度とは、10ミリリットルの日本酒中の酸を中和するのに必要な0.1規定NaOH溶液のミリリットル数であり、日本酒中の有機酸(乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸など)の含有量のことである。この有機酸は、酒の味に酸味、うま味をもたらす。
前記アミノ酸度とは、日本酒に含まれるアミノ酸の総量を示す数値で、10ミリリットルの日本酒を0.1規定NaOH溶液で中和し、これに中性ホルマリン溶液5ミリリットルを加え、ここに遊離した酸を0.1規定NaOH溶液で中和する際に必要なミリリットル数のことである。日本酒にはアルギニン、チロシン、セリン、ロイシン、グルタミン酸など約20種類のアミノ酸が含まれており、主にうま味を構成する。
また、本発明においては、さらに精密な判定結果を得るために、上記5種の情報の外に、価格、飲用温度等の付加的な項目を入力するようにしてもよい。
【0019】
<演算・判定工程及び演算・判定手段>
本発明の日本酒と料理の相性判定方法における演算・判定工程は、前記入力工程で入力された情報に基づき、当該日本酒と料理との相性度を演算し、当該日本酒と料理との相性を判定する工程(ステップ)である。
本発明の日本酒と料理の相性判定システムにおける演算・判定手段は、前記入力手段に入力された情報に基づき、当該日本酒と料理との相性度を演算し、当該日本酒と料理との相性を判定する手段である。
前記演算・判定工程は、前記演算・判定手段を用いて好適に実施することができる。
【0020】
前記演算・判定手段としては、前記入力された情報に基づいて、日本酒と料理との相性度を演算し、両者の相性を判定することができれば特に制限はなく、例えば、パソコン、CPUなどが挙げられる。
前記演算の方法としては、日本酒の、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度から選択された2種以上の情報から、当該日本酒と料理との相性度を算出できればよく、例えば、料理の予め用意した特性指数と日本酒の入力情報から算出する方法や、料理の特性の入力値と日本酒の入力値とから算出する方法、ニューラルネットワークによって相性結果を学習させて算出する方法、人工知能によって算出する方法、ファジー理論に基づいて算出する方法、最適化のアルゴリズムによって最適解を算出する方法などが挙げられる。
【0021】
<出力工程及び出力手段>
本発明の日本酒と料理の相性判定方法における出力工程は、前記演算・判定工程により判定された判定結果を出力する工程(ステップ)である。
本発明の日本酒と料理の相性判定システムにおける出力手段は、前記演算・判定手段により判定された判定結果を出力する手段である。
前記出力工程は、前記出力手段を用いて好適に実施することができる。
出力する判定結果としては、前記演算・判定工程において、又は前記演算・判定手段により、演算された日本酒と各料理との相性度そのものであってもよいし、相性度に基づく判定結果(例えば、相性度の高い及び/又は低い料理名の表示)であってもよいが、当該日本酒と相性度の高い料理名を含むことが好ましい。
なお、本発明においては、日本酒の、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度からなる群より選択される2種以上の情報と、料理名とを入力して、前記演算・判定工程、又は前記演算・判定手段において、当該日本酒と当該料理との相性度を演算・判定させ、その結果を出力させるようにしてもよい。
【0022】
前記出力手段としては、演算・判定手段の処理に伴う判定結果を出力、すなわち、表示及び/又は印刷することができれば、特に制限はなく、例えば、パソコン、プリンター、携帯電話機、店舗設置端末機などが好適に挙げられる。
前記出力の方法としては、パソコン等のディスプレイ上に文字、数値、記号、図形等として表示させる方法であってもよいし、プリンターによって紙等に印字し、プリントさせる方法であってもよく、あるいは、コンピュータのプログラムに組み込み、データファイルへ出力を自動化した方法であってもよく、予め相性度の判定結果を出力したものをリストに転記して活用することや、出力結果を電子ファイルとして活用すること、別のコンピュータに入力して結果を再出力させる方法であってもよい。
【0023】
図1は、本発明の日本酒と料理の相性判定システムの一実施形態の全体構成図を示したものである。本システムは、前記入力手段及び出力手段としてのクライアント・パソコン10と、前記演算・判定手段としてのセンター・サーバー20と、両者を結ぶネットワークで構成されている。前記ネットワークとは、インターネット又は電話回線30である。
中央処理装置(CPU)24は、センター・サーバー20内で、各装置の制御やデータの演算・判定を行なう中枢部分であり、メモリ26に記憶されたプログラムを実行する装置で、前記入力手段としてのクライアント・パソコン10からの入力情報やメモリ26からのデータを受け取り、所定のプログラムに沿って相性度を演算し、相性度の結果を判定した上で、伝達制御装置22に転送する。
メモリ26は、センター・サーバー20内で、日本酒や料理に関するデータや、相性度を算出する演算プログラムを記憶する装置である。ハードディスクやフレキシブルディスクなどの外部記録媒体と、CPUが直接読み書きできるRAMやROMなどの半導体記録媒体とを含んでいてもよく、日本酒に関する分析値や醸造方法から、各種料理との相性度を演算できる演算式を記憶している。
伝達制御装置22は、CPUが演算・判定した結果をクライアント・パソコン10に伝達する装置である。
【0024】
図2は、本発明の日本酒と料理の相性判定方法のフローを示す図である。
クライアント・パソコン10から、センター・サーバー20へ、アクセスすると、センター・サーバー20から、クライアント・パソコン10へ、情報入力欄が送信される。
次に、クライアント・パソコン10において日本酒に関する必要なデータを入力する(図3参照)。すると、センター・サーバーは、入力されたデータに基づき、当該日本酒と各料理との相性度を演算し、相性を判定し、この結果をクライアント・パソコン10に送信する(図8参照)。
【0025】
[2]日本酒と料理の相性判定プログラム及びそれを記録した記録媒体
本発明の日本酒と料理の相性判定プログラムは、前記の日本酒と料理の相性判定方法をコンピュータに実行させるためのものである。
このプログラムは、記録媒体に記録し、当該記録媒体からコンピュータに読み取られるようにすることができる。
なお、このプログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(MO)等の様に情報を磁気的に記録する磁気記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々のタイプの記録媒体を用いることができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<入力>
日本酒と料理の相性を判定するシステムは、例えば、Microsoft(R)Excel 97などの計算ソフトのマクロ機能を利用として作成することができ、ここでは、それを利用した。入力は、図3に示すマクロのフォームで行う。
【0027】
醸造方法は、純米大吟醸酒、大吟醸酒、純米吟醸酒、吟醸酒、特別純米酒、特別本醸造酒、純米酒、本醸造酒、生貯蔵酒、生酒、樽酒、熟成酒(長期貯蔵酒)、普通酒などから選択できるように設計する。
アルコール分は、5、6、7、・・・20、21などから選択できるように設計する。選択式でなく直接数字の入力方式としてもよい。
日本酒度は、−30、−29、−28、・・・−1、±0、+1、・・・+29、+30などから選択できるように設計する。選択式でなく直接数字の入力方式としてもよい。
酸度は、0.3、0.4、0.5、・・・4.9、5.0などから選択できるように設計する。選択式でなく直接数字の入力方式としてもよい。
アミノ酸度は、0.3、0.4、0.5、……4.9、5.0などから選択できるように設計する。選択式でなく直接数字の入力方式としてもよい。
【0028】
以上の、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度の5種の入力値に加えて、価格、飲用温度などを直接入力または選択式で入力させることもできる。
入力値のすべてが得られない場合は、その部分のみを市販の日本酒の平均を代替値として用いればよい。入力値が2つ以上得られない場合は、本システムでは相性判定はできない。
【0029】
<演算>
日本酒と料理との相性度を下記式(I)で計算し、算出する。

【0030】
上記式(I)に示した相性度の計算式の意味は以下の通りである。
[当該料理と日本酒一般との相性指数]は、「てんぷら」、「魚煮付け」、「おでん」のように、どのようなタイプの日本酒とも比較的相性が良い料理では大きくなり、「カレーライス」、「ビーフシチュー」、「スパゲッティ」のように、どのようなタイプの日本酒ともあまり相性がよくない料理では小さくなる指数である。
【0031】
[当該料理の濃淡相性指数]は、「佃煮」、「煮物(濃味)」、「魚煮付け」のように、濃醇な日本酒と相性が良い料理ではプラスの数字で大きくなり、「サラダ」、「薄味の煮物」、「冷奴」のように、淡麗な日本酒と相性が良い料理ではマイナスの数字で小さくなる指数である。
一方、[当該日本酒の濃淡指数]は、濃醇な日本酒ではプラスの数字で大きくなり、淡麗な日本酒ではマイナスの数字で小さくなる指数である。
この両者の積である[当該料理の濃淡相性指数]×[当該日本酒の濃淡指数]は、プラス同士やマイナス同士の相性の良い組み合わせではプラスの数字で大きくなり、相性の悪い組み合わせではマイナスの数字で小さくなる。図4に模式図を示す。
【0032】
[当該料理の甘辛相性指数]は、「焼き鳥(たれ)」、「おでん」、「すき焼き」のように、甘口の日本酒と相性が良い料理ではプラスの数字で大きくなり、「いたわさ」、「焼き魚」、「野菜炒め」のように、辛口の日本酒と相性が良い料理ではマイナスの数字で小さくなる指数である。
一方、[当該日本酒の甘辛指数]は、甘口の日本酒ではプラスの数字で大きくなり、辛口の日本酒ではマイナスの数字で小さくなる指数である。
この両者の積である[当該料理の甘辛相性指数]×[当該日本酒の甘辛指数]は、プラス同士やマイナス同士の相性の良い組み合わせではプラスの数字で大きくなり、相性の悪い組み合わせでマイナスの数字で小さくなる。図5に模式図を示す。
【0033】
[当該料理の吟醸相性指数]は、「刺身」、「薄味の煮物」などのように吟醸タイプの日本酒と相性が良い料理ではプラスの数字で大きくなり、「カツ」、「カレーライス」のように、吟醸タイプの日本酒と相性が良くない料理ではマイナスの数字で小さくなる指数である。
一方、[当該日本酒の吟醸指数]は、その日本酒が、吟醸タイプに近ければ大きくなり、遠ければ0に近くなるように醸造方法に応じて設定する指数である。
この両者の積である[当該料理の吟醸相性指数]×[当該日本酒の吟醸指数]は相性の良い組み合わせではプラスの数字で大きくなり、相性の悪い組み合わせではマイナスの数字で小さくなる。図6に模式図を示す。
【0034】
[当該料理の熟成相性指数]は、「焼肉」、「ぎょうざ」などのように熟成タイプの日本酒と相性が良い料理ではプラスの数字で大きくなり、「湯豆腐」、「いたわさ」のように、熟成タイプの日本酒と相性が良くない料理ではマイナスの数字で小さくなる指数である。
一方、[当該日本酒の熟成指数]は、その日本酒が、熟成タイプに近ければ大きくなり、遠ければ0に近くなるように醸造方法に応じて設定する指数である。
この両者の積である[当該料理の熟成相性指数]×[当該日本酒の熟成指数]は、相性の良い組み合わせではプラスの数字で大きくなり、相性の悪い組み合わせではマイナスの数字で小さくなる。図7に模式図を示す。
【0035】
上記式(I)の[当該料理と日本酒一般との相性指数]、[当該料理の濃淡相性指数]、[当該日本酒の濃淡指数]、[当該料理の甘辛相性指数]、[当該日本酒の甘辛指数]、[当該料理の吟醸相性指数]、[当該日本酒の吟醸指数]、[当該料理の熟成相性指数]、[当該日本酒の熟成指数]の9つの指数は、以下に述べる方法によって決定することができる。
【0036】
まず「日本酒と料理の相性鑑定人」を訓練によって育成する。日本酒の官能検査(テイスティング)の経験が10年以上で、多様な食経験を有する相性鑑定人候補を選抜し、1回につき、4種類の市販酒と4種類の典型的な料理の計16種類の組み合わせでの「日本酒と料理の相性判定」を行なわせる。相性判定は、各鑑定人が、対象の日本酒サンプルを飲み、対象の典型的な料理を食べて「相性が良いかどうか」を以下の基準によって評価する。なお「相性が良い」とは「酒と料理のどちらともの味が、消しあったりすることなく、引き出され、よく調和している状態」と定義する。
【0037】
+3:非常に良い
+2:良い
+1:やや良い
±0:どちらでもない
−1:やや悪い
−2:悪い
−3:非常に悪い
【0038】
1回の「日本酒と料理の相性判定」終了後に、全員の評価を集計した評価結果を、各人にフィードバックして、自身の評価が全体の結果をずれていないかを確認させる。このような「日本酒と料理の相性判定」訓練を20回以上繰り返し、日本酒の特性(濃淡、甘辛、吟醸香の度合、熟成香の度合)と典型的な料理の特性(甘味、塩辛味、酸味、苦味、旨味、香り)が「相性」にどのような影響を与えるかを経験によって学習させる。
【0039】
日本酒の特性と典型的な料理の特性が相性にどのような影響を与えるかを経験によって学習した「日本酒と料理の相性鑑定人」10人に、20種類の料理(1〜20)と16種類の概念上の日本酒(a〜p)の相性を机上で評価させる。料理のリストは表1に、日本酒のリストは表2に示す。なお、日本酒リストに示された日本酒は実在の酒でない。
【0040】
(表1)
《料理リスト》
(1) いたわさ(かまぼこ)
(2) おでん
(3) カツ
(4) カレーライス
(5) ぎょうざ
(6) グリーンサラダ
(7) 魚煮付け
(8) 刺身・たたき
(9) すき焼き
(10)寿司
(11)スパゲティ(ミートソース)
(12)佃煮
(13)天ぷら
(14)煮物(薄味)
(15)煮物(濃味)
(16)ビーフシチュー
(17)冷や奴
(18)焼き鳥(たれ)
(19)焼肉
(20)湯豆腐・水炊き・魚すき
【0041】
(表2)
《日本酒リスト(概念)》
(a) 濃醇・甘口・吟醸 ・熟成タイプ
(b) 濃醇・甘口・吟醸 ・非熟成タイプ
(c) 濃醇・甘口・非吟醸・熟成タイプ
(d) 濃醇・甘口・非吟醸・非熟成タイプ
(e) 濃醇・辛口・吟醸 ・熟成タイプ
(f) 濃醇・辛口・吟醸 ・非熟成タイプ
(g) 濃醇・辛口・非吟醸・熟成タイプ
(h) 濃醇・辛口・非吟醸・非熟成タイプ
(i) 淡麗・甘口・吟醸 ・熟成タイプ
(j) 淡麗・甘口・吟醸 ・非熟成タイプ
(k) 淡麗・甘口・非吟醸・熟成タイプ
(l) 淡麗・甘口・非吟醸・非熟成タイプ
(m) 淡麗・辛口・吟醸 ・熟成タイプ
(n) 淡麗・辛口・吟醸 ・非熟成タイプ
(o) 淡麗・辛口・非吟醸・熟成タイプ
(p) 淡麗・辛口・非吟醸・非熟成タイプ
【0042】
相性鑑定人10人の相性判定平均値を表3に示す。
(表3)

【0043】
上記表2の概念上の各日本酒の特性指数は、表4のように設定される。
(表4)

【0044】
典型的な各料理(20種)について、上記式(I)と表3の値とから、重回帰分析に基づき、[当該料理と日本酒一般との相性指数]、[当該料理の濃淡相性指数]、[当該料理の甘辛相性指数]、[当該料理の吟醸相性指数]、[当該料理の熟成相性指数]の5つを求める。その一覧を表5に示す。
【0045】
(表5)

重回帰分析によって求められた上記表5の値を、典型的な各料理(20種)の相性指数として使用する。
【0046】
「日本酒と料理の相性鑑定人」に10人に、表1に示した20種類の典型的な料理(1〜20)と、下記表6の20種類の実在の日本酒(A〜T)との相性を机上で評価させる。なお、20種類の実在の日本酒は「相性鑑定人」がその香味を熟知しているものから選択した。相性鑑定人10人の相性判定平均値を表7に示す。
【0047】
(表6)
《日本酒リスト(実在)》

【0048】
(表7)

【0049】
実在酒の相性判定も上記式(I)で表現できると考える。式のうち、典型的な各料理(20種)の[当該料理と日本酒一般との相性指数]、[当該料理の濃淡相性指数]、[当該料理の甘辛相性指数]、[当該料理の吟醸相性指数]、[当該料理の熟成相性指数]は表5の通りに決定されているので、上記式(I)と表7の値とから、各日本酒の[当該日本酒の濃淡指数]、[当該日本酒の甘辛指数]を重回帰分析によって求める。なお、[当該日本酒の吟醸指数]は吟醸酒で1、非吟醸酒で0とし、[当該日本酒の熟成指数]は熟成酒で1、非熟成酒で0とする。その一覧を表8に示す。
【0050】
(表8)

【0051】
表6に示した各日本酒のアルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度と、各日本酒の濃淡指数及び甘辛指数との関係を重回帰分析によって求めると、式(II)及び(III)の通りである。
【0052】

【0053】
以上の結果を利用すると、当該日本酒の醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度が入力として得られば、上記式(II)及び(III)により、[当該日本酒の濃淡指数]と[当該日本酒の甘辛指数]が算出できる([当該日本酒の吟醸指数]と[当該日本酒の熟成指数]は醸造方法に応じて予め設定されている)。これらと、表5に示した各料理の[当該料理と日本酒一般との相性指数]、[当該料理の濃淡相性指数]、[当該料理の甘辛相性指数]、[当該料理の吟醸相性指数]、[当該料理の熟成相性指数]とを用い、上記式(I)で相性度を予測することができる。
なお、この方法で予測した相性度と相性鑑定人によって判定された相性判定平均値との相関係数は0.679であり、この種の予測モデルとして有効なものである。
【0054】
なお、上記表3の料理リスト以外の料理についても、日本酒と料理の相性鑑定人に追加評価させて、当該料理の相性指数を求めて計算することができる。
また、表2に記載の日本酒以外の日本酒との相性を、日本酒と料理の相性鑑定人に追加評価させ、再度重回帰分析を行なえば、上記式(II)及び(III)をより精度の高いものに改良することもできる。
【0055】
ここで、表6の日本酒リスト(実在)の中から、アミノ酸度が同一である4種の日本酒(A、B、G、及びP)について検討する。本システムでは、この4種の日本酒と各料理との相性度は、表9のように計算される。
(表9)

【0056】
例えば「ぎょうざ」では、最も相性が良いのは「純米生酒」の1.5点であり、最も相性が悪いのは「大吟醸酒」の−0.7点であり、2.2点もの差がある。また、「カツ」においても、最高点と最低点との差は2.1点である。最高点と最低点との差が最も小さい料理は「いたわさ」、「刺身・たたき」及び「天ぷら」であるが、それでも0.5点の差がある。
【0057】
日本酒の味は、甘味、酸味、辛味、苦味、渋味といった成分が複雑にからみ合い、うま味や香りも一体となって構成されているため、同じアミノ酸度(1.4)の日本酒であっても、各料理との相性は、かなり異なる。本システムでは、このような差が反映されて、信頼度が高い判定結果を得ることができる。
【0058】
これと比較して、特許文献2のような相性判定システムでは、日本酒の入力としてアミノ酸度しか使用していないので、同じアミノ酸度であれば、アルコール分、日本酒度、酸度が異なっても全て同一の相性結果に導かれてしまい、信頼度が低い。
【0059】
<出力>
出力は、表7のように判定された日本酒と料理の相性度の数値をそのまま出してもよいし、図8のように相性度の高い料理順に表示することもできる。
なお、日本酒の、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度からなる群より選択される2種以上と、料理名とを入力して、当該日本酒と当該料理との相性度を出力させるように設定してもよい。
本発明のシステムは、日本酒のみならず、他の飲料と料理との相性の判定にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の日本酒と料理の相性判定システムの一実施形態の全体構成図である。
【図2】図2は、本発明の日本酒と料理の相性判定方法のフローを示す図である。
【図3】図3は、パソコンの入力フォームを示す図である。
【図4】図4は、当該料理の濃淡相性指数と当該日本酒の濃淡指数と相性度の関係を示す模式図である。
【図5】図5は、当該料理の甘辛相性指数と当該日本酒の甘辛指数と相性度の関係を示す模式図である。
【図6】図6は、当該料理の吟醸相性指数と当該日本酒の吟醸指数と相性度の関係を示す模式図である。
【図7】図7は、当該料理の熟成相性指数と当該日本酒の熟成指数と相性度の関係を示す模式図である。
【図8】図8は、相性結果の出力例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10 クライアント・パソコン
20 センター・サーバー
22 伝達制御装置
23 中央処理装置
24 メモリ
30 インターネット又は電話回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日本酒に関する、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度から選択される2種以上の情報を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された情報に基づき、当該日本酒と料理との相性度を演算し、当該日本酒と料理との相性を判定する演算・判定工程と、
前記演算・判定工程により判定された判定結果を出力する出力工程と
を含むことを特徴とする日本酒と料理の相性判定方法。
【請求項2】
前記判定結果が、当該日本酒との相性度が高い料理名を含む請求項1に記載の日本酒と料理の相性判定方法。
【請求項3】
日本酒に関する、醸造方法、アルコール分、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度から選択される2種以上の情報を入力する入力手段と、
前記入力手段に入力された情報に基づき、当該日本酒と料理との相性度を演算し、当該日本酒と料理との相性を判定する演算・判定手段と、
前記演算・判定手段により判定された判定結果を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする日本酒と料理の相性判定システム。
【請求項4】
入力手段及び出力手段が、クライアント端末であり、演算・判定手段が、通信手段によって前記クライアント端末と通信可能に接続されたセンター・サーバーである請求項3に記載の日本酒と料理の相性判定システム。
【請求項5】
請求項1に記載の日本酒と料理の相性判定方法をコンピュータに実行させるための日本酒と料理の相性判定プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の日本酒と料理の判定プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−102688(P2008−102688A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283914(P2006−283914)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(591118775)白鶴酒造株式会社 (16)