昇塔防止装置および昇塔防止方法
【課題】 第三者による鉄塔への昇塔を確実に防止することが可能な昇塔防止装置および昇塔防止方法を提供する。
【解決手段】 鉄塔1の昇塔経路10に固定される保持部材30と、この保持部材30に対して回転自在な回転部材40と、を備える。鉄塔1の昇塔経路10には、回転自在な回転部材40が配置されるので、昇塔経路10の途中の足場は回転部材40の回転により滑りやすくなる。したがって、昇塔経路10の途中には、第三者が手足を掛けるための安定した足場がなくなり、第三者の昇塔を確実に防止することができる。
【解決手段】 鉄塔1の昇塔経路10に固定される保持部材30と、この保持部材30に対して回転自在な回転部材40と、を備える。鉄塔1の昇塔経路10には、回転自在な回転部材40が配置されるので、昇塔経路10の途中の足場は回転部材40の回転により滑りやすくなる。したがって、昇塔経路10の途中には、第三者が手足を掛けるための安定した足場がなくなり、第三者の昇塔を確実に防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄塔に第三者が昇るのを防止する昇塔防止装置および昇塔防止方法に関し、特に、回転部材による滑りを利用して第三者の昇塔を防止するようにした昇塔防止装置および昇塔防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用鉄塔では、事故防止のために第三者の昇塔は禁止されているが、無断で第三者が鉄塔に昇ることがある。これを防止するために、鉄塔の昇塔経路(構成部材)に昇塔防止装置を取り付けることがある(例えば、特許文献1、2参照。)。この昇塔防止装置は、多数の鋼棒が放射線状に配設され、鉄塔の主柱材(上方に延びて配置され、鉄塔の主柱となる構成部材)に取り付けられることで、主柱材からの第三者の昇塔を鋼棒によって防ぐ、というものである。
【特許文献1】実開平06−59556号公報
【特許文献2】特開平08−68237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されているような昇塔防止装置を取り付けても、第三者が容易に昇塔してしまうおれがある。すなわち、第三者が鋼棒間を押し広げることで、その間に体を入れて昇塔することが可能となってしまう。このように、従来の昇塔防止装置では、第三者の昇塔を邪魔する機能は有しているが、第三者の昇塔を完全に阻止することはできないという問題があった。
【0004】
そこで、この発明は、第三者による鉄塔への昇塔を確実に防止することが可能な昇塔防止装置および昇塔防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、鉄塔の昇塔経路に固定される保持部材と、この保持部材に対して回転自在な回転部材と、を備えたことを特徴とする昇塔防止装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の昇塔防止装置において、前記回転部材は前記保持部材を中心に回転するローラーから構成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の昇塔防止装置において、前記回転部材は前記保持部材に対して着脱可能であることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の昇塔防止装置において、前記回転部材の回転を止める回り止めを備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記鉄塔の昇塔経路である主柱材に、この主柱材からの昇塔を防止する第1の昇塔防止装置を取り付け、この第1の昇塔防止装置の下方および上方のいずれか少なくとも一方の昇塔経路に、請求項1から4のいずれか1項に記載の昇塔防止装置を取り付けたことを特徴とする昇塔防止方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、鉄塔の昇塔経路には、回転自在な回転部材が配置されるので、昇塔経路の途中は回転部材によって滑りやすくなる。したがって、昇塔経路の途中には、第三者が手足を掛けるための安定した足場がなくなり、第三者の昇塔を確実に防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、回転部材は昇塔経路に固定された保持部材を中心として回転するローラーから構成されるので、昇塔経路のうちローラーが位置する部位を極めて滑り易い不安定な足場とすることができ、第三者の昇塔防止効果を高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、回転部材は保持部材に対して着脱可能であるので、例えば作業者が昇塔時に回転部材を取外す場合でも、回転部材の取り付け又は取外し作業が容易となる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、回転部材の回転を止める回り止めを備えているので、作業者が昇塔する場合は、周り止めを用いて回転部材の回転をロックすることができる。したがって、作業者による点検時等においては、回転部材を取外すことなく昇塔が可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、鉄塔の昇塔経路である主柱材に第1の昇塔防止装置を取り付け、この第1の昇塔防止装置の下方および上方のいずれか少なくとも一方の昇塔経路に請求項1から4のいずれか1項に記載の昇塔防止装置を取り付けたので、二種類の昇塔防止装置による相乗効果により昇塔防止効果を高めることができ、第三者による昇塔を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1ないし図7は、本発明の実施の形態1を示している。図7において、符号1は、高圧送電線路用の鉄塔を示している。この鉄塔1は、主柱材2、腕金主材3、腕金吊材4、基礎材5、および腹材8等から構成されている。主柱材2は、四隅に設けられ地表から上方に延びる部材であり、柱としての機能を有する。腕金主材3は、碍子を介して送電線を吊り下げる機能を有する。腕金吊材4は、腕金主材3を主柱材2側から支持する機能を有する。基礎材5は、地中に埋設される主脚材6および碇材7から構成されており、主柱材2の下部は主脚材6と連結されている。鉄塔1に用いられている部材で、上記以外の部材は腹材8と呼ばれる。
【0017】
図5は、作業者が送電線の点検のために昇降する鉄塔1の昇塔経路10を示しており、昇塔経路10は各主柱材2に沿って形成されている。各主柱材2には、図7に示すように、足場としての昇降用ステップボルト11が上下方向に所定間隔にて取付けられている。各主柱材2の昇塔経路10の途中には、第三者の昇塔を防止するための第1の昇塔防止装置20がそれぞれ設けられている。第1の昇塔防止装置20は、主柱材2に取付けられている。図6に示すように、第1の昇塔防止装置20は、主柱材2に固定されるリング状の支持部21を有しており、この支持部21は、主柱材2を囲むように配置されている。支持部21からは、多数の鋼棒22が放射状に延びている。各鋼棒21の間隔は、人間が通過できない程度に設定されている。これにより、第1の昇塔防止装置20の直下に到達した第三者は多数の鋼棒22に邪魔され、昇塔が阻止される。第1の昇塔防止装置20は、第三者の昇塔を邪魔する機能を有するものであればよく、図6の構造に限定されない。
【0018】
第三者が第1の昇塔防止装置20を回避して昇塔するためには、第1の昇塔防止装置20の下方および上方に位置する腹材8を利用する必要があり、この腹材8に新たな昇塔防止装置25が設けられている。本実施の態様1では、昇塔防止装置25は、図1および図4に示すように、各第1の昇塔防止装置20の上下方向における左右にそれぞれ設けられている。すなわち、一つの第1の昇塔防止装置20に対して、4組の昇塔防止装置25が設けられている。昇塔防止装置25は、保持部材30と回転部材40とを有している。保持部材30は、支持軸31、押圧材32、ジャッキ33から構成されている。支持軸31は、鉄塔1の腹材8に取付けられている。支持軸31は、軸方向に延びる切除部31aを有しており、切除部31aの形状は略扇形となっている。すなわち、支持軸31は軸心を中心として円形断面の四分の一が切除されている。支持軸31の切除部31aの角部は、山形鋼からなる腹材8の角部に押し当てられている。これにより、支持軸31の切除部31aの表面は腹材8の外側面と密着している。押圧材32は、外周面の径が支持軸31と同一の直径を有する円弧状の板状部材からなり、切除部31aを覆う位置に固定されている。支持軸31は、腹材8の内側と押圧材32との間に配置されたジャッキ33の押圧力により腹材8に固定されている。
【0019】
支持軸31には、ローラーからなる回転部材40が設けられている。回転部材40の軸心には、軸方向に延びる軸孔41が形成されており、軸孔41には支持軸31が挿通されている。回転部材40は、支持軸31を中心に回転自在となっており、例えば材質がFRP(繊維強化プラスチック)から構成されている。回転部材40の直径は、第三者の昇塔を防止するため、手のひらで掴むことができないサイズに設定されている。例えば、本実施の態様1では、回転部材40の直径は、800mmとなっている。回転部材40は、支持軸31に対して着脱可能となっている。図3に示すように、回転部材40は、軸心を中心として二分割することが可能となっている。二分割された回転部材40には、連結用ボルト(図示略)を通すためのボルト穴40aが形成されている。
【0020】
ところで、昇塔防止装置25をつぎのように配置する構成としてもよい。上記においては、昇塔防止装置25を第一の昇塔防止装置20の上下方向に配置したが、昇塔防止装置25を鉄塔1の最下部に配置し、この昇塔防止装置25に警戒色を施した場合は、一般公衆に対して注意を促すことができる。これにより、第三者の昇塔を予め防止することが可能となり、鉄塔危険部位への第三者の接触による災害を防止することができる。
【0021】
つぎに、この実施の態様1における作用について説明する。第三者が鉄塔1に昇る際には、まず主柱材2に設けられた昇塔用ステップボルト11を足場として昇り始める。第三者が主柱材2に沿って昇って行くと、第1の昇塔防止装置20に到達する前に回転部材40に到達する。回転部材40は、回転自在であるため滑りやすく、更に手のひらや腕で把持することのできないサイズを有しているので、回転部材40の近傍には第三者が手で掴むことができる部材は存在しなくなる。したがって、昇塔のための上方の足場は、回転部材40の回転による滑りによって非常に不安定なものとなり、第三者の更なる昇塔は防止される。
【0022】
また、第三者が第1の昇塔防止装置20の鋼棒22を曲げて鋼棒22の間隔を十分広めようとしてもこれは不可能となる。第三者が鋼棒22を変形させるためには、十分な安定した足場が必要となるが、この足場は図1の下方の回転部材40によって確保することはできない。また、さらに第1の昇塔防止装置20の上方にも回転部材40が配置されているので、第三者の更なる昇塔は著しく困難となる。
【0023】
本実施の態様1のように、鉄塔1の昇塔経路10である主柱材2に、この主柱材2からの昇塔を防止する第1の昇塔防止装置20を取り付け、この第1の昇塔防止装置20の下方および上方のいずれか少なくとも一方の昇塔経路10に、別の昇塔防止装置25を取り付けて昇塔を防止する方法を採用したので、二種類の昇塔防止装置による相乗効果により、第三者の昇塔を確実に防止することができる。
【0024】
ところで、作業者が点検等のために昇塔する際は、回転部材40を取外すか、または回転部材40を固定(ロック)する必要がある。そこで、回転部材40を取り外す場合は、回転部材40が二分割構成となっているので、保持部材30までも取り外す必要はなく、回転部材40の取外しは容易となる。取り外された回転部材40は、点検終了後、作業者によって支持軸31に取り付けられる。また、回転部材40を固定する際には、腹材8にストッパ46が装着され、このストッパ46と係合可能な周り止め42が回転部材40に装着される。
【0025】
本実施形態では、回転部材40が一体であり、回転部材40の軸孔41に支持軸31が挿通されているが、回転部材40を軸方向に分割してもよい。すなわち、分割された各分割部材の内周に溝を設けるとともに、この溝に係合する凸部を支持軸31に設け、分割部材の溝に支持軸31の凸部が係合した状態で各分割部材が支持軸31を中心に回転できるようにしてもよい。このように回転部材40を軸方向に分割することで、それぞれの分割部材が独立して回転するため、昇塔を防止する効果が高められる。
【0026】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2を示している。本実施形態は、特に回転部材40を保持する保持部材の変形例を示す。支持軸31は、略L字型に形成された金具35を介して腹材8に取付けられている。金具35には、ボルト37が挿通される孔(図示略)が設けられている。支持軸31には、ボルト37が螺合される雌ネジ31bが形成されている。本実施の形態2では、ボルト37の締付けにより支持軸31が腹材8に固定されるので、実施の態様1のように、ジャッキは不要となる。また、支持軸31には切除部31aが形成され断面形状が円形となっていないが、支持軸31はこの断面形状でも回転部材40を回転自在に保持することができる。したがって、図8の構造を採用した場合は、同様な機能を維持しつつ、実施の形態1よりも構成を簡素化することができる。
【0027】
(実施の形態3)
図9および図10は、本発明の実施の形態3であり、回転部材の変形例を示している。ローラーからなる回転部材40’は、支持軸31への着脱を容易にするため二分割構成となっており、回転部材40’には、連結用のボルト孔40a’が形成されている。支持軸31と回転部材40’との間には、回転部材40’の回転を円滑にするためのパイプ(ビニルパイプ)45が設けられている。支持軸31には、支持軸31に対する回転部材40’の軸方向の動きを規制するストッパ47が取付けられている。本実施の形態3では、回転部材40’の回転がパイプ45によって円滑になるので、手のひらで触った場合は非常に滑りやすくなり、第三者の昇塔効果が高められる。
【0028】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4を示している。本実施の形態は、回転部材の変形例を示す。図11に示すように、鉄塔1の腹材8に取付けられる保持部材50は、支持軸51と保持部52とを有している。支持軸51は、切除部51aが形成されており、実施の形態1と同様の構成で腹材8に固定される。保持部52は、第三者による把持が困難となるように、実施の形態1の回転部材40とほぼ同じ直径を有している。保持部52は、支持軸51に対して着脱可能とするため、回転部材40と同様に二分割構造となっている。本実施の態様4においては、保持部52は、支持軸51に対して回転する必要はない。保持部52の表面には、回転自在なボールからなる回転部材53が多数保持されている。そのため、保持部52の表面が非常に滑りやすくなっており、保持部52を手のひらや腕で把持することは不可能となる。したがって、回転自在なボールからなる回転部材53を用いた場合でも、第三者による昇塔を防止することができる。
【0029】
以上、この発明の実施の形態1〜4を詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、回転部材40、40’の内部を空洞化すれば、着脱部材の重量を大幅に低減することができ、高所における回転部材40、40’の着脱作業が容易になる。なお、各実施形態では、送電線路用鉄塔への適用を説明したが、本発明はこれ以外の鉄塔にも使用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる昇塔防止装置が使用される送電線用鉄塔の部分正面図である。
【図2】図1の送電線用鉄塔における昇塔防止装置の正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1の送電線用鉄塔における昇塔防止装置の配置を示す平面図である。
【図5】図1の送電線用鉄塔における昇塔経路を示す正面図である。
【図6】図1および図5の送電線用鉄塔における第1の昇塔防止装置の概略平面図である。
【図7】図1の送電線用鉄塔の全体を示す正面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係わる昇塔防止装置における保持部材の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係わる昇塔防止装置の正面図である。
【図10】図9における昇塔防止装置における回転部材の断面図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係わる昇塔防止置における保持部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 鉄塔
2 主柱材
5 基礎材
8 腹材
11 昇降用ステップボルト
20 第1の昇塔防止装置
22 鋼棒
25 昇塔防止装置
30 保持部材
31 支持軸
31a 切除部
32 押圧材
33 ジャッキ
40 回転部材(ローラー)
40’ 回転部材 (ローラー)
50 保持部材
53 回転部材(ボール)
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄塔に第三者が昇るのを防止する昇塔防止装置および昇塔防止方法に関し、特に、回転部材による滑りを利用して第三者の昇塔を防止するようにした昇塔防止装置および昇塔防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用鉄塔では、事故防止のために第三者の昇塔は禁止されているが、無断で第三者が鉄塔に昇ることがある。これを防止するために、鉄塔の昇塔経路(構成部材)に昇塔防止装置を取り付けることがある(例えば、特許文献1、2参照。)。この昇塔防止装置は、多数の鋼棒が放射線状に配設され、鉄塔の主柱材(上方に延びて配置され、鉄塔の主柱となる構成部材)に取り付けられることで、主柱材からの第三者の昇塔を鋼棒によって防ぐ、というものである。
【特許文献1】実開平06−59556号公報
【特許文献2】特開平08−68237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されているような昇塔防止装置を取り付けても、第三者が容易に昇塔してしまうおれがある。すなわち、第三者が鋼棒間を押し広げることで、その間に体を入れて昇塔することが可能となってしまう。このように、従来の昇塔防止装置では、第三者の昇塔を邪魔する機能は有しているが、第三者の昇塔を完全に阻止することはできないという問題があった。
【0004】
そこで、この発明は、第三者による鉄塔への昇塔を確実に防止することが可能な昇塔防止装置および昇塔防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、鉄塔の昇塔経路に固定される保持部材と、この保持部材に対して回転自在な回転部材と、を備えたことを特徴とする昇塔防止装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の昇塔防止装置において、前記回転部材は前記保持部材を中心に回転するローラーから構成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の昇塔防止装置において、前記回転部材は前記保持部材に対して着脱可能であることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の昇塔防止装置において、前記回転部材の回転を止める回り止めを備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記鉄塔の昇塔経路である主柱材に、この主柱材からの昇塔を防止する第1の昇塔防止装置を取り付け、この第1の昇塔防止装置の下方および上方のいずれか少なくとも一方の昇塔経路に、請求項1から4のいずれか1項に記載の昇塔防止装置を取り付けたことを特徴とする昇塔防止方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、鉄塔の昇塔経路には、回転自在な回転部材が配置されるので、昇塔経路の途中は回転部材によって滑りやすくなる。したがって、昇塔経路の途中には、第三者が手足を掛けるための安定した足場がなくなり、第三者の昇塔を確実に防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、回転部材は昇塔経路に固定された保持部材を中心として回転するローラーから構成されるので、昇塔経路のうちローラーが位置する部位を極めて滑り易い不安定な足場とすることができ、第三者の昇塔防止効果を高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、回転部材は保持部材に対して着脱可能であるので、例えば作業者が昇塔時に回転部材を取外す場合でも、回転部材の取り付け又は取外し作業が容易となる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、回転部材の回転を止める回り止めを備えているので、作業者が昇塔する場合は、周り止めを用いて回転部材の回転をロックすることができる。したがって、作業者による点検時等においては、回転部材を取外すことなく昇塔が可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、鉄塔の昇塔経路である主柱材に第1の昇塔防止装置を取り付け、この第1の昇塔防止装置の下方および上方のいずれか少なくとも一方の昇塔経路に請求項1から4のいずれか1項に記載の昇塔防止装置を取り付けたので、二種類の昇塔防止装置による相乗効果により昇塔防止効果を高めることができ、第三者による昇塔を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1ないし図7は、本発明の実施の形態1を示している。図7において、符号1は、高圧送電線路用の鉄塔を示している。この鉄塔1は、主柱材2、腕金主材3、腕金吊材4、基礎材5、および腹材8等から構成されている。主柱材2は、四隅に設けられ地表から上方に延びる部材であり、柱としての機能を有する。腕金主材3は、碍子を介して送電線を吊り下げる機能を有する。腕金吊材4は、腕金主材3を主柱材2側から支持する機能を有する。基礎材5は、地中に埋設される主脚材6および碇材7から構成されており、主柱材2の下部は主脚材6と連結されている。鉄塔1に用いられている部材で、上記以外の部材は腹材8と呼ばれる。
【0017】
図5は、作業者が送電線の点検のために昇降する鉄塔1の昇塔経路10を示しており、昇塔経路10は各主柱材2に沿って形成されている。各主柱材2には、図7に示すように、足場としての昇降用ステップボルト11が上下方向に所定間隔にて取付けられている。各主柱材2の昇塔経路10の途中には、第三者の昇塔を防止するための第1の昇塔防止装置20がそれぞれ設けられている。第1の昇塔防止装置20は、主柱材2に取付けられている。図6に示すように、第1の昇塔防止装置20は、主柱材2に固定されるリング状の支持部21を有しており、この支持部21は、主柱材2を囲むように配置されている。支持部21からは、多数の鋼棒22が放射状に延びている。各鋼棒21の間隔は、人間が通過できない程度に設定されている。これにより、第1の昇塔防止装置20の直下に到達した第三者は多数の鋼棒22に邪魔され、昇塔が阻止される。第1の昇塔防止装置20は、第三者の昇塔を邪魔する機能を有するものであればよく、図6の構造に限定されない。
【0018】
第三者が第1の昇塔防止装置20を回避して昇塔するためには、第1の昇塔防止装置20の下方および上方に位置する腹材8を利用する必要があり、この腹材8に新たな昇塔防止装置25が設けられている。本実施の態様1では、昇塔防止装置25は、図1および図4に示すように、各第1の昇塔防止装置20の上下方向における左右にそれぞれ設けられている。すなわち、一つの第1の昇塔防止装置20に対して、4組の昇塔防止装置25が設けられている。昇塔防止装置25は、保持部材30と回転部材40とを有している。保持部材30は、支持軸31、押圧材32、ジャッキ33から構成されている。支持軸31は、鉄塔1の腹材8に取付けられている。支持軸31は、軸方向に延びる切除部31aを有しており、切除部31aの形状は略扇形となっている。すなわち、支持軸31は軸心を中心として円形断面の四分の一が切除されている。支持軸31の切除部31aの角部は、山形鋼からなる腹材8の角部に押し当てられている。これにより、支持軸31の切除部31aの表面は腹材8の外側面と密着している。押圧材32は、外周面の径が支持軸31と同一の直径を有する円弧状の板状部材からなり、切除部31aを覆う位置に固定されている。支持軸31は、腹材8の内側と押圧材32との間に配置されたジャッキ33の押圧力により腹材8に固定されている。
【0019】
支持軸31には、ローラーからなる回転部材40が設けられている。回転部材40の軸心には、軸方向に延びる軸孔41が形成されており、軸孔41には支持軸31が挿通されている。回転部材40は、支持軸31を中心に回転自在となっており、例えば材質がFRP(繊維強化プラスチック)から構成されている。回転部材40の直径は、第三者の昇塔を防止するため、手のひらで掴むことができないサイズに設定されている。例えば、本実施の態様1では、回転部材40の直径は、800mmとなっている。回転部材40は、支持軸31に対して着脱可能となっている。図3に示すように、回転部材40は、軸心を中心として二分割することが可能となっている。二分割された回転部材40には、連結用ボルト(図示略)を通すためのボルト穴40aが形成されている。
【0020】
ところで、昇塔防止装置25をつぎのように配置する構成としてもよい。上記においては、昇塔防止装置25を第一の昇塔防止装置20の上下方向に配置したが、昇塔防止装置25を鉄塔1の最下部に配置し、この昇塔防止装置25に警戒色を施した場合は、一般公衆に対して注意を促すことができる。これにより、第三者の昇塔を予め防止することが可能となり、鉄塔危険部位への第三者の接触による災害を防止することができる。
【0021】
つぎに、この実施の態様1における作用について説明する。第三者が鉄塔1に昇る際には、まず主柱材2に設けられた昇塔用ステップボルト11を足場として昇り始める。第三者が主柱材2に沿って昇って行くと、第1の昇塔防止装置20に到達する前に回転部材40に到達する。回転部材40は、回転自在であるため滑りやすく、更に手のひらや腕で把持することのできないサイズを有しているので、回転部材40の近傍には第三者が手で掴むことができる部材は存在しなくなる。したがって、昇塔のための上方の足場は、回転部材40の回転による滑りによって非常に不安定なものとなり、第三者の更なる昇塔は防止される。
【0022】
また、第三者が第1の昇塔防止装置20の鋼棒22を曲げて鋼棒22の間隔を十分広めようとしてもこれは不可能となる。第三者が鋼棒22を変形させるためには、十分な安定した足場が必要となるが、この足場は図1の下方の回転部材40によって確保することはできない。また、さらに第1の昇塔防止装置20の上方にも回転部材40が配置されているので、第三者の更なる昇塔は著しく困難となる。
【0023】
本実施の態様1のように、鉄塔1の昇塔経路10である主柱材2に、この主柱材2からの昇塔を防止する第1の昇塔防止装置20を取り付け、この第1の昇塔防止装置20の下方および上方のいずれか少なくとも一方の昇塔経路10に、別の昇塔防止装置25を取り付けて昇塔を防止する方法を採用したので、二種類の昇塔防止装置による相乗効果により、第三者の昇塔を確実に防止することができる。
【0024】
ところで、作業者が点検等のために昇塔する際は、回転部材40を取外すか、または回転部材40を固定(ロック)する必要がある。そこで、回転部材40を取り外す場合は、回転部材40が二分割構成となっているので、保持部材30までも取り外す必要はなく、回転部材40の取外しは容易となる。取り外された回転部材40は、点検終了後、作業者によって支持軸31に取り付けられる。また、回転部材40を固定する際には、腹材8にストッパ46が装着され、このストッパ46と係合可能な周り止め42が回転部材40に装着される。
【0025】
本実施形態では、回転部材40が一体であり、回転部材40の軸孔41に支持軸31が挿通されているが、回転部材40を軸方向に分割してもよい。すなわち、分割された各分割部材の内周に溝を設けるとともに、この溝に係合する凸部を支持軸31に設け、分割部材の溝に支持軸31の凸部が係合した状態で各分割部材が支持軸31を中心に回転できるようにしてもよい。このように回転部材40を軸方向に分割することで、それぞれの分割部材が独立して回転するため、昇塔を防止する効果が高められる。
【0026】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2を示している。本実施形態は、特に回転部材40を保持する保持部材の変形例を示す。支持軸31は、略L字型に形成された金具35を介して腹材8に取付けられている。金具35には、ボルト37が挿通される孔(図示略)が設けられている。支持軸31には、ボルト37が螺合される雌ネジ31bが形成されている。本実施の形態2では、ボルト37の締付けにより支持軸31が腹材8に固定されるので、実施の態様1のように、ジャッキは不要となる。また、支持軸31には切除部31aが形成され断面形状が円形となっていないが、支持軸31はこの断面形状でも回転部材40を回転自在に保持することができる。したがって、図8の構造を採用した場合は、同様な機能を維持しつつ、実施の形態1よりも構成を簡素化することができる。
【0027】
(実施の形態3)
図9および図10は、本発明の実施の形態3であり、回転部材の変形例を示している。ローラーからなる回転部材40’は、支持軸31への着脱を容易にするため二分割構成となっており、回転部材40’には、連結用のボルト孔40a’が形成されている。支持軸31と回転部材40’との間には、回転部材40’の回転を円滑にするためのパイプ(ビニルパイプ)45が設けられている。支持軸31には、支持軸31に対する回転部材40’の軸方向の動きを規制するストッパ47が取付けられている。本実施の形態3では、回転部材40’の回転がパイプ45によって円滑になるので、手のひらで触った場合は非常に滑りやすくなり、第三者の昇塔効果が高められる。
【0028】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4を示している。本実施の形態は、回転部材の変形例を示す。図11に示すように、鉄塔1の腹材8に取付けられる保持部材50は、支持軸51と保持部52とを有している。支持軸51は、切除部51aが形成されており、実施の形態1と同様の構成で腹材8に固定される。保持部52は、第三者による把持が困難となるように、実施の形態1の回転部材40とほぼ同じ直径を有している。保持部52は、支持軸51に対して着脱可能とするため、回転部材40と同様に二分割構造となっている。本実施の態様4においては、保持部52は、支持軸51に対して回転する必要はない。保持部52の表面には、回転自在なボールからなる回転部材53が多数保持されている。そのため、保持部52の表面が非常に滑りやすくなっており、保持部52を手のひらや腕で把持することは不可能となる。したがって、回転自在なボールからなる回転部材53を用いた場合でも、第三者による昇塔を防止することができる。
【0029】
以上、この発明の実施の形態1〜4を詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、回転部材40、40’の内部を空洞化すれば、着脱部材の重量を大幅に低減することができ、高所における回転部材40、40’の着脱作業が容易になる。なお、各実施形態では、送電線路用鉄塔への適用を説明したが、本発明はこれ以外の鉄塔にも使用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる昇塔防止装置が使用される送電線用鉄塔の部分正面図である。
【図2】図1の送電線用鉄塔における昇塔防止装置の正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1の送電線用鉄塔における昇塔防止装置の配置を示す平面図である。
【図5】図1の送電線用鉄塔における昇塔経路を示す正面図である。
【図6】図1および図5の送電線用鉄塔における第1の昇塔防止装置の概略平面図である。
【図7】図1の送電線用鉄塔の全体を示す正面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係わる昇塔防止装置における保持部材の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係わる昇塔防止装置の正面図である。
【図10】図9における昇塔防止装置における回転部材の断面図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係わる昇塔防止置における保持部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 鉄塔
2 主柱材
5 基礎材
8 腹材
11 昇降用ステップボルト
20 第1の昇塔防止装置
22 鋼棒
25 昇塔防止装置
30 保持部材
31 支持軸
31a 切除部
32 押圧材
33 ジャッキ
40 回転部材(ローラー)
40’ 回転部材 (ローラー)
50 保持部材
53 回転部材(ボール)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の昇塔経路に固定される保持部材と、この保持部材に対して回転自在な回転部材と、を備えたことを特徴とする昇塔防止装置。
【請求項2】
前記回転部材は前記保持部材を中心に回転するローラーから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の昇塔防止装置。
【請求項3】
前記回転部材は前記保持部材に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の昇塔防止装置。
【請求項4】
前記回転部材の回転を止める回り止めを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の昇塔防止装置。
【請求項5】
前記鉄塔の昇塔経路である主柱材に、この主柱材からの昇塔を防止する第1の昇塔防止装置を取り付け、この第1の昇塔防止装置の下方および上方のいずれか少なくとも一方の昇塔経路に、請求項1から4のいずれか1項に記載の昇塔防止装置を取り付けたことを特徴とする昇塔防止方法。
【請求項1】
鉄塔の昇塔経路に固定される保持部材と、この保持部材に対して回転自在な回転部材と、を備えたことを特徴とする昇塔防止装置。
【請求項2】
前記回転部材は前記保持部材を中心に回転するローラーから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の昇塔防止装置。
【請求項3】
前記回転部材は前記保持部材に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の昇塔防止装置。
【請求項4】
前記回転部材の回転を止める回り止めを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の昇塔防止装置。
【請求項5】
前記鉄塔の昇塔経路である主柱材に、この主柱材からの昇塔を防止する第1の昇塔防止装置を取り付け、この第1の昇塔防止装置の下方および上方のいずれか少なくとも一方の昇塔経路に、請求項1から4のいずれか1項に記載の昇塔防止装置を取り付けたことを特徴とする昇塔防止方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−186936(P2007−186936A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6753(P2006−6753)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
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