説明

昇華型熱転写受像シート。

【課題】熱転写速度が高速かされた場合においても、熱転写時に高い印画濃度においても熱転写シートとの離型性に優れる昇華型熱転写受像シートを提供する。
【解決手段】少なくとも基材シート(A)、断熱層(B)、及び受容層(C)からなる昇華型熱転写受像シートにおいて、受容層(C)が少なくとも塩化ビニル単位を80モル%以上含む塩化ビニル系樹脂と離型剤を含有した層であり、かつ該塩化ビニル系樹脂が1~10Mradの電子線照射により架橋されていることを特徴とする昇華型熱転写受像シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華型熱転写方式の印画に用いられる熱転写受像シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーハードコピーとして種々の熱転写方法が広く普及している。これらの熱転写方法の中で、記録材としての熱拡散型染料(昇華型染料)をプラスチックフィルム等の基材シート上に担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックフィルム等の別の基材シート上に担持させた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせて、熱転写により熱転写受像シート上にフルカラー画像を形成する昇華型熱転写方式が知られている。この方法は、加熱手段としてプリンタのサーマルヘッドが使用され、極めて短時間の加熱によって3色又は4色の多数の色ドットを受像シートに転移させ、該多色の色ドットにより原稿のフルカラー画像を再現するものであり、熱移行性染料を色材としているためドット単位で印画濃度、階調を自由に調節でき、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に再現できるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のカラー画像形成に応用されている。その画像は、銀塩写真に匹敵する高品質なものである。
昇華型熱転写受像シートを得る手段として、例えばグラビアコート等により、基材シート上に断熱層や受容層を順次形成する方法が知られている。しかしながら、この方法は、各層を順次形成する方法であるため、工程数が多くなるという問題があった。そのため、より少ない工程数で昇華型熱転写受像シートを得るため、同時に複数の層を形成する方法等が注目を浴びている。
近年、このような染料拡散を利用した昇華型熱転写記録方式において、熱転写時に熱転写シートとの離型性と耐熱性にも優れ、更に高い染料染着性にも優れる昇華型熱転写受像シートの製造が検討されている。
【0003】
特許文献1には、水系バインダーと中空粒子を主成分として含有する水性中間層と水系バインダーと離型剤を主成分とする水性受像層を同時塗布する熱転写受像シートの製造方法が開示されている。
特許文献2には、基材上に、断熱層及び受像層を有する熱転写受像シートにおいて、該断熱層が中空粒子を含有し、該中空粒子の含有率が65質量%以上であって、かつ該断熱層とそれに隣接する受像層側の層とが、同時重層塗布により形成されたことを特徴とする熱転写受像シートが開示されている。特許文献3には、水溶性樹脂を最表層に有するインクジェット記録媒体が開示されており、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を主成分とする受容層用塗布液と、空隙率30%以上の中空粒子を含有する最下層塗布液とを同時塗布することについて記載されている。
特許文献4には、支持体上に、ポリマーラテックスを含有する受容層と中空ポリマーを含有する断熱層が塗設された感熱転写受像シートが開示されている。該受容層には水溶性ポリマーの固形分含有率が0.2質量%〜30質量%であり、またポリマーラテックスの中でも塩化ビニル類が好ましいこと、およびこのような感熱転写受像シートは転写画像の経時変化が小さい記録画像を形成することができると記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−171240号公報
【特許文献2】特開2006−88691号公報
【特許文献3】特開2006−103040号公報
【特許文献4】特開2007−190912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の昇華型熱転写受像シートにおいては、高い印画濃度、例えば18階調(step)においては離型性が低下する傾向があり、離型性を維持して高画質の画像を形成することは困難であるという問題点があった。本発明は、熱転写速度が高速化された場合においても、熱転写時に高い印画濃度においても熱転写シートとの離型性に優れる昇華型熱転写受像シートを提供することを目的とする。
尚、上記18階調の印画濃度とは、1ライン周期を255に等分割したパルス長さをもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンタを用い、1ライン周期当りのパルス数0から255個までを18ステップに分割したときに、濃度の高い側の18番目の濃度をいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、基材シート上に、断熱層とその上に受容層とが形成された熱転写受像シートにおいて、受容層の塩化ビニル系樹脂からなるバインダー樹脂を電子線照射で架橋することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の(1)ないし(3)に記載する発明を要旨とする。
(1)少なくとも基材シート(A)、断熱層(B)、及び受容層(C)からなる熱転写受像シートにおいて、受容層(C)が少なくとも塩化ビニル単位を80モル%以上含む塩化ビニル系樹脂と離型剤を含有した層であり、かつ該塩化ビニル系樹脂が1~10Mradの電子線照射により架橋されていることを特徴とする熱転写受像シート。
(2)前記塩化ビニル系樹脂が塩化ビニルと、酢酸ビニル又はアクリル系化合物のモノマーとの共重合体であることを特徴とする、前記(1)に記載の熱転写受像シート。
(3)前記塩化ビニル系樹脂が1〜8Mradの電子線照射により架橋されていることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の熱転写受像シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明の昇華型熱転写受像シートは、耐熱性と熱転写時の離型性に優れ、更に高い印画濃度における離型性の改良がなされたものである。
また、本発明の、受容層(C)のバインダー樹脂に、架橋された塩化ビニル系樹脂を用いた昇華型熱転写受像シートと、染料層のバインダー樹脂にポリビニルアセタール系樹脂を用いた昇華型熱転写シートとを重ね合わせてサーマルヘッドにより加熱転写する画像形成方法により、離型性に優れた高い印画濃度における画質を顕著に向上することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の昇華型熱転写受像シートについて説明する。
〔1〕「昇華型熱転写受像シート」について
上述したように本発明の「昇華型熱転写受像シート(以下、熱転写受像シートということがある)」は、少なくとも基材シート(A)、断熱層(B)、及び受容層(C)からなる熱転写受像シートにおいて、受容層(C)が少なくとも塩化ビニル単位を80モル%以上含む塩化ビニル系樹脂と離型剤を含有した層であり、かつ該塩化ビニル系樹脂が1~10Mradの電子線照射により架橋されていることを特徴とする。
このような本発明の熱転写受像シートは、基材シート(A)上に断熱層(B)とその上に受容層(C)とが形成された層構造を有するが、受容層(C)と断熱層(B)間にクリア層、プライマー層(E)、帯電防止層、接着層等を形成することが可能である。また、断熱層(B)と基材(A)間に下引き層(D)を形成することができる。
以下本発明の熱転写受像シートを構成する各層について説明する。
【0009】
(1)受容層(C)
本発明に用いられる受容層(C)は、少なくともバインダー樹脂として塩化ビニル単位を80モル%以上含む塩化ビニル系樹脂と離型剤を含有する層であり、かつ該塩化ビニル系樹脂が1~10Mradの電子線照射により架橋されていることを特徴とする。
受容層(C)のバインダー樹脂としては、少なくとも上記架橋された塩化ビニル系樹脂を含有している必要があり、該塩化ビニル系樹脂以外に他のバインダー樹脂を含有させることもできる。
(イ)塩化ビニル系樹脂
本発明において、バインダー樹脂として塩化ビニル系樹脂を架橋することにより、本発明の効果を発揮させるには該樹脂中の塩化ビニル単位を80モル%以上とする必要がある。
塩化ビニル系樹脂が共重合体(塩化ビニル系共重合体)の場合に該樹脂中の塩化ビニル単位以外の他の構成単位を形成するモノマーとしては、以下の(イ)〜(チ)に記載する化合物等が例示できる。
【0010】
イ)α,β−不飽和カルボン酸エステル類:アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等)、置換アルキルアクリレート(例えば、2−クロロエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート等)、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリ−レート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等)、置換アルキルメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ポリオキシプロピレンの付加モル数=2ないし100のもの)、3−N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、クロロ−3−N,N,N−トリメチルアンモニオプロピルメタクリレート、(2−カルボキシエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、4−オキシスルホブチルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート等)、不飽和ジカルボン酸の誘導体(例えば、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジブチル等)、多官能エステル類(例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート等)。
【0011】
ロ)α,β−不飽和カルボン酸のアミド類:例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、イタコン酸ジアミド、N−メチルマレイミド、2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸、メチレンビスアクリルアミド、ジメタクリロイルピペラジン等。
ハ)不飽和ニトリル類:アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0012】
ニ)スチレン及びその誘導体:スチレン、ビニルトルエン、p−tertブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩、p−スチレンスルフィン酸カリウム塩、p−アミノメチルスチレン、1,4−ジビニルベンゼン等。
ホ) ビニルエーテル類:メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等。
ヘ)ビニルエステル類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルクロロ酢酸ビニル等。
ト)α,β−不飽和カルボン酸及びその塩類:アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、イタコン酸カリウム等。
チ)その他の重合性単量体:N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、ジビニルスルホン等。
【0013】
これらの共重合体の中でも、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸および/またはそのアルキルエステル樹脂が好ましく、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が染料染着性の観点からより好ましい。
上記受容層(C)のバインダー樹脂には塩化ビニル系樹脂以外に他の樹脂も含有させることもできる。
上記その他の樹脂としては、スチレン−アクリル系共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、ポリエーテル系樹脂等が挙げられる。
【0014】
上記その他の樹脂の中ではスチレン−アクリル系共重合体が好ましい。スチレン−アクリル系共重合体は、スチレン単位とアクリル系化合物単位とから形成される共重合体であれば特に限定されず、スチレンおよびアクリル系化合物に加えてこれら必須単量体と共重合可能なモノマーをも少量共重合させたものであってもよい。スチレン−アクリル系共重合体中のスチレン単位とアクリル系化合物単位のモル比([スチレン単位]/[アクリル系化合物])は60〜80/40〜20である。スチレン−アクリル系共重合体中のスチレン単位が60モル%以上で比較的高いガラス転移温度(Tg)となるので、このような共重合体を含有する受容層(C)は耐熱性に優れると共に、耐光性が向上する。
一方、前記スチレン単位が80モル%を超えるとTgが上昇して耐熱性には優れるものの、染料染着性が低下し印画濃度が低下するという不都合を生ずる虞がある。
受容層(C)のバインダー樹脂に配合する、塩化ビニル系樹脂以外に他の樹脂の配合量は、本発明の電子線照射の効果を発揮させるためには、バインダー樹脂中で30重量%以下とすることが好ましい。
【0015】
(ロ)離型剤
受容層(C)には、離型剤を配合させる必要がある。離型剤を配合させることにより、熱転写時に、受像シートの染料層との熱融着を抑制して、印画感度の低下を防止することが可能となる。受容層(C)に用いられる離型剤としては、従来公知の離型剤、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系の界面活性剤、シリコーン等が挙げられ、これらを1種、または2種以上混合して使用することができる。本発明においては、特に変性シリコーンオイルを用いることが好ましく、上記変性シリコーンオイルとして具体的には、
1)変性シリコーンオイル側鎖型、
2)変性シリコーンオイル両末端型、
3)変性シリコーンオイル片末端型、
4)変性シリコーンオイル側鎖両末端型、
5)シリコーングラフトアクリル樹脂、
6)メチルフェニルシリコーンオイル
等が挙げられる。
【0016】
上記変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性したもの等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性したもの等が挙げられる。
また上記離型剤の添加量としては、受容層(C)の形成に用いられる塩化ビニル系樹脂を含むバインダー樹脂100重量部に対して、0.5〜30重量部用いられることが好ましい。この添加量の範囲を満たさない場合には、受容層(C)と熱転写シートとが熱融着したり、印画感度が低下する等の問題が生じる場合があるからである。
【0017】
(ハ)その他の成分
受容層(C)には、水系の塗工液を使用して受容層(C)を形成する場合には、上記塩化ビニル系樹脂、及び離型剤に加えて冷却ゲル化剤を使用することが望ましい。
本発明の昇華型熱転写受像シートをスライドコート法により塗膜を形成する場合には、水系溶媒を使用することが好ましいので冷却ゲル化剤を含有させることにより効率よく受容層(C)を形成することが可能になる。
【0018】
冷却ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものである。上記冷却ゲル化剤としては、冷却ゲル化特性を備えるものであれば特に限定されるものではないが、特に、水に溶解した状態の冷却ゲル化剤において、80℃における該冷却ゲル化剤の粘度に対し、15℃における該冷却ゲル化剤の粘度が3倍以上のものが好ましく、5倍以上のものがより好ましく、10倍以上のものが特に好ましい。
本発明に用いられる冷却ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ペクチン等を挙げることができる。
上記ゼラチンは、三重へリックス構造を有するコラーゲンを変性させることによって得られるペプチド鎖からなるものであり、冷却されることにより部分的に上記三重へリックス構造を回復し、回復された三重へリックス構造を起点として三次元ネットワークを形成することにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
【0019】
上記κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、および、ι−カラギーナンは、紅藻類海藻から抽出される数平均分子量100000〜500000程度のガラクトース、3,6−アンヒドロガラクトースを主成分とする天然高分子化合物である。分子内に半エステル型の硫酸基を有することを特徴とするものであり、通常、ローカストビーンガムや、金属塩化合物等の増粘剤が併用されることにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
上記ペクチンは、植物の細胞壁を構成する天然多糖類であり、イオン性の化合物と併用されることにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
本発明においては、上記冷却ゲル化剤のいずれであっても好適に用いることができる。また、本発明においては、1種類の冷却ゲル化剤のみを用いてもよく、あるいは、2種類以上の冷却ゲル化剤を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(ニ)受容層形成用塗工液
本発明において、受容層(C)は、少なくとも塩化ビニル系樹脂と離型剤からなる成分を溶媒を含有する受容層形成用塗工液として、又は溶媒を含有しない塗工液として塗布後、乾燥して形成することができる。本発明に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、あるいはこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
上記受容層形成用塗工液を塗布する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラビアロール法、コンマコート法、バーコート法等を挙げることができる。
又、受容層形成用塗工液をスライドコート法により、断熱層(B)と同時に形成すると製造効率を高めることができるので、水系溶媒を使用することもできる。
実用的には少なくとも塩化ビニル系樹脂、冷却ゲル化剤及び離型剤からなる受容層形成用塗工液を使用することが好ましいので、塩化ビニル系樹脂、及び任意に添加可能な他のバインダーと共にポリマーラテックスとして該水系溶媒に分散させたものを使用することが望ましい。
ここで、上記「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいう。水系溶媒における水の割合は、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上記水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等を例示することができる。
【0021】
(ホ)受容層(C)の成分、及び厚み
上記したように、受容層(C)には少なくともバインダー樹脂70〜95重量%、及び離型剤2〜30重量%含有されていることが好ましい。本発明に用いられる受容層(C)の厚みは、受容層形成樹脂の種類に応じて所望の印画濃度を発現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、0.5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜20μmがより好ましく、1μm〜15μmが更に好ましい。
【0022】
(2)断熱層(B)
断熱層(B)は、基材シート(A)と受容層(C)との間に形成されるものであり、少なくともバインダー樹脂及び中空粒子を含んで構成され、さらに好ましくは冷却ゲル化剤を含んで構成されるものである。断熱層(B)は、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際に、サーマルヘッドから受容層(C)に加えられた熱が、基材シート等へ伝熱することによって基材シートが損失することを防止するための断熱性をシートに付与するための層である。また、サーマルヘッドからの熱が、印画時の染料の昇華に効率よく使用されるための高効率な熱利用の観点からも、断熱層(B)を形成することは望ましい。加えて、断熱層(B)は中空粒子を含有することによりクッション性を有しており、断熱層(B)を備える熱転写受像シートにおいて、画像形成時における濃度ムラやハイライト部の白抜けが防止され印画特性を向上させることができる。
【0023】
断熱層(B)が備える断熱性は、断熱層の厚み、あるいは断熱層内に含有される中空粒子の量に主として起因する断熱層の空隙率などによって任意に調整することができる。この断熱層(B)の断熱性は、本発明の熱転写受像シートの用途等に応じて適宜調整することができる。
断熱層(B)に充分な断熱性を与えるという観点から、断熱層(B)の厚みは、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。またこのとき、上記断熱層(B)の密度は、0.1g/cm〜0.8g/cmの範囲内、なかでも0.2g/cm〜0.7g/cmの範囲内であることが好ましい。
また同様に、断熱層(B)に充分な断熱性を与えるという観点から、断熱層(B)の空隙率は、15%〜80%の範囲内であることが好ましい。尚、上記空隙率は、
(中空粒子の空隙率)×(断熱層における中空粒子の含有率)
で表される値を指すものとする。
【0024】
本発明に用いられる断熱層(B)は、単一の層からなる構成を有するものであってもよく、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであってもよい。ここで、複数の層が積層された構成を有する断熱層(B)としては、同一組成の層が積層された構成を有するものであってもよく、あるいは、異なる組成の層が積層された構成を有するものであってもよい。なかでも本発明に用いられる断熱層(B)は、組成の異なる2層が積層された構成を有するものであることが好ましい。このような構成とすることにより、さらに機能的な断熱層(B)を得ることができるからである。
本発明に用いられる断熱層(B)が2層構造である場合の一例としては、上記断熱層(B)が、基材シート(A)側から、中空粒子を含有する断熱層(B)と、及び上記中空粒子よりも中空率の小さな中空粒子を含有する断熱層(B)とが積層された構成を有するものを挙げることができる。断熱層(B)としてこのような2層構造よりなるものを用いることにより、印画時における濃度ムラやハイライト部の白抜け防止といった印画特性の向上効果がさらに良好に発揮され得る。
【0025】
(イ)中空粒子
本発明において用いられる中空粒子は断熱層(B)に断熱性及びクッション性を付与する機能を有するものである。したがって、上記中空粒子としては、断熱層(B)に所望の断熱性およびクッション性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、発泡粒子を用いてもよく、あるいは、非発泡粒子を用いることもできる。また、中空粒子として用いられる上記発泡粒子は、独立発泡粒子であってもよく、あるいは、連続発泡粒子であってもよい。さらに、本発明に用いられる中空粒子は、樹脂等から構成される有機系中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機系中空粒子であってもよい。また、上記中空粒子は、架橋中空粒子であってもよい。
上記中空粒子を構成する樹脂としては、例えば、架橋スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。
【0026】
上記中空粒子の平均粒径は、中空粒子を構成する樹脂の種類等に応じて、断熱層(B)に所望の断熱性およびクッション性を付与できる範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、0.1μm〜15μmの範囲内であることが好ましく、特に0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎると、中空粒子の使用量が増えコストが高くなり、平均粒径が大きすぎると、平滑な断熱層(B)を形成することが困難になるからである。
本発明において、断熱層(B)に含まれる中空粒子の量としては、所望の断熱性およびクッション性を有する断熱層(B)を得ることができれば特に限定されるものではないが、断熱層(B)に含まれる全固形分を100重量%としたときに、中空粒子の割合が30重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも50重量%〜80重量%の範囲内であることが好ましい。中空粒子の含有量が少なすぎると、断熱層(B)における空隙が少なくなり、充分な断熱性およびクッション性が得られない場合があり、中空粒子の含有量が多すぎて後述する断熱層形成用バインダー樹脂の重量比が小さくなりすぎると、断熱層(B)が脆くなり層の成形性が悪くなる虞があるからである。
【0027】
(ロ)断熱層形成用バインダー樹脂
断熱層(B)を形成するために用いられるバインダー樹脂としては、通常、水系溶媒に分散あるいは溶解可能な所謂、水系樹脂が用いられる。このような水系樹脂としては、例えば、アクリル系ウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、特開平7−195826号公報及び同7−9757号公報に記載のポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、特開昭62−245260号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等を挙げることができる。また、上記樹脂の2種類以上を組み合わせて用いても良い。尚、上記多孔質形成用バインダー樹脂として、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン等の材料を用いる場合には、これらバインダー樹脂は、冷却ゲル化機能も発揮し得るため、別途、後述する冷却ゲル化剤を用いずとも、同時多層塗布方法において良好に製造可能である。
【0028】
本発明において、断熱層(B)に含まれるバインダー樹脂の量は、用いられる中空粒子の種類や、熱転写受像シート12に求められる断熱性、画像形成条件などによって適宜決定されるが、一般的には、断熱層(B)に含まれる全固形分を100重量%としたときに、バインダー樹脂の割合は、5重量%〜70重量%であることが好ましく、10重量%〜60重量%であることがより好ましく、15重量%〜40重量%であることが特に好ましい。バインダー樹脂の含有量が少なすぎると、断熱層(B)が脆くなり、層形成が不良に成る虞がある。またバインダー樹脂が多くなりすぎると、中空粒子の含有率が充分に確保されず、所期の目的である断熱層(B)の断熱性およびクッション性が確保されない虞がある。
【0029】
次に、断熱層(B)に用いられる冷却ゲル化剤について説明する。本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものであり断熱層(B)へ添加は任意であるが、熱転写受像シートを同時多層塗布方法により成形する際には、受容層(C)及びバリヤ層に冷却ゲル化剤を含有させると共に、断熱層(B)にも冷却ゲル化剤を含有させる必要がある。尚、断熱層(B)に用いられる冷却ゲル化剤の種類については、上述する受容層(C)に用いられる冷却ゲル化剤と同様である。
また本発明において、断熱層(B)中に含有される中空粒子と、冷却ゲル化剤との割合は、所望の断熱性を有する断熱層(B)を形成することができれば特に限定されるものではない。なかでも、本発明においては、冷却ゲル化剤が、断熱層塗工液中の固形分100重量部に対して、重量換算で5〜50重量部の範囲内であることが好ましく、特に10〜40重量部の範囲内であることが好ましく、さらに12〜40重量部の範囲内であることが好ましい。中空粒子と冷却ゲル化剤の含有比が上記範囲内であることにより、断熱性に優れた断熱層(B)を形成することができるからである。
【0030】
(ハ)任意の添加成分
本発明に用いられる断熱層(B)は、上述する中空粒子、バインダー樹脂及び冷却ゲル化剤以外にも、必要に応じて任意の添加成分を含むものであってよい。上記任意の添加成分として断熱層(B)に含有させることができるものとしては、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等を挙げることができる。
【0031】
(3)基材シート(A)
本発明に用いられる基材シート(A)は、受容層(C)を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、受容層(C)を保持するという役割を有するとともに、画像形成時に加えられる熱に耐え得るものであり、取り扱い上支障のない機械的特性を有することが望ましい。このような基材シート(A)の材料は、熱転写受像シートの種類等に応じて適宜選択され、例えば、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルムまたはシートを使用することができる。
【0032】
また上記のプラスチックフィルムまたはシートやこれらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色フィルム、あるいは基材内部にミクロボイドを有するシート、他にコンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等も用いることができる。また、上記のシート等を任意に組み合わせた積層体も使用できる。代表的な例として、セルロース繊維紙と合成紙、セルロース繊維紙とプラスチックフィルムとの積層体があげられる。
また、上記の基材の表面および/または裏面に易接着処理した基材も使用できる。また上記基材の厚みは、通常3μm〜300μm程度とされ、機械的適性等を考慮すると、100μm〜250μmとされることが好ましい。また、基材とその上に設けられる層との密着性が乏しい場合には、その表面に易接着処理やコロナ放電処理が施されたものであることが好ましい。
【0033】
(4)任意の層構成
本発明の熱転写受像シートは、少なくとも基材シート(A)、受容層(C)、及び受容層(C)と基材シート(A)間に形成される断熱層(B)、を有するものであるが、必要に応じて他の任意の構成を有するものであってもよい。このような他の構成としては、例えば、断熱層(B)と基材シート(A)との間に形成される下引き層(D)、断熱層(B)と受容層(C)との間に形成されるプライマー層(E)を挙げることができる。以下、本発明に用いられるこれらの各層について説明する。
【0034】
(4−1)プライマー層(E)
本発明に用いることのできるプライマー層(E)は、断熱層(B)と受容層(C)との間に形成されるものであり、本発明の熱転写受像シートの高温高湿度環境下における、染料の断熱層(B)側への移行を防止して画像保存性を向上させる機能を有するものである。プライマー層(E)はプライマー層(E)を形成する熱可塑性樹脂(以下、プライマー層形成樹脂ということがある)と冷却ゲル化剤を主体とする層、及びポリビニリアルコール(PVA)等の水溶性ポリマーを主体とする層から形成することも可能である。プライマー層(E)には、上記プライマー層形成樹脂および上記冷却ゲル化剤以外に、例えば、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等が含まれていてもよい。上記プライマー層(E)の厚みとしては特に限定されるものではないが、例えば1μm〜40μmであることが好ましく、1μm〜20μmがより好ましく、1μm〜10μmが更に好ましい。
【0035】
(4−2)下引き層(D)
本発明に用いることのできる下引き層(D)は、基材シート(A)と断熱層(B)との間に形成され、基材シート(A)と断熱層(B)との接着性を向上させる機能を有するものである。
下引き層(D)としては、基材シート(A)と断熱層(B)との密着性を所望の程度に向上できるものであれば特に限定されるものではないが、(i)下引き層(D)を形成する樹脂(以下、下引き層形成樹脂ということがある)と冷却ゲル化剤と主体とする層から形成されるのが好ましいが、(ii)水溶性ポリマー等を用いることも可能である。
尚、下引き層(D)における(i)下引き層形成樹脂と冷却ゲル化剤、及び(ii)水溶性ポリマー等は、前記プライマー層(E)に記載した、プライマー層形成樹脂、冷却ゲル化剤、水溶性ポリマーとそれぞれ同様であるので、記載は省略する。
なお、下引き層(D)には、上記下引き層形成樹脂および上記冷却ゲル化剤以外に、例えば、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ材、分散剤等を挙げることができる。上記硬化剤は、例えば、下引き層形成樹脂として、活性水素を有する熱可塑性樹脂を用いた場合等に特に有効である。また、上記下引き層を形成する塗工液(以下、下引き層形成用塗工液ということがある)には、中空粒子を含有させることもできる。
【0036】
〔2〕熱転写受像シートの製造
本発明の熱転写受像シートは、基材シート(A)上に断熱層(B)、及び受容層(C)を形成した後に、受容層(C)面に電子線照射を行い形成される。
(1)基材シート(A)上に断熱層(B)、及び受容層(C)を形成
基材シート(A)上に断熱層(B)、及び受容層(C)の形成は、グラビアロール法、コンマコート法、バーコート法等により形成される。
又、断熱層(B)、受容層(C)等をそれぞれ水系の断熱層形成用塗工液、受容層形成用塗工液として、基材シート(A)上に同時に形成するスライドコート法により製造することもできる。
塗膜を塗布後、有機溶媒を使用した塗工液の塗布の場合には、溶媒除去により電子線照射前の熱受容シートが形成され、又、スライドコート法を採用する場合には0℃〜30℃程度の温度で冷却し、次に30℃〜90℃程度の温度で乾燥して電子線照射前の熱転写受像シートが形成される。
【0037】
(2)未架橋受容層への電子線照射
本発明においては、上記のようにして形成された未架橋の受容層に、電子線を照射して受容層を架橋させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度、1〜10Mradの照射量で未架橋受容層を架橋させることが好ましい。尚、該照射量は1〜8Mradの照射量がより好ましい。
電子線照射量が10Mradを超えると基材シート(A)が黄色に変色する不都合を生ずる。
このような電子線両を照射する時間は5〜30分程度が好ましく、10〜20分程度がより好ましい。
電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0038】
〔3〕「昇華型転写による画像形成方法」について
本発明の熱転写受像シートを使用する「昇華型転写による画像形成方法」は、前記昇華型熱転写受像シートと、表面に染料層が設けられた昇華型熱転写シートとを重ね合わせてサーマルヘッドにより加熱転写する方法である。
以下に「昇華型熱転写シート」について記載する。
(1)昇華型熱転写シート
昇華型熱転写シート(以下、熱転写シートと記載することがある。)は、少なくとも記録材としての熱拡散型染料(昇華型染料)が担持された染料層と、基材シートからなるシートであり、本発明の熱転写受像シートと互いに重ね合わせてフルカラー画像を形成する熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)に使用するものであり、特開2006−281634号公報に記載されているような熱転写シートを使用することができる。
熱転写シートは、染料層と基材シートとの間の接着性を高めるために、染料層と基材シート間に下塗り層、及び基材シートの裏面に下引き層を設けることができる。
【0039】
(i)基材シート
上記基材としては、特に限定されないが、熱転写時に劣化しない程度の耐熱性と強度を有する樹脂からなるものが好ましい。上記基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルフィド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリサルホン、ポリアミド(アラミド)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリイミド、アイオノマー等が挙げられる。上記樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。上記基材は、上述の樹脂1種のみからなるものであってもよいし、2種以上の樹脂からなるものであってもよい。上記基材は、厚さが、通常、約0.5〜50μm、好ましくは、約1〜10μmである。
【0040】
(ii)染料層
染料層は1色の単一層で構成したり、あるいは色相の異なる染料を含む複数の染料層を、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成することも可能である。染料層は、熱移行性染料を任意のバインダー樹脂により担持してなる層である。使用する染料としては、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料であって、従来公知の昇華転写型熱転写シートに使用されている染料は、いずれも本発明に使用可能であるが、色相、印字感度、耐光性、保存性、バインダー樹脂への溶解性等を考慮して選択する。
【0041】
染料層のバインダー樹脂としては、従来公知のバインダー樹脂がいずれも使用でき、好ましいものを例示すれば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中で、耐熱性、染料の移行性等の観点から、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂及びフェノキシ樹脂等が特に好ましい。
また、上記の樹脂バインダーに代えて、次のような離型性グラフトコポリマーを離型剤またはバインダーとして用いることができる。この離型性グラフトコポリマーは、ポリマー主鎖にポリシロキサンセグメント、フッ化炭素セグメント、フッ化炭化水素セグメント、または長鎖アルキルセグメントから選択された少なくとも1種の離型性セグメントをグラフト重合させてなるものである。これらのうち、特に好ましいのはポリビニルアセタール樹脂からなる主鎖にポリシロキサンセグメントをグラフトさせて得られたグラフトコポリマーである。
【0042】
染料層は、上記染料、バインダーと、その他必要に応じて従来公知と同様な各種の添加剤を加えてもよい。その添加剤として、例えば、受像シートとの離型性やインキの塗工適性を向上させるために、ポリエチレンワックス等の有機微粒子や無機微粒子、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系化合物等が挙げられる。このような染料層は、通常、適当な溶剤中に上記染料、バインダーと、必要に応じて添加剤を加えて、各成分を溶解または分散させて塗工液を調製し、その後、この塗工液を基材の上に塗布、乾燥させて形成することができる。この塗布方法は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段を用いることができる。このように形成された染料層は、0.2〜6.0g/m、好ましくは0.3〜3.0g/m程度の乾燥時の塗工量である。
【0043】
(iii)下塗り層
下塗り層としては、公知のトリアルコキシシラン等を塗布することができる。
(iv)下引き層
下引き層としては、例えば、アルミニウムアルコレートを用いて形成されるものであるので、基材と下引き層との接着性に優れているが、該接着性を更に向上させるため、基材の下引き層及び染料層を形成する面に接着処理を施すことが好ましい。
上記接着処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等、公知の樹脂表面改質技術を適用することができる。上記接着処理は、1種のみ行ってもよいし、2種以上行ってもよい。
【0044】
(2)昇華型熱転写による画像形成方法
上記昇華型転写による画像形成方法は、本発明の熱転写受像シートに、昇華型熱転写方法で受像シートの染料画像を形成する方法であり、使用する熱転写シートは、その染料層にイエロー、マゼンタ及びシアン、更に必要に応じてブラックの昇華性染料をバインダー樹脂で担持させ、必要に応じて背面に耐熱滑性層を設けたもので、プリンタのサーマルヘッドで印字することによって、濃淡自在で任意の階調性フルカラー画像が受容層(C)中に形成される。かかるねつ転写シート及び転写方式自体は従来公知のものであり、いずれも使用することが出来る。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。表記の重量部は固形分で記載し、必要に応じて純水にて希釈した。
試料の調製、及び熱転写受像シート等の評価方法について以下に記載する。
[実施例1〜6]
〔1〕試料の調製方法
(1)熱転写受像シートの作製
(1−1)実施例1〜4
(i)基材シート上に断熱層の形成
基材シートとしてRCペーパー(三菱製紙(株)製、商品名:STF−150、)を用い、下記組成(下記成分が総固形分として17質量%となるように水にて希釈した塗工液)の断熱層形成用塗工液を50℃に加熱し、乾燥時の厚みがそれぞれ30μmとなるように塗布し、5℃にて1分間冷却・ゲル化させ、50℃にて5分間乾燥した。
・中空粒子(ロームアンドハース社製、商品名:HP-91)(固形分として) 75重量部
・ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:RR)(固形分として) 25重量部
・界面活性剤(日信化学工業(株)製、商品名:サーフィノール440) 0.15重量部
(ii)上記断熱層上に未架橋受容層の形成
実施例1〜4において、上記断熱層上に下記組成の受容層形成用塗工液(下記成分が総固形分として25質量%となるように希釈した塗工液)をグラビアコートで4g/m塗工後、110℃、1分間乾燥した。
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学工業(株)製、ソルバインC) 100重量部
・アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:X22-3050C) 5重量部
・エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:X22-3000E) 5重量部
・メチルエチルケトン/トルエン(重量比)1/1 400重量部
【0046】
(iii)電子線照射
上記基材シート上に断熱層、未架橋受容層の形成がこの順に形成された積層シートの未架橋受容層側から、下記条件で電子線照射により塩化ビニル樹脂系の架橋を行い、実施例1〜4での評価用熱転写受像シートを作製した。
・電子線照射装置:岩崎電気(株)製、EC250/15/180L
・電子線照射条件
実施例1 1Mrad 電圧:165KV、電流:1.2mA、照射速度:20m/min
実施例2 3Mrad 電圧:165KV、電流:3.4mA、照射速度:20m/min
実施例3 5Mrad 電圧:165KV、電流:2.9mA、照射速度:10m/min
実施例4 5Mrad 電圧:165KV、電流:5.6mA、照射速度:20m/min
【0047】
(1−2)実施例5、6
(i)基材シート上に断熱層、未架橋受容層の形成
実施例1に記載したと同様に断熱層形成塗工液を調製した。
又、実施例5、6において、下記組成の水系受容層形成用塗工液を調製した。
・塩化ビニル系樹脂(日信化学工業社製、ビニブラン690) 80重量部
・ゼラチン(RR、新田ゼラチン社製) 20重量部
・シリコーン系離型剤(KF615A、信越化学工業社製) 10重量部
・界面活性剤(サーフィノール440、日信化学工業社製) 3重量部
尚、受容層形成用塗工液中で上記成分が総固形分として25質量%となるように水にて希釈した。
(ii)同時多層塗布
基材シート上に、上記組成の多孔質層形成用塗工液、受容層形成用塗工液を50℃にそれぞれ加熱し、スライドコーティングを用いて、乾燥時の厚みがそれぞれ30μm、5μmとなるように塗布し、5℃にて1分間冷却・ゲル化させ、50℃にて5分間乾燥し、電子線照射前の熱転写受像シートを得た。
(iii)電子線照射
上記基材上に断熱層、未架橋受容層の形成がこの順に形成された積層体の未架橋受容層側から、下記条件で電子線照射により塩化ビニル系樹脂の架橋を行い、行い、受容層を形成した。
実施例5 5Mrad 電圧:165KV、電流:2.9mA、照射速度:10m/min
実施例6 5Mrad 電圧:165KV、電流:5.6mA、照射速度:20m/min
【0048】
(2)熱転写条件
上記熱転写受像シートと、下記熱転写シートを用いて、マゼンタにて諧調パターンを印画後、テストプリンタを用いて下記条件で染料層を熱転写シートの受容層に転写し、印画物を得た。印画条件を以下に示す。
【0049】
(i)熱転写シート
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ4.5μm)の基材の一方の面に、下記の組成を有する耐熱滑性層形成用塗工液をグラビアコーティング法により、乾燥塗布量が1.0g/m2となるように塗布、乾燥させ、その後40℃で4日間エージングを行い耐熱滑性層を形成した。
[耐熱滑性層形成用塗工液]
・ポリビニルブチラール樹脂(商品名 エスレックBX−1 積水化学工業社製) 13.6重量部
・ポリイソシアネート硬化剤(商品名 タケネートD218 武田薬品工業社製) 0.6重量部
・リン酸エステル(商品名 プライサーフA208S 第一工業製薬社製) 0.8重量部
・メチルエチルケトン 42.5部
・トルエン 42.5部
【0050】
上記基材シートの耐熱滑性層が形成された側と反対側の面上に、下記組成の塗工液を用いて、マゼンタ染料層(M)、を、バーコーターにて、乾燥塗布量が0.6g/m2となるように塗布、乾燥させて、熱転写シートを用意した。
【0051】
[マゼンタ染料層形成用塗工液]
・マゼンタ分散染料 KC27(コニカミノルタ(株)製) 4重量部
・ポリビニルアセタール樹脂(商品名 KS−5 積水化学工業(株)製) 3.0重量部
・メチルエチルケトン 50重量部
・トルエン 50重量部
【0052】
(ii)印画条件
・発熱体平均抵抗値:5045Ω
・主走査方向印字密度:300dpi
・副主走査方向印字密度:300dpi
・印加電圧:22(V)
・1ライン周期:2(msec./line)
・印字開始温度:27(℃)
・印加パルス(諧調制御方法):1ライン周期を255に等分割したパルス長さをもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンタを用い、1ライン周期当りのパルス数0から255個までを18ステップに分割した。これにより、18段階に異なるエネルギーを与えることができる。
【0053】
〔2〕印画濃度評価方法
15*n(n=0〜17)の18階調グラデーション画像を印画した、前記式「15*n」のnに1〜18をそれぞれ代入したものに相当する階調の濃度を光学濃度計(グレタグマクベス社製、spectrolino )にて測定し、それぞれ1〜18階調の印画濃度として表1に示した。ただし、18階調は最も濃度の高い側の画像に相当する。
表1の結果を実施例1〜4については図1に、実施例5、6については図2のグラフに示す。
【0054】
[比較例1]
電子線照射を行なわなかった以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で熱転写受像シートを作製し、実施例1に記載したのと同様の方法で印画濃度の評価を行なった。
評価結果を表1と図1のグラフに示す。
[比較例2]
電子線照射を行なわなかった以外は、実施例5に記載したのと同様の方法で熱転写受像シートを作製し、実施例1に記載したのと同様の方法で印画濃度の評価を行なった。
評価結果を表1と図2のグラフに示す。
【0055】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1〜4、及び比較例1で得られた諧調と印画濃度の関係を示すグラフである。
【図2】実施例5、6、及び比較例2で得られた諧調と印画濃度の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材シート(A)、断熱層(B)、及び受容層(C)からなる昇華型熱転写受像シートにおいて、
受容層(C)が少なくとも塩化ビニル単位を80モル%以上含む塩化ビニル系樹脂と離型剤を含有した層であり、かつ該塩化ビニル系樹脂が1~10Mradの電子線照射により架橋されていることを特徴とする昇華型熱転写受像シート。
【請求項2】
前記塩化ビニル系樹脂が塩化ビニルと、酢酸ビニル又はアクリル系化合物のモノマーとの共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の昇華型熱転写受像シート。
【請求項3】
前記塩化ビニル系樹脂が1〜8Mradの電子線照射により架橋されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の昇華型熱転写受像シート。

【図1】
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【図2】
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