説明

昇華性熱転写記録媒体

【課題】画像形成後の熱転写性保護層の熱転写において、光沢度の低下や光沢ムラのない昇華性熱転写記録媒体を提供する。
【解決手段】基材1の一方の面に耐熱性樹脂層2を設け、その他方の面に少なくとも、剥離層4と接着層5を順次積層してなる熱転写性保護層6と、色相の異なる複数の昇華性染料層3とを面順次に設けた昇華性熱転写記録媒体であって、前記剥離層がジルコニア微粒子を含有すること、また前記ジルコニア微粒子の粒径をa、前記剥離層の膜厚をbとした時、その比(b/a)が5〜100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被熱転写体上に文字または画像を保護する為の熱転写性保護層を有する昇華性熱転写記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、昇華性熱転写記録媒体は、昇華性熱転写方式のプリンタに使用されるインクリボンの事であり、基材の一方の面に耐熱性樹脂層(バックコート層)、その基材の他方の面に昇華性染料層と熱転写性保護層を設けた物である。ここで昇華性染料層は、インクの層であり、プリンタのサーマルヘッドに印加した熱によって、そのインクを昇華(昇華性転写方式)させ、被転写側(受像層)に昇華性熱転写するものである。
【0003】
現在、昇華性熱転写方式は、プリンタの高機能化と併せて各種画像を簡便に形成できる為、身分証明書などのカード類を始め、アミューズメント用出力物等広く利用されている。この様に用途の多様化と共に、得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり近年では印画する画数の増加や、プリンタの高速化に対応すべくサーマルリボンの高感度化にあたり昇華性熱転写記録媒体の高速印画に対応した色再現が必要とされている。
【0004】
上記昇華性熱転写方式により形成された画像は、転写された染料が被転写体の表面に存在する為、それらの画像を保護し、また耐光、耐摩擦性等、画像保護観点から、画像上に熱転写性保護層を有している。
【0005】
しかしながら、更なる印画の高速化に伴い、昇華性熱転写記録媒体に掛かる熱の均一性が低下する為、熱転写性保護層印画時、副走査線方向に筋状の光沢ムラが発生している。そこでこの問題を解決する為、以下の先行技術が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、フッ素系界面活性剤を使用した下引き層上に、離型層と熱転写性保護層を構成する事によって、光沢ムラを改善する技術が提案されている。
【0007】
また特許文献2では、下引き層及び耐熱性樹脂層にフッ素系界面活性剤を使用した事によって、光沢ムラを改善する技術が提案されている。
【0008】
しかしながら、上記の提案はいずれも改善はしているが、現在の高速プリンタでの画像形成において未だ実用レベルに達していない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−166363
【特許文献2】特開2009−166265
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情を鑑みて成されたものであり、画像形成後の熱転写性保護層の熱転写において、光沢度の低下や光沢ムラのない昇華性熱転写記録媒体を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、基材の一方の面に耐熱性樹脂層を設け、その他方の面
に少なくとも、剥離層と接着層を順次積層してなる熱転写性保護層と、色相の異なる複数の昇華性染料層とを面順次に設けた昇華性熱転写記録媒体であって、前記剥離層がジルコニア微粒子を含有することを特徴とする昇華性熱転写記録媒体である。すなわち、前記熱転写性保護層を構成する剥離層が、ジルコニウムの酸化物であるジルコニアを含有することにより、ジルコニアの高い透明性やダイヤモンドに近い屈折率の作用効果で、高感度が要求される熱転写プリンタの高速化においても、既に形成された下地の画像の品位を損ねることなく、光沢度の低下及び光沢ムラのない画像を形成できる昇華性熱転写記録媒体を提供することができる。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記ジルコニア微粒子の粒径をa、前記剥離層の膜厚をbとした時、その比(b/a)が5〜100であることを特徴とする請求項1に記載の昇華性熱転写記録媒体である。すなわち、前記ジルコニアの高い透明性やダイヤモンドに近い屈折率の作用効果に加えて、ジルコニア微粒子の粒径をa、前記剥離層の膜厚をbとした時、その比(b/a)が5〜100であることにより、前記剥離層内にジルコニア微粒子が均一に配置されるため、耐熱性が向上し、且つ、光沢度の低下及び光沢ムラをより一層防ぐことができる昇華性熱転写記録媒体を提供することができる。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記ジルコニア微粒子の粒径が、5〜100nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の昇華性熱転写記録媒体である。すなわち、前記ジルコニア微粒子の粒径を5〜100nmにすることにより、前記剥離層中に前記ジルコニア微粒子を均一に分散することができ、その結果、耐熱性の向上と光沢ムラの発生防止が可能となる。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記剥離層が、少なくともバインダー樹脂とジルコニア微粒子からなり、該バインダー樹脂の固形分質量に対して、前記ジルコニア微粒子の固形分質量比率が0.01〜0.40であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の昇華性熱転写記録媒体である。すなわち、該バインダー樹脂の固形分質量に対して、前記ジルコニア微粒子の固形分質量比率を0.01〜0.40にすることにより、前記ジルコニア微粒子の脱落のない昇華性熱転写記録媒体を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、昇華性熱転写記録媒体が副走査線方向に発生する筋上の光沢ムラを防止し、且つ熱転写性保護層として実用に耐えられる性能を有する昇華性熱転写記録媒体を提供する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の昇華性熱転写記録媒体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態における昇華性熱転写記録媒体について、図面を参照して説明する。
【0018】
本発明の昇華性熱転写記録媒体は、図1に示す様に、基材1の一方の面に耐熱性樹脂層2を設け、基材の他方の面に昇華性染料層3と剥離層4と接着層5を含む熱転写性保護層6を長手方向へ面順次に設けた構造を有する物である。
【0019】
昇華性熱転写媒体の基材1は、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度が要求されるので、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で又は組み合わされた複合体として使用可能であるが、中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0020】
耐熱性樹脂層2はサーマルヘッドの熱による基材の熱収縮やサーマルヘッドとの摩擦による基材の破断を防止するために、基材の熱転写層を設けた面の反対側の面に設けられる。耐熱性樹脂層に用いられるバインダーとしては、シリコンアクリレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂等が挙げられる。
【0021】
昇華性熱転写記録媒体の昇華性染料層3の昇華性染料としては主に昇華性分散染料が好ましく、公知の昇華性染料が使用できる。例えば、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンテン系、アキサジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等が挙げられる。
【0022】
具体的には、イエロー成分では、C.I.ソルベントイエロー14、16、29、30、33、56、93等、C.I.ディスパースイエロー7、33、60、141、201、231等、マゼンタ成分としては、C.I.ソルベントレッド18、19、27、143、182、C.I.ディスパースレッド60、73、135、167、C.I.ディスパースバイオレット13、26、31、56等、シアン成分としては、C.I.ソルベントブルー11、36、63、105、C.I.ディスパースブルー24、72、154、354等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの昇華性染料を単体で使用しても、複数組み合わせて使用してもよい。
【0023】
昇華性熱転写記録媒体の昇華性染料層3に用いるバインダーとしては、必成分中にポリビニルアルコール部分が含有する共重合樹脂を主とし、例えばポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂等が挙げられる。その他、昇華性染料層として従来公知の樹脂も併用でき、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂等の耐熱性、昇華性染料移行性等に優れた樹脂が併用できる。
【0024】
本発明の熱転写性保護層6は、文字や画像を形成した被熱転写体上に、昇華性熱転写記録媒体の熱転写性保護層を耐熱性樹脂層の面からサーマルヘッドによる熱転写する事により、文字や画像を保護する為の層である。従って、熱転写性保護層は、熱転写法により熱転写体から剥離して被熱転写体上に転写される一方、性能として紫外線等からの耐候性が要求される。そのために、少なくとも熱転写性保護層は、耐候性と耐熱性を供する剥離層4と、被熱転写体との密着性を向上させるための接着層5とが、順次積層された構成からなる。
【0025】
本発明の剥離層4は、例えば、バインダー、フィラーによって構成される。剥離層を構成するバインダーとしては、熱溶融性以外特に限定されるものではないが、例として、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類が挙げられる。特に、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体、エポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
本発明の剥離層4は、熱転写性保護層に耐熱性の微粒子を導入する事により印加される熱を均一にし、且つ高屈折率にして光沢度を向上させる作用効果を得る為に、ジルコニア微粒子を使用することが最も好ましい。また、他の材料からなる微粒子、例えばコロイダルアルミナ、珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化モリブデン、酸化セリウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、カオリン、シリコーンパウダー、シリカ、コロイダルシリカ、カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、ガラスフリット、ゼオライト、リトポン、カオリナイト、ハロイサイト、加水ハロサイト、雲母、タルク、ベーマイト、擬ベーマイト等の微粒子を併用しても良い。
【0027】
前記ジルコニア微粒子の粒径は5〜100nmが好ましく、耐熱性が向上し、高速印画時でも印加される熱にムラが発生せず、熱転写性保護層に均一に熱を印加出来る為、光沢ムラを防止する事が出来る。
【0028】
また、ジルコニア微粒子の粒径をaとし、剥離層の膜厚をbとした時、その比(b/a)が5から100までの範囲が好ましい。b/aが5から100までの範囲であると、耐熱性が保持される一定以上の粒径で、均一にジルコニア微粒子が配置される為、更に光沢ムラが良化する。
【0029】
また、前記剥離層のバインダー樹脂に対して、ジルコニア微粒子の固形分質量比率(ジルコニア微粒子固形分質量/バインダー樹脂固形分質量)を0.01から0.40までの範囲である事が好ましい。ジルコニア微粒子の固形分質量比率を0.01以上であると、ジルコニア微粒子の量が増え、光沢ムラに対してより効果が更に高まり、0.40以下であると、膜中のジルコニア微粒子が受光しても光散乱せず光沢度が高い状態を保持する事が出来る。
【0030】
本発明の接着層5について、バインダーとしては熱溶融性以外特に限定されるものではないが、例として、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類が挙げられる。特に、アクリル系樹脂、セルロース誘導体が好ましい。また、必要に応じて、シリコーンオイル、界面活性剤、離型剤、ワックス類、有機又は無機フィラーに代表される滑り剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、触媒促進剤、着色剤、光散乱剤、艶調整剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等を添加することができる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0032】
<実施例1>
基材として膜厚4.5μmのポリエステルフィルムを用いて、一方の面に下記組成の耐熱性樹脂層形成用インクをグラビアコート法により、乾燥後の膜厚が0.5μmになるように塗布、乾燥して耐熱性樹脂層を作製した。
[耐熱性樹脂層形成用インク]
シリコンアクリレート 50.0部
MEK 50.0部
【0033】
次に、前記基材の他方の面に、下記組成からなる昇華性熱転写層と剥離層及び接着層を積層してなる熱転写性保護層とを、面順次で形成して昇華性熱転写記録媒体を作製した。
【0034】
先ず、下記組成の昇華性熱転写形成用インクを用いて、基材の流れ方向の所定の位置に、乾燥後の膜厚が0.8μmになるように塗布、乾燥して昇華性熱転写層を作製した。
[昇華性熱転写形成用インク]
C.I.ソルベントブルー63 7.4部
ポリビニルブチラール樹脂 3.8部
メチルエチルケトン 59.2部
トルエン 29.6部
【0035】
次に、前記昇華性染料層の後方の位置に、下記組成からなる剥離層形成用インクを用いて、乾燥後の膜厚が0.3μmの剥離層を形成し、さらに、該剥離層上に下記組成からなる接着層形成用インクを用いて、乾燥後の膜厚が1.5μmの接着層を積層して、熱転写性保護層を得た。なお、前記剥離層には粒径300nmのジルコニア微粒子を使用し、剥離層の膜厚bとジルコニア微粒子の粒径との比(b/a)を1とした。また、剥離層のバインダー樹脂とジルコニア微粒子の固形分質量比率を0.50とした。
[剥離層形成用インク]
アクリル樹脂 30.0部
ジルコニア微粒子 15.0部
トルエン 27.5部
メチルエチルケトン 27.5部
[接着層形成用インク]
アクリル樹脂 10.0部
ポリエステル樹脂 3.5部
エポキシ樹脂 3.5部
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 7.5部
シリコーンパウダー 0.5部
トルエン 75.0部
【0036】
<実施例2>
剥離層形成用インクのジルコニア微粒子の粒径を100nmとし、剥離層の膜厚0.5μmと設定し、(b/a)を5とした。その他の構成は実施例1と同じである。
【0037】
<実施例3>
剥離層形成用インクのジルコニア微粒子の粒径を5nmとし、剥離層の膜厚0.5μmと設定し、(b/a)を100とした。その他の構成は実施例1と同じである。
【0038】
<実施例4>
剥離層形成用インクのジルコニア微粒子の粒径を4nmとし、剥離層の膜厚0.48μmと設定し、(b/a)を120とした。その他の構成は実施例1と同じである。
【0039】
<実施例5>
剥離層形成用インクのバインダー樹脂とジルコニア微粒子の固形分質量比率(ジルコニア微粒子固形分質量/バインダー樹脂固形分質量)を0.01とした。また、その他の構成は実施例1と同じである。
[剥離層形成用インク]
アクリル樹脂 30.0部
ジルコニア微粒子 0.3部
トルエン 34.9部
メチルエチルケトン 34.8部
【0040】
<実施例6>
剥離層形成用インクのバインダー樹脂とジルコニア微粒子の固形分質量比率(ジルコニア微粒子固形分質量/バインダー樹脂固形分質量)を0.40とした。また、その他の構成は実施例1と同じである。
[剥離層形成用インク]
アクリル樹脂 30.0部
ジルコニア微粒子 12.0部
トルエン 29.0部
メチルエチルケトン 29.0部
【0041】
<実施例7>
剥離層形成用インクのジルコニア微粒子の粒径を30nmとし、剥離層の膜厚0.3nmと設定し、(b/a)を10とした。また、バインダー樹脂とジルコニア微粒子の固形分質量比率(ジルコニア微粒子固形分質量/バインダー樹脂固形分質量)を0.1とした。その他の構成は実施例1と同じである。
[剥離層形成用インク]
アクリル樹脂 30.0部
ジルコニア微粒子 3.0部
トルエン 33.5部
メチルエチルケトン 33.5部
【0042】
<比較例1>
剥離層形成用インクに微粒子を添加しなかった。その他の構成は実施例1と同じである。
[剥離層形成用インク]
アクリル樹脂 30.0部
トルエン 35.0部
メチルエチルケトン 35.0部
【0043】
<比較例2>
剥離層形成用インクに使用する微粒子をアルミナとし、アルミナ微粒子と粒径を30nmとし、剥離層の膜厚0.3μmと設定し、(b/a)を10とした。また、バインダー樹脂とアルミナ微粒子の固形分質量比率(アルミナ微粒子固形分質量/バインダー樹脂固形分質量)を0.1とした。その他の構成は実施例1と同じである。
[剥離層形成用インク]
アクリル樹脂 30.0部
アルミナ微粒子 3.0部
トルエン 33.5部
メチルエチルケトン 33.5部
【0044】
<比較例3>
剥離層形成用インクに使用する微粒子をシリカとし、シリカ微粒子と粒径を30nmとし、剥離層の膜厚0.3μmと設定し、(b/a)を10とした。バインダー樹脂とシリカ微粒子の固形分質量比率(シリカ微粒子固形分質量/バインダー樹脂固形分質量)を0.1とした。その他の構成は実施例1と同じである。
[剥離層形成用インク]
アクリル樹脂 30.0部
シリカ微粒子 3.0部
トルエン 33.5部
メチルエチルケトン 33.5部
【0045】
<比較例4>
剥離層形成用インクに使用する微粒子を二酸化チタンとし、二酸化チタン微粒子と粒径を30nmとし、剥離層の膜厚0.3μmと設定し、(b/a)を10とした。バインダー樹脂と二酸化チタン微粒子の固形分質量比率(二酸化チタン微粒子固形分質量/バインダー樹脂固形分質量)を0.1とした。その他の構成は実施例1と同じである。
[剥離層形成用インク]
アクリル樹脂 30.0部
二酸化チタン微粒子 3.0部
トルエン 33.5部
メチルエチルケトン 33.5部
【0046】
<比較例5>
剥離層形成用インクに使用する微粒子を二酸化チタンとし、二酸化チタン微粒子と粒径を30nmとし、剥離層の膜厚0.3μmと設定し、(b/a)を10とした。バインダー樹脂と二酸化チタン微粒子の固形分質量比率(二酸化チタン微粒子固形分質量/バインダー樹脂固形分質量)を0.40とした。その他の構成は実施例1と同じである。
[剥離層形成用インク]
アクリル樹脂 30.0部
二酸化チタン微粒子 12.0部
トルエン 29.0部
メチルエチルケトン 29.0部
【0047】
<評価項目および評価方法>
前記実施例1〜7および比較例1〜5で作製した昇華性熱転写記録媒体と、以下条件で作製した被転写媒体を用いて熱転写した。得られた印画物を以下の方法で評価し、その結果を表1に記載する。
【0048】
【表1】

【0049】
[被転写体の作製]
厚さ188μmno発泡ポリエステルフィルムの一方の面に、下記組成の熱転写用受像層形成用インクを用いて、乾燥後の膜厚が5.0μmになるようにグラビアコートにより塗布量を調整して、昇華熱転写用の被転写体を作製した。
[熱転写用受像層形成用インク]
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 20.0部
シリコーンオイル 0.5部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 39.5部
【0050】
[印画条件]
印画条件は、温度35℃、湿度60%の環境下で実施例1〜4と比較例1〜5までの構成の熱転写記録媒体と昇華熱転写用の被転写体である熱転写用受像層を重ね、耐熱性樹脂層からサーマルヘッドを用いて昇華性染料層を印画した後、熱転写性保護層を印画した。印画物表面の光沢度と光沢ムラについて以下の評価項目を設けた。
【0051】
[評価項目と評価方法]
・光沢度評価
JIS Z 8741鏡面光沢度−測定方法の方法3に基づき、光沢時計を用いて黒色プラスチック板の上で印画物の光沢度測定を行い、実用レベルに満たない75%未満を×、実用レベルの75%以上を○、極めて良好な光沢度である85%以上の物を◎とした。
・光沢ムラ評価
印画物を目視による評価を行い、光沢差がはっきり見える光沢ムラを×、光沢差が薄い光沢ムラ(実用レベル)を○、光沢ムラが全く見えない物を◎とした。
・総合評価
光沢度評価と光沢度評価でいずれも×評価を付けた物には総合評価を××とし、いずれか×評価の場合は総合評価を×とした。また、いずれも○評価若しくは、いずれかが○評価でもう一方が◎評価の場合総合評価を○とし、いずれも◎評価の場合は総合評価を◎とした。
【0052】
<比較結果>
実施例1〜7及び比較例1〜5の評価結果から、実施例で得られた本発明品は、光沢度を落とす事無く、且つ、光沢ムラに実用上問題のない良好な画像品位が得られた。以下、より具体的に比較結果を説明する。
【0053】
実施例1は、剥離層にジルコニア微粒子を導入する事で、耐熱性及び高屈折率の微粒子が剥離層に分散された為、光沢度、光沢ムラ共に実用に耐える物となった。
【0054】
実施例2は、実施例1に対して膜厚に対して、ジルコニア微粒子の粒径を小さくすることで、膜中により均一に分散できた為、実施例1よりも光沢ムラを抑える事が出来た。
【0055】
実施例3は、実施例2に対して更にジルコニア微粒子の粒径を小さくしたが、光沢ムラは実施例2と同等レベルであった。
【0056】
実施例4は、実施例3に対して更にジルコニア微粒子の粒径を小さくしたが、粒径を小さくし過ぎた事により、実施例3より耐熱性が若干低下し、その結果、光沢ムラが若干観察されたが実用レベルであった。
【0057】
実施例5は、実施例1に対してジルコニア微粒子の固形分質量比率を少なくした為、膜中の光散乱を抑えることができ、光沢度が更に向上した。
【0058】
実施例6は、実施例4に対してジルコニア微粒子の固形分質量比率を多くし、膜中の光沢度低下を調べたが、実施例4と同等レベルの光沢度であった。
【0059】
実施例7は、実施例1に対してジルコニア微粒子の固形分比率を少なくし、粒径を膜厚に対して小さくした為、剥離層中の光散乱を抑え、膜中にジルコニア微粒子をより均一に
分散できた為、光沢度と光沢ムラに対して良好な結果が得られた。
【0060】
比較例1は、実施例1に対して微粒子を使用しなかった為、高い光沢度が得られたが、耐熱性お低下により光沢ムラが観察された。
【0061】
比較例2は、実施例のジルコニア微粒子に対して、アルミナ微粒子を使用することで耐熱性が向上し、光沢ムラは良好であるが、光沢度が低下し実用レベルに達しなかった。
【0062】
比較例3は、実施例のジルコニア微粒子に対して、シリカ微粒子を使用したが、光沢度、光沢ムラともに実用レベルに達しなかった。
【0063】
比較例4は、実施例のジルコニア微粒子に対して、二酸化チタン微粒子を使用することで光沢度は良好であるが、光沢ムラは実用レベルに達しなかった。
【0064】
比較例5は、比較例4に対して、二酸化チタン微粒子の量を増やすことで耐熱性は向上し、光沢ムラは良好であるが、微粒子の量が多い為、光沢度が低下し、実用レベルに達しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
昇華性熱転写記録媒体に関する。
【符号の説明】
【0066】
1. 基材
2. 耐熱性樹脂層
3. 昇華性染料層
4. 剥離層
5. 接着層
6. 熱転写性保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に耐熱性樹脂層を設け、その他方の面に少なくとも、剥離層と接着層を順次積層してなる熱転写性保護層と、色相の異なる複数の昇華性染料層とを面順次に設けた昇華性熱転写記録媒体であって、前記剥離層がジルコニア微粒子を含有することを特徴とする昇華性熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記ジルコニア微粒子の粒径をa、前記剥離層の膜厚をbとした時、その比(b/a)が5〜100であることを特徴とする請求項1に記載の昇華性熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記ジルコニア微粒子の粒径が、5〜100nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の昇華性熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記剥離層が、少なくともバインダー樹脂とジルコニア微粒子からなり、該バインダー樹脂の固形分質量に対して、前記ジルコニア微粒子の固形分質量比率が0.01〜0.40であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の昇華性熱転写記録媒体。

【図1】
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