説明

昇降棚装置

【課題】棚体を収納位置と使用位置との間で昇降させる昇降棚装置において、操作機器や棚体自体に触れずとも昇降させることができ、かつ使用者の操作ミスによる誤操作が起きにくい昇降棚装置を提供すること。
【解決手段】棚体5に近接される被検出体18を非接触で検出する検出手段16,17を備え、検出手段16,17は、互いに離間された複数箇所の検出位置A1,A2に配置される被検出体18を検出できるようになっており、制御手段20は、検出手段16,17による各検出位置A1,A2における被検出体18の検出状態の時系列変化に基づいて、被検出体18の移動方向を識別し、移動方向に応じて棚体5の昇降方向を選択して棚体5を昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納物を収納可能な棚体と、棚体を上方の収納位置と下方の使用位置との間で昇降させる昇降手段と、昇降手段による棚体の昇降を制御する制御手段と、を備える昇降棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人力応動装置(昇降棚装置)は、収納キャビネット内に収納されているラック(棚体)に、ひずみセンサが内蔵されている把手が設けられており、この把手を使用者が把持して正面側に向けて力を加えると、ひずみセンサから伝送された信号に応じて制御器がモータを駆動させ、ラックを収納キャビネットの正面側の下方まで移動させることができるようになっているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、昇降式吊戸棚(昇降棚装置)は、棚ユニット(棚体)が箱体の内部に設けられた昇降ユニット(昇降手段)に吊持されており、使用者がリモートコントロール装置を操作することで、昇降ユニットが棚ユニットを箱体の内部(収納位置)と箱体の下方(使用位置)との間で昇降させるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3663827号公報(第6頁、第1図)
【特許文献2】特開平7−313274号公報(第3頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の人力応動装置(昇降棚装置)にあっては、ラック(棚体)を収納キャビネットの正面側の下方に移動させるためには、使用者が必ず把手を把持しなければならず、キッチン等に人力応動装置を設置して使用する場合など、使用者の手が水仕事等で濡れてしまう状況においては、手に付着している水滴が把手に付着してしまい、把手が汚れてしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の昇降式吊戸棚(昇降棚装置)にあっては、使用者がリモートコントロール装置を操作することで、棚ユニット(棚体)が昇降されるようになっているが、棚ユニットを昇降させる際に、使用者がコントロール装置の開ボタンと閉ボタンを押し間違えて、意図した方向と逆方向に棚ユニットが駆動してしまう虞があり、誤操作が起きるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、棚体を収納位置と使用位置との間で昇降させる昇降棚装置において、操作機器や棚体自体に触れずとも昇降させることができ、かつ使用者の操作ミスによる誤操作が起きにくい昇降棚装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の昇降棚装置は、
収納物を収納可能な棚体と、該棚体を上方の収納位置と下方の使用位置との間で昇降させる昇降手段と、該昇降手段による前記棚体の昇降を制御する制御手段と、を備える昇降棚装置であって、
前記棚体に近接される被検出体を非接触で検出する検出手段をさらに備え、該検出手段は、互いに離間された複数箇所の検出位置に配置される前記被検出体を検出できるようになっており、前記制御手段は、前記検出手段による前記各検出位置における被検出体の検出状態の時系列変化に基づいて、該被検出体の移動方向を識別し、該移動方向に応じて前記棚体の昇降方向を選択して該棚体を昇降させることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者が棚体に、被検出体としての手を近接させた際に、検出手段により使用者の手が検出され、さらに使用者が手を動かすと、互いに離間された複数箇所の検出位置の検出状態が時系列的に変化するようになり、この各検出位置の検出状態の時系列変化に基づいて、制御手段が使用者の手の移動方向を識別できるようになり、使用者の手の動きに応じて棚体を上昇させたり降下させたりする動作を適宜選択することができ、使用者の意思動作の通りに棚体の昇降操作を自在に行うことができるようになり、使用者の操作ミスによる誤操作を防止することができるばかりか、操作機器や棚体自体に触れずとも昇降させることができる。尚、1箇所の検出位置にて被検出体が検出された場合や、複数箇所の検出位置にて同時に被検出体が検出された場合には、棚体は上昇も降下もされないため、使用者が不用意に棚体に近接しても、棚体が勝手に動作されることがなくなり、棚体の誤動作も防止することができる。
【0009】
本発明の昇降棚装置は、
前記複数の検出位置は、上下方向に離間されて配置され、前記制御手段は、前記棚体の昇降方向を前記被検出体の移動方向に応じたものとすることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者が被検出体としての手を棚体の近傍で昇降させた際に、使用者の手の移動方向と棚体の昇降方向とが一致されるようになり、使用者は、手を上下移動させる直感的な操作で棚体を昇降操作することができる。
【0010】
本発明の昇降棚装置は、
前記検出手段は、複数の検出センサを有し、該各検出センサが前記各検出位置に配置される前記被検出体を検出できるように配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、各検出センサは、それぞれに対応した検出位置に配置される被検出体としての使用者の手を検出できるセンサであればよいため、低コストで簡素な構成の検出センサを用いて使用者の手の移動方向を識別できる。
【0011】
本発明の昇降棚装置は、
前記複数の検出位置は、前記棚体の下方位置となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者が収納物を棚体との間で出し入れする際に、使用者の手等を検出手段が誤って検出することがなくなり、棚体の誤動作を防止することができる。
【0012】
本発明の昇降棚装置は、
前記棚体から突出する前記収納物を検出する収納物検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記収納物検出手段によって前記収納物が検知されたことに基づいて、前記昇降手段を停止することを特徴としている。
この特徴によれば、棚体が使用位置と収納位置との間で上昇している際に、食器等の収納物が棚体から突出していても、収納物検出手段が収納物を検出して制御手段が昇降手段の駆動を停止させるようになり、収納物が破損したり収納物が棚体内から落下したりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例における棚体が収納位置に配置された状態の吊戸棚を示す側面図である。
【図2】棚体が使用位置に配置された状態の吊戸棚を示す側面図である。
【図3】吊戸棚を示す正面図である。
【図4】図1における吊戸棚を示すA−A縦断正面図である。
【図5】図2における吊戸棚を示すB−B縦断正面図である。
【図6】制御装置が行う棚体昇降処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る昇降棚装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
実施例に係る吊戸棚(昇降棚装置)につき、図1から図6を参照して説明する。以下、図1及び図2の紙面左側を吊戸棚の正面側(前方側)とし、図3、図4、図5の紙面手前側を吊戸棚の正面側(前方側)として説明する。
【0016】
図1の符号1は、本発明における昇降棚装置としての吊戸棚である。図1及び図2に示すように、この吊戸棚1は、家庭内のキッチンに配置されたキッチンキャビネット2の上方位置に配置され、キッチンの壁面Wに取り付けられており、食器や食材等の収納物3を収納するために使用される。吊戸棚1は、キッチンキャビネット2の上方の壁面Wに取り付けられる外箱4と、収納物3を収納可能な箱状の棚体5と、を有している。
【0017】
図1及び図4に示すように、外箱4の内部には、下方に向けて開口する棚体収納空間6が形成されている。外箱4の左右両内側部には、上下方向を向くスライドレール7,7が取り付けられている。また、外箱4の左右内側上部には、前後方向を向く軸によって回動可能な滑車8,8が軸支されている。
【0018】
更に、図1及び図3に示すように、外箱4の左右両側部の正面側下端部には、下方に向けて延設された延設部4a,4aが形成されている。これら両延設部4a,4aの内側面には、本発明における収納物検出手段としての収納物センサ9が設けられている。
【0019】
この収納物センサ9は、LED等の光を発信する発光体を内蔵する発光体9aと、発光素子9aからの光を受光するフォトトランジスタ等の受光体を内蔵する受光素子9bと、から構成されている。これら発光素子9aと受光素子9bとは、受光素子9bで発光素子9aからの光が遮断されたことを条件に、発光素子9aと受光素子9bとの間に障害物が介在していることを検出する透過型光電センサとして構成されている。発光素子9aと受光素子9bとは、それぞれ左右の延設部4a,4aの内側部に配置されている。
【0020】
図2及び図4に示すように、棚体5内部には、棚体5の正面側に向けて開口する上下2段の棚部5aが形成されている。これら棚部5aには、収納物3が収納されている。尚、棚体5の下部には、後述する第1昇降センサ16及び第2昇降センサ17を収納配置するための昇降センサ収納空間5bが下方に開口するように凹設されている。
【0021】
棚体5の左右両外側部には、長手が上下方向を向くスライドレール10,10が取り付けられている。これらスライドレール10,10は、外箱4のスライドレール7,7にそれぞれ係合している。また、両スライドレール10,10の上端部には、リミットスイッチ11,11が取り付けられている。更に、棚体5の上部の左右両側部には、前後方向を向く軸によって回動可能に滑車12,12が軸支されている。
【0022】
一方、外箱4の内側上部には、前後方向を向く軸が取り付けられたモータ13(昇降手段)が設けられている。この軸の先端には、2本のワイヤ14,14が巻回されたドラム15が軸支されており、この2本のワイヤ14,14は、外箱4と棚体5の滑車8,12に掛け渡されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、棚体5は、モータ13が駆動されることによって棚体収納空間6内である収納位置と、外箱4の下方位置である使用位置との間で昇降されるようになっている。尚、棚体5が使用位置にあるときに、キッチンキャビネット2の正面側に立っている使用者に向けて棚部5a内が開放される。
【0024】
特に、棚体5が使用位置から収納位置に向けて上昇される際には、収納物センサ9によって棚部5a内から突出している収納物3を検出可能となっている。尚、本実施例では、収納物センサ9を周囲温度の変化や周囲照度の変化等による影響が少ない透過型光電センサとしたことで、常に、安定した収納物3の検出を行うことができるようになっている。
【0025】
また、両スライドレール10,10の上端部に取り付けられたリミットスイッチ11,11は、棚体5が収納位置または使用位置にあるときに、スライドレール7,7の上端部または下端部に接触するようになっており、棚体5が収納位置または使用位置にあることを、リミットスイッチ11,11が検出できるようになっている。
【0026】
図4及び図5に示すように、昇降センサ収納空間5b内の前端部には、第1昇降センサ16が設けられている。この第1昇降センサ16は、収納物センサ9と同一構成の発光素子16aと受光素子16bとから構成されている。また、第1昇降センサ16の上方側には、第1昇降センサ16と同一構成の発光素子17aと受光素子17bとから構成される第2昇降センサ17が設けられている。
【0027】
これら第1昇降センサ16と第2昇降センサ17とは、拡散反射型光電センサであり、発光素子16a,17aと受光素子16b,17bとは、それぞれ棚体5の下部の左右両側部に固着された取付金具19,19に取り付けられている。
【0028】
図1及び図4に示すように、発光素子16a,17aは、棚体5の左右幅方向の略中央部における正面側の下方に向けて発光体の光軸L1,L2を向けている。尚、発光素子16aの光軸L1は、発光素子17aの光軸L2よりも下方に向けられている。
【0029】
同様に、受光素子16b,17bは、棚体5の左右幅方向の略中央部における正面側の下方に向けて受光体を向けている。尚、受光素子16bは、受光素子17bよりも下方に受光体を向けている。
【0030】
発光素子16a,17aから発信された光が、使用者の手等により構成される被検出体18に反射されることで、受光素子16b,17bにて受光されるようになっている。尚、第1昇降センサ16と第2昇降センサ17が本発明における検出手段を構成している。
【0031】
使用者が被検出体18を棚体5の左右幅方向の略中央部の正面側の下方にて上下動させること、発光素子16a,17aから発信された光は、被検出体18によって受光素子16b,17bに向けて反射される。このうち下方側の発光素子16aから発信されて、被検出体18によって反射された光は、下方側の受光素子16bによって受信され、上方側の発光素子17aから発信されて、被検出体18によって反射された光は、上方側の受光素子17bによって受信される。
【0032】
図4及び図5に示すように、発光素子16aから発信された光を被検出体18が受光素子16bに向けて反射させる第1検出位置A1(検出空間)は、棚体5の正面側の下方位置に配置され、この第1検出位置A1の上方位置には、発光素子17aから発信された光を被検出体18が受光素子17bに向けて反射させる第2検出位置A2(検出空間)が配置されている。つまり第1検出位置A1と第2検出位置A2とが上下方向に離間されて配置されている。
【0033】
尚、昇降センサ収納空間5b内には、モータ13を駆動制御させるための本発明における制御手段としての制御装置20が設けられている。この制御装置20は、配線(図示略)によってモータ13と、発光素子9a,16a,17aと、受光素子9b,16b,17bと、リミットスイッチ11,11と、に接続されている。尚、制御装置20には、計時回路(図示略)が内蔵されている。
【0034】
次に、本実施例における制御装置20が実行する棚体昇降処理を図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0035】
先ず、Sa01のステップにおいて、制御装置20は、第1昇降センサ16と第2昇降センサ17が同時に被検出体18(使用者の手)を検出したか否かを判定する。制御装置20は、第1昇降センサ16と第2昇降センサ17が同時に被検出体18(使用者の手)を検出した場合には、棚体昇降処理を終了する。第1昇降センサ16と第2昇降センサ17が同時に被検出体18(使用者の手)を検出していなければSa02のステップに進む。
【0036】
Sa02のステップにおいて、制御装置20は、第1昇降センサ16が被検出体18を検出したか否かを判定する。制御装置20は、第1昇降センサ16が被検出体18を検出していれば、計時回路(図示略)によって所定時間の計時を開始するとともに、Sa03のステップに進む。第1昇降センサ16が被検出体18を検出していなければSa09のステップに進む。
【0037】
Sa03のステップにおいて、制御装置20は、第2昇降センサ17が被検出体18を検出したか否かを判定する。制御装置20は、第2昇降センサ17が被検出体18を検出していればSa04のステップに進む。第2昇降センサ17が被検出体18を検出していなければSa08のステップに進む。
【0038】
Sa08のステップにおいて、制御装置20は、計時回路(図示略)を参照して所定時間が経過したか否かを判定する。制御装置20は、所定時間が経過していれば棚体昇降処理を終了する。所定時間が経過していなければSa03のステップに進む。尚、この所定時間は、使用者の手の動作速度に応じて、0.1秒から1秒程度の範囲で適宜設定するのが好適である。
【0039】
また、Sa03のステップにおいて第2昇降センサ17が被検出体18を検出した場合には、Sa04のステップにおいて、制御装置20は、棚体5を収納位置に向けて上昇させる上昇処理を行いSa05のステップに進む。
【0040】
Sa05のステップにおいて、制御装置20は、収納物センサ9が収納物3を検出したか否かを判定する。制御装置20は、収納物センサ9が収納物3を検出していなければSa06のステップに進み、収納物センサ9が収納物3を検出していればSa07のステップに進む。
【0041】
Sa06のステップにおいて、制御装置20は、リミットスイッチ11,11がスライドレール7,7の上端部に接触したか否かを判定する。制御装置20は、リミットスイッチ11,11がスライドレール7,7の上端部に接触していればSa07のステップに進む。リミットスイッチ11,11がスライドレール7,7の上端部に接触していなければSa04のステップに進む。
【0042】
Sa07のステップにおいて、制御装置20は、棚体5を現在の高さ位置(または収納位置)で停止させる上昇停止処理を行い、棚体昇降処理を終了する。
【0043】
特に、Sa05のステップにおいて収納物センサ9が収納物3を検出した後に、Sa07のステップにおいて上昇停止処理により棚体5の上昇が途中で停止されることで、棚部5a内から突出している収納物3が、外箱4と棚体5との間で挟まれてしまうことが防止される。
【0044】
一方、Sa02のステップにおいて第1昇降センサ16が被検出体を検出しない場合には、Sa09のステップに移行し、制御装置20は、第2昇降センサ17が被検出体18を検出したか否かを判定する。制御装置20は、第2昇降センサ17が被検出体18を検出していれば、計時回路(図示略)によって所定時間の計時を開始するとともに、Sa10のステップに進む。第2昇降センサ17が被検出体18を検出していなければ棚体昇降処理を終了する。
【0045】
Sa10のステップにおいて、制御装置20は、第1昇降センサ16が被検出体18を検出したか否かを判定する。制御装置20は、第1昇降センサ16が被検出体18を検出していればSa11のステップに進む。第1昇降センサ16が被検出体18を検出していなければSa15のステップに進む。
【0046】
Sa10のステップにおいて第1昇降センサ16が被検出体18を検出していない場合には、Sa15のステップにおいて、制御装置20は、計時回路(図示略)を参照して所定時間が経過したか否かを判定する。制御装置20は、所定時間が経過していれば棚体昇降処理を終了する。所定時間が経過していなければSa10のステップに進む。
【0047】
また、Sa10のステップにおいて第1昇降センサ16が被検出体18を検出した場合には、Sa11のステップにおいて、制御装置20は、棚体5を使用位置に向けて下降させる下降処理を行いSa12のステップに進む。
【0048】
Sa12のステップにおいて、制御装置20は、第1昇降センサ16または第2昇降センサ17が被検出体18を検出したか否かを判定する。制御回路20は、第1昇降センサ16または第2昇降センサ17が被検出体18を検出していなければSa13のステップに進む。第1昇降センサ16または第2昇降センサ17が被検出体18を検出していればSa14のステップに進む。
【0049】
Sa13のステップにおいて、制御装置20は、リミットスイッチ11,11がスライドレール7,7の下端部に接触したか否かを判定する。制御装置20は、リミットスイッチ11,11がスライドレール7,7の下端部に接触していればSa14のステップに進む。リミットスイッチ11,11がスライドレール7,7の下端部に接触していなければSa11のステップに進む。
【0050】
Sa14のステップにおいて、制御装置20は、棚体5を現在の高さ位置(または使用位置)で停止させる下降停止処理を行い、棚体昇降処理を終了する。
【0051】
特に、Sa12のステップにおいて第1昇降センサ16または第2昇降センサ17が被検出体18を検出した後に、Sa14のステップにおいて下降停止処理により棚体5の下降が途中で停止されることで、棚体5の下方位置に使用者の体の一部や食器等が配置されていることを検出できるようになっているため、棚体5の下降によって使用者の体の一部や食器等に棚体5が接触しないよう、棚体5の下方の安全を確保することができる。
【0052】
尚、Sa07のステップにおいて上昇停止処理により棚体5の上昇が途中で停止される場合と、Sa14のステップにおいて下降停止処理により棚体5の下降が途中で停止された場合と、では、再度Sa01のステップから棚体昇降処理を繰り返すことで、棚体5を使用位置または収納位置まで昇降させることができる。
【0053】
以上、本実施例における吊戸棚1は、棚体5に近接される被検出体18を非接触で検出する検出手段(第1及び第2昇降センサ16,17)を備え、この検出手段は、互いに離間された複数箇所の第1検出位置A1及び第2検出位置A2に配置される被検出体18を検出できるようになっており、制御装置20は、検出手段による各第1検出位置A1及び第2検出位置A2における被検出体18の検出状態の時系列変化に基づいて、被検出体18の移動方向を識別し、移動方向に応じて棚体5の昇降方向を選択して棚体5を昇降させることによって、使用者が棚体5に、被検出体18としての手を近接させた際に、検出手段により使用者の手が検出され、さらに使用者が手を動かすと、互いに離間された第1検出位置A1及び第2検出位置A2との検出状態が時系列的に変化するようになり、この第1検出位置A1及び第2検出位置A2の検出状態の時系列変化に基づいて、制御装置20が使用者の手の移動方向を識別できるようになり、使用者の手の動きに応じて棚体を上昇させたり降下させたりする動作を適宜選択することができ、使用者の意思動作の通りに棚体5の昇降操作を自在に行うことができるようになり、使用者の操作ミスによる誤操作を防止することができるばかりか、操作機器や棚体5自体に触れずとも昇降させることができる。尚、第1検出位置A1または第2検出位置A2のみにて被検出体が検出された場合や、第1検出位置A1と第2検出位置A2とにて同時に被検出体が検出された場合には、棚体5は上昇も降下もされないため、使用者が不用意に棚体5に近接しても、棚体5が勝手に動作されることがなくなり、棚体5の誤動作も防止することができる。
【0054】
また、第1検出位置A1及び第2検出位置A2は、上下方向に離間されて配置され、制御装置20は、棚体5の昇降方向を被検出体18の移動方向に応じたものとすることで、使用者が被検出体18としての手を棚体5の近傍で昇降させた際に、使用者の手の移動方向と棚体5の昇降方向とが一致されるようになり、使用者は、手を上下移動させる直感的な操作で棚体5を昇降操作することができる。
【0055】
また、検出装置20は、第1昇降センサ16及び第2昇降センサ17を有し、第1昇降センサ16及び第2昇降センサ17が第1検出位置A1及び第2検出位置A2に配置される被検出体18を検出できるように配置されることで、第1昇降センサ16及び第2昇降センサ17は、それぞれに対応した第1検出位置A1及び第2検出位置A2に配置される被検出体18としての使用者の手を検出できるセンサであればよいため、低コストで簡素な構成の第1昇降センサ16及び第2昇降センサ17を用いて使用者の手の移動方向を識別できる。
【0056】
また、第1検出位置A1及び第2検出位置A2は、棚体5の下方位置となっていることで、使用者が収納物3を棚体5との間で出し入れする際に、使用者の手等を第1昇降センサ16及び第2昇降センサ17が誤って検出することがなくなり、棚体5の誤動作を防止することができる。
【0057】
また、棚体5から突出する収納物3を検出する収納物センサ9を備え、制御装置20は、収納物センサ9によって収納物3が検知されたことに基づいて、モータ13を停止することによって、棚体5が使用位置と収納位置との間で上昇している際に、食器等の収納物3が棚体5から突出していても、収納物センサ9が収納物3を検出して制御装置20がモータ20の駆動を停止させるようになり、収納物3が破損したり収納物3が棚体内から落下したりすることを防止できる。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0059】
例えば、前記実施例では、棚体5を収納位置としての外箱4の棚体収納空間6内と、外箱4の垂直下方である使用位置と、の間で昇降可能としたが、棚体5は昇降のみならず、棚体5を下降とともに正面側に向けて移動させるようにしたり、背面側に向けて移動させるようにしたりして、棚体5が昇降とともにその他の方向に移動できる態様としてもよく、さらに棚体5の昇降動作とともに、外箱4が昇降される態様にしてもよい。
【0060】
また、前記実施例では、被検出体18としての使用者の手等を第1検出位置A1と第2検出位置A2にて、検出手段である拡散反射型光電センサで構成された第1昇降センサ16と第2昇降センサ17とで検出しているが、検出手段を1つの超音波センサによって構成し、この超音波センサから第1検出位置A1と第2検出位置A2に向けて超音波を発信して、第1検出位置A1と第2検出位置A2との間で移動される被検出体18としての使用者の手等を検出できるようにしてもよい。
【0061】
また、前記実施例では、棚体5の左右幅方向の略中央部の正面側の下方に、第1検出位置A1と第2検出位置A2とを上下に離間させて配置したが、受光素子16b,17bの感度が充分に高く設定することで、発光素子16a,17aの近傍で被検出体18によって反射された光を受信可能とし、第1検出位置A1と第2検出位置A2との検出範囲を棚体5の左右幅方向に拡張してもよい。
【0062】
また、前記実施例では、第1検出位置A1と第2検出位置A2とで所定時間内に被検出体18が検出されることで、棚体5が収納位置と使用位置との間で昇降したが、検出位置を上下方向に3つ以上配置することで、より確実に棚体5の誤操作が起きないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 吊戸棚(昇降棚装置)
3 収納物
5 棚体
6 棚体収納空間(収納位置)
9 収納物センサ(収納物検出手段)
13 モータ(昇降手段)
16 第1昇降センサ(検出手段)
17 第2昇降センサ(検出手段)
18 被検出体
20 制御装置(制御手段)
A1 第1検出位置
A2 第2検出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納物を収納可能な棚体と、該棚体を上方の収納位置と下方の使用位置との間で昇降させる昇降手段と、該昇降手段による前記棚体の昇降を制御する制御手段と、を備える昇降棚装置であって、
前記棚体に近接される被検出体を非接触で検出する検出手段をさらに備え、該検出手段は、互いに離間された複数箇所の検出位置に配置される前記被検出体を検出できるようになっており、前記制御手段は、前記検出手段による前記各検出位置における被検出体の検出状態の時系列変化に基づいて、該被検出体の移動方向を識別し、該移動方向に応じて前記棚体の昇降方向を選択して該棚体を昇降させることを特徴とする昇降棚装置。
【請求項2】
前記複数の検出位置は、上下方向に離間されて配置され、前記制御手段は、前記棚体の昇降方向を前記被検出体の移動方向に応じたものとすることを特徴とする請求項1に記載の昇降棚装置。
【請求項3】
前記検出手段は、複数の検出センサを有し、該各検出センサが前記各検出位置に配置される前記被検出体を検出できるように配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の昇降棚装置。
【請求項4】
前記複数の検出位置は、前記棚体の下方位置となっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の昇降棚装置。
【請求項5】
前記棚体から突出する前記収納物を検出する収納物検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記収納物検出手段によって前記収納物が検知されたことに基づいて、前記昇降手段を停止することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の昇降棚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−72470(P2011−72470A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225991(P2009−225991)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】