説明

昇降機構および搬送装置

【課題】重量物の昇降に適用される昇降機構であって、各構成部品を小さくしコンパクト化することができる昇降機構を提供すること。
【解決手段】重量物である搬送ユニット501を昇降する昇降機構502は、搬送ユニット501を支持して昇降させる昇降台550と、昇降台550を昇降させる昇降駆動部560と、昇降駆動部560に及ぼされる前記搬送ユニットの負荷に抗して上向きに作用するアシスト力を及ぼすアシスト機構570とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物を昇降する昇降機構、およびそれを用いた搬送装置に関する。このような昇降機構として、フラットパネルディスプレイ(FPD)用大型ガラス基板の処理装置に搭載された搬送装置に用いられる昇降機構を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造過程においては、真空下でガラス基板にエッチング、アッシング、成膜等の所定の処理を施す真空処理装置を複数備えた、いわゆるマルチチャンバタイプの真空処理システムが使用されている。
【0003】
このような真空処理システムは、基板を搬送する搬送装置が設けられた搬送室と、その周囲に設けられた複数のプロセスチャンバとを有しており、搬送室内の搬送アームにより、被処理基板が各プロセスチャンバ内に搬入されるとともに、処理済みの基板が各真空処理装置のプロセスチャンバから搬出される。そして、搬送室には、ロードロック室が接続されており、大気側の基板の搬入出に際し、処理チャンバおよび搬送室を真空状態に維持したまま、複数の基板を処理可能となっている。このようなマルチチャンバタイプの処理システムが例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
ところで、近時、LCDガラス基板に対する大型化の要求が強く、一辺が2mを超えるような巨大なものが出現するに至り、これに対応して装置も大型化し、それに用いられる各種構成要素も大型化している。特に、搬送室に用いられる搬送装置は、例えば、基板の受け取り受け渡しを行う基板支持部材であるピックを含む多段のアームからなる進退機構、およびこの進退機構を旋回させる旋回機構を備えた搬送ユニットと、このような搬送ユニットを昇降させる昇降ユニットとを有しており、基板の大型化にともなって昇降機構が昇降する対象である搬送ユニットが極めて重量が大きいものとなり、昇降機構の各構成部品は負荷の増大に対応するためにサイズアップが必要となり、部品の取り扱いの面およびコスト面等で問題が生じる。また、基板が大型化しても処理装置自体は極力小型化したいという要請がある。したがって、上述のような昇降機構を極力コンパクト化することが求められている。
【特許文献1】特開平9−223727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、重量物の昇降に適用される昇降機構であって、各構成部品を小さくしコンパクト化することができる昇降機構を提供することを目的とする。
また、このような昇降機構を適用した搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、重量物を昇降する昇降機構であって、前記重量物を支持して昇降させる昇降台と、前記昇降台を昇降させる昇降駆動部と、前記昇降駆動部に及ぼされる前記重量物の負荷に抗して上向きに作用するアシスト力を及ぼすアシスト機構とを具備することを特徴とする昇降機構を提供する。
【0007】
上記昇降機構において、前記アシスト機構としては、ばねを有し、前記ばねの付勢力をアシスト力として前記昇降駆動部に作用させるものを用いることができる。この場合に、前記ばねとしてコイルばねを用いることができ、前記昇降台が最低位置にあるときに前記コイルばねが最も縮んだ状態となってその付勢力が最大となるように構成することができる。
【0008】
また、前記昇降駆動部は、前記昇降台が螺合されるボールねじと、ボールねじを回転させる駆動機構とを有する構成とすることができる。
【0009】
本発明は、また、被搬送物を支持して搬送する搬送ユニットと、前記搬送ユニットを昇降させて前記搬送ユニットの高さ位置を合わせる昇降機構とを具備する搬送装置であって、前記昇降機構は、前記搬送ユニットを支持して昇降させる昇降台と、前記昇降台を昇降させる昇降駆動部と、前記昇降駆動部に及ぼされる前記搬送ユニットの負荷に抗して上向きに作用するアシスト力を及ぼすアシスト機構とを具備することを特徴とする搬送装置を提供する。
【0010】
上記搬送装置において、前記アシスト機構としては、ばねを有し、前記ばねの付勢力をアシスト力として前記昇降駆動部に作用させるものを用いることができる。この場合に、前記ばねとしてコイルばねを用いることができ、前記昇降台が最低位置にあるときに前記コイルばねが最も縮んだ状態となってその付勢力が最大となるように構成することができる。
【0011】
また、前記昇降駆動部は、前記昇降台が螺合されるボールねじと、ボールねじを回転させる駆動機構とを有する構成とすることができる。
【0012】
前記搬送ユニットとしては、被搬送物を水平方向に移動させる伸縮アームを有する搬送機構部と、前記搬送機構部を回転させる回転駆動部とを有するものを用いることができる。また、前記搬送機構部として、さらにベースを有し、前記伸縮アームが、前記ベース上を直進動するアームと、前記アーム上を直進動し、被搬送物を支持するピックとを有するものを用いることができる。さらに、前記搬送ユニットは、上下に2つの前記搬送機構部を有する構成とすることができる。さらにまた、前記搬送ユニットは、真空室内部に配置されている構成とすることができる。さらにまた、前記被搬送物として、LCDガラス基板等の大型ガラス基板を用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、重量物を昇降する昇降機構において、昇降駆動部に及ぼされる前記重量物の負荷に抗して上向きに作用するアシスト力を及ぼすアシスト機構を設けたので、アシスト機構によるアシスト力により、昇降駆動部への負荷が軽減されるため、昇降機構の構成部品、特に昇降駆動部を小さくすることができ、昇降機構自体をコンパクト化することが可能となる。
【0014】
また、このような昇降機構を例えば大型基板の搬送に用いる搬送装置に適用することにより、結果として搬送装置をコンパクト化することができる。したがって、このような搬送装置を大型基板の処理装置に用いることにより、処理装置全体のコンパクト化につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい形態について説明する。ここでは、本発明の昇降機構をFPD用ガラス基板(以下、単に「基板」と記す)Sに対してプラズマ処理を行なうためのマルチチャンバタイプのプラズマ処理装置に用いられる搬送装置に用いた例について説明する。ここで、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display;VFD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る昇降機構が搬送装置に適用されたプラズマ処理装置を概略的に示す斜視図、図2はその内部を概略的に示す水平断面図である。
このプラズマ処理装置1は、その中央部に搬送室20とロードロック室30とが連設されている。搬送室20の周囲には、3つのプロセスチャンバ10a,10b,10cが配設されている。
【0017】
搬送室20とロードロック室30との間、搬送室20と各プロセスチャンバ10a,10b,10cとの間、およびロードロック室30と外側の大気雰囲気とを連通する開口部には、これらの間を気密にシールし、かつ開閉可能に構成されたゲートバルブ22がそれぞれ介挿されている。
【0018】
ロードロック室30の外側には、2つのカセットインデクサ41が設けられており、その上にそれぞれ基板Sを収容するカセット40が載置されている。これらカセット40の一方には、例えば未処理基板を収容し、他方には処理済み基板を収容できる。これらカセット40は、昇降機構42により昇降可能となっている。
【0019】
これら2つのカセット40の間には、支持台44上に搬送機構43が設けられており、この搬送機構43は上下2段に設けられたピック45,46、ならびにこれらを一体的に進出退避および回転可能に支持するベース47を具備している。
【0020】
前記プロセスチャンバ10a,10b,10cは、その内部空間が所定の減圧雰囲気に保持されることが可能であり、その内部でプラズマ処理、例えばエッチング処理やアッシング処理が行なわれる。このように3つのプロセスチャンバを有しているため、例えばそのうち2つのプロセスチャンバをエッチング処理室として構成し、残りの1つのプロセスチャンバをアッシング処理室として構成したり、3つのプロセスチャンバ全てを、同一の処理を行なうエッチング処理室やアッシグ処理室として構成することができる。なお、プロセスチャンバの数は3つに限らず、4つ以上であってもよい。
【0021】
搬送室20は、真空処理室と同様に所定の減圧雰囲気に保持することが可能であり、その中には、図2に示すように、搬送装置50が配設されている。そして、この搬送装置50により、ロードロック室30および3つのプロセスチャンバ10a,10b,10cの間で基板Sが搬送される。搬送装置50については、後で詳細に説明する。
【0022】
ロードロック室30は、各プロセスチャンバ10および搬送室20と同様所定の減圧雰囲気に保持されることが可能である。また、ロードロック室30は、大気雰囲気にあるカセット40と減圧雰囲気のプロセスチャンバ10a,10b,10cとの間で基板Sの授受を行うためのものであり、大気雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返す関係上、極力その内容積が小さく構成されている。ロードロック室30は基板収容部31が上下2段に設けられており(図2では上段のみ図示)、各基板収容部31には、基板Sを支持する複数のバッファ32が設けられ、これらバッファ32の間には、搬送アームの逃げ溝32aが形成されている。また、ロードロック室30内には、矩形状の基板Sの互いに対向する角部付近において位置合わせを行なうポジショナー33が設けられている。
【0023】
プラズマ処理装置1の各構成部は、制御部60に接続されて制御される構成となっている(図1では図示を省略)。制御部60の概要を図3に示す。制御部60は、CPUを備えたプロセスコントローラ61を備え、このプロセスコントローラ61には、工程管理者がプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース62が接続されている。
【0024】
また、制御部60は、プラズマ処理装置1で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部63を有しており、この記憶部63はプロセスコントローラ61に接続されている。
【0025】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63から呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、プラズマ処理装置1での所望の処理が行われる。
【0026】
前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどに格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0027】
次に、本実施形態に係る昇降機構を備えた搬送室20の搬送装置50について詳細に説明する。
図4はこの搬送装置50を示す垂直断面図であり、図5はその搬送ユニットを示す斜視図である。この搬送装置50は、搬送動作を行う搬送ユニット501と、搬送ユニット501を昇降する昇降機構502とを有している。
【0028】
搬送ユニット501は、スライドピックを2段に設けてそれぞれ独立して基板の出し入れが可能なタイプのものであり、上段搬送機構部510と下段搬送機構部520とを有している。
【0029】
上段搬送機構部510は、ベース部511と、ベース部511にスライド可能に設けられたスライドアーム512と、このスライドアーム512の上にスライド可能に設けられた基板を支持する支持台としてのスライドピック513とを備えている。また、スライドアーム512の側壁には、スライドアーム512に対してスライドピック513がスライドするためのガイドレール515およびベース部511に対してスライドアーム512がスライドするためのガイドレール516が設けられている。そして、ピック513にはガイドレール515に沿ってスライドするスライダー517が設けられており、ベース511にはガイドレール516に沿ってスライドするスライダー518が設けられている。
【0030】
下段搬送機構部520は、ベース部521と、ベース部521にスライド可能に設けられたスライドアーム522と、このスライドアーム522の上にスライド可能に設けられた基板を支持する支持台としてのスライドピック523とを備えている。また、スライドアーム522の側壁には、スライドアーム522に対してスライドピック523がスライドするためのガイドレール525およびベース部521に対してスライドアーム522がスライドするためのガイドレール526が設けられている。そして、ピック523にはガイドレール525に沿ってスライドするスライダー527が設けられており、ベース521にはガイドレール526に沿ってスライドするスライダー528が設けられている。
【0031】
ベース部511とベース部521とは連結部531および532により連結されており、ベース部511,521、連結部531,532によりボックス状支持部530が構成されており、このボックス状支持部530は、後述する支持板551上に回転可能に設けられ、ボックス状支持部530が回転することにより、上部搬送機構部510および下部搬送機構部520が回転する。ボックス状支持部530の下部から搬送室20のベース板201の下方に向けて同軸状に配置された3本の円筒シャフト540が伸びており、その下端には駆動部541が接続されている。駆動部541には、上段搬送機構部510のスライドアーム512およびスライドピック513を駆動する駆動機構、下部搬送機構部520のスライドアーム522およびスライドピック523を駆動する駆動機構、ならびに、ボックス状支持部530を回転させる回転駆動機構が内蔵されており(いずれも図示せず)、これら駆動機構の駆動力が3本の円筒シャフト540を介して各部へ伝達される。なお、駆動部541は、後述する昇降板553の直下位置に配置されている。円筒シャフト540のベース板201から下の部分の周囲にはシール機構としてのベローズ(図示せず)が設けられている。
【0032】
下段搬送機構部520においては、駆動機構からの動力がスライドアーム522に内蔵された複数のプーリおよびそれに巻き掛けられたベルト等を介して伝達されることにより、スライドアーム522およびスライドピック523が直線的にスライドする。この際に、プーリの径比を調整することにより、スライドアーム522の移動ストロークに対してスライドピック523の移動ストロークを大きくとることができ、大型基板に対応しやすくなる。
【0033】
上部搬送機構部510においては、駆動機構からの動力が、ベース部521、連結部531、ベース部511に内蔵されたプーリおよびベルト等からなる動力伝達機構により伝達され、さらにスライドアーム512に内蔵された複数のプーリおよびそれに巻き掛けられたベルト等を介して伝達されることにより、スライドアーム512およびスライドピック513が直線的にスライドする。下部搬送機構部520と同様に、プーリの径比を調整することにより、スライドアーム512の移動ストロークに対してスライドピック513の移動ストロークを大きくとることができる。
【0034】
昇降機構502は、搬送ユニット501を昇降可能に支持する昇降台550と、搬送室20のベース板201の下方に設けられ、昇降台550を介して搬送ユニット501を昇降させるボールねじ機構560と、ボールねじ機構560により昇降台550を介して搬送ユニット501を上昇させる際に上向きにアシスト力を及ぼすアシスト機構570とを備えている。
【0035】
ボールねじ機構560はベース板201の下面から下方に延びる3本(2本のみ図示)のボールねじ561と、4本のガイドシャフト566(2本のみ図示)とを有している。ベース板201の下方はフレーム構造となっており、最下部にベースフレーム202が設けられていて、ボールねじ561の下端はこのベースフレーム202を貫通して設けられている。ベースフレーム202上には、ボールねじ561を回転させるためのモータ562が設けられている。このモータ562はその軸が下方に延び軸の先端にプーリ563が取り付けられている。また、各ボールねじ561の下端にはプーリ564が設けられており、モータ562のプーリ563と各ボールねじ561のプーリ564とにはベルト565が巻き掛けられており、モータ562の駆動により各ボールねじ561が回転するようになっている。
【0036】
昇降台550は、ボックス状支持部530を支持する支持板551と、支持板551の下方へ延びる4本のシャフト552と、シャフト552の下端を支持し、前記3本のボールねじ561に螺合して昇降する昇降板553とを有している。そして、モータ562により各ボールねじ561を回転させることにより、昇降板553がスライダー567を介してガイドシャフト566にガイドされて昇降し、これにともなって、支持板551上の搬送ユニット501が昇降され、昇降板553が図4の実線の位置にあるときに搬送ユニット501が最上部に位置し、昇降板553が二点鎖線にあるときに搬送ユニット501が最下部に位置するようになっている。なお、ベース板201と昇降板553の間のシャフト552の周囲にはシール機構としてのベローズ554が設けられている。
【0037】
アシスト機構570は、搬送室20のベース板201に上端が取り付けられ下方に吊り下げられた4本のシャフト571と、シャフト571に沿って設けられたコイルばね572と、コイルばね572の上端部を前記昇降板553に固定する固定部材573と、シャフト571の下端に設けられ、コイルばね572の下端を係止固定するスットパ574とを有している。
【0038】
図6は、アシスト機構570のアシスト力を説明するための図である。図中左側は、昇降板553を最上部に位置させた状態、図中右側は、昇降板553を最下部に位置させた状態を示すものである。本実施形態においては、アシスト機構570のアシスト力はコイルバネ572の付勢力によって生じ、左側の昇降板553を最上部に位置させた状態では、コイルばね572が最も伸びた状態でありその付勢力が最小となり、アシスト力も最小となるが、右側の昇降板553を最下部に位置させた状態では、コイルばね572が最も縮んだ状態でありその付勢力が最大となりアシスト力も最大となる。
【0039】
なお、昇降機構502におけるシャフト552、ボールねじ561、ガイドシャフト566、アシスト機構570の平面的な配置位置は、例えば図7に模式的に示すようになる。また、図7には、円筒シャフト540およびその周囲のベローズ543、シャフト552の周囲のベローズ554も描いている。
【0040】
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置1の動作について説明する。
まず、搬送機構43の2枚のピック45、46を進退駆動させて、未処理基板を収容した一方のカセット40から2枚の基板Sをロードロック室30の上下2段の基板収容部31に搬入する。
【0041】
ピック45,46が退避した後、ロードロック室30の大気側のゲートバルブ22を閉じる。その後、ロードロック室30内を排気して、内部を所定の真空度まで減圧する。真空引き終了後、ポジショナー33により基板を押圧することにより基板Sの位置合わせを行なう。
【0042】
以上のように位置合わせされた後、搬送室20とロードロック室30との間のゲートバルブ22を開いて、搬送室20内の搬送装置50によりロードロック室30の基板収容部31に収容された基板Sを受け取り、プロセスチャンバ10a,10b,10cのいずれかに搬入する。また、プロセスチャンバ10a,10b,10で処理された基板Sは、搬送装置50により搬出され、ロードロック室30を経て、搬送機構43によりカセット40に収容される。このとき、元のカセット40に戻してもよいし、他方のカセット40に収容するようにしてもよい。
【0043】
また、ロードロック室30から基板Sを取り出す際には、搬送装置50における上段搬送機構部510のスライドピック513および/または下段搬送機構部520のスライドピック523をロードロック室30に挿入してスライドピック513および/または523により基板Sを受け取る。スライドピック513および/または523は、受け取った基板Sをプロセスチャンバ10a,10b,10cのいずれかに搬入する。このとき、基板Sを搬入しようとするプロセスチャンバ内に既に処理済みの基板Sが存在する場合には、一方のスライドピックでその基板Sを搬出してから他方のスライドピックに載せられている基板Sをプロセスチャンバ内に挿入するようにすることができる。処理済みの基板Sは、スライドピック513および/または523により受け取られた後、ロードロック室30に受け渡される。
【0044】
搬送室20内の搬送装置50により以上のような搬送を行う際には、回転駆動機構によりボックス状支持部530を介して上段搬送機構部510または下段搬送機構部520を回転させ、それらの位置合わせを行う。また、上下2段の搬送機構部510,520を有している関係上、搬送装置50の昇降ユニット502による搬送ユニット501の昇降動作によりスライドピックの高さ位置を合わせる。
【0045】
以上のように位置合わせした段階で、スライドアーム512,522、スライドピック513,523を進出または退入させることにより基板Sの搬送を行う。
【0046】
昇降機構502においては、モータ562によりベルト565を介して各ボールねじ561を回転させることにより、昇降板553を昇降させ、シャフト552を介して支持板551上の搬送ユニット501を昇降させる。
【0047】
このとき、基板の大型化にともない、搬送装置50は極めて大きく、重量も重くなっており、昇降機構502の昇降対象である搬送ユニット501も極めて重いものとなっているため、昇降機構502には大きな負荷がかかる。特にボールねじ機構560、その中でもモータ562には搬送ユニット501の荷重が直接的に負荷となる。このような負荷に耐えられるものとするためには、従来、昇降機構502の各構成要素、特にモータ562をより大型化して耐久力を上げざるを得なかった。
【0048】
これに対して、本実施形態では、コイルばね572を備えたアシスト機構570を設け、コイルばね572の付勢力をアシスト力として利用することにより、昇降機構502に対する負荷、特にボールねじ機構560の中でもモータ562に対する負荷を軽減することができる。
【0049】
具体的には、昇降板553が最下部に位置する際、すなわち、搬送ユニット501が最下部に位置する際に、アシスト機構570のコイルばね572が最も縮み、コイルばね572の付勢力が最大となるため、アシスト力も最大となる。つまり、コイルばね572の付勢力が上向きに作用するため、そのアシスト力によってボールねじ機構560のモータ562への負荷が軽減される。
【0050】
ボールねじ機構560により搬送ユニット501が上昇していくと、コイルばね572が徐々に伸び、その付勢力が徐々に低下し、アシスト力も徐々に低下していく。したがって、ボールねじ機構560のモータ562への負荷が上昇していく。
【0051】
この際の昇降板553の高さ位置(すなわち搬送ユニットの高さ位置)とアシスト機構570のアシスト力およびモータ562の負荷の関係を図8に示す。この図に示すように、昇降板553の高さ位置が大きくなるにつれてアシスト機構570のアシスト力は直線的に減少し、モータ562への負荷は直線的に増加する。
【0052】
このとき、モータ562への負荷等を考慮して、アシスト力を発揮するコイルばね572の付勢力を任意に設定することができる。例えば、アシスト力が最大(最低位置)で9800N(1000kgf)、最小(最高位置)でその50%になるようにコイルばね572のばね定数等を設定することができる。これにより、搬送ユニット501が最低位置ではモータ562への負荷をほぼ0にすることができ、最高位置でも大きく負荷が軽減される。
【0053】
また、負荷とアシスト力とがバランスする位置に関しては、例えば、搬送ユニット501の昇降ストロークの約半分の位置とすることができる。ただし、バランス位置は、コイルばね572のばね定数等により、使用条件および設置スペース等に合わせて任意に変えることが可能である。
【0054】
このように、アシスト機構570によるアシスト力により、昇降機構502への負荷、特にモータ562の負荷が軽減されるため、昇降機構502の構成部品、特にモータ562を小さくすることができ、昇降機構自体をコンパクト化することが可能となる。また、アシスト機構570は、ベース板201からシャフト571を吊り下げ、シャフト571に沿ってコイルばね572を設けた構成であり、それ自体が構成部品の少ないコンパクトな構成となっている。さらに、アシスト機構570により負荷とアシスト力(付勢力)とのバランスをとることができるため、モータ562やベルト565等の破損時に搬送ユニット501の急激な落下を防止するという効果を得ることもできる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では搬送機構として上下2段に直動式の搬送機構部を設けた場合について示したが、2段に限らず1段でも3段以上でもよく、直動式に限らず例えば多関節タイプのものであっても構わない。また、上記実施形態では、昇降機構にボールねじ機構を採用した例について示したが、これに限らず、シリンダー等の他の機構を採用してもよい。さらに、アシスト機構としてコイルばねを適用した例を示したが、アシスト力を及ぼすことができれば、コイルばねに限らずエアシリンダー、ガスシリンダー等を用いることもできる。
【0056】
また、上記実施形態では、本発明の昇降機構を真空雰囲気(減圧雰囲気)中で被処理体を搬送装置の昇降に適用した例について示したが、真空中のものに限らない。また、搬送装置に限らず、重量物の昇降全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る昇降機構が搬送装置に適用されたプラズマ処理装置を概略的に示す斜視図。
【図2】図1のプラズマ処理装置の水平断面図。
【図3】制御部の概略構成を示すブロック図。
【図4】図1のプラズマ処理装置における搬送室に設けられた、本発明の一実施形態に係る昇降機構を有する搬送装置を示す垂直断面図。
【図5】図4の搬送装置の搬送ユニットを示す斜視図。
【図6】本発明の一実施形態に係る昇降機構におけるアシスト機構のアシスト力を説明するための図。
【図7】本発明の一実施形態に係る昇降機構におけるシャフト、ボールねじ、アシスト機構の平面的な配置位置を示す図。
【図8】本発明の一実施形態に係る昇降機構における昇降板の高さ位置とアシスト機構のアシスト力およびモータの負荷との関係を示す図。
【符号の説明】
【0058】
1;プラズマ処理装置
10a,10b,10c;プロセスチャンバ
20;搬送室
30;ロードロック室
50;搬送装置
60;制御部
501;搬送ユニット
502;昇降機構
510;上段搬送機構部
520;下段搬送機構部
530;ボックス状支持部
540;円筒シャフト
541;駆動部
550;昇降台
551;支持板
552;シャフト
553;昇降板
560;ボールねじ機構
561;ボールねじ
562;モータ
566;ガイドシャフト
570;アシスト機構
572;コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を昇降する昇降機構であって、
前記重量物を支持して昇降させる昇降台と、
前記昇降台を昇降させる昇降駆動部と、
前記昇降駆動部に及ぼされる前記重量物の負荷に抗して上向きに作用するアシスト力を及ぼすアシスト機構と
を具備することを特徴とする昇降機構。
【請求項2】
前記アシスト機構は、ばねを有し、前記ばねの付勢力をアシスト力として前記昇降駆動部に作用させることを特徴とする請求項1に記載の昇降機構。
【請求項3】
前記ばねは、コイルばねであり、前記昇降台が最低位置にあるときに前記コイルばねが最も縮んだ状態となってその付勢力が最大となることを特徴とする請求項2に記載の昇降機構。
【請求項4】
前記昇降駆動部は、前記昇降台が螺合されるボールねじと、ボールねじを回転させる駆動機構とを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の昇降機構。
【請求項5】
被搬送物を支持して搬送する搬送ユニットと、
前記搬送ユニットを昇降させて前記搬送ユニットの高さ位置を合わせる昇降機構と
を具備する搬送装置であって、
前記昇降機構は、
前記搬送ユニットを支持して昇降させる昇降台と、
前記昇降台を昇降させる昇降駆動部と、
前記昇降駆動部に及ぼされる前記搬送ユニットの負荷に抗して上向きに作用するアシスト力を及ぼすアシスト機構と
を具備することを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
前記アシスト機構は、ばねを有し、前記ばねの付勢力をアシスト力として前記昇降駆動部に作用させることを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記ばねは、コイルばねであり、前記昇降台が最低位置にあるときに前記コイルばねが最も縮んだ状態となってその付勢力が最大となることを特徴とする請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記昇降駆動部は、前記昇降台が螺合されるボールねじと、ボールねじを回転させる駆動機構とを有することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記搬送ユニットは、被搬送物を水平方向に移動させる伸縮アームを有する搬送機構部と、前記搬送機構部を回転させる回転駆動部とを有することを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記搬送機構部は、さらにベースを有し、前記伸縮アームは、前記ベース上を直進動するアームと、前記アーム上を直進動し、被搬送物を支持するピックとを有することを特徴とする請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記搬送ユニットは、上下に2つの前記搬送機構部を有することを特徴とする請求項10に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記搬送ユニットは、真空室内部に配置されていることを特徴とする請求項5から請求項11のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記被搬送物は、大型ガラス基板であることを特徴とする請求項5から請求項12のいずれか1項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−69991(P2007−69991A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255292(P2005−255292)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)