説明

昇降装置

【課題】昇降体の昇降操作が容易に行われる昇降装置を提供すること。
【解決手段】取付箇所1に昇降体3を昇降スライド自在に設け、取付箇所1に回動アーム4の基端部を枢着して回動アーム4を起伏回動自在に設け、この回動アーム4に昇降体3を連結して昇降体3の昇降スライド移動に伴って回動アーム4が起伏回動する構成とし、この回動アーム4にスライド移動可能なスライド部6を設け、このスライド部6と、枢着部5より上方側の取付箇所1との間に吊り上げ用弾性体7を架設し、このスライド部6が回動アーム4の基端部側へスライド移動する際に、このスライド部6を回動アーム4の先端部側へ引動付勢するスライド調整用弾性体8を、このスライド部6に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、キッチンの吊戸棚に備え付けられる昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、底部が開放した吊戸棚内に収納体を昇降スライド移動自在に設けて、棚の底部開放部より収納体を略真下へ引き出し配設できるようにした昇降式の吊戸棚装置が実施されている。
【0003】
また従来、下記特許文献1のように、高価な定荷重バネを使用せずに、収納体の引き出し作動も押し入れ作動も、略一定の荷重(トルク)を加える引押操作によって行えることを目的としたものも提案されている。
【0004】
この特許文献1を簡単に説明すると、底面を開放させた棚内に収納体を配設し、この収納体と棚とにこの収納体を上下方向にスライドさせるスライド機構を設け、このスライド機構を介して収納体を棚内からこの棚の略真下方向であって棚の底面開放部より下がった位置に引き出し配設できるように構成し、前記棚の内面に、回動アームの基端部を枢着してこの枢着部を支点に回動アームを起伏回動自在に設けると共に、この回動アームの他側部を前記収納体に連結してこの収納体の上下スライド移動に伴ってこの回動アームが起伏回動するように構成し、この回動アームと前記棚の内面との間に、回動アームを上方へ起動回動するように付勢する弾性体を架設し、この弾性体の棚内面への固定位置を、前記回動アームの前記枢着部より離れた位置に設定したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−52220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構造では、回動アームが伏動するほど弾性体が長く伸びて大きな復帰付勢力を発揮してしまうので、収納体を下方へと引き出すにつれてどうしても強い引き出し力が必要になり、事実上略定トルクでの昇降スライド操作を実現できてはいなかった。
【0007】
本発明は、上記特許文献1のような昇降式吊戸棚を改良したもので、広範囲で昇降体を略定トルクで昇降スライド操作可能な構成とすることも可能となる画期的な昇降装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
取付箇所1に昇降ガイド部2を介して昇降体3を昇降スライド自在に設けた昇降装置において、前記取付箇所1に回動アーム4の基端部を枢着してこの枢着部5を支点に回動アーム4を起伏回動自在に設け、この回動アーム4に連結部11を設け、この連結部11に前記昇降体3を連結して、この昇降体3の昇降スライド移動に伴って回動アーム4が起伏回動するように構成し、この回動アーム4に、この回動アーム4に沿ってスライド移動可能なスライド部6を設け、このスライド部6と、前記枢着部5より上方側の前記取付箇所1との間に、前記回動アーム4を起動回動するように回動付勢する吊り上げ用弾性体7を架設し、この吊り上げ用弾性体7の付勢力によってスライド部6が前記回動アーム4の基端部側へスライド移動する際に、このスライド部6を回動アーム4の先端部側へ引動付勢するスライド調整用弾性体8を、このスライド部6に設けたことを特徴とする昇降装置に係るものである。
【0010】
また、前記昇降体3の昇降スライド範囲内で前記スライド調整用弾性体8が前記スライド部6を引動付勢して、前記吊り上げ用弾性体7の付勢力により前記回動アーム4を上方へ起動回動させる力と、前記スライド部6の前記枢着部5からの距離との積で表わされる回動アーム4の起動回動モーメントが常に略一定となる位置に前記スライド部6が案内付勢されるように、前記スライド調整用弾性体8の付勢力を設定したことを特徴とする請求項1記載の昇降装置に係るものである。
【0011】
また、前記昇降体3を下降スライド移動させることで前記回動アーム4を伏動回動させると、前記吊り上げ用弾性体7が伸長するようにこの吊り上げ用弾性体7を構成すると共に、この伸長する吊り上げ用弾性体7の復帰付勢力によって前記スライド部6が回動アーム4の基端部側へと自動的にスライド移動するように構成し、この吊り上げ用弾性体7の付勢力によってスライド部6が前記回動アーム4の基端部側へスライド移動する際に、前記スライド調整用弾性体8がスライド部6を回動アーム4の先端部側へ引動付勢して、前記吊り上げ用弾性体7の付勢力により前記回動アーム4を上方へ起動回動させる力と、前記スライド部6の前記枢着部5からの距離との積で表わされる回動アーム4の起動回動モ−メントが常に略一定となる位置にこのスライド部6が案内付勢されるように、このスライド調整用弾性体8の付勢力を設定したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の昇降装置に係るものである。
【0012】
また、前記スライド調整用弾性体8を前記回動アーム4と平行に配置してこのスライド調整用弾性体8を前記スライド部6と前記回動アーム4の先端部との間に架設し、このスライド調整用弾性体8は、前記スライド部6が回動アーム4の基端部側へスライド移動すると伸長するように構成して、この伸長するスライド調整用弾性体8の復帰付勢力によってスライド部6を回動アーム4の先端部側へ引動付勢する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇降装置に係るものである。
【0013】
また、前記スライド調整用弾性体8による前記スライド部6への引動付勢力を調整可能な付勢力調整機構9を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇降装置に係るものである。
【0014】
また、前記付勢力調整機構9は、前記スライド部6に前記スライド調整用弾性体8を複数設け、この複数のスライド調整用弾性体8の少なくとも一つが前記スライド部6に引動付勢力を付与する弱引動状態と、この弱引動状態より多くのスライド調整用弾性体8が前記スライド部6に引動付勢力を付与する強引動状態とを切り替え可能な切り替え装置部10を設けたことを特徴とする請求項5記載の昇降装置に係るものである。
【0015】
また、前記取付箇所1と前記昇降体3とのいずれか一方若しくは双方に、この取付箇所1に対して昇降体3を直線状に昇降スライド移動させる前記昇降ガイド部2を設け、前記連結部11は、前記回動アーム4に沿ってスライド自在に設けて、前記昇降ガイド部2を介した前記昇降体3の直線状の昇降スライド移動に伴って回動アーム4が起伏回動する際に、連結部11が回動アーム4に沿ってスライド移動するように構成し、この連結部11が前記昇降体3の荷重により回動アーム4の先端部側にスライド移動する際に、この連結部11を回動アーム4の基端部側へ引動付勢する第二吊り上げ用弾性体12を、この連結部11に設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の昇降装置に係るものである。
【0016】
また、前記回動アーム4が水平に対し所定角度以上伏動回動して前記連結部11が前記昇降体3の荷重により回動アーム4の先端部側にスライド移動する昇降体3の昇降スライド範囲内で、前記第二吊り上げ用弾性体12が連結部11を回動アーム4の基端部側に引動付勢することでこの昇降体3の荷重が略相殺されるように、この第二吊り上げ用弾性体12の付勢力を設定したことを特徴とする請求項7記載の昇降装置に係るものである。
【0017】
また、前記昇降体3を下降スライド移動させることで前記回動アーム4を水平に対し所定角度以上伏動回動させると、前記連結部11が回動アーム4の先端部側に自動的にスライド移動するように構成し、この連結部11が回動アーム4の先端部側にスライド移動すると、前記第二吊り上げ用弾性体12が伸長するようにこの第二吊り上げ用弾性体12を構成すると共に、この伸長する第二吊り上げ用弾性体12の復帰付勢力によって前記連結部11が回動アーム4の基端部側へ引動付勢されるように構成し、この第二吊り上げ用弾性体12が連結部11を回動アーム4の基端部側に引動付勢することでこの昇降体3の荷重が略相殺されるように、この第二吊り上げ用弾性体12の付勢力を設定したことを特徴とする請求項7,8のいずれか1項に記載の昇降装置に係るものである。
【0018】
また、前記第二吊り上げ用弾性体12を前記回動アーム4と平行に配置してこの第二吊り上げ用弾性体12を前記連結部11と回動アーム4の基端部との間に架設し、この第二吊り上げ用弾性体12は、前記連結部11が回動アーム4の先端部側へスライド移動すると伸長するように構成して、この伸長する第二吊り上げ用弾性体12の復帰付勢力によって連結部11を回動アーム4の基端部側へ引動付勢する構成としたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の昇降装置に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように構成したから、スライド調整用弾性体の付勢力を調整設定して吊り上げ用弾性体が設けられるスライド部の回動アームに対する位置を案内付勢することにより、吊り上げ用弾性体による回動アームの起動回動モーメントを調整することができ、従って、回動アームの起動回動モーメントが常に略一定となる位置に前記スライド部が案内付勢されるように、スライド調整用弾性体の付勢力を設定することにより、高価な定荷重バネを用いた構成とせずとも広範囲で昇降体が略定トルクの昇降操作により昇降スライド動作する操作性の良い構成を設計実現可能となる極めて実用性に優れた昇降装置となる。
【0020】
また、請求項2,3記載の発明においては、昇降スライド範囲内のどの範囲でも昇降体が略定トルクの昇降操作で昇降スライド動作する操作性・実用性に優れた昇降装置となり、更に請求項3記載の発明によれば、昇降体が略定トルクで昇降スライド動作する構成を簡易に設計実現可能となる。
【0021】
また、請求項4記載の発明においては、スライド調整用弾性体がスライド部を回動アーム先端部側へ引動付勢する構成を簡易に設計実現可能となり、しかも、回動アームにスライド調整用弾性体をスペースを取らずに配置でき、このスライド調整用弾性体が回動アームの回動の支障ともならないなど、一層実用性に優れた昇降装置となる。
【0022】
また、請求項5,6記載の発明においては、昇降体の荷重や、ユーザーの好みに応じて付勢力調整機構によりスライド調整用弾性体によるスライド部への引動付勢力を調整して吊り上げ用弾性体による回動アームの起動回動モーメントを調整できる一層実用性に優れた昇降装置となり、特に請求項6記載の発明においては、スライド調整用弾性体によるスライド部への引動付勢力を、弱引動状態と強引動状態とに確実に切り替え可能となる。
【0023】
また、請求項7〜10記載の発明においては、例えば、昇降体が取付箇所に対して大きく下降スライド移動する構成であって、回動アームがある一定角度以上大きく伏動回動して吊り上げ用弾性体による回動アームの起動回動モーメントが略一定でなくなるおそれがある構成であったとしても、回動アームが一定角度以上下方へ伏動回動することで小さくなる起動回動モーメントを第二吊り上げ用弾性体が補って昇降体の下降スライド移動を防止できる昇降装置となり、更に請求項8,9記載の発明によれば、吊り上げ用弾性体による回動アームの起動回動モーメントが略一定でなくなる昇降体のスライド範囲内でも、昇降体が略定トルクの昇降操作で昇降スライド動作する構成を設計実現可能となり、従って、より広範囲で昇降体の昇降操作を略定トルクの操作で行うことができる極めて操作性・実用性に優れた昇降装置を設計実現可能となる。
【0024】
また、更に請求項10記載の発明においては、第二吊り上げ用弾性体が連結部を回動アーム基端部側へ引動付勢する構成を簡易に設計実現可能となり、しかも、回動アームに第二吊り上げ用弾性体をスペースを取らずに配置でき、この第二吊り上げ用弾性体が回動アームの回動の支障ともならないなど、一層実用性に優れた昇降装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施例を示す、昇降体を棚から下降させて引き出した状態の説明斜視図である。
【図2】本実施例を示す、昇降体を棚内に収納した状態の概略説明正面図である。
【図3】本実施例を示す、昇降体を棚から半分程度引き出した状態の略説明正面図である。
【図4】本実施例を示す、昇降体を棚から最大限引き出した状態の概略説明正面図である。
【図5】本実施例の回動アームに対するスライド体のスライド構造、並びに回動アームに対する連結部のスライド構造を示す部分拡大説明正断面図である。
【図6】本実施例の回動アームに対するスライド体のスライド構造、並びに回動アームに対する連結部のスライド構造を示す部分拡大説明側断面図である。
【図7】本実施例を示す、付勢力調整機構を弱引動状態に切り替えた状態で昇降体を棚内から半分程度引き出した概略説明正面図である。
【図8】本実施例の付勢力調整機構を示す部分拡大説明斜視図である。
【図9】本実施例の付勢力調整機構を示す部分拡大説明側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0027】
昇降ガイド部2を介して昇降体3を取付箇所1に対して下方へスライド移動(下降スライド移動)させると、この昇降体3に連結部11を介して連結した回動アーム4も枢着部5を支点に下方へ伏動回動することになり、逆に、昇降ガイド部2を介して昇降体3を取付箇所1に対し上方へスライド移動(上昇スライド移動)させると、回動アーム4は枢着部5を支点に上方へ起動回動することになる。
【0028】
また、回動アーム4は、この回動アーム4に設けたスライド部6と、前記枢着部5より上方側の取付箇所1との間に架設した吊り上げ用弾性体7によって起動回動するように回動付勢されているため、昇降体3を取付箇所1に対して下方へ下降スライド移動させる際には、吊り上げ用弾性体7の付勢力に抗して回動アーム4を伏動回動させる。
【0029】
すると、吊り上げ用弾性体7は、通常回動アーム4を下方へ伏動回動させるほど吊り上げ用弾性体7は伸長し付勢力が増していくが、この際に吊り上げ用弾性体7の復帰付勢力によってスライド部6が回動アーム4の基端部側へ引っ張られて移動することになる。
【0030】
即ち、回動アーム4の伏動回動に伴って徐々に伸長して増していく吊り上げ用弾性体7の付勢力を解消しようとする方向へとスライド部6がスライド移動することになるので、回動アーム4が伏動回動して単に吊り上げ用弾性体7の付勢力が増すことに比例して吊り上げ用弾性体7による回動アーム4の起動回動モーメントが大きくなることはない。
【0031】
換言すると、回動アーム4の起動回動モーメントは、吊り上げ用弾性体7の付勢力により回動アーム4を上方へ起動回動させる力と、吊り上げ用弾性体7が設けられるスライド部6の前記枢着部5からの距離との積で表わされるが、回動アーム4に加わる吊り上げ用弾性体7の付勢力が回動アーム4を伏動回動させることで増していく一方で、スライド部6と枢着部5との距離は、回動アーム4を伏動回動させることで短くなっていくので、回動アーム4の起動回動モーメントは、吊り上げ用弾性体7の付勢力に比例して大きくはならない。
【0032】
また、この際、スライド部6が回動アーム4の基端部(枢着部5)に近づくほど吊り上げ用弾性体7の付勢力による回動アーム4の起動回動モーメントは小さくなるので、スライド部6が回動アーム4の基端部に近づきすぎると、吊り上げ用弾性体7による回動アーム4の起動回動モーメントを昇降体3の荷重による回動アーム4の伏動回動モーメントが上回るおそれがあるが、本発明では、スライド部6が吊り上げ用弾性体7の付勢力によって回動アーム4基端部側へスライド移動すると、スライド調整用弾性体8がスライド部6を回動アーム4の先端部側へ引動付勢して、スライド部6が回動アーム4基端部側へと移動するほどこの引動付勢力が大きくなることで、単に吊り上げ用弾性体7の付勢力によりスライド部6が回動アーム4の基端部側へ自由に移動することが防止される。
【0033】
従って、回動アーム4の起動回動モーメントが一挙に小さくなる方向にスライド部6がスライド移動して昇降体3が勢い良く下降移動してしまうようなことはなく、常にある程度の起動回動モーメントが生じる位置にスライド部6がスライド調整用弾性体8によって案内付勢されるので、昇降体3を安全に下降移動させることができる構成にでき、しかも本発明によれば、このスライド調整用弾性体8の付勢力を調整することによって回動アーム4の起動回動モーメントを調整することも可能である。
【0034】
即ち、例えば、前記昇降体3の昇降スライド範囲内で前記スライド用弾性体8が前記スライド部6を引動付勢して、前記吊り上げ用弾性体7の付勢力により前記回動アーム4を上方へ起動回動させる力と、前記スライド部6の前記枢着部5からの距離との積で表わされる回動アーム4の起動回動モーメントが常に略一定となる位置に前記スライド部6が案内付勢されるように、前記スライド調整用弾性体8の付勢力を設定すれば、広範囲で昇降体3が略定トルクの昇降操作により昇降スライド動作する構成が実現し、どの位置でも略同じ力を加えることで昇降体3を昇降スライド移動させることができる。
【0035】
また、例えば、前記吊り上げ用弾性体7による前記回動アーム4の起動回動モーメントが、昇降体3の荷重により回動アーム4を下方へ伏動回動させようとする伏動回動モーメントより常に少し小さくなる位置に前記スライド部6が案内付勢されるように、スライド調整用弾性体8の付勢力を設定すれば、昇降体3が安全な略一定の速度で自動的に下降スライド移動すると共に軽い押し上げ力で昇降体3を上昇スライド移動操作できる構成を実現可能となり、逆に前記吊り上げ用弾性体7による回動アーム4の起動回動モーメントが、昇降体3の荷重により回動アーム4を下方へ伏動回動させようとする伏動回動モーメントより常に少し大きくなる位置に前記スライド部6が案内付勢されるように、スライド調整用弾性体8の付勢力を設定すれば、昇降体3が安全な略一定の速度で自動的に上昇スライド移動すると共に軽い引き下げ力で昇降体3を下降スライド移動操作できる構成を実現可能となり、更に、吊り上げ用弾性体7による回動アーム4の起動回動モーメントと、昇降体3の荷重により回動アーム4を下方へ伏動回動させようとする伏動回動モーメントとが常に略つりあう位置に前記スライド部6が案内付勢されるように、スライド調整用弾性体8の付勢力を設定すれば、昇降体3がその昇降スライド範囲のどの位置でもストップでき、昇降体3の昇降スライド移動に際しては常に逆方向への荷重或いは付勢力を生じているために昇降体3が勢い良く取付箇所1から下降移動したり上昇移動するようなこともなく、昇降操作をゆっくりと安全に行うことができる構成を実現可能となる。
【0036】
従って本発明は、高価な定荷重バネを用いた構成とせずとも、例えば後述する実施例のように、吊り上げ用弾性体7とスライド調整用弾性体8とに安価なコイルバネを採用する構成であっても、昇降体3に加わる回動アーム4の起動回動モーメントが略一定になる操作性に優れた構成を簡易に設計実現可能である。
【0037】
このように本発明は、回動アーム4が伏動回動するにつれて吊り上げ用弾性体7が伸長して付勢力を増すが、スライド部6がスライド移動することで吊り上げ用弾性体7による起動回動モーメントが小さくなる構成であり、更にこの起動回動モーメントを小さくさせるスライド部6の回動アーム4基端部側への移動をスライド調整用弾性体8で制限することによって、広範囲にわたり吊り上げ用弾性体7による回動アーム4の起動回動モーメントが略一定になるようにするものである。
【0038】
また更に、回動アーム4がある一定角度以上大きく下方へ伏動回動する場合には、伏動回動する回動アーム4(スライド部6のスライド方向)と、吊り上げ用弾性体7の付勢方向とが直線状に近づくにつれて回動アーム4の起動回動モーメントが小さくなってしまい、吊り上げ用弾性体7による回動アーム4の起動回動モーメントが略一定でなくなるおそれがある。
【0039】
即ち、回動アーム4が伏動回動する際には、吊り上げ用弾性体7による略一定の起動回動モーメントで昇降体3を上昇スライド移動方向に吊り上げ付勢しているが、回動アーム4が一定角度以上下方へ伏動回動すると、徐々にあるいは急激に起動回動モーメントが小さくなってしまい、自動的に昇降体3が下降移動してしまうおそれがある。
【0040】
このようなことを抑制するために、例えば、前記連結部11は、前記回動アーム4に沿ってスライド自在に設けて、前記昇降ガイド部2を介した前記昇降体3の直線状の昇降スライド移動に伴って回動アーム4が起伏回動する際に、連結部11が回動アーム4に沿ってスライド移動するように構成し、この連結部11が前記昇降体3の荷重により回動アーム4の先端部側にスライド移動する際に、この連結部11を回動アーム4の基端部側へ引動付勢する第二吊り上げ用弾性体12を、この連結部11に設けるようにしても良い。
【0041】
このように構成すると、昇降体3が下降スライド移動するにしたがって(回動アーム4が伏動方向に回動するにつれて)連結部11は回動アーム4の先端部側に自動的にスライド移動しようとするが、この際に第二吊り上げ用弾性体12が伸長して連結部11を回動アーム4の基端部側に引動付勢するので、連結部11が回動アーム4の先端部側へ自由に移動することが防止される(昇降体3が下降移動することが防止される。)。
【0042】
また、この第二吊り上げ用弾性体12は、昇降体3が下降して連結部11が回動アーム4の先端部側へ移動するほど伸長して引動付勢力(復帰付勢力)が大きくなり、この大きくなる付勢力に比例して回動アーム4を上方へ起動回動させようとする分力も大きくなる。
【0043】
従って、回動アーム4が大きく伏動回動するほど吊り上げ用弾性体7による回動アーム4の起動回動モーメントは小さくなってしまうが、これを補うように第二吊り上げ用弾性体12による連結部11の引動付勢力(回動アーム4を上方へ起動回動させようとする分力)が大きくなるので、昇降体3が勢い良く下降移動してしまうようなことはなく、例えば、第二吊り上げ用弾性体12が連結部11を回動アーム4の基端部側に引動付勢することでこの昇降体3の荷重が略相殺されるように、この第二吊り上げ用弾性体12の付勢力を設定すれば、昇降体3の荷重を支えるのに不足する回動アーム4の起動回動モーメントが第二吊り上げ用弾性体12の付勢力により適切に補われて、回動アーム4が大きく下方へ伏動回動する昇降体3の昇降スライド範囲でも回動アーム4の起動回動モーメントが略一定となり、よって昇降体3が取付箇所1に対して大きく下方へ下降スライド移動するような広範囲を昇降スライド動作する昇降装置であっても、この広範囲で略定トルクの昇降操作による昇降動作が実現できることになる。
【0044】
尚、ここで言う「昇降体の荷重」なる記載は、昇降体3の重量(自重)だけでなく、昇降体3に何か収納物を収納した状態での荷重も含む意味合いで用いている。
【実施例】
【0045】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0046】
本実施例は、取付箇所1として、図1に示すように正面から見て方形状を呈する前面及び底面開放型の吊戸棚1Aを採用している(以下、本実施例では取付箇所1を棚1Aと称す。)。尚、この棚1Aの前面開放部には、開閉扉などを開閉自在に設けても良いが、本実施例では図示を省略してある。
【0047】
また、本実施例の昇降体3は、図1に示すように前記棚1A内に全体が収容される大きさの前面が開放する方形箱形体であって、この前面開放部から収納物を収納可能な収納体3Aに構成し(以下、本実施例では昇降体3を収納体3Aと称す。)、下部に引き出し用の取手13を垂下突設している。
【0048】
本実施例では、棚1Aと収納体3Aとにこの収納体3Aを棚1Aに対して直線状に昇降スライド移動させる昇降ガイド部2を設けて、この収納体3Aを図2に示す棚1A内への収納状態から、図1,図4に示すようにこの棚1Aの略真下方向であって棚1Aの底面開放部よりも下方へ下がった位置に引き出しスライド配設できるように構成している。
【0049】
また、昇降ガイド部2は、図示省略の直線状のスライドレールを棚1Aの側壁部の内面に設ける一方、このスライドレールに沿って昇降スライド移動する移動体14を収納体3Aの左右の外側面に付設した構成としている。
【0050】
本実施例では、棚1Aの内面に、回動アーム4の基端部を枢着してこの枢着部5を支点に回動アーム4を起伏回動自在に設けると共に、この回動アーム4を前記収納体3Aに連結してこの収納体3Aの上下スライド移動に伴ってこの回動アーム4が起伏回動するように構成している。
【0051】
具体的に説明すると、回動アーム4は、図2〜図4に示すように収納体3Aの横幅より短い長さを有する金属製の棒状体で構成している。
【0052】
また、この回動アーム4は、図6に示すように断面略H字形を呈する棒状体で構成すると共に、その上部と下部との双方をアリ溝形に形成している。そして、この回動アーム4の長さ方向に連続するアリ溝形の上側取付溝15には、後述するスライド部6を回動アーム4に沿ってスライド自在に取付し得るように構成し、回動アーム4のアリ溝形の下側取付溝16には、後述する連結部11を回動アーム4に沿ってスライド自在に取付し得るように構成している。
【0053】
また、この回動アーム4は、その基端部を、前記棚1A下部の図2〜図4における右側内壁面に設けた枢着用連結部17に起伏回動自在に枢着して、この枢着部5を軸に棚1Aに対し起伏回動自在に設けている。即ち、本実施例では、連結片部17を介して間接的に棚1Aの内面に回動アーム4の基端部を枢着した構成としている。
【0054】
また、この連結片部17には、前記枢着部5を中心とする円弧状の長孔18を貫通形成し、この長孔18に回動アーム4の基端部に固定した回動規制ピン19を挿通配設して、この回動規制ピン19が長孔18に許容される範囲内で回動アーム4が起伏回動移動するように構成している。換言すると、長孔18の孔長により回動アーム4の起伏回動範囲が規制される(収納体3Aの昇降スライド範囲が規制される)構成としている。
【0055】
更に詳しくは、この長孔18により収納体3Aは、棚1A内に完全に収納された状態がスライド上限位置となり、収納体3A上部の一部分を除いたほとんどが棚1A内より下方へ引き出された状態(図1,図4の状態)がスライド下限位置となるように構成している。
【0056】
また、この回動アーム4の下部に連結部11を設けると共に、この連結部11は、回動アーム4に沿ってスライド自在に設け、この連結部11に、前記収納体3Aの背面側の下部に設けた枢着用連結突片20を回動自在に枢着することにより、この連結部11を介して収納体3Aを回動アーム4に連結している。
【0057】
連結部11は、金属製板材を断面コ字状に折曲した主部21の両端部間に軸ピン23を架設し、この主部21の中間折り返し部を上部として、この上部折り返し部に、前記回動アーム4の下側取付溝16にスライド自在に取付可能な略T字状のスライド用取付部22を突設した構成としている。
【0058】
そして、この連結部11を、そのスライド用取付部22を回動アーム4の端部から下側取付溝16に挿入して取付することにより回動アーム4にスライド自在に設け、主部21の両端部間に配設した前記枢着用連結突片20を軸ピン23に枢着連結した構造としている(図5,図6参照)。
【0059】
従って、収納体3Aに連結した連結部11を回動アーム4に沿ってスライド移動自在としたことにより、収納体3Aが前記昇降ガイド部2を介して棚1Aに対し昇降スライド移動する際には、これに連動して回動アーム4も前記枢着部5を支点に起伏回動するが、この際に連結部11が回動アーム4に沿って自動的にスライド移動して、回動アーム4の起伏回動作動が収納体3Aの昇降スライド移動の支障とならない構成としている。
【0060】
また、本実施例では、この回動アーム4と前記棚1Aの内面との間に、回動アーム4を上方へ起動回動するように付勢する吊り上げ用弾性体7を架設すると共に、この吊り上げ用弾性体7の棚1A内面への固定位置7を、前記回動アーム4の前記枢着部5より上方側に存する位置に設定している。
【0061】
具体的には、吊り上げ用弾性体7は抗張弾性を有するコイルバネ7を採用している(以下、本実施例では吊り上げ用弾性体7をコイルバネ7と称す。)。また、このコイルバネ7は、両端部に連結フック24を備えて、この両端部の連結フック24を回動アーム4と棚1Aの内面とに連結する構成としている。
【0062】
また、棚1Aの上側内壁面(天壁面)の、図2〜図4における右寄り位置に掛止部25を垂下突設し、この掛止部25に前記コイルバネ7の一端部の連結フック24を掛止連結している。即ち、本実施例では、棚1Aの内面に掛止部25を介して間接的にコイルバネ7(の一端部)を連結した場合を示している。
【0063】
一方、前記回動アーム4の上部に、この回動アーム4に沿ってスライド移動可能なスライド部6を設け、このスライド部6にコイルバネ7の他端部の連結フック24を連結している。
【0064】
具体的には、スライド部6は、回動アーム4の上端部より上方へ立設状態に突設する板状体で構成し、このスライド部6の下部に、前記上側取付溝15内で転動可能な転動ローラ26を複数設けている。
【0065】
そして、この複数の転動ローラ26とともにスライド部6の下部を回動アーム4の端部から上側取付溝15に挿入することにより、スライド部6の上側部をこの上側取付溝15から上方へ突出した状態で取付し、上側取付溝15内で転動する転動ローラ26により回動アーム4に対しスライド部6がこの回動アーム4に沿ってスムーズにスライド移動するように設けている。
【0066】
また、このスライド部6の上下方向の中ほど位置にバネ受片27を回動自在に枢着し、このバネ受片27に前記コイルバネ7の他端部の連結フック24を掛止連結する構成としている。即ち、本実施例では、スライド部6にバネ受片27を介して間接的にコイルバネ7(の他端部)を連結した場合を示している。
【0067】
このようにして本実施例では、コイルバネ7(の他端部)と回動アーム4とが棚1Aを正面より見て転V字状に配されるように構成し(図2〜図4参照)、このコイルバネ7の抗張弾性によって常に回動アーム4が上方へ起動回動するように付勢され、前記枢着部5を支点に回動アーム4を下方へ伏動回動すると、コイルバネ7が伸長して復帰付勢力が増すように構成している。
【0068】
また、本実施例は、回動アーム4をコイルバネ7の付勢力に抗して伏動回動すると(コイルバネ7が伸びていくと)、このコイルバネ7が縮もうとする方向(回動アーム4に付与されるコイルバネ7の付勢力が小さくなる方向)にスライド部6が引っ張られて、スライド部6が回動アーム4に沿ってこの回動アーム4の基端部側に自動的にスライド移動することになるが、本実施例では、このスライド部6が回動アーム4の基端部側にスライド移動する際に、このスライド部6を回動アーム4の先端部側へ引動付勢するスライド調整用弾性体8を、このスライド部6に設けている。
【0069】
具体的には、前記スライド部6と、前記回動アーム4の先端部との間に前記スライド調整用弾性体8を架設して、このスライド調整用弾性体8が前記スライド部6を回動アーム4の先端部側に引動付勢するように構成している。
【0070】
更に詳しくは、回動アーム4の先端部に上方へ立設突設するバネ受部28を設け、このバネ受部28と前記スライド部6との間に、前記スライド調整用弾性体8を回動アーム4と略平行に配置して架設した構成としている。即ち、スライド調整用弾性体8と回動アーム4の先端部とは、バネ受部28を介して間接的に連結した場合を示している。
【0071】
また、スライド調整用弾性体8は、抗張弾性を有するコイルバネ8を採用し(以下、本実施例ではスライド調整用弾性体8をコイルバネ8と称す。)、このコイルバネ8は、両端部に連結フック29を備えて、この一端部の連結フック29は前記スライド部6に連結し、他端部の連結フック29は前記バネ受部28に連結して、前記スライド部6が回動アーム4の基端部側へスライド移動すると伸長して復帰付勢力が増すように構成している。
【0072】
従って、前記収納体3Aを下降スライド移動させることで前記コイルバネ7の付勢力に抗して前記回動アーム4を伏動回動させると、このコイルバネ7が伸長すると共に、この伸長するコイルバネ7の復帰付勢力によって前記スライド部6が回動アーム4の基端部側へと自動的にスライド移動するように構成し、これにより回動アーム4が伏動回動して単にコイルバネ7の付勢力が増すことに比例してコイルバネ7による回動アーム4の起動回動モーメントが大きくならず、しかしこのコイルバネ7の付勢力によってスライド部6が前記回動アーム4の基端部側へスライド移動する際に、前記コイルバネ8が伸長してスライド部6を回動アーム4の先端部側へ引動付勢し、スライド部6が回動アーム4の基端部側へ自由に移動することが制限される構成としている。
【0073】
また、本実施例では、前記収納体3Aの昇降スライド範囲内で前記コイルバネ8が前記スライド部6を引動付勢して、前記コイルバネ7の付勢力により前記回動アーム4を上方へ起動回動させる力と、前記スライド部6の前記枢着部5からの距離との積で表わされる回動アーム4の起動回動モーメントが常に略一定となる位置に前記スライド部6が案内付勢されるように、前記コイルバネ8の付勢力を設定している。
【0074】
尚、本実施例では、収納体3Aのスライド上限位置における回動アーム4の角度が水平より上方に位置するように構成している。そのため、このスライド上限位置から収納体3Aをコイルバネ7の付勢力に抗して下降スライド移動させると、回動アーム4が水平位置を超えて下方へ伏動回動した位置に移動するまでは、スライド部6が回動アーム4の基端部側へとスライド移動することがなく、この間はコイルバネ7が伸長して付勢力が大きくなっていくので、この初動範囲ではコイルバネ7による回動アーム4の起動回動モーメントが略一定にならない。
【0075】
しかし、回動アーム4が水平を超えて下方へ伏動回動すると、スライド部6が回動アーム4の基端部側へとスライド移動しはじめて起動回動モーメントが略一定になる構成としている。
【0076】
この点、収納体3Aのスライド上限位置で回動アーム4が水平より下方に位置する構成(回動アーム4がやや下方に傾いた状態から更に伏動回動を開始する構成)に設計変更すれば、下降スライド移動の初動時からスライド部6が回動アーム4の基端部側へとスライド移動して起動回動モーメントが略一定となるように構成可能である。
【0077】
また、本実施例では、前記コイルバネ8による前記スライド部6への引動付勢力を調整可能な付勢力調整機構9を備えている。
【0078】
具体的には、スライド部6と回動アーム4の先端部の前記バネ受部28との間に前記スライド調整用弾性体8としてのコイルバネ8を二体上下並設状態にして架設し、付勢力調整機構9は、この二体のコイルバネ8のうちの一体だけが前記スライド部6に引動付勢力を付与して収納体3Aへの収納物の重量が0〜5kg程度の場合に略定トルクでの昇降動作が可能となる弱引動状態(スライド部6が回動アーム4の基端部側へ比較的移動し易くコイルバネ7が伸長しにくい状態)と、二体のコイルバネ8が前記スライド部6に引動付勢力を付与して収納体3Aへの収納物の重量が6〜10kg程度の場合に略定トルクでの昇降動作が可能となる強引動状態(スライド部6が回動アーム4の基端部側へ移動しにくくコイルバネ7が伸長し易い状態)とを切り替え可能な切り替え装置部10を設けた構成としている。
【0079】
更に詳しくは、前記バネ受部28は、断面コ字状に折曲形成された板材で構成し、その折り返し部が回動アーム4の上方に突出するようにして、両端部を回動アーム4の前後面に止着した構成とし、このバネ受部28の上部折り返し部に、二体のコイルバネ8のうちの上側に配した前記コイルバネ8の他端部の連結フック29を連結している。
【0080】
また、回動アーム4の前記スライド部6より他端側にバネ受スライダ30を、この回動アーム4に沿ってスライド移動自在に設け、このバネ受スライダ30に、二体のコイルバネ8のうちの下側に配した前記コイルバネ8の他端部の連結フック29を連結している。
【0081】
バネ受スライダ30は、図7〜図9に示すように前記バネ受部28内に配設可能な大きさであって板材をコ字状に折曲して成るスライダ本体31の両端部間に連結ピン32を架設すると共に、このスライダ本体31の折り返し部を下部としてこの下部折り返し部に、前記上側取付溝15にスライド自在に挿入取付可能なスライド用突起33を突設した構成としている。
【0082】
そして、このバネ受スライダ30を、そのスライド用突起33を回動アーム4の先端部から前記上側取付溝15に挿入することで回動アーム4の上部にスライダ本体31が突出するようにして取付すると共に、この回動アーム4に沿ってスライド移動自在に取付し、このバネ受スライダ30の前記連結ピン32に、二体のコイルバネ8のうちの下側に配したコイルバネ8の他端部の連結フック29を連結することで、このバネ受スライダ30と前記スライド部6の下部との間にも前記スライド調整用弾性体8としてのコイルバネ8を架設している。
【0083】
また、このバネ受スライダ30の前記スライド用突起33には、棒材をL字状に屈曲形成して成る切り替え作動体34を、この切り替え作動体34の一側端部がスライド用突起33の前面部に臨設し、他側端部がスライド用突起33の回動アーム4先端部側の側面部から外方へ突出するようにして内装すると共に、この切り替え作動体34は、スライド用突起33に対しその前後方向に移動自在に設けて、この切り替え作動体34の前後移動に伴ってこの切り替え作動体34の一側端部がスライド用突起33の前面部より突没動するように構成している。
【0084】
また、この切り替え作動体34の一側端部を突出係止部35として、この突出係止部35がスライド用突起33の前面から突出した際には、前記上側取付溝15とバネ受部28とに貫通形成した係止孔36に差込係止可能となって、この突出係止部35が係止孔36に差込係止した状態では、バネ受スライダ30の回動アーム4に対するスライド移動が阻止された位置決め状態となるように構成している(図8参照)。
【0085】
また、係止孔36は、上側取付溝15(回動アーム4)の先端部近傍に設けて、この係止孔36に突出係止部35が差込係止するとバネ受スライダ30が回動アーム4の先端部位置でスライド阻止状態に位置決められる構成としている。
【0086】
即ち、突出係止部35を係止孔36に差込係止してバネ受スライダ30を回動アーム4の先端部に位置決めした状態では、バネ受スライダ30に連結したコイルバネ8もスライド部6を引動付勢する二体のコイルバネ8による前記強引動状態(図1〜図4参照)となり、逆に、突出係止部35が係止孔36に係止せずにバネ受スライダ30が回動アーム4に沿ってスライド移動可能な状態では、バネ受スライダ30に連結したコイルバネ8の引動付勢力がスライド部6には付与されずバネ受部28とスライド部6との間に架設したコイルバネ8一体だけがスライド部6を引動付勢する前記弱引動状態(図7参照)となるように切り替え可能な構成としている。
【0087】
また、前記切り替え装置部10は、前記棚1Aの、前記枢着部5がない側の内面(図2〜図4において左側内壁面と後側内壁面)に平面視L形の取付金具37を付設し、この取付金具37に帯板の一端部を鉤形に屈曲形成して成る操作体38を、その鉤形部が上になるようにして棚1Aに枢着して、この操作体38の下部を前後方向に傾動回動操作すると、鉤形部が前後移動するように構成している。
【0088】
また、この操作体38は、図8,図9に示すように鉤形部の先端部を二股形状に形成してこの二股先端部を前記切り替え作動体34の他側端部に嵌脱自在に被嵌接続可能な伝達部39とし、この伝達部39を切り替え作動体34の他側端部に被嵌接続して操作体38の下部を傾動操作すると、伝達部39が前後移動して切り替え作動体34もバネ受スライダ30(のスライド用突起33)に対して前後移動し、これによって前記突出係止部35を前記係止孔36に差込係止あるいは突出係止部35を係止孔36から係脱するように切り替え操作できる構成としている。
【0089】
また、この操作体38は、回動アーム4が起動回動上限位置にある時に、伝達部39が切り替え作動体34の他側端部に被嵌接続するように、棚1A内面への取付位置を設定構成し、回動アーム4が伏動回動する際には、二股形状の伝達部39の下方へ切り替え作動体34の他側端部が移動して抵抗なく嵌脱する構成としている。
【0090】
また、本実施例は、収納体3Aを棚1Aに対して下降移動した際に、この収納体3Aが棚1Aからの下降スライド移動ストロークが大きく確保されるように(収納体3Aが大きく引き出されるように)、回動アーム4が水平に対し下方へ40度を超える範囲にまで大きく伏動回動するように構成している。
【0091】
そのため、本実施例によれば、収納体3Aを下方へスライド移動させるほど伏動回動する回動アーム4(スライド部6のスライド方向)と、吊り上げ用弾性体7の付勢方向とが直線状に近づき、これによって回動アーム4の起動回動モーメントが小さくなってしまい、吊り上げ用弾性体7による回動アーム4の起動回動モーメントが略一定でなくなるおそれがある。
【0092】
即ち、例えば、回動アーム4が伏動回動しながら吊り上げ用弾性体7による略一定の起動回動モーメントで昇降体3を引き上げ付勢しているが、回動アーム4が一定角度以上下方へ伏動回動すると、徐々にあるいは急激に起動回動モーメントが小さくなってしまい、自動的に昇降体3が下降移動してしまうおそれがある。
【0093】
このことを防止するために、本実施例では、収納体3Aが下降スライド移動して回動アーム4が水平に対し伏動回動する際に、連結部11が収納体3Aの荷重により回動アーム4に沿ってこの回動アーム4の先端部側に自動的にスライド移動するように構成し、この連結部11が前記収納体3Aの荷重により回動アーム4の先端部側にスライド移動する際に、この連結部11を回動アーム4の基端部側へ引動付勢する第二吊り上げ用弾性体12を、この連結部11に設けている。
【0094】
具体的には、前記連結部11と、前記回動アーム4の基端部との間に前記第二吊り上げ用弾性体12を架設して、この第二吊り上げ用弾性体12が前記連結部11を回動アーム4の基端部側に引動付勢するように構成している。
【0095】
また、第二吊り上げ用弾性体12は、抗張弾性を有するコイルバネ12を採用し(以下、本実施例では第二吊り上げ用弾性体12をコイルバネ12と称す。)、このコイルバネ12は、両端部に連結フック40を備えて、前記回動アーム4の下部にこの回動アーム4と略平行にコイルバネ12を配置した上で一端部の連結フック40を前記回動アーム4の基端部に連結し、他端部の連結フック40を前記連結部11に連結している。
【0096】
更に詳しくは、回動アーム4の基端部の前後両側に板状のバネ取付部41を下方に向けて垂設状態に付設し、この前後に対設するバネ取付部41間に連結ピン42を架設してこの連結ピン42にコイルバネ12の一端部の連結フック40を掛止連結している。即ち、コイルバネ12を、バネ取付部41を介して間接的に回動アーム4の基端部に連結した構成とした場合を示している。また、図面では、このバネ取付部41を介して回動アーム4の基端部を前記枢着用連結部17に枢着した場合を示している。
【0097】
また、連結部11の前記軸ピン23より回動アーム4の基端部側に連結ピン43を架設し、この連結ピン43にコイルバネ12の他端部の連結フック40を掛止連結している。
【0098】
従って、収納体3Aが下降スライド移動するにしたがって(回動アーム4が伏動方向に回動するにつれて)連結部11は回動アーム4の先端部側に自動的にスライド移動しようとするが、この際にコイルバネ12が伸長して連結部11を回動アーム4の基端部側に引動付勢するので、連結部11が回動アーム4の先端部側へ自由に移動することが防止される。
【0099】
また、このコイルバネ12は、収納体3Aが下降して連結部11が回動アーム4の先端部側へ移動するほど伸長して付勢力が大きくなり、この大きくなる付勢力に比例して回動アーム4を上方へ起動回動させようとする分力も大きくなる。
【0100】
従って、回動アーム4が大きく伏動回動するほどコイルバネ7による回動アーム4の起動回動モーメントは小さくなってしまうが、これを補うようにコイルバネ12による連結部11の引動付勢力(回動アーム4を上方へ起動回動させようとする分力)が大きくなる構成としている。
【0101】
また、本実施例では、コイルバネ12が連結部11を回動アーム4の基端部側に引動付勢することで収納体3Aの荷重が略相殺されるように、このコイルバネ12の付勢力を設定している。
【0102】
従って、収納体3Aの荷重を支えるのに不足する回動アーム4の起動回動モーメントがコイルバネ12の付勢力により適切に補われて、回動アーム4が大きく下方へ伏動回動する収納体3Aの昇降スライド範囲でも回動アーム4の起動回動モーメントが略一定となり、このような広範囲の昇降スライド範囲の全ての領域で略定トルクの昇降操作が可能となる構成としている。
【0103】
このコイルバネ12による連結部11の引動付勢構造は、収納体3Aの昇降スライド範囲内で、コイルバネ7による回動アーム4の起動回動モーメントが略一定である構造(例えば収納体3Aの昇降スライド範囲が比較的狭く、回動アーム4の水平に対する伏動回動角度が小さい構造)には必要がない。
【0104】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0105】
1 取付箇所
2 昇降ガイド部
3 昇降体
4 回動アーム
5 枢着部
6 スライド部
7 吊り上げ用弾性体
8 スライド調整用弾性体
9 付勢力調整機構
10 切り替え装置部
11 連結部
12 第二吊り上げ用弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付箇所に昇降ガイド部を介して昇降体を昇降スライド自在に設けた昇降装置において、前記取付箇所に回動アームの基端部を枢着してこの枢着部を支点に回動アームを起伏回動自在に設け、この回動アームに連結部を設け、この連結部に前記昇降体を連結して、この昇降体の昇降スライド移動に伴って回動アームが起伏回動するように構成し、この回動アームに、この回動アームに沿ってスライド移動可能なスライド部を設け、このスライド部と、前記枢着部より上方側の前記取付箇所との間に、前記回動アームを起動回動するように回動付勢する吊り上げ用弾性体を架設し、この吊り上げ用弾性体の付勢力によってスライド部が前記回動アームの基端部側へスライド移動する際に、このスライド部を回動アームの先端部側へ引動付勢するスライド調整用弾性体を、このスライド部に設けたことを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記昇降体の昇降スライド範囲内で前記スライド調整用弾性体が前記スライド部を引動付勢して、前記吊り上げ用弾性体の付勢力により前記回動アームを上方へ起動回動させる力と、前記スライド部の前記枢着部からの距離との積で表わされる回動アームの起動回動モーメントが常に略一定となる位置に前記スライド部が案内付勢されるように、前記スライド調整用弾性体の付勢力を設定したことを特徴とする請求項1記載の昇降装置。
【請求項3】
前記昇降体を下降スライド移動させることで前記回動アームを伏動回動させると、前記吊り上げ用弾性体が伸長するようにこの吊り上げ用弾性体を構成すると共に、この伸長する吊り上げ用弾性体の復帰付勢力によって前記スライド部が回動アームの基端部側へと自動的にスライド移動するように構成し、この吊り上げ用弾性体の付勢力によってスライド部が前記回動アームの基端部側へスライド移動する際に、前記スライド調整用弾性体がスライド部を回動アームの先端部側へ引動付勢して、前記吊り上げ用弾性体の付勢力により前記回動アームを上方へ起動回動させる力と、前記スライド部の前記枢着部からの距離との積で表わされる回動アームの起動回動モ−メントが常に略一定となる位置にこのスライド部が案内付勢されるように、このスライド調整用弾性体の付勢力を設定したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記スライド調整用弾性体を前記回動アームと平行に配置してこのスライド調整用弾性体を前記スライド部と前記回動アームの先端部との間に架設し、このスライド調整用弾性体は、前記スライド部が回動アームの基端部側へスライド移動すると伸長するように構成して、この伸長するスライド調整用弾性体の復帰付勢力によってスライド部を回動アームの先端部側へ引動付勢する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記スライド調整用弾性体による前記スライド部への引動付勢力を調整可能な付勢力調整機構を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項6】
前記付勢力調整機構は、前記スライド部に前記スライド調整用弾性体を複数設け、この複数のスライド調整用弾性体の少なくとも一つが前記スライド部に引動付勢力を付与する弱引動状態と、この弱引動状態より多くのスライド調整用弾性体が前記スライド部に引動付勢力を付与する強引動状態とを切り替え可能な切り替え装置部を設けたことを特徴とする請求項5記載の昇降装置。
【請求項7】
前記取付箇所と前記昇降体とのいずれか一方若しくは双方に、この取付箇所に対して昇降体を直線状に昇降スライド移動させる前記昇降ガイド部を設け、前記連結部は、前記回動アームに沿ってスライド自在に設けて、前記昇降ガイド部を介した前記昇降体の直線状の昇降スライド移動に伴って回動アームが起伏回動する際に、連結部が回動アームに沿ってスライド移動するように構成し、この連結部が前記昇降体の荷重により回動アームの先端部側にスライド移動する際に、この連結部を回動アームの基端部側へ引動付勢する第二吊り上げ用弾性体を、この連結部に設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項8】
前記回動アームが水平に対し所定角度以上伏動回動して前記連結部が前記昇降体の荷重により回動アームの先端部側にスライド移動する昇降体の昇降スライド範囲内で、前記第二吊り上げ用弾性体が連結部を回動アームの基端部側に引動付勢することでこの昇降体の荷重が略相殺されるように、この第二吊り上げ用弾性体の付勢力を設定したことを特徴とする請求項7記載の昇降装置。
【請求項9】
前記昇降体を下降スライド移動させることで前記回動アームを水平に対し所定角度以上伏動回動させると、前記連結部が回動アームの先端部側に自動的にスライド移動するように構成し、この連結部が回動アームの先端部側にスライド移動すると、前記第二吊り上げ用弾性体が伸長するようにこの第二吊り上げ用弾性体を構成すると共に、この伸長する第二吊り上げ用弾性体の復帰付勢力によって前記連結部が回動アームの基端部側へ引動付勢されるように構成し、この第二吊り上げ用弾性体が連結部を回動アームの基端部側に引動付勢することでこの昇降体の荷重が略相殺されるように、この第二吊り上げ用弾性体の付勢力を設定したことを特徴とする請求項7,8のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項10】
前記第二吊り上げ用弾性体を前記回動アームと平行に配置してこの第二吊り上げ用弾性体を前記連結部と回動アームの基端部との間に架設し、この第二吊り上げ用弾性体は、前記連結部が回動アームの先端部側へスライド移動すると伸長するように構成して、この伸長する第二吊り上げ用弾性体の復帰付勢力によって連結部を回動アームの基端部側へ引動付勢する構成としたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−249800(P2012−249800A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124270(P2011−124270)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(506360631)株式会社三条工機製作所 (4)
【Fターム(参考)】