説明

易開封性密封包装体

【課題】塩化ビニリデン系樹脂フィルムを用いた密封包装体であって、製品の製造・運搬過程では破袋やピンホールの発生が十分に少ない難開封性を有し、他方、消費者が製品を利用する際には包装を容易に開封できる易開封性を有する密封包装体を提供すること。
【解決手段】密封包装体10は、塩化ビニリデン系樹脂フィルムの重ね合わせ部分を熱融着してシール部3を形成してなる筒状フィルム2と、内容物が充填された筒状フィルム2の両端部を封止する封止部材9と、筒状フィルム2の外側にはみ出したフィルム外耳片6とを備え、重ね合わせ部分の当接面Fa,Fbの少なくとも一方は、複数の不貫通の穴もしくは切れ目8aが一列に並ぶように形成されてなる傷痕群8を複数列有し、傷痕群8はシール部3の幅Aを超えてこれを横切るように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性包装体に関する。更に詳しくは、塩化ビニリデン系樹脂フィルムを用いた筒状密封包装体の易開封性の向上を図る改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハム、ソーセージ、チーズ、羊羹、ういろう等を収容する筒状密封包装体として、塩化ビニリデン系樹脂フィルムを使用したものが広く知られている。この筒状密封包装体は、自動充填包装機(例えば旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP(登録商標)」)で、帯状の塩化ビニリデン系樹脂フィルムを走行させながら、両側縁部を交叉させて重なり合うように筒状に折り曲げ、その重ね合わせ部分をシールして筒状フィルムに成形し、この筒状フィルム内に内容物を充填後、上端および下端を結紮(封止)して製造される。塩化ビニリデン系樹脂フィルムは、ガスバリア性、強靭性、シール性、耐熱性、熱収縮性に優れた特性を有するため、この筒状密封包装体の包装フィルムとして汎用されている。
【0003】
しかしながら、塩化ビニリデン系樹脂フィルムで包装された筒状密封包装体は、フィルムが強靭であるため、消費者が内容物を取り出す際、鋭利な刃物等が必要であり、刃物等の用意がない場合には手指の力だけでは開封ができないという欠点を有している。そのため、塩化ビニリデン系樹脂フィルムで包装された筒状密封包装体に易開封性を付与する技術が古くから多く提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
特許文献1には、図4に示す構成の開封用テープ付き筒状包装体が記載されている。同図に示す包装体は、筒状フィルム12の筒軸方向に線状に配されたフィルム相互の融着シール部13と、筒状フィルム12の端部を閉じる結紮部19と、筒端近傍のフィルム表面部に筒軸とほぼ直交方向に設けられた開封用テープ14a及び融着部14bとを有する。
【0005】
特許文献2には、図5に示す構成の開封用摘み片付き筒状包装体が記載されている。同図に示す包装体は、筒状の包装体22と、融着シール部23と、包装体の長手方向の全長にわたって表面上に設けられた開封用摘み片24a及び融着部24bとを有する。
【0006】
特許文献3には、図6に示す構成の易開装性筒状密封包装体が記載されている。同図に示す包装体は、塩化ビニリデン系樹脂フィルムからなる筒32と、その筒軸に沿って延在する背貼りシール部33と、筒両端を金属環で集束した結紮部39と、背貼りシール部33を介して包装体外部に帯状にはみだしたフィルム耳片36と、包装体内部に帯状にはみだしたフィルム耳片37とを有する。フィルム耳片36のほぼ中央部にはフィルム層を貫通する微小面積の穴又は切線でなる切り目が、耳片36の長軸を横断する方向性に耳片36の長軸方向に間隔をおいて多数配列されている。
【0007】
特許文献4には、図7に示す構成の易開封性包装体が記載されている。同図に示す包装体は、内容物1と、少なくとも3箇所でシールされた状態で内容物1を覆うフィルム42と、熱融着によって形成されるシール部43とで構成される。シール部43の一側縁に沿って折り目45をもつ2枚のフィルムからなる細幅の耳片部46が包装体の外部に位置し、シール部43の他側縁に沿って2枚のフィルム端部からなる細幅の耳片部47が包装体の内部に位置する。そして、耳片部46をなす2枚のフィルムのうち1枚のフィルムのみに、耳片軸を横断する方向に小間隔をもって線状に設けられた微小面積の穴48の列が耳片軸方向に多数条設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−317477号公報
【特許文献2】実開昭63−117770号公報
【特許文献3】特開昭63−12471号公報
【特許文献4】特許第2838225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記の筒状密封包装体は、例えば、ハム・ソーセージの製造の場合、充填工程、殺菌工程(ボイル、レトルト等)、搬送・選別工程、箱詰め・梱包工程などの製造過程では、難開封性が求められる。他方、消費者の開封時には易開封性が求められる。これらの相反する2つの課題の克服は、従来技術では必ずしも十分ではなかった。すなわち、従来の密封包装体は、製造時の不良率を0.1%以下にするという業界の生産性向上目標や、消費者の更なる易開封性の確度の向上期待とも相俟って、十分満足できるものではなく、未だ改善の余地があった。
【0010】
特許文献1、2に記載の発明は、本体フィルムよりも強靭な開封用の帯状物(開封用テープや開封用摘み片)、例えば本体フィルムの厚さより厚い帯状物を、筒状密封包装体の胴の一部に融着させておき、この帯状物を引っ張ることによって本体フィルムの一部を引き破り、その部分を開封の切り口(起点)とするものである。しかし、本体フィルムと開封用の帯状物とを融着する場合、融着が過多であれば、易開封性を付与することはできるが、融着部分のフィルムの厚さが薄くなり、この部分にピンホールが発生しやすくなり、製造過程における難開封性が不十分となる場合があった。逆に融着不足であれば、難開封性を保持することはできるものの、開封時に、開封用の帯状物のみが剥がれてしまい易開封性が不十分となる場合があった。また、適正に融着されたとしても、殺菌時や移送時の筒状密封包装体同士の接触等により、開封用の帯状物が剥がれたり、その融着面にピンホールが発生したりする場合もあった。
【0011】
特許文献3に記載の発明は、筒状密封包装体の1枚のフィルム端部である細幅の耳片部に、微小傷痕群を設け、これらを開封の切り口(起点)にして、細幅の耳片部を引き裂く時の引裂応力をシール部に伝播させてこれを部分破壊して、開封部を得ようとするものである。しかし、シール部の強度に対して上記耳片部の強度が不十分な場合、開封時に耳片部が先にちぎれてしまうことがあった。開封時に耳片部がちぎれることを防止するためにシール部の強度を弱めると、包装体の製造過程においてシール部からの破袋が増加したり、破袋にまでは至らないもののシール部の部分剥離現象が発生しやすくなる。剥離部分から細菌が侵入すると包装体が膨張したり腐敗が発生する。
【0012】
特許文献4に記載の発明は、特許文献3に記載の筒状密封包装体の耳片部を、折目をもつ2枚の耳片部にすることで、開封時に耳片部が先にちぎれてしまう問題点を解決しようとしたものである。しかし、この発明にしても、シール部を3枚のフィルムでシールするため、筒状に製袋する際のフィルム走行時の張力変動等により、シール部の幅が変わり易く、シール部の強度変動が大きくなる場合があり、シール部からの破袋等が発生することがあった。また、図7に示す構成のシール部43を採用したことで、棒状の包装体(製品)がシール部43を内側にして湾曲しやすいという問題点があった。すなわち、シール部43の対向側はフィルムが1枚であるのに対し、シール部43側は包装体内側の1枚の耳片と合わせて耳片が3枚のフィルムで構成されるため、例えばボイル殺菌やレトルト殺菌時のフィルムの加熱収縮応力により包装体が湾曲しやすい。包装体が大きく湾曲した場合、搬送中に整列機に詰まったりして外装ができなくなるという製造上の問題と、消費者に外観異形として嫌われるという問題がある。このように特許文献4に記載の発明は、難開封性及び易開封性の両立という点では優れた面を有するものの、必然的に製品が湾曲しやすいため、ハム等の太物製品の一部で試用されるに留まっているのが現状である。
【0013】
また、塩化ビニリデン系樹脂フィルムを使用した包装体に対し、易開封性を付与することは、以下の通りもともと困難であるという事情がある。すなわち、塩化ビニリデン系樹脂フィルムを熱融着した場合、シール部の縁に「樹脂溜まり」が形成されやすく(図1及び図9の樹脂溜まり部D参照)、これを破壊することが難しいことに由来している。より具体的には、耳片部を引き裂く時の引裂応力をシール部に伝播させて、開封部を得ようとしても、シール部の縁の樹脂溜まりが引き裂き伝播を阻害する。樹脂溜まりは、連続接触式封筒貼りシール方式によって筒状フィルムが製造されることと、包装フィルムである塩化ビニリデン系樹脂の溶融樹脂特性との2点から、発生しやすい。つまり、塩化ビニリデン系樹脂フィルムを用いた筒状密封包装体は、本質的に難開封性を有している。
【0014】
筒状密封包装体の製造方法の一例は、例えば特開昭62−261422号公報に記載されている。製造装置の一例を図8に示す。具体的には、ボビンホルダー61から引き出された長尺フィルムFを、ガイドロール62a、62bを介してフォーミングホルダー63に送り、ここで長軸方向に沿って折り曲げ両側側縁部を重合し、その重合部分を高周波が印加されている固定電極(負電極)64と加圧電極(正電極)65との間に通して挟圧し高周波溶着し、長尺筒状体Gを形成する。次いで、このように形成された筒状体Gの中に充填ノズル67から所定の物質(例えば肉ペースト)を定量的に導入し、ボイドローラー68a、68bによって、下方へしごいて密に充填する。しごきにより生じたくびれ部分を結紮装置69で金属ワイヤー等を用いて結紮し包装することで筒状密封包装体Hが得られる。フィードロール66a、66bは長尺筒状体フィルムGの定速走行を調節するためのものである。
【0015】
この際、長尺フィルムFは加圧電極(正電極)65で押圧接触されながら連続的に封筒貼りにシールされる。このため、シール部の両縁に加圧電極(正電極)65の押圧により溶融樹脂の樹脂溜まり部Dが形成される(図9(ii)参照)。
【0016】
図9(i)は、従来の塩化ビニリデン系樹脂フィルムで包装された筒状密封包装体の一例を示す平面図である。同図に示す包装体50は、塩化ビニリデン系樹脂フィルムからなる筒状フィルム52と、熱融着によって形成されたシール部53と、筒状フィルム52の両端部を封止する結紮部59と、フィルムの一方の側縁部であって筒状フィルム52の外側に帯状にはみ出したフィルム外耳片56とを有する。
【0017】
図9(ii)は、包装体50の軸方向に垂直な方向の部分断面図である。同図に示す通り、シール部53の両側に樹脂溜まり部Dが形成される。また、フィルム外耳片56が包装体50の外側に位置し、フィルム内耳片57が包装体50の内側に位置する。
【0018】
塩化ビニリデン系樹脂フィルムを用いた場合に樹脂溜まり部Dが大きくなりやすい主因は、塩化ビニリデン系樹脂はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂等に比べて、溶融後の再結晶化速度が遅く溶融部の結晶固化が遅いためと推察される。本来、塩化ビニリデン系樹脂フィルムはその結晶の配向性から、一旦傷が付けば、その傷を起点としての引き裂きは容易である。しかし、シール部53の縁に形成される樹脂溜まり部Dは、溶融により結晶の配向性が緩和されており、この樹脂溜まり部Dが障害になって、フィルム外耳片56からの引裂応力の伝播がシール部53まで到達しにくいので開封性が低下する。
【0019】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、その目的は塩化ビニリデン系樹脂フィルムを用いた密封包装体であって、製品の製造・運搬過程では破袋やピンホールの発生が十分に少ない難開封性を有し、他方、消費者が製品を利用する際には包装を容易に開封できる易開封性を有するとともに、製品の湾曲を十分に抑制できる密封包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、筒状密封包装体のシール部の特定部分に不貫通の穴または切れ目から形成されてなる傷痕群を設けることで、包装体が、製品の製造・運搬の際には破袋やピンホールの発生が十分に少ない難開封性を有し、かつ、消費者が製品を利用する際には易開封性が優れるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明は、以下(1)〜(2)を提供する。
(1)帯状の塩化ビニリデン系樹脂フィルムの両側縁部を重ね合わせ、この重ね合わせ部分を当該フィルムの長手方向にわたり所定の幅で熱融着してシール部を形成してなる筒状フィルムと、内容物が充填された上記筒状フィルムの両端部を封止する封止部材と、上記塩化ビニリデン系樹脂フィルムの一方の側縁部であって上記筒状フィルムの外側に帯状にはみ出したフィルム外耳片とを備えた密封包装体において、上記重ね合わせ部分をなす上記塩化ビニリデン系樹脂フィルムの2つの当接面の少なくとも一方は、複数の不貫通の穴または切れ目が一列に並ぶように形成されてなる傷痕群を複数列有し、上記傷痕群は上記シール部の全幅を超えて上記シール部を横切るように設けられていることを特徴とする易開封性密封包装体。
(2)上記不貫通の穴もしくは切れ目の深さは、上記フィルム外耳片の厚さの20%〜70%であることを特徴とする(1)に記載の密封包装体。
【発明の効果】
【0022】
本発明の密封包装体は、製品の製造・運搬過程では破袋やピンホールの発生が十分に少ない難開封性を有するため、製品の長期保存性にも優れる。他方、消費者が製品を利用する際には包装を容易に開封できる易開封性を有する。さらに、包装体の湾曲が十分に抑制され、商品価値を高めることができる。また、そのような包装体を、簡易且つ低コストで製造することができ、その結果、歩留まりが向上し、汎用性、生産性および経済性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る易開封性密封包装体の好適な実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の易開封性密封包装体に形成する穴または切れ目の好適な例を示す模式図である。
【図3】本発明の易開封性密封包装体の作製に使用する塩化ビニリデン系樹脂フィルムの一例を示す模式図である。
【図4】従来の筒状密封包装体の例を示す模式図である。
【図5】従来の筒状密封包装体の例を示す模式図である。
【図6】従来の筒状密封包装体の例を示す模式図である。
【図7】従来の筒状密封包装体の例を示す模式図である。
【図8】本発明の易開封性密封包装体の作製に使用する装置の一例を示す模式図である。
【図9】(i)は従来の筒状密封包装体の一例を示す平面図であり、(ii)は従来の筒状密封包装体の軸方向に垂直な方向の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明に係る密封包装体の好適な実施形態を示す概念図である。図1(i)は包装体10の全体を示す平面図であり、図1(ii)は(i)の丸で囲った部分(包装体10のシール部3)を拡大して示す部分平面図であり、図1(iii)は包装体10の長手方向に垂直な方向のシール部3の断面図である。
【0026】
図1に示す包装体10は、帯状の塩化ビニリデン系樹脂フィルムの両側縁部を重ね合わせ、この重ね合わせ部分のほぼ中央部をフィルムの長手方向にわたり所定の幅で熱融着してシール部3を形成してなる筒状フィルム2と、筒状フィルムの両端部を封止する封止部材9と、筒状フィルム2の外側に帯状にはみ出したフィルム外耳片6と、筒状フィルム2の内側に帯状にはみ出したフィルム内耳片7とを備える。
【0027】
この重ね合わせ部分をなす塩化ビニリデン系樹脂フィルムの2つの当接面Fa,Fbの少なくとも一方に、シール部3の幅Aを超えてシール部3を横切るように、複数の不貫通の穴または切れ目8aが一列に並ぶように形成されてなる傷痕群8が複数列設けられている。包装体10は、不貫通の穴または切れ目8aを開封に活用するものである。
【0028】
フィルム外耳片6は包装体10を開封する際の取っ手となる。すなわち、消費者が包装体10を開封するとき、このフィルム外耳片6を摘まんでシール部3を引き剥がす方向に引っ張り、シール部3を破壊して内容物1を取り出す。
【0029】
図1(iii)を参照しながら、開封原理を説明する。消費者が包装体10を開封する際、フィルム外耳片6を摘まんで引っ張れば、フィルムの当接面Fa,Fbに設けられた不貫通の穴または切れ目8aを起点としてフィルムの破壊が伝播し、その引っ張り応力の集中によりシール部3のフィルム外耳片6側の樹脂溜まり部Dが破壊され、次いでシール部3が破壊され、容易に内容物1が取り出せるのである。
【0030】
ここで、シール部3に設けられる穴または切れ目8aは、密封性を保持するために、フィルム層を貫通しない穴または切れ目である必要がある。また、樹脂溜まり部Dを破壊するために、不貫通の穴または切れ目8aは、シール部3の幅Aを越えて設ける必要がある。穴または切れ目8aが幅Aを越えない場合は、引っ張り応力が樹脂溜まり部Dに分散して伝わるため樹脂溜まり部Dを破壊できず、フィルム外耳片6のみが千切れてしまう。
【0031】
また、シール部3の幅Aを越えて設けられる不貫通の穴または切れ目8aは、重ね合わせ部分をなす外側のフィルムと内側のフィルムが接するフィルムの2つの当接面Fa,Fbのうち、少なくとも一方の当接面に設ける必要がある。包装体の外面側(非シール面)に設けた場合は、フィルム外耳片6を摘まんで引っ張り、シール部3を破壊しようとしても、不貫通の穴または切れ目8aを起点としてフィルム外耳片6のみがちぎれるため、包装体の開封ができない。さらには、筒状に製袋する際、加圧電極(正電極)が不貫通の穴または切れ目8aと接触押圧しながらシールされるため、シール部幅の変動が大きくなりやすく、各工程中での破袋や、ピンホール不良が増加する。また、包装体の内面側(非シール面)に設けた場合は、フィルム外耳片6を摘まんで引っ張っても、引っ張り応力の伝播が樹脂溜まり部Dで停止してしまうため、樹脂溜まり部Dを破壊できず、包装体の開封ができない。樹脂溜まり部Dの破壊のためには、不貫通の穴または切れ目8aは2つの当接面Fa,Fbの少なくとも一方の当接面に設ければ良いが、当接面Fa,Fbの両方に設ける方が好ましい。図1(iii)に示す包装体10は、当接面Fa,Fbの両方に傷痕群8が形成されたものである。
【0032】
不貫通の穴または切れ目8aの深さBは、筒状フィルムの外側に帯状にはみ出したフィルム外耳片6の厚さCの20%〜70%が好ましい。より好ましくは、30%〜60%である。切れ目の深さBが20%以上であれば、開封性が向上し、切れ目の深さBが70%以下であれば、シール部からの破袋が減少する。
【0033】
シール部の幅Aは0.2mm〜1.5mmが好ましい。シール部の幅Aが0.2mm以上であれば、包装体のシール部の剥離不良が減少し、シール部の幅Aが1.5mm以下であれば、樹脂溜まり部Dの成長が抑制できる。
【0034】
フィルム外耳片6の幅は4mm〜12mmが好ましい。フィルム外耳片6の幅が4mm以上であれば、消費者が包装体を開封するとき、このフィルム外耳片6を摘まみやすいし、フィルム外耳片6の幅が12mm以下であれば、製品湾曲が減少する。
【0035】
フィルム外耳片6の厚さCは使用する包材の厚さや加熱殺菌時の熱収縮で変化するが、30μm〜120μmが好ましい。フィルム外耳片6の厚さCが30μm以上であれば、製造過程における外部応力によるフィルム破れが減少し、フィルム外耳片6の厚さCが120μm以下であれば、フィルムの剛性由来の自動充填包装機での製袋性が低下しないため、包装体の生産性が向上する。
【0036】
また、フィルム外耳片6の端縁部に、引き裂き開始部を設けることが好ましい。引き裂き開始部としては、IノッチやVノッチ等が挙げられる。さらには、フィルム外耳片6に、引き裂き開始部として、小間隔をもって線状に配列させた複数列の微小面積の穴または切れ目からなる傷痕群を設けることも好ましい。これらの傷痕群は、フィルム外耳片6のフィルム層を貫通させた方が好ましいが、フィルムの破壊(切断)開始効果を期待できるならば、フィルム外耳片6のフィルム層の貫通、不貫通を問わない。
【0037】
図2(i)(ii)は、穴または切れ目8aの好適な例をそれぞれ示す図である。穴または切れ目8aは、フィルム層を貫通せず、包装体10の長軸を横断する方向にほぼ一定の間隔bをもって一列に並ぶように形成されて傷痕群8をなし、かつ、この傷痕群8が包装体の長軸方向にほぼ一定の間隔cをおいて複数列配列される。穴または切れ目8aは、面積が0.003mm〜0.2mm、包装体10の長軸方向に垂直な方向の長さ(図2中の長さa)が0.1mm〜1.5mm、傷痕群8における間隔(図2中の間隔b)が0.1mm〜1mm、傷痕群8の間隔(図2中の間隔c)が0.5mm〜2mm、包装体10の長軸方向の幅(図2中の幅d)が0.005mm〜0.5mmとなるように形成することが好ましい。
【0038】
穴または切れ目8aの面積は、フィルムの引き裂き強度に関わり、また個々の穴または切れ目8aの間隔(図2中の間隔b及び間隔c)は、引き裂き伝播強度に関わる。従って、穴または切れ目8aの面積や間隔は、フィルムの機械的強度が、包装体10を製造する工程においては必要限度の範囲内で保持されるように、かつ、消費者が開封する時には、開封の起点となる局部小範囲で弱められた状態になるように調整される。なお、図2に示すように、穴または切れ目8aの長さaは、幅dよりも長いことが好ましい。穴または切れ目8aの長さaを幅dよりも長くすることで、フィルムを引き裂く力によって樹脂溜まり部Dを破壊しやすく、易開封性がより一層向上する。
【0039】
フィルムに不貫通の穴または切れ目を付与する方法としては、例えば特開平6−8966号公報に開示された穿孔装置を使用した方法、すなわち上縁端が鋭い微細な刃物を円盤の円周上に複数列千鳥状に配列加工したものを用いる方法、あるいは、50μm〜100μm程度の粒径の鋭い角を有する合成ダイヤモンドのような硬い粒子を円盤の円周上に電着したものや、サンドペーパーを円盤の円周上に貼り付けたもの等で押圧する方法、切れ刃を有するロール(ロータリーダイロール)等を用いる方法などが挙げられる。不貫通の穴または切れ目8aは、少なくとも塩化ビニリデン系樹脂フィルムが筒状に成形される前に付与されるのが望ましい。
【0040】
不貫通の穴または切れ目8aを有するフィルムは、例えば、それぞれ特定の厚さを有する2枚のフィルムに貫通する穴または切れ目を設け、これら2枚のフィルムを一方のフィルムで他方の穴または切れ目を塞いで不貫通となるようにフィルム面を組み替えて貼り合わせて作製してもよい。この場合、所定の厚さのフィルムを2枚選択して使用することで、不貫通の穴または切れ目8aの深さを調節することができる。
【0041】
図3(i)は不貫通の傷痕群8が形成されており、包装体10の作製に使用される塩化ビニリデン系樹脂フィルムの巻物2Aを示す斜視図であり、図3(ii)は図3(i)に示すII−II線断面図である。図3(ii)に示すように当接面Fa,Fbに傷痕群8がそれぞれ設けられている。図3(iii)のフィルム巻物2Aを使用して包装体10を製造する際は、傷痕群8がそれぞれ形成された当接面Fa,Fbが接するようにフィルムを曲げた後、重ね合わせ部分を熱融着して製袋される。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものでない。
【0043】
各種性能の測定方法および評価方法を、以下に示す。
(1)フィルム外耳片の厚さ(μm)及び傷痕の深さ(μm)
ミクロトームでシール部の断面の切片を作製し、光学顕微鏡にて150倍にして写真を撮影し、同倍率に拡大したスケールにて、シール部近傍のフィルム外耳片の厚さと不貫通の傷痕(穴または切れ目)の深さとを、密封包装体の長軸方向にほぼ等間隔で10点測定した。測定値の平均値をフィルム外耳片の厚さC及び傷痕の深さBとした。
【0044】
(2)レトルトパンク率(%:加圧加熱殺菌後のシール部の破袋率)
自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP(登録商標)」)を使用し、次のようにして密封包装体を作製した。まず、フィルム幅92mm(比較例4のフィルム幅のみ108mm幅)のフィルムを筒状に製袋し、重ね合わせ部を16mm(外耳片幅8mm+内耳片幅8mm)に設定し、重ね合わせ部の中央にシール部の幅が0.5〜1.0mmになるよう加圧電極(正電極)をフィルムに押圧接触させながら高周波にて熱融着し、筒状フィルムに形成した。筒状フィルムの内部に魚肉ソーセージ用すり身を充填し、両端をアルミニウム鋼線でクリップ(封止)し、240本/分の充填条件で、結紮間の長さを195mmに設定して5000本の包装体を作製した。得られた5000本の包装体について、加熱缶内ゲージ圧が0.20MPaの条件下で、120℃20分のレトルト処理を行い、得られた最終包装体において、シール部が破袋した本数を数えて、次式によりレトルトパンク率(破袋率)を算出し、以下の基準に従って評価した。
レトルトパンク率(%)=(破袋本数/5000本)×100
【表1】

【0045】
(3)シール部の幅のばらつき(mm)
レトルト処理後の500本[破袋(パンク)が発生しなかったものから無作為にサンプリング]の包装体の長軸方向の中央部(クリップ間の中間位置)のシール部の幅を、ノギスで測定(単位:mm、小数点第2位を四捨五入)した。測定した包装体500本(測定1回/1本)の最大幅と最小幅との差を、シール部の幅のばらつき(mm)とし、以下の基準に従って評価した。
【表2】

【0046】
(4)ピンホール発生率(%:シール部のピンホール発生率)
レトルト処理後の500本[破袋(パンク)が発生しなかったものから無作為にサンプリング]の包装体について、絶縁抵抗を測定した。絶縁抵抗の測定は、メガテスター(商品名:絶縁抵抗計 BN−500UB (松下電器産業社製)、電圧:500V)および飽和食塩水を用いて、以下の手順で行った。まず、レトルト処理後の包装体の胴体中央部のシール部に触れないように、メガテスターのマイナス電極を飽和食塩水に漬けた。次に、マイナス電極を差した包装体を、クリップ部から胴体中央部まで浸漬させた。その後、包装体を反転させて、反対側のクリップ部から胴体中央部まで浸漬させ、このときのメガテスターの抵抗値(ピンホールが存在すれば、絶縁抵抗が500KΩ未満となる)を測定し、500KΩ未満を計測した本数を数えて、次式によりピンホール発生率を算出し、以下の基準に従って評価した。
ピンホール発生率(%)=(シール部ピンホールの発生本数/500本)×100
【表3】

【0047】
(5)搬送・取り扱い適性(%:過酷処理後のシール部のピンホール発生率)
レトルト処理後の500本[破袋(パンク)が発生しなかったものから無作為にサンプリング]の包装体について、23℃50%RHの恒温室内で24時間保管後、ダンボールで内張りした1辺1mの六角形の断面の回転ドラムに入れ、100回転させて取り出し、上記(4)ピンホール発生率の評価方法で評価した。
ピンホール発生率(%)=(シール部ピンホールの発生本数/500本)×100
【表4】

【0048】
(6)使用時非開封品の発生率(%)
レトルト処理後の500本[破袋(パンク)が発生しなかったものから無作為にサンプリング]の包装体について、胴体中央部のフィルム外耳片を指でつまんで、引っ張って開封し、開封出来なかった本数を数えて、次式により非開封品の発生率を算出し、以下の基準に従って評価した。
使用時非開封品の発生率(%)=(開封出来なかった本数/500本)×100
【表5】

【0049】
(7)湾曲製品の発生率(%)
レトルト処理後の500本[破袋(パンク)が発生しなかったものから無作為にサンプリング]の包装体について、包装体を方眼紙の線上に並べ、包装体の両端部と胴体中央部の隙間が5mm以上あるものの本数を数えて、次式により湾曲製品の発生率を算出し、以下の基準に従って評価した。
湾曲製品の発生率(%)=(隙間が5mm以上の本数/500)×100
【表6】

【0050】
(8)保存性
レトルト処理後の500本[破袋(パンク)が発生しなかったものから無作為にサンプリング]の包装体を37℃、90%RHの温度湿度条件下で1ケ月間保存し、包装体の膨張の発生の有無を、目視により、以下の基準にしたがって評価した。
【表7】

【0051】
[実施例1]
実施例1で使用する塩化ビニリデン系樹脂フィルムを以下の手順で作製した。サラン(登録商標)ロールフィルム[商品名;旭化成ケミカルズ(株)製、塩化ビニリデン系樹脂フィルム、幅600mm、厚さ0.02mm、巻長1500m、シングルプライフィルム]を2本準備した。2本のサランロールフィルムについて、フィルムの片側縁部より78mm、170mm、262mm、354mm、446mmの位置をそれぞれの中心とする5ヶ所に、図2(ii)と同様の、フィルム層を貫通する5個(3個−2個−3個−2個−・・・の千鳥状に配置)の切れ目を、フィルムの長軸方向に線状にいれた。図2(ii)に示す長さa、間隔b、間隔c及び幅dは、それぞれ0.7mm、0.5mm、1mm及び0.02mmであった。切れ目の面積は0.01mmであった。
【0052】
次いで、貫通した5列の切れ目群を設けた2本の厚さ0.02mmのサランロールフィルムを、それぞれのフィルムでそれぞれの切れ目群を塞いで図3(iii)に示すように切れ目が不貫通になるようにフィルム面を組み替えて、ドライラミネーターで接着剤を使って貼り合わせた。これをロール状に巻き取り、合計フィルム厚さが0.04mmの、10列の不貫通の切れ目群が設けられた塩化ビニリデン系樹脂フィルムに加工した。次いでスリッターで、5行の92mm幅製品の全てが、92mm幅のフィルムの両側縁部からそれぞれ8mmのところに、不貫通の切れ目群が配置(両側で2列)されるように、原反の両端部(トリム屑)を取り除いてスリットして、幅92mm、厚さ0.04mm、長さ1200mの5巻の塩化ビニリデン系樹脂フィルムを得た。
【0053】
このうちの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)を使用し、次のようにして密封包装体を作製した。まず、シール面の両面に不貫通の切れ目群がくるようにセットして、フィルムを筒状に製袋し、重ね合わせ部分を16mm(外耳片幅8mm+内耳片幅8mm)に設定し、重ね合わせ部分の中央に加圧電極(正電極)をあてて、フィルムに押圧接触させながら高周波にて熱融着し、筒状フィルムに形成した。筒状フィルムの内部に魚肉ソーセージ用すり身を充填し、両端をアルミニゥム鋼線でクリップ(封止)し、240本/分の充填条件で、結紮クリップ間の長さを195mmに設定して、実施例1の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体)を得た。表8に各種性能評価の評価結果を示す。
【0054】
[実施例2]
1本のサランロールフィルムには切れ目を設けないこと以外は、実施例1と同様に処理して92mm幅のフィルム5巻を得た。このうちの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)で、フィルム外耳片側の当接面(シール面)に不貫通の切れ目群がくるようにセットして、実施例2の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体)を得た。表8に各種性能評価の評価結果を示す。
【0055】
[実施例3]
実施例2で得た92mm幅のフィルムの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)で、フィルム内耳片側の当接面(シール面)に不貫通の切れ目群がくるようにセットして、実施例3の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体)を得た。表8に各種性能評価の評価結果を示す。
【0056】
[実施例4]
厚さ0.02mmのサランロールフィルム2本使用する代わりに、厚さ0.012mmのサランロールフィルム及び厚さ0.028mmのサランロールフィルムを使用し、厚さ0.028mmのサランロールフィルムには切れ目を設けないこと以外は、実施例2と同様に処理して92mm幅のフィルム5巻を得た。このうちの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)で、フィルム外耳片側の当接面(シール面)に不貫通の傷痕群がくるようにセットして、実施例4の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体)を得た。表8に各種性能評価の評価結果を示す。
【0057】
[実施例5]
厚さ0.012mmのサランロールフィルムには切れ目を設けないこと以外は、実施例4と同様に処理して92mm幅のフィルム5巻を得た。このうちの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)で、フィルム外耳片側の当接面(シール面)に不貫通の傷痕群がくるようにセットして、実施例5の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体)を得た。表8に各種性能評価の評価結果を示す。
【0058】
[実施例6]
厚さ0.02mmのサランロールフィルム2本使用する代わりに、厚さ0.008mmのサランロールフィルム及び厚さ0.032mmのサランロールフィルムを使用し、厚さ0.032mmのサランロールフィルムには切れ目を設けないこと以外は、実施例2と同様に処理して92mm幅のフィルム5巻を得た。このうちの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)で、フィルム外耳片側の当接面(シール面)に不貫通の傷痕群がくるようにセットして、実施例6の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体)を得た。表8に各種性能評価の評価結果を示す。
【0059】
[実施例7]
厚さ0.02mmのサランロールフィルム2本使用する代わりに、厚さ0.024mmのサランロールフィルム及び厚さ0.016mmのサランロールフィルムを使用し、厚さ0.016mmのサランロールフィルムには切れ目を設けないこと以外は、実施例2と同様に処理して92mm幅のフィルム5巻を得た。このうちの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)で、フィルム外耳片側の当接面(シール面)に不貫通の傷痕群がくるようにセットして、実施例7の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体)を得た。表8に各種性能評価の評価結果を示す。
【0060】
[比較例1]
実施例2で得た92mm幅のフィルムの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)で、フィルム外耳片側の非シール面に不貫通の傷痕群がくるようにセットして、比較例1の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体)を得た。表9に各種性能評価の評価結果を示す。
【0061】
[比較例2]
実施例2で得た92mm幅のフィルムの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)で、フィルム内耳片側の非シール面に不貫通の切れ目群がくるようにセットして、比較例2の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体)を得た。表9に各種性能評価の評価結果を示す。
【0062】
[比較例3]
比較例3で使用する塩化ビニリデン系樹脂フィルムを以下の手順で作成した。サランロールフィルム[商品名;旭化成ケミカルズ(株)製、塩化ビニリデン系樹脂フィルム、幅600mm、厚さ0.04mm(厚さ0.02mmのダブルプライフィルム)、巻長1500m]を準備し、片側縁部より72mm、164mm、256mm、348mm、440mmの位置をそれぞれの中心とする5ヶ所に、フィルム層を貫通する実施例1と同様の5個の切れ目(3個−2個−3個−2個−・・・の千鳥状に配置)を入れて、5行の92mm幅製品の全てが、92mmm幅のフィルムの片側縁部から2mmのところに、フィルム層を貫通した切れ目群が配置(一方側のみで1列)されるように、原反の両側縁部(トリム屑)を取り除いてスリットして、幅92mm、厚さ0.04mm、長さ1200mの5巻の塩化ビニリデン系樹脂フィルムを得た。
【0063】
このうちの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)を使用し、次のようにして密封包装体を作製した。まず、フィルム層を貫通した切れ目群が、包装体の外側の重ね合わせ部分(フィルム外耳片)になるようにセットして、フィルムを筒状に製袋し、重ね合わせ部分を16mm(外耳片幅8mm+内耳片幅8mm)に設定し、重ね合わせ部分の中央に加圧電極(正電極)をあてて、フィルムに押圧接触させながら高周波にて熱融着し、筒状フィルムに形成した。筒状フィルムの内部に魚肉ソーセージ用すり身を充填し、両端をアルミニゥム鋼線でクリップ(封止)し、240本/分の充填条件で、結紮クリップ間の長さを195mmに設定して、比較例3の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体:特開昭63−12471号公報の再現品)を得た(図6参照)。表9に各種性能評価の評価結果を示す。
【0064】
[比較例4]
比較例4で使用する塩化ビニリデン系樹脂フィルムを以下の手順で作成した。サランロールフィルム[商品名;旭化成ケミカルズ(株)製、塩化ビニリデン系樹脂フィルム、幅600mm、厚さ0.04mm(厚さ0.02mmのダブルプライフィルム)、巻長1500m]を準備し、片側端部より44mm、152mm、260mm、368mm、476mmの位置をそれぞれの中心とする5ヶ所に、フィルム層を貫通する実施例1と同様の5個の切れ目(3個−2個−3個−2個−・・・の千鳥状に配置)を入れて、5行の108mm幅製品の全てが、108mm幅のフィルムの片側縁部から14mmのところに、フィルム層を貫通した切れ目群が配置(一方側のみで1列)されるように、原反の両側縁部(トリム屑)を取り除いてスリットして、幅108mm、厚さ0.04mm、長さ1200mの5巻の塩化ビニリデン系樹脂フィルムを得た。
【0065】
このうちの1巻を用いて、自動充填包装機(旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP」)で、図7に示すように、フィルム層を貫通した切れ目群を有する側のフィルム縁部を折り返して、包装体の外側の重ね合わせ部分(フィルム外耳片)が2枚になるようにセットして、フィルムを筒状に製袋し、3枚の重ね合わせ部分を16mm(外耳片幅8mm+内耳片幅8mm)に設定し、重ね合わせ部分の中央に加圧電極(正電極)をあてて、フィルムに押圧接触させながら高周波にて熱融着し、筒状フィルムに形成して筒状フィルムの内部に魚肉ソーセージ用すり身を充填し、両端をアルミニゥム鋼線でクリップ(封止)し、240本/分の充填条件で、結紮クリップ間の長さを195mmに設定して、比較例4の筒状密封包装体(魚肉ソーセージ包装体:特許第2838225号公報の再現品)を得た(図7参照)。表9に各種性能評価の評価結果を示す。
【0066】
【表8】

【0067】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の易開封性筒状密封包装体は、消費者の使用時の易開封性を満足させるとともに、その製造過程における難開封性から包装体の破袋やピンホールを大幅に抑制でき、また、製品の長期保存性にも優れる。さらに、製品の湾曲も少ないため見栄えがよく、食品その他の各種包装用途において、広く有効に利用可能である。特に、レトルト処理等の高温加圧殺菌処理が必要とされる用途において、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…内容物、2…筒状フィルム、3…シール部、6…フィルム外耳片、7…フィルム内耳片、8…傷痕群、8a…穴または切れ目、9…結紮部材(封止部材)、10…密封包装体、A…シール部の幅、B…穴または切れ目の深さ、C…フィルム耳片の厚さ、D…樹脂溜まり、Fa,Fb…当接面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の塩化ビニリデン系樹脂フィルムの両側縁部を重ね合わせ、この重ね合わせ部分を当該フィルムの長手方向にわたり所定の幅で熱融着してシール部を形成してなる筒状フィルムと、
内容物が充填された前記筒状フィルムの両端部を封止する封止部材と、
前記塩化ビニリデン系樹脂フィルムの一方の側縁部であって前記筒状フィルムの外側に帯状にはみ出したフィルム外耳片と、
を備えた密封包装体において、
前記重ね合わせ部分をなす前記塩化ビニリデン系樹脂フィルムの2つの当接面の少なくとも一方は、複数の不貫通の穴または切れ目が一列に並ぶように形成されてなる傷痕群を複数列有し、
前記傷痕群は、前記シール部の幅を超えて前記シール部を横切るように設けられていることを特徴とする易開封性密封包装体。
【請求項2】
前記不貫通の穴または切れ目の深さは、前記フィルム外耳片の厚さの20%〜70%であることを特徴とする請求項1に記載の密封包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−116408(P2011−116408A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275560(P2009−275560)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】