説明

映像表示装置

【課題】バックライトを複数に分割して、各領域に対応する映像信号に応じてバックライトの輝度を制御するときに、低輝度部分におけるノイズが目立たなくなるようにする。
【解決手段】エリアアクティブ制御部2は、映像信号を複数領域に分割して領域ごとの第1の特徴量を出力する。LED制御部3は、領域毎の第1の特徴量に応じて、LEDの駆動電流の合計値が所定の許容電流値以下である範囲で、領域ごとの輝度を定め、さらに、領域ごとの輝度と、所定の閾値とを比較し、領域ごとの輝度が閾値より低い領域についてのみ、領域ごとの輝度を低下させ、領域ごとの輝度が閾値より低い領域については低下させた輝度を用いて、領域ごとの輝度が閾値より低くない領域については低下させない輝度を用いて、分割した領域ごとにLEDの発光を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置、より詳細には、バックライトを領域分割して領域ごとに輝度を制御する映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像表示装置においては、表示パネルの照明用としてLEDバックライトを用いたものが普及している。LEDバックライトの場合、ローカルデミングが可能であるという利点をもっている。ローカルデミングは、バックライトを複数の領域に分割し、それぞれの領域の映像信号に応じて領域毎にLEDの発光を制御する。例えば、画面内の暗い部分はLEDの発光を抑え、画面内の明るい部分はLEDを強く発光させる、といった制御が可能になる。これにより、バックライトの消費電力を低減するとともに、表示画面のコントラストを向上させることができる。
【0003】
例えば従来のローカルデミングの制御例を図15に示す。ここではバックライトを8つの領域に分割し、各領域に対応する映像信号の最大階調値に応じてLEDの輝度を制御するものとする。各領域の映像信号の最大階調値が図15(A)に示す状態であったものとする。A〜Hは領域No.を示し、その下の数字が各領域内の最大階調値である。
例えば、ローカルデミングによる各領域のLEDの輝度は図15(B)に示すようになる。つまり、各領域の映像信号に応じて、領域ごとにLEDの輝度を制御する。ここでは、映像信号の最大階調値が低い領域では映像が比較的暗いため、LEDの輝度を低下させて黒浮きを軽減させコントラストを向上させるとともに、LEDの低消費電力化を図るようにしている。この場合、それぞれの領域における最大輝度は、バックライトの全てのLEDをデューティ100%で点灯したときの輝度(例えば450cd/m2)に制限される。
【0004】
入力映像信号に応じてバックライトの点灯制御を行う技術に関し、例えば、特許文献1には、発光期間を広範囲に亘って可変する場合にも、フリッカと動画ボケを低減することを目的としたピーク輝度レベルの制御手法が開示されている。この制御手法では、フィールド期間内に配置される点灯期間の総和である総点灯期間長の制御により、ピーク輝度レベルが可変される表示パネルにおける点灯期間を設定する際、画面全体の平均輝度レベルに基づいて発光モードを判別する。この後、入力画像データに応じて設定されるピーク輝度レベルが得られるように、判別された発光モードについて規定された設定条件に従って、1フィールド期間内に配置される点灯期間の数、配置位置及び期間長を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−192753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、バックライトを複数の領域に分割し、各領域に対応する映像信号に応じてLEDの輝度を制御する従来のローカルデミング制御においては、それぞれの領域における最大輝度は、バックライトの全てのLEDをデューティ100%で点灯したときの輝度に制限され、その制限の中で映像信号に応じたLEDの輝度制御が行われる。この場合、映像信号が低階調の領域においては、LEDの発光によって低階調の成分であるノイズの成分が輝度が強調されると、ノイズが目立つようになり品位低下が生じる。ユーザとしては、高輝度部分の輝き感に注目するのであるから、ノイズを目立たせることなく、明るい映像領域を特異的に明るくしてさらに輝き感を増す映像処理の工夫が求められている。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、バックライトを複数に分割して、各領域に対応する映像信号に応じてバックライトの輝度を制御するときに、低輝度部分におけるノイズが目立たなくなるようにした映像表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、映像信号を表示する表示パネルと、該表示パネルを照明する光源としてLEDを使用したバックライトと、該バックライトの発光輝度を制御する制御部とを有し、該制御部は、前記バックライトを複数の領域に分割し、分割した領域ごとにLEDの発光を制御する映像表示装置であって、前記制御部は、前記分割した各領域に対応する表示領域の映像の第1の特徴量に応じて、LEDの駆動電流の合計値が所定の許容電流値以下である範囲で、領域ごとの輝度を定め、さらに、前記領域ごとの輝度と、所定の閾値とを比較し、前記領域ごとの輝度が前記閾値より低い領域についてのみ、前記領域ごとの輝度を低下させ、前記領域ごとの輝度が閾値より低い領域については低下させた輝度を用いて、前記領域ごとの輝度が閾値より低くない領域については低下させない輝度を用いて、分割した領域ごとにLEDの発光を制御することを特徴としたものである。
【0009】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記制御部は、前記閾値を固定値として設定することを特徴としたものである。
【0010】
第3の技術手段は、第1の技術手段において、前記制御部は、映像の第2の特徴量に応じて前記閾値を設定すること特徴としたものである。
【0011】
第4の技術手段は、第1の技術手段において、前記制御部は、前記輝度を低下させる領域数が所定の数となるように、前記閾値を設定することを特徴としたものである。
【0012】
第5の技術手段は、第1〜4のいずれか1の技術手段において、前記第1の特徴量は、前記分割した領域内の映像信号の最大階調値であることを特徴としたものである。
【0013】
第6の技術手段は、第3の技術手段において、前記第2の特徴量は、映像のAPLであることを特徴としたものである。
【0014】
第7の技術手段は、第3の技術手段において、前記第2の特徴量は、映像のフレームごとの最大階調値であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バックライトを複数に分割して、各領域に対応する映像信号に応じてバックライトの輝度を制御するときに、低輝度部分におけるノイズが目立たなくなるようにした映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る映像表示装置の要部の構成例を説明する図である。
【図2】映像表示装置のLED制御部によるLED輝度の設定例を説明するための図である。
【図3】電力リミット制御によるローカルデミングの一例を説明する図である。
【図4】電力リミット制御によるローカルデミングの制御例を説明する図である。
【図5】映像表示装置のエリアアクティブ制御部の具体的処理例を説明する図である。
【図6】図5に示す領域を領域No順に並べた状態を示す図である。
【図7】閾値Thよりも小さい最大階調値をもつ領域のLEDの輝度を低下させて、LEDの輝度値が小さい順に並べ換えた状態を示す図である。
【図8】各領域の最大階調値を入力とし、各領域のLEDの輝度を出力とする階調カーブの一例を示す図である。
【図9】APLが50%で、コントラストが比較的小さい映像の例を示す図である。
【図10】APLが50%で、コントラストが比較的大きい映像の例を示す図である。
【図11】APLが50%で、映像全体のコントラスが極端に大きい映像の例を示す図である。
【図12】映像の状態にかかわらず閾値を一定値に固定する処理例を説明する図である。
【図13】映像の状態にかかわらず閾値を一定値に固定する他の処理例を説明する図である。
【図14】映像の状態にかかわらず閾値を一定値に固定する更に他の処理例を説明する図である。
【図15】従来のローカルデミングの制御例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に係る映像表示装置の要部の構成例を説明する図である。映像表示装置は、入力映像信号に画像処理を行って映像表示する構成を有するもので、テレビジョン装置等に適用することができる。
画像処理部1は、放送信号から分離した映像信号や外部機器から入力した映像信号を入力し、従来と同様の映像信号処理を行う。例えば、IP変換、ノイズリダクション、スケーリング処理、γ調整、ホワイトバランス調整、などを適宜実行する。また、ユーザ設定値に基づいてコントラストや色味等を調整して出力する。
【0018】
エリアアクティブ制御部2は、画像処理部1から出力された映像信号に従って、映像信号を所定領域に分割し、各分割領域ごとに映像信号の最大階調値を抽出する。この領域毎の最大階調値をLED制御部3に対してLEDデータとして出力する。またエリアアクティブ制御部2では、液晶の各画素の階調を示すデータを液晶制御部6に対して液晶データとして出力する。このとき液晶データとLEDデータとは、最終出力であるLEDバックライト5と液晶パネル7で同期が維持されるように出力される。
【0019】
なお、LEDデータは、分割領域ごとの映像信号の最大階調値としたが、最大階調値ではなく、例えば分割領域内の映像信号の階調平均値、などの他の所定の統計値であってもよい。LEDデータとしては領域内の最大階調値を用いるのが一般的であり、以下では、分割領域内の最大階調値を用いるものとして説明する。
【0020】
LED制御部3は、エリアアクティブ制御部2から出力されたLEDデータに対し、電力リミット制御を行い、LEDバックライト5の各LEDの点灯を制御する制御値を決定する。電力リミット制御は、表示画面内で輝度がさらに必要な領域に対してバックライトの輝度をより高め、コントラストを向上させるようにするもので、バックライトのLEDを全点灯したときの駆動電流の総量を上限とし、各領域で点灯するLEDの駆動電流の総量が、上記の全点灯時の駆動電流の総量を超えない範囲でLEDの発光輝度を増加させるものである。
【0021】
LEDバックライト5のLEDの輝度は、PWM(Pulse Width Modulation)制御または電流制御、もしくはこれらの組み合わせによって制御することができる。いずれの場合にも所望の輝度でLEDを発光させるように制御が行われる。以下の例ではPWMによるデューティ制御を例として説明するものとする。LED制御部3から出力される制御値は、エリアアクティブ制御部2の分割領域ごとにLEDの発光制御を行うもので、これによりローカルデミングを実現する。本発明の制御部は、エリアアクティブ制御部2および液晶制御部6に該当する。
LEDドライバ4は、LED制御部3から出力されたLEDデータに従って、LEDバックライト5の各LEDの発光制御を行う。
【0022】
図2は、LED制御部によるLED輝度の設定例を説明するための図である。
映像表示装置のLED制御部3は、図2のような関係でLEDバックライト5の輝度を決定する。横軸は、バックライトの点灯率(ウィンドウサイズ)である。点灯率はバックライト全体の平均点灯率を定めるものであるが、全点灯領域(ウィンドウ領域)と消灯領域との比として表すことができる。点灯領域がない状態では点灯率はゼロであり、点灯領域のウィンドウが大きくなるに従って点灯率は増大し、全点灯では点灯率は100%になる。また、縦軸は分割領域のLEDの輝度を示すもので、複数に分割した領域のうち、最大輝度を取り得る領域のLEDの輝度を示す。つまり画面内のウィンドウを含む領域の輝度が示される。
【0023】
電力リミット制御により、LEDを点灯するための電力(駆動電流値の総量)は一定とする。従って、点灯率が大きくなるほど、一つの分割領域に投入できる電力は小さくなる。
点灯率と分割領域の最大輝度との関係の一例は図2のようになる。点灯率(ウィンドウサイズ)が小さい範囲では、その小さいウィンドウに電力を集中できるため、各LEDをデューティ100%の最高輝度まで点灯可能である。しかしながら、点灯率が小さく、1つの分割領域内のLEDを全て点灯することができない領域(P1〜P2)では、点灯LEDをデューティ100%にしたとしても、領域全体としての輝度は低くなる。この場合、点灯率=0(ウィンドウサイズ=0)のときの領域の輝度が最も低く、点灯率が大きくなるに従って領域内のウィンドウサイズが大きくなっていくため、領域の輝度も上がる。
従って、P1〜P2に至る輝度のカーブの形状は、映像の分割数(分割領域の大きさ)によっても変化することがわかる。
【0024】
点灯率が0の状態から点灯率が上がっていき、1つの領域のLEDが全て点灯できる点灯率になると(P2)、その領域の輝度は最大となる。このときのLEDのデューティは100%である。電力リミット制御により小さい領域に電力を投入することができるからである。
さらに点P2より点灯率が高くなっていくと、点灯すべきLEDが増えていくため、電力リミット制御によって各LEDに投入できる電力が低減し、従って領域が取りうる最大輝度も徐々に低下していく。点P3は画面全体が全点灯された状態であり、この場合、この例では各LEDのデューティは例えば36.5%まで低下する。
【0025】
電力リミット制御は、表示画面内で輝度がさらに必要な領域に対してバックライトの輝度をより高め、コントラストを向上させるようにするものである。ここでは、バックライトのLEDを全点灯したときの駆動電流の総量を上限とし、各領域で点灯するLEDの駆動電流の総量が、上記の全点灯時の駆動電流の総量を超えない範囲でLEDの発光輝度を一定倍率で増加させる。
【0026】
つまり、図4に示すように、図15(B)で領域毎に定めたLEDの発光輝度に一定倍率(a倍)を乗算して輝度を高くする。このときの条件は、各領域の駆動電流値の総量<LEDの全点灯時の総駆動電流値となる。この場合、1つの領域では、全点灯時の輝度(例えば450cd/m2)を超えることを許容し、電力に余裕のある範囲でより多くの駆動電流をLEDに投入して、より明るくするものである。このような制御を行うことで、実際に2〜3倍のピーク輝度を表現することが可能である。
【0027】
図3は、LEDの輝度デューティを変化させたときの液晶パネル上の輝度の状態を示す図である。横軸は映像信号の階調、縦軸は液晶パネル上の輝度値である。
例えばLEDバックライトのLEDを36.5%のデューティで制御したとき、映像信号の階調表現はT1のようになる。このとき液晶パネル上の輝度値=(階調値)2.2である(つまりガンマ=2.2)。ここで、LEDを100%のデューティで制御したとき、階調表現はT2のようになる。つまり、LEDの輝度が36.5%から100%に約2.7倍に増大しているため、液晶パネル上の輝度値も約2.7倍に増大する。このとき、高輝度の輝き感を増したい領域Hのみならず、輝度アップによりノイズが目立ちやすい低階調領域Lまで約2.7倍に輝度が増大してしまう。従って、映像のコントラストは向上するものの低階調領域の黒浮き等の輝度増段によるデメリットも発生してしまう。
【0028】
そこで本発明に係る実施形態では、電力リミット制御によりLEDの発光デューティを制御して、電力許容範囲内で一律にデューティをアップした状態から、さらに画面輝度を上げたくない低階調領域のLEDの輝度を低減させる。
【0029】
本発明に係るエリアアクティブ制御部2およびLED制御部3の具体的処理例を説明する。図5は、表示画面を8分割した例を示している。各分割領域No.をA〜Hとし、各領域ごとの映像の最大階調値を示す。最大階調値は本発明の第1の特徴量に相当する。ここで前述したように、第1の特徴量は、領域ごとの最大階調値とするが、この他、領域内の階調値の平均等の他の統計値を用いてもよい。
この例では、8つの分割領域における映像の最大階調値は、64、224、160、32、128、192、192、96であり、最大階調値の平均は、256階調に対して53%の値となる。つまり、この場合、図2のグラフでは点灯率(ウィンドウサイズ)53%に相当する。
【0030】
図2において、点灯率53%(P4)のときに、最大輝度を取りうる領域のバックライトの輝度に相当するLEDのデューティが55%であったものとする。つまりこの画面における点灯率53%のときに、電力リミット制御により55%デューティ相当までバックライトを上げることができる。これは全点灯(点灯率100%)のときのデューティ38.5%の約1.5倍に相当する。
つまり、LEDを全点灯したときのLEDのデューティ38.5%に対して、点灯率53%のときには、38.5%の1.5倍の輝度になるように点灯LEDに電力を投入することができる。
【0031】
図6は、図5に示す領域を領域No順に並べた状態を示す図である。横軸は領域No.で、縦軸は各領域のLEDの輝度値である。LEDの輝度値は例えば0−255の階調値(LED階調)で表すことができる。
そして、まず、従来のローカルデミング制御と同様の手法にて領域ごとのLEDの輝度値を定める。この輝度を第1の輝度とする。第1の輝度は、映像の最大階調値が小さい領域では相対的に小さく定められ、映像の最大階調値が大きい領域では相対的に大きくなるように定められる(図15(B)と同様)。これにより、従来と同様に、低階調の黒浮きを避け、コントラストを向上させるとともに低消費電力化を図り、高階調領域の輝度を上げて輝き感を増すようにしている。このときの各領域のLEDの輝度は、LEDを全点灯したときの画面輝度(例えば450cd/m)を超えないように設定される。
【0032】
そして、上記のように電力リミット制御により計算される輝度アップ分(ここでは1.5倍)を各領域のLEDの輝度値に乗算する。ここでは、全ての領域に対して一律に輝度アップ分の値を乗算する。LED全点灯時のLEDのデューティは36.5%であるが、点灯率53%の場合には、55%のデューティまでLEDの輝度が上昇する。第1の輝度に対して1.5倍を乗算した状態が、図5に示す各領域のヒストグラムデータの頂点位置に相当する。この輝度値を第2の輝度(V2)とする。
【0033】
そして、本発明に係る実施形態の特徴として、各領域の第2の輝度(V2)と所定の閾値(LED階調値)Thとを比較し、第2の輝度(V2)が閾値Thより小さい領域については、第2の輝度(V2)を更に所定量低減させる。例えば、閾値Thを80階調とするとき、80階調より小さい第2の輝度(V2)の領域のLEDの輝度を低減させる。低減値は、例えば、1/1.5=0.68倍とする。つまり、初期の輝度値(第1の輝度)に対して1.5倍したもの(第2の輝度)を再度0.68倍して第3の輝度(V3)とする。これは、結果的に元のLEDの輝度値(第1の輝度)に戻すことになる。
LEDバックライトの制御においては、最大階調値が閾値Th以上の領域では、第2の輝度(V2)を使用してLEDを制御する。また、最大階調値が閾値Thより小さい領域では、第3の輝度(V3)を使用してLEDを制御する。これにより、閾値Thより小さい最大輝度値をもつ低階調の映像領域では、電力リミット制御によりLEDに電力を投入する場合でも、LEDの輝度を過度に上げることなく、ノイズを目立たないようにすることができるし、黒浮き等の悪化も解消される。
【0034】
このとき、第3の輝度(V3)を第1の輝度に一致させるようにすれば、電力リミットによる輝度制御の際にも、閾値より小さい最大階調値をもつ領域については、第1の輝度に戻すことができる。これは例えば、非常にノイズが大きい映像や、逆に映像の品位が高いために、ノイズ量の若干の増加も問題となる場合に、有効な処置となる。
【0035】
また、上記のように、電力リミット制御によってLEDの第1の輝度を一律に第2の輝度に増大させ、第2の輝度を閾値Thと比較して閾値Thより小さい最大階調値をもつ領域のLEDの輝度下げる場合、第1の輝度に一致させることなく、第1の輝度に近づけるようにしたものでもよい。例えば、第3の輝度を第1の輝度の所定範囲内に入るように設定する。従って第1の輝度と第3の輝度とは一致することなく、近い値となる。
【0036】
例えば上記の例では、点灯率53%のときに第1の輝度から第2の輝度への増加は、2.7倍程度になる。一方、映像中のノイズは、輝度が3dB(1.4倍)アップすると視聴者に認識できるようになり、6dB(2倍)アップするとノイズが目立ってくる、と言われている。
【0037】
そこで、2.7倍の輝度アップの場合にもノイズが目立たないようにするためには、輝度を元の輝度(第1の輝度)の2倍まで下げることが考えられる。たとえば、電力リミットの制御により第1の輝度から第2の輝度への増加率が2.7倍になった場合、所定の閾値より小さい最大階調値を有する領域については、第2の輝度を0.74倍して第3の輝度とする。これにより第3の輝度は、第1の輝度の2倍の値となる。第1の輝度から第2の輝度への増加率が2倍以下の場合には、そのままの輝度を維持し、さらに低輝度への輝度の低下は行わない。また、ノイズを更に抑えて、低階調領域の輝度アップを3dBに抑えるのであれば、第1の輝度から第2の輝度への増加が2.7倍だった場合、第2の輝度を0.52倍すれば、第3の輝度は第1の輝度の1.4倍(3dB)程度となる。このように第3の輝度を第1の輝度の所定範囲内に設定することで、ノイズを抑えて品位の高い映像とすることができる。
【0038】
このように、本発明に係る実施形態では、映像の分割領域の最大階調値(第1の特徴量)に基づいてコントラストの向上、省電力の低下を図るために低階調のLEDの輝度を低下させた第1の輝度に対して、電力リミット制御によってLEDに電力を投入して第2の輝度に増大させ、第2の輝度を閾値Thと比較して閾値より小さい最大階調値をもつ領域のLEDの輝度を低下させ第3の輝度とする。このときに、第3の輝度を第1の輝度に一致させることで、第1から第2の輝度への輝度アップによるノイズ増大を解消することができる。
また、第3の輝度を第1の輝度まで低下させることなく、第1の輝度の所定範囲、例えば、第1の輝度の2倍程度まで低下させるものであっても、ノイズを目立たなくする効果を得ることができる。さらに、第3の輝度を第1の輝度より低い輝度まで低下させるものであってもよい。この場合、元の映像のノイズをより目立たなくすることができる。
【0039】
さらに、第2の輝度を低下させて第3の輝度とする際、閾値Thより小さい最大階調値を有する分割領域のうち、一定倍率で一律にLEDの輝度を低下させるのではなく、第2の輝度の値に応じてLEDの輝度の低下の倍率(あるいは低下量)を異ならせるようにしてもよい。例えば、閾値Thより小さい最大階調値をもつ領域のうち、第2の輝度が小さい領域程、LEDの輝度の低下倍率を上げ、もしくは低下量を大きくする。このとき、第2の輝度が小さい領域では、第1の輝度に一致させるか、もしくは第1の輝度近傍にまでLEDの輝度を低下させ、第2の輝度が相対的に大きい領域では、例えば第1の輝度の2倍程度まで、LEDの輝度を低下させるようにする。これにより、ノイズの発現を抑えつつ、電力リミットによる輝度アップの効果を得ることができる。
【0040】
また、閾値Thより最大階調値が小さい領域のうち、第2の特徴量(APLや映像の最大階調値)が小さいほど、第1の輝度に近づくようにLEDの輝度を低下させるようにしてもよい。例えば、APLが比較的高い映像では、閾値より最大輝度値が小さい領域では、LEDの輝度を第1の輝度まで戻すことなく、例えば第1の輝度の2倍程度の所定範囲まで戻すことによりノイズ低減効果を得ることができる。APLが小さい領域は、もともと階調値が低めであるため、第1の輝度まで戻してノイズを抑える。これにより、APLが高めの領域では、過度にLED輝度を抑えることなく映像表現を維持しつつノイズの目立ちを抑えることができる。第2の特徴量として映像の最大階調値を用いた場合も同様である。
【0041】
図6に示すように、閾値Thよりも小さい最大階調値をもつ領域のLEDの輝度を、上記の各手法のいずれかを採用して低下させる。そして、図7に示すように、得られたLEDの輝度値が小さい順に並べ換える。そして各領域の最大階調値を入力とし、各領域のLEDの輝度を出力とする階調カーブを作成する。
【0042】
図8は、得られた階調カーブの一例を示す図で、横軸は第2の輝度に相当するLED階調値(入力階調)、縦軸は第3の輝度に相当するLED階調値(出力階調)を示している。補正前とは、第2の輝度を第3の輝度に補正することなく出力させたときの階調カーブを示し、補正後とは、閾値に従って第2の輝度を第3の輝度に補正したときの階調カーブを示している。
【0043】
図8に示すように、補正後の階調カーブでは、所定の閾値より小さい低階調領域の場合に、電力リミットにより輝度アップしたLEDの輝度を再び低減させるような制御を行う。言い換えれば、所定の閾値より小さい低階調領域に限ってはLEDの輝度をアップさせることなく、元のLEDの輝度(第1の輝度)と同じレベルもしくは近傍のレベルに維持する。これにより所定の低階調領域に限ってLEDの輝度を過度に増大させることがなく、表示上のノイズの発現を抑えることができ、かつ、高輝度領域ではより輝き感を増した映像表現が可能となる。
【0044】
また、上記の閾値は、分割領域のうちの輝度を低減させる領域の数に応じて定めるものであってもよい。例えば、複数の分割領域のうち、最大階調値が低い領域から所定数だけ、第2の輝度を低減させて第3の輝度とするように閾値を設定することができる。例えば、8分割の領域のうち、2つの領域のみについて第3の輝度を設定する。これにより一定の数の低輝度領域について、LEDの輝度の増大を抑えてノイズが目立つことを抑えることができる。
【0045】
また、上記の閾値Thは映像の特徴量に応じて動的に変化させるものであってもよい。特徴量としては、映像のAPL(Average Picture Level)、もしくは最大階調値(ピーク値)等を用いることができる。これらの特徴量を本発明に係る第2の特徴量とする。
ここでLEDデータは、上述したように分割領域の映像信号の最大階調値であるのが一般的である。また、APLとは、映像信号の輝度の平均値であり、一般的に映像の特定領域の平均値ではなく映像全体の平均値である。APLは従って映像のフレーム毎に動的に変化する。
【0046】
例えば、閾値Thを映像のAPLに従って動的に変化させることができる。
図9は、APLが50%の映像の一例を示す図である。横軸は分割領域のNo.であり、縦軸は各領域のLEDの輝度値を示している。各領域のヒストグラムデータの頂点位置が、各領域の最大階調値(第1の特徴量)を示している。
一般に、映像のAPLと、分割領域の最大階調値との間にはある程度相関があるが、映像によっては大きく異なる。例えば、映像内の輝度の差が大きい箇所が多数ある場合には、すべての分割領域で、最大階調値がAPL値を上回る場合もある。
【0047】
図9は、コントラストが比較的小さい映像を示すものであり、映像全体が平板で輝度の明暗の差が小さい。例えば、部屋の中や霧の映像ではこのような状態の映像となる。この場合、APLと各領域の最大階調値との差は小さい。
APLは映像全体の輝度の平均値であるため、最大階調値がAPLより低い領域は、領域内で輝く部分が少なく、輝度を低下させるべき領域である。従ってNoA,Bの領域については、電力リミットにより輝度アップしたLEDの輝度を、再び低下させるような制御を行う。具体的には、映像のAPLより小さい最大階調値をもつ領域に対して、その領域の第2の輝度値が閾値より小さくなるように当該閾値を設定する。低減量は上記の各処理例のいずれかに従う。
【0048】
図10は、同じくAPLが50%で、コントラストが比較的大きい映像の例を示している。この例は、一般的によく存在する映像であり、APLと各領域の最大階調値との差は、上記図7の例よりも大きい。APLより最大階調値が小さい領域について、LEDの輝度を低下させるように閾値を設定した場合、領域No.A〜Cでは電力リミットにより輝度アップしたLEDの輝度を、再び低下させるような制御が行われる。
【0049】
図11は、同じくAPLが50%で、映像全体のコントラスが極端に大きい映像の例を示している。この例は、メリハリが大きい映像であり、例えば、格子越しに外を映したり、黒背景に白いものが多数配置されているような場合にこのような映像になる。この場合、すべての領域で、APLよりも最大階調値が上回る。
ここでは、全ての領域でその最大階調値がAPL以上であるため、電力リミットにより輝度アップしたLEDの輝度を、再び低減させるような制御はいずれの領域に対しても行わない。つまり、映像のAPLより大きい最大階調値をもつ領域に対しては、その領域の第2の輝度値が閾値以上になるように当該閾値を設定する。
このように、閾値ThをAPLに設定し、APLに応じて閾値を動的に変化させることにより、映像の状態に応じて適切なLEDの輝度制御を行うことができる。
【0050】
また、閾値Thは映像の状態にかかわらず一定値に固定しておくようにしてもよい。例えば図12〜図14では、図9〜図11の映像について、取りうる輝度の33%を固定値とし、その固定値より小さい最大階調値をもつ領域について、LEDの輝度を低下させるように閾値を設定する。つまり映像が取り得る輝度の33%より小さい最大階調値をもつ領域に対して、その領域の第2の輝度値が閾値より小さくなるように当該閾値を設定する。
【0051】
上述したように、電力リミットによってLEDの輝度を上げるときに、ノイズが問題となるのは映像信号の低輝度領域である。例えば、映像信号全体を高、中、低輝度に分けた場合、ほぼ33%以下が低輝度の映像となる。この値を最大階調値にもつ領域に対して、第2の輝度を低下させて第3の輝度することにより、映像全体の状態に関わりなく、低輝度の最大階調値をもつ領域についてのみ、電力リミットにより輝度アップしたLEDの輝度を、再び低下させるような制御を行うことができる。
【0052】
図12の例では、全ての領域の最大階調値が固定値33%以上であるため、電力リミットにより輝度アップしたLEDの輝度を、再び低減させるような制御はいずれの領域に対しても行われない。また、図13の例では、領域A、Bについて電力リミットにより輝度アップしたLEDの輝度を、再び低減させる制御が行われる。
【0053】
さらに図14の例では、図12と同様に全ての領域の最大階調値が固定値33%以上であるため、電力リミットにより輝度アップしたLEDの輝度を、再び低減させるような制御はいずれの領域に対しても行われない。
このようにノイズの発生が目立つ低階調領域を映像信号の固定値によって判別し、映像信号の状態にかかわらずノイズの目立つ階調領域の輝度アップを行わないようにすることで、中、高階調部分の輝き感を常に増すことができる。
【符号の説明】
【0054】
1…画像処理部、2…エリアアクティブ制御部、3…LED制御部、4…LEDドライバ、5…LEDバックライト、6…液晶制御部、7…液晶パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号を表示する表示パネルと、該表示パネルを照明する光源としてLEDを使用したバックライトと、該バックライトの発光輝度を制御する制御部とを有し、該制御部は、前記バックライトを複数の領域に分割し、分割した領域ごとにLEDの発光を制御する映像表示装置であって、
前記制御部は、前記分割した各領域に対応する表示領域の映像の第1の特徴量に応じて、LEDの駆動電流の合計値が所定の許容電流値以下である範囲で、領域ごとの輝度を定め、
さらに、前記領域ごとの輝度と、所定の閾値とを比較し、前記領域ごとの輝度が前記閾値より低い領域についてのみ、前記領域ごとの輝度を低下させ、
前記領域ごとの輝度が閾値より低い領域については低下させた輝度を用いて、前記領域ごとの輝度が閾値より低くない領域については低下させない輝度を用いて、分割した領域ごとにLEDの発光を制御することを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像表示装置において、
前記制御部は、前記閾値を固定値として設定することを特徴とする映像表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の映像表示装置において、
前記制御部は、映像の第2の特徴量に応じて前記閾値を設定すること特徴とする映像表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の映像表示装置において、
前記制御部は、前記輝度を低下させる領域数が所定の数となるように、前記閾値を設定することを特徴とする映像表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の映像表示装置において、前記第1の特徴量は、前記分割した領域内の映像信号の最大階調値であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項6】
請求項3に記載の映像表示装置において、前記第2の特徴量は、映像のAPLであることを特徴とする映像表示装置。
【請求項7】
請求項3に記載の映像表示装置において、前記第2の特徴量は、映像のフレームごとの最大階調値であることを特徴とする映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−194559(P2012−194559A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97246(P2012−97246)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【分割の表示】特願2011−56359(P2011−56359)の分割
【原出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】