説明

映写スクリーン

【解決手段】 シート状のスクリーン2に多数の黒のドット4を形成し、スクリーンに対するドットの面積率を5〜15%の範囲に設定した映写スクリーン1。上記面積率は8.5〜12%の範囲に設定することがより望ましい。
また、上記多数のドットは、一定のピッチで格子状に配列してあり、かつ各ドットの1列の並び方向を、映写スクリーンを水平方向に配置した状態で、水平方向に対して15〜30度の範囲で斜めに配列すれば、モアレの発生を抑制することができる。
【効果】 面積率を5〜15%の範囲とすると、ドットを設けないスクリーンと比較した場合には、暗室でのコントラストの改善効果は同等であるのに対し、明室においてはコントラストの改善効果が認められる。また面積率を30%以上としたスクリーンと比較した場合には、明室において明るい映像が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映写スクリーンに関し、より詳しくは、シート状のスクリーンに多数の黒のドットを形成した映写スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来周知の映写スクリーンは、プラスチックフィルム等からなるシート状のスクリーンを備えている。
そして上記スクリーンに、光吸収性のあるインキ又は塗料などからなる規則的又は不規則的パターンの光吸収層を設け、スクリーンに対する光吸収層の面積比を50%程度としたものが知られている(特許文献1)。
また従来、白球と黒球とを一定の割合で均等に配列し、黒球の面積比を30%又は40%に設定したものも知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平3−214148号公報
【特許文献2】特公昭33−10481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来周知の映写スクリーン、すなわちシート状のスクリーンのみからなる映写スクリーンは、光吸収層がないので暗い部屋(暗室)及び明るい部屋(明室)の双方において明るいという利点があるが、映像のコントラストが悪いという欠点がある。
他方、スクリーンに30%以上の黒球又は光吸収層を設けた映写スクリーンにおいては、暗室及び明室の双方において良好なコントラストが得られるが、明室において映像が暗くなるという欠点があった。
本発明は上記欠点に鑑み、特に明室において、明るく、しかもコントラストが良好な映像が得られる映写スクリーンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち請求項1の発明は、シート状のスクリーンに多数の黒のドットを形成し、スクリーンに対するドットの面積率を5〜15%の範囲に設定したことを特徴とするものである。
【0005】
また請求項3の発明は、上記多数のドットを、一定のピッチで格子状に配列し、かつ各ドットの1列の並び方向を、映写スクリーンを水平方向に配置した状態で、水平方向に対して15〜30度の範囲で斜めに配列したものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、スクリーンに対するドットの面積率を5〜15%の範囲に設定しているので、特に明室において、明るく、しかもコントラストが良好な映像が得られる。
すなわち面積率を5〜15%の範囲とすると、ドットを設けないスクリーンと比較した場合、暗室でのコントラストの改善効果は同等であるのに対し、明室においては明らかにコントラストの改善効果が認められるようになる。また面積率を30%以上としたスクリーンと比較した場合には、明室において明るい映像が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1において、本発明に係る映写スクリーン1は、例えばプラスチックフィルム等から製造されたシート状のスクリーン2(反射層)を備えており、このスクリーン2は巻取り可能であっても、なくても良い。
上記スクリーン2の周囲に映像を引き締めて見せるために黒枠3を設けてあり、この黒枠3は、黒インクによる印刷で形成してもよく、或いは黒い布等を設けてもよい。
【0008】
上記黒枠3の内部には、多数の黒のドット4を規則正しく配列してある。本実施例では図2に拡大して示すように、各ドット4は一定のピッチpで格子状に配列してあり、かつ各ドット4の1列の並び方向Aが水平方向Xに対して所定の角度θだけ斜めとなるようにし、それによって可及的にモアレの発生を防止できるようにしてある。なお、上記水平方向Xとは、映写スクリーン1を水平方向に配置した状態を基準としたものである。
【0009】
一般に、デジタルプロジェクターの映像はTVと同様に水平方向及び上下方向に規則正しく並んだ細かいドットで表現するようになっており、ドットの直径とピッチとが上記ドット4に近似するほどモアレが生じやすくなる。
上記各ドット4の1列の並び方向Aを水平方向Xに一致させたときには、水平方向Xにおける各ドット4のピッチは上記ピッチpに一致する。この場合、水平方向Xに最も多くのドット4が揃うことになり、その結果、デジタルプロジェクターのドットが映写スクリーン1のドット4に重なり合ってモアレを生じさせる危険性が高くなる。
【0010】
他方、上記各ドット4の1列の並び方向Aを水平方向Xに対して45度の角度に設定したときには、各ドット4は水平方向Xには1.414p(ルート2p)のピッチで配列されるので、並び方向Aを水平方向Xに一致させて配列したときよりは少ないとしても、2番目に多くのドット4が水平方向Xに揃うことになる。
そこで本実施例では、各ドット4の1列の並び方向Aを水平方向Xに対して15〜30度の範囲の角度θで斜めに配列して、水平方向Xにできるだけドット4が並ばないようにし、それによってモアレの発生を可及的に防止できるようにしている。
なお、図示実施例では水平方向Xから反時計方向に上記角度θだけ傾かせているが、時計方向に上記角度θだけ傾かせるようにしてもよいことは勿論である。
【0011】
上記各ドット2の大きさは、例えば直径0.2mmの円となっており、この大きさのドット4をスクリーン2に対する面積率で5〜15%の範囲となるようなピッチpで印刷してある。上記ドット2の大きさは小さい方が望ましいが、現在の印刷技術では0.2mm程度の大きさが実用的である。
上記印刷はグラビア印刷によって行なうことが好ましいが、その他の印刷方法、例えば転写印刷やスクリーン印刷であってもよい。但し、上記スクリーン2にエンボス加工が施されている場合には、グラビア印刷ではムラが発生したりドットの周囲が掠れてきれいなドットを印刷できないので、転写印刷を用いることが望ましい。
そして映写スクリーン1を製造する際には、上記ドット4と黒枠3とを同時に印刷することが望ましく、それによって製造コストを低減することができる。
【0012】
上記面積率は、スクリーン2の輝度(スクリーン面に直角に光を照射して、その照度を計測した数値)に応じて変化させるのが好ましい。
具体的には、スクリーン2が標準的で安価なスクリーン素材からなる場合、例えばガラスクロスの表面を塩化ビニルでコーティング又はラミネートしたスクリーン2からなる場合には、輝度が低いため、上記面積率を5〜10%程度の少なめとしたときに良好な結果が得られている。特に8.5%程度としたときに、最も良好な結果が得られている。
他方、スクリーン2がいわゆるハイコントラストタイプのスクリーン素材からなる場合には、輝度が高いため、上記面積率を10〜15%程度の多めとしたときに良好な結果が得られている。特に、12%程度としたときに、最も良好な結果が得られている。
【0013】
上記ドット4のスクリーン2に対する面積率を5%未満とすると、ドットを設けないスクリーンとの差異が殆ど認められなくなる。すなわち、この場合には明室でコントラストが悪く、暗室ではコントラストが改善されるという一般的な傾向を有するに過ぎず、明室でのコントラストの改善効果は認められなかった。
他方、面積率が15%を超えると、特に30%以上とすると、暗室及び明室でのコントラストの良好な改善効果が認められる。しかしながら、暗室では周囲が暗いせいもあって映像が暗いと感じられることは少ないが、特に明室においては映像が暗く感じられるようになる。
これに対し、面積率を5〜15%の範囲とすると、ドットを設けないスクリーンと比較して、暗室でのコントラストの改善効果は同等であるのに対し、明室において明らかにコントラストの改善効果が認められた。また面積率を30%以上としたスクリーンと比較して、明室において明るい映像が得られた。
つまり本発明の映写スクリーン1によれば、明室において明るく、しかもコントラストの良好な映像を得ることができる。
【0014】
なお上記実施例は、反射型の映写スクリーン1で説明したが、透過型の映写スクリーンであっても良い。
また上記実施例ではドットを規則的に配列して各ドット4の1列の並び方向Aを水平方向Xに対して15〜30度の範囲の角度θで斜めに配列しているが、これに限定されるものではない。各ドット4の1列の並び方向Aを水平方向Xに配列しても良いし、あるいはランダムの状態で印刷してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例を示す正面図。
【図2】図1の要部の拡大図。
【符号の説明】
【0016】
1 映写スクリーン 2 スクリーン
3 黒枠 3 ドット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のスクリーンに多数の黒のドットを形成し、スクリーンに対するドットの面積率を5〜15%の範囲に設定したことを特徴とする映写スクリーン。
【請求項2】
上記面積率を8.5〜12%の範囲に設定したことを特徴とする請求項1に記載の映写スクリーン。
【請求項3】
上記多数のドットは、一定のピッチで格子状に配列してあり、かつ各ドットの1列の並び方向を、映写スクリーンを水平方向に配置した状態で、水平方向に対して15〜30度の範囲で斜めに配列したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の映写スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−65308(P2007−65308A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251493(P2005−251493)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000200666)泉株式会社 (24)
【Fターム(参考)】