説明

時分割多元接続通信の空きチャネル検出回路および方法

【目的】 本発明は、非同期のTDMA通信におけるタイムスロットが空きチャネルか否かをより確実に判断し、他局通信に妨害を与えない時分割多元接続通信の空きチャネル検出回路を提供する。
【構成】 バースト信号のユニークワードUWおよび情報Iに影響を与えないタイムスロット50の前部時間幅30および後部時間幅31内で、タイミング発生回路14によってクロックパルス15,16を発生させる。受信電波1から高周波増幅器3および包絡線検出器5で求めた包絡線検出信号6と基準レベル9との大小比較結果を比較回路7,8で求め、この比較結果信号10,11をD−FF12,13において上記パルス15,16でトリガをかけ、そのD−FF12,13出力が共にローレベルなら、タイムスロット50は空きチャネルであると制御回路21で判断する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、通信媒体が電波等の無線であるTDMA通信方式の通信装置において、通信チャネルの混信を防止する時分割多元接続通信の空きチャネル検出回路および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】物理的に異なる場所にある各通信局が、基地局等と電波によって通信を行う場合、単一周波数の搬送波を全ての局が共用して通信を行なう時分割多元接続(以下TDMA)通信方式と、周波数帯域を狭帯域に分割し、さらにその分割した各狭帯域を各局に割り当て、それぞれの周波数搬送波で通信を行う周波数分割多元接続(以下FDMA)通信方式とがある。このFDMA通信方式は、一つの通信チャネルに一つの搬送波を専用させるので、通信チャネルに空きがあるか否かは、そのチャネルの搬送波を受信できるか否かで簡単に識別することができる。
【0003】ところがTDMA通信方式では、一つの周波数電波を複数の局が共用し、時間軸上を一定の長さに区切り、この区切った時間(タイムスロット)を一つの通信チャネルに割り当てる方式であり、各通信チャネルを各通信局に正しく割り当てるマネジーメントが正しく行わなければ、混信を招くことになる。このチャネル割当ての方法例としては、移動TDMA通信、衛星TDMA通信等ではプリアサイメント方式とデマンドアサイメント方式等がある。しかしこのチャネル割当てでも、移動TDMA通信等の各通信局が備えるローカルクロックがそれぞれ異なる非同期である場合では、例えばのディジタルコードレス電話等、クロックが異なることにより異なる通信局同士の隣接する通信チャネルが重複して混信を生じる虞がある。そこで、各通信局は通信開始前に、割り当てられたチャネルが空き状態であるか否かを判断する必要がある。
【0004】この空きチャネルを確認する従来の方法は、それぞれのタイムスロットでの受信レベルを検出し、その受信レベルが一定値以下ならばそのチャネルが空きチャネルであると判断しており、この受信レベル検出方法には、次の二つの方法がある。
【0005】第一の方法は、タイムスロット内の適当な時間において、受信した電波の受信レベルと閾値である基準レベルとを比較し、その大小でそのタイムスロットが空きチャネルか否かを判断する方法である。例えば、図2に示すように、時刻t1における受信レベルが、他の通信局が送受信しているバースト信号51の受信レベルより低い場合は、このタイムスロット50を空きチャネルと判断する。
【0006】また、第二の方法は図3に示すように、タイムスロット全体にわたって、受信レベルの包絡線を時間積分演算を行い、空きチャネルレベル検出用の基準電圧と比較して、積分値が基準電圧以下であるなら、そのタイムスロットを空きチャネルと判断する方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記二つの空きチャネル判断方法には次の様な欠点がある。まず上記第一の方法では、図2に示すように、通信を行っている他局のバースト信号51がスロット50よりずれているか、又は隣接スロットからずれてきてこのスロット50にバースト信号51の一部が入り込んでいても、時刻時刻t1 における受信レベルが基準レベル52以下であるので、このスロット50を空きチャネルと誤判断してしまう。この誤判断の下、自局バースト信号を送出すると、既に通信を行っているバースト信号51と混信を起こし、通信障害が発生することになる。
【0008】また、上記第二の方法では、通信を行っている他局のバースト信号51がタイムスロット50の一部に掛かっている場合、その掛かり具合によってはタイムスロット50全体の受信信号の積分値が基準レベル53以下になる場合があり、上記第一の方法と同じく正確にスロット50内にバースト信号51が存在するか否かを判断できない。このように上記第一、第二の方法何れであっても、スロット50内にバースト信号51の過半数が入っていない限り、必ず空きチャネルと誤判断する空きチャネル判断ミスを生じる問題がある。
【0009】
【発明の概要】本発明の目的は、上記のような判断方法の欠点である、他局バースト信号の過半数がタイムスロット内に存在しなくても、そのスロットが空きチャネルか否かをより正確に判断し、他局通信に妨害を与えない時分割多元接続通信の空きチャネル検出回路および方法を提供しようとするものである。
【0010】そこで本発明の時分割多元接続通信の空きチャネル検出回路は、時分割多元接続通信フレーム開始点からユニークワードまたは通信情報開始点までの時間幅と、ユニークワードまたは通信情報終点からフレーム終点までの時間幅との共通時間幅となるタイムスロット前部時間幅内で、受信電波レベルが閾値以下か否かを識別する第一受信レベル判定手段と、前記共通時間幅と同じ前記タイムスロット後部時間幅内で、受信電波レベルが閾値以下か否かを識別する第二受信レベル判定手段と、前記第一、第二受信レベル判定手段の判定結果が共に、前記閾値以下である場合にのみ前記タイムスロットを空きチャネルと検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0011】前記時間幅は、通信フレームの前部にある、有効情報でない過渡応答用ランプタイムR、スタートシンボルSSおよびプリアンブルPRの総和時間とフレーム後部にあるガードビットG時間との共通時間幅である。そして、第一受信レベル判定手段で、タイムスロットの前部時間幅内受信電波の受信レベルが閾値以下か否かを識別し、さらに第二受信レベル判定手段で、タイムスロット後部時間幅内受信電波受信レベルが閾値以下であるか否かを識別する。そして第一、第二受信レベル判定手段で受信レベルが閾値以下であるならば、そのタイムスロットを空きチャネルと判断するようにした。上記のように時間幅を定めたのは、二つのバースト信号の前部と後部とが時間幅だけ重なってもランプタイムR、スタートシンボルSSおよびプリアンブルPRとガードビットGとが重なるのみで、それぞれのバースト信号にあるユニークワードUWと情報Iに妨害を与えず、混信を生じないようにするためである。
【0012】
【実施例】次に本発明の一実施例を図を参照しつつ以下に説明する。図1は、本発明の一実施例である空きチャネル検出回路のブロック構成図を示す図である。この図1R>1において、高周波増幅器3には、アンテナ2が接続されており、このアンテナ2によって受信される到来受信電波1は、この増幅器3で増幅および変調等されて、包絡線検出器5に接続出力される。この包絡線検出器5にはコンパレータ等の二つの比較回路7,8が接続されており、これら二つの比較回路7,8それぞれで、別途接続入力される基準レベル9と、包絡線検出信号6とが比較される。比較回路7の出力はDフリップフロップ(以下D−FF)12のデータ入力端子に接続入力され、同じく、比較回路8の出力はD−FF13のデータ入力端子に接続入力される。この比較回路7とD−FF12は第一受信レベル判定手段を構成し、比較回路8とD−FF13とは第二受信レベル判定手段を構成する。また、これら二つのD−FF12,13のトリガ入力端子には、タイミング発生回路14で生成されるクロックパルス15,16が接続入力される。そして各D−FF12,13出力はOR回路19の各入力端子に接続入力され、さらにOR回路19の検出出力20が検出手段である制御回路21に接続入力される。この制御回路21は、蓄積プログラムによって各種制御を行う中央処理演算装置(CPU)またはディジタルシグナルプロセッサ(DSP)であり、上記タイミング発生回路14のトリガ信号16の発生タイミングと、OR回路19出力に基いて以下に記述する判断等の処理を行う。
【0013】ここで、本発明に用いるTDMA通信フォーマットについて、図6を用いて簡単に説明する。図6は基本フレームのフォーマットの一例を示し、この基本フレーム前部から順に、4ビットの過渡応答用ランプタイムR、2ビットのスタートシンボルSSおよび6ビットのプリアンブルPRと、有効情報である16ビットのユニークワードUWおよび196ビットの通信情報Iと、最後に16ビットのガードビットGとがある。これら各信号のビット総和は240ビットである。各信号で、特に重要なものは、前記有効情報であるフレーム同期を確立するためのユニークワードUWおよび通信情報Iである。また、フレーム前部から前記有効情報までのランプタイムR、スタートシンボルSSおよびプリアンブルPRの総時間がフレーム全体に占める割合は、およそ20分の1であり、ガードビットGがフレーム全体に占める割合は、15分の1となっている。これらの時間幅の共通時間は20分の1であり、このフレーム時間長20分の1時間幅を単位Lとする。
【0014】以上の構成において、以下その動作について図4,5を用いて説明する。図4には、タイムスロット50の後半に他局のバースト信号51が掛かっている様子を図示する。またパルス15,16それぞれの発生タイミングは、前記単位Lに等しい時間幅30,31内となるようにタイミング発生回路14で制御されている。受信電波1を高周波増幅器3で増幅し、さらにこの増幅受信信号から包絡線を包絡線検出器5で検出する。この包絡線検出信号6は、比較回路7,8に入力され基準レベル9とその大きさが比較される。この比較結果は、上記パルス15,16のタイミングでD−FF12,13に保持され、信号17,18としてOR回路19に出力される。つまり、パルス15,16発生時における受信電波の受信レベルと基準レベル9との大小比較結果が求められる。例えば図4において、パルス15のタイミング時では、包絡線検出信号6が基準レベル9より低いので、D−FF12出力の信号17はローレベルになる。またパルス16のタイミング時では、バースト信号51があることで、包絡線検出信号6が基準レベル9より高くなり、D−FF13出力の信号18はハイレベルとなる。従ってこの二つの信号17,18の論理和をとるOR回路19が出力する検出出力20はハイレベルとなる。信号20がハイレベルであることで、制御回路21は、スロット50内にバースト信号51があると判断し、スロット50を空きチャネルではないと判断する。また、バースト信号51がタイムスロット50の前半部分に掛かっていた場合には、パルス15のタイミング時における信号17がハイとなり、逆に信号18がローになるので、検出出力20はハイとなり、やはりスロット50は空きチャネルではないと判断される。このようにタイムスロット50が空きチャネルでないと判断したなら、他の空きチャネルを捜査するように、別のタイムスロットでパルス15,16を発生させるよう、タイミング発生回路14を制御回路21は制御する。
【0015】これとは逆に、図5に示すようにバースト信号51が時間幅31の後部にのみ掛かっている場合、パルス15,16タイミング時におけるレベル比較結果は、信号17,18が共にローレベルで検出出力20はローレベルとなる。この結果制御回路21はスロット50を空きチャネルと判断する。つまり、パルス15,16のタイミング時における包絡線検出信号6の受信レベルが共に基準レベル9以下であるときに、初めてスロット50を空きチャネルと判断している。このとき、図5に示すように、タイムスロット50の後部に他局バースト信号51が掛かっていても、自局バースト信号のガードビットG部分が、他局バースト信号51のランプタイムR、スタートシンボルSSおよびプリアンブルPR部分でのみ重複する。ガードビットGは、TDMA通信において、バースト信号が時間軸上で前後にずれても他局信号に影響を与えないためのものであるので、他局バースト信号の有効情報であるユニークワードUWおよび情報Iを壊すことがなく、混信妨害を発生する虞れはない。このように、時間幅30,31は、空きチャネルと検出したタイムスロットの前後一部に他局バースト信号が存在しても、自局バースト信号と他局バースト信号の有効情報に影響を与えない時間単位Lとしたものである。
【0016】なお、上記実施例においては、ディジタルコードレス電話機の空きチャネル検出回路について説明したが、この空きチャネル検出回路を他の非同期TDMA通信方式の通信装置に用いることもできる。また、上例では二つの比較回路7,8を用いて包絡線検出信号6と基準レベル9とをそれぞれパルス15,16の発生タイミング時でD−FF12,13でトリガをかけて比較したが、これを一つの比較回路とし、この一つの比較回路出力をD−FF12,13のデータ入力端子にパラレル入力するようにしてもよい。OR回路19についても、NAND回路を用いてその出力がローレベルの時に、タイムスロット50が空きチャネルと判断するようにしてもよい。さらに、基準レベル9と受信信号とのレベル比較方法についても、時間幅30,31内の受信信号を時間積分し、その積分値と基準電圧とを比較して、積分値が基準電圧以下である場合に空きチャネルと判断してもよく、比較回路構成を特に限定するものではない。
【0017】さらにまた、パルス15,16の発生タイミングも、上例ではスロット長の20分の1である時間幅30,31内の任意時点としたが、特に20分の1に限定するものではなく、例えば情報Iが196ビットより短く、フレームの前部部分に特に重要でない信号がさらに付加されていたり、情報Iの途中にユニークワードUWがあるならならば、時間幅30,31を次のように定めてもよい。すなわち、フレーム開始点からユニークワードUWまたは情報Iの有効情報開始点までの時間長と、その有効情報終点からフレーム最終点までの時間長との共通時間長となる時間幅30,31とする。つまり、二つのバースト信号の前部と後部が重なった場合に、それぞれの有効情報に妨害を与えない時間幅であればいかなる時間幅であってもよい。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、有効情報であるユニークワードUWおよび通信情報Iを除くフレーム前部にあるスタートシンボル、プリアンブル等のヘッダ部分の時間幅と、有効情報終点かたフレーム終点までのガードビットG時間幅との共通時間幅を単位Lとして、各タイムスロット前部および後部の単位L内の受信電波レベルが双方とも閾値以下の場合にのみ、そのタイムスロットを空きチャネルと判断するようにした。これによって、従来では他局バースト信号がタイムスロットからずれていた場合等に、そのタイムスロットを空きチャネルと誤判断することを防止できる。さらに本発明によって空きチャネルと検出したタイムスロットの前部若しくは後部の一部に、他局バースト信号が掛かっている状態で自局バースト信号を送出しても、自局および他局それぞれのユニークワードUWおよび情報Iに妨害を与えることがないので、各局で通信障害を起こすことも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に関するものであり、その構成を示すブロック図である。
【図2】従来の空きチャネル検出回路による誤判断説明図である。
【図3】従来の空きチャネル検出回路による誤判断説明図である。
【図4】本発明の一実施例に関する動作説明用タイムスロット図である。
【図5】本発明の一実施例に関する動作説明用タイムスロット図である。
【図6】本発明で用いられるTDMA通信方式のフレームフォーマットの一例を示した図である。
【符号の説明】
1 受信電波
2 アンテナ
3 高周波増幅器
5 包絡線検出器
6 包絡線検出信号
7,8 比較回路
9 基準レベル
10,11 比較結果信号
12,13 Dフリップフロップ
14 タイミング発生回路
15,16 クロックパルス
17,18 信号
19 OR回路
20 検出出力
21 制御回路
30,31 時間幅
50 タイムスロット
51 バースト信号
52 基準レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】時分割多元接続通信フレーム開始点からユニークワードまたは通信情報開始点までの時間幅と、前記ユニークワードまたは通信情報終点からフレーム終点までの時間幅との共通時間幅となるタイムスロット前部時間幅内で、受信電波レベルが閾値以下か否かを識別する第一受信レベル判定手段と、前記共通時間幅と同じ前記タイムスロット後部時間幅内で、受信電波レベルが閾値以下か否かを識別する第二受信レベル判定手段と、前記第一、第二受信レベル判定手段の判定結果が共に、前記閾値以下である場合にのみ前記タイムスロットを空きチャネルと検出する検出手段とを備えることを特徴とする時分割多元接続通信の空きチャネル検出回路。
【請求項2】時分割多元接続通信のタイムスロットが空きチャネルか否かを検出する時分割多元接続通信の空きチャネル検出方法において、時分割多元接続通信フレーム開始点からユニークワードまたは通信情報開始点までの時間幅と、前記ユニークワードまたは通信情報終点からフレーム終点までの時間幅との共通時間幅となるタイムスロット前部時間幅内で、受信電波レベルが閾値以下か否かを識別し、前記共通時間幅と同じ前記タイムスロット後部時間幅内で、受信電波レベルが閾値以下か否かを識別し、前記タイムスロット前部時間幅および後部時間幅での受信電波レベルが共に閾値以下である場合にのみ前記タイムスロットを空きチャネルと検出することを特徴とする時分割多元接続通信の空きチャネル検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平6−53918
【公開日】平成6年(1994)2月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−201656
【出願日】平成4年(1992)7月29日
【出願人】(000115267)ユニデン株式会社 (14)