説明

時刻表示部材およびその製造方法、時計

【課題】 固定用足を備える時刻表示部材と多品種少量生産に適した製造方法を提供すること。
【解決手段】 略字部品1においては、表示部材本体4と固定用足6とが電鋳によって一体に形成されているため、略字部品1を一種類の製造方法で容易に製造できる。また、略字部品1が一連の電鋳工程によって形成されるので、表示部材本体4や固定用足6ごとに設備を用意する必要がなく、多品種少量生産に好適である。さらに、固定用足6を形成する前に足用凹部8を形成するので、電鋳によって足用凹部8から電鋳材料を堆積させ、固定用足6を形成できる。このため、表示部材本体4と固定用足6の結合面積を大きくでき、固定用足6を表示部材本体4に安定して固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻表示部材およびその製造方法、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時刻表示部材である略字部品、文字部品等の製造は、プレスで原材料を成型加工して表示部材本体を得た後、表示部材本体の裏面に固定用足を溶接等で取り付けることによって行われている。その後、略字部品であれば、必要に応じて表示部のダイヤカット、研磨、表面のめっき処理等を行う。しかし、プレス加工はモデルごとに部品の種類に応じて金型を用意する必要があり、多品種少量生産においては、コストや時間の面でそぐわなくなってきている。また、同じ時刻表示部材の製造でありながら、部品の種類によって設備もばらばらである。
【0003】
上記以外の製造方法として、時刻表示部材を電鋳により形成し、接着剤により文字板に貼り付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法によれば、プレス加工が不要であるうえ、異なる品種に容易に対応できるというメリットがあり、多品種少量生産に好適である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−20709号公報(第6〜第7頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、従来のように固定用足によらず、接着剤により時刻表示部材を文字板に取り付けるため、接着剤のはみ出しや汚れの付着により美観を損ねる、あるいは接着剤の流動性により部品の位置がずれるなどの課題がある。
そこで、電鋳で製造された時刻表示部材に、接着剤を塗布するのでなく、溶接等で固定用足を取り付けることも考えられるが、溶接工程を行うことで作業が煩雑になるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、多品種少量生産に好適で、かつ製造を容易にできる固定用足を備えた時刻表示部材、時刻表示部材の製造方法、および時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の時刻表示部材は、表示部材本体と、この表示部材本体に設けられた固定用足とを備え、これら表示部材本体および固定用足が電鋳によって一体に形成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、固定用足を備えた時刻表示部材であっても、一種類の製造方法で容易に製造されるようになる。また、時刻表示部材の部位ごとに設備を用意する必要がなく、多品種少量生産に適している。
【0009】
本発明の時刻表示部材の製造方法は、表示部材本体と固定用足とを備えた時刻表示部材の製造方法であって、前記表示部材本体を電鋳により形成する本体形成工程と、前記表示部材本体に、前記固定用足を電鋳によって形成する固定用足形成工程とを備えていることを特徴とする。
【0010】
この発明は、前述の時刻表示部材を製造するための方法発明であり、同様な作用効果が得られる。
【0011】
本発明の時刻表示部材の製造方法において、前記電鋳に使用するレジストの型を形成するフォトリソ工程と、前記本体形成工程と、前記固定用足形成工程と、前記レジストを除去して前記時刻表示部材を取り外す取外工程とを備えているのが好ましい。
【0012】
この発明は、フォトリソ工程と電鋳とを備える連続した一種類の製造方法によって時刻表示部材を製造するので、時刻表示部材の部位ごとに設備を用意する必要がなく、多品種少量生産に適している。
【0013】
本発明の時刻表示部材の製造方法において、前記本体形成工程では、前記導体部材上に前記表示部材本体をその表示面側から電鋳によって形成し、前記固定用足形成工程では、前記表示部材本体を前記導体部材上に残したまま、前記固定用足を電鋳によって形成するのが好ましい。
【0014】
この発明によれば、表示部本体を表示面側から電鋳によって形成し、そのままの状態から連続して裏面に固定用足を電鋳によって形成するという一つの連続した工程から時刻表示部材を製造するので、製造が容易で、部位ごとに設備を用意する必要がなく、より多品種少量生産に適している。
【0015】
本発明の時刻表示部材の製造方法では、前記表示部材本体の前記固定用足が形成される面に、凹状にくぼんだ足用凹部を予め形成しておく足用凹部形成工程を備えているのが好ましい。
この発明では、固定用足を形成する位置に予め足用凹部を形成するので、電鋳によって足用凹部の内部から固定用足が堆積する。したがって、表示部材本体と固定用足の接触面積が広がり、固定用足が表示部材本体に安定して固定される。
【0016】
本発明の時刻表示部材の製造方法では、前記足用凹部は、内部に広がりを持った形状である構成が好ましい。
この発明では、固定用足が形成される足用凹部は内部に広がりを持った形状であるので、電鋳で足用凹部から固定用足が形成される際に、固定用足の基部が表示部裏面に食い込んだ形となり、より固定用足が外れにくく安定して固定される。
【0017】
本発明の時計は、前述の製造方法で製造された時刻表示部材を備えていることを特徴とする。
この発明では、時計に組み込む時刻表示部材の製造が容易で、部位ごとに設備を用意する必要がないので、時計の多品種少量生産に適している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多品種少量生産に好適で、かつ製造を容易にできる固定用足を備えた時刻表示部材、時刻表示部材の製造方法、および時計を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2には、本実施形態に係る時刻表示部材が示されている。図3〜図5には、本実施形態の時刻表示部材の製造に使用する治具が示されている。図6〜図8には、本実施形態に係る製造方法の各工程が示されている。
【0020】
図1には、時刻表示部材の一つである略字部品1、文字部品2が示されている。略字部品1および文字部品2は、時計用の文字板3に取り付けられて用いられるものである。図2に略字部品1を代表して示すように、略字部品1は、表示部材本体4とその裏面5に形成された固定用足6を備え、固定用足6が文字板3に設けられた図示しない差込穴に差し込まれることにより、文字板3上の所定位置に固定される。
以下の説明も、略字部品1を例にとって行う。
【0021】
図2に示す略字部品1において、略字部品1を構成する表示部材本体4の表示面9は、装飾性を高めるために台形になっている。また、表示部材本体4および固定用足6は、電鋳により一体に形成されている。
【0022】
図3〜図5には、本実施形態の略字部品1の製造で使用される治具10が示されている。図3は、治具10の斜視図であり、図4は断面図、図5は上面図である。略字部品1は電鋳によって形成されるが、治具10は、その際に使用するものである。実際には、この治具10を電鋳槽等に入れて電鋳を行う。
【0023】
以下に詳しく治具10の説明をする。
治具10は、円柱状をした絶縁部11を外枠として、その中心部に電鋳を行う際に通電させる導通部12が嵌め込まれた構造からなる。
絶縁部11の図面で示される上部には、略字部品1が形成される場所である円形の凹部13が設けられている。その凹部13の底部の中心には、下方の側まで貫通する貫通穴14が形成されている。この凹部13および貫通穴14には導通部12が嵌め込まれている。この導通部12は、凹部13の内径と略同じ外径を持つ円盤状部15と、その中心から下方に伸びる円柱状の突起部16とを備えている。そして、その突起部16の先端部には雄ねじ17が刻切されている。
【0024】
導電部12の突起部16は、凹部13側から貫通穴14に嵌め込まれており、雄ねじ17に螺合されたナット18により導通部12全体が固定されている。また、ナット18を締め付けることで、導電部12の円盤状部15が、凹部13の底面全面に密着するようになっている。ここで、ナット18は一対設けられ、ナット18間には、通電用の端子が接続される。
【0025】
導電部12の円盤状部15の上面には、電鋳材料が堆積する導体部材である金属プレート19が乗せられている。そして、この金属プレート19が電鋳用電極として機能する。図5に示すように、金属プレート19の表面には、表示部材本体4の表示面9の台形形状が転写されるような形状をした凹部20が多数設けられている。図5では、略字部品1のみの凹部20を示したが、種々の時刻表示部材を一度の電鋳により形成する目的で、異なる形状の凹部を混在させて設けることも可能である。また、凹部20の表面には、装飾のための細かな模様を施してもよいし、鏡面仕上げを施してもよい。これらの模様や鏡面は、電鋳により略字部品1の表示面9に転写される。金属プレート19への凹部20の形成は、エッチングや放電加工等のよく知られた方法で行なわれる。
【0026】
絶縁部11の材料としては、ポリアセタール等の合成樹脂やゴムを使用できる。凹部13には、電鋳用の液体や後で述べるレジストが溜められるので、凹部13と導電部11の円盤状部15とが密着することが望まれる。
導通部16や金属プレート19には、ステンレス、洋白(Ns)、銅などが使用できる。導電性があればどのようなものであってもよいが、耐蝕性のあるものが好ましい。また、絶縁材料に導電性被膜処理を行ったものでもよい。
【0027】
以下に、図6〜図8に基づき、本実施形態の製造方法を説明する。製造方法を(A)〜(L)の工程で示したが、最低限必要な工程を示したものであり、その他の工程が含まれていてもよい。各工程は、一つの略字部品1が形成される付近について、導通部11等を含む正断面図と側断面図とで概略的に図示してある。実際には、多数の同じ部品や異なる部品を同時に形成する。
【0028】
工程(A)では、略字部品1の表示面9の形状に合わせた凹部20が設けられた金属プレート19を治具10の凹部13にセットし、導通部12の円盤状部15に密着させて電気的接続をとる。
【0029】
以下の工程(B)と工程(C)とは、本発明にかかるレジストの型を形成するフォトリソ工程である。工程(C)には、不動態化処理工程を含む。
工程(B)において、凹部13にポジ型レジスト30を注入する。ここで、レジスト30の注入量は、レジスト30の厚みが表示部材本体4の厚みより0.1mm程度厚くなる量である。この時、気泡が混入しないように注入を行い、必要に応じて脱泡を行ってもよい。レジスト30を注入後、簡易的な焼成を行う(プリベーク)。焼成は、使用するレジストの焼成条件(温度、時間)で行う。
【0030】
工程(C)では、電鋳を行うための型31を形成する。
先ず、略字部品1の平面形状に合わせて紫外線透過部が形成されたフォトマスクを凹部20の位置に合わせて被せる。その後は、よく知られた紫外線露光および現像処理を行うことにより、紫外線露光部分が除去されて、表示部材本体4を電鋳によって形成するための型31を得る。ここで、一度に除去できるレジスト厚は、2000mj/cmの紫外線照射で0.2mm程度しか除去できないので、露光および現像処理を数回繰り返し、金属プレート19の凹部20の表面が現れるまでレジスト30を除去する。レジスト30の除去は、NaOH5%(35℃〜45℃)溶液で行う。ここで、金属プレート19にNs材を用いている場合、現れた金属プレート19の表面をNaSの4%水溶液に4分間浸漬し、不動態化処理を行う。これは、略字部品1が電鋳によって形成された後に、略字部品1を金属プレート19から剥離しやすくするために行うものである。すなわち、NaSの水溶液に浸漬する事により、金属プレート19の表面にCuの硫化物が付着した状態となる。浸漬時間が短いと略字部品1の剥離が困難となり、長すぎると略字部品1形成時に略字部品1の内部応力に抗じきれず脱落してしまうので、所定の時間で処理を行う。一方、ステンレスを用いた場合、そのままの状態でも表面に酸化ニッケル被膜が瞬時に形成されるため、略字部品1の剥離を行う事が可能である。ただし、密着性が低くて略字部品1の脱落が生じる場合には、動態化処理を行って密着性を向上させる。
【0031】
その後、工程(D)により、露出した金属プレート19の凹部20の表面を電極面としてNi電鋳を行う。工程(D)は、本発明にかかる本体形成工程である。電鋳は一般的な条件で行うことができる。電鋳材料32は、表示部材本体4の表示面9側から順次堆積することになる。電鋳が終了した上面は表示部材本体4の裏側の面になるが、凹凸を持つ場合もあるので、表示部材本体4の厚みより約0.1mm程度厚くなるように堆積させる。
なお、電鋳材料32は、Ni以外であってもよく、Ni銅合金等必要に応じて選択できる。
【0032】
図7に示す工程(E)においては、工程(D)で生じた電鋳上面の凹凸の削除を含め、研磨や旋盤加工等により表示部材本体4を所定の厚みまで削り、平坦な裏面5を形成する。
ここで、一つの金属プレート19で異なる部品を電鋳によって形成したときは、部品ごとの厚みに応じて研磨する。異なる部品を形成する場合、最も厚い部品の厚さに合わせて、予めレジストの注入や電鋳を行う。同じ部品は、金属プレート19の中で所定位置に配置しておくなど、レイアウトを工夫すると、研磨等を効率的に行うことができる。
【0033】
工程(F)〜工程(K)は、表示部材本体4の裏面5に固定用足6を形成する本発明にかかる固定用足形成工程である。固定用足6の形成も、表示部材本体4と同様にレジストの注入、露光、除去、その後の電鋳により行う。
【0034】
工程(F)では、固定用足6を形成するために、レジスト30充填用のかぶせ治具40を治具10にかぶせる。絶縁部11の凹部13の深さを深くしておけば、かぶせ治具40は必要ないが、かぶせ治具40を用いると、表示部材本体4の厚みや固定用足6の高さに応じたレジスト30の注入量のコントロールを、容易に行うことができる。
【0035】
工程(G)では、工程(B)と同様にポジ型レジスト33を注入する。この場合も、レジスト33の厚みが固定用足6の長さよりも約0.1mm程度厚くなるように注入する。
【0036】
次に、工程(H)は、固定用足6の型34を形成する工程である。
固定用足6の太さに合わせて紫外線透過部が形成されたフォトマスクを固定用足6の形成される位置に合わせて被せ、工程(C)と同様に紫外線露光および現像処理を行う。ここにおいても、表示部材本体4の底面5に達するまで繰り返して紫外線露光および現像処理を行い、型34を得る。
【0037】
工程(I)は、固定用足6の基部6を安定固定するための足用凹部8を形成する工程であり、本発明にかかる足用凹部形成工程である。ここでは、固定用足6を電鋳で形成する前に、金属(Ni)である表示部材本体4の裏面5をエッチングする液を工程(H)で形成した型34に注入し、裏面部分に足用凹部8を形成する。この表示部材本体4は、レジスト33と比較してエッチング速度が速いのでアンダーカットされ、足用凹部8は自然と内部に広がりを持った形状に形成される。
ここで、足用凹部8とここに形成される固定用足6は密着性が要求されるため、不動態化処理工程は必要ない。
【0038】
工程(J)で再び工程(D)と同じように電鋳を行い、固定用足6を形成する。したがって、この工程(J)は本発明にかかる固定用足形成工程である。このとき、足用凹部8の広がった内部から電鋳材料は堆積し成長する。工程(K)でも工程(E)と同じように、必要な固定用足6の長さになるまで研磨等を行う。
【0039】
工程(L)は、本発明にかかる時刻表示部材の取出工程である。この工程では、全面に紫外線照射を行い、残ったレジスト30を全部除去する。その後、形成された略字部品1を金属プレート19から剥離して取り出す。
【0040】
実際には、以上に述べた製造方法で、略字部品1と文字部品2を一緒に製造し、得られた略字部品1と文字部品2を文字板3に取り付けて、時計に組み込む。
【0041】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)略字部品1においては、表示部材本体4と固定用足6とが電鋳によって一体に形成されているため、略字部品1を、一種類の製造方法で容易に製造できる。また、略字部品1が一連の電鋳工程によって形成されるので、表示部材本体4や固定用足6ごとに設備を用意する必要がなく、多品種少量生産に好適である。さらに、略字部品1においては、表示部材本体4と固定用足6とが電鋳によって一体に形成されているため、略字部品1の成形中に機械的歪みを与えることがない。よって、略字部品1を文字板に固定する場合、その信頼性を向上させることができる。
【0042】
(2)固定用足6を形成する前に足用凹部8を形成するので、電鋳によって足用凹部8から電鋳材料を堆積させて固定用足6を形成できる。このため、表示部材本体4と固定用足6の結合面積を大きくでき、固定用足6を表示部材本体4に安定して固定できる。
【0043】
(3)固定用足6が形成される足用凹部8は内部に広がった形状であるので、固定用足6の基部7を表示部材本体4に食い込ませることができ、固定用足6を外れにくく安定して固定できる。
【0044】
(4)固定用足6を電鋳により形成したので、溶接で取り付ける場合に比べて以下のような長所を有する。まず、溶接によって固定用足6を表示部材本体4に取りつけると、表示部本体4の表面にふくらみが発生して外観を損なうので、このふくらみを除去するために、再研磨が必要となるが、固定用足6を電鋳により形成すると再研磨を不要にできる。また、溶接時の熱によって発生する、表示部本体4や固定用足6の酸化を防止できる。さらに、溶接時の局所熱によって表示部材本体4に歪が生じるのを防止できる。
【0045】
(5)金属プレート19に異なる時刻表示部材の形状を蝕刻することにより、一度に同じ製品に使用する時刻表示部材を同時に得ることができ、多品種少量生産により好適に対応できる。
【0046】
(6)金属プレート19の表面に装飾用の模様を施しておけば、この模様を表示部材本体4の表示面9に転写させることができ、美観を容易に向上させることもできる。
【0047】
(7)固定用足6を電鋳により形成したので、これを旋削加工する場合に比べて、応力集中の発生による折損を抑止できる。すなわち、応力集中の発生の原因となる切り欠き部が、切削バイトの振動によって固定用足6に形成されることがないので、折損を防止できる。
【0048】
(8)時計に組み込む時刻表示部材の製造が容易で、部位ごとに設備を用意する必要がないので、時計の多品種少量生産に適している。
【0049】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、文字板3も固定用足6によってムーブメントに固定される構造のものであれば、本実施形態の時刻表示部材に含まれる。つまり、文字板3自身も電鋳によって形成してよい。このようにすれば、文字板3と固定用足6とが電鋳によって、Niを用いて一体に形成されているため、これを時計体外部から侵入してくる外部磁界を遮蔽する耐磁板の役割を兼ねることができることから、指針の駆動源となるステップモータの誤動作を防ぐことができる。
また、前記実施形態では、表示部材本体4と固定用足6とを一連の電鋳工程によって形成したが、予め電鋳によって形成された表示部材本体4を別の治具等にセットし、ここで、あらたな電鋳を行って固定用足6を形成してもよい。
【0050】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態にかかる文字板を示す平面図。
【図2】略字部品を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施形態にかかる治具を示す斜視図。
【図4】治具を示す断面図。
【図5】治具を示す平面図。
【図6】本発明の一実施形態にかかる工程(A)〜(D)を示す断面図。
【図7】工程(E)〜(H)を示す断面図。
【図8】工程(I)〜(L)を示す断面図。
【符号の説明】
【0052】
1…時刻表示部材としての略字部品、4…表示部材本体、5…裏面、6…固定用足、8…足用凹部、9…表示面、19…導体部材としての金属プレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部材本体と、
この表示部材本体に設けられた固定用足とを備え、
これら表示部材本体および固定用足が電鋳によって一体に形成されていることを特徴とする時刻表示部材。
【請求項2】
表示部材本体と固定用足とを備えた時刻表示部材の製造方法であって、
前記表示部材本体を電鋳により形成する本体形成工程と、
前記表示部材本体に、前記固定用足を電鋳によって形成する固定用足形成工程とを備えていることを特徴とする時刻表示部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の時刻表示部材の製造方法において、
前記電鋳に使用するレジストの型を形成するフォトリソ工程と、
前記本体形成工程と、
前記固定用足形成工程と、
前記レジストを除去して前記時刻表示部材を取り外す取外工程とを備えていることを特徴とする時刻表示部材の製造方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の時刻表示部材の製造方法において、
前記本体形成工程では、前記導体部材上に前記表示部材本体をその表示面側から電鋳によって形成し、前記固定用足形成工程では、前記表示部材本体を前記導体部材上に残したまま、前記固定用足を電鋳によって形成することを特徴とする時刻表示部材の製造方法。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれかに記載の時刻表示部材の製造方法において、
前記表示部材本体の前記固定用足が形成される面に、凹状にくぼんだ足用凹部を予め形成しておく足用凹部形成工程を備えていることを特徴とする時刻表示部材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の時刻表示部材の製造方法において、
前記足用凹部は、内部に広がりを持った形状であることを特徴とする時刻表示部材の製造方法。
【請求項7】
請求項2〜請求項6のいずれかに記載の製造方法で製造された時刻表示部材を備えていることを特徴とする時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−29976(P2006−29976A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209144(P2004−209144)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)