説明

時計用回転表示部材および時計

【課題】立体感に溢れる外観を呈する時計用回転表示部材を提供する、また、前記時計用回転表示部材を備えた時計を提供する。
【解決手段】時計用回転表示部材1は、平面視した際に複数個のマイクロレンズ111が規則的に配置されたマイクロレンズ層11と、繰り返し模様が設けられた装飾層12とを備え、平面視した際に、前記マイクロレンズ層11と前記装飾層12とが重なり合うものであることを特徴とする。時計用回転表示部材1は、日車、曜車、月齢車または円盤針であるのが好ましい。また、前記繰り返し模様は、前記マイクロレンズ111と同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズ111とはピッチが異なるものであるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用回転表示部材および時計に関する。
【背景技術】
【0002】
時計は、実用品としての機能が求められるとともに、装飾品としての装飾性(美的外観)が求められる。
そして、時計には、円盤針、日付を表示する日車、曜日を表示する曜車、月齢を表示する月齢板等の回転表示部材(時計用回転表示部材)を備えたものがある(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
一方、時計についてはさまざまな需要があり、立体感のある外観を呈する回転表示部材を備えた時計に対するニーズがある。
しかしながら、従来においては、上記のような時計用回転表示部材は、基材に観察者に認識させるべき文字、模様等を単に印刷したものを用いており、上記のようなニーズに十分に応えることができていなかった。特に、腕時計のような携帯時計に適用される回転表示部材では、特に、時計全体としての厚みについての制約が大きく、立体感に溢れた外観の実現が極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−229069号公報
【特許文献2】特開平10−62561号公報
【特許文献3】特開2004−132715号公報
【特許文献4】特開平10−104365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、立体感に溢れる外観を呈する時計用回転表示部材を提供すること、また、前記時計用回転表示部材を備えた時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明の時計用回転表示部材は、平面視した際に複数個のマイクロレンズが規則的に配置されたマイクロレンズ層と、
繰り返し模様が設けられた装飾層とを備え、
平面視した際に、前記マイクロレンズ層と前記装飾層とが重なり合うものであることを特徴とする。
これにより、立体感に溢れる外観を呈する時計用回転表示部材を提供することができる。
【0007】
本発明の時計用回転表示部材では、時計用回転表示部材は、日車、曜車、月齢車または円盤針であることが好ましい。
これらの時計用回転表示部材は、各種回転表示部材の中でも、時計全体の外観に与える影響が大きいものである。したがって、本発明が、上記のような時計用回転表示部材に適用されることにより、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0008】
本発明の時計用回転表示部材では、前記繰り返し模様は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なるものであることが好ましい。
これにより、時計用回転表示部材の立体感・美的外観を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用回転表示部材を平面視した際に隣り合う前記マイクロレンズの中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の三角形が規則的に配置されたものとなることが好ましい。
これにより、時計用回転表示部材の立体感・美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明の時計用回転表示部材では、前記三角形は、正三角形であることが好ましい。
これにより、時計用回転表示部材の立体感・美的外観をさらに優れたものとすることができる。
本発明の時計用回転表示部材を平面視した際に隣り合う前記マイクロレンズの中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の四角形が規則的に配置されたものとなることが好ましい。
これにより、時計用回転表示部材の立体感・美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0010】
本発明の時計用回転表示部材では、前記四角形は、正方形であることが好ましい。
これにより、時計用回転表示部材の立体感・美的外観をさらに優れたものとすることができる。
本発明の時計は、本発明の時計用回転表示部材を備えたことを特徴とする。
これにより、立体感に溢れる外観を呈する時計用回転表示部材を備えた時計を提供することができる。
本発明によれば、立体感に溢れる外観を呈する時計用回転表示部材を提供すること、また、前記時計用回転表示部材を備えた時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の時計の概略構造を示す平面図である。
【図2】図1に示す時計が備える日車および曜車を示す平面図である。
【図3】本発明の時計用回転表示部材の断面図である。
【図4】本発明の時計用回転表示部材を構成するマイクロレンズと繰り返し模様との位置関係を説明するための拡大平面図である。
【図5】本発明の時計用回転表示部材を構成するマイクロレンズと繰り返し模様との位置関係を説明するための拡大平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の時計の概略構造を示す平面図である。
【図7】図6に示す時計が備える月齢車を示す平面図である。
【図8】本発明の第3実施形態の時計の概略構造を示す平面図である。
【図9】図8に示す時計が備える円盤針を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本発明の時計は、時計用回転表示部材を備えるものである。本発明において、時計用回転表示部材とは、時計において、文字板との間で相対的に回転可能なものであり、当該回転に伴い、観察者に視認させる表示内容が変化するもののことを言う。
時計用回転表示部材としては、例えば、日車、曜車、月齢車、円盤針、年車、四季車、タイムゾーン表示(都市表示)車、加飾車(例えば、矢印による文字板上の情報指示、ハート・星等の模様表示による外観効果を加えるもの)等が挙げられるが、本発明の時計用回転表示部材は、日車、曜車、月齢車または円盤針に適用されるものであるのが好ましい。これらの時計用回転表示部材は、各種回転表示部材の中でも、時計全体の外観に与える影響が大きいものである。したがって、本発明が、上記のような時計用回転表示部材に適用されることにより、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0013】
本発明は、置き時計、掛け時計、携帯時計(腕時計、懐中時計等)等、いかなる時計に適用されるものであってもよいが、携帯時計に適用されるものであるのが好ましい。携帯時計は、各種時計の中でも、特に、薄型化が要求されるものであるが、本発明によれば、時計(時計用回転表示部材)の厚さを十分に薄いものとしつつ、時計用回転表示部材の立体感を十分に優れたものとすることができる。すなわち、携帯時計に適用された場合に、本発明の効果がより顕著に発揮される。したがって、以下の説明では、携帯時計(特に、腕時計)について代表的に説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の時計の概略構造を示す平面図、図2は、図1に示す時計が備える日車および曜車を示す平面図、図3は、本発明の時計用回転表示部材の断面図、図4、図5は、本発明の時計用回転表示部材を構成するマイクロレンズと繰り返し模様との位置関係を説明するための拡大平面図である。
【0015】
本実施形態の時計100は、ケース2、文字板3、針4としての時針41、分針42、秒針43、図示しないムーブメント等を備えている。
文字板3には、日付を表示するための日付表示窓31と、曜日を表示するための曜日表示窓32とが設けられている。
図2に示すように、文字板3の下面側(針4が配置された面とは反対の面側)には、回転表示部材1としての日車1Aおよび曜車1Bが配置されている。日車1Aおよび曜車1Bは、それぞれ独立に、軸5の回転に伴い回転可能となっている。そして、日付表示窓31から日車1Aに示された日付が表示されるように構成されており、曜日表示窓32から曜車1Bに示された曜日が表示されるように構成されている。
【0016】
以下、時計100を構成する回転表示部材1について、詳細に説明する。
図3に示すように、時計用回転表示部材1は、複数個のマイクロレンズが設けられたマイクロレンズ層11と、繰り返し模様が設けられた装飾層(第1の装飾層)12とを備えている。マイクロレンズ層11を構成するマイクロレンズ111は、時計用回転表示部材1(マイクロレンズ層11)を平面視した際に規則的に配置されたものである(図4、図5参照)。装飾層(第1の装飾層)12は、マイクロレンズ層11の下面側(観察者の視点とは反対の面側)に配置されたものである。そして、時計用回転表示部材1を平面視した際に、マイクロレンズ層11と装飾層12とは重なり合うものである。
【0017】
時計用回転表示部材の構成をこのようなものとすることにより、光の干渉(モアレ)を視覚的に使用し、立体感に溢れる外観を呈する時計用回転表示部材を提供することができることを、本発明者は鋭意研究の結果見出した。特に、観察者の錯覚を利用するにより、時計用回転表示部材の厚みを、現実の厚み以上のものとして、観察者に認識させることができる時計用回転表示部材を提供することができることを、本発明者は鋭意研究の結果見出した。
【0018】
また、図3に示す時計用回転表示部材1は、マイクロレンズ層11、装飾層(第1の装飾層)12に加え、さらに、マイクロレンズ層11の第1の装飾層12が設けられた面とは反対の面側(観察者の視点側、外表面側)に設けられた第2の装飾層13を有している。このような第2の装飾層13を有することにより、マイクロレンズ層11の上面近傍(第2の装飾層13)を基準面として効果的に機能させることができ、上記のような第1の装飾層12を構成する模様(繰り返し模様121)の奥行き感等をさらに強調することができ、時計用回転表示部材1の立体感を特に優れたものとすることができる。
【0019】
そして、時計用回転表示部材1においては、第1の装飾層12および第2の装飾層13が、マイクロレンズ層11に固定されている。これにより、時計用回転表示部材1が回転した場合であっても、マイクロレンズ層11と第1の装飾層12との相対的な位置関係、マイクロレンズ層11と第2の装飾層13との相対的な位置関係が変化してしまうことが確実に防止されている。
【0020】
[マイクロレンズ層]
マイクロレンズ層11は、複数個のマイクロレンズ111が規則的に配置されたものである。
図4に示す構成では、時計用回転表示部材1を平面視した際に隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の三角形が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズ111が配置されている。これにより、時計用回転表示部材1の立体感・美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0021】
特に、図4に示す構成では、前記三角形が正三角形である。これにより、時計用回転表示部材1の立体感・美的外観をさらに優れたものとすることができる。
また、図5に示す構成では、時計用回転表示部材1を平面視した際に隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の四角形が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズ111が配置されている。このように、本発明においては、マイクロレンズの配置パターンは、図4に示したようなものに限定されない。特に、図5に示すような構成であると、時計用回転表示部材1の立体感・美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0022】
また、図5に示す構成では、前記四角形が正方形である。これにより、時計用回転表示部材1の立体感・美的外観をさらに優れたものとすることができる。
マイクロレンズ111の焦点距離は、100μm以上1000μm以下であるのが好ましく、150μm以上500μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用回転表示部材1の立体感・美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、焦点は、図中にPで示した。
【0023】
マイクロレンズ111のピッチ(時計用回転表示部材1を平面視した際のピッチ)PMLは、50μm以上500μm以下であるのが好ましく、60μm以上300μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用回転表示部材1の立体感・美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、本明細書において、マイクロレンズのピッチとは、隣り合うマイクロレンズについて、時計用回転表示部材を平面視した際のそれぞれの中心点を結ぶ距離のことをいう。
【0024】
マイクロレンズ層11は、光透過性を有する材料で構成されたものである。本発明において、「光透過性を有する」とは、可視光領域(380〜780nmの波長領域)の光の少なくとも一部を透過する性質を有することを指し、好ましくは可視光領域の光の透過率が50%以上であり、より好ましくは可視光領域の光の透過率が60%以上である。このような光の透過率は、例えば、以下に述べるようにして求められる値を採用することができる。すなわち、光源として、白色蛍光灯(東芝社製、検査用蛍光灯 FL20S−D65)を用い、1000ルクス下で、測定対象の部材(ここでは、マイクロレンズ層11)と同一形状のソーラーセル(太陽電池)のみで発電した際の電流値(X)を求める。また、前記ソーラーセルの光源側の面に測定対象である部材を載せた以外は、前記と同一の状態で発電した際の電流値(Y)を求める。そして、上記のようにして求められたYのXに対する比率((Y/X)×100[%])を、光の透過率として採用することができる。以下、本明細書中において、特に断りのない限り、「光の透過率」とは、このような条件で求められる値のことを指す。
【0025】
マイクロレンズ層11を構成する材料としては、例えば、各種プラスチック材料、各種ガラス材料等が挙げられるが、マイクロレンズ層11は、主としてプラスチック材料で構成されたものであるのが好ましい。プラスチック材料は、一般に、成形性(成形の自由度)に優れており、種々の形状の時計用回転表示部材1の製造に好適に適用することができる。また、マイクロレンズ層11がプラスチック材料で構成されたものであると、時計用回転表示部材1の製造コスト低減に有利である。また、プラスチック材料は、一般に、光(可視光)の透過性に優れるとともに、電波の透過性にも優れているため、マイクロレンズ層11がプラスチック材料で構成されたものであると、時計用回転表示部材1を、電波時計に好適に適用することができる。以下の説明では、マイクロレンズ層11が主としてプラスチック材料で構成された例を、中心に説明する。なお、本発明では、「主として」とは、対象としている部位(部材)を構成する材料のうち最も含有量の多い成分を指し、その含有量は特に限定されないが、対象としている部位(部材)を構成する材料の60wt%以上であることが好ましく、80wt%以上であることがより好ましく、90wt%以上であることがさらに好ましい。
【0026】
マイクロレンズ層11を構成するプラスチック材料としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。そして、これらの材料は、1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。特に、マイクロレンズ層11は、主として、ポリカーボネートで構成されたものであるのが好ましい。これにより、マイクロレンズ111をより透明性の高いものとすることができるとともに、マイクロレンズ111の屈折率を最適なものとすることができるため、時計用回転表示部材1全体としての美的外観を特に優れたものとすることができる。また、時計用回転表示部材1全体としての強度を特に優れたものとすることができるとともに、マイクロレンズ111の寸法精度をより高いものとすることができ、また、マイクロレンズ111の不本意な変形等をより確実に防止することができるため、時計用回転表示部材1の信頼性を特に優れたものとすることができる。また、マイクロレンズ層11が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂で構成されたものである場合、印刷法(特に、インクジェット法のような液滴吐出法)によるマイクロレンズ111の形成をより好適に行うことができる。
【0027】
なお、マイクロレンズ層11は、プラスチック材料以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、着色剤(各種発色剤、蛍光物質、りん光物質等を含む)、光沢剤、フィラー等が挙げられる。例えば、マイクロレンズ層11が着色剤を含む材料で構成されたものであると、時計用回転表示部材1の色のバリエーションを広げることができる。
【0028】
マイクロレンズ層11は、各部位でその組成が実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、部位によって組成の異なるものであってもよい。
マイクロレンズ層11の屈折率(絶対屈折率)は、1.500以上1.650以下であるのが好ましく、1.550以上1.600以下であるのがより好ましい。これにより、時計用回転表示部材1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0029】
なお、図示の構成では、マイクロレンズ111は、略半球状をなすものであり、平面視した際の形状が円形をなす球面レンズであるが、マイクロレンズ111の形状は、特に限定されるものでなく、例えば、平面視した際の形状が俵型形状(略楕円形状、長円形状)や、略三角形状、略四角形状、略六角形状等をなすものであってもよい。
また、マイクロレンズ基板(マイクロレンズ層)11の形状、大きさは、特に限定されず、通常、製造すべき時計用回転表示部材1の形状、大きさに基づいて決定される。なお、図示の構成では、マイクロレンズ基板11は、平板状をなすものであるが、例えば、湾曲板状をなすものや、円筒状、角柱状をなすもの(周面にマイクロレンズ111が配置されたもの等)等であってもよい。
【0030】
また、マイクロレンズ基板11は、いかなる方法で成形されたものであってもよいが、マイクロレンズ基板11の製造方法としては、例えば、圧縮成形、押出成形、射出成形、光造形、2P法等が挙げられる。また、マイクロレンズ基板11は、例えば、マイクロレンズ111を有していない板状部材に、インクジェット法等の液滴吐出法により、マイクロレンズ111の構成材料を含む液状材料を吐出することにより、マイクロレンズ111を形成して得られたものであってもよい。また、マイクロレンズ111は、オフセット印刷、グラビア印刷等の各種印刷法を用いて形成されたものであってもよい。印刷法を用いてマイクロレンズを形成した場合、マイクロレンズ基板11の生産コストを抑制することができる点で有利である。なお、本発明では、マイクロレンズ基板が有するマイクロレンズのうち少なくとも一部は平面視した際の形状が円形状のものでなくてもよく、例えば、楕円形状をなすものであってもよい。また、複数のマイクロレンズは、それぞれが独立したものであっても、隣り合うもの同士がつながったものであってもよい。
【0031】
[装飾層(第1の装飾層)]
装飾層(第1の装飾層)12は、繰り返し模様が設けられたものである。
図4、図5に示す構成では、装飾層12は、時計用回転表示部材1(装飾層12)を平面視した際に規則的に配置された繰り返し模様121を有するものであり、繰り返し模様121は、マイクロレンズ111と同種の配置で、かつ、マイクロレンズ111とはピッチが異なるものである。これにより、時計用回転表示部材1の立体感・美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0032】
繰り返し模様121のピッチの方がマイクロレンズ111のピッチよりも小さい場合には模様が沈んで見え、一方、繰り返し模様121のピッチの方がマイクロレンズ111のピッチよりも大きい場合には模様が浮かんで見える。
なお、本明細書において、「マイクロレンズ111と同種の配置」とは、マイクロレンズの配置と同一で大きさが異なるもの(相似の関係)のほか、装飾層12の面内の所定方向に圧縮または延伸した配置を含む。例えば、隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に当該直線により複数個の正三角形が規則的に配置されたものである場合においては、隣り合う繰り返し模様121の中心を直線で結んだ場合に当該直線によって複数個の正三角形以外の三角形(例えば、二等辺三角形)が配置されたものとなるような配置等であってもよい。
【0033】
繰り返し模様121の構成単位のピッチ(時計用回転表示部材1を平面視した際のピッチ)Pは、40μm以上550μm以下であるのが好ましく、50μm以上350μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用回転表示部材1の美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、本明細書において、隣り合う構成単位のピッチとは、隣り合う構成単位について、時計用回転表示部材を平面視した際のそれぞれの中心点を結ぶ距離のことをいう。
【0034】
マイクロレンズ111のピッチをPML[μm]、繰り返し模様121の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、0.5≦P/PML≦1.5の関係を満足するのが好ましく、0.7≦P/PML≦1.3の関係を満足するのがより好ましい。これにより、時計用回転表示部材1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用回転表示部材1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0035】
繰り返し模様121の構成単位は、図示の構成では円形状をなすものであるが、いかなる形状のものであってもよい。例えば、多角形状、楕円形状、星型形状、アルファベット等の文字のほか、漫画のキャラクター等のより複雑な形状をなすものであってもよい。
繰り返し模様121は、いかなる材料で構成されたものであってもよい。例えば、各種顔料、各種染料等の着色剤や、金属材料を含む材料で構成されたものであってもよい。また、繰り返し模様121は、樹脂材料を含む材料で構成されたものであってもよい。これにより、マイクロレンズ層11に対する密着性を特に優れたものとすることができる。
【0036】
繰り返し模様121は、いかなる方法で形成されたものであってもよい。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、タコ印刷法、インクジェット法等の各種印刷法を用いて形成されたものであってもよい。これにより、マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板)11と繰り返し模様121とをより確実に密着させることができ、その結果、より確実に、マイクロレンズ111と繰り返し模様121との距離を一定に保つことができ、時計用回転表示部材1の外観を安定的に優れたものとすることができる。
【0037】
各種印刷法の中でも、インクジェット法が特に好ましい。インクジェット法を適用することにより、上述した効果がより顕著に発揮されるとともに、微細な模様であっても、好適に形成することができる。
また、基板上に形成された膜に対してエッチング処理を施し、残存した部分を、繰り返し模様としてもよい。
【0038】
マイクロレンズ111のレンズ面(図3中の上側の面)から後述する装飾層12の表面(図3中の上側の面)までの距離は、100μm以上1000μm以下であるのが好ましく、150μm以上500μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用回転表示部材1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用回転表示部材1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0039】
特に、図4に示すように、時計用回転表示部材1を平面視した際に隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の三角形が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズ111が配置されている場合、マイクロレンズ111のレンズ面(図3中の上側の面)から装飾層12の表面(図3中の上側の面)までの距離は、150μm以上500μm以下であるのが好ましく、150μm以上300μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用回転表示部材1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用回転表示部材1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0040】
また、図5に示すように、時計用回転表示部材1を平面視した際に隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の四角形が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズ111が配置されている場合、マイクロレンズ111のレンズ面(図3中の上側の面)から装飾層12の表面(図3中の上側の面)までの距離は、100μm以上1000μm以下であるのが好ましく、250μm以上600μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用回転表示部材1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用回転表示部材1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0041】
マイクロレンズ111の焦点距離をL[μm]、マイクロレンズ111のレンズ面から装飾層12の表面までの距離をL[μm]としたとき、0.5≦L/L≦1.5の関係を満足するのが好ましく、0.6≦L/L≦1.4の関係を満足するのがより好ましい。これにより、時計用回転表示部材1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用回転表示部材1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0042】
また、装飾層12の形状、大きさは、特に限定されず、通常、製造すべき時計用回転表示部材1の形状、大きさに基づいて決定される。
また、図3に示す構成では、マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板)11と装飾層12とが密着している。これにより、マイクロレンズ111と繰り返し模様121との距離を一定に保つことができ、時計用回転表示部材1の外観を安定的に優れたものとすることができる。
【0043】
[第2の装飾層]
マイクロレンズ層11の第1の装飾層12が設けられた面とは反対の面側(観察者の視点側、外表面側)には、第2の装飾層13が設けられている。このような第2の装飾層13を有することにより、マイクロレンズ層11の上面近傍(第2の装飾層13)を基準面として効果的に機能させることができ、上記のような第1の装飾層12を構成する模様(繰り返し模様121)の奥行き感等をさらに強調することができ、時計用回転表示部材1の立体感を特に優れたものとすることができる。
【0044】
第2の装飾層13は、いかなる模様が設けられたものであってもよいが、時計用回転表示部材1が日車1Aである場合には、日付を表す数字が描かれたものであるのが好ましく、時計用回転表示部材1が曜車1Bである場合には、曜日を表す文字等が描かれたものであるのが好ましい。日車1Aを構成する第2の装飾層13に描かれた日付を表す数字としては、例えば、ローマ数字、アラビア数字、漢数字等を用いることができる。曜車1Bを構成する第2の装飾層13に描かれた曜日を表す文字としては、例えば、ローマ字、漢字等を用いることができる。
【0045】
また、第2の装飾層13の形状、大きさは、特に限定されず、通常、製造すべき時計用回転表示部材1の形状、大きさに基づいて決定される。
また、図3に示す構成では、マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板)11と第2の装飾層13とが密着している。これにより、時計用回転表示部材1の外観を安定的に優れたものとすることができる。
【0046】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態の時計の概略構造を示す平面図、図7は、図6に示す時計が備える月齢車を示す平面図である。以下、第2実施形態の時計について、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明は省略する。
本実施形態では、文字板3には、月齢(月の満ち欠けの状態)を表示するための月齢表示窓33が設けられている。
【0047】
実施形態の時計100では、時計用回転表示部材1としての月齢車1Cが、文字板3の下面側(針4が配置された面とは反対の面側)に配置されている。
月齢車1Cは、軸6の回転に伴い回転可能となっている。月齢車1Cには、その中心軸を挟んで対向するように2つの月が描かれており、月齢車1Cは、月齢周期である29.5日で半回転する。そして、月齢表示窓33から視認される月の形状により、観察者が月齢(月の満ち欠けの状態)を判断することが可能になっている。
【0048】
本実施形態のように、時計用回転表示部材1として月齢車1Cを備えるものである場合、繰り返し模様121のピッチがマイクロレンズ111のピッチよりも小さく、第2の装飾層13が月の模様を有しており、第1の装飾層12が繰り返し模様121として月以外の星の模様(月よりも小さいものとして観察者に認識されるもの)を有しているものであるのが好ましい。これにより、地球から最も近い天体としての月が、その他の星よりも手前に存在するものとして、優れた立体感で表示することができ、美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0049】
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態の時計の概略構造を示す平面図、図9は、図8に示す時計が備える円盤針を示す平面図である。以下、第3実施形態の時計について、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明は省略する。
本実施形態の時計100は、時計用回転表示部材1として、太陽と太陽以外の星とが描かれた円盤針1Dを備えている。文字板3には、円盤針1Dの一部のみを表示するための表示窓34が設けられている。そして、表示窓34から視認される模様により、時間帯を直感的に認識することができるように構成されている。例えば、屋外の様子を観察することができない環境に長時間滞在した場合、針(指針)が所定の時刻を指していても、午前なのか午後であるのかが判断できない場合があるが、本実施形態のような構成とすることにより、円盤針1Dにより、おおよその時間帯を判断することができるとともに、針4により正確な時刻も把握することができる。
【0050】
本実施形態のように、時計用回転表示部材1として太陽と太陽以外の星とが描かれた円盤針1Dを備えるものである場合、太陽が描かれた領域と、太陽以外の星が描かれた領域とは、背景の色が異なるものであるのが好ましい。例えば、太陽が描かれた領域の背景の色は水色(薄青色)であり、太陽以外の星が描かれた領域の背景の色は濃青色等のように、太陽が描かれた領域の背景の色よりも明度の低い色であるのが好ましい。これにより、表示窓34から視認される模様による時間帯の認識をより直感的行うことが可能となる。
【0051】
また、本実施形態のように、時計用回転表示部材1として太陽と太陽以外の星とが描かれた円盤針1Dを備えるものである場合、第2の装飾層13が、太陽の模様に加え雲の模様を有しており、第1の装飾層12が、平面視した際に前記雲の模様と重なり合う領域に繰り返し模様121として太陽以外の星の模様を有しており、平面視した際に前記雲の模様と重なり合う領域において、繰り返し模様121のピッチがマイクロレンズ111のピッチよりも小さいものであるのが好ましい。これにより、地球にある雲と、宇宙(地球外)にある星とを、優れた立体感で表示することができ、美的外観を特に優れたものとすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記のようなものに限定されるものではない。
【0052】
例えば、本発明の時計用回転表示部材、時計では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、本発明を携帯時計(特に、腕時計)に適用する場合について中心的に説明したが、本発明は、携帯時計以外の時計に適用されるものであってもよい。
【0053】
また、前述した実施形態では、時計用回転表示部材が、マイクロレンズ層および繰り返し模様を有する装飾層(第1の装飾層)に加え、第2の装飾層(マイクロレンズ層の第1の装飾層が設けられた面とは反対側の面側に設けられた装飾層)を備える構成について中心的に説明したが、本発明において、時計用回転表示部材は、第2の装飾層を備えていなくてもよい。
【0054】
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ層には、同一のパターンでマイクロレンズが設けられている場合について代表的に説明したが、マイクロレンズ層は、マイクロレンズの配置パターンの異なる複数の領域を有するものであってもよい。また、隣り合うマイクロレンズのピッチ、配置等は連続的に変化するものであってもよい。また同様に、繰り返し模様の構成単位のピッチ、配置等は連続的に変化するものであってもよい。
【0055】
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ層が、マイクロレンズとして凸レンズを備えるものである場合について代表的に説明したが、マイクロレンズは、繰り返し模様を備える装飾層(第1の装飾層)の設けられた面側で焦点を結ぶものであればよく、凹レンズであってもよい。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズを備えるマイクロレンズ層と、繰り返し模様を備える装飾層とが、密着した構成である場合について代表的に説明したが、マイクロレンズ層と装飾層とは、密着していなくてもよい。例えば、時計用回転表示部材は、マイクロレンズ基板と、装飾層(第1の装飾層)が設けられた基板とを備え、これらが所定距離だけ離間したものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
100…時計 1…時計用回転表示部材 1A…日車(時計用回転表示部材) 1B…曜車(時計用回転表示部材) 1C…月齢車(時計用回転表示部材) 1D…円盤針(時計用回転表示部材) 11…マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板) 111…マイクロレンズ 12…装飾層(第1の装飾層) 121…繰り返し模様 13…第2の装飾層
2…ケース 3…文字板 31…日付表示窓 32…曜日表示窓 33…月齢表示窓
34…表示窓 4…針(指針) 41…時針 42…分針 43…秒針 5…軸 6…軸 PML…ピッチ P…ピッチ P…焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視した際に複数個のマイクロレンズが規則的に配置されたマイクロレンズ層と、
繰り返し模様が設けられた装飾層とを備え、
平面視した際に、前記マイクロレンズ層と前記装飾層とが重なり合うものであることを特徴とする時計用回転表示部材。
【請求項2】
時計用回転表示部材は、日車、曜車、月齢車または円盤針である請求項1に記載の時計用回転表示部材。
【請求項3】
前記繰り返し模様は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なるものである請求項1または2に記載の時計用回転表示部材。
【請求項4】
時計用回転表示部材を平面視した際に隣り合う前記マイクロレンズの中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の三角形が規則的に配置されたものとなる請求項1ないし3のいずれかに記載の時計用回転表示部材。
【請求項5】
前記三角形は、正三角形である請求項4に記載の時計用回転表示部材。
【請求項6】
時計用回転表示部材を平面視した際に隣り合う前記マイクロレンズの中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の四角形が規則的に配置されたものとなる請求項1ないし5のいずれかに記載の時計用回転表示部材。
【請求項7】
前記四角形は、正方形である請求項6に記載の時計用回転表示部材。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の時計用回転表示部材を備えたことを特徴とする時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−61311(P2013−61311A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201576(P2011−201576)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)